似て非なるもの 作:裏方さん
前話で改めて前生徒会から卒業したオリヒロ。
卒業式の後は、期末考査。
オリヒロ、追試の危機が。
ではよろしくお願いします。
「うん、わかった。
でも、あんまり無理しないでね」
とうちゃん、今日も残業か。
晩ご飯いらないって、大分遅いのかなぁ。
最近、かぜ気味だっていってたから、ち~と心配。
・・・
ふぅ、心配しててもしょうがないね。
そのかわり、明日はなんか美味しいものつくってあげよ。
ほんじゃ、スーパーよってから帰ろうか。
しまった、チラシ持ってないや。
ん~、主婦として失格だね。
今日は何の特売やってんだろ。
しゃ~ない、いってみてから勝負だ。
”ぐぅ~”
たはは、その前に今日なに食べよかなぁ。
ひとりだからね。
ん~と、昨日の残り物はっと・・・・
あ、そうだ、全部お弁当にしちゃったんだ。
やば、なんもないや。
よ、よし、今日は奮発してリッチになんか食べて帰ろ。
し、仕方ないよね。 だって明日から期末考査だもん。
手抜きじゃないからね。
・
・
・
「あの~、待ち時間ってどれくらいですか?」
「そうですね、あと1時間ぐらいだと」
「あ、はい、ありがとうございます」
うへ、なんだろう、今日に限ってどこもいっぱいだよ。
あ、あのスパゲッティ美味しそうだね。
いや、まてよ、あのピザもいいかなぁ。
”ぐぅ~”
うへ~、腹減った、も、もう待ちきれん。
いっそ、コンビニで肉まんでも買って帰ろっか。
ん? ん、ん、ん~ ふむ。
”どさ”
「うんしょっと」
はぁ~よかった、待たずに座れた。
ラッキー。
やっぱ日ごろの行いだね、いや~まったく。
それじゃ早速、お~い店員さんっと、
「あの~、すみません。
追加お願いします」
「おい」
「えっと、ドリンクバーとハンバーグステーキとライスお願いします」
「お、おい」
「あ~よかった、もうお腹ペコペコ。
で、何食べてんの?」
「おう、ミラノ風ドリアだって違うだろ!
お前、なに勝手に俺の席に座ってんだ」
「俺の席・・・・ほほう、いつからここは君のものになったのかね。
それに、いいじゃん混んでんだから。
だいたいね、こんなに混んでるのに、たった一人で席を独占するなんて、
人間として恥ずかしくない?
まったく、どういう躾されてんだか」
「はい、すみません。
いや、ん~、俺が悪いのか?」
「うん、わかればよろしい。
んで、それ美味しい?」
「おう、このミラノ風ドリアは何回食べてもうまい。
この値段でこのうまさは文句の言いようがない」
「一口、ちょ~だい」
「はぁ? 断る」
「いいじゃん、一口だけ」
「そんなに食べたければ、自分で注文するんだな」
ほんと、最近の男どもはまったくどいつもケチなんだね。
それじゃ、
「あっ、雪ノ下さん」
「へぇ?」
”ぱく”
「あ、おま、なんてことを」
「うま~、今度はこれ頼もうっと。
馬鹿だね~、雪ノ下さんがこんなとこ来るわけないじゃん」
「ぐっ、た、確かに」
「もう、一口」
「やらん」
「あ、結衣ちゃん、こっちだよ」
「へ?」
”ぱく”
「うお、三ヶ木、お前!」
「まぁ、まぁ、いいじゃん、そんなケチってると
女子にもてないよ。
どっかの会計さんみたいに」
「くっそ、まったく、お前は。
それに、おれはケチらなくても、もてたことがない。
中学の時なんか・・・・」
「いや、それはいいから」
で、でた、比企谷君の黒歴史。
でもいいじゃん。 そういうのあったから今のあんたなんでしょ。
いまじゃ、モテモテじゃん。
「お待ちどうさまでした、ハンバーグステーキとライスでございます。
えっ、お客様、どうかされました?」
「あ、ありがとう。
こっちの人? いつものことなんで、ほっといて大丈夫です」
ひゃ~、待ってました。
美味しそう、では早速。
”ぱく”
うん、美味しい、幸せだなぁ~。
この牛肉の味、最高。
「・・・結局、料金払うときの”よろしくねって”それ以外
口きかなかったじゃねぇ~か」
「まだ言ってたの?
