ベル君が月山さんみたいになるのは間違えてるだろ。 作:くるしみまし
これからもこの調子で頑張ります!
お気に入りが100人行きそうで怖いけど楽しみ。
ベルは街中を全力で走っていた。
目的地はギルド。目的は謝罪。
ベルはベートに打ち込んだときよりも更に早く走り抜ける。ステータスが一気に伸びたため、これまでの比じゃない速度で走ることができている・・・が
(怒られる怒られる怒られる怒られる怒られる!)
今のベルにはそんなこと考えている余裕はなく、1秒でも早くエイナさんのもとへそれだけを考えていた。
エイナさんは普段は優しいお姉さんだが一度怒ると尋常じゃないくらい怖い。
ただ怒られるだけならともかく、そこからなんと数時間かけて行われる超スパルタ勉強会が開かれる。
正直激おこ状態のエイナさんの勉強会は殺人的である。
今更走って行っても怒られることには変わりないだろうけど、それでも一縷の望みにかけて走らずにはいられなかった。
目的地にはあっという間についた。
僕はギルドの扉を勢いそのまま開け放ち受付席の方を向き、膝をつき、両手をついて、床に頭を叩きつけ
「エイナさん!すいませんでしたああああああ!!」
誠心誠意全力の謝罪を叫ぶ。
これは東洋流の謝罪方法で土下座と言い100%謝罪を表現するらしく、見たものは思わず許したくなるような不思議な力を持っている。土下座なら・・・許されるまでは行かなくても罪が軽くなるかも・・・と思いチラッと受付席の方を見る。
エイナさんは突然のことに口を開けて驚いていた。しかしすぐにニコッと笑みを作り、隣のギルド職員に何か言伝をしてこちらに歩いてくる。
その見とれてしまいそうな笑みを見て「許されたのでは?」と一瞬希望を持ったが・・・甘かった。
なぜならエイナさんの額にしっかり張り付いていたからだ。
怒りマークが。
するとエイナさんはカッカッカッと靴を鳴らしながらこちらに歩いてくる。
「ベェェェルくぅうん! ちょっとお話があるから来てもらおうか?」
エイナさんは僕の首根っこを掴み引きずって個室に連れて行こうとする。
僕は親戚から預けられた猫のようになんの抵抗もできないままひきづられる。
「うわあ!ごめんなさぁぁぁ・・・・(バタン)」
僕の悲鳴は悲しくも個室の扉によって遮られた。
僕の前にコトッとカップが置かれる。
エイナさんはそれに紅茶を注いでくれる。とても良い香りで、紅茶をよく知らない僕でもいい物だと理解する。
エイナさんは机を挟んで僕の反対側の席に座り、紅茶をひとくちだけ飲む。
その姿はエルフの血のおかげかエイナさん自身の雰囲気のおかげかは分からないが見とれてしまうほど様になっていた。
しかしそんなゆったりとした時間は長く続かず尋問が始まる。
「ベルくん。」
「は、はい。」
エイナさんの明らかに怒気を含んだ声を聞いて思わず体が萎縮してしまう。情けないなと思いつつ返事を返す。
「私は今、かーなーりっ・・怒っています。なんでか分かってる?」
笑みを作り優しく尋ねているが目は笑っていなかった。
「は、はい・・・。」
「言ってごらん?」
「・・・喧嘩をしたからだと思います」
正直に答える。
「うん。でもベルくんだって男の子だから喧嘩の一つや二つするよね。だけどね、ベルくん」
「な、なんでしょうか?」
エイナさんはカッと目を見開き、机を叩いて立ち上がりながら
「レベル5と喧嘩なんてありえないでしょうがあああああ!!?」
絶叫する。
「ヒイッ!?」
「しかもそれで案の定傷だらけになってるじゃない!そうなることくらいわかってたでしょ!?昨日噂を聞いて慌てて『豊穣の女主人』まで行ったら玄関前はひどい有様だし、話を聞いたらベルくんが《ロキ・ファミリア》のベート・ローガに喧嘩を吹っかけたって言うし、ひどい傷で・・・もしかしたら命に関わるかもなんて聞いたから・・・。」
エイナさんはそこまで叫んだところで椅子に座り直して目元を抑える。
そこで僕は今更ながら気づく。
ああ・・・この人もシルさんと同じく本気で僕の身を案じていたんだと。
「すみませんでした・・・。」
すでに恐怖はなくなり、代わりに申し訳なさが込み上げてきた。
「・・・本当に心配したんだからね。 お願いだから今回みたいな無謀なことはもう二度としないで・・・・。」
「・・・・分かりました。」
本当に今回のような後先考えないような行動はやめようと心に誓った。
僕が怪我するだけではない。僕が傷ついたことを本気で案じてくれる人達がいることを忘れないようにしよう。
「・・・うん。わかってくれたなら良いよ。その代わり罰はしっかり受けてもらうけどね。」
「え?」
え?
