似て非なるもの   作:裏方さん

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すみません。 更新が大変遅くなりました。

見に来ていただいて感謝感謝です。

今回は前話の交通事故の八幡サイドです。
オリヒロが事故にあった直後からになります。

き、気が付けば17000字越え。
しかも今回もセリフばかり。
すみません、大変読みにくいと思いますがご容赦頂きたくお願いいたします。

ではよろしくお願いいいたします。


夏のおわり -終わりと始まりと 中編-

”パク”

 

「ん~、この人形焼きサイコー。 こし餡があっさりしてて超美味しい。

 

 もう一つ。」

 

”パシッ”

 

「いった~い。」

 

「蒔田、一人二個までだ。」

 

「む~、稲村先輩のけち。」

 

「ほれ、刈宿。」

 

「うっす。」

 

”ガヤガヤ”

 

「ん、なんかあったのか? あっ!」

 

「隙あり。」

 

”パク”

 

「蒔田! お前、それ俺の食べ掛け。」

 

「もぐもぐ。 あ、そんなことより、ほらあれあれ。」

 

「なんか人だかりできてるっすね。

 

 あ、救急車きてるっす。」

 

「あの~、なにかあったんですか?」 

 

「え、あ、なんか浴衣の女の子が飛び出して、車に撥ねられたんだって。」

 

「お、おい浴衣って。」

 

「ちょ、ちょっとすみま、み、美佳先輩!」

 

「三ヶ木!」

 

「う、うそ。 腕が、腕が変な向きに・・・・」

 

「み、美佳先輩!」

 

「よせ刈宿、さわるな!

 

 頭を打ってるかもしれん。 揺らすんじゃない。」

 

「君たち、この子のお知り合いですか?」

 

「「はい。」」

 

「今から、総武総合病院まで搬送します。

 

 どなたか一緒に来てもらえませんか?」

 

「俺が行くっす。」

 

「刈宿、病院着いたら連絡してくれ、頼む。」

 

「うっす。」

 

”バタン”

 

「稲村先輩、三ヶ木先輩大丈夫かな? 意識なかったみたいだし。」

 

「・・・・・・わからん。」

 

”ピーポー、ピーポー”

 

「ん、川崎さん?

 

 川崎さんどうしたんだ、そんなところに座り込んで?」

 

「あたしが、あたしがけーちゃんの手をしっかり握ってなかったから。」

 

「けーちゃん?」

 

「けーちゃんが、けーちゃんが飛び出したから、三ヶ木が、三ヶ木が。

 

 どうしょう、どうしょう、あたし、あたしが・・・あたしの所為だ。」

 

「大丈夫。 きっと三ヶ木は助かる、助かるから。

 

 ほ、ほら、あいつ結構しぶといっていうか、生命力強いっていうか。

 

 大丈夫、絶対大丈夫なんだ。

 

 だから川崎さんもしっかりして。」

 

「う、うん。」

 

「蒔田、すまん。

 

 こっち来て川崎さん達と一緒にいてやってくれないか。」

 

「は、はい。 えっと、稲村先輩は?」

 

「俺は・・・・・・・行くところがある。」

 

”ダー”

 

     ・

 

”ざわざわ”

 

「・・・・・」

 

”ドン”

 

「おわぁ、お前、そんなところで突っ立てんじゃねぇ。

 

 邪魔だろ。」

 

「・・・・・」

 

「ねぇ、大丈夫? 構わないで帰ろう。 」

 

”スタスタスタ”

 

「ちっ、なんだあいつ。」

 

「ね、あれってほらあいつじゃない?」

 

「あいつ?」

 

「ほら同じクラスだった。」

 

「あ、ああそうだ、比企なんとかってやつだ。」

 

「一人でなにしてるんだろうね?」

 

「あんなとこでボーと立ってるって、あれって振られたんじゃないか?

 

 あ、そういえばあいつ修学旅行でも振られてただろ。」

 

「あ、そうだった。 きゃは、うける。」

 

”ガヤガヤ”

 

人、増えてきたと思ったら、もう花火終わったのか。

やっぱり来なかった・・・・・か。

 

さっきの確か二年の時、同じクラスだった奴だな。

 

・・・・・・くくくくく、ふふふ、はははははは。

 

みろ、俺の図った通りの結末になったじゃないか。

これで誰が何と言おうと、俺がお前に振られたってことで決まりだ。

ちゃんと証人もいる。

まぁ、あいつらは俺が誰に振られたかまではわからないだろうが。

だが、

 

”俺はお前に振られた。”

 

三ヶ木、お前がどんな手を使おうとこの事実を変えることはできない。

ふふふ、今度ばっかりは俺の勝ちだ三ヶ木。

 

俺がいるからお前が傷つく。

それなら俺とお前の関係を壊してしまえばいい。

そうなれば、これ以上お前が傷つくことは無くなる。

これが一番の答えだったんだ。

 

なんのことはない、元々俺はぼっちだ。

いやまて、見くびってもらっては困る。

ただのぼっちではない。

ぼっち道を極めたぼっちの中のぼっち。

いわばキングオブぼっちなんだ。

 

ぼっち故に誰にも迷惑をかけず、必要以上に他人と関わらない。

人畜無害!

それがぼっち、俺だったんだ。

 

まぁなんだ、これで明日からあいつとすれ違っても、俺は平気ですれ違うことができる。

もともと何もなかったかのように。

例え、あいつが他のだれかと一緒にいても、俺は平気で、え、会釈くらいできるはずだ。

 

『比企谷君♡』

 

はっ、三ヶ木!

 

”クルッ”

 

「み、三ヶ木、お前遅かったじゃないか、ばっか、もう花火おわ・・・・・・」

 

”キョロキョロ”

 

え? 違う誰もいない、空耳? 空耳だったのか。

ははは、何やってんだ俺。

あいつが来るわけがない・・・・もう終わったんだ。

 

「比企谷!」

 

いや、空耳はもういいから。

 

”ボゴッ”

 

「ゲホッ、な、なっ、稲村。」

 

「なんでだ、お前あいつの気持ち知ってたんだろう。

 

 だったら、だったら何であいつのこともっとしっかり摑まえていてやらないんだ。

 

 だからあいつは、 」

 

「いきなり、何のことだ。」

 

「馬鹿野郎、三ヶ木が、三ヶ木が撥ねられたんだ!