仕方ないな、はい」
”ぱく”
「うぐ、おま、なにを」
「どう?、美味しい?」
「う、うまいが・・・」
「よかった、美味しいね」
「いやお前、それ一度、口に入れたフォークじゃ・・・」
「な、なに? もうひと口ほしいの?
仕方ないわね、ほれ」
「いや、ちげって」
”ぱく”
「うぐ」
「ん、美味しくないの?」
「・・・・・とても美味しいです」
「うん」
なに、こいつ赤くなって下向いてんの。
ん?
・・・はっ、やっちまった。
しまった、つい、とうちゃんのときのノリで。
ど、どうしょ、よ、よく考えたら間接キスじゃない。
気にしたら動悸が、お、落ち着かなくっちゃね。
たかが間接キスぐらいで。
そうだ、ド、ドリンクをとってこよ。
”がた”
”がた”
「へぇ?」
「はっ」
「あ、あのドリンクとってこようかな~て」
「お、おう、偶然だな、俺もだ。
ミルクティーでよかったか」
「えっ、うん。
あ、ありがと」
「おう」
ふぅ、い、今のうち、なんとかしなくては。
あ、そうだ。
”ガサガサ”
「ほれ、ここに置いておくぞ」
「うん、ありがと」
「何、お前、勉強してんのか?」
「明日から期末考査なんだもん、当たり前でしょ」
「そうか、気にせず続けてくれ」
「うん」
ふぅ、まずは何とかごまかせたかな。
”がつがつ”
ん、美味しそうに食べるね。
なんか見てるだけで幸せ。
わたしの料理もこんな風に食べてくれたらなぁ~
『どう?、美味しい?』
『あぁ、美佳の作ってくれたものは、何でも美味しいぞ」
『え~、何でもってうれしい。
で、でも一番何が美味しかった?」
『それは、美佳だ』
いや~、わたし食べられちゃうの。
ど、どうしょう。
えへ、えへへへへ。
「お、おい、大丈夫か」
「へぇ?」
「いや、なんか急に笑い出したから。
問題、そんなに難しいのか?」
「はっ、そ、そうなの。
ちょっと難しくて」
「お前ほんとに頑張ってんのな」
「あったりまでしょ。
総武高校生徒会の歴史の中で、追試を受けた役員はいまだかって
いないんだから。」
「そうか。
ドリンクバーお代わり持ってくるか?」
「あ、うん。
ん~、次は紅茶お願いしていい?」
「おう、わかった」
やさしいね、比企谷君。
だから、わたし勘違いしちゃうんだよ。
比企谷君は基本やさしいんだ、自分以外には。
・・・さびしい。
あと何分、こうやっていられんだろう。
もう比企谷君、食べ終わってるし。
大分お客さん減ったけど、あんまり長くいたらお店の人にも
迷惑だよね。
・・・・・でも、もう少し、少しだけ。
「ほれ、ここ置いておく。
もうできたのか、そのプリント?」
「あ、ありがとう。
あ、これね、稲村君が作ってくれた数学の期末考査予想問題。
比企谷君、答え合わせしてみて」
「おい、俺に数学を聞くな」
”ガサガサ”
「わかってるって。
ほら、これ回答。
ね、採点してみて」
「いいのか」
「うん。
結果待ってるのって、ドキドキしてなんかいいじゃん」
比企谷君、それ読むだけでも結構ヒントになるよ。
付き合わせてごめんね、すこしでも役に立つかな。
「おっ・・・おう、これは・・・・ほう」
「な、なに? どうなのよ」
「満点だ」
「やったー、へへへ」
「お前すごいな、この問題全部解けたのか。
この調子だと、ほかの教科とかも結構いけるんじゃないか」
「まかせなさ・・・・、あ゛~」
「ど、どうした?」
「ほかの教科、勉強すんの忘れてた!」
「はぁ?」
「ひ、比企谷君、国語どこでるの?
ね、ね、どこがでる?」
「いや、俺は基本ヤマなんてはらないぞ。
毎日コツコツとだな 」
「いや~、そんなことはいいから、どこ、どこでそう。
はよ、教えて」
「・・・・・ヤマはずれてもしらんぞ」
・
・
・
「ありがとうございました」
「あ~美味しかった。
余は満足じゃ。」
「いや、おまえ何時代の人?
