似て非なるもの   作:裏方さん

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見に来て頂き、ありがとうございます。

今更ながら、新年あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。
(す、すみません、もう1月・・・・・・・)

更新、大変遅くなりました。
今回夏物語編最終話ってことで、いろいろ書いてて気が付いたら、
ごめんなさい、25000字って。
2回分にわければよかったと猛反省しています。

長文ダラダラで大変読みにくく、またお時間おかけいたすと思いますが、
お付き合いいただけたらありがたいです。

ではよろしくお願いいたします。



夏のおわり -終わりと始まりと 後編-

”ドタドタドタ”

 

「廊下を走らないで下さい!」

 

「す、すみません。」

 

な、なに?

どんどん足音が近づいてくる。

でも、あの声は。

 

”ガチャ ドン”

 

ひゃ、ド、ドアが。

 

「み、美佳!」

 

「あ、と、とうちゃ 」

 

”ギュ~”

 

「ぐぅぇー、ぐ、ぐるじぃー。 と、とうちゃんぐるじぃー、ギブ、ギブ、ばなじで。」

 

とうちゃん、いきなり抱き着くんじゃない。

ぐ、ぐるしい、力、緩めて。

 

「美佳、美佳、美佳、美佳、馬鹿、美佳。」

 

”すりすりすり”

 

「いたっ、痛い、痛い、痛い、髭痛い! 刺さってる、とうちゃん髭刺さってるって。

 

 それに、いま馬鹿って言ったろ。」

 

とうちゃん、髭剃ってないじゃん。

そんな頬を擦りつけるんじゃない。

痛いよ~、チクチクってちょ~痛い。

 

「心配したんだぞ、よかった、よかった~

 

 はっ、でもこれって夢でないよな。

 

 念のため。」

 

”ギュッ”

 

「い、いた~、とうちゃん痛い、抓るなら自分のほっぺにしろ!」

 

「夢じゃないんだな、よかった、よかった。

 

 心配したんだぞ、この馬鹿娘。」

 

”なでなで”

 

「とうちゃん、ごめんなさい。」

 

とうちゃんの顔、やっぱり無精髭だらけじゃん。

へへ、こんな髭面のとうちゃんって初めてみた。

もう何日も剃ってないんだ。

ごめんなさい、それだけ心配かけてたんだね。

あ、そうだ。

 

「・・・・・あ、あのねとうちゃん、わたしかあちゃんと美紀に会ってきたの。」

 

「そうか。 どうだったかあちゃんやっぱり綺麗だったろ。」

 

「うん、とっても綺麗だった。 それに温かかった。」

 

「そうか。」

 

「美紀はね、やっぱりおデブちゃんだった。」

 

「あいつ隠れてチョコばっか食べてたもんな。

 

 よくかあちゃんに怒られてたっけ。」

 

「とうちゃん、わたしね・・・・・・・・とうちゃんとかあちゃんの子で、美紀のお姉ちゃんで

 

 ほんとによかった。

 

 産んでくれてありがと。」

 

「生まれてきてくれてありがとう、美佳。

 

 あ、でもとうちゃんは産めないから。」

 

「・・・・・・前言撤回、馬鹿。」

 

     ・

     ・

     ・

 

「お父さん、大丈夫ですよ。

 

 脳の検査も異常なし、記憶もしっかりしてるようですし。

 

 それに今のところ輸血の副作用もないようですね。」

 

「あ、ありがとうございます。」

 

「後はしっかり腕の骨折を直しましょうね、美佳さん。」

 

「はい先生。」

 

「それではお父さん、今後の予定についてお話したいので少しよろしいですか?」

 

「は、はい。」

 

”ガチャ”

 

今出て行った人が主治医の先生か。

優しそうな人でよかった。

どのくらいで退院できるのかなぁ。

後でとうちゃんに聞いてみようっと。

 

ふ~ん、そっかわたし三日間も眠ってたんだ。

なんか浦島太郎にでもなったみたい。

えっと、眠ってるうちになにかあったかなぁ、

えっとわたしのスマホ、スマホどこだ。

あ、あった、テレビの横だ。

うんしょっと。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・おい。

 

あは、あは、あははははは。

割れてる、画面が割れてるよ~。

は、も、もしかしたら割れてても動くって可能性が。

 

”ごし、ごし”

 

「・・・・・」

 

”しーん”

 

く、くそー、駄目か~。

いや、気だ、気が足りないんだ。

指先に気を集めてもう一回。

 

”ごし、ごし”

 

「・・・・・」

 

”しーん”

 

く、だ、だめ? あは、あは、あは。

はぁ~修理っていくらくらいかかるんだろ。

がっくり。

 

”ドタドタドタ”

 

はっ、また足音が近づいてくる。

そんなに走るとあの看護師さんに。

 

「ろ、廊下走らないでください! もう。」

 

「ごめんなさい。」

 

「すみません。」

 

ほら怒られたって、あれ? でもあの声って。

 

”ガチャ!”

 

「三ヶ木!」

 

「三ヶ木先輩!」

 

「三ヶ木さん!」

 

「・・・・」

 

「あ、み、みんな。」

 

やっぱりそうだ。

生徒会のみんな来てくれたんだ。

え、い、稲村君?

 

「三ヶ木、三ヶ木、はは、ほんとだ、三ヶ木が目開けてる。 開けてる、開けてるよ~」

 

”へなへなへな”

 

「三ヶ木が、三ヶ木が・・・・くうっ、うっ、うっ、うっ、うっ。」

 

「い、稲村泣くな。 しっかりしろ。」

 

「良かったです三ヶ木先輩、本当に良かったです。」

 

「稲村君、本牧君、書記ちゃん、ありがとう・・・・・・あっ」

 

な、なにドアから顔半分出して覗いてる。

マジこわ~、怖いよ会長。

今日から夜眠れないじゃん。

 

「あ、ほらいろはちゃん、早く早く。」

 

「会長。」

 

「ううう、かいぴょう~」

 

”スタスタスタ””

 

「稲村先輩、かいぴょう~ってなんですか、かいぴょう~って。

 

 人を太巻き寿司の具みたいに。

 

 ゴ、ゴホン。

 

 まったく、美佳先輩はどれだけ人に迷惑をかけるんですか。

 

 ちゃんと反省してるんですか、どれだけみんなが心配したと思ってるんですか。」

 

「は、はい、ごめんなさい。」

 

「ま、まぁ、今回は事情が事情ですから。

 

 で、でも・・・・・・・・・・・・・・・こんなのもう嫌ですからね!

 

 もう!」

 

”ガバッ”

 

「か、会長?」

 

「まったく、まったく、まったくです。

 

 いつもいつも美佳先輩は、ぐす・・・・・・・・うわぁ~ん。」

 

「会長、ごめんなさい。」

 

     ・

 

「うえ、うえ、ぐすん。」

 

「ね、いろはちゃん、あれ。」

 

「ぐす。 え、あ、う、うん。」

 

”ゴソゴソ”

 

うん、なんだ?

会長、ポケットから何取り出そうとしてるんだ?

 

「ゴ、ゴホン!  み、美佳先輩。

 

 最初に言っておきますけど、これはみんなが言うから、し、仕方なくだからですからね。」

 

「いいから、会長。」

 

「そうだよ、いろはちゃん。」

 

「かんぴょう。」

 

「稲村先輩、いま完全に干瓢って言った。

 

 も、もう。 はい美佳先輩、これ。」

 

”サッ”

 

「え、あ、はい。

 

 ん? これって、か、会長。」

 

「いや、違うから、違うから。 

 

 書記ちゃんが、書記ちゃんがだからね。」

 

 

 

 

----話は花火大会の前日 いろはの部屋----

 

 

 

 

「・・・だからね、いろはちゃん。」

 

「だめ。 絶対に駄目。

 

 林間学校の時にも言ったでしょ。」

 

「絶対に駄目?」

 

「絶対に駄目。

 

 それよりほらケーキ食べよ。

 

 総武駅前のケーキ屋さん、とっても美味しんだよ。」

 

”ドン!”

 

「えっ、しょ、書記ちゃん。」

 

「・・・・・いろはちゃん、生徒会役員の管理は会長の責任だよね。」

 

「え、あ、う、うん。」

 

「だったら、役員の不祥事は会長にも責任あるよね。

 

 わたしは役員だけが一方的に処罰されて、管理者である会長か処罰されないのは

 

 おかしいと思います。」

 

「わ、わたしは 」

 

「会長、総武高生徒会会長!」

 

「あ、は、はい。」

 

「会長が決められた一色いろは生徒会条例に基づき上程します。

 

 三ヶ木庶務に対する処罰は重すぎると思います。

 

 わたしは処罰の妥当性について、生徒会式多数決による決議を上程します。」

 

「え、そ、そんな。」

 

「いいですね!」

 

「で、でもわたしには会長票で3票あるから。」

 

「ふふん、あまい!

 

 牧人君、いえ副会長がわたしの意向に逆らうとでも?

 

 稲村先輩は言わずもがなですよね。

 

 だから処罰に対する反対票は3票。」

 

「で、でもそれなら同数じゃない。 はっ!」

 

「そう、同数なら決議にはいたらない。

 

 なら処罰もできないよね。 決議が出るまでは審議継続中ってことになるよね。」

 

「え、で、でも 」

 

「まぁ、三ヶ木先輩がいれば、三ヶ木先輩のことだから会長に賛成するでしょうけど。

 

 今回の案件はご本人の処罰に対する案件ですから議決権は無いよね。

 

 だからこの案件はずっと審議継続中。」

 

「書記ちゃん。」

 

「・・・・・」

 

「・・・・・」

 

「ね、いろはちゃん。

 

 いろはちゃんの想い、みんなわかってるよ。

 

 一番辛かったのはいろはちゃんだってことも。

 

 えっとなんだたっけ、ほら”泣いて馬謖をぶった切る”とかいうやつでしょ。

 

 みんなわかってる。」

 

「で、でも何も無しってできない、なにも処罰しないってできないよ。

 

 それじゃ、会の規律が。」

 

「それなんだけどさ、あのね 」

 

”ごちょごちょ”

 

 

 

 

----そして今 美佳の病室----

 

 

 

 

これって腕章だよね。

生徒会に腕章なんてあったっけ?