 

 お前に会いにここに来る途中で車に撥ねられたんだよ!」

 

「は、はぁ? な、なに言ってんだ稲村。

 

 あいつがここに来るわけないだろう。

 

 俺はあいつに振られて 」

 

”ぐい”

 

「お前いい加減にしろよ!」

 

「ほ、本当なのか、稲村。」

 

「俺は今から病院に行く。 お前どうすんだ。」

 

「な、本当、本当なんだな。

 

 み、三ヶ木はどんな状態なんだ、無事だよな。

 

 どこだ、どこの病院だ。」

 

「状態はわからん。 とにかく俺は行く。 お前も来るなら来い。」

 

「頼む。」

 

     ・

 

”バタン”

 

「総武総合病院までお願いします。」

 

「・・・」

 

「・・・」

 

「・・・」

 

”ぐぅ~”

 

「わ、悪い。」

 

「比企谷、これやる。 ちょっと冷めてるけど我慢しろ。」

 

「いや、いい。」

 

「さっきは殴ってすまなかった。

 

 これはその詫びだ。 全部やるからもらってくれ。」

 

「そっか、それならもらっておく。」

 

「比企谷、刈宿が言ってたけど、お前朝からあそこで待ってたのか?」

 

「・・・・ああ、今日は朝から何も用事がなかったからな。」

 

「嘘つけ。」

 

「・・・本当だ、あの場所にいる以上に大事な用事はなかった。」

 

「そうか。」

 

「そうだ。」

 

「だが比企谷、俺はお前を認めない。

 

 あいつは、三ヶ木はお前といると辛い思いばっかりする。

 

 今日だってお前がちゃんと向き合っていればこんなことに。

 

 ・・・・・俺はやっぱりお前を認めない。」

 

「・・・・」

 

     ・

     ・

     ・

 

”タッタッタッ”

 

「刈宿、ど、どうだ。」

 

「あ、稲村先輩、電話した時のままっす。

 

 まだ手術室に入ったまま出てこないっす。」

 

「そうか。 すまない、ちょっと電話してくる。」

 

”スタスタスタ”

 

「あ、あんたも来たっすか。」

 

「ああ、稲村が連れてきてくれた。」

 

     ・

 

”カシャカシャ”

 

「もしもし。」

 

「うぉ~い、もしもし。

 

 花火大会、誰からもお誘いなくて一人寂しく家にいる平塚で~す。

 

 ちくしょ~あの野郎、うぃっ。」

 

「先生、飲んでるんですか。」

 

「ん、稲村か、どうした?

 

 君がこんな夜中に電話って、何かあったのかね、うぃっ。

 

 あっ、ゴ、ゴホン、の、飲んでないぞ・・・・・ちょっとしか。」

 

「先生、三ヶ木が車に撥ねられたんです。」

 

「はっ、三ヶ木か? で、どんな状態なんだね。 いま病院にいるのか?」

 

「今、総武総合病院です。

 

 まだ手術室に入ったままで状態までは。」

 

「わかった。 三ヶ木の家の方には私から連絡しておく。

 

 私もそっちに向かうが、なにかあったらすぐ電話してくれたまえ。」

 

「はい。」

 

     ・

     ・

     ・

 

”タッタッタッ”

 

「はぁ、はぁ。 

 

 か、刈宿君、美佳、美佳はどうなんだ?」

 

「あ、まだ手術室から出てこないっす。

 

 お父さんすみません、俺が一緒にいながら。」

 

「落ち着いてからでいいから、なにがあったのか話を聞かせてくれないか。」

 

「うっす。」

 

”バタバタ”

 

「すみません、患者さんのご家族の方と、どなたかAB型の人いませんか?」

 

「美佳の父です。 どうしたんですか?」

 

「出血がひどかったので輸血しないといけないのですが、今朝の事故でAB型の輸血用

 

 血液のストックが心細いので。

 

 血液センターや近隣の病院には連絡しているんですが、まだ混乱が続いてるようなんです。

 

 幸い放射線等の設備は準備できてますので、至急院内採血をお願いしたいのですが、

 

 どなたかいらっしゃいませんか?」

 

「俺いけます。 美佳先輩と同じAB型っす。

 

 俺の血ぐらいで美佳先輩が助かるなら、一滴残らず美佳先輩に輸血して下さい。

 

 お願いっす。」

 

「そ、それではお父様とあなた、採血と輸血について説明と検査がありますので、

 

 こちらに来てください。」

 

「「はい。」」

 

     ・

     ・

     ・

 

「刈宿、大丈夫か? 顔色、すごく悪いぞ。」

 

「大丈夫っす。」

 

「明日大会なんだろ、いやもう今日じゃないか。

 

 後は俺と比企谷が残るから先帰って休め。」

 

「大丈夫っすよ。

 

 ちょっとお腹空いてるだけっす。

 

 俺、若いっすから、何か食べればすぐ元気になるっすよ。

 

 あ、手術終わったみたいっす。」

 

”プシュー”

 

「先生、美佳は、娘はどうなんですか?」

 

「左腕の上腕骨の骨折がありましたので、プレートで固定処置させて頂きました。

 

 あと、骨折の際に動脈を傷つけてますね。

 

 それと脳震盪を起こしたようですが、脳のほうは損傷はなさそうです。

 

 まぁ、場所が場所だけに精密な検査が必要ですので、

 

 お嬢さんが気が付かれたら再度検査いたしましょう。」

 

「あ、ありがとうございました。」

 

”スタスタスタ”

 

「ふぅ~」

 

”どさ”

 

「お父さん、大丈夫っすか。」

 

「あ、ああ、ありがとう、助かったよ刈宿君。

 

 でも、お父さん言うな。」

 

     ・

     ・

     ・

 

”ガチャ”

 

「は、君まだ帰らなかったのかね。」

 

「あ、あの三ヶ木、お嬢さんの様態はどうですか?」

 

「ふむ、まだ眠ったままだよ。

 

 まぁ、廊下ではなんだ、よかったら中に入りなさい。」

 

「あ、は、はい。 失礼します。」

 

「なにか飲み物を買ってこようと思ったんだが、君も何か飲むかい?」

 

「はい。」

 

”スタスタスタ”

 

馬鹿だな、お前。

なんで俺なんかに会いに来ようとしたんだ。

そんな気にならなければ、お前はこんなことにならなかったんだろうが。

馬鹿だ馬鹿、お前は馬鹿だよ。

 

・・・・・だけど、一番の馬鹿は俺だ。

俺はぼっちだとか勝手なこと言ってたけど、本当は心のどこかでお前が来てくれると思って、

いや願っていたんだと思う。

 

”ガチャ”

 

「どうだ、良く寝てるだろう。

 

 全く何もなかったように。」

 

「あ、は、はい。」

 

「コーヒーでよかったかな?」

 

「・・・は、はい。 ありがとうございます。」

 

げ、ブラック、すなわち無糖。

微糖でもなく、砂糖が無いと書いて無糖。

そしてこの闇のような黒色に彩られた色調。

う~、よ、よりによって。

 

「あ、ほら、遠慮しないで。」

 

「あ、は、はい。」

 

”ゴク”

 

ぐはぁ、に、苦い。

こ、これは飲み物なのか。

ま、まぁ日本ではその昔コーヒーは薬用として用いられていたから、これは薬だと考えれば

苦いのは当たり前なのかもしれんが。

・・・・俺の人生並みに苦い。

飲むほど脳裏に俺の黒歴史がよみがえる。

す、捨てようかな~

は、お父さん見てる。

これって飲まないとまずいよな。

 

”ゴクゴク”

 

「ふぅ~」

 

「おお、その飲みっぷり、君もコーヒーはブラック派だね。

 