まあ、なんだ、
もう暗いし、送ってくわ」
どうしょうかな。
わたしのアパートって結構あれだし、見られたらちょっと恥ずかしい。
だって、比企谷君や結衣ちゃん家と比べられると。
・・・で、でもさ。
「うん、ありがと。
お願いします」
やっぱ、もう少し一緒にいたいから。
・
・
・
「あの、あのさ。
うちここなんだ、ぼろいでしょ。
はは、幻滅したよね」
「はぁ?
何で幻滅すんだ」
「いや、だってぼろいし、アパートだし。
比企谷君の家なんかと比べるとね」
「なんか関係あるのか?
あのな、お前、友達選ぶのに家で選ぶのか?」
「うううん、そんなことしない。
まぁ、友達少ないけど」
「お前さ、おとうさ・・・とうちゃんのこと大好きなんだろう」
「うん、大好きだよ。
こんなわたしの我儘聞いてくれたり、めっちゃやさしいし。
それにここまで育ててくれたんだもん」
「だろ。
そんなお前ととうちゃんが暮らしている場所だ。
そこには何にも替えられない価値があるんじゃないのか?
自分でその価値を落とすようなことは言うもんじゃねぇと思うが」
「うん、比企谷君ありがとう。
・・・ごめんなさい」
「だけど、やっぱりぼろだな。
はっ、もしかしてトイレとか共同なのか?」
て、てめぇ、
”ベシ”
「いてて。
いや冗談だ、冗談」
「ふん。
・・・あ、あのさ、ちょっとよってく」
「い、いや、それはやめとく」
そ、そだよね。
こんなぼろや入るの嫌だよね。
ごめんごめん。
「あんな、また、こんど明るいうちに来た時によせてもらう。
まぁ、今度があればだが」
あっ、そうだ、もう九時すぎてるんだった。
こんな時間に誘っちゃった。
「・・・・うん、また今度ね」
「おう」
あ~あ、行っちゃった。
また明日ね。
・・・ん、なんかまた忘れてるような。
最近多いんだよ。
え~と、あ、スーパー忘れた。
とうちゃん、明日も冷凍食品ね・・・ごめん。
ーーーーーーーー
「ふぁぁ~」
まだ、期末考査の疲れが取れないよ。
昨日、あんだけ熟睡したのに。
よりによって、今日の午後一の授業は数学だよ。
眠らないように気をつけよ。
”ガラガラ”
「起立、礼、着席。」
げ、今日も入生田先生、機嫌悪そうな顔してる。
いや、今日もじゃなくて、期限のよさそうな顔みたことないよ。
「三ヶ木、授業終わったら職員室に来い」
「は、はい!」
え、なに、もしかして声でてた?
また説教かな。
・
・
・
はぁ、なに怒られんだろう。
追試かな、やっぱりそれしかないよね。
気が重いな。
”ガラガラ”
「失礼します。 入生田先生、何か御用でしょうか?」
「三ヶ木、まだ浮ついているようだな」
「あ、あのやっぱり追試ですか?」
「ほら、期末テストの結果だ」
「うへぇ、す、すみません。
これでも一生懸命・・・ん? 8、5 え~ 85点!
こ、こんな点数採ったことないよ、やった!」
「いや、零点だ」
「へ、い、いや、ほら、ここに85って。
へ? もしかして0.5点?」
”ベンベン”
「ここ」
「ん? あ゛~、なまえ・・・・ない。
れ、零点だ~」
や、やっちまった。
うぇ~ん、あの苦労が。
それに稲村君、ごめん。
「ほれ、さっさと名前書け、できるだけ小さい字でな」
「せ、先生」
「最近老眼でな、小さい字が見えんもんでな。
・・・ よく頑張ったな、三ヶ木。
今回だけは努力を認めてやる、今回だけだぞ」
「は、はい。
ありがとうございます」
「おう、気を付けて帰れよ」
よ、よかった、追試免れたよ。
しかも、85点。
それに、入生田先生の笑顔、初めて見た。
なんか、ちょ~ラッキーな感じ。
”ガラガラ”
ん、おっと平塚先生。
「ん、おう、三ヶ木、ちょうどよかった。
今いいかね」
「は、はい、平塚先生」
「三ヶ木、明日の火曜日、放課後は時間はあいてるか?」
「え~と、生徒会はなかったと思いますから大丈夫です」
「そうか、じゃ火曜日に追試だ」
「はい。
・・・・・・え゛ー」
総武高校 生徒会役員 追試第一号 三ヶ木美佳。
生徒会の歴史にわたしの名が。
ーーーーーーーー
う、ううう、眠たい。
昨日は、全然眠れなかったよ。
「やっはろー、美佳っち」
「あぁ結衣ちゃん、おはよ」
「・・・」
「や、やっはろーさんです」
「うん、やっはろー。
どしたん、すごっく眠たそうだね」
「たはは、だって今日追試なんだもん。
ん、結衣ちゃん、いつものお団子は?」
「えっ、やっぱりわかる?
