似て非なるもの 作:裏方さん
更新、大変遅くなり申し訳ないっす。
今回、葉山ファンの方、気を悪くしたらごめんなさい。
それと、す、すみません!
思ってたより長くなって、文化祭編まだ終わらないっす。
(次話こそです。)
なんか申し訳ないことばかりですが、最後まで我慢して
読んでいただけたらありがたいです。
(あ、でも今回も2万字越え、無理なさらずお願いします。)
ではよろしくお願いします。
”ワイワイガヤガヤ”
遠くでリア充たちの文化祭を謳歌する賑やかな声が聞こえる。
あの場所にはいくつもの笑顔が溢れているのだろう。
斯く言う俺もさっきまであの場所のしかも中心にいたんだ。
目の前で葉山とチークを踊る三ヶ木を複雑な想いで見つめていながら。
そして今、
”スタスタスタ”
リア充の権化、葉山隼人。
俺は今こいつの後ろを歩いている。
お互いに一言も発せず。
『比企谷、少しいいか話がある。』
そう、本来ならあの笑顔の輪の中心にいるべきはずの
この男の問いかけに応じて。
・
”スタスタスタ”
へぇ~、学校にもこんな静かなところがあったのか。
さっきまで聞こえていた賑やかな声が嘘のように、ここは静寂さに
包まれている。
普段でもあまり人の寄り付かなさそうな場所だ。
葉山はなぜこんな場所を知っているのだろう。
ここでいつもなにをしているんだ。
そんな思いが頭をよぎる。
”ピタ”
おっと、目的の場所に着いたのか?
あぶねぇ。
急に立ち止まるんじゃない!
あやうくラッキースケベになるとこだったじゃねえか。
「・・・・・」
「葉山。」
「・・・・・」
「・・・・・」
振り返った葉山は苦虫を噛みしめたような顔をして、あいかわらず
黙りこんでいる。
はっ!
俺を見つめる葉山の眼、何でこんなに悲しそうな眼をしてるんだ。
待てよ、この哀しそうな眼どこかで見たことがある。
どこだ、どこで見たことがあるんだ。
この眼を見ていると、なぜか苛立ちと怒りと・・・・・悲しみが
込み上げてくる。
この雰囲気はあまり好き時じゃない。
ここから一刻も早く立ち去りたい。
「・・・・・葉山、用がないなら帰るぞ。」
「君はなぜ逃げたんだ。」
「・・・・・なんのことだ。」
「そうやってまた誤魔化すつもりなのか。
君は見ていたはずだ。」
「・・・・・」
「もう一度聞く。
なぜ逃げだしたんだあの場所から。」
「・・・・・」
「・・・・・君が答えられないのなら、俺が代わりに言ってやろう。
君は三ヶ木さんをその程度の存在としてしか見てこなかったんだ。」
「はぁっ!
いきなり何を言ってるんだ葉山。」
「いろいろと聞いている。
今まで三ヶ木さんが君のために何をしてきたのか。
・・・林間学校の時のこともだ。
いろはもリーダーとしていろいろ悩んでいたからな。
もちろん他言する気なんてない。
そして今日も三ヶ木さんは君のために自ら道化師になることを望んだ。
彼女はいつも君のことを思っていてくれていた。
そんな三ヶ木さんの気持ちを知っていて、君はただ利用してきただけ
じゃないのか。
自分を守るため、単に利用するだけの存在として。
だからそばに置いておき 」
”ぐぃ”
「もう一度言ってみろ葉山!」
「ならばあの時、なぜ君は逃げ出したんだ。」
「お、俺は 」
「君が本当に大事にしたいものなら、失いたくないと思うものなら、
何に変えても守るはずじゃないのか。
それこそ今じゃなく、あの時にこうやって俺に掴みかかるべき
じゃなかったのか。
だが、君は逃げ出した。
つまり君にとって彼女なんて、三ヶ木美佳なんてその程度の
存在でしかないんだ。」
「葉山!」
『比企谷君。』
”ピタッ”
三ヶ木。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・違う、違うんだよな、わかってる。
俺が本当に怒っているのは葉山に対してじゃない。
怒っているのは、葉山の問いにちゃんと反論できない俺自身に対してだろう。
なぜなら俺は。
「・・・・・どうしたんだ、殴らないのか。」
”バッ”
「すまん。
・・・・・違うんだ。」
「違う?」
そうなんだ。
控室で葉山に抱きしめられた三ヶ木を見た時、俺は認めてしまったんだ。
これでいいんだと。
葉山が三ヶ木と付き合いたいと思うのなら、俺は去るべきなんだ。
あいつは、三ヶ木は俺といるといつも勝手に馬鹿をして自分を傷つける。
今日だってそうだ。
俺に一言も言わず勝手にあんなことを。
俺が平気だと思うのか、目の前でお前が傷つくところ見せられて。
全ては俺がしてきたことが原因だというのに。
葉山は、葉山なら三ヶ木が傷つくようなことは絶対にしない。
なんだ俺はあいつが嫌いじゃないのか?
ああ、大嫌いだけど・・・・それだけは間違いない。
ちっ、くそ!
もし葉山が本当に三ヶ木のことを好きだっていうのなら、俺はきっと安心して
任せられるのだろう。
だから、
「葉山、もしお前が本当に三ヶ木と付き合いたいのなら、俺は 」
”ぐぃ”
「比企谷! 君はそれでいいのか。
それが本当に君の答えなのか。」
「は、葉山。」
な、何でこいつはこんなに怒るんだ。
俺は喜んでお前なら、なのになんで?
何でお前はそんな眼で俺を睨むんだ。
その哀しそうな眼で。
俺は何か間違ってるのか?
なんだ、なにが違うんだ。
『あのさ、明日チーク踊ってる時は絶対ゆきのんだけ見ててね。
他のものは絶対見ちゃだめだよ。』
『は? なんでだ。』
『い、いいから。
あ、それと音楽以外なにも気にしちゃだめだよ。
周りの雑音とかもさ。』
ち、違う。
あいつは、三ヶ木はちゃんと俺に伝えていたんだ。
なんで気が付かなかったんだ。
それに俺が雪ノ下のチークダンスの相手に選ばれた時点でどうなるのか、
それに対し三ヶ木が何をするのかって考えなくてもわかるだろう。
なのに俺は、俺はあんなに近くにいたのに気づかなかった。
なんで俺は気づいてやれなかったんだ。
「比企谷・・・・・・失ってしまったものは簡単には戻らないんだ。
本当に大事だと思うのなら、それを失わない為の努力をするべきだ。」
「・・・・・葉山。」
そうだ思い出した。
お前のその眼、それは修学旅行の時に一瞬だけ俺に見せた眼だ。
俺が本当に大事だと思うもの、失いたくないと思うもの。
『あ、えっとね、あのね比企谷君。
・・・・・お月様がとっても綺麗ですね。』
そうなんだ。
俺にとってあいつは、あいつの存在は。
「もう一度だけ聞く。
比企谷、本当に君の答えはそれでいいんだな。」
「よくねぇ。」
「え?」
「よくねぇ、よくねぇ、よくねぇ、よくねぇ、いいわけねえだろう。
葉山! お前が本当は何を問いたかったのかわかった。
いや、わかったと思う。
俺は、三ヶ木とは本物の関係であり続けたいと願っている。
あいつとなら、俺はそれができると思う。
これが答えだ。」
「そうか。」
「そうだ。
だが一つだけわからないことがある。
葉山、お前はなぜこんなことをしたんだ。
このことを問うのなら、こんなことをしなくても。
これはお前らしくないやり方じゃねえか。
お前ならもっと他に 」
「嫉妬だよ。」
「は、はぁ?」
「冗談だ。
買い被るな。
俺にはこの方法しか思い浮かばなかったんだ。
ただそれだけだ。」
「そうか。」
「そうだ。
比企谷、話はこれまでだ。
俺はもう少しここにいたいんだが、君はどうする?」
「お前とは一緒にいたくねぇ。」
「そっか。」
「じゃあ行くわ。
・・・・・すまん葉山。」
「・・・・・ああ。」
”スタスタスタ”
「比企谷、君は知らないのだろう。
挨拶運動の日、君のためにマッ缶を買っていた三ヶ木さんの幸せそうな顔を。
出てきたマッ缶を握りしめて彼女は俺に言ったんだ、とびっきりの笑顔で。
『比企谷君の分準備していなかったから、し、仕方なしだから。』
比企谷、俺は知っているんだ。
今日、君が雪乃ちゃんと楽しそうに話しているのを見つめていた時の、
三ヶ木さんのとても哀しそうな顔を。
そして彼女は言ったんだ、自分を慰めるように。
『比企谷君にとってわたしはただの友達。
きっとそれ以上でもそれ以下でもないんだ。』
そんな彼女が自分を貶めてさえ君を守ろうとしたんだ。
周りの全てを敵に回すことさえ覚悟して。
俺は彼女に本物を見つけた。
遠い昔に俺ができなかったことを、三ヶ木さんは俺にやって見せてくれた。
俺は彼女の本物を守りたい。
比企谷、だから俺は君にちゃんと三ヶ木さんと向かい合ってほしかったんだ。
君に気付いてほしかったんだ、失ってはいけないものを。
彼女との本物の関係。
それが三ヶ木さんにとって辛い結果になろうとも、彼女ならきっと
・・・・・受け入れるはずだ。
三ヶ木さんはきっと本心でそれを望んでいるはずだから。
ふっ、俺らしくない。
まったく君の言う通りだな。
・・・・・比企谷、俺も本物がほしくなったんだ。
雪乃ちゃんが君を選んだとき俺に生じた嫉妬の気持ち、あれは間違いなく
本物だと思うから。
止まってしまったままの彼女との関係をもう一度動かしてみたい。
俺にはもうあまり時間がないんだ。」
・
・
・
”パクッ”
「あ、あの~会長、それわたしのハニトー。」
「もぐもぐ。
美佳先輩、ちゃんと正座しててください!