 やっぱりコーヒーはブラックだよな。

 

 本当は缶でなく、紙コップの自販機探したんだが見つからなくてね。

 

 ブラック派の君には失礼だが、缶で我慢してくれ。

 

 美佳はブラックなんて苦いし薬みたいで嫌だって、たっぷりミルクと砂糖いれるんだ。

 

 まったく、甘ったるいコーヒーなんてコーヒーじゃないよな。」

 

う、否定しにくい。

そんなににこやかな顔で言われたら、マッ缶がいいとは言えん。

まぁ、マッ缶はコーヒー入り練乳だからコーヒーではない。

だから決してマッ缶を否定するものではないから。

 

「そ、そうですね。

 

 やっぱりコーヒーはブラックに限ります。」

 

「おお、よ、よし。」

 

”ごそごそ”

 

「ほらもう一本あげよう。

 

 さっき君の分買った時に当たりが出てな、さ、遠慮せずに。」

 

「あ、は、はい。 ありがとうございます。」

 

うへぇ~、

お帰りなさい無糖さん。

お願い無糖さん、佐藤、いや砂糖さんと仲良くして。

お願いします。

 

「さ、さ遠慮しないで。」

 

「は、はい。 頂きます。」

 

”カシャ”

 

う、いや~こっち見てないで。

一気だ、一気に飲み干さなければならない。

な、なるべく美味しそうに。

 

”ゴクゴクゴク”

 

「お、美味しいですね」

 

「そうか。 よし、今度我が家の近くに来た時はよりなさい。

 

 いい豆が手に入ってね。 ご馳走してあげよう。

 

 ・・・・・・えっと、ところで君は美佳の友達とかかね?」

 

「あ、すみません。

 

 総武高三年の比企谷八幡といいます。

 

 み、三ヶ木さんとは・・・」

 

なんて言えばいいんだ。

お嬢さんに振られたものです。 いや違うだろ。

それだとこんな時間までいるってストーカーじゃないか。

友達・・・・・友達といっていいんだろうか。

もし今日あいつが来てくれて、それで俺が振ることになってしまったとしても、

あいつは、三ヶ木はまだ俺のこと友達と思ってくれるのだろうか?

 

「三ヶ木さんは俺の大切な友達です。」

 

「そうか、友達か。」

 

”ペコ”

 

「ありがとう。」

 

「え? あ、は、はい。」

 

「いや、美佳は小学校の時に引っ越してから、ずっと友達がいなくてな。

 

 まぁ、私が美佳に家事とか家のこと任せてしまってたからな。

 

 友達と遊ぶ時間なんて。

 

 ん、あっ一人いた。

 

 えっと、木材屋君だったかな、友達って彼一人だったんだ。

 

 すまないが、これからもずっとこいつの友達でいてやってくれないか?」

 

「・・・・・・」

 

「ん? だめかね。」

 

「い、いえ、三ヶ木さんが望むなら、俺は友達でいます。」

 

そうだ。

俺はあいつが望んでくれるなら友達でいよう。

あいつが望んでくれる限りずっとこれからも。

だが、もしそれであいつが傷つくことになるのなら、俺は・・・。

 

「そうか、ありがとう。

 

 は、それよりもうこんな時間だ。

 

 家の人には連絡したのかね。」

 

「はい、先ほど。」

 

小町が起きててくれてよかった。

多分、親父達もう寝てるだろうからな。

だが。

 

『・・・み、美佳さん大丈夫かなぁ?』

 

『まだわからん。 すまんが親父達には 』

 

『大丈夫だよ。 

 

 お父さん達には、お兄ちゃん今日友達のところ勉強しに行ってるって言ってあるから。』

 

『そ、そうなのか、友達ってそれで納得したのか?

 

 まぁいい、ありがとうな小町。』

 

『うん。 お礼は現物でね、お兄ちゃん。』

 

『お、おう。』

 

はぁ~、なにねだられるだろ。

今月厳しいんだよなぁ。

フィギュア、結構高かったからなぁ。

あとラノベの新刊出るし。

 

     ・

     ・

     ・

 

”スー、スー”

 

「ん、比企谷君、寝てしまったのか。

 

 なにか掛けるもの掛けるものっと。」

 

”バサ”

 

「ん~、しかしこの顔、どこかで見た覚えがあるんだが。

 

 どこかどこかで、ん~。

 

 ・・・・・あっ。」

 

     ・

     ・

     ・

 

ん、はっ、朝。

しまった寝てしまった。

み、三ヶ木は?

 

「・・・・」

 

まだ、目を覚まさないのか。

もうとっくに麻酔きれているよな。

 

”ガチャ”

 

「ああ、起きたかね比企谷君。 お早う。」

 

「あ、お、お早うございます。

 

 すみません、俺。」

 

「いや、それよりお腹空いただろう、パンとコーヒーどうだ?」

 

「あ、い、いただきます。」

 

げ、ま、また無糖。

パンは、サンドウィッチか。

あんパンじゃないのか。

う、甘いものがほしい。

 

”ゴク”

 

ぐ~、に、苦い。

またしても脳裏にトラウマが。

俺、数時間で何回人生繰り返してんだ。

 

「比企谷君、それを食べたら、お家に帰りなさい。」

 

「あ、いや、俺は 」

 

「ありがとう。 その気持ちだけで十分だよ。

 

 ご両親も心配するといけない。

 

 一度家に帰りなさい。」

 

「は、はい。」

 

”パクパク”

 

「ところで、比企谷君。」

 

「はい。」

 

「君、少しはスケートうまくなったかね。」

 

「え、スケート?」

 

     ・

     ・

     ・

 

「あっ、お兄ちゃん、もう病院行くの? 」

 

「まぁ、俺にできることってこれぐらいなもんだからな。

 

 三ヶ木はいつも俺のそばにいてくれるって言ってくれてたんだ。

 

 こんなときぐらい、俺はあいつのそばにいてやりたい。」

 

「そっか。 あ、あとから小町も行くからね。」

 

「おう、待ってる。」

 

”ガチャ”

 

ん~、だけど気が重い。

あの後、さんざんお父さんに聞かれたからなぁ。

 

『君、さっきは美佳と友達と言ったね。

 

 本当はどうなんだ。』

 

『え、あ、い、いや、その』

 

『パンとコーヒー美味しかったかい?』

 

『は、はい。』

 

『そうか。 で、どうなんだ。』

 

『す、すみません、し、親しくさせて頂いてます。』

 

『ほう~親しくね。

 

 で、キスとかしたのか?』

 

『い、いえ、う、腕を組んだりとか、その・・・・・』

 

『貴様! 親の了解も取らずに人の娘と腕を組んだというのか!』

 

『あ、いえ、す、すみません、あ、あとからまた来ます。

 

 し、失礼します。』

 

”ガチャ”

 

ふ~、三ヶ木、早く目覚ましてくれないかなぁ。

もし、腕組んだ以外のこと知られたら・・・・・・

 

     ・

     ・

     ・

 