わかるよね」
「うん。
でもこっちもかわいいかな」
いいなぁ、ほんと、なにしてもかわいい。
このまま抱き着いてもいい?
「へぇ? そ、そう。
ありがとう。
あのね、今日の朝忙しかったから時間なくって」
「も、もしかして、結衣ちゃんも追試とか?」
「うううん。
あたし追試なかったよ」
・
・
・
「お、終わった。
先生、ど、どうでしょ」
「まぁ、大丈夫だ。
君の場合、今までの成績から問題ないだろう。
これは、まぁいってみれば建前みたいなものだ。
それに今日は・・・・
も、もう遅くなったから、送っていこう」
「あ、ありがとうございます」
「そうだ、ついでなんだが飯はどうだ?
新しい、ラーメン屋を見つけたのでな。
是非行かないか、今日なら私が奢ってやろう」
「え、マジ? いいですよ」
「そうか、それでは校門で待っててくれたまえ」
「は~い」
・
・
・
「先生、ごちそうさまでした」
「うむ、それはそうと、君のお父さんはもう帰ってくるかね」
「いえ、たぶん今日も残業かと。
はやく帰れる時は必ずメールあるから」
「そうか」
「え、もしかして追試のことですか?」
「いや、違う。
君の将来のことでな」
「わたしの将来? それって進学のことですか。
それでしたら、このまえ言ったようにもう決めてますから」
「それは、君のお父さんもご存じなのかね?」
「・・・」
「そうか。
そうであればだな、 」
「もう決めたんです。
ですから、余計ななことはしないでください!」
「三ヶ木、まだ時間は十分ある。
一度、お父さんと話をしたまえ」
「・・・」
「それではな」
”ブロロン”
相談・・・できるわけないじゃん。
これ以上、迷惑かけられない。
大学なんて、大学なんて、うちにそんなお金ないよ。
なんも知らないくせに。
はぁ、むかついた!
今日はもう寝よう。
とうちゃんの晩ご飯なし。
・・・・・・そんなわけいかないよね。
”スタスタスタ”
ん、ポストになんか紙袋が。
あっ、これって売れ残り”限定義理チョコ詰め合わせセット”
って、今日来たんだ比企谷君。
ん、メモ?
『三ヶ木へ。
義理チョコありがとな。
これは義理のお返した。
他に意味はないから。
比企谷』
あ、そうか、今日ホワイトデーだったんだ。
は、も、もしかして、だから今日、平塚先生・・・・
まぁ、お互い、さみしいからね。
”ブ~、ブ~”
ん、結衣ちゃんからライン?
「やっはろー!
美佳っち、どう? 似合うかな~」
えっ、あ、これ、この写真ってあんときの帽子。
そっか、だから結衣ちゃん今日お団子してなかったんだ。
ちゃんと比企谷君にもらえたんだね。
・・・よ、よかったね。
・
・
・
”ブ~、ブ~”
「お、おう、どうした?」
「あ、あのね比企谷君、義理チョコありがとう。
・・・そんでね、あの、あのさ今度の月曜日って祝日じゃん。
よかったらお出かけしない」
「しない」
「げ、即答!
なんかもう少し考えるふりでいいからしてよ」
「休日は忙しい、無理なものは無理」
「わたしさ、期末考査、85点だったんだ数学」
「おう、そりゃよかった。
じゃあな」
「ちょ、ちょっと待って。
もう、ひどいよ。
それでね、そのご褒美にさ、」
「まて。
その時点でおかしいだろう。
俺と出かけるのがご褒美って、それは罰ゲームの間違いじゃないのか」
「ち、ちがうもん。
あ、あのね、観たい映画があるんだけど、ひとりで行きにくいから。
一緒にいってくれないかなぁって。
それに、国語、赤点だったし」
「いや、それはヤマをはるのがおかしいだろう。
・・・まぁ、なんだ、何の映画だ」
「笑わないでね? 絶対だよ」
「おう」
「魔法使いプリキラーのキラキラ大作戦」
「何時だ!
