似て非なるもの   作:裏方さん

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更新遅くなりすみません。

花火大会編の始まりです。
今回もセリフ多めです。(ほとんどセリフっす)

読みにくいかもしれませんが、文才のなさは自覚してますので、
ご容赦ください。

それでは、お願いします。




夏まっさかり -花火大会 前編-

”ペコ”

 

「先生、この馬鹿娘が大変ご迷惑をお掛けいたしすみません。

 

 ほら、この馬鹿、お前も謝れ。」

 

”ゴン”

 

「いた! せ、先生すみませんでした。」

 

「あ、お父さん、違うんです。

 

 そのことで謝らないといけないのは、私達教師のほうです。

 

 私達の力のなさで美佳さんに辛い思いをさせてしまいました。

 

 すみません。」

 

”ペコ”

 

「あ、先生、頭を上げてください。

 

 どんな理由であれ、この馬鹿が学校の名を汚したのは事実ですから。」

 

「子供達を守るためなら、学校の名なんてごみ箱に捨てても構わないと私は思っています。

 

 今日、お忙しい中おいで頂いたのは、その方法なんです。

 

 美佳さんは、ご自身のことを軽く見過ぎています。

 

 簡単に自分を傷つける方法を選んでしまう。

 

 今まではなんとかなりましたが、これから美佳さんも社会に出て行きます。

 

 学校とは違って社会で同じような方法を選ぶことによって、いずれ取り返しのつかないことに

 

 なるのではないかと。

 

 美佳さんは私にとっても大事なかわいい生徒です。

 

 そんな目には遭ってほしくない。

 

 少しでも戒めたいと思い、一番の効果のあるお父さんに来て頂いたんです。」

 

「ありがとうございます先生。 こんな馬鹿のことをそこまで言っていただいて。」

 

「バカバカ言うなし。」

 

”ゴン”

 

「いた~い!」

 

「この馬鹿、先生のおっしゃって下さってることわかってるのか。」

 

「だって、あの場合は時間もなかったからああするしか。」

 

”ゴン”

 

「いた~、そんなに叩くと頭割れちゃうじゃん。」

 

「すみません、まったくこの馬鹿は。

 

 先生、帰ってからもきつく叱っておきます。」

 

「よろしくお願いします、お父さん。

 

 よし、それじゃ、三ヶ木、君はもう帰っていいぞ。」

 

「は~い。 とうちゃん帰るよ。」

 

「いや三ヶ木、お父さんとはこれから別の話があるんだ。」

 

「へ、とうちゃんと二人で?」

 

「そうだ。」

 

「と、とうちゃん、いつも間に先生とそんな関係に。

 

 広川先生がかわいそう。」

 

「ばかもの!」

 

”ゴン”

 

「いた! とうちゃん痛いよ。 もうほんと馬鹿になっちゃうからね。」

 

「ほら、さっさと帰れ。」

 

「だってとうちゃん、今朝、平塚先生と会えるって嬉しそうだったじゃん。」

 

「ば、な、なにを言ってんだ。」

 

「浮気駄目だからね。 かあちゃん見てるからね。」

 

「もういいから帰れ。」

 

「もう、ほんとだからね。 平塚先生綺麗だから心配だよ。」

 

”ガラガラ”

 

「まったく、すみません先生。

 

 へ、せ、先生なぜパーティションのうしろに?」

 

「は、い、いえなんとなく。 

 

 ゴホン、それではお父さん、本題を。」

 

「シー」

 

”ガラガラ”

 

「ひゃっ」

 

「さっさと帰れ、この馬鹿娘。」

 

「ちぇっ」

 

     ・

     ・

     ・

 

はぁ~あ、とうちゃん何話してるんだろ。

なんだよ、どうせわたしのことなんだから、一緒に聞かせてくれたっていいじゃん。

 

え、あ、ここ、無意識に来ちゃった。

誰もいないか、そうだよね、今日夏休みだもん。

 

・・・・・・・・そっか、もうわたしこの部屋に入れないんだ。

 

一年の時、めぐねぇの生徒会に入ってからずっとここに来て、いろんな思い出がいっぱい

詰まってて。

でも、もうこの部屋に入れないんだ。

 

ごめんね、めぐねぇ。

生徒会、守っていくって約束守れなかった。

期待にこたえたかったのに。

へへ、呆れられるかなぁ。

 

”ガヤガヤ”

 

「だから、いいじゃないですか~」

 

「だめ。」

 

へ? あ、あの声、やば。

ど、どっか隠れないと。

 

「ねぇ、稲村先輩、行きましょうよ。」

 

「だめだ。

 

 さっきから言ってるだろ、二学期始まったらすぐ文化祭の実行委員会を参集しないと

 

 いけないんだ。

 

 だからその準備で忙しいんだ。

 

 それに・・・・・・・・紅茶の淹れ方も勉強しなけりゃならない。」

 

「へ、紅茶って? なんで稲村先輩が?」

 

「あ、いや、何でもない。」

 

「わかりました。 

 

 それじゃ、わたしもお手伝いしますから、ね、プールいきましょうよ。

 

 ほら、今ならこのかわいい女子高生のドッキリ水着見放題ですよ。」

 

「い、行こうかなぁ・・・・・あ、いいや、行かない。」

 

「な、なんで。 今どこ見たんですか! 