「あんまりお邪魔したらご迷惑よ。

 

 そろそろお暇しましょう由比ヶ浜さん。」

 

「う、うん。

 

 美佳っち、早く目を覚まして。

 

 また、女子会やるんだからね。

 

 今度こそ、あたしがお料理作る番だからね。

 

 それで、またみんなでヒッキーの悪行追求しようね。」

 

「おい、お前らどんな話してるんだ。」

 

「それは秘密。

 

 ヒッキー、ヒッキーはどうするの? 一緒に帰らない?」

 

「あ、ああ、俺はもう少し残ろうと思う。

 

 こうなったことに俺も責任があるんだ。

 

 まぁ、あとから小町も来るっていうしな。」

 

「ねぇ、ヒッキー、ヒッキーは・・・・・・

 

 うううん、何でもない。

 

 それじゃ、今日は先帰るね。

 

 美佳っち、また明日来るからね。

 

 明日はいっぱいおしゃべりしようね。」

 

「それでは比企谷君、お父様戻られたらよろしく言っておいていただけるかしら。」

 

「ああ、わかった。 

 

 お前らも気をつけてな。」

 

”ガチャ”

 

「ええ。 それじゃあね、三ヶ木さん。」

 

「じゃあね、ヒッキー、美佳っち。」

 

「おう。」

 

”スタスタスタ”

 

「・・・・・」

 

「・・・・・」

 

「三ヶ木さん、大丈夫かしら。」

 

「あ、う、うん。」

 

「・・・・・」

 

「・・・・・」

 

「由比ヶ浜さん、どうしたのさっきから。」

 

「え、あ、うううん。 何でもない。」

 

「そう。」

 

「あ、あのさ、ゆきのん。

 

 ヒッキー残ってるの、責任感じてるからだけなのかなぁ。」

 

「少なくとも、彼はそう言ったわ。

 

 まぁ、あと小町さんが来るからって。」

 

「う、うん。 でもなんか違うの。

 

 病室でさ、ヒッキーが美佳っちを見つめてる時の目って、

 

 なにかこう、う~ん、うまく言えないんだけど今までと何か違う。」

 

「つまり、比企谷君がまだ残っているのは責任を感じてるだけでなく、

 

 他の感情、つまり三ヶ木さんに何か思ってるところがあるんじゃないかって言いたいのかしら?

 

 でもそれは今までも時折 」

 

「違うの! 何か今までと違うの。

 

 あたしわかる。」

 

「だったら、すぐ戻らないといけないわ。」

 

「え?」

 

「あの男が劣情して、動けない三ヶ木さんの身になにかあったら大変だもの。」

 

「ち、違うからゆきのん。」

 

「え? そ、そう。

 

 そうね、あの男にはそんな度胸はないわね。」

 

「あのね、もしかしたらヒッキー、美佳っちのことが 」

 

「え?」

 

「美佳っちのことを好きになっちゃったんじゃないかって。」

 

「・・・・友達としてではなく?」

 

「うん。

 

 あのね、あたし思ったの。

 

 あたしね、ヒッキーが入院した時、一度病室の前まで行ったことがあるんだ。

 

 でもなんでだろう、病室に入ることができなかった。

 

 結局頭の中でいろいろ考えちゃって、もう一歩が踏み出せなかったの。

 

 それは文化祭の時も修学旅行の時もそう。

 

 そしてね、この前の林間学校の時もそうだった。

 

 あの時、あたしはヒッキーがゆきのんやいろはちゃんの言うことに納得したと思った。

 

 ああ良かったヒッキー納得してくれたって思っちゃたの。

 

 うううん、思い込みたかったのかもしれない。

 

 でも、違ってた。

 

 結局、ヒッキーの思いわかってたのは美佳っちだけだった。

 

 うううん、わかってただけじゃない、ヒッキーのために自分を犠牲にして。

 

 美佳っちはすごいよ。

 

 一歩どころか 十歩もニ十歩も踏み出しちゃうんだよ。

 

 だからヒッキーもそんな美佳っちのことが・・・・・好きになっちゃたんじゃないかって。」

 

「そう。 

 

 それであなたはどうしたいの?

 

 あきらめるの?」

 

「うううん、あたしは、あたしもヒッキーが好き。

 

 でもいまのままじゃ美佳っちに勝てない。

 

 あたし、変われたつもりでいたのに、ちっとも変わっていなかった。

 

 だからあたし変わる。

 

 もっとヒッキーのこと理解して、考えてることわかるように努力して、

 

 そして自分のことよりヒッキーのことを 」

 

「よしなさい、由比ヶ浜さん。」

 

「え? だって。」

 

「あなたがそんなことをしても三ヶ木さんには勝てないわ。

 

 それに、そんなあなたを比企谷君は好きになるのかしら?

 

 あなたが三ヶ木さんの真似をしたって、それは所詮偽物でしかないわ。

 

 それこそ比企谷君が最も嫌うものでなくて。」

 

「で、でも、ゆきのん。」

 

「あなたはあなたのままでいいの。

 

 あなたは相手のことを思いやれる優しさと強さを持っている。

 

 それは私も三ヶ木さんも持っていないもの。

 

 私はそんなあなたに憧れてたの。

 

 恐らく比企谷君もそんなあなたに惹かれていると思うの。

 

 だから、あなたはあなたのままで、比企谷君にあなたの想いをぶつけていきなさい。」

 

「ゆきのん。

 

 はっ、ゆ、ゆきのんは?

 

 ゆきのんはどうするの?」

 

「私は、私はもう一度、自分自身の気持ちを確かめてみたい。

 

 彼に対する気持ちがそういう気持ちから来てるものなのか、それとも別の他のものなのか。」

 

「ゆきのん。」

 

「勘違いしないで。 これはハンディよ、ハンディキャップ。

 

 そうでないと勝負にならないのではなくて?」

 

「ひど~い、ゆきのん。」

 

”だき”

 

「由比ヶ浜さん、暑苦しいわ。 離れてくれないかしら。」

 

「えへへ、ゆきのん。」

 

「でも、でもね由比ヶ浜さん。」

 

”なでなで”

 

「今はおよしなさい。

 

 今の比企谷君は三ヶ木さんの怪我のこととでいっぱいいっぱいだから。

 

 きっと取り付く暇もないわ。

 

 それにそんなの卑怯でしょう。

 

 だから、今は三ヶ木さんが元気になることを願いましょう。」

 

「うん。」

 

     ・

     ・

     ・

 

”ガチャ”

 

「失礼しまっすって、あんたいたのか。」

 

「ああ。」

 

「・・・・・」

 

「・・・・・」

 

「・・・・・なぁ、美佳先輩、あれからも目覚まさないのか?」

 

「・・・・・そうみたいだ。

 

 医者は検査しても何も異常はないって言うんだがな。」

 

「そっか。」

 

「それよりお前、今日テニスの大会だったよな、もう試合終わったのか?」

 

「・・・・・優勝した。」

 

「お前すごいな。」

 