何時集合だ!
なんなら今から行くか。
行くよな、さぁ準備しろ!」
「いえ、あの~、月曜日で結構です。
朝の11時に千葉駅前でお願いします」
「おう」
な、なに、プリキラ―って言った瞬間のこのテンションは。
そりゃ、結衣ちゃんから聞いてはいたけど。
まぁ、作戦成功ってとこだね。
・・・・・・・・・・・
結衣ちゃん、ごめんね。
一日、この一日だけでいいから。
わたし、裏切るね。
ーーーーーーーー
「ルンルン、ルンルンルン♬」
ど、どうかな。
このクマさんのパーカー
比企谷君、いもうと系キャラが好きなはずだから。
でも、もう少し胸元せめてみてもいいかな。
よし、完成。
「えへ♡」
あとは、上目使いで
「・・・だめかな♡」
よ、よし、これはいちころだね。
も、もしかしたら、今日はとうとう・・・・・・
「きゃ~、どうしょう」
はっ、なんか悪寒が
「げっ、とうちゃん。
いつからそこにいるの!」
「ん、お前の鼻歌が聞こえてきたからな。
今日は、すごくかわいいな。
なんだ、デートか?」
「ち、ちがうよ。
ただ、友達と映画に行くだけだよ」
「ほほう、ただの映画に行くのに、二時間の化粧って
ほほ~」
「な、なによ、べ~っだ」
「ほれ、これもってけ」
「えっ、いいよ、お小遣いまだあるから」
「いいから。
いつも家事とか頑張ってるおまえにボーナスだ」
「う、うん。
ありがと、とうちゃん」
「おう。 頑張って来いよ。
あと、あとな、美佳。
大切なことだが、ちゃんと、こんど・・・しなさい」
「へ、なに? はっきり言って。
えっと、大切、ちゃんと、こんど、しなさい?
こんどしなさい?
ん? あっ、」
”ベシ”
「あいた!
こら、おまえ親になにを 」
「貴様、親のくせして娘になってこと言うんだ。
まったく、もう。 ・・・とうちゃん、いってくるね」
”ばたん”
「いや、大切なことだから、ちゃんと今度紹介しなさいって
言っただけなのに?
はぁ、あいつがデートか・・・・
なんかさみしいもんだなぁ」
・
・
・
まったく、あのバカ親は・・・
コ、コンドしなさいって。
・・・・・・い、意識しちまうだろうが。
ふう、まだ待ち合わせまで30分はあるね。
待ち合わせだって。
へへ、彼が来るのをひたすら待つ女の子。
そ、そんで彼が来たらさ、
『遅いなぁ~、あっ、来た。
もう、お・そ・い、
ずっと待ってたんだからね。』
えへ、えへへへ、一度やりたかったんだ。
楽しみだなぁ、比企谷君どんな顔するかなぁ。
・・・・はぁ? な、なんでそこにいるの!
いや、ちょっと待って。
待ち合わせ十一時だよね。
なんでだよ~。
”ダー”
「はぁ、はぁ、はぁ。
ご、ごめんなさい、待った?」
「おう、一時間は待った」
「いや、あれ、おかしいなぁ。
だって、まだ十時半前だよ。
ほら、駅の時計も」
「プリキラ―の待ち合わせは、二時間前集合が当たり前だ。
そんなもの常識だ」
「え、ほんと?
ご、ごめんなさい」
「おう、わかればいい。
それじゃいくぞ、時間がもったいない」
ほんとかな、二時間前集合って??
知らないことがいっぱいだね。
って、おい、早い、歩くの早いよ。
「比企谷君、ちょ、ちょっと待って」
「はやく来い」
「はぁ、はぁ、うん」
”ぎゅ”
「おま、なにを」
「だって、歩くの早いんだもん」
まったく、こいつは、そんなにプリキラ―が観たいのかよ。
でも、手つないじゃった。
「へへ」
「な、なんだ」
「うううん」
・
・
・
「あ、比企谷君、チケット売り場こっちだよ」
「ほれ、昨日買っておいた」
「え、映画のチケット、前日に買えるの?
じゃあ、お金払うね」
「まぁ、なんだ。
今日は奢っておくわ」
「へ、なんで?」
「いや、なんだ、小町がな」
「え、小町ちゃん?