それになんか手づくりっぽい。

えっとなんて書いてあるの?

 

「み・な・ら・い♡・・・・・・・見習い?」

 

「そうです。 見習いです。

 

 美佳先輩には役員見習いから始めてもらいます。

 

 いいですか、見習い期間中に何か問題起こしたら、即一発で退場ですからね。」

 

「え? あ、あのう話が見えてこない。」

 

「も、もう馬鹿ですか。 

 

 美佳先輩を、もう一回生徒会庶務に任命しますってことです。

 

 但し、見習いからですけど。」

 

「は、う、うそ、い、いいの。 

 

 わたし生徒会でいいの。」

 

「今回だけですからね。

 

 だから、もう絶対に駄目ですからね。」

 

「う、うん。」

 

「よかった。

 

 みんなで、みんながいるから一色いろは生徒会。

 

 だよね、いろはちゃん、副会長、稲村先輩・・・・・それと三ヶ木先輩。」

 

「仕方ないです。」

 

「ああ。」

 

「そうだ。」

 

「ありがと、ありがとみんな。」

 

     ・

 

「ひぇ~こわ。」

 

「もうやめてよ、いろはちゃん。

 

 ま、牧人君違うから、ひ、必死だっただけだから。」

 

「ほんとうなんですよ。

 

 もう、めっちゃ怖かったんですから。」

 

「なによ、いろはちゃんだって腕章つくってる時、すごく嬉しそうだったじゃない。

 

 るんるん♬って鼻歌歌って。」

 

「げ、ち、違うから。」

 

”ワイワイ、ガヤガヤ”

 

「見習いか。

 

 まぁなんだ、お前のいるべき場所に戻れて良かったな三ヶ木。

 

 今日はこのまま会わずに帰るわ、また明日な。」

 

 

 

 

--------

 

 

 

 

「とうちゃんもう大丈夫だから。

 

 心配しないでお仕事頑張って。」

 

「そ、そうか。」

 

「あっ、今日早く帰ってこれる?」

 

「ん、なんだ、なにか用か?」

 

「あ、あのね、あのさ・・・・・・・

 

 うううん、何でもない。

 

 そうだ、ごめんとうちゃん、下着の替えを持ってきて。

 

 パジャマは借りられたけど下着が。」

 

「ああわかった。 じゃあ行ってくるな。」

 

”ガチャ”

 

「うん、行ってらっしゃい。」

 

たははは、やっぱあのこと言えなかった。

どうしょう。

くそ、このわたしの根性なし。

 

あっ、でも下着を持ってきてほしいのは確かだよ。

だって今日のわたしはパジャマの下、ノーブラ、ノーパンだもん。

とうちゃん、風邪ひく前にお願いっす。

 

     ・

     ・

     ・

 

”トントントントン”

 

「ほほう、それじゃ、わたしの顔についたゴミを取ろうと思ってただけだと。」

 

「そ、そうだ。 別にやましいことを考えていたわけではない。」

 

「はぁ~」

 

あ~頭いた。

あのさもう少し何かいい言い訳なかったの?

例えば、あ、ほらよくあるじゃん、額と額合わせてて熱を測ろうとしたとかさ。

・・・・・つ、つ、ついムラムラしたとかでもいいけど。

そのほうがわたし的には。

はぁ~、よりによってゴミときたか。

思いっ切りウソってわかるんだけど。

 

「え、あ、あの~三ヶ木さん、頭かかえられてどうなされ 」

 

”ドン”

 

「正座!」

 

「は、はい。」

 

「あのさ、一晩考えてやっとそんな言い訳?

 

 言っておくけど、わたし昨日一晩中眠れなかったんだからね。

 

 眠ろうとすると、ひ、ひ、比企谷君のキス顔が迫ってきて・・・・・」

 

そうなんだ。

瞼を閉じるたび比企谷君のキス顔を思い出しちゃって。

もう、心臓がドキドキして全然眠れなかったんだから。

せ、責任とってよね。

 

「ま、待て、違う、キスしようと思ったわけじゃない。

 

 さっきも言った通りゴミを取ろうと思っただけだ。

 

 冤罪だ。」

 

「・・・・・・あのさ、目、瞑ってたよね。」

 

「はっ。」

 

「しっかり目を瞑ってたよね。

 

 君は目を瞑っててもゴミ取れるのかなぁ~」

 

「ぐっ。」

 

「それにあんなに顔を近づける必要あったのかなぁ~

 

 口は蛸の口みたいだったし。」

 

「お、お前間違ってるぞ。

 

 蛸の口はだな、足の 」

 

「えーいうっさい! ほんとのこと言う!」

 

「蒔田だ、蒔田。 あいつが悪いんだ。

 

 蒔田がキスすればお前が目を覚ますっていうからだな 」

 

「キスをすれば目を覚ます?

 

 あのさ、眠れる森の美女じゃないんだから。

 

 ・・・それにわたし美女じゃないし。」

 

「い、いやそれはわかってる。」

 

「おい、今のどっちがわかってるって言ったんだ。」

 

”ガチャ”

 

「こんちわ、ジミ子先輩。 げっ、修羅場!」

 

「あ、舞ちゃん、いいとこに。

 

 あのね比企谷君がさ、 」

 

     ・

 

「はぁ~? わたしそんなこと言ってませんよ。

 

 それって眠れる森の美女のお話でしょ。

 

 そんな子供でも童話のお話ってわかるようなこと言うはずないじゃないですか。」

 

「お、おい、蒔田。」

 

「あっ、それにジミ子先輩、わたしお見舞いに来た時に見ちゃったんですよ。

 

 この変態が先輩の手を握って、自分の頬にスリスリってやってたんですよ。

 

 こうスリスリって感じで。

 

 わたしキモくてびっくりしました。」

 

「はぁ? はぁっー! お、お前わたしの手で何やってたんだ!」

 

「い、いや、それは、ちょっと気の迷いってことで。」

 

「はけ! やったんだな。」

 

「は、はい。 すみません、やりました。」

 

「もしかしたらジミ子先輩が眠ってるのをいいことに、もっとイヤらしいことしてたかも。」

 

「おい! 貴様、わたしに何したんだ。 いいから正直に言ってみろ!」

 

「蒔田、お前!」

 

「ジ、ジミ子先輩、わたし大切な用事を思い出したので失礼しますね。

 

 あ、これジミ子先輩の大好きな駅前のケーキです。

 

 よかったら食べてください。」

 

”ガチャ”

 

「それではです。

 

 備品先輩、生きてたらまた会いましょうね。

 

 くわばら、くわばら。」

 

”ダ―”

 

「お、おい。」

 

「ひ・き・た・に君、納得いく説明してもらおうかなぁ~。」

 

「あ、あの~、怒らない?」

 

「無理!」

 

”べし”

 

「ぐはぁ!」

 

     ・

     ・

     ・

 

「はぁ~頭いた。 まぁいい、信じてあげる。」

 

「お、おう。」

 

「でもキスしようしたのは認めるんだね。」

 

「・・・・・はい。」

 

「わたしの大事なファーストを、わたしが寝ている間に奪おうとしたんだよね。」

 

「・・・・・はい、すみません。」

 

「あ、あのね、ほんとに、す、少しもやましい気持ちなかったの。」

 

「おう、少しもない!」

 

「頬スリスリしただけで、他に何もしなかったの?」

 

「おう! 断じてない! そんなこと思うはずがない。 俺の理性を舐めるな!」

 

いや、あんたそこは胸張らなくても。

でも・・・・・・わたしってやっぱり魅力無いのかなぁ。

キ、キスぐらいさ、ドバッてしちゃえばいいのに。

そ、それに手のス、スリスリだけでなく、あんなことやこんなことも。

はっ、なに考えてるんだわたし。

 

でも、わたしじゃなくて結衣ちゃんとかゆきのんだったらもしかして・・・・

 

く、くそー、なんかくそー

 

「ゆるさん!」

 

「す、すみません。 な、なんでもさせて頂きますから、つ、通報だけは。」

 

「ほんと?」

 

「は、はい、できる範囲でお願いします。

 

 慰謝料はできるなら、50年分割でお願いできたらと。」

 

「じゃあさ、・・・・・・・・・・は、ハグして。」

 

へへ、出来ないよね。

ヘタレの比企谷君が出来るはずない。

ちょ、ちょっと傷ついたんだからね。

 

『おう、少しもない!』

 

『おう! 断じてない! そんなこと思うはずがない。 俺の理性を舐めるな!』

 

くそ、胸張って言いきりやがって。

どうせわたしは魅力ないですよ~、べ~だ!

わかってても悔しい。

 

・・・・・い、いじめてやる。

どうせハグなんてできないのわかってるから、次はなんて言って困らせようかなぁ。

あ、そうだ美佳って呼ばせよう、百回くらい。

 

「ハ、ハグ出来ないんなら、み 」

 

”だき”

 

「は、え? あ、あれ?

 

 ひ、比企谷君。」

 

う、うそ。

ちょ、ちょっと待って。

あれ? ち、違う、こんなはずが・・・・・

あのヘタレ君にハグされてる。

 

”ドクドクドクドク”

 

や、やばいやばい、心臓が、心臓が爆発する!