それで美佳先輩は自分の身を守るために必要な措置だったと言うんですね。」
”パクッ”
「は、はい。
だって相手はあの葉山君だから仕方なく。
・・・・・あ~また食べた。」
”パクッ”
「もぐもぐ。
三ヶ木先輩はわたし達のことをいつもバカップルって言ってたんですね!」
「ご、ごめんなさい書記ちゃん。
ついうらやましくて。
ね、ね、それわたしのハニ 」
”パクッ”
「もぐもぐ。
で、いつから準備してたんですか鹿娘。
あの赤い鼻とか、背中の落書きとか。」
「今日の午後からです。
他に方法がなくて。
あ、あの~、クリームのところ一口だけでも。」
”パクッ”
「もぐもぐ。
それでいつ頃からバカップルって言ってたんですか!」
「お、お二人がご同伴出勤され始めたころから。
あ、あー、クリーム。
せ、せめてパンの耳のとこだけでも。」
「な、なんですか同伴出勤って!
酷いです! 」
”パクッ”
「いや~、最後の一口が。」
「あー美味しかった。」
「うん、お腹いっぱい。」
「う、ううう、わたしのハニトーちゃんが。」
「仕方ないですね、今回の件はハニトーに免じて不問にしてあげます。
ね、書記ちゃん。」
「はい、許してあげます三ヶ木先輩。」
「・・・・・あ、ありがとごじゃいます。
うううううう。」
「も、もういいんじゃない、いろはちゃん。」
「仕方ないですね。」
”がさがさ”
「はい、美佳先輩。」
「え? あ、ハニトー♡」
「今日一段落したらプチ女子会やろうと思って買ってきてたんですよ。
でも美佳先輩もハニトー買ってくるからどうしょうと思ったんですけど、
今日のことがあったから意地悪しちゃいました。」
「うわ~ん、ハニトーちゃん遭いたかったよ~」
「「大袈裟です!」」
”ガラガラ”
「会長、雪ノ下さん達がそろそろ帰られるそうです。」
「ひゃはろー、一色ちゃん。
そろそろ帰るね。
うん? おやおや今日の主役の三ヶ木ちゃん、なに正座してるのかなぁ~」
「あ、い、いえ、ちょっといろいろありまして。」
「ふ~ん?」
”チョン”
「ぐわ~、や、やめて陽乃さん、あ、足、痺れてるから触らないで。」
「ほほう、ほれ!」
”チョン、チョン”
「うひゃ~」
「あははは、じゃあね三ヶ木ちゃん。」
「あ、陽のん先輩、玄関まで送ります。
ほら美佳先輩も行きますよ。」
「ま、まってモチっとだけ待って。」
「ダメです、はい立って。」
「い、いや、ちょ、ちょっと 」
”ピリピリ”
「ひゃ~、駄目だって~」
・
・
・
「おー雪乃ちゃん、待っててくれたんだ。」
「違うわ。」
「またまた。」
「私は三ヶ木さんを待ってるの。」
「三ヶ木ちゃん?
三ヶ木ちゃんなら生徒会で、まだまだ帰れそうになかったけど。」
「え、そ、そう?」
「雪乃ちゃんはなぜ三ヶ木ちゃんを待ってるのかな。」
「わ、私はただ。」
「ただ、なに?」
「・・・・・あや 」
「謝りたい?」
「・・・・・私は、」
「もしそうだとしたらやめときなさい。」
「え?」
「雪乃ちゃん、本気で人を好きになるということは知らず知らずに
誰かを傷つけることなの。
でもそれを覚悟できないのなら、本気で人を好きにならないこと。
確かに今日のことについていうと、雪乃ちゃんは自分の願望のため、
比企谷君に辛い思いをさせた。
雪乃ちゃんはわかってたはずだよ、比企谷君を選んだらああなる
ことは。
それでも比企谷君を選んだ。
それは雪乃ちゃんの我儘。
それに対し三ヶ木ちゃんは自分の身を挺して比企谷君を守った。
最初はヒヤヒヤしたけどね。
それでもちゃんと守った。
雪乃ちゃんもどこかで三ヶ木ちゃんなら何とかしてくれるって
思っていたんじゃない?
結果だけをいえば、どっちが比企谷君のことを想っていたかは
明らかだよね。」
「わたしは、わたしはただ 」
「でもね雪乃ちゃん。
お姉ちゃんはそれでいいと思うよ。
今までの雪乃ちゃんからは大分成長したと思う。
だから、誰かを傷つけたとかそんなこと気にしないで、
もっと我儘に人を好きになりなさい。
それこそ他には何も見えなくなるくらい猛進しなさい。
それで雪乃ちゃんの想いが通じればそれでよし。
もし彼が他の人を選んだとしたら、その時は思いっきり泣けばいいんだよ。
お姉ちゃんが慰めてあげる。
でもね、一生懸命恋したからこそ人は成長できるものなんだよ。
想いがかなってもかなわなくても成長できるものなの。
だからもっと我儘に恋しなさい。
・・・大丈夫、雪乃ちゃんには時間がいっぱいあるのだから。」
「・・・・・いいたいことはそれだけかしら?」
「ん?」
「随分と勝手なことをほざいてくれたようだけど。
姉さん、姉さんは失恋なんてしたことないじゃない。
そんな人にえらそうに言われても何も心に響かないのだけど。
それに勘違いしてるわ。
私が比企谷君を選んだのは・・・そ、そうボランティアよ。
だって彼は女子となんてフォークダンスすら踊ったことがないはずだから。
部長としてそんな部員をほっとけないじゃない。
それが彼を選んだ理由。
それと私が三ヶ木さんを待ってたのは誤りを正すためよ。」
「えっと、それは三ヶ木ちゃんがとった行動のこと?」
「違うわ、姉さんも気が付かなかったの?」
「え? えっと何に気が付かなかったっていうのかな?」
「トナカイの鼻は赤くないわ!