そ、そう。 じゃあ、先行ってて。
わたし、飲み物とかポップコーンとか買ってくる」
「・・・・・・」
「ん? あ、あの~、比企谷君。
手、離してもいいよ。
もう映画館入ったし」
「いや、その、なんだ。
俺一人だと通報されかねない」
う、た、確かに。
へへ、これはラッキー。
「じゃあ、一緒にいこ」
・
・
・
「おい、三ヶ木、これから映画終わるまで一切話しかけるな。
わかったな」
「はいはい、わかりました」
まったく、所詮子供だましよね。
第一、魔法なんて、へっ、非現実的な。
比企谷君もまだまだお子ちゃまね。
・
・
・
「うえ~ん、よがった、よかったよ~」
「おまえ、ガン泣きじゃね~か。
ほれハンカチ」
「うん、ありがと。
だって、だってミラちゃんが・・・」
「はぁ、まったく。
まぁ、俺もすこし半泣きだが」
「それ、キモイから」
「・・・・・・」
・
・
・
”スタスタスタ”
「あ~、面白かった」
「お前、立ち直るの早いな」
”ぐう~”
や、やば。 こんな時に。
「ひ、比企谷君、お腹すいたの?」
「いや、今のはお前の」
「ひど、わ、わたしのお腹の音だといいうの」
”ぐう~”
「お前のだな」
「・・・・・・はい、わたしのです。
あ、あのお昼ご飯にしません?」
「まったく、サイゼでいいか」
「おう。
今日はわたしもミラノ風ドリアにしょっと」
・
・
・
「は、満腹満腹。」
「おう、それじゃな。
今日はご苦労さん」
”ぎゅ”
「え?」
「比企谷君、どこ行くの」
「お前服引っ張るな。
いや、映画も観たし、家に帰るんだが」
「スケート行こ」
「はぁ? 断る、断じて断る!
こんな寒い時期に、そんなさらに寒いとこ行くやつの気がしれん」
”がさがさ”
へへへ、そういうと思ったもん。
「じゃじゃ~ん。
映画館限定、プリキラ―フィギュア」
「おお、お前、それいつの間に」
「ふふ~ん。
ちょっとお花を摘みに行ったときに」
「へ、お前、映画館を抜けて花壇に行ってたのか?」
「トイレだよ、トイレ。
まったくわかりなさい。
まぁ、それはそれとして。
スケート行きたいなぁ~
あ、もしスケート行けたらこのフィギュアもういらないかな」
「ぐ、本当か、本当だな」
「えっ、う、うん」
「ほれ行くぞ!
なにしてる。さっさと行くぞ」
「いや、だからちょっと待ってって」
”ぎゅ”
「へ、手?」
「ほれ、行くぞ」
「う、うん」
・
・
・
「わたしね、子供のころ、スケート結構得意だったのよ」
「そ、そうか」
「あ~、疑ってるでしょ?
まぁ、見てなさい。
それ!」
”ずで~ん”
「あいた。
お、おっかしいな。
もい一度!」
”ずで~ん”
「得意じゃね~じゃねえか」
「あれ、でも小学校のときは、めっちゃうまかったんだよ。
まぁ、スケートなんてそれ以来だけど」
「小学校の頃と今じゃ、いろいろ違うだろ。
ほら、た、体形とか」
「へ? こ、このすけべ。」
”ずで~ん”
「おい、氷割れるぞ」
「ひっど!