「・・・・・うそだ。 一回戦で負けた。」

 

「そ、そうか。」

 

「美佳先輩には絶対言うなよ。

 

 俺の実力がなかっただけだから。

 

 美佳先輩のことだ、負けたのは採血した所為だって決めつけちゃうからな。

 

 一度決めつけると頑固だし。」

 

「そうだな。」

 

そうだ、三ヶ木なら絶対そう思い込む。

こいつもこいつなりに三ヶ木のことよく見てたんだな。

こいつが三ヶ木と過ごした時間。

こいつしか知らない三ヶ木もいるんだろうな。

 

・・・・・イラつく。

なんだこのイライラする気持ちは。

俺は知りたいのか、三ヶ木のこと全て知り尽くしてそれで安心したいのか。

・・・・・気持ち悪い。

 

「俺はもっと強くなる。 テニスも他のことも全て。

 

 いつか頼ってもらえるように。」

 

「頼ってもらう?」

 

「何でもない。」

 

”ガチャ”

 

「あ、刈宿君、来てくれてたのか。 」

 

「あ、はい、お父さん。」

 

「お父さん言うな!」

 

「うっす。」

 

     ・

     ・

     ・

 

”ガチャ”

 

「すみません。

 

 それじゃ俺も飯食べてきます。」

 

「ああ。 気にせずゆっくりしてきなさい。」

 

「は、はい。」

 

「あ、俺も行くっす。」

 

”スタスタスタ”

 

「・・・・・」

 

「・・・・・」

 

「・・・・・」

 

「・・・・・なぁ、あんたあの時のあれって、本気じゃなかったんだよな。」

 

「あのとき?」

 

「ラブホテルの時だ。 

 

 本気で美佳先輩を連れ込もうと思ってなかったんだろ。

 

 あんた何であんなことしたんだ。」

 

「三ヶ木は俺なんかが傷つけていい女の子じゃないんだ。」

 

「だから無理矢理に嫌われて振られようとしたってことか。」

 

「お、お前、なんで。」

 

「ち、まったく、美佳先輩言う通りじゃないか。」

 

「え?」

 

「あんたの考えてることなんて、美佳先輩は全てお見通しなんだよ。

 

 花火大会の時に美佳先輩言ってたよ、あんたのことだから自分が振られれば

 

 美佳先輩が傷つかないって思ってんだって。

 

 それでまた自分を傷つけるようなことしたんだって。」

 

「あ、いや、それはだな 」

 

「それとな、言いたくねぇけどな。

 

 美佳先輩、あんたに振られることわかってから、あんたのこと一生懸命忘れよう

 

 としたんだとさ。

 

 でもあんたのことがどうしても忘れられなかったってさ。

 

 だから、俺だけじゃない、もう誰とも付き合わないってさ。

 

 あんたを忘れられるまで。」

 

「・・・・誰とも付き合わない。」

 

「全く世話にかかる人たちだよ。

 

 周りの迷惑なにも考えなくてさ。

 

 で、あんたはどうするんだ?」

 

「俺は・・・わからない。」

 

「あんた、あんた何で朝からあの場所で待ってたんだ。

 

 わからないってもうそれが答えじゃないか。」

 

”ぐぃ”

 

「おい、言っておくぞ!

 

 もし、また美佳先輩を泣かすようなことがあったら、

 

 今度は絶対に俺が美佳先輩をもらうからな。

 

 美佳先輩が嫌がろうが、力ずくでもお前から奪ってみせる。

 

 わかったな。

 

 だから・・・・・・・・・美佳先輩を頼む。」

 

 

 

 

‐‐‐‐‐‐‐

 

 

 

 

”プシュー”

 

これでよかったかなぁ

小町、俺にはハードルが高すぎるんだが。

 

『お兄ちゃん、お見舞いって何も持たないで行ったの!

 

 もう、何やってるだろうこの人は。

 

 小町恥ずかしくてもう行けないよ。

 

 明日は絶対花束ぐらい持って行くこと、わかったお兄ちゃん!』

 

昨日家に帰ってから、散々、小町になじられた。

いやまて、俺にも言い分がある。

三ヶ木はまだ目覚まさないし、俺が入院した時なんか誰もお見舞いにきてくれなかったろ。

だからそこまで気が回らなかったんだけど。

でも、まぁ小町の言う通りだろう。

しっかし、花なんて買ったの小学校以来だ。

 

”ドン”

 

「おわっ」

 

「あ、す、すみませんって、比企谷。」

 

「かわご、川崎じゃないか。」

 

あぶなかった。

この前くぎ刺されたからな。

いい加減にしないと殴るよって殴られてから。

また調子に乗って川越とかいったら、即殴られるから。 

 

「お前、お見舞いに・・・・・なんだ病室わからなかったのか?」

 

「あ、うううん、病室はわかってるけど。」

 

「昨日も来たよな。」

 

「え、あ、でもなんで。」

 

「後ろ姿見かけた。」

 

「そ、そう。」 

 

「何で病室に入らないんだ。」

 

「入らないじゃなくて入れない。

 

 看護師さんに聞いたんだけど、三ヶ木、まだ目を覚まさないって。

 

 あたし、あたし、どんな顔して三ヶ木に、三ヶ木のお父さんに会えばいいのさ。

 

 ううううう。」

 

「来い、いくぞ。」

 

”ぐぃ”

 

「え? あ、ちょ、ちょっと比企谷。」

 

”スタスタスタ”

 

「ね、ねぇ比企谷。」

 

「今行かないとお前絶対後悔するぞ。

 

 それだけじゃねぇ、お前三ヶ木と友達でいれなくなる。

 

 それでもいいのか。」

 

「あたし、あたしは嫌だ。

 

 三ヶ木と友達でいたい。」

 

「それでいい。」

 

     ・

 

「ちょ、ちょっと待ってね比企谷。

 

 深呼吸するから。」

 

「どうしてですか!

 

 なんでそうなるんですか!」

 

「「え?」」

 

今のお父さんの声だよな。

あのおとなしそうなお父さんが。

いったいどうしたんだ?

誰に怒鳴ってるんだ?

 

「何で昏睡状態からもどらないんだ。

 

 それに植物人間ってなんだ!