 

 わ、わたし着やせするほうなんです。

 

 脱いだらボンボンって、あ、稲村先輩、待ってください。」

 

”スタ、スタ、スタ”

 

舞ちゃん、そうなんだ。

そういえば水着選んでもらった時も。

そうか、うん、舞ちゃん頑張れ。

 

紅茶の淹れ方か、やっぱりわたしの居場所ないんだね。

 

・・・帰ろ。

 

 

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

 

 

「今日はお忙しい中、お時間を頂きありがとうございました。」

 

「いや、こちらこそ。

 

 期待してますよ。 ぜひ、我が社を受けて下さい。

 

 お待ちしてます。」

 

「あ、ありがとうございます。

 

 それでは失礼いたします。」

 

”ガチャ”

 

あ~、緊張した。

陽乃さん会社説明会って言ったのに、なんでわたし一人だけなの。

それに出てこられたの役員さんばっかりだし。

 

頭ん中パニックで質問とかとんじゃったよ。

あと、ちゃんと答えられたかな。

 

”ブル”

 

ほっとしたら、トイレしたくなっちゃった。

えっと、トイレトイレ、トイレどこだ?

 

     ・

 

う~、すっきりした。

さて帰ろっと。

 

「しかし、ジミな子でしたね。」

 

「ええ。」

 

え、あ、この声さっきの役員さん?

げ、あんまりいい印象なかったのかなぁ。

 

「でもなんで陽乃お嬢さまは、あんな子を我が社に入れたがるんでしょうね。」

 

「またいつもの気まぐれじゃないか。」

 

「まったく、あの我儘には困ったもんですな。」

 

「それももう少しで。」

 

「はは、専務、よろしくお願いしますよ。

 

 会社を正常な状態にするために、やっぱり我々が実権を握らないと。

 

 女なんかに任せておけませんよ。」

 

「そうですな。」

 

「まぁ、会社の実権を握った後、あのお嬢さんと専務のご子息がご結婚なされれば。」

 

「ですが、陽乃お嬢さんは手ごわいですぞ。」

 

「まぁ、陽乃お嬢さんが駄目なら、もう一人いますから。

 

 あの世間知らずの妹のほうなら軽いもんでしょう。」

 

「そうそう。」

 

”スタ、スタ、スタ”

 

な、なに、今のなに?

会社の実権? 陽乃さんと結婚って。

世間知らず妹って雪乃さんのこと?

 

「あれがあいつらの本性だよ。」

 

「え、あ、陽乃さん。」

 

「表面はお母さんに従順なふりをして、本心は会社の実権を握ろうと暗躍してるんだよね。

 

 まぁ、私にはバレバレだけど。

 

 会社の実権を握った後は、私とあいつの息子を無理矢理結婚させて名実ともに

 

 自分の会社にする。

 

 それがあいつらの狙いなんだ。」

 

「陽乃さん。」

 

「あいつらも私が薄々気付いてるんじゃないかって思ってる節があってね。

 

 雪乃ちゃんまで狙いだしたってとこ。

 

 だから、わたしは雪乃ちゃんにはもっと強くなってもらいたいんだけど。

 

 雪乃ちゃんには嫌われちゃって、うまくいかないね。」

 

「陽乃さん、やっぱりお姉ちゃんですね。」

 

「まぁ、お姉ちゃんとしては、さっさと比企谷君とできちゃってほしいんだけどね。

 

 そうすれば、将来、比企谷君もこっちの陣営じゃん。

 

 私はね、三ヶ木ちゃんと比企谷君、二人を手に入れたい。

 

 で、どう? 今日ここに来たってことはもう決心したのかなぁ?」

 

「あ、・・・・・・う、うん。 わたしには就職以外に他の道ないから。」

 

「そう。 

 

 三ヶ木ちゃん、私は去年の文化祭から、そうあのテレビ局の時からずっと

 

 君を見てきたんだよ。

 

 私は認めているんだ、君のこと。」

 

「陽乃さん。」

 

「入社してくれるの期待してるよ。

 

 じゃ、また今度ね。

 

 今度はゆっくり話したいな。

 

 あ、ねぇ、ほらお盆にめぐり帰ってくるでしょ、一緒に飲みにいかない?」

 

「わたしは未成年です。」

 

「え~、いいじゃん。 前科あるし。」

 

「う、だ、だってあれは・・・・・・ま、まぁ、めぐねぇと一緒なら。」

 

「うん、約束だよ。 じゃあね。」

 

「はい。」

 

     ・

     ・

     ・

 

”スタ、スタ、スタ”

 

陽乃さん、やっぱりあの時力貸してくれてたんだ。

おかしいと思ったんだ。

いくら土下座してても、そんなことぐらいで宣伝させてくれないよね、ふつう。

今度はわたしが陽乃さんの力に・・・・・ならないとだめだよね。

 

「右、右だよ。」

 

「あ、もっと前。」

 

え? あ、この保育所、スイカ割りしてるんだ。

へへ、かわいいな。 

あ、もうちょっと前だよ。

 

「そこだよ、力いっぱいね。」

 

「えい!」

 

やった! あ、でも割れないね。 へへ、頑張れ。

いいなぁ・・・・・・・・なりたかったなぁ~、保母さん。

 

 

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

 

 

「ふんふんふんふ~ん♬」

 

出来た!