あれはあのトナカイだけが特別で、それは恐らくしもやけだったのよ。」
「え、そっち?」
「そうよ。
勝手に人のこと決めつけてもらいたくないわ。」
「・・・ふぅ~、まぁいっか。
そういうことにしておいてあげる。
それじゃお姉ちゃんは帰るけど、雪乃ちゃんはどうする?」
「・・・・・今日は・・・・・一緒に帰ってあげてもいいわ。」
「ふふ、それじゃ帰ろうか。」
”にぎ”
「ね、姉さん、手を離して。」
「え~、いいじゃん。
ん~、何年ぶりだっけこうやって帰るの?」
・
・
・
”ガサガサ”
「ふ~、ここはこれで良しっと。
もうごみ箱無かったよね。」
「お~い三ヶ木、体育館のごみ回収してきたぞ。」
「おう稲村君、ありがと。
じゃあこれで最後だ。」
「さっさと片付けて帰ろうぜ。」
「あ、うん。
じゃあ、ちょっと会長に連絡しておくね。」
”カシャカシャ”
「・・・・・お、おいマジか。
とうちゃん、30分おきにラインしてくるんじゃねぇ!
何やってんだ、し、仕事しろし。
それになんだ、風邪ひいてないかとかご飯ちゃんと食べてるかとか、
元気に暮らしているかって、昨日の夜だけだろうがいなかったの!
まったく!
・・・・・・・・・・・・・・あのね、今日はちゃんと帰るね。」
”ぎゅっ”
「ん、どうした三ヶ木、スマホなんか抱きしめて?」
「い、いやなんでも。
ちょっと待ってね、いま会長に電話するね。」
”ライン”
「げ、またとうちゃんから・・・・・そうなんだ。」
「ん、何かあったのか?」
「あ、う、うん。
な、なんでもない。」
「そっか。
あ、そうだ、明日の校内見廻りだけどどうする?
来賓の出迎えの後は時間空いてるのか?」
「あ、出迎えの後はクラスの方に出ようかなって。
11時ごろまでの当番になってたから。」
「確か喫茶店やるんだったな。
それじゃ時間になったら教室に迎えに行こうか。」
「あ、あ、あのさ、生徒会室で待っててもらってもいい?」
「生徒会室?
ああ、わかった。
あとな、今日のあれって事前に葉山と打ち合わせしてたのか?」
「え?」
「ほらあの鼻のコント。」
「あ、あれ。
あれは葉山君のアドリブだよ。
びっくりした。」
「息ぴったりだったな。」
「そう?」
「でも、もう本当にやめておけ、ああいうの。」
「・・・・・」
「俺は滅茶苦茶辛かった。
俺だけじゃない。
会長も書記ちゃんも本牧も、それから刈宿も滅茶苦茶辛かったと思う。
それに一番辛かったのは比企谷じゃないか。」
「・・・・・」
「あいつにも言ってなかったんだろ。」
「う、うん。」
「ちゃんと謝っておけよ。」
「うん。」
・
・
・
ふぅ~、いい風呂だった。
さてっと後はマッ缶飲んで寝るか。
ふふふ、風呂上がりにこのよく冷えたマッ缶をきゅっと。
これに勝る喜びはない!
『比企谷君。』
え? あ、あれ三ヶ木?
何でお前がここに?
いつから俺の部屋にいたんだ?
えっと今日は金曜日だよな?
”ダ―”
『比企谷君!』
『は、はい。』
”だき”
『あのね、好き♡』
い、いやちょっと待て。
何だ? 何がどうしたんだ?
『ね、比企谷君。』
『は、はい。』
『しよ。』
『は、はぁっ!』
いやお前そんな真剣な目でじっと見ないで。
いきなりなんてこと言うのお前。
は、はっ、そこに落ちてる本は、お持ち帰りシリーズ!の地味っ子の奴。
そ、そっか、お前あれを見て欲情して・・・・・・
”ごく”
お、落ち着け、お、俺は理性の化け物と言われた男だ。
い、一時の感情に流されてはいけない。
・・・・でもたまにはいいかな~、せ、折角・・・・
だ、だめだ、俺は三ヶ木とはちゃんと。
『ま、まて、落ち着け。
いいか三ヶ木。
い、一時の気のまよいでだなそんなことをしたら』
『わたしのこと嫌い?』
『いや、違う。
その、なんだ、ほ、ほらいきなりだから。
こういうのはだな、手順というのがあってだな。
まずは 』
『またそうやって逃げるの?』
『え?』
『・・・また逃げ出すのかい?』
『な、なんのことだ? 』
あれ、三ヶ木声変わってない?
それになんだか身体でかくなって。
『・・・・・君はまたそうやって誤魔化すつもりか。』
『は? は、葉山!
な、え? おま、な、なんでお前が抱き着いてんだ。』
”かぷっ”
お、おいやめろ!
耳を噛むんじゃない。
俺は、俺は耳が弱いんだ~
”ガバッ”
「うわ~」
は、は、は、ゆ、ゆ、夢か。
げ、なんて夢見るんだ。
よりによって葉山と抱き合う夢なんて。
・・・ぐっ、最悪だ!
葉山に耳噛まれることになるとは。
はぁ~、気のせいか耳に噛まれた感触が残っているんだが。
”ブ~、ブ~”
ん、三ヶ木から電話?
今何時だと思ってるんだ。
いや、待て。
あいつがこんな時間に電話をしてくるはずがない。
は、もしかしてこれも夢?
夢の続きじゃないのか。
”ブ~、ブ~”
「もしもし。」
「あ、夜分ごめんね。
三ヶ木だよ。」
「・・・・・お前本当に三ヶ木か!」
「え、いや、あれ?
その~、わたし三ヶ木のはずだけど。」
「嘘をつけ。」
「いや、嘘っていわれても。」
ん~、怪しい。
これはやっぱり夢じゃないのか?
話しているうちに、このスマホから葉山が出てくるんじゃねえのか。
それでまた”かぷっ”て。
い、いやだ、耳はやめてくれ~
は、そ、そうだ。
本物なら答えられるはずだ。
「それならスリーサイズ言ってみろ。」
「え?」
「言えないだろ。
やっぱりお前三ヶ木じゃない!
電話切るぞ!」
「い、いや、あの、えええっと上から8・・・・・・・
おい! お前知らないだろうが、わたしのスリーサイズ!」
「ちっ、本物か。」
「ちっじゃない。」
「で、何の用だ三ヶ木。
こんな時間に電話してくるんだ、よっぽど重要な用事なんだろうな。」
今の俺は機嫌が悪い。
くそ、これも葉山のせいだ。
そ、それと話をしてると、あの夢の中の三ヶ木の顔が頭に浮かんで。
『しよ。』
・・・・・。
「あ、あのさ、用はなかったんだけど。
ちょっと声が聞きたいかなぁ~って。」
「用がないんだな。」
「あ、う、うん。
・・・でも用がなかったら電話しちゃいけないの。」
い、いや、いけなくはないのだが。
なにせ、さっきの夢がリアルで。
声を聴いてると思い出してしまって、俺のメンタルがちょっとマズイ。
はぁ~、あのまま抱きしめていたら・・・・・
な、なにを言ってんだ。
と、とにかく今は早く電話を切らないと。
「三ヶ木よく聞け。
電話の存在意義というのは、遠隔地にいる者同士が必要な情報を
送り送られることにあるんだ。
そう、大事なのは必要な情報のやり取りだ。
人はその情報の価値に対し対価を払うものなんだ。
無駄な情報に対価を払うのは馬鹿げている。
だから 」
「うううん、それは違うよ。
あのね、電話っていうものは、離れている人と人の心を結びつけて
くれるもんだよ。
なんの取り留めのない内容の会話だとしても、大事な人と同じ時間を
共有できるの。
なんかつながってるって思えるの。
それって何にも替えられないとても価値のあるものだよ。
わたしはそう思う。
電話は単なる情報のやり取りだけの道具じゃない。」
「そ、それはだな 」
「・・・・・・な~んちゃって、ごめんね。
夜遅く電話かけてきて、なに言ってんだろこの馬鹿は。
迷惑だったよね。
今日さ、とうちゃん急な出張でいないんだ。
いま家で一人っぼっち。
だからちょっと小さかった頃のこと思い出して少しだけ怖くなって。
あ、ごめんもう充電切れそうだ。
変なんことばっかり言ってごめんなさい。
あと、あのね・・・・・人気投票の件、勝手なことしてごめんなさいです。
それとわたしに投票してくれてありがと。
わたしも比企谷君に投票したよ。
それじゃ、おやすみなさい。」
「あ、ああ。」
プー、プー、プー
き、切れたのか?