「今日はもう良いけど、近いうちにしっかりダンジョンの事、冒険者のこと、みっちり叩き込んであげるから覚悟しててね?」
すごい笑顔で死刑宣告をくらった。
しかし・・・まあ楽しみにしておこう。ポジティブに捉えればこんな美人な人と二人っきりになれることなんてそうそう・・・いつも神様と二人っきりだったな。あれ?なんか恥ずかしくなってきたぞ。
「どうしたのベル君? なんだか顔が赤いけど。」
エイナさんは上目遣いで覗き込んでくる。顔が近づいたことで赤面化が加速する。
「あ・・・ちょ!」
「ん?・・・・・ははーん」
エイナさんは何か良いことを知ったというような顔をする。
あ、なんかすごく嫌な予感。
「ねえねえベルくん。どうしたの〜。」
「ーーーーーーーーーーーーーーーーッ!?!?」
エイナさんは机から身を乗り出してさらに顔を近づけてくる。少しでも顔を動かしたらくっついてしまいそうな距離に声にならない悲鳴をあげる。
エイナさんのニヤニヤしたこの顔・・・絶対分かってやってる。
そう分かった時にどこからか声が聞こえる。
声は昔よく聞いた懐かしい声だった。
この声は・・・・おじいちゃん
両親のいなかった僕を育ててくれたおじいちゃんだ。
〔ベルよ・・・今こそチャンスじゃ。〕
(チャンス?何の?)
〔接吻じゃ!〕
な、なんだってーーーー!
(いやいや、さすがにダメだよ!)
(ダメなものか! 向こうから誘ってるんじゃ。男だったら接吻の一つや二つぶちかまさんと女性にも失礼というもんじゃ!)
《全くもってその通りだね。》
今度はベートさんと戦っているときに聞こえた『僕』の声が聞こえる。
(君は! こっちから呼びかけても全然反応しないくせにこんな時だけ・・・!)
《まあまあ良いじゃないか。 それよりそこのご老人の言うとうりだ、女性からアプローチされているというのにキッスの一つもしないのは紳士として失礼というものだ!》
〔そーじゃそーじゃ。〕
(うう・・・でも僕にはアイズさんという心に決めた人が・・・)
《君はハーレムを目指しているんだろ?》
(!・・・・そうだ・・・僕はハーレムを目指してオラリアにきたんだ。)
《確かに僕たちのメインヒロインはアイズだ。しかし! ハーレムを目指している以上複数人と交際するのは絶対条件!【アイズを愛しつつ他の人間も愛す】これができずになにがハーレムか!》
ベルに 電流 走る
《フッ・・・その顔。何をすべきか分かったようだね。》
〔行くのじゃベル! かましてこい!〕
・・・覚悟は決まった。
僕はすぐ目の前にあるエイナさんの頬にそっと触れる。
「え!? ちょっ、な、なに?どうしたのベルくん?」
打って変わって今度はエイナさんが顔を赤くさせる。
「目を・・・閉じてください」
「ええ!? なに言い出してるの!?」
「大丈夫です・・・・初めてですけど優しくするので・・・」
「や、優しく!? 本当に待って!まだ心の準備が・・・!」
エイナさんは顔から火が出るのではないかと思うほど赤くなっている。
僕は黙ってエイナさんの口を口で塞ぐために顔を近づける。
エイナさんはアタフタしていたが観念したように瞳を閉じる。
そして二人の唇が一つに重な・・・
「なにしてんだバカベル君ッッッッ!!」
ることはなく僕の体は神様の完璧なドロップキックによって横に弾き飛ばされ、壁に激突する。
「か、神様!?」
「君に置いていかれてやっとギルドについたら女の子と個室に入ったって聞いて、嫌な予感がして来てみたらこの有様だよ!」
し、しまったぁ! 完全に神様のことを忘れていた!