へへ、どれどれ味見。

う~ん美味しい、我ながら完璧だ。

広川先生にもらったレシピ通り作ったからね。

それにちょっぴりわたしの想いを込めて。

 

だって林間学校の時、ちょっと怒らせちゃったもん。

 

これ食べて仲直りしてくれるかなぁ。

大丈夫だよね。

だって比企谷君、甘い物大好きだもん。

絶対美味しいって言ってくれる自信あるから。

それでちゃんと仲直りできたら、一緒に花火大会にいって。

そして、そしたらもしかして花火大会の後、二人であんなことやこんなことなんて。

ぐふふふ。

 

よ、よしお出かけの準備しよ。

なに着ていこうかな~

 

     ・

 

へへ、このプリッツスカートにしよっと。

でもちょっと短いかなぁ。

まぁいいか、プレゼント持っていくだけだし。

でも念のため、ペチパン、ペチパンっと。

 

あ、もうこんな時間、先に電話しておこうっと。

 

”ブ~、ブ~”

 

「なんだ、三ヶ木。」

 

「え、あ、ごめん、今まずかった?」

 

「今忙しい。 切るぞ。」

 

「あ、ちょっとまって。

 

 あのね、今日さ、後から家にいっていいかなぁ。

 

 渡したいものがあるんだけど。」

 

「断る!」

 

「え、な、即答! なんでさ?

 

 あのさ、玄関だけでいいだけど、だめ?」

 

「何人たりとも俺の聖域に立ち入ることを拒む。」

 

「だって、結衣ちゃんや雪ノ下さん、比企谷君の部屋まで行ったって言ったじゃん。

 

 やっぱり二人は特別だからいいの?」

 

「あれはアクシデントだ。」

 

「でも、別の時も結衣ちゃん比企谷君の家に・・・・」

 

「切るぞ、とにかく断る。」

 

「あ、まって。」

 

”プー、プー”

 

き、切りやがった、あの野郎。

そうかよ、そっちがその気なら、こっちにも考えあるからな。

 

     ・

     ・

     ・

 

つ、着いた、家きちゃった。

えっとドアホン、ドアホンっと。

ん~、緊張する。 やっぱり帰ろうかなぁ。

でも、せ、折角ここまで来たんだから。

 

”ピンポ~ン”

 

「は~い。」

 

”ガチャ”

 

「あ、美佳さん。 お待ちしてました。

 

 さ、ささ、どうぞどうぞ。」

 

「あ、ありがと、小町ちゃん。」

 

ふふふ、作戦成功。

甘いよ比企谷君。 ここは君の聖域ではない。

この聖域の食物連鎖の頂点はこの小町ちゃんなのだ。

ここでは小町ちゃんが絶対であり、君はただの住人でしかないことを思い知るのだ。

ふはははは!

 

「え、美佳さん、どうかしました?」

 

「あ、いえ、なんでも。 失礼します。」

 

     ・

 

「さ、こっちですよ。」

 

「あ、いいの小町ちゃん、すぐ帰るから。

 

 あのね、これ比企谷君に渡してもらえるかなぁ。」

 

「まぁまぁ、折角いらっしゃったんですから、上がってください。」

 

 ”ぎゅ”

 

「あ、こ、小町ちゃん。」

 

「さ、こっちですよ。 入ってください。」

 

「あ、はい。」

 

”トントントン”

 

え、比企谷君家って二階にリビングあるの?

小町ちゃんの部屋行くのかなぁ?

 

”ガチャ”

 

失礼しま~す。

小町ちゃんの部屋にしてはかわいくない。

こ、ここってもしかして。

 

「あ、あの~、こ、この部屋って。」

 

「あ、はい、兄の部屋ですよ。

 

 さ、どこでもいいから座っててください。

 

 いま飲み物もってきますね。」

 

「あ、うん。ありがとう。」

 

こ、ここが比企谷君の部屋。

うわ~、部屋入っちゃった。

 

”きょろきょろ”

 

比企谷君、結構部屋片付けてるんだ。

わたしの部屋と大違い。

あ、あれってアロマランプ、へへちゃんと使てくれてるんだね。

なんかうれしい。

それと、へぇ~、本がいっぱいだ。

夏目漱石に、芥川龍之介、石川啄木、すっご、有名どころ揃ってるや。

ちょっとした図書館並みだね。すごいや。

わたしの家なんて、マンガ本しかないもんな。

 

ん、なんでここの棚だけ作者がバラバラになってるんだ?