なんだ、電話かけてくるのならしっかり充電しろ。
会話、短かいじゃないか。
どうしよう、電話しようかなぁ。
も、もう充電終わったよな。
・・・・・はぁ~馬鹿だ、あれだけ切ろうとしてたのに。
三ヶ木、ごめんなさいってなに謝ってんだ。
あれは俺に原因があるだろうが。
謝るのは俺のほうだ。
明日、ちゃんと話しないとな。
電話じゃなくて、ちゃんと顔を見て。
ん? ちょっと待てよ。
投票って、俺は三ヶ木には投票していないんだが。
俺は葉山と雪ノ下に投票したんだけど。
ーーーーーーーー
「お早うございます。
いらっしゃいませ。
応接室までご案内します。
三ヶ木先輩、あとお願いします。」
「うん、お願い書記ちゃん。」
”キキキー”
「あ、この黒塗りの車って確か。」
”バダン!”
「黒岩、じゃあ行ってくるわね。」
「はい、こちらでお待ちしております。
会長、お気をつけて。」
「はいはい。」
”スタスタスタ”
「おばあちゃん、お早うございます。
今年も文化祭に来てくれたんですね。」
「今年も楽しみでね、よさせてもらったよ。」
「ありがとございます。
でもおばあちゃん、来賓さんだったんだ。」
「まぁそんなに大それたものじゃないよ。
それと、孫ともよくしてくれてありがとうね。」
「お孫さん? 総武高に入ったんだ。
よかったです。」
”パタパタパタ”
「後援会会長、いつもご支援ありがとうございます。」
「ああ、雪ノ下さん
また選挙が近づいてきたね。
今度も旦那出馬するのかい。」
「あ、はい
またその折はどうぞよろしくお願いします。」
「まったく。
そんな道楽してる場合でもなかろうに。
まぁ、あんたがしっかりしすぎてるからかねぇ。」
「いえ、わたしなんぞ。
さ、ご案内いたします。」
「はいはい。
じゃあね、三ヶ木さん。」
「え、あ、はい、おばあちゃん。」
”スタスタスタ”
「ほぇ~、あの人って雪ノ下ママさんだよね。
あのおばあちゃんって何者?
なんか偉い人なのかなぁ。
あれ、でもなんでわたしの名前知ってるの?
んと、お孫さんて誰?」
・
・
・
「城廻先輩、お待ちしてましたです。」
「おー、一色さんご招待ありがとう。」
「どうですか、久しぶりの母校は?」
「ははは、半年ぐらいしかたってないけどやっぱり懐かしいね。
う~ん感傷的になっちゃう。
あ、そうだ。
一色さん、えっと美佳は生徒会室?
いきなり行ってびっくりさせてやりたくて、今日来ること言ってないんだ。」
「美佳先輩はえっと確か教室だと。」
”ブロロロン キキ―、ドッドッドッ”
「うわーサイドカー。
わたし初めて見ました。」
「うん、わたしもだよ。」
”カパッ”
「ふぅ~、やっぱりフルフェイスだと暑いわね。」
「あ、女性?
城廻先輩、女性が運転してたみたいですね。」
「本当だ。
え、あの人って・・・・・
一色さんごめんね、ちょっと行ってくるね。
あ、あとから生徒会室行くね。」
「は、はい。」
「すっかり変わったね。
わたしがいたころの面影、全然ないわ。
さてとあの子はどこだろう。
あの馬鹿、3年C組ってことしか教えないで。
教室にいなかったらどうするの。
全くそういうところは、昔から全然変わらないんだから。
えっと、どこから入ればいいんだろう?」
”きょろきょろ”
「あ、あの~、なにかお探しですか?」
「え、あ、3年C組の教室に行こうと思うんだけど、
どこから入ればいいのか教えてくれる?」
「3年C組だったらわたしも今から行くところです。
よかったらご案内します。」
「あ、ほんと?
じゃあ、お言葉に甘えてお願いできるかしら。」
「はい。」
・
・
・
「ひえ~、沙希ちゃんカッコいい。
すごく似合う。」
「よ、よしな三ヶ木。」
「だってほんとだもん。
沙希ちゃんの執事姿、ス・テ・キ♡
うっとりしちゃった。
でもこれ胸どうしてんの?
沙希ちゃんの場合、窮屈じゃない?」
「ああ、さらし巻いてるんだ。」
「へ~、どれどれ沙希ちゃ~ん。」
”ピタッ”
「あ、馬鹿、く、くっつくな。
胸から顔どけな。」
「いいじゃん。
いいなぁ、執事姿ほんと似合ってる。
わたしも着たい。
こんなの着てさ、ご主人様紅茶でございますとかさ。」
「あ、三ヶ木さんなにしてるの。
やっぱり君がいないとダメなんだ。
さぁ早く着替えて着替えて。」
「え?」
「ほら早くあっちに君の分準備してあるから着替えて。」
「え、わたしの分もあるの。
でへへ、似合うかなぁ。」
・
「お~、やっぱり似合うな。」
「な、去年もそうだったんだぜ。」
「・・・・・お、おい。
や、やっぱり、やっぱりわたしは割烹着かい!」
「だってな、やっぱ似合うよな。」
「おう、
割烹着を来たら三ヶ木さんの右に出る人はいない。
よ、ミス給食のおばちゃん!」
「え~い、うれしくないわ!
もうやけだ。
何でもつくってやる。
さっさと注文とってこい、おらぁ!」
・
「ヒッキー、これお願い。
2番のテーブルね。」
「お、おう。」
”テクテクテク”
「コーヒーお待ちどうさまっす。」
「ぷっ! あはははは、写真とそっくり。」
「あ、本当だ。
あの、写メいいですか?」
「いえ、そういうのは。」
「何を言ってるんだ比企谷君。
いいですよ~、遠慮しないでじゃんじゃん撮ってください。」
ちっ! ルーム長の野郎余計なことを。
そう、わが3年F組の出し物は変顔喫茶。
なんでも各テーブルに置かれた写真集の中で誰かをご指名して
写真を撮れるらしい。
その写真集にはクラス全員の変顔が。
だがおかしい、おかしいのだ。
なぜなら俺の写真は、自分史上最高に普通の顔写真のはずなんだが。
なぜこうも指名が多いんだ。
「あ、今の顔サイコー、そのまま。」
”カシャ”
「撮れた? ねぇ見せて。」
”きゃっきゃっ”
「あッははは、変な顔!」
「でも魔除けにはなりそうじゃない?
う、うける―」
く、くっそ。
魔除けなんかになるはずがないじゃないか。
俺自身そんなご利益にあったことがない。
「ヒ、ヒッキーご苦労様。
まぁ、そういうコンセントだから
でもさすがヒッキーだね、ご指名No.2だもん。」
「うっせ。
それにコンセントじゃない、コンセプトだ。」
「う~、よく似てんじゃん。」
「似てねぇ。
お前も受験生なんだからもっと勉強しろいろいろとな。」
「なんだし、ちゃんといろいろ勉強してるし。
煮っころがしも作れるようになったし。
それとあたしヒッキーと一緒の大学行くんだからね。
受かったらちゃんと約束守ってもらうからね。」
「しらん。」
「ひど!」
「葉山君! ご指名だよ。
1番のテーブルお願いします。」
「了解。」
ふふふ、そうなんだ。
指名の数、この俺を差し置いてこいつが1位なんだ。
何だよくわかってるじゃないか。
普段イケメンのほうが不細工に見えるものだ。
ほれ、葉山お前も笑われてこい。
「はい、アイスコーヒーでよかったかな。
お待ちどう様。」
「葉山君、変顔でもカッコいいです。」
「そ、そうかい?