ど、どうしょう、こんなはずじゃ。

 

「なぁ、三ヶ木。」

 

「え、な、な、な、なに?」

 

「・・・・・あのな。」

 

「・・・・・うん。」

 

「おかえり。」

 

「あ、う、うん・・・・・ただいま、比企谷君。」

 

     ・

 

くそ~卑怯もの。

ヘタレのくせに生意気。

ほんとはもっともっと困らせたかったのに。

だ、だめだ、なんにも考えられないや。

このまま、ずっとこのまま抱きしめてくれてたら。

 

「・・・・・・・あの。」

 

「うん?」

 

「・・・・な、なぁ三ヶ木。」

 

「な、なぁに。」

 

「お前、ノーブラなのか。」

 

「はぁ?・・・・はぁ!」

 

「いや、さっきからだな、む、胸があたってだな。 そのツンって・・・・・」

 

はっ、し、しまった。

今日のわたしは・・・・・

しっかしこの野郎、べ、別に口に出して言わなくてもいいじゃん。

そ、そこはだまって堪能しろ。

だ、だって仕方ないじゃんか、替えの下着ないんだもん。

く、くそ~

 

”ボロ”

 

へ、へぇ?

あれ、何で?

 

”ポロ、ポロ、ポロ”

 

「はっ、み、三ヶ木、お前 」

 

え、わたし何で泣いてるの?

こんなことぐらいでなんで涙が。

ほ、ほら、いつもみたいに”べし”って・・・

”べし”って・・・・

 

”ポロ、ポロ、ポロポロポロポロ”

 

「あれ、おかしいな、なんでだろう。

 

 ご、ごめんね、な、何でもないから、すぐ止まるから。」

 

「三ヶ木、す、すまん。」

 

「だ、大丈夫。 ごめん、気にしない・・・・で。

 

 うううううう。」

 

何だろうこの気持ち、何か変だ。

いつもと違ってなんかすごく恥ずかしくて、とっても悲しくて。

もう、なんだかわからないけど・・・・とってもやだ。

 

”コンコン”

 

「あ、はい。」

 

’ガチャ”

 

「三ヶ木さん、検査の時間ですよ。」

 

”バッ”

 

「はい、い、今行きます。

 

 あ、ごめんね、検査行ってくる。

 

 ・・・・・ほんと何でもないから気にしないで。」

 

「お、おう。」

 

     ・

 

”ブ~、ブ~”

 

「この電話は現在も未来も使われておりません。 では。」

 

”プー、プー”

 

「これでよし。」

 

”ブ~、ブ~”

 

「この電話は 」

 

「なに言ってるんですか、先輩!

 

 いきなり切らないでください。」

 

「いや、だからこの電話は 」

 

「もうそれいいです。

 

 まったく、可愛い後輩からの電話なんですから、そこはちゃんと喜んでください。

 

 やり直し。」

 

「わーい、うれしいな。」

 

「な、なんですかその棒読みは!

 

 も、もういいです。」

 

「で、何の用だ?」

 

「あのですね、美佳先輩近くにいます?」

 

「三ヶ木に用事だったのか? なんで俺に電話してんだ。」

 

「だって、先輩ずっと美佳先輩の病室に入り浸ってるっていうから。」

 

「いや入り浸ってるわけでないんだが、まぁ責任とかあるしな。

 

 三ヶ木ならさっき検査に行ったぞ。」

 

「責任? そうですか。

 

 美佳先輩、近くにいないんですか。

 

 ・・・・・それなら。

 

 先輩、わたし折り入ってお話があるんです。

 

 少しいいですか?」

 

「なんだ。」

 

     ・

     ・

     ・

 

”スタスタスタ”

 

ふぅ~、気持ちおさまった。

なんだったんだろう、なんであんなになっちゃったのかなぁ。

どうかしてたわたし。

比企谷君に悪いことしちゃった。

よし、ちゃんと謝ろう。

 

”ガチャ”

 

「お待たせ! えっと比企谷君あのさ・・・・・・比企谷君?」

 

あれ、いない。

はっ、ベッドの下。

 

「ん~と。」

 

いない、まぁ、いるわけないか。

もう帰ったのかなぁ。

あっメモだ、なになに?

 

『用事できた。

 俺帰る。

          比企谷』

 

みじか! 電報でももっと長いだろうが。 

・・・・・そっか、帰ったんだ。

ちゃんと謝りたかったのになぁ。

 

”ツー”

 

ぐす、あれ、おかしい。

なんでまた涙出てくるんだ。

ほんと、わたし変だよ。

どうしたんだろう。

わたしなんでこんなに弱くなっちゃったんだろう。

・・・・・だめだこんなんじゃ。

 

 

 

 

--------

 

 

 

 

8月17日

突然ですまぬ、すまぬでござる。

へへ、今日から日記つけるね、名付けて三ヶ木闘病日記”MFDD”

うん、なんかかっこいい。

 

え、なんで突然日記なんだって。

だって暇なんだもん。

個室っていいなぁって思ったけどそれは最初だけ。

誰もいなくて暇、暇、暇、暇なんだよ。

いつもだったら今頃は、晩ご飯作って、お風呂沸かして、洗濯して、ちょっと勉強して。

んで、とうちゃんとテレビ観ながら馬鹿話して。

でも今は。

 

”し~ん”

 

だから日記書くことにしたの。

え、テレビでも観てろって?

だってお金かかるんだよ、16時間ぐらいで1000円。

1000円だよ、1000円!

チロロちゃんが箱買いできるんだよ。

それにわたしスマホ直さないといけないから節約節約なんだ。

だから時間潰しに日記なの、退院するまで書き続けるの!

 

でも、でもね、ほんとの理由は・・・・・・・・

 

まぁいいや。

えっと前置きはこれぐらいにしてっと。

あのね、今日沙希ちゃんが来てくれたの。

そんでさ・・・・・

 

 

-・-・-・-・-・-

 

 

「ごめんなさい。」

 

”ペコ”

 

「もう、だからほんと気にしないでって。

 

 わたしが勝手にやったこと、ね、沙希ちゃん頭上げて。」

 

「本当にごめんなさい。」

 

さっきからずっとごめんごめんって。

ごめん以外の言葉、何も聞いていない。

このままだとずっと沙希ちゃんはこのこと引きずるんだろうなぁ。

やだな~

会うたびにごめんって言われそう。

これじゃ以前みたいな関係に戻れないよ。

 

もともとね、わたしが勝手にやったことなんだ。

一瞬、けーちゃんに美紀の姿が重なって。

あの時できなかったこと、ずっと後悔してたこと。

それは・・・・・助けに行けなかったこと。

 

だからわたしは、わたし自分のためにやったことなの。

わたしがケガしたことで、沙希ちゃんに謝られる筋合いは無いんだ。

けーちゃんが無事だった。

それだけでいいんだよ。

 

「あたし、あたしが悪かったんだ。

 

 けーちゃんの手しっかり握ってなかったから。

 

 あたし何でもします。 ごめんなさい。」

 

”ピキッ!”

 

何でもしますだと。

いま何でもしますって言ったの。

何だそれは!

そんなの、そんなのやだ、絶対に嫌だ!

そっちがその気なら。

 

「だめ! 絶対許してあげない!」

 

「み、三ヶ木。」

 

「あ~腕痛いな~

 

 頭も痛い、痛い、痛い、全部痛いな~」

 

「ご、ごめんなさい。」

 

「まだしばらく退院出来そうもないし。」

 

「ごめんなさい。」

 

「病院のご飯って美味しくないんだよな~」

 

「そ、そうなんだ。」

 

「あ~あ、カレーライス食べたい。」

 

「わ、わかった、あたしが作ってきてあげる。」

 

「だめ。」

 

「え?」

 

「さっきさ、何でもするって言ったよね。」

 

「う、うん。」

 

「・・・・・だったら、一緒にカレー作ろ。」

 

「え!」

 

「ほら、わたし腕こんなじゃん。

 

 まだしばらく一人じゃカレー作れそうにないから、だから、一緒にカレー作って。」

 

「み、三ヶ木。」

 

「何でもするって言ったよね。

 

 あ、もちろん退院してからだけど沙希ちゃん家でね。」

 

「あたしの家?」

 

「そんでさ、けーちゃんと大志君とみんなで一緒に食べよう。

 

 あの時みたいに。」

 

「三ヶ木。」

 

”べし”

 

「あいた!」

 

「わたし、これでも沙希ちゃんの親友のつもりだよ。

 

 だのに、なにささっきの”何でもします”って。

 

 親友に言うことじゃないじゃん、めっちゃ腹立った。」

 

「ご、ごめん。」

 

「もう、無しだよ。」

 

「う、うん。」

 

「へへ、カレー楽しみ。」

 

「・・・・・三ヶ木、よだれ垂れてる。」

 

 

 

 

--------

 

 

 

 

8月18日

 

今日さ、うううん。

今日も刈宿君来てくれた。

 

なんか部活行く前だって言ってたね。

ジャージにポロシャツ、白い帽子にラケット肩かけて、そんで日焼けした顔に白い歯。

うん、やっぱ、彼にはこの姿がよく似合う。

根っからのスポーツマンだもんね。

 

あのさ、なんか最近、刈宿君見ると変なんだ。

いや、その好きとかそんなんじゃなくて。

なんか似てるんだけど違うの。

親近感っぽいのかなぁ。

なんだろう、なんかおかしいっす・・・・・・・あれ?

 

あ、そうそう、義輝君も来てくれたんだ。

頼んでたもの持ってきてくれて、それはいま枕元に。

えへへ、ちょっと幸せ。

 

でも今日も彼は・・・・・・・・・・・どうしたんだろう。

やっぱりあの時、わたし変だったから嫌になっちゃったのかなぁ。

 

 

-・-・-・-・-・-

 

 

”ガチャ”

 

「美佳先輩、おはよっす。」

 

「あ、刈宿君おはよ。 いつもありがと。」

 

「部活行くついでっすよ。」

 

部活行く途中か。

へへ、でもこの前はラケット持ってなかったよね。

ありがと。

だって、あいつなんかあれ以来・・・・・・

ま、まぁ、彼も受験生だから、塾とかいそがしいんだ、きっと。

 

「あ、美佳先輩、はいこれ。」

 

「え、あ! わたしの眼鏡。」

 

「うっす。 あの後、現場行って見つけたんですけど、レンズ割れてたんで遅くなったっす。」

 

「え、直してくれてたの?