あ、これ上下逆だよ。

どれどれ。

よいしょと。

 

”ばさ”

 

「あっ!」

 

こ、これ、中身とカバーが違うじゃん。

なにこれ、うわーエッチ本だ。

むふ、むふ、むふふふふ。

 

すご。

 

林間学校の時といい、男の子はみんな一緒だね。

そっか、比企谷君、こんなのが好きなんだ。

わたし、もう少しロリっぽいの着ようかなぁ。

 

”ガチャ”

 

「え、美佳さん、だ、大丈夫ですか?」

 

「え?」

 

「いや、あの~鼻血が。

 

 あ、それみつけちゃいました?」

 

「ご、ごめんなさい。 え? あ、小町ちゃん知ってたの?」

 

「まぁ、兄も男の子ですから。」

 

「そ、そうだね。 あははは、はぁ~」

 

”カタ”

 

「はい、どうぞ。 オレンジジュースでもよかったですか?」

 

「ありがと。」

 

「で、美佳さん、プレゼントってそれケーキですか?」

 

「うん。 へへ結構うまくできたんだ。 ほら。」

 

「うわぁ、美味しそう。 ちょっと味見を。」

 

”バシ”

 

「ご、ごめん、小町ちゃん。 で、でも最初に比企谷君に食べてもらいたくて。」

 

「あまりに美味しそうだったのでごめんなさい。」

 

「うううん、ごめん手痛かった?」

 

「美佳さん、ずばり、兄のこと好きですね。」

 

「は、い、な、なに言ってんの小町ちゃん。」

 

「どうなんですか? バレンタインのチョコも結構手間かかってたじゃないですか。

 

 あれ、義理のレベルじゃないですよね。

 

 このケーキもただの友達へのものとは思えないんですけど。

 

 さ、ど、どうなんです。 白状しないと、味見しちゃいますよ。」

 

「だめ!・・・・・・・す、好きです。 わたしは比企谷君が大好き。」

 

げっ、い、言ってしまった。

だって、小町ちゃん卑怯だよ。

せっかく作ったケーキなんだもん、比企谷君に最初に食べてもらいたい。

少しだけどわたしの想いも込めてるの。

だからごめん小町ちゃん、味見はまって。

あとで、分けてもらってね。

え、な、なに小町ちゃんその顔、は! 何か企んでそう。

 

「ほほう、それはそれは。

 

 それではここで恒例の嫁度チェックです。」

 

「へ? 嫁、い、いや、まだそんなことまで。」

 

「はいはい、いいですからちょっと来てください。」

 

「う、うん。」

 

”トン、トン、トン”

 

「そうですか、兄のことが好きですか。」

 

「小町ちゃん、他の人には内緒だよ、絶対にだよ。」

 

「はいはい、でも美佳さん、兄にはたくさんの嫁候補がいるのです。」

 

「え? あ、う、うん、わかってる。」

 

「小町としてもどなたを応援するか迷っているのです。

 

 そこで嫁度チェックさせていただきます。」

 

’ガチャ”

 

「さ、この冷蔵庫にある食材で兄の誕生日の料理を作ってもらいます。

 

 時間は兄が返ってくるまでですよ。

 

 あ、調味料とか調理器具とか何でも使ってください。

 

 それではスタートです。

 

 ちなみに兄はいつも塾からまっすぐに帰ってくるので、6時前には帰ってきますよ。」

 

「え、あ、は、はい。」

 

えっとなに作ろうかなぁ。

食材はっと、うわぁいっぱい入ってる。

これで冷蔵庫冷えるのかなぁ。

うちの冷蔵庫とは大違いだ。 うちのはよく冷えるからなぁ~

は、そんなこと言ってらんない。

えっと6時に帰ってくるの?

もう、あんまり時間ないじゃん。

 

「あ、小町ちゃん、これいつ買ったの?」

 

「あ、それ今日のお昼ですよ。」

 

「そ、そう。 だったら。」

 

     ・

     ・

     ・

 

「美佳さんどんな感じ、あ、ちらし寿司ですか?」

 

「うん、誕生日だしお刺身あったから。 それとお野菜と卵焼きと。」

 

「どれどれ、この卵焼きのお味は。

 

 う~ん甘くておいしい。」

 

「うん、しょっぱいのと甘いのどっちにしようか迷ったんだけど、

 

 やっぱり甘いほうが好きかなって思って。」

 

「お、それと唐揚げですか。

 

 見た目は合格。 どれお味は。」

 

「ど、どうでしょう?」

 

「う~ん、この唐揚げ、外はサクサクで中はジュ―シー。 

 

 美味しい。」

 

「あのね、唐揚げで大事なのは温度と時間。

 

 一度にいっぱい入れると油の温度下がっちゃうから少しずつね。

 

 それで一度取り出しておいて、最後にもう一回揚げるの。」

 

「ふむふむ、勉強なります。 

 

 あ、このお野菜、捨てておきますね。」

 

「あ、だめ。 違うの、それも立派な食材だよ。

 

 それでね、野菜スープ作るの。」

 

「な、なるほど。」

 

「あとはね、このサラダ。」

 

「あ、これはだめですよ美佳さん、トマト入ってます。

 

 兄はトマト大嫌いですから。」

 

「うん、わかってる。 でもね、トマトって栄養あるでしょ。

 

 少しでも食べられるようになってくれたらなぁって思って。

 