ありがとう。」
「あ、一緒に写メお願いしてもいいですか?」
「え、ああ、いいよ。」
「きゃ~、やった~」
「あ~、ずる~い。
わたしも、わたしもお願いします。」
「えっと、それじゃ並んでくれるかなぁ。」
な、なぜだ。
あいつのは同じ変顔じゃないのか。
「葉山君、ユーモラスでとても素敵。」
ち、違うのか、俺のとは違うのか。
・
・
・
「あ、比企谷君、もう上がりなの?」
「え、あ、ああ。」
「ほんと、やった~
あ、じゃあ、ね、ねぇ、ちょっと待っててくれる?
急いで準備してくるからそこで待ってて。 にこ♡」
「お、おう。」
な、なに、こんな娘同じクラスにいたっけ?
結構かわいい。
一緒に文化祭回ろってお誘いか?
はぁ~、なんか俺頑張ってよかった。
「比企谷く~ん。」
「お、おう。」
「はい、これお願いね。」
「ん?」
「さっさとゴミ捨ててきてね。」
「・・・・・」
ま、まぁ、おれは自由人だから。
縛られるの合ってないから。
ひ、一人で文化祭回るから。
”スタスタスタ”
ん、あれは材木座。
あいつ教室の入り口に一人で何やってんだ。
は、新種のいじめ、いじめなのか?
「おう!」
「ぬほほほん、見下げ果てたぞ八幡!
貴様ゴミ出し当番か!」
「お前は何してんだよ。」
「我はこの勝手口の衛士だ。」
「そっか、まぁご苦労さん。」
「い、いや待て。
もう行っちゃうの?
ね、ちょっと寄ってかない。」
「お前本当は客引きなのか?」
「馬鹿にするでない。
我に客引きなんぞ出来るわけがなかろう。」
「やけにC組のほうは繁盛してるんだな。
なにやってんだ?」
「聞いて驚け、見て膝跪け!
みせてやろう、黒執事喫茶だ!」
「お、おお、あれはあの黒執事は川越か。
スゲ~似合ってるじゃないか。
バーテンダーもなかなかだったけど、
あいつプロポーションいいからな。」
「ん?」
”スタスタスタ”
「あ、やば、みつかった。」
「ひ、比企谷、い、いらっしゃいませ。」
「すまん、客じゃないんだ。 」
「そ、そうかい。」
「お前、すげー似合ってるな。
この客のほとんどがお前目当てじゃねえのか?」
「そ、そんなことはないって。
え、えっと三ヶ木に用事なんだろ。
ちょっと待ってて。」
「い、いや、ちが 」
「三ヶ木ー」
「な~に、沙希ちゃん。
あっ!」
「お、おう。」
「あ、あの~比企谷君。
何か用・・・かなぁ。 」
”モジモジ”
に、似合ってる。
ふるき時代の日本のおかあちゃん。
川越とは別の意味ですごく似合ってる。
「あ、い、いや、お、お前もスゲ~似合ってるな。
そ、その割烹着。」
「う、う、うわ~ん、馬鹿!」
”ダー”
え、あ、あれ?
「馬鹿、三ヶ木結構気にしてるの。
みんなから給食のおばちゃんて言われてて。」
「そ、そうなのか。」
「まったく、あんたはデリカシーがないから。
いいよ、あとで何とかごまかしておいてあげる。」
「川崎さんちょっといい?」
「あ、は、はい。
じゃあね。」
「おう。」
それじゃ、俺もさっさとごみ捨ててくるか。
「もう行くのか八幡。」
「俺はお前と違って忙しい。
ほら仕事あるから。」
「げふっ」
・
・
・
”カチャ”
「ほい! ホットケーキできたよ。
お願いしま~す。」
「はいはい。」
「ふぅ~、とりあえず一段落かなぁ。
えっと、あ、もうこんな時間。
舞ちゃん、ちゃんと誘えたかなぁ。」
”バッ”
「だ~れだ!」
「え、うそ、この声、めぐねぇ!」
「あったり。」
「うわ~ん、めぐねぇ。」
”だき”
「めぐねぇ、めぐねぇ、めぐねぇ、」
「ただいま、美佳。」
・
「三ヶ木遅いな。
結構忙しいのかなぁ、クラスの方。」
「お待たせしました、稲村先輩♡」
「・・・・・いや待ってない。」
「な、なんすか!
まぁいいです
さ、見回り行きましょ?」
「え、あ、いや見回りは三ヶ木と。」
「三ヶ木先輩、急用でこれなくなったんですよ。」
「そ、そっか。」
「だからわたしが一緒に行ってあげます。」
「いや、一人でいく。」
”ぎゅ”
「ほら、行きますよ。」
「行かない。
勝手に腕組むんじゃない。」
”ばっ!”
「あっ、もう!
ほら腕組むと胸があたってお得ですよ。」
”ジー”
「いらない。」
「は、なんですか!
いまなに見たんですか!
だから、わたしは脱いだらすごいんですって。」
「はいはい。」
「あ、信じてないじゃないですか。」
「はいはい。」
「ああん、もう!」
・
「めぐねえ、はいスペシャルデラックスホットケーキ美佳スペシャルバージョン。」
「いや、美佳、スペシャル2回入ってるから。
で、これ何段重ねてるの?
5枚はあるじゃない。
クリームもたっぷり。
これ一人で食べるのって結構やばいと思うけど。」
「一緒に食べるの!」
「やれやれこの馬鹿妹は。
はいはい、じゃあ食べよっか。」
「うん♡」
”スタスタスタ”
えっと三ヶ木まだいるかな。
なんか昨日からいろいろと悪かったからな。
もう交代できるんなら、一緒に文化祭回ってなにか奢ってやるか。
えっとどこだ?
お、いたいた。
ん、なんか食って。
あ、めぐり先輩じゃないか。
何だあいつデレデレしやがって。
はは、恋人同士みたいだな。
・・・・・仕方ない、あんな幸せそうな顔見せられたら。
さてっと、マッ缶買って屋上にでも行ってるか。
「あれって城廻先輩だね。」
「ん? 由比ヶ浜か。」
「さすがのヒッキーも城廻先輩には勝てないか。」
「なにいってんだ由比ヶ浜。」
「えへへ。
さ、ヒッキー一緒に回ろ。にこ♡」
でた、こいつの上目使い。
やっぱりこれすごくかわいいんだけど。
これって反則だろ。
だがこいつと二人で回ると大変なことになる。
雪ノ下ほどではないが、こいつもトップカーストだからな。
すれ違うやつに殺されそうになる。
ほらこうしているだけでも何人からか睨まれてるんだが。
だから、
「断る!
俺は独立心の塊だ。
行きたいところに一人で行く。
他人の影響は受けない。
だからひとりで回る。」
「む~、またそんなこと言ってるし。
昨日はゆきのんとチークダンス踊ったんだから、今日はあたしと文化祭回る
義務があるの!
ちゃんとゆきのんの了解も取ってあるんだから、ヒッキー逆らえないの。
ほらいくよ。」
「な、なんだ、何の義務だ。
それになんで雪ノ下の了解が 」
「いいから行くよ!」
”だき”
「お、おい離せ! 腕に抱き着くんじゃない。」
「いいじゃん。」
馬鹿、お前と腕を組むとだな・・・・・・
・
ううう、こいつわざとなのか、いや絶対わざとだろ。
さっきからおっぱいが、ほら俺の腕にジャブを繰り返している。
おお、ほらまた。
「ヒッキー、顔赤いよ熱でもあるの?」
「い、いや、ほ、ほら歩く度に胸がだな、俺の腕に当たって。
ま、まぁなんだ、結構なお手前で。」
「あ、い、いえ、どういたしましてって。
な、なんだし! ヒッキーのスケベ。」
お、おい、嫌なら腕を離しなさい。
”ぎゅっ”
いや、だからなんでさらにくっついてくるの!