なによ、えい」
「うお、ばっかやめろ、腕を引っ張るな」
”ずで~ん”
「比企谷君、氷割れちゃうよ」
「お、お前なぁ~」
「ごめんごめん。
はい、手」
”チラッ”
「お、おまえ 胸もと ぶ、ブラが」
「ん、どうしたの?」
「いや、な、なんでもない。」
「そんなに前かがみだと、また転ぶよ」
「いや、ちょ、ちょっとな。
え、あ、おわ~」
「いや、そんなにひっぱらないで~」
”ずで~ん”
「あいた」
「あたた、・・・えへへ」
「まぁなんだ、大丈夫か?」
「うん」
・
・
・
「ほら、比企谷君手を出して。
わたしが引いてってあげる」
「おう」
”スィ~”
「お前、本当にスケートうまかったんだな」
「うん、やっと思い出してきたかな」
「うへ、ち、ちょっと早いって。
真ん中行くのやめてくれ~」
「えへへへ」
・
・
・
「うはぁ、つ、疲れた。
なんか足首いたくなってきた」
「うん、それじゃ、そこで待ってて。
あの、もう一周だけいい?」
「おう、行ってこい」
「うん♬」
へへ、やっぱりスケートって好きだな。
この風を切って滑る感じ。
いえ~い、サイコー。
「へぇ~、うまいな。
あいつ、なんか妖精みたいだ。
なんかいつもと違ってすげぇ笑顔で。
・・・あいつ、あんな顔できるんだ」
・
・
・
”スタスタスタ”
あぁ、もう家ついちゃうね。
シンデレラじゃないけど、もうすぐ、魔法消えちゃうね。
なんで楽しい時間って、こんなに過ぎるのが早いんだろう。
ううう、つ、辛いよ。
時間、止まって。
お願い、他には何もいらないから。
お願い、お願いだよ神様。
「おう、今日はまぁなんだ、いろいろ楽しかった。
正直、こんなに楽しかったのは久しぶりだ」
「うん、わたしも」
「明日はきっと体中、筋肉痛だわ」
「・・・」
「ん、どうした?」
「あ、あのね。
比企谷君にご報告があります。
・・・・・・わたし、今日、17歳になりました」
「な、お前、今日誕生日だったのか。
すまん、なにも準備してね~わ」
「うううん、いっぱいもらったよ。
今日すっごく楽しかった」
「そ、そうか、それならいいが」
「あのね、比企谷君。
ちょっと、大きい声で言えないから耳かして」
「ん? お、おう、ほれ」
「ありがと」
”ちゅ”
「お、おま、な、なにを」
「えへへ、お礼だよ」
”てってってっ”
「じゃあね。
あっ、比企谷君、結衣ちゃんをよろしくね。
泣かしたら、わたしが承知しないからね」
「お、おい、三ヶ木」
”ガチャ”
「バイバイ」
「お、おう、じゃあな」
”バタン”
・・・・・じゃあねっか。
ううう。
もう、魔法は終わり。
わたしの魔法は解けちゃった。
さぁ、明日から頑張らなくちゃ。
がんばらなぐじゃ・・・頑張れ、頑張れってわたし。
決めたでしょ、17歳になったらもう泣かないって。
よ、よし。 もう泣かないんだから。
「とうちゃん、ただいま」
あれ? とうちゃん、どうしたのかな?
電気もつけないで。
「と、とうちゃん?」
な、なに? テレビの前で正座して何観てんの?
げ、げぇ~、それは、うっそ~
『以上、今日はあくりんスケート場から、お天気お伝えしました。
スタジオさんに戻します』
『いや、あの後ろのカップル、なかなかほのぼのしてましたね』
『え、すごくいい感じでしたね。
なんかうらやましいです』
『それでは、また明日お会いしましょう』
「・・・と、とうちゃん。
こ、これって ほ、放送されてたの?」
「お、お帰り。
この~、やるな美佳。
へ~、これが美佳の彼氏か。
ほれ、もう一回観るか?
ちゃんと録画、間に合ったぞ」
う、うっそ~
まずい、まずい。
絶対、他にも誰か見てるよね。
ど、どうしょう、なんてことをこのテレビ局は。
「な、なぁ美佳」
げ、会長からメールはいってた。
『美佳先輩、ちょっとお話があるので、必ず連絡ください。
・・・絶対ですよ』
「なぁ、美佳って」
あ゛、結衣ちゃんからも。
『美佳っち、ちょっと話があるかな~
明日、お昼休みいい?』
い、いつもの”やっはろー”がない。
こ、こわいよ~
「なぁ、美佳」
「なに、今忙しいんだけど。」
「大事なことだから、今度ちゃんと 」
「まだいうか、このスケベ親父!」
”ベシ”
「いや、紹介してって ぐふ」
”バタン”
最後まで読んでくださり、ありがとうございます。
今回、いつも以上に長くなってしまいました。
八幡との密会(?)、バレてしまいました。
次話、どうしょうかなぁ。
ちょっと調子に乗りすぎて予定よりはやく・・・
次話もよろしくお願いします。
※”ちゅ”は、まだ、ほっぺです。
ほっぺでお願いします。
ごめんなさい。
春分の日、忘れてました。
日曜日を月曜日にお願いします。
申し訳ありません。