 あのね、皮を向いて中のジュルっての取ってみたの。

 

 ほんとはジュルってしたとこにも食べてほしいんだけど。

 

 ごめん、駄目だったらわたし全部食べるから残しておいて。」

 

「いや、大丈夫です。

 

 美佳さんがそこまで手間かけてくれたんですから、無理矢理でも食べさせます。」

 

「あ、あの~、小町ちゃん、お嫁さん合格かなぁ。」

 

「それでは結果発表です。どこどこどこ。」

 

うへぇ~緊張する。

それにしても小町ちゃんかわいい。

どこどこどこってえへへ。

それ、ドラムの真似かなぁ。

 

「結果発表! 結果はモチ、嫁候補合格です。」

 

「ありがと、小町ちゃん。」

 

”ガチャ”

 

「ただいまー、お~い小町帰ったぞ。」

 

「あ、お兄ちゃん、ほら美佳さん行きますよ。」

 

”ぎゅっ”

 

え、小町ちゃん、ま、まってまだ気持ちが、気持ちの整理させて。

ひぇ~

 

”タッタッタッ”

 

「はい、美佳さん。」

 

”ドン”

 

え、あ、いや、な、なに あっ。

 

「あ、あの、おかえりなさい。」

 

「ん? おわ、お、おま、三ヶ木。 なんでお前がいるんだ。」

 

あわわ、やっぱり怒られた。

さっさと帰ればよかった。

ど、どうしょう。

 

「お兄ちゃん、ただいまは。」

 

「お、ああ、ただいま。」

 

「おかえりなさい、比企谷君。

 

 ごめんね、もうかえ 」

 

「お兄ちゃん、美佳さんは小町のお客様だよ。」

 

「小町のお客様? お前小町使ったな。」

 

「だって、電話切っちゃうんだもん。」

 

「お兄ちゃん、何か問題ある?」

 

「え、あ、いや、何でもない。」

 

「それならよろしい。 

 

 ほら、ご飯だよお兄ちゃん、さっさと荷物置いてきて。

 

 美佳さんも行きますよ。」

 

「おう。」

 

「え、あ、はい。」

 

あ、ちょっと待った。

比企谷君の部屋にプレゼント置いたままだ。

やば、急げ~

 

「ちょ、ちょっとまって比企谷君。」

 

”トントントン”

 

「な、なんだ、三ヶ木、階段駆け上がるとあぶな・・・・・

 

 お、お前。」

 

ん? なんか下から比企谷君の視線が。

はっ、そうか、今日ミニだから、へへ比企谷君意識してるんだ。

どれどれ。

さっきのお返し。

怒られて少し焦ったんだからね。

 

「何見てんの。」

 

「はぁ、いや、だってお前、先階段上がるから、その、スカート短いし。」

 

「うわ~いやらしい。 変態。」

 

「ちょ、ま、まて、これは不可抗力だ。」

 

「へへ、残念でした。 これはペチパンといって見えてもいいので~す。

 

 ほら。」

 

”ばさ”

 

「・・・・・・」

 

「え、どうしたのがっかりした?」

 

「・・・・・・白。」

 

「ん、白? いやペチパン黒だよ、目悪くなったの?

 

 ・・・・・・・はっ う、う、うそだー、いやー、み、見るなー」 

 

”ベシ、ベシ、ベシ”

 

「いたた、や、やめろ、も、もう見てないから。」

 

なんで、なんで、確か穿いてきたはずなのに。

あ、電話。 電話したから忘れたんだ。

だって断られたから。

は、はずかしい。

ほらだって思いっ切りパンツ見せて。

ど、どうしょう。 

 

「・・・・・・・」

 

「・・・・・・・あ、あの~」

 

「ご、ご馳走様でした。」

 

「お粗末様でした。」

 

「ん? 二人でなにしてるの?

 

 ほら、お兄ちゃん、美佳さんもさっさと手、洗ってくる。」

 

「わたしも晩ご飯いいの?」

 

「モチの論です。」

 

     ・

 

「お、今日はご馳走じゃないか。」

 

「美佳さんがお兄ちゃんのために作ってくれたんだよ。」

 

「・・・・・小町、お前今朝今日の晩御飯は期待してって言ってたよな。」

 

「はっ、憶えてた?」

 

「小町・・・・・・・わが妹ながら恐ろしい。」

 

「お待たせしました。 え、な、なに? どうしたの?」

 

え、な、なにこの兄妹の間に漂う緊迫感。

何があったの?

なに? 比企谷君、なんでその憐れむような眼でわたしを見てるの?