「ふんふんふん♬」
「お、おい、いい加減に腕を 」
「ヒッキーの、ス・ケ・べ。 にか♡」
「お、おま 」
く、くそー。
なんだよこいつ、かわいい。
それにしても、めっちゃ機嫌いいのな由比ヶ浜。
ま、しばらくこのままでいいか。
「お、おいあれ見ろよ。」
「チッ、なんだあいつ。」
い、いや早いとこなんとかしないとやばい。
俺、無事に帰れるのか、今日。
「あ、ヒッキーお化け屋敷だ。
ね、入ろ!」
「やめとけ、由比ヶ浜。」
「え、なんでし。」
「文化祭でああいうものはだな、大概女子にむにょむにょすることが目的なんだ。」
「え、むにょむにょ?」
「決まって壁に穴の開いているところがあってだな。
そこを通ろうとすると、穴から手が出てくるんだ。
それは脅かすということを隠れ蓑にして、そこを通る女子にむにょむにょ
するのが目的なんだ。」
「うそ。
ね、でもなんでヒッキー知ってるの?
もしかしてヒッキーもやったことがあるの、むにょむにょて。」
「俺がそんなことをするはずがない。
俺はされたほうだ、中学校の時に。」
「ヒ、ヒッキーされたんだ!」
そうなんだ。
あれは俺の中学での黒歴史の一つ。
いくら中が暗かったとはいえ、男子と気付け。
くそー、俺の純朴をかえせ!
「で、でももしかしたら違うかも。
ほ、ほら、さすがに高校生にもなってそんなこと。」
「いや、絶対違わない。」
「いいからいってみよ。」
「お、おい。」
・
「うわ~、なんか本格的だね。
あ、ほら生首だ。」
「ん、ああ、マネキンな。」
「きゃ、なにか首筋に。」
「ああ、コンニャクだ。」
「も、もう、ヒッキームードないじゃん。」
「お、ほら、あそこ見てみろ。
あの壁にいっぱい穴が開いているだろう。」
「あはは、やっぱりあるんだ。
でもどうしょう、あそこ通らないと出口にいけないよ。」
「ち、仕方ねぇ。
由比ヶ浜、幸い壁に穴が開いているのは右側だけだ。
俺が右を歩くから、その間に駆け抜けろ。
いくぞ、それ!」
「う、うん。」
”ダー”
「ぐわ、や、やめろ、俺は男だ。
おい、どこ触ってんだ男だって。」
・
「はぁ、はぁ、はぁ。」
「ヒッキー大丈夫?」
まったく男も女も見境なしなのか。
いや、絶対男と知っててやってた手があったぞ。
「ありがとうヒッキー。」
「おう。」
はぁ~疲れた
まぁ、由比ヶ浜に何もなくてよかったけどな。
・
”スタスタスタ”
「はい、あと四人だよ。 他に参加者いませんか~」
ん、なにしてんだ?
ああ今年は尻相撲大会やってるのか?
確か去年は椅子取りゲームやってたな。
今年も優勝賞品出るのか優勝賞品は。
おおっ!
これってプリキラ―のイベント限定の缶バッジ。
体操服、しかも今は珍しいブルマバージョン5点セット。
これって超レアだよな。
「お、おい由比ヶ浜、尻相撲でるぞ。」
「え、で、でも、あ、あたしも参加するの。」
「当たり前だ。
見ろ、優勝賞品はプリキラ―の缶バッジだ。
優勝する可能性は少しでも高いほうがいい。
だが、もし俺と対戦するときは必ず負けろ。」
「な、どんだけだし。
まぁヒッキーが言うなら参加するけどさ。」
”スタスタスタ”
「ん、ここは尻相撲か。
ちょっと待て、男女混合じゃないか。
確か事前の企画書では別々だったはずだ。」
「え、別にいいんじゃないですか稲村先輩、尻相撲ぐらい。
なんなら個人的にわたしが相手してあげます。」
「駄目だ!
今日は来賓の方もいらっしゃるんだ。
こんなのは見逃せない。
ここは男女別々でやるように注意・・・・・・・」
「え、どうしたんですか稲村先輩。」
「優勝賞品はイレギュラーヘッド限定缶バッジだと。」
「プリキラ―とどっちか選べるみたいですね。
あっ、どこ行くんですか稲村先輩。」
「参加する。」
「はぁ?」
・
「はい、それじゃ参加者の人数そろったので、今から尻相撲大会始めます。
大会はトーナメント方式です。
ルールはこの円形の台から落ちたほうが負けというシンプルなものです。
あ、でもお尻以外使ってはダメですから。
それでは組み合わせ抽選しますから参加者の方集まってください。」
「おい稲村、お前も参加するのか。」
「当たり前だ。
比企谷、優勝賞品は渡さんからな。」
「お前もあれ狙いか。
絶対負けないからな。」
そ、そっか、稲村もプリキラ―狙いなのか。
知らなかった。
だがこいつの目は本気だ。
これは気を引き締めてかからないとな。
「「はぁ~」」
「ん? あ、蒔田さん。」
「こんちです、由比ヶ浜先輩。
まったく男どもは馬鹿ですね。」
「たはは、そだね。」
・
「それじゃ、一回戦始めます。
えっと座間君と、ひき・・・・・んっと。」
「比企谷だ。」
「ああ、比企谷君、台に上がってください。」
「ヒッキー頑張って。」
「おう!」
「よ~い、ピー!」
「おら!」
ふふふ、馬鹿め。
ゲームで鍛えた俺の尻相撲の必勝法。
相手の攻撃が伸び切ったところをめがけて、
つまり今だ!
”ボン!”
「おうぁ!」
”スタ”
「座間君場外! 比企谷君の勝ち。」
「ヒッキーすごい。」
「次は由比ヶ浜さんと松田君。」
「あちゃ、あたしだ。
行ってくるね蒔田さん。」
「頑張ってください、由比ヶ浜先輩。」
「はい、それでは台に上がってください。」
「あの、松田さん、よろしくお願いします。」
「は、はい。 さすが4位かわいい。」
「え?」
「よ~い、ピー」
「えい!」
”ポン”
「は~、しあわせ~」
”スタ”
「松田君場外、由比ヶ浜さんの勝ち。」
お、おい、あれでいいのか?
でも松田って言ったけ?
あいつ幸せそうだな。
だったら、まぁいいか。
・
「稲村先輩、なに計算しているんですか?」
「よし、間違いない。」
「えっ?」
「・・・・と稲村君、台に上がってください。」
「あ、はい。
蒔田、まあ見てろ。」
「よ~い、ピー」
「はっ!」
”ボン”
「うわぁ」
「稲村君の勝ち。」
「おし。」
「え、稲村先輩すごい。」
「いいか蒔田、合図とともに腰を落として下から押し上げろ。
この角度だ、これが重要だ。」
”くぃ”
「計算したんだ。
そのほうが勝つ可能性が高い。
やってみろ。」
「え、あ、は、はい。」
”くぃ”
「蒔田角度が違う、こうだ!」
”くぃ”
「あ、は、はい。」
いや君たちなにしてるの
何か真剣にやっているのだが、こっちからみてると
すごくやらしいんだが。
”くぃ”
「稲村せんぱ~い、めっちゃ恥ずかしいです。」
・
「えっと次は、おおっ、実行委員長。
我らが実行委員長のご参加です。
あの~、握手してください。」
「え? あ、はい。」
”にぎ”
「い、委員長、一言お願いします。」
「あ、あの、が、頑張ります。」
「委員長、すべて私に任せてください。
それでは台に上がってください。
ほら、そこの君もさっさと上がる。
それでは委員長いきますよ、よ~い、ピー」
”ボン”
「きゃ。」
”スタ”
「あ~負けちゃった。」
「ピ、ピー!