 

 いくらだった? お金払うよ。」

 

「いいっす。 勝手にやったことっす。」

 

「だめ!

 

 あのね、こういうことはちゃんとしないといけないの。」

 

「じゃ、今度また試合に応援に来てくださいっす。」

 

「でも、そんなんじゃ足りないよ。」

 

「俺にはそれで十分っす。」

 

「うん、わかった。

 

 あ、お弁当作って持っていくね。

 

 でもよかった。 あのね、この眼鏡わたしの宝物なの。」

 

「へー、誰かにプレゼントされたとか?」

 

「うん、前の生徒会の先輩にもらったの。」

 

「そっすか。 ち、ちなみに男子っすか?」

 

「うううん、女子だよ。 へへ、なんかいろいろ思い出しちゃった。」

 

「どんな先輩だったんすか?」

 

「めっちゃ怖くてね、いっつも怒られてた。

 

 でもね、ほんとはすっごく優しい人だったんだよ。」

 

そうなんだ。

文実の時とか何回も資料作り直させられて。

でもOKって言ってもらった時はめっちゃうれしくて。

褒めてくれた時の三増先輩の笑顔は忘れられないや。

 

はっ、そういえばもうすぐ文化祭だね。

えっとある程度の資料は整理してパソコンの中に入れてあるけど。

くそ、早く退院して準備しなくちゃ。

で、でも、なつかしいな。

もうすぐ一年になるんだね。

あの時、わたしは初めて彼のこと意識して。

それからわたしはずっと・・・・

 

「ふふ、ふふふふ♡」

 

「な、なんすかその笑い、それにその腑抜けた顔!」

 

「え、あ、ちょ、ちょっとね。」

 

「まぁいいすよ。 どうせあいつのこと考えてたんでしょうから。」

 

「あ、い、いや、その・・・ごめんなさい。」

 

「・・・・・美佳先輩。

 

 もし、もしもですけど、俺が2年早く生まれてて、あいつより早く美佳先輩に会えてたら 」

 

「刈宿君。」

 

「あ、す、すみません。」

 

”ガチャ”

 

「ぬほほん、三ヶ木女子、我が忙しいのを無理して見舞いに参上したのだ。

 

 ありがたくひれ伏せ~い。」

 

「いや、忙しいのなら無理して来なくていいけど。

 

 それにひれ伏さないといけないの?」

 

「なんすか、この人。」

 

「げ、きゃ、客人。 す、すみません、我は、いえ、僕は材木座といいます。

 

 失礼いたしました。」

 

「ごめんね刈宿君。 これ、わたしの幼馴染なんだ。」

 

「そっすか。 

 

 あっ、美佳先輩、俺そろそろ行くっす。」

 

「あ、うん。

 

 部活、頑張ってね。」

 

「あ、あの、美佳先輩。」

 

「ん?」

 

「あ、あの・・・・」

 

「ん、どうしたの?」

 

「あ、い、いえ何でもないっす。

 

 じゃ部活、行ってくるっす。」

 

「うん、行ってらっしゃい。」

 

”ガチャ”

 

「ふむ、かの御仁が刈宿殿か?」

 

「あ、うん。」

 

「ふむ。」

 

「な、なに?」

 

「我もAB・・・・・

 

 いや、な、なんでもない。

 

 ほれ、お主が我に懇願してたものだ。」

 

「え! あ、ありがとイレギュラーヘッドのイベント限定下敷き。

 

 やば! ちょ~素敵。」

 

”ちゅっ”

 

へへ、イレギュラーヘッド様とキスしちゃった。

めっちゃほしかったんだ。

だって、なかなか単独のポスターとか手に入らないんだもん。

へへ、ここに立てかけてっと。

ふぇ~、幸せ~。

 

”デレデレ”

 

「あ、あの~三ヶ木女子・・・・」

 

「あ、ごめんね義輝君、つい嬉しくて。」

 

「いやもう慣れたからいいが、本当に三ヶ木女子はイレギュラーヘッドが好きなのだな。」

 

「えへ、この目に見つめられるだけでもうだめ。

 

 あ、ごめんねイベント一緒に行けなくて。」

 

「まあ、秋にもイベントあるのでな。」

 

「うん、今度こそ一緒に行こうね。」

 

「なれば今回のコスは我が保管しておくとしよう。」

 

「え、またコス準備してたの?

 

 ち、ちなみにどんなコスを準備してくれてたの?」

 

”ゴソゴソ”

 

「ほれ、このスマホの画像を見よ! 今回のはこのやおもも桃子女子だ!」

 

”ドゴッ”

 

「ぐぅお~」

 

「行かん、絶対行かん。

 

 やおももはだめって言っただろ。

 

 なんだそのコスは、胸のとこ開きすぎだろ!

 

 み、見えちゃうじゃんか!」

 

「けふこん、それはサービスということで。」

 

「するか!」

 

「仕方ない、それでは葉隠 」

 

”ボゴッ”

 

「げふっ」

 

「お、おい、彼女は透明人間だろ。

 

 義輝君、わたしに何を期待しているんだ。」

 

「ゴホン、じょ、冗談に決まっておろう。

 

 まぁ、それはそうと三ヶ木女子、入院生活はさぞかし暇であろうな。」

 

”ギクッ”

 

「え、あ、い、いや、結構忙しいかなぁ~

 

 ほ、ほら検査とかあるし。」

 

”ゴソゴソ”

 

「むははははは! 遠慮は無用だ、我とお主の中ではないか。

 

 ほれ我の新作だ。

 

 喜ばれい! 暇で退屈な三ヶ木女子のために徹夜で書きあげたのだ。

 

 一番最初に読ませてやろうではないか。」

 

「あ、だから暇じゃなくて。

 

 あ、そうだ!

 

 ひ、比企谷君、ほら彼なんか読みたそうなこと言ってたよ。」

 

ごめん、比企谷君。

だってお見舞い来てくれないんだもん。

だから意地悪。

これぐらいいいよね。

 

「ふむ、だがあやつは最近忙しいらしくての。

 

 なんど電話してもすぐ切られてしまうのだ。

 

 メールは返ってこないし。

 

 まぁ、三ヶ木女子は暇であろう、感想も聞かせてもらおうではないか。

 

 ちなみに我はその下敷きを入手するのに1時間は並んだのだが。

 

 おかげで魔法少女くるくるくるみのステージ見逃した。

 

 ふむ、ちょ~楽しみにしていたのだがな、魔法少女くるくるくみのステージ。」

 

「わ、わかった。

 

 もう、そこに置いてけこの野郎。

 

 神に誓って粛清してやる!」

 

「げ、マジ切れ。」

 

 

 

 

--------

 

 

 

 

8月19日

 

えっといつからだろう。

そうだ一昨日からだ。

わたしの病室には二つの花瓶置かれてるんだ。

 

一つの花瓶には比企谷君がもって来てくれたらしい花が生けられている。

わたしが眠っている間のことだからよくわからない。

とうちゃんもはっきりとは憶えていないらしい。

今度聞いてみよう。

・・・・・彼が来てくれた時にでも。

 

もう一つの花瓶は一昨日から置かれてるんだ。

そこには毎日違う花が数本づつ加えられている。

今日の花はガーベラだ。

花っていいね、なんか元気が出てくる。

やっぱり看護師さんかなぁ。

なんかすごく優しそうな人だった。

とってもうれしい。

 

あ、あのね、今日はさがみんが来てくれたんだ。

誰も連絡してなかったみたいで。

なんか結衣ちゃんから今日聞いたんだって。

何で連絡しないって散々怒られた。

だって、わたしのスマホ・・・・・

それにわたし撥ねられちゃったなんていえないじゃん。

あっ、それでね、さがみん帰るときに。

 

 

-・-・-・-・-・-

 

 

「じゃあ帰る。」

 

「あ、うん。 ありがとさがみん♡」

 

「さがみん言うな!

 

 ・・・・・あ、あのさ、うち・・・・文実やってみようと思う。」

 

「え?」

 

「あんたどう思う。

 

 やっぱりやめたほうがいいと思う?」

 

めっちゃ思いつめた表情。

そっか、さがみんは逃げずにちゃんと向き合いたいんだ。

強くなったねさがみん。

お姉さん泣けてくるよ、よよよ。

って茶化してる場合じゃない。

第一わたしのほうが年下だし半年ほど。

 

「マジなんだね。」

 

「・・・・・うち、やってみたい。

 

 うううん、やらないといけない。」

 

そっか。

それならわたしは。

 

「わかった、さがみん。

 

 わたしも一緒にやりたい。

 

 ね、一緒に文実やろう。」

 

「・・・・・

 

 ま、まぁ、あんたがそれほど一緒にやってほしいって頼むんなら仕方ない。

 

 一緒にやってあげる。

 

 か、感謝しなさい。」

 

え、いや、お、おい、あんたが。

それはちょっと引くよ。

まぁ、さがみんだから・・・・いっか。

 

「あ、でもそれはあんたが退院出来ればだけどね。

 

 だから、早く退院してよね。」

 

「おう、頑張る。」

 

「まぁ、せいぜい頑張れば。

 

 ・・・・・・・・・待っててあげるから。」 

 

”ガチャ”

 

「あ、あのさ。」

 

「うん?」

 

”ひらひら”

 

「またね。」

 

「あ、うん、さがみん、またね。」

 

さがみんのこと、すこしうらやましい。

わたしも、わたしも強くなりたい、見習いたい。

あ~あ、だめだ。

入院してるとだんだん気持ちが弱くなっちゃうよ。

はやく退院したいなぁ。

 

”ガチャ”

 

「やっほー、美佳!」

 

「めぐねぇ! 座って座って。」

 

「お、元気そうでよかった。

 

 ほれこれ差し入れ。」

 

「わ、わ~い、ケ、ケーキだ、う、うれしいな~」

 

げ、やば。

またケーキだ、今日2個め。

なんかみんなして、ケーキ持ってきてくれる。

好きだからうれしんだけどさ。

ちょ、ちょっとこのお腹が・・・・・・

 