なんだろう。

 

     ・

 

「「頂きまーす。」」

 

「ん? お、おい小町、三ヶ木が使ってるの俺の箸じゃないか。」

 

「え、うそ。」

 

「あ、あちゃ、間違えちゃいました、てへ。」

 

「小町、お前確信犯だろう。」

 

「いや~何のことかなぁ~。」

 

「ひ、比企谷君、お味、どうかなぁ?」

 

「ん、おう、美味いぞ。 なんかすまんな。」

 

「え? あ、あのね、いつも一人で作ってるからさ。

 

 今日ね、小町ちゃんと一緒に作れてとっても楽しかった。

 

 あ、お父さんとお母さんの分、別に分けてあるから全部食べてもいいよ。」

 

「そ、そうか。 それならいいが。」

 

「うん、楽しかった。」

 

「すまん、お代わりもらえるか。」

 

「うん。

 

 はい、比企谷君、どうぞ。 いっぱい食べてね。」

 

「お、おう。」

 

     ・

 

「や、やっぱり無理ならいいよ。」

 

「お兄ちゃん、食べなかったらもう口きいてあげないからね。」

 

「だ、だめなのか、やっぱり食べないとダメなのか。」

 

「い、いいから、大丈夫だから、ね、また今度にしよう。」

 

「お・に・い・ちゃ・ん。」

 

「ぐ、」

 

”ぱく”

 

「ん? 食えるぞ。これなら大丈夫だ。」

 

「やっぱりこのジュルってしたとこが駄目だったんだね。

 

 あ、でも、む、無理しないで、そんなにいっぱい食べなくていいから。」

 

「おう、大丈夫だ。」

 

「うん、よかった。 あ、今度お砂糖につけた料理作ってあげるね。」

 

「おう。 でもトマトの入ってないやつを頼む。」

 

「それ砂糖しかないから。」

 

     ・

     ・

     ・

 

「ふ~、食った食った。」

 

「あ、比企谷君、あのね、お誕生日おめでと。

 

 これね、ケーキ作ってきたんだけど、もうお腹いっぱいだよね。

 

 よかったら後からでも。」

 

「お、美味そうなケーキだな。

 

 ケーキは別腹だ。 いただいていいか。」

 

「う、うん。いま切りわけるね。」

 

「小町、ちょっとコーヒー淹れてきますね。」

 

「はい、どうぞ比企谷君。

 

 でも、ほんとお腹大丈夫?」

 

”パク”

 

「お、う、美味い。」

 

「へへ、広川先生にレシピ貰ったんだ。」

 

「前から思っていたんだが、あの先生、何者なんだ。」

 

「あのね、ほんとはパティシエになりたかったんだって。

 

 資金貯めたらケーキ屋さんするって言ってたよ。」

 

”パク”

 

うん、我ながら上出来。

確かにケーキは別腹だよ。

でもちょっと食べ過ぎかなぁ。

明日からダイエットしよう。

ん?

 

「あ、比企谷君。」

 

”チョイ”

 

「ほら、口元にクリームついてたよ。」

 

「お、おう。」

 

”ぱく”

 

「お、お、お前、いまなにを。」

 

「ん?」

 

「い、いや、何でもない。」

 

「へ? あっ!」

 

「ば、馬鹿気付くんじゃない。」

 

「う、うん。」

 

「あ、あの~、お二人さん、もうそろそろコーヒーいいですか?」

 

「「はい。」」

 

げ、いつから見られてたんだ。

いやー恥ずかしい。

で、でもし、幸せ。

今日、来てよかった。

この幸せ、ずっと続きますように。

えへ。

 

「あちっ!」

 

     ・

 

さて洗い物しようかなぁ。

うんしょっと。

 

「あ、美佳さん、いいですよ。 小町がやります。」

 

「あ、うん、ありがと。」

 

ありがと小町ちゃん。

あ、忘れてた。

えっと、確かここに入れてきたはず。

う~んと、あ、あった。

 

「比企谷君、はい、これ、渡すの忘れてた。

 

 もう一つのプレゼント。」

 

「は、こ、これは、プリキラ―の映画チケットじゃないか。

 

 憶えてくれてたのか。」

 

「うん、夏休み一緒に行くって約束だったから。

 

 あ、それとこれは前売り券の特典、ミラクルスィーツ。」

 

「こ、これもくれるのか。

 

 よ、よし、三ヶ木準備しろ。

 

 今から行くぞ。」

 

「え、いや、今からは。」

 

「そっか、もう遅いからな。

 

 じゃ俺一人でいってくる。」

 

「お兄ちゃん、小町本当に縁切るよ。」

 

「は、い、いや、じょ、冗談だ。 当たり前だろ小町。

 

 あははは。」

 

「いや、お兄ちゃんマジだったから。」

 

「三ヶ木、明日空いてるだろ。

 

 いや、お前に用事があるはずがない。

 

 明日、十時に千葉駅前集合だ、いいな。」

 

「あ、あの、え~と。」

 

「嫌なのか。」

 

「うううん、いいよ。全然大丈夫。 うん、十時だね。」

 

「ううう、美佳さん、ごめんなさい。こんな兄で。

 

 お兄ちゃん、小町申し訳なくて肩身が狭いよ。」

 

「小町ちゃん、いいから。 こうなるのわかってたから。

 

 あ、ごめん。、ちょ、ちょっとおトイレかしてもらっていい?」

 

「お、おう、花摘みだな。」

 

「馬鹿。」

 

”ガタン”

 

へへ、やったー、明日比企谷君とデートだ。

うれしい、比企谷君のほうから誘ってくれた。

えへへ、明日何着ていこうかなぁ。

ふふふ~ん、デートだデート。

ルンルンルンルン♬

 