 

 あんた、どこも異常ないって言ったじゃないか。」

 

「お父さん、落ち着いて。

 

 も、もう少し詳細な検査しましょう。」

 

「はっ、す、すみません先生。

 

 この子しか、私にはもうこの子しかいないんです。

 

 お願いします、お願いします。」

 

「いえ、いいんですよ。

 

 わたしの言い方も悪かったのですから。

 

 あとから、今後の検査についてご説明させていただきます。

 

 お父さん、一緒に頑張りましょう。」

 

「は、はい。」

 

”ガチャ”

 

「あ、君か。 お父さんをよろしくね。」

 

「先生、植物人間って。」

 

「あ、やっぱり聞こえていたかね。

 

 最悪の可能性の一つとしてだよ。

 

 私の説明の仕方が悪かったようだ。」

 

「先生、三ヶ木をよろしくお願いします。」

 

”ペコ”

 

「ひ、比企谷、三ヶ木が植物人間って、あたし、あたし。」

 

「大丈夫だ、あいつは絶対大丈夫だ。」

 

「う、うん。」

 

     ・

     ・

     ・

 

三ヶ木なんで目覚まさないんだ。

お前寝ている間に、今日も由比ヶ浜や雪ノ下、一色とかみんなお見舞いに来てくれたぞ。

みんな心配してたぞ。

ほら見てくれ、俺が持ってきた花束だ。

花屋で花買うのなんて、小学生の母の日以来だぞ。

 

なぁ、医者は異常はないって言ってたじゃないか。

それなのに何で目覚まさないんだ。

頼む、頼むから目覚ましてくれ。

俺、お前と話したい。 いっぱいいっぱい話したいんだ。

 

     ・

     ・

     ・

 

「また明日来させてもらいます。」

 

「あ、ああ。ありがとう比企谷君。

 

 君も受験生なんだから、あまり無理しないようにね。」

 

「はい。

 

 三ヶ木、また明日な。」

 

”スタスタスタ”

 

「先輩。」

 

「おわっ、な、なんだお前まだいたのか。」

 

「なんですか、そんなに驚かなくてもいいじゃないですか!

 

 そんなことより美佳先輩どうでした? 目を覚まされました?」

 

「いや、まだだ。」

 

「そうですか。 先輩、美佳先輩大丈夫かなぁ。」

 

「医者は何も異常はないって言ってんだ。 絶対大丈夫だ。」

 

「じゃあ、何で目覚まさないんですか!

 

 ずっと目を覚まさないじゃないですか!」

 

「いや、俺にもわからん。」

 

「ご、ごめんなさい。

 

 わたし、こんなの、こんなの嫌なんです。

 

 折角、書記ちゃんと相談してこれからのことちゃんと考えたのに。」

 

「・・・・一色、それ、その手に握ってるのって。」

 

「これ美佳先輩に渡そうと思って、思いっ切り嫌味言って渡そうと思ったのに。」

 

「それじゃ、一色。」

 

「は、はい。

 

 それなのに、それなのになんで・・・・・・・・

 

 先輩、美佳先輩、もしかして目を覚ましたくないのかぁ。」

 

「なぜそう思うんだ。」

 

「美佳先輩、ずっと亡くなったお母さんと妹さんに会いたがってたから。」

 

「お前にそんなこと言ってたのか?」

 

「いえ、園長院生に聞いたんですよ。

 

 ほら、この前の七夕に保育所にみんなで行ったじゃないですか。

 

 その時聞いたんですよ。

 

 美佳先輩、何年も七夕の短冊にお願いしてたって。」

 

「七夕? ああ、この前の保育所のか。 そ、そうか。」

 

「だからもしかして美佳先輩、お母さんと妹さんに会ってるんじゃないかって。

 

 そしたら、もしそうだったら美佳先輩もう戻ってこないんじゃないかって。」

 

「一色!」

 

「は、ご、ごめんなさい。

 

 でも、でもわたし、わたし、ずっとそんなことばっかり・・・・・・・

 

 先輩、わたし怖い、怖いです。」

 

”だき”

 

「い、一色。泣いているのか?」

 

”なでなで”

 

「大丈夫だ一色。

 

 あいつは絶対戻ってくる。

 

 一色や書記ちゃん、本牧、稲村、それにみんながこれだけ心配してるんだ。

 

 必ず戻ってくる。」

 

”キュン”

 

「せ・ん・ぱ・い♡」

 

「さ、帰ろう。

 

 家まで送ってやる。」

 

「は、はい。」

 

「あれ?」

 

「え、ど、どうしたんですか?」

 

「いや、お前、いつもなら俺振られてるはずなんだが。」

 

「こんな時に、そんな余裕あるはずないじゃないですか!

 

 わたしを何だと思ってるんですか!」

 

「す、すまん。」

 

「はい、罰です。」

 

「え、手?」

 

「わたしを傷つけた罰です。

 

 家まで手を繋いで頂きます。」

 

「い、いや断る。 そんな恥ずかしいことでき 」

 

”にぎ”

 

「お、お前。」

 

「ほら行きますよ♬」

 

 

 

 

‐‐‐‐‐‐‐

 

 

 

 

”スタスタスタ”

 

「あ、比企谷。」

 

「お、おう。」

 

「お前今日も来たのか?

 

 受験勉強のほうは大丈夫なのか。」

 

「いや、それならお前もだろう。

 

 お前の場合、文化祭の準備とかもあるんじゃねえか。」

 

「なめんな、俺は数学学年十傑だ。」

 

「そうか、それならいい。

 

 ちなみに俺は国語学年3位だ。」

 

「・・・・・お、俺はお前が嫌いだ。」

 

ふふん。勝った。

ま、他の教科も含めるとお前のほうが上だろうけどな。

す、数学なんて俺捨ててるから。

 

「お、おい、稲村。」

 

「ん? あ、あれお父さんじゃないか。」

 

「ううううう、何でなんであの子が。 なんでなんだ。

 

 あの子が何をしたっていうんだ。

 

 一生懸命、美緒の代わりに俺を支えてくれて。

 

 本当にいい子なんだ。

 

 神さん、いるんなら答えてみろ。

 

 なんであの子をこんな目に合わせるんだ。

 

 くそ、くそ、くそ。

 

 なあ、美緒、俺もう疲れたよ。

 

 このまま美佳と一緒にお前のとこ行ってもいいか・・・・・・」

 

「・・・・・」

 

「・・・・・」

 

「な、なぁ、比企谷、お父さん励ましに行くぞ。」

 

励ましか。

・・・・なぁ稲村、お前どんな言葉で励まそうというんだ。

お前にお父さんの気持ちわかるのか?

俺にはわからない、わかりようがない。

 

三ヶ木とお父さんは同じ悲しみを分かち合って、いままでずっと一緒に歩いてきたんだ。

それほど、お父さんと三ヶ木の絆は固いんだ。

それなのに、さも気持ちがわかるような気で慰めの言葉を繕ってもそれは欺瞞だ。

自己満足じゃないのか。

 

そんな言葉では一瞬の気休めになるかもしれんが、それではお父さんの悲しみは救えない。

 

・・・・・・

 

そうなんだ。

今お父さんに必要なものは慰めの言葉なんかじゃない、怒りだ、怒りの矛先だ。

人は誰かを恨むことによって、生きる気力が湧いてくるんだ。

今の辛さ悲しみを、誰かへの恨みに変えることにより、お父さんは救われるんだ。

 

今回の場合に問題なのは、その恨みを向けられる相手がいないことなんだ。

誰が悪い、誰を恨めばいい。

 

車の運転手か?