「おや、今日は彼氏来てないのかなぁ~」

 

「ち、違うから。」

 

「病室でキスしてたくせに。 きゃ~、美佳大胆。」

 

「ちが~う、し、してないから、まだしてないから。

 

 あれは、み、未遂だし。」

 

「まぁ いいや。」

 

いいのかよ。

あの後大変だったんだからね。

あれから夜は眠っれないし、ハグされるし、えへへへ。

まったくあん時さ、めぐねぇが来なければ、わたし・・・・・きゃ~、美佳大胆。

 

”パコッ”

 

「あいた!」

 

「なにその腑抜けた顔。

 

 まぁ、それより今の相模さんだよね。」

 

「あ、うん。」

 

「へ~、美佳って相模さんと仲良かったっけ?」

 

「まぁ、いろいろありまして。

 

 あ、めぐねぇ、さがみん文実やりたいんだって。」

 

「え? さがみん、さがみんって呼んでる!」

 

「いや、そこじゃなくて。」

 

「あはは、わかってるって。

 

 そっか、でも去年の文実の人いると辛いよ。

 

 たぶんそっからいろいろ話広がると思うから。」

 

「うん、でもわたしも一緒にやりたい、応援したい。

 

 さがみん、たぶんちゃんと自分に向き合いたいんだと思う。」

 

「わかった。 美佳がそういう気持ちなら頑張ってフォローしてあげて。」

 

「うん。」

 

「それで、どこまでいったの比企谷君と。」

 

「・・・・・・・」

 

”こちょこちょ”

 

「ほら、はけはけ。」

 

「ぎゃは、こ、こしょばいって、や、やめて~

 

 あ、う、腕痛い。」

 

 

 

 

--------

 

 

 

 

8月23日

 

げ、いきなり飛んでる!

なに三日坊主。

うううん違うよ。

ちゃんと書いているよ。

結衣ちゃんとかゆきのんがケーキ持って来てくれたこととか、

広川先生がケーキ持ってきてくれたこととか。

いや、またケーキ。

どうしよう、このお腹、マジやばい。

 

・・・・・だけど。

 

比企谷君、なんか忙しいのかなぁ。

とうちゃんにスマホ借りて電話してみようかなぁ。

なんか知らないうちにアド交換してたし。

何があったんだ二人の間に。

あ、でも義輝君もなかなか話できないって言ってた。

まぁ、じゅ、受験生だもんね、受験生だからだね。

 

とうちゃんから聞いたんだけど、わたしが目を覚ますまでずっと付き添っててくれたって。

ほんとにうれしい。

十分すぎる。

それ以上、わたし何を期待してるんだ。、何を欲してるんだ。

 

・・・・・彼女でもないくせに。

 

ちゃんと現実をみなくちゃ。

比企谷君は、事故に対する責任を感じてただけ。

元々何の責任もないのに。

ただそれだけのこと。

それ以上でもそれ以下でもない。

だって、ほんとはあの日わたしは比企谷君に・・・・・

 

あっ、今日も花変わってる。

これって確か百日草だ。

色とりどりで綺麗だね。

ちゃんと看護師さんにお礼言わなくちゃ。

ほんと、毎日元気もらってる。

 

・・・・比企谷君の持ってきてくれたと思われる花、もう枯れちゃったね。

結局聞けなかった。

 

今日はもう寝るね。

なんか疲れちゃって。

 

おやすみなさい。

 

明日は彼・・・・・うううん、いい。 なんでもない。

 

 

 

 

--------

 

 

 

 

8月27日

 

またとんだ。

ごめんなさい、今度はほんとにとびました。

 

あの日から何も書けなくて。

日記に書いてあるのは日付だけ。

 

えっと突然ですが今から退院です。

だから、今日でこの日記も終わりです。

 

わたし、退院します。

病院からも・・・・・わたしのこの気持ちからも。

 

刈宿君に知られたら、またデコピンされちゃうね。

で、でもごめん。

やっぱりだめなんだ。

わたしは彼にとって、ただの、ただの・・・・なんだろう、友達?

振られても友達でいてくれるのかなぁ。

退院、する前にもう一度、会いたかったなぁ。

ずっと待ってたのに。

 

うううん。

わたしね、もうこれ以上、自分勝手な期待抱かないんだ。

そんなの辛いだけだから。

 

わたしもっと強くならないと。

でも今はごめんなさい、ちょっと無理みたい。

 

だけど、もう今日は泣きません。

だって、昨日いっぱいいっぱい涙流したから。

もう泣きません。

いつか、いつの日かちゃんと今のわたしに向き合えると思うから・・・・・

 

あ、とうちゃん呼んでる。

それではお別れです。

今までありがと。

わたし、頑張るから。

 

”パタ”

 

「ふぅ~」

 

「美佳、忘れ物ないか?」

 

「う、うん。とうちゃん。」

 

”キョロキョロ”

 

「ん、どうした?」

 

「・・・・・・うううん、なんでもない。

 

 もう忘れもの無い。

 

 さ、帰ろとうちゃん。」

 

「ああ。」

 

     ・

     ・

     ・

 

”ガタンガタン、ガタンガタン”

 

もうすぐ家に着くや。

久しぶりの家だ。

電車の窓から見える景色がなんか懐かしい。

 

”ツー”

 

げ、ち、違うからね。

こ、この涙は景色が、景色が懐かしかったからだからね。

わたしは、わたしは・・・・・・・・・

ほんと、何でこんなに弱くなっちゃったんだろ。

 

「美佳、どうした?」

 

「あ、うん、なんか懐かしくなっちゃって。」

 

「そうか。 そろそろ着くからな。」

 

「うん。」

 

     ・

     ・

     ・

 

つ、ついた! 

久しぶりの我が家だ。

う~ん、ボロ。

どっから見てもボロ。

 

「うんしょっと。」

 

へへ、股の下から逆さに見ても・・・・・やっぱりボロだ。

間違いない、ここは掛け替えのないとうちゃんとわたしの家。

 

「何やってんだ美佳?」

 

「へ? あ、な、なんでもない。」

 

「ほら行くぞ。」

 

「うん。」

 

”ガチャガチャ”

 

「ただいま!  あっ!」

 

”バタン”

 

「お、おい、美佳どうした?

 

 なんでドアを閉めるんだ?」

 

いやだ、見たくない、信じたくない、忘れたい。

こ、これは夢、夢なんだ。

は、今のは目の錯覚、何かの間違い。

ほ、ほら、久しぶりの家だったたから。

落ち着いてよく見ればいつもの我が家・・・のはず。

 

”ガチャ”

 

「・・・・・」

 

”ドワァ~ン”

 

見間違いじゃないのね。

な、なんだこのごみの山は。

はは、はははは。

こ、この野郎!

ちょっと目を離した隙になんてことを。

 

「・・・・・・・・・・・お、おい。」

 

「ど、どうした美佳?」

 

「なんだこれは!」

 

「は、い、いや、その。」

 

「ばかもの! 何で家の中がごみ屋敷になってんだ!」

 

「いや、つ、ついな。」

 

「はぁ~。 もう、ちゃんと手伝ってね。」

 

「す、すまん。」

 

     ・

     ・

     ・

 

ふぅ~、掃除終わった。

何でこうもごみ散らかすのかなぁ。

いらないものは捨てればいいのに。

かあちゃん、ちゃんと躾をしておいてよ。

今度会ったら、思いっ切り文句言うからね。

・・・・・。

次は、

 

「とうちゃん、もう洗濯物無い?」

 

「ああ。」

 

「よし、それじゃスタートっと。」

 

”ガタンガタン”

 

はい、洗濯機okっと。

 

さてとそれじゃ・・・・・頑張るぞ、美佳。

その前に

 

”バシッ”

 

いったぁ~、ほっぺいたぁ。

よ、よし、張り手で気合注入完了!

じゃ、じゃあさがみん、わたしも頑張るね。

決めたんだ、ちゃんと向き合う。

さがみんなんかに負けないよ。

 

”ちょこん”

 

「ね、と、とうちゃん、ちょっといい?」

 

「ん、なんだ正座して」

 

「・・・・・」

 

「ん、どうしたんだ?」

 

”ペコ”

 

「と、とうちゃん、わたし進学したい。

 

 いっぱいいっぱいもっと勉強して、わたし保母さんになりたい、なりたいんだ。」

 

「美佳。」

 

「うちの家計知ってる。

 

 だからいっぱいバイトする、勉強も頑張って奨学金とか補助金とか貰えるようにする。

 

 家事ももっと頑張る。

 

 お小遣いもいらない・・・・・・・チロロも我慢する。

 

 だから、だからお願いします、大学行かせてください。」

 

「・・・・・」

 

「だ、駄目かなぁ。」

 

「・・・・・」

 

「と、とうちゃん。」

 

「美佳。」

 

「は、はい。」

 

”パタッ”

 

「ん、これって?」

 

「お前の預金通帳だ、まぁ見てみろ。」

 

「うん・・・・・・・・・・・・え、一、十、百、千、万 じゅうま・・・ん、ひゃ 

 

 な、なにこのお金? どうしたの?」

 

「お前の事故の相手から分捕ってやった。」

 

「と、とうちゃん、馬鹿、馬鹿、馬鹿。大馬鹿者!