今のはフライング、やり直し!」
「え、いや、ちゃんと笛がなってから。」
「はい、やりますよ。
よ~い、ピー」
・
「きゃ。」
”スタ”
「ピ、ピー! フライング。」
「あの~、俺もう負けでいいです。」
「うし! 我らが実行委員長の勝ち。」
「あ、なんか、ごめんなさい。
もうやだ。」
・
・
・
「はい、いよいよ準決勝です。
こっちヒキタニ。」
「いや違うから、比企谷。」
こいつやる気なさすぎだろう。
蒔田とか由比ヶ浜の時とは全然やる気違うだんだが。
「はい、こっち、えっと君は誰だっけ。」
「稲村だ。
比企谷、ぜってぇ負けないからな。」
「ハイハイ、さっさと台に上がって。
よ~い、ピッ。」
「いやまて、はや 」
”ボン”
「あまい比企谷、そんなんで落ちるか。
それいまだ! この下側からの突き上げで 」
「あ、三ヶ木!」
「え?」
”ボン”
「うわぁ!」
”スタ”
「ひ、比企谷、お前卑怯だそ!」
「ふふふ、だまされるほうが悪いんだ稲村。」
許せとは言わん。
おれはあのプリキラーを手に入れるためになら
どんな手でも使うぞ。
・
「えぃ!」
”ぼよ~ん”
「なんの!」
”ぷるん”
「うへぇ~、いい眺めだな稲村。」
「そうだなぁ~、比企谷。」
”ぼよ~ん”
「ん? あ! ヒッキー、なんかいやらしい目で見てる。
もう最低!」
「ちゃ~んす!」
”ぼん!”
「ひゃ~」
”スタ”
「由比ヶ浜さん場外。
勝者、我らが実行委員長!」
「いいかげん蒔田って呼んで。」
・
「さぁ、いよいよ決勝戦です。
こちらは、我らが実行委員長、蒔田さん♡
そっち誰だっけ、ああ、ヒキ何とか君。」
「おい!」
ま、まあいい。
だが問題なのはこの司会者のフライングループ。
蒔田が勝つまで延々とフライング判定を続けるつもりだ。
このループを何とかしないと。
「さぁ、始めますよ。
台に上がってください。
蒔田さん準備いいですか。」
「はい。」
「よ~い 」
「いや、俺は? 俺にも聞いて。」
「ピー」
「おい!」
「比企谷先輩覚悟、えぃ!」
・
「えぃ!」
「なんの。」
そろそろいいだろう。
これだけやった後なら、もうフライングループはつかえまい。
フフフ、ようやくあのプリキラ―の缶バッジが俺の手に。
さらばだ蒔田!
「あ、比企谷先輩、ほら三ヶ木先輩。
三ヶ木先輩が誰かと腕組んでうれしそうに歩いてる。」
「ふん、甘いぞ蒔田!
そんな手に引っかかるか!」
「舞ちゃん頑張って!」
え? あ、み、三ヶ木。
誰かと腕組んでって、あれはめぐり先輩じゃ
”ぼん!”
「うわぁ~」
”スタ”
「ヒキ何とか君場外! 勝者実行委員長蒔田さん、やったー!」
「やりました!
三ヶ木先輩勝ちましたよ~、ピース!」
「舞ちゃんナイス!
じゃあね・・・・・あっ、頑張ってね。
めぐねぇ、次はたこ焼き、たこ焼き行こ。
戸塚君たちがやってるの。
あのね、テニスボール焼きっていって 」
”スタスタスタ”
「お、俺のプ、プリキラ―が・・・」
「比企谷、お前イレギュラーの缶バッチ狙いじゃなかったのか?」
「はぁ? なに言ってんだ稲村。
あんな目の腐ったような奴の缶バッチなんかいらん。
俺が狙っていたのはプリキラーに決まってるだろう。
あれは二度と手に入らないんだ。」
「・・・・・・そ、そうなのか?」
「蒔田さんおめでとうございます。
優勝賞品はどれにしますか?」
「あ、イレギュラーヘッドの缶バッジでお願います。」
「うううう。」
「ヒッキーもう泣かないの。」
く、くそ俺のプリキラ―が。
こんなことがあってもいいのか。
いや、あってはならない。
ならば俺の取る行動は決まっている。
「由比ヶ浜もう一回だ、もう一回参加するぞ!」
「ヒッキー、マジ?」
・
・
・
「由比ヶ浜ちょっとそこで休憩するか?」
ちっ、結局あのあと3回も参加しちまった。
最後なんて司会の奴、顔引きつってたなぁ。
てこずったが、わはははは! プリキラーゲットだぜ。
はぁ~、なんていい日なんだ今日は。
「ヒッキー、あたし喉乾いちゃった。
何か飲まない?」
「お、おう。
任せろ、何でも奢ってやる。
まぁ~何度も付き合わせてしまってすまなかった。」
「うううん。
あたしも楽しかった。
ヒッキーめっちゃ悔しがるんだもん。
でもよかったね、最後に缶バッジ手に入って。」
「いらっしゃいませ。
こちらメニューです。」
「マッ缶はないのか。」
「あたしオレンジジュース。」
「じゃ俺はアイスコーヒーで。」
「はい、畏まりました。」
・
「お、これ結構うまいぞ。」
「ヒッキー、シロップ入れ過ぎだって。」
「これぐらい普通だろ。」
「本当? どれちょっと味見。」
”ごく”
「お、おまえ俺のアイスコーヒーにストロー突っ込むんじゃない!」
「別にいいじゃん。
やっぱり甘すぎ。
これコーヒーじゃなくて、シロップじゃん。
シロップのコーヒー味。」
”ゴクゴク”
「うん、やっぱりシロップ。」
「い、いや、お前そう言いながらまだ飲むの?」
「へへ、早く飲まないと全部飲んじゃうよ。」
「おま、くそ」
”ゴク”
「ヒッキー」
「ん?」
”カシャ”
「お、お前なにを 」
「ツーショットゲットだぜ。
なんちゃって。」
「お、おい、削除しろ。
悪いこと言わん、すぐ削除しろ。
おい何してんだ!
待ち受けはやめろ、いや、やめてください由比ヶ浜さん。」
・
”カラン、カラン”
「ルンルンルンルン♬」
くそ~、うれしそうに、氷を弄びながらスマホ見てやがる。
こいつあくまでも削除しない気だな。
まずいぞ、あれがもし雪ノ下や一色・・・・・三ヶ木に見られたら
俺の心が弄ばれる。
何とかしないと。
「ルン、ルン、ル‥・・・・・・ン。」
ん、どうしたんだ?
急に表情が。
「どうした由比ヶ浜?
もしかして自分の行った行為に自己嫌悪か?
だったらさっさとスマホのデーターを削除するんだ。」
「削除しないし。
ちゃんとコピーも保存したし。
違うの、あのねヒッキー。
最近サブレ元気がなくて、いつも寝てばっかりなんだ。」
「いつも寝てて、それでちゃんと三食当たるのか?
しかも寝床付きで。」
「え、そ、そうだけど。」
「うらやましい、何たる理想の生活。」
「ヒッキー。」
「あ、いや、その、と、年じゃねえのか?
サブローいくつだ。」
「サブレだし。
えっと大体12歳ぐらいだったかなぁ。」
「だったら人間でいうと65歳ぐらいじゃねえか。
まぁ、後は余生をって年だな。
まぁ、あんまり無理させるな
あと食事な。
ほらシニア用のドッグフードってあるから。」
「え、そんなのあるんだ。
早速買ってくるね。」
「お、おう。
まあ気遣ってやってくれ。」
「あ、そうだ! ね、ヒッキー、今度サブレに会いに来てくれない?
ほら、サブレってヒッキ―大好きだし。」
「断る。」
「即答!