いや、今回は三ヶ木が飛び出したことが原因だ。

正直お父さんには悪いが、避けようにも避けられなかったのじゃないかと思う。 

それに民事、刑事罰を負わされることになるはずだ。

だからこれ以上怒りの矛先にできない。

 

ならその飛び出す原因となったけーちゃんか。

川崎によると、けーちゃんはあれ以来塞ぎこんで、一日中部屋に閉じこもっているようだ。

もう、これ以上、なにを責めようというんだ。

 

ならけーちゃんの手をしっかりつないでいなかった川崎が悪いというのか。

川崎もずっと手をつなぎっぱなしでいられるものでもなかろう。

あの時も、弟と妹へのお土産で手がいっぱいだったらしい。

それに自分のせいで親友が事故にあったと思い込んで苦しんでいる。

川崎も十分苦しんでいるんだ。

 

なら、だれをうらめばいい。

花火大会の主催者か? 車を作った会社か? は、花火を発明したやつか?

 

・・・・・・いや、いるじゃないか。

 

当事者の一人でありながら、なんの罰も受けずのうのうとしてる奴。

それだけじゃない、勝手に被害者側の人間ですってぬけぬけと三ヶ木のそばにいる奴。

 

そうだ、そいつにすべての恨みを罪を負わせればいい。

いや、そいつが負うべきだ。

だから。

 

「おい、稲村。

 

 すまん、一生の頼みがある。

 

 嫌とは言わせん。聞いてくれないのなら俺を殴ったことを一生許さない。」

 

「いや待て、お前人形焼き食ったじゃないか。

 

 まぁいい、なんだ言ってみろ。 」

 

     ・

 

”ガチャ”

 

「お早うございます。」

 

「あ、ああ、今日も来てくれたのかね、比企谷君。」

 

「はい。」

 

「あ、それと稲村君だったね。」

 

「・・・・・はい。」

 

「ありがとう。 でも君たち受験生だろう、勉強のほうは大丈夫かね。」

 

「・・・・そ、そうなんですよ実際。

 

 俺なんて、たまたま一人で花火見てただけなのに、こいつになんかわけのわからないまま

 

 病院に連れてこられて。

 

 それだけでも迷惑なのに、俺が三ヶ木と親しかったからって、

 

 三ヶ木が目を覚ますまでずっといろって参っちゃいますよ。

 

 おい稲村、お父さんが言った通り俺も受験生なんだから、そんなに付き合ってられねえんだ。

 

 悪いけど、今日限りにしてもらうからな。」

 

「・・・・・お、お前が三ヶ木に会いたいって言ったんだろ。」

 

「いや確かにだな、俺は日本庭園のところで待ってるって言ったけどよ。

 

 三ヶ木にいますぐ会いたいって言ったけど。

 

 誰も事故に遭えなんていってないからな。

 

 まぁ俺が呼ばなければあの場所にはいかなかったけどさ。

 

 俺が呼ばなければ事故にも遭わなかった・・・けどさ。

 

 だから俺のせいにされてもこまるんだよな、稲村。」

 

「・・・・・」

 

「稲村。」

 

「・・・・・・・・そ、そうだ。」

 

「お、おい、はっきり言ってくれよ。

 

 俺が三ヶ木を呼びつけた。 だからって俺のせいじゃないって。」

 

「・・・・・・」

 

「ちっ!  お、お父さん、そういう訳なんで。

 

 俺が三ヶ木に会いたいって呼んだからって、それであいつが慌ててあの場所に行ったからって、

 

 別に俺の所為でこうなったんじゃないんで。

 

 だから 」

 

「もうやめてくれ比企谷!」

 

「稲村。」

 

”ガチャ”

 

「まったく、あんたらなにやってんだ。

 

 あっ、お父さんブラックでよかったすね。」

 

「あ、ああ、刈宿君ありがとう。

 

 だけど刈宿君、君の言った通りだね。」

 

「そうっすよ。

 

 まったく、こんなことばっかりやってるそうなんですよこの人。

 

 俺、さんざん美佳先輩にのろけられましたから。」

 

「え? か、刈宿、いや刈宿君なんのこと言ってるのかなぁ~」

 

「まったく、稲村先輩もなにやってんすか。

 

 事故のあらましは全て俺が話したっす。

 

 それとお父さんに聞かれてあんたのことも洗いざらい。

 

 美佳先輩ののろけ話付きで。」

 

「比企谷君! 君は大人をなめてるのかね。

 

 君はまだまだ人生の苦さの経験が足りんようだ。

 

 大人を騙そうとした罰だ、これを飲みなさい今すぐ全部。」

 

「げ、む、無糖さん。」

 

無糖さん、今日も砂糖さんと一緒じゃないのね。

し、しかもボトル缶、大きくなられて。

 

”ぐぃ”

 

「さ、さぁ。」

 

「あ、い、いや、お、お父さん、人生少しは甘いほうが。」

 

「稲村先輩。」

 

「おう。」

 

”ギュ”

 

「は、離せ稲村。 馬鹿やめろ!」

 

「あんたは往生際が悪いっす。」

 

”ゴクゴク”

 

「ぐはぁ、に、苦げぇ。」

 

「「あははは。」」

 

「すまんな比企谷君、稲村君も。

 

 なんか気を使わせてしまったようだ。

 

 私は大丈夫だよ。

 

 ありがとう。」

 

「は、はい。」

 

「あ、でもみんな、お父さんって言うな。」

 

     ・

     ・

     ・

 

「いくら検査しても脳には異常ないんです。

 

 う~ん、兎に角、もうしばらく様子を見ましょう。」

 

「はい、よろしくお願いします。」

 

「あ、お父様、下に保険会社の方が見えてらっしゃいますがどうされますか?」

 

「わかりました。」

 

”ガチャ”

 

なぁ、三ヶ木、三ヶ木戻って来いよ。

何してんだ。 さっさと目開けろよ。

お父さんも結構無理してるぞ。

俺達には大丈夫だって言ってるけど、今朝見かけた姿はとても見ていられなかった。

それに、目の下めっちゃくちゃクマ出てる。

全然寝てないんじゃないか。

 

なぁ、一色が言ってた通りなのか?

お前、そっちでお母さんと妹さんにあってるのか

もう帰ってこないなんて言わないよな。

帰らないなんて、そんなの俺が絶対に許さないからな。

 

三ヶ木、何やってんだよ。

 

俺、お前に謝らないといけないんだ。

さっさと目を開けろよ。

 

俺、お前が大切な人だってことに気付いたんだ。

友達としてじゃない。

 

でも、俺には傷つける勇気がなくて。

 

大切に想うってことはお前を傷つけることを覚悟するってことだろ。

俺にはお前を傷つけて平気でいることなんてできないんだ。

林間学校の時のようなのはもう嫌なんだ。

 

俺は、俺は俺の所為でお前が傷ついている姿を見たくない。

 

だからお前と付き合わないって。

お前と付き合わなけば、そんなことにならなくて済むんじゃないかって。

 

俺は、お前のことが・・・・・

 

ずっとお前に一緒にいてほしんだ。

もっともっとお前と同じ時間を過ごしたいんだ。

 

だから目を開けてくれよ。

俺に謝らせてくれ。 頼む。

 

     ・

 