 

 返して来なさい、すぐ返して来なさい! 一緒に行って謝ってあげるから。

 

 じゃないと、もう親子の縁切るからね!」

 

「じょ、冗談だ。

 

 これは、美緒の生命保険のお金だ。

 

 お前になにかあった時のために取っておいたんだ。

 

 け、結婚資金とかな。

 

 これを使いなさい。

 

 美緒も喜ぶだろう。」

 

「と、とうちゃん。」

 

”なでなで”

 

「お前がそう言ってくれるのずっと待ってたんだ。

 

 いいか、頑張れよ。」

 

「うん。」

 

「だけどお前、勉強大丈夫か? とうちゃんの子だからな。」

 

「が、頑張る。 半分はかあちゃんの子だから。」

 

 

 

 

--------

 

 

 

「よしっと材料はこれでOK。」

 

「ねぇ、三ヶ木、あんまり普通のカレーと変わらないんだね。

 

 なんか、一子相伝とかいってたから。」

 

「沙希ちゃん、普通が一番なんだよ。

 

 わたしの知ってる娘なんて、カレーにチロロのきな粉味入れるとこだったんだから。」

 

「なんとなく誰のことかわかるような気がする。」

 

「入れるのは、この板チョコ。」

 

ん、なんか背中のほうから視線が。

また大志君かな~

よし、いきなり振り返って脅かしてやれ

せ~の!

 

”バッ”

 

は、けー、けーちゃん、けーちゃんだ。

 

「あっ!」

 

”ダー”

 

げ、けーちゃん逃げた。

 

「け、けーちゃん待って。

 

 沙希ちゃんごめん、ちょっとお願い。」

 

”ダ―”

 

「けーちゃん!」

 

”ビクッ”

 

「つっかまえた~

 

 あのね、けーちゃん。

 

 ありがと。」

 

「え?」

 

「みーちゃんはね、実は何とかボールのスーパーヤサイ人なんだ。」

 

「え、スーパーヤサイ人?」

 

「うん。

 

 復活する度に強くなるんだぞ~。」

 

「うそ!」

 

「うそじゃないよ、ほら、この力こぶを見よ。」

 

”グイッ”

 

「うわ~、すごーい!」

 

へへ、怪我したのは左腕なんだけどね。

この際いいか。

ふふん、そうなんだ、なんか右腕ばっかり使ってたら筋肉ついたんだよ。

ほらお肉がこんもり。

この分だと空手チョップの威力も。

 

「ね、だから大丈夫。

 

 逆にけーちゃんにお礼言いたいぐらいなんだ、パワーアップできたから。」

 

「もう、痛くない?」

 

「全然。 ほんとはこっちのお手ても何ともないんだけど、筋肉が付きすぎてね。

 

 みんながびっくりするといけないからこうやってるの。

 

 あ、それよりさ、けーちゃん。

 

 お手伝いしてくれる?」

 

「お手伝い?」

 

「うん、お野菜の皮むいてくれるかなぁ~」

 

「う、うん、お手伝いする。」

 

     ・

 

”シュル、シュル”

 

「よいしょ。よいしょっと。」

 

「けーちゃん、ピーラー使うの上手だよ。

 

 美味しいカレー出来そうだ。」

 

「さーちゃん、本当?」

 

「うん。」

 

「チッチッチッ、沙希ちゃんあまい!

 

 けーちゃん、これからみーちゃんがお野菜がもっと美味しくなるおまじないを教えてあげる。」

 

「おまじない?」

 

「うん、もっと美味しくなるよ。

 

 じゃあけーちゃん、皮むいて。」

 

「うん。」

 

”シュル、シュル”

 

「いいではないか、いいではないか、あれ~」

 

”パコッ”

 

「いた、さーちゃんスリッパで。」

 

”パコッパコッ”

 

「さーちゃん言うな!

 

 三ヶ木、けーちゃんに変なこと教えないで。」

 

「は~い。」

 

”シュル、シュル”

 

「いいではないか、いいではないか。」

 

「け、けーちゃん駄目!」

 

     ・

     ・

     ・

 

”パクパク”

 

「美味しい。」

 

「うん、みーちゃん美味しい。 おまじない利いたね。」

 

「いや、けーちゃん違うから。 三ヶ木!」

 

「ねぇちゃん、お代わり!」

 

「あ、はいはい。」

 

「「お代わり」」

 

「沙希ちゃん、わたしもお代わり。」

 

「あ、ごめん三ヶ木、もうご飯ない。」

 

「・・・・・・カレーだけでもお願いします。」

 

     ・

     ・

     ・

 

「「ご馳走様。」」

 

「けーちゃん、一緒に食器洗おう。」

 

「うん。」

 

”カチャカチャ”

 

「三ヶ木、ありがとうね。」

 

「うううん、こっちこそご馳走様でした。」

 

「ねぇねぇ、みーちゃん、今日お泊りしないの?

 

 けーかと一緒に寝よう。」

 

「ありがと、けーちゃん。 どうしょうかなぁ」

 

「泊まっていきなよ、あ、あたしも話したいから。」

 

「うん。 じゃあ、お言葉に甘えさせてもらおうかなぁ。」

 

「あ、そういえば比企谷には退院したこと言ったのかい?」

 

「え?」

 

「あ、いやね、今日も比企谷、花屋で花買ってたから。」

 

「え、花って?」

 

「比企谷、毎日予備校の帰りに花買ってたけど、あれってお見舞いじゃなかったのかい?」

 

「比企谷君が?」

 

「そうだよ、花屋の前でずっと腕組んで考え込んでてさ。

 

 あれ? ち、違ったのかい?」

 

「うそ。

 

 じゃあ、あの花って。」

 

”そわそわ”

 

「あ、あの、さ、沙希ちゃん。」

 

「うん?」

 

「あの、あのね、わたしね。」

 

「ふ~、行ってきな。

 

 けーちゃん、みーちゃんなんかお約束あったんだって。

 

 また今度にしようね。」

 

「うん。 また今度ね。」

 

「う、うん、また今度絶対にね。

 

 ありがと 沙希ちゃん。」

 

「三ヶ木、なんかわからないけど頑張りな。」

 

「うん。」

 

”ダー”

 

     ・

     ・

     ・

 

”キョロキョロ”

 

えっとあの看護師さん、今日まだいるかなぁ。

このナースステーションにいるはずなんだけど。

あ、いた。

 

「看護師さん!」

 

「あれ美佳ちゃん、どうしたの何か忘れもの?」

 

「あ、う、うん。 すみません一つ聞いていいですか?」

 

「え、ええ。 どうしたの?」

 

「入院してた時に毎日新しい花が花瓶に生けてあったんですが、あれは看護師さんじゃなかったん

 

 ですね。

 

 だれが、だれがあの花をくれたんですか?」

 

「え、あ、あの~」

 

”ペコ”

 

「お願いします、教えて、教えてください。」

 

「あ、いや、ほ、ほら頭あげてお願い。

 

 もう仕方ないよね、ほら美佳ちゃん昏睡状態の時にずっと付き添っててくれてた

 

 男の子いたでしょ。」

 

「えっと、目つきの悪いほう?」

 

「そ、そうそう死んだお魚のような眼、あ、ごめん。

 

 あの男の子が毎日お花持ってきたの。

 

 なんかいつも忙しそうで、お花だけ渡して帰っちゃうんだけど。

 

 ごめんね、絶対秘密にしてくれって頼まれてたから。」

 

「うううん。 ありがとございます。」

 

”ペコ”

 

     ・

     ・

     ・

 

「はぁ、はぁ、はぁ」

 

う、う~ん、走りにくい。

あの花、比企谷君だったんだ。

毎日、病院来てくれてたんだ。

だったらなんで? なんで病室に顔だしてくれなかったの?

もう、わけわかんない!

 

”ピンポ~ン”

 

「は~い。」

 

”ガチャ”

 

「あ、美佳さん。 退院されたんですね、おめでとうございます。」

 

「あ、ありがとう小町ちゃん。

 

 あ、あのね、突然でごめんなさい。

 

 比企谷君、いらっしゃいますか?」

 

「え、えっと~、兄はいつもならもう帰っている時間なんですが。」

 

「小町ちゃんお願い。

 

 どこに行ってるか知ってるのなら教えて。

 

 どうしても、どうしても会わないといけないの。」

 

「む~、どうしょうかなぁ。」

 

”どさ”

 

「お願いします。」

 

「え? み、美佳さん、土下座なんてやめてください。」

 

「だ、だって、会わないといけないの。

 

 うううん、会いたいの。」

 

「わ、わかりました。

 

 兄からは美佳さんには内緒にしてくれって言われてたんですけど、実は 」

 

     ・

     ・

     ・

 

”タッタッタッ”

 

「はぁ、はぁ、はぁ。」

 

つ、着いた。

もうこんな時間だ。

まだここにいるのかなぁ。

彼、自転車だっていうから、もしかしたら入れ違いになったかも。

 

えっと自転車、自転車置いてあるかなぁ? 

 

”キョロキョロ”

 

あ、あった。

比企谷君、やっぱりまだ学校にいるんだ。

でもどこにいるんだろう。

こんな時間まで何やってんだろう。

小町ちゃん最後まで教えてくれなかった。

 

もしかして奉仕部にいるのかなぁ。

奉仕部にいるのなら、結衣ちゃんとゆきのん三人一緒だね。

・・・・・無理だ。

わたしはあの結界、いや雰囲気には入り込めないや。

どうしよう、終わるまで待っていようかなぁ。

 

”スタスタスタ”

 

えっと、あっあれ?

照明ついていないし、だれもいないのか。

 

”ガタ、ガタ”

 

やっぱり鍵掛かってるや、ここじゃないんだ。

じゃあどこだろう。

・・・・・まさか。

 

”タッタッタッ”

 

「はぁ、はぁ、はぁ」

 

あ、やっぱり照明ついてる。

ここにいるの?

でもここでなにやってるんだろう?

 

「一色、ここでいいのか?」

 

あ、比企谷君の声だ。

間違いない、彼ここにいるんだ。

それと会長?

ふたりなのかなぁ。

何してるんだろう?

文実の準備は、稲村君が2学期からって言ってたし。

 

「ああん、先輩もっと左です。

 

 あ、そこ、そこがいいです。」

 

え、な、なになに?

えっと、い、今のああんって声って何?

 

「あ、先輩、そこは駄目、駄目です~」

 

お、おい、な、なにしてるんだ。

な、なにが駄目です~なんだ?

はっ、うそ、まさか。

でもそんなことしたら、こ、ここは生徒会室だよ。

とっちめてやる、この~エロ八幡!