「はぁ~、全くこの馬鹿兄ちゃんは。

 

 ね、お兄ちゃん、お兄ちゃんは美佳さんのことどう思ってるの?」

 

「な、なんだいきなり。」

 

「あんな誘い方ないじゃん。

 

 ふつうだったら怒っちゃうよ。」

 

「そ、そうか。」

 

「そうだよ。

 

 今日さ、美佳さん、お兄ちゃんのために一生懸命料理作ってくれて。

 

 それにケーキや映画のチケットまで。

 

 美佳さん、お兄ちゃんのこと本当に好きだと思うよ。

 

 お兄ちゃんはどう思ってるの?」

 

「あいつは、そうだな、あいつと俺はよく似てるんだ考え方とか。

 

 俺の考えを理解して、認めてくれるのはあいつぐらいだ。

 

 多分、あいつにとっても俺はそうなんだと思う。

 

 だから一緒にいても楽だし、変な気を使わなくて済む。

 

 それになんだ、顔も俺から言えばそれなりに可愛いと思う。」

 

ふ~、落ち着いた。

顔の赤いのとれたかなぁ。

あ、もうそろそろいい時間だね。

あんまりお邪魔したら悪いや。

 

「それにな、小町、三ヶ木って割とスタイル良いんだぞ。」

 

な、なにいってんだ比企谷君。

くそ、スキー合宿の時とか林間学校の時のとか見られてるからなぁ。

ま、まぁ、スタイルはそこそこだ思うけど。

えへへへ。

なんか今日、変な日。

 

「ほほう、あ、それにほら料理も上手じゃん。

 

 小町的に嫁度高いと思うよ。」

 

「ああ、料理だけじゃないぞ。

 

 あいつは小学校のころから家事全般やってきたから、掃除、洗濯何でもこいだ。

 

 いつでも嫁にいけると思う。」

 

よ、嫁にいけるって、な、なにこの展開。

もしかして比企谷君、わたしのことお嫁さんに。

・・・うそ!

えへ、えへへへ、ど、どうしょう、入りづらいなぁ。

 

「お、お兄ちゃん、お兄ちゃんがそこまで褒めるの珍しい。

 

 じゃ、じゃあ、お兄ちゃんも美佳さんのこと。」

 

「ああ、あいつは俺にとって、とっとも大事なやつだと思う。」

 

わわわ、ひ、比企谷君。

うれしい、ありがと。

わ、わたしいつでも嫁に来るよ。

なんなら、明日でも。

よ、よし中に入って。

 

「お兄ちゃん、小町うれしいよ。

 

 だったら小町も全面的に応援するからね。

 

 そっか、お兄ちゃんがとうとう。」

 

「だがな、小町、おれはあいつと付き合わない。」

 

え、あ、あれ?

なんか聞き間違いかなぁ。

 

「お、お兄ちゃん、いまなんと。」

 

「俺は、三ヶ木と付き合わない。」

 

「お兄ちゃん!」

 

つ、付き合わない?

付き合わない、わたしとは付き合えない・・・・・・・わたし、振られたの。

振られた・・・・・・の。

振られたんだ。

 

「お兄ちゃん、な、なんで。

 

 あんなに美佳さんのこと褒めていおいて、なんでなんでなの。」

 

「お、俺はな、」

 

”ガチャ”

 

「あ、み、美佳さん。」

 

「おトイレありがとう。

 

 あ、あのね、とうちゃんから電話あって、めっちゃ腹減ったっていうからもう帰るね。」

 

「お、おう。 料理すまなかったな、美味かったぞ。」

 

「ありがと。

 

 そう言ってもらえると作った甲斐があったよ。

 

 あ、小町ちゃん、今日はありがと。」

 

”ペコ”

 

「み、美佳さん。

 

 お兄ちゃん、駅まで送ってあげて。」

 

「あ、ここでいいよ、まだ明るいし。

 

 じゃあね、バイバイ。」

 

”ガチャ”

 

「お、お兄ちゃん!」 

 

「小町、俺は三ヶ木だけじゃない。 誰とも付き合わない。」

 

「え、な、なんで。」

 

     ・

     ・

     ・

 

「まったく、お兄ちゃんはお兄ちゃんだよ。

 

 少しは変わったかと思ったのに。

 

 あのね、そんなんじゃ、これからもずっとぼっちのままだよ。

 

 はぁ~、小町いつまでたってもお嫁さんに行けないじゃん。」

 

「小町、小町はいつまでもこの家にいればいいんだぞ。」

 

「やだよ、小町はお兄ちゃんとは結婚できないんだよ。

 

 まったく。」

 

”ガチャ”

 

「ん、どこ行くんだ?」

 

「ちょっと。」

 

「ああ、花摘みか。」

 

「最低だよ、お兄ちゃん。

 

 あ、これ美佳さんのハンカチ。」

 

「はは、あいつらしいや、みかってひらがなで縫ってある、小学生か。

 

 まぁ、明日持って行ってやるか。」

 

「お兄ちゃん、お兄ちゃん美佳さんの家知ってるんでしょ。

 