なぁ、俺は決めたんだ。

 

お前が目を覚まさしてくれたら、俺はお前の想い全て受け止める。

もう絶対逃げない・・・・・・ようにする。

あの~努力するから。

 

言っておくが、この決心の有効期限はちょ~短いからな。

だから早く目を覚まさないと、期限切れちまうんだからな。

 

”にぎ”

 

ふふ、なぁ、前から思ってたんだが。

お前の手、相変わらずガサガサだな。

まったく、女の子なんだからハンドクリームつけるとかもっとケアしろよ。

 

でもな、俺この手がわりと好きなんだ。

お前の手握る度にな、ああ、お前のこの手で毎日家事してるんだよなって実感する。

お前は頑張ってんだなって。

ご飯作って、洗濯して、掃除して、裁縫してるんだって思うんだ。

あ、多分勉強もしてるよな。 恐らく。

 

本当に働き者の手だ。

だからこうやって握ってるとなんか優しい気持ちになれる。

俺はこの手が好きだ。

はっ、もしかして。

 

”すりすり”

 

・・・・・やっぱりだ。 こうやって頬にすりすりするとなんとも。

 

”ガチャ”

 

「失礼しま~す。 三ヶ木先輩?

 

 はっ、変態だ。」

 

「あ、い、いや、ち、違うんだ、蒔田。

 

 こ、これはなんでもないぞ。

 

 た、頼む、ナースコール鳴らさないで。」

 

”ジトー”

 

「いや、そんな目で見ないで。」

 

「ま、まあ、いいですけど、知ってましたから。」

 

「いや、な、なにをだ?」

 

「まぁ、いろいろとです。

 

 そんなことより、どうですかジミ子先輩?」

 

「まだ、目を覚まさないんだ。」

 

「え、そうなんですか。

 

 でも、もう三日目ですよね。 心配ですね。」

 

”ぴく”

 

「ん?・・・・・あっ。」

 

「どうした? 蒔田。」

 

「あ、いえ。

 

 ん~・・・・・・・・そうだ、えへ。」

 

「お、おい?」

 

「ねぇ、備品先輩知ってます?

 

 女の子って不思議なんですよ。

 

 とっても大好きな人にキスされると、なんか不思議な力が湧いてくるんですよ。

 

 もしかしたらその不思議な力で、ジミ子先輩が目を覚ますかもですよ。」

 

「お前それ眠れる森の美女からもってきてるだろ。

 

 それにあれは不思議な力じゃない。

 

 ちょうど呪いの有効期限が切れたからお姫様は目を覚ましたんだ。

 

 王子がキスしたからでは断じてない。

 

 たまたまだ。」

 

「ちっ、知ってたのか。

 

 でもそれって確か民話かなんかでしょ。

 

 何か元ネタにあったんじゃないかとわたし的に思うんですよ。

 

 だから、もしかしたらもしかするかもですよ。」

 

「いや、もしかしないって。」

 

「備品、いえ比企谷先輩。

 

 先輩は三ヶ木先輩がこのままでもいいんですか。

 

 このままず~と目を覚まさなくてもいいって思ってるんですか!

 

 はっ、目覚まさなければさっきみたいなことできるからって、この変態。

 

 この際、例えデマでも噂話でもいいじゃないですか。

 

 本当に三ヶ木先輩が大切って思うのなら、出来ることは何でもするのが

 

 当たり前じゃないですか!

 

 本当に、本当に大切に思ってるんですか!」

 

「お、おい。 そんなに興奮するなって。

 

 それに変態って言わなかった?」

 

「あっ、備品先輩、わたし大事な、とっても大事な用事を思い出しました。

 

 じゃ、わたし忙しいので帰りますね。」

 

”ガチャ”

 

「それでは、あとよろしくです。」

 

”スタスタスタ”

 

「良かった、良かった、良かったよ。

 

 本当に心配してたんだから。

 

 ジミ子先輩、今日は邪魔しないように帰りますね。

 

 あ、でも貸し一つですから、そこんところよろしくです。

 

 さてと、学校行って稲村先輩でもからかってこよっと。 ルンルン♬」

 

     ・

 

な、なんなんだったんだ、あいつ。

今来たと思ったらすぐ帰りやがって。

お、俺変態じゃないからな。

ちょっとした気の迷いだ。

 

それにしてもキスをすれば目を覚ますか・・・そんなわけないだろう。

そんな都合よくいくかっての。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・でも。

 

で、でも、もし俺ができることでお前が目覚ましてくれるんなら。

俺はデマでも噂話でも何でもすがりたい。

だから、俺は・・・・・・・・・

 

俺はお前にキスをする!

 

はっ、その前に。

 

”ガチャ”

 

蒔田いないよな。

あいつ、なんか最近三ヶ木に似てきて怖いからな。

よ、よし。

 

三ヶ木、覚悟しろ。 俺は今からお前に、キ、キスをする。

で、でも勘違いするな。

これは好きとか好きとか好きとかじゃなくてだな。

 

俺は、お前ともう一度話したいんだ、いっぱいいっぱい話があるんだ。

ちゃんと謝りたいんだ。

だからだ。

 

”そ~”

 

やば、三ヶ木の唇、ぷるるんって柔らかそう。

はっ、ばっかなに言ってんだ俺。

 

はぁ、はぁ、はぁ。

落ち着け、落ち着け俺。

あ、そうか顔見てるから余計なこと考えるんだ。

これだけ近づけば目を瞑っても。

よ、よし、す、するぞ。

 

・・・三ヶ木。

 

”そ~”

 

本当は俺、お前が・・・・す

 

”ガチャ”

 

「美佳、大丈夫! 

 

 え? あ゛ー! ご、ごめん比企谷君、美佳。

 

 お邪魔しました!  ごゆっくり。」

 

”ガチャ”

 

「「え!!」」

 

「は! はぁ~、お、お前、目覚ましてたのか!

 

 いつから、いつからだ。」

 

「い、いや、ちが、違うから。 いま目開けたら比企谷君が。

 

 あ、あんたこそ、なにしようとしたのよ!

 

 この変態、どスケベ、エロ八幡!」

 

「い、いや、エロ八幡はやめろ、変態も。

 

 こ、これには、深~い訳があるんだ。

 

 け、決してやましい気持ちは・・・・・・これぽっちしか。

 

 は、そ、そんなことより、今のめぐり先輩。

 

 め、めぐり先輩、ち、違う、ご、誤解だ、待ってください。」

 

”ダ―”

 

「お、おい、誤解なのかよ、今の何かの誤解なの?

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・もう、めぐねぇのばか。」

 




最後までありがとうございます。

こんな長文、ダラダラとなりすみません。
大変読みにくかったと思います。(反省です)
来年はもう少し読みやすく書ければと思います。

少し早いですが、今年も一年、こんな駄作にお付き合いいただき
ありがとうございました。

いろんなご感想いただき、ありがたかったです。
頂いたご意見を無駄にしない様、生かしていきたいと思います。

また来年、よろしくお願いいたします。

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