はっ、でももしその最中だったら・・・・どうしよう。

 

「おい、なんかさっきからわざとやってないか。」

 

え?

ち、違うの? あんなことやこんなことやってるんじゃないの?

 

「え~、なんのことですか。

 

 そこは例年バスケ部さんの屋台の場所なんです。

 

 ほら、美佳先輩の事前確認で今年も屋台をする予定って書いてあるじゃないですか。

 

 だからそこの場所は駄目なんです。

 

 はっ、先輩、何か変なこと考えてません?

 

 うわ~やらしい、わたしを視姦しないでください。」

 

「おい!

 

 ま、まぁいい。

 

 なぁ、稲村、会計監査の方はわかるか?

 

 もう問題はないか?」

 

「ああ、助かった。

 

 でもなんでお前、こんなに文実の資料に詳しいんだ?」

 

「記録雑務をなめるな。」

 

「いや、会計監査の資料に記録雑務に関係ないだろ?」 

 

「会計監査だけでないぞ、なぜか他の担当の係の資料作りを手つだわ・・・・・任せられたんだ。

 

 お、お茶くみまでも。」

 

「そ、そっか。

 

 なんか大変だったんだな。」

 

「先輩が記録雑務で助かりました。

 

 これからもよろしくです。」

 

「いや、待て。 あくまでも代理だ。

 

 三ヶ木が復帰するまでの代理だからな。」

 

「え~、いいじゃないですか~ケチ!」

 

「お、おい。 

 

 まぁ、でも大分準備できたんじゃないのか?」

 

「そうですね、文実の資料の事前準備はもう大丈夫かと。

 

 あとはあれをどうするかですね。」

 

「あれって人気投票か。」

 

「それ、それなんですよ。」

 

みんなで文実の準備してたんだ。

あれ? 稲村君、この前お見舞い来てくれた時、準備は2学期からって言ってたのに。

あいつ騙したな。

でもよかった、ファイルの保管場所わかったみたい。

 

そっか、比企谷君、わたしの代わりに手伝ってくれてたんだ。

それなのにわたしは勝手に思い込んで。

一人で落ち込んで。

一人で結論つけて。

なんにも彼のことわかっていなかった。

うううん、それだけじゃない。

こんなにやさしい彼に、比企谷君に不満なんか持って。

まったく、なにやってんだこの馬鹿が!

 

「そうだな、まぁ投票結果を発表するだけならそんなに手間ではないと思うが。

 

 そうとしても投票期間の関係もあるし、ある程度のことは文実の前には決めておかないとな。」

 

「まぁ、それは三ヶ木さんの意見聞いてからでもいいんじゃないか?

 

 もしかしたら何か考えているかもしれないから。」

 

「本牧、そのことだが、」

 

「わかってる。

 

 三ヶ木さんに無理かけちゃいけないからな。

 

 ちゃんと元気になってから、身体に負担にならないようになってからだろ。

 

 だから比企谷が代わりに協力してくれてるんだろう。

 

 やさしいんだな。」

 

「い、いや、ほ、ほら仕方なくだ。

 

 せ、責任があるからな。」

 

「責任ですか・・・・・まぁ、いいですけど。

 

 ということで、先輩、わたしミルクティ―でお願いしますね。

 

 ご馳走様で~す♡」

 

「は、ま、まて、なんだそれは? なにがということでなんだ。」

 

「え~、先輩さっきジャンケンでわたしに負けたじゃないですか~」

 

「え、あれ、そうだったの?

 

 まて、お前最初はグーて言ったのにパーだしたんじゃねえか。」

 

「それは戦略、お宅テイクスです。」

 

「いやお前それ戦術、tacticsだろ! お宅じゃねぇ。

 

 くそ、まあいいわ。

 

 書記ちゃん、書記ちゃんは何がいい?」

 

「え、あ、ありがとうございます。 

 

 わたしもミルクティ―で。」

 

「じゃあ行ってくるわ。」

 

「比企谷、俺は紅茶頼む。」

 

「あ、同じものを。」

 

「稲村、本牧、お前ら・・・・今回だけだぞ。」

 

”ガラ”

 

「「あ、」」

 

「・・・・・」

 

「お、お前何でここに?」

 

「あ、う・・・・」

 

”ダ―”

 

「あ、み、三ヶ木。」

 

だめ、今のわたしは比企谷君に会う資格ない!

比企谷君は、やっぱり比企谷君だった。

わたし比企谷君のことなんでもわかってる気になって、ほんとは何もわかっていなかったんだ。

こんなわたしは比企谷君に会う資格なんてない!

 

”ぐり”

 

あっ、やばっ! 足がからんだ。

 

「きゃっ」

 

”ぐぃ”

 

え? 誰が助けてくれ・・・ひ、比企谷君。

 

「馬鹿! 危ないだろ。

 

 ギブスしてるから、今転んだら受け身取れないんだろうがお前。」

 

「・・・・・」

 

「なぁ、もう身体大丈夫なのか? まだ走ったりしたら駄目じゃないのか。」

 

「・・・・・」

 

「お、おい、三ヶ木?」

 

「ごめんなさい、比企谷君。」

 

”ペコッ”

 

「いや、わかればいいんだ。

 

 わかったらもう走るんじゃないぞ。」

 

「あ、そ、そうじゃなくて。

 

 ・・・・・な、何でもない、何でない。 だけどごめん。」

 

「はぁ? なんだそりゃ。 

 

 ま、まあいいけどな。

 

 そ、それよりどうした、何で後ろ向いてるんだ?

 

 こっち向いてくれると話しやすいんだが。」

 

「べ、別に。」

 

だって、ここまでいっぱい走ってきたから、きっと髪とかぼさぼさだし、

それに汗とかで化粧崩れてるから、絶対顔見せない。

 

「ん、なんだ?

 

 なんか怒ってるのか?」

 

お、おい、だから人の顔を覗き込むんじゃない。

いやだ、見るな。

 

”くる”

 

絶対、見せない。

わ、わたしの後頭部でもみてなさい。

 

「む!」

 

”さっ”

 

げ、こいつ、なに人の正面に回り込もうとしてんだ。

このやろう、やめろっていってんだろ。

絶対顔見せないんだからな。

 

”くる”

 

「むむっ!」

 

”ささっ

 

いや、むむっじゃないから。

こいつなんとしても人の顔見るつもりか!

こ、この野郎!

 

「しつこいわ!」

 

”べし”

 

「ぐはぁ!」

 

「しつこいぞお前。

 

 今わたし髪ぼさぼさで、化粧ボロボロだから見られたくないんだ!」

 

「あたたたた。 お前、化粧なんていつもしてないだろう。」

 

”ぐぐぐぐぐ”

 

お、お前、なんてことを。

目立たないようにだけど、ちゃんと努力してるのに。

くそ~ゆるさん、これでもくらえ!

 

「抹殺のラストブリット!」

 

”ぼごぉ”

 

「ぐはぁ」

 

「してるわ、化粧してるわ! 少しは気付け、この唐変木!」

 

「くくくくく、はははは。」

 

はぁ? な、なに殴られて笑ってるの?

だ、大丈夫?

お、お腹だよねラストブリット。

どこか変なとこ殴った?

 

「ひ、比企谷君?」

 

「やっといつもの三ヶ木だ、安心した。」

 

「え、あっ

 

 もしかしてそのために?」

 

「ふぅ~、まぁそんなことよりお前退院する日ぐらい教えろ。

 

 昨日病院行ったらいきなりもう退院しましたって言われたぞ。」

 

「ご、ごめんなさい。

 

 だ、だってスマホ壊れてんだもん。」

 

「そっか。」

 

「そうだ。

 

 ・・・・・あのね、毎日お花ありがとう。」

 

「は、い、いや、何のことかなぁ~」

 

へへ、誤魔化そうとしてもだめだよ。

顔が真っ赤っかだよ。

それにもうネタは上がってんだ。

 

「看護師さんゲロった。

 

 それに予備校の帰りに花買ってくれてるとこ、沙希ちゃんが目撃してる。」

 

「げ、そ、そっか。」

 

「いつも綺麗なお花ありがと。

 

 毎日、楽しみだったんだ。」

 

「お、おう。」

 

へへ、照れて頭かいてるや。

ほんとお花ありがとね。

いつも元気貰っててた。

でも、あの花が比企谷君からだとわかってたら、変な勘違いしなくても済んだのに。

それに、やっぱ顔見たかった。

 

「でもさ、なんで病室来てくれなかったの。」

 

「いや、あのな・・・・・・・・病室よったら多分長居しちゃうだろう。」

 

「・・・・・そ、そう?

 

 え、えっと長居できないのって、もしかして生徒会を手伝ってくれるため?」

 

「ああ、本牧も稲村も塾あるからな。

 

 基本、塾が終わってからになるから、あんまり時間取れないんだ。」

 

「でも何で文実の準備してるって言ってくれなかったの?