 さっさと持っていきなさい。」

 

「いや、明日でいいだろう。」

 

「いいから、早く。

 

 持って行かないならもう本気で絶交だよ。

 

 二度とお兄ちゃんって呼んであげない。」

 

     ・

     ・

     ・

 

あ~あ、振られちゃった。

もう、わたしにはもう何も残ってないや。

もうなんにもない。

 

へへ、何やってんだわたし・・・・・・・ほんと馬鹿。

とうちゃんの言う通りだね。

 

う、ううううううう。

もうやだ、もうやだよ。

なんか生きてるの辛いよ。

嫌なことばっか。

もう、こんなのやだ。

かあちゃん、何でいないんだよ。

話聞いてよ、わたし、わたし疲れたよ。

会いたい、会いたいよ。

 

     ・

     ・

     ・

 

はぁ、とうちゃん、もう帰ってるかなぁ。

今日も残業っていってたけど、こんな顔見せられないよ。

頑張れ、頑張るんだ美佳。

とうちゃん、一生懸命働いてくれて、お腹すかして帰ってくるんだ。

え、笑顔で迎えなくちゃね。

それと、何か美味しい物作らなきゃ。

はぁ~

 

”スー”

 

「だ~れだ。」

 

「へ、いやー、変質者!」

 

「いや、ちが、違うっす。

 

 おれ、俺っす。」

 

「あ、あ~、刈宿君。」

 

「美佳さん、おかえりっす。

 

 変質者はひどいっすよ。 

 

 あ、ほら、ご近所の人出てきたじゃないですか。」

 

「す、すみません、何でもないです。

 

 でもどうしたの?」

 

「どうしたのじゃないです。

 

 美佳さん、林間学校に行ってから全然電話でてくれないから、

 

 心配できちゃったじゃないっすか。」

 

「か、刈宿君。」

 

「でも、よかった、美佳さん何ともなくて。

 

 あ、じゃ、もしかして俺って嫌われてるとか?」

 

「ばっか、嫌いなわけないよ。」

 

「ほ、ほんとっすか。 ううう、うれしっす。」

 

「こら、泣くんじゃない、大げさだろ。」

 

「いや、だって、もしかしたら、本当はあの地区大会の時の言葉は本当で、

 

 本当は俺、嫌われてたんじゃないかって心配で心配で。

 

 よ、よかったっす。」

 

”だき”

 

「え、み、美佳さん?」

 

「えっと、確かここだったよな、三ヶ木ん家、あのアパートだっけ。

 

 はっ!」

 

「ありがと、刈宿君。」

 

「えっと、なんかわからないけど、うっす。」

 

「わたしね、わたしもうなんにも無くなっちゃったんだ。」

 

「なにかあったんですね。」

 

「うん、ちっとね。

 

 もう、疲れちゃって。 ごめん、ちょっとだけこのままでいい?」

 

「美佳さん、俺は美佳さんのこと大好きっす。

 

 だからおれは美佳さんが望んでくれる限り、いつでも美佳さんのそばにいます。

 

 いなくなったりしませんよ。」

 

「ありがと、ストーカー君。」

 

「うっす。 え、ひど。」

 

「えへへ。」

 

     ・

     ・

     ・

 

「ふ~、今日はごめんね。」

 

「いや、俺、美佳さんに会えて本当にうれしかったっす。

 

 美佳さん、今度はちゃんと電話出てくださいね。

 

 じゃないと、また自転車すっ飛ばして会いに来ますから。」

 

「う、うん。

 

 あ、刈宿君、電話くれてたって何か用だったの?」

 

「あ、忘れてた。

 

 美佳さん、明日空いてませんか?」

 

「え? あ、あの~」

 

「明日、海行きませんか。」

 

「え、海?」

 

「ええ、俺、海の家でバイトしてたっす。

 

 それで無料券貰えたから、よかったら一緒に行きませんか?」

 

「明日。」

 

明日は比企谷君と映画だったね。

 

『いや、お前に用事があるはずがない。

 

 明日、十時に千葉駅前集合だ、いいな。」

 

『俺は、三ヶ木と付き合わない。』

 

そっか、付き合わない・・・・・か。

 

「いいよ。 行こ、海!」

 

「え、ホントっすか。 や、やった。

 

 じゃ、じゃあ、俺、迎えに来るっす。」

 

「いいよ、千葉駅に9時でどう?」

 

「了解っす。

 

 じゃあ、美佳さん、明日っす。」

 

「うん、明日ね。

 

 あ、危ないから、前向いて。」

 

”ガシャーン”

 

「ほ、ほら、言わんこっちゃない。 ね、大丈夫?」

 

「う、うっす、大丈夫っす。 また明日。」

 

「うん、また明日ね。」

 

これでいいんだ。

もうこれでいいんだ。

だって・・・・・

あ、そうだ、電話しなくちゃ。

 

「あ、もしもし。」




最後までありがとうございます。

またしてもグタグタと指摘されそうな展開ですみません。
大事なものって無くなってから気が付くことあるもので・・・・

次話、花火大会 中編です。
なかなか花火大会になりませんが、また読んでいただけたら
ありがたいです。


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