どうしよう、完全に今のは言い訳ができない!
エイナさんに目配せをする。
エイナさんも相当焦っているようで汗が吹き出している。
(どうするんですかエイナさん!大変な事になりましたよ!)
(私のせい!? ベルくんだって悪ノリしてたじゃない!)
(うう・・・!ど、どうします?)
(・・・・一応説得してみる。)
無駄な気もするがエイナさんの説得が始める。
「あ、あのー、神ヘスティア。 私たちは別に何かしようとしていた訳ではなく、少し説教をしていただけでしてね・・・」
「何を言っているんだ!どこからどう見てもキス2秒前だったじゃないか!?」
くっ!ダメか!
それなら・・・
「そーうだエイナさん!僕エイナさんと勉強会の約束をしていたんですよね、ね!」
エイナさんにアイコンタクトを送る。
エイナさんも僕の意図を理解してくれたようだ。
「そ、そーだったねベルくん!」
「仮にそうだったとしても何故あんなに顔を近づけていたんだい!」
痛いところをついてくる。神様に嘘は通じない・・・下手なことは言えないな。
しかしなにも浮かばないな。むむむ・・・・どうしたものか。
そ、そうだ。
「え、え〜〜〜と。将来への勉強を!」
「ふざけるんじゃないよおおおお!!」
どうやら思いっきり下手こいたようだ。
エイナさんは全てを諦めたような顔をしている。
こ、こうなったら
「そうだ神様!ミアハさんの所にも行かなきゃいけないんですよね!なんだかすごく会いたくなってきちゃいました!行きましょう!すぐ行きましょう!今すぐ行きましょう!というか先に行ってますねぇぇぇぇぇぇ・・・・!」
僕はそう言うと神様の横を走り抜けギルドの外に飛び出す。
「あぁ!ベルくん! あとでみっちり話を聞くからねェェェェ!」
後ろから神様の声が聞こえたけどミアハさんのお店へ逃げさせてもらうことにした。
あとが怖いけど今は逃げさせてもらおう・・・・。
(すみません。神様!)
「・・・すみません神ヘスティア。」
私はとりあえず目の前のベル君の主神ヘスティアに謝罪する。
ヘスティアは一瞬、私のことを睨んだが直ぐにため息を一つついて視線を外す。
「あー・・良いよ君は。ベル君が迫ってるように見えたし、君は被害者だろう?」
「あはは・・・・。」
まさか私がベルくんをからかったことから始まったなんて口が裂けても言えないな・・・・。
「はあ・・・もうベルくんったら、言ってくれたら僕がいくらでも教えてあげるのに・・・。」
ヘスティアは何かをブツブツと呟いている。
その姿を苦笑いを浮かべながら眺める。
それにしても
「ベル君の事が・・・好きなんですね?」
そんな質問を投げかけてみる。
ヘスティアはかなりストレートな質問を受けたのに慌てる様子もなく真っ直ぐこちらを向き
「ああ、大好き・・・いや、愛しているよ」
聞いてるこっちが恥ずかしくなるようなセリフを美しい笑顔で告げた。
見惚れているとヘスティアは「じゃっ!」と言って部屋を出て行った。
(素敵な女性だったな・・・)
わずか数分の出会いだったがあの女性の良さが私にも良く理解できた。
あんな素敵な女性に好かれているベル君は幸せ者だと思う・・・だけど
「私も負けてられないな・・・」
一人の部屋でそんなことを呟く。
ん?
(あれ?負けてられない?てことは私・・ベル君のこと・・・アアアアアア!!!)
そこには今更自分の気持ちに気づいて悶える可愛いらしい少女の姿があった。
次は多分2月になります。