 

 言ってくれればさっさと追い返したのに。」

 

「え、追い返されるの。

 

 ま、まぁ言わなかったのはお前だからだな。」

 

「わたしだから?」

 

「もし俺が生徒会手伝いに行くって言ったら、絶対お前気にするだろう。

 

 いや気にするだけでなく、お前のことだ病院抜け出すことさえありうる。」

 

「ぐっ」

 

う、あたってるだけに何も言えん。

だってやっぱり気になるし、それに暇だったんだもん。

ちなみに義輝君の小説もどき、それすら2回も読んでしまった。

くそ、あの野郎、またヒロインを悲惨な目に。

あ、やばっ、まだ感想書いてないや。

 

「なぁ、お前もう生徒会クビになりたくないだろう。

 

 だったらみんなに心配かけるようなことはするな。」

 

「え、あ、うん。」

 

「だけどどうする? ここまで来たんだ、今日は生徒会室に顔出すか?」

 

「うううん、クビなりたくないから帰る。

 

 比企谷君の気持ち、それにみんなの気持ちを無駄にしたくない。」

 

「そ、そっか、じゃあちょっと待ってろ。」

 

「え?」

 

”タッタッタッ”

 

あ、走って行っちゃったけど。

えっと、ここで待ってればいいのかな。

うんしょっと。

ちょっと階段に腰かけて待ってよっと。

そっか、ずっと生徒会の手伝いしてくれてたんだ。

ありがと。

 

     ・

 

”パコ”

 

うひゃ~、コンパクトに写ってるのって、やっぱりこれわたしだよね。

やっぱ予想通り、髪はぼさぼさだし化粧はボロボロ。

げ、こんな顔見られてたのか。

恥ずかしい、めっちゃ恥ずかしい。

で、でも・・・・・この前みたいじゃない。

恥ずかしいけど、悲しくない。

 

”ピタッ”

 

「ひゃ、冷た!」

 

な、なに? 急にほっぺたに冷たいものが。

 

「待たせたな、ほれミルクティ―でよかったか?」

 

「あ、ありがと。」

 

「さっ、帰るか?」

 

「え? あ、う、うん。

 

 で、でもいいの?」

 

「ああ。

 

 今日はもう終わるらしい。

 

 ほら、立てるか。」

 

「あ、ありがと。」

 

”にぎ”

 

へへ、差し出された比企谷君の手、握っちゃった。

このまま握ったまま帰りたいなぁ。

 

「うんしょっと。」

 

「おばん。」

 

「うっさい! 馬鹿。」

 

     ・

     ・

     ・

 

「げ、何でそんなに詳しいの。」

 

「なめるな! お前のようなにわかではないぞ。

 

 年季が違う、違うのだよ。

 

 まぁ、その俺がイチ押しなのが  」

 

へへ、ほんとプリキラ―好きなんだね。

もうさっきから話しっぱなしじゃん。

しかも何でそんな裏設定まで知ってるんだ。

ほんと、楽しそう。

 

”てくてくてく”

 

あっ!

 

”ピタ”

 

「ん、どうしたんだ、急に立ち止まって。」

 

「うううん、何でもない。」

 

もうこの曲がり角まで来ちゃったんだ。

この角曲がったら、もう家ついちゃうね。

いつもと同じ距離のはずなのに、なんか今日はすごく近かったような気がする。

もうちょっと一緒に歩きたいな。

 

「おい、行くぞ。」

 

「う、うん。

 

 あっ、でもごめんね。 自転車大丈夫?」

 

「ああ、明日か明後日にでも塾の帰りに取ってくる。

 

 文実のほうは今日で最後って言ってたからな。」

 

「塾、みんな行ってるんだよね。

 

 あ、家の電気ついてる。

 

 そっか、とうちゃんもう帰ってんだ。

 

 ね、ちょっとよっていく?

 

 コーヒーぐらい出すよ。」

 

「ああ、そうだな、じゃあちょっとよって・・・・・

 

 いや待て、お父さん帰ってるんだよな。

 

 や、やっぱりやめておく。」

 

「へ? あ、そ、そう。 

 

 それじゃ、送ってくれてありがとね、比企谷君。」

 

「あ、あのな。」

 

”ゴソゴソ”

 

え、なに?

急にバッグあけて、なに探してるの?

 

「これ、貰ってくれるか?

 

 まぁ、退院した時に渡そうと決めてた花だ。」

 

「え、花?」

 

比企谷君、ずっとバッグの中に花入れてたの?

これってペチュニアじゃん。

かわいい、結構好きなんだ。

あ、そっか、今日買ってた花ってペチュニアだったんだ。

ペチュニア、確か花言葉は。

 

「・・・・・これがあの時、林間学校の時のお前の問いに対する俺の答えだ。」

 

「え、答え?」

 

「あのな、俺は俺の所為でお前を傷つけることを覚悟できない。

 

 お前が傷つく姿は二度と見たくない、もう懲り懲りなんだ。

 

 だからお前とは付き合えない。」

 

「ひ、比企谷君。」

 

「と、花火大会までそう思ってた。

 

 だけどな、病室で眠ってるお前を見てて思ったんだ。

 

 俺はお前がいなくなることのほうがもっと何倍も何十倍も辛くて・・・・・嫌なんだって。

 

 お前がいなくなるくらいなら、俺はお前とちゃんと向かい合いたい。

 

 友達とか仲間とかそんなんじゃなくて、とっても大切なやつだと思うから。

 

 いなくなったら困るんだ。

 

 あー、くそ、何言ってんだ俺。

 

 ええ~い、つまりだな! お前が何か仕出かしそうな時は俺が止めてやる。

 

 それでもお前がなんかやっちまった時は俺が一緒に謝ってやる。

 

 お前が泣いた時は・・・・い、一緒に泣いてやる。

 

 それでな、お前が笑った時は・・・できるなら一緒に笑いたい。

 

 だから俺がいつも見ていてやれるように、俺のそばにいろ、ずっとそばにいろ。

 

 いや、いてください、いてくれるとありがたい、いてくれるかなぁ~。

 

 すまん! いてほしい。」

 

「・・・・・」

 

「み、三ヶ木さん、あの~ 」

 

「60点。」

 

「はぁ?」

 

なにさ、やっぱりそれがわたしの振られる理由だったんだ。

まったく比企谷君らしいというか、この男は。

 

そばにいてほしいかぁ~

微妙だなぁ、それって付き合ってくれるってことなのかなぁ?

う~ん、はっきりしろ。

 

えっと彼女って基本一人だよね。

とっても大切なやつってことは、一人なのかなぁ。

あ、でもきっとご両親や小町ちゃんなんかも、とっても大切な人だよね。

多分、あの二人も。

だとしたら、彼女のほうが順位って上?

友達や仲間以上、彼女未満ってことでいいのかなぁ?

 

あ、でもずっとそばにいてほしいって。

これってプロポーズの時に言うんじゃなかったっけ。

プロポーズ・・・・・へへ、えへへへ。

って、そんなことは無いか。

 

う~ん、はっきりしないよ~

付き合うの?付き合わないの? まったくこの男は!

・・・・・・・・・ま、まぁいいっか、今はこれでいいや。

だって比企谷君だもん。

 

「まったく・・・・・わかった、そばにいてあげる、ずっとそばにいてあげる。

 

 でも、ほんとは赤点の50点だったんだからね。」

 

「げ、あ、赤点なのか?」

 

「でも大切なやつって言ってくれたからおまけして60点。

 

 感謝してよね。」

 

「お、おう・・・・・まぁなんだ、これからもよろしく頼む。」

 

「う、うん。 こちらこそ不束者ですが、末永くお願いします。」

 

”ペコリ”

 

「いや、まて、それ何かおかしくない?

 

 それって 」

 

「だって、いつまでもそばにいてほしかったんじゃなかったっけ?」

 

「そ、そうだが。

 

 う~ん、おかしくないのか?

 

 いや、でもなにか・・・・・」

 

「なに、もう一回言ってほしいの?

 

 不束者ですが、末永くお願いします。 幸せにしてね♡」

 

「おい、それやっぱり違うだろ!

 

 なんだ幸せにしてねって。

 

 まぁいいや、じゃそろそろ帰るわ。

 

 またな。」

 

「うん、またね。」

 

”スタスタスタ”

 

ふふふ、このまま帰すと思うのか。

甘いぞ、甘いぞ比企谷君!

付き合うのか付き合わないのか、これだけ悩まされているんだ。

このまま帰すわけがないだろ。

 

「比企谷君。」

 

「お、おう、なんだ?」

 

”す~”

 

「いや、お前息吸いこんでなにしてんの?

 

 は、ま、まさか、や、やめろ!」

 

「大好き!!」

 

「ば、ばっかお前、そんな大声で。」

 

”ダー”

 

けけ、顔真っ赤にして、逃げていきやがった。

はぁ~気がすんだ。

これからもよろしね、比企谷君。

さてと、ご飯つくらなきゃ

 

”ガチャ”

 

「美佳。」

 

げ、と、とうちゃん。

しまった、とうちゃん帰ってたんだ。

も、もしかしてドアの向こうにいたの?

 

「あ、あのう~、何か聞こえました?」

 

「まだ嫁にはやらんからな!

 

 とうちゃん許さないからな!

 

 ちゃんと学校卒業して、それからそれから、くぅ~」

 

「・・・・・とうちゃん、いいからご飯食べよ。」

 

 

8月28日

 

やっぱり、日記続けることにしました。

え、昨日退院するからやめるって書いてたって?

だってわたしはまだ闘病中なんだもん。

 

でもこの病は長引きそう。

お医者さんでも直せないし。

そう、この病を治せるのは君だけだよ。

おやすみ、比企谷君。 おや・・・・・

 

でもさ、なんか忘れてる。

えっとなんか忘れているぞ。

なんだ、なんだ、なんだ、とっても大切なことのような・・・・・・・

 

あ゛っ!

 

”ドタバタ”

 

「美佳、騒がしいいぞ。」

 

”バン!”

 

「お、おい、襖壊れるぞ。」

 

「と、どうぢゃ~ん、ズ、ズマボ貸じで。

 

 早く、早く!」

 

「お、おう? ほ、ほれ。」

 

「ううううう。」

 

”カシャカシャ”

 

「は、はい比企谷です。

 

 お、お父さん、ご機嫌麗しく」

 

「お父さん言うな! あ、いや違う。

 

 わたし、わたしだよ。」

 

「三ヶ木か。 

 

 あのな、お前、あんなこと大声で言うな。

 

 あれ絶対お隣さんとかに聞かれてるぞ。」

 

「ううううう。」

 

「ど、どうした?」

 

「比企谷君・・・・・・・・・・・宿題教えて~」

 

「は、はぁ?」

 




最後までありがとうございました。
お疲れ様でした。

ほんとにごめんなさい。
次回から多くても1万字以内には抑えたいかと。

次話からは文化祭編。
2回目の文化祭になりますが、高校最後の文化祭。
またいろいろと・・・・・

また読んでいただけたらありがたいです。
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