い、いいのかなぁ~、ま・ち・う・け」
「あれ、き、君はそんな悪い子だったかなぁ~
わ、わかった、絶対に行く。
何があっても必ず会いに行く。
いや~、実は今すぐにでもサブちゃんに会いたかったんだ。
う、うれしいな~
だから、その待ち受けを 」
「え、本当? 絶対だよ。
絶対約束その②」
「なんだその絶対約束その②って。
お、おい、いいから削除しろ!」
「えへへ、じゃあ次どこに行こうか?」
ぐっ!こいつ削除する気なんてまったくねぇ~
ん、今何時だ?
あ、やば。
そろそろ行かないと。
「ちょっと待て。
そろそろ小町の演劇が始まる時間だ。
俺は体育館に行くぞ。」
「あ、あたしも行く。
ね、ヒッキー小町ちゃん何の演劇やるの?」
「たしか童女戦記とかいってたな。
なんかいつも物騒なことを口走ってるんだが。」
・
・
・
な、なんだと!
た、大志の野郎、なんてことしてくれてるんだ。
「戦争は勝ってるうちに楽しむものだからな。
さて諸君、不法入国者を叩き返せ!!
行くぞ!」
”ぶるぶる”
「なんかいつもの小町ちゃんと雰囲気違うね。
でも軍服姿の小町ちゃんもなかなかって、
え、ヒ、ヒッキー、なんで震えてるの?」
「小町をおんぶだと!
大志の野郎、許さんぞ、絶対に許さんぞ!
小町から離れろ!」
「ひ、ヒッキー、落ち着いて。
ほ、ほら、あれで空飛んでるって感じ出しているんだから。
ワイヤーとか絶対無理だし。
大志君、黒子役だから仕方ないじゃん。
結構きつそうだよ。」
「ゆ、ゆるさん。
小町をおんぶできる権利は、兄であるこの俺以外にありえない。
殲滅だ殲滅してやる!」
「ヒッキーが主人公になってるし。
もう、ほら。」
”にぎ”
「は、ゆ、由比ヶ浜?
何で手を。」
「ヒッキー、今は演劇楽しもう。
ねっ♡」
”ドキ”
「お、お、おう。」
「あ、ほら、小町ちゃんにピンスポだよ。」
「あ、そ、そだな。」
ステージでただ一人。
ピンスポを浴びて立っている小町。
わが妹ながら、すごく凛々しいではないか。
まさに天使、天使以外当てはまる言葉がない。
だ、だれだ悪魔といったのは。
「信じることは大切かもしれません。
でも、思い出してください。
希望的観測は徹底して排除しなくてはならないと。
経験的なアプローチは常に有益です。
でも、思い出してください。
いつでも、貴方の失敗は、貴方に原因がある場合が多いのだと。
気が付いた時には、もう手遅れになっていることが多々あると。」
・
・
・
”スタスタスタ”
「そっか、城廻先輩が来てたのか。
それじゃ仕方ない。
うんうん。」
「なんすか、さっきから稲村先輩一人で納得して。
仕方ない仕方ないってばっかり。
なんかキモいです。
それよりも、はいイレギュラーヘッドの缶バッジ。」
「蒔田、これ欲しかったんじゃないのか?」
「えっ? わたし、正直アカ俺ってあんまり知らないんですよ。」
「でもあんなに必死だったじゃないか?」
「・・・・・だって、稲村先輩が欲しそうだったから。」
「いや、俺もあんまりアカ俺って観てないんだ。」
「え?」
「あ、そうだ。
俺もうすぐ本牧とステージの当番、交代しないとい行けないんだ。
蒔田からこれ渡してやってくれないか、三ヶ木に。」
「あ、あの、三ヶ木先輩にですか?」
「三ヶ木、イレギュラーヘッド大好きだからな。
知ってるか? あいつ市販のでは物足りないって、自分でぬいぐるみ
作って、それリュックにつけてんだ。
なんかあの目と包帯姿がたまらないんだってさ。
変わってるよな。」
「そんなの・・・・・知らない。」
「え?」
「そんなの知らないです!」
「ま、蒔田?」
”ガシャ!”
「そんなバッジなんか、稲村先輩が渡せばいいじゃないですか!
馬鹿!」
”ダー”
「お、おい蒔田。」
・
・
・
”ガバッ”
テントに設けられた扉、いや単なるシートだが。
これをめくると・・・・雪女さん。
い、いや、そんな冷え切った眼で俺を見ないで。
な、なに、俺凍っちゃうの?
「ゆ、雪ノ下さん、ご苦労さまです。」
「ゆきのん、ごめんね遅くなっちゃって。」
「あら、二人でこんな時間までどこ行ってたのかしら?
職場放棄?」
「たははは、ごめんごめんゆきの~ん。」
”ぎゅ~”
「くっつかないで、そんなことで誤魔化されないわ。」
「ゆきの~ん。」
「あ、暑苦しいのだけど。」
「いいじゃん。
それよりさ、はいこれお土産。
ほら、マシュマロを焼いてあるんだよ。」
「あら、それは普通よ。
キャンプとかバーベキューとかでよくしていたわ。」
「へ~、そうなんだ。」
”パクッ”
「えへへ、とっても美味しい。
このトロトロ感が何とも。」
「ええ、そうね。
私はクラッカーではさんで食べるのが好きよ。」
「へ~、ね、今度女子会でやってみよ。」
”パクッ”
「そうね。」
「うん、楽しみ。」
ふ~、さすがだ由比ヶ浜。
相変わらず由比ヶ浜に抱き着かれると、すぐ氷が解けるんだな。
もし、俺が抱き着いたら・・・お、俺は永眠しちゃうよな。
さてと、俺はいつもの位置に座ってと。
”ガタ”
「で、雪ノ下、今日は相談あったのか?」
「ええ、一応そこのノートに相談の内容は記録してあるわ。」
「ん、あ、これか。
えっと一人目は、
・・・・・・・おい、なんで結婚出来ないんだって、これ。」
「ええ。」
「こんなの俺たちに相談しても無理だろ。」
そうだ、広川先生にでも相談しろ。
まぁ三ヶ木に聞いたけど、広川先生はケーキショップ開くのが夢だって
いうから、まだしばらく結婚は無理だろうな。
「ええ。
さんざん愚痴を聞かされたわ。
でも、それで気がすんだみたい。」
「そ、そっか。ご苦労さん。
で、次は・・・・・・クラスのH・HくんとH・Hくんの仲が
なかなか進展しないの。
どうすれば”ぐふふ”の中に進展するのでしょうかって。」
お、おい。
あの腐女子、なに相談してやがる。
いい加減、葉山と俺で変な妄想しないで・・・・・・
『は? は、葉山!
な、え?おま、な、なんでお前が抱き着いてんだ。』
”かぷっ”
『お、おいやめろ!
耳をかむんじゃない!』
ほ、ほらみろ、またあの悪夢を思い出してしまうじゃないか。
「・・・・・」
「え? ヒッキーなんで耳抑えて赤くなってるの?」
「い、いや、なんでもない。
ぜ、絶対何でもないぞ!
だ、だ、だから何でもないんだー」
「わ、わかったし。
そんな必死にならなくても。」
「つ、次だ。」
「次はないわ。
ノートを返しなさい。」
「いや、なんか書いてあるぞ。
えっと、妹の胸がなかなか大きくならないの。
いつもチェックしてるんだけど。
最近小さくなったような気も。
どうしたら大きくなるでしょうか・・・・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「なぁ、これって。」
「か、勝手にノートを奪って書いたのよ!」
「そ、そうなのか。
それで、いつもチェックされてるのか?」
「・・・・・・い、いつもじゃないわ。
ご、ご飯を作ってると後ろからいきなり 」
「ゆきのん、大丈夫、これからだよこれから。
ほ、ほら20歳を超えてから大きくなったって人もいるって聞いたことあるから
あ、それとマッサージ、マッサージするといいっていうから今度してあげる。」
マ、マッサージだと。
由比ヶ浜が雪ノ下にマッサージって。
つまり胸をあんなことやこんなことするんだよな。
『きゃ、やめて由比ヶ浜さん。』
『いいではないか、いいではないかゆきのん。』
『あれ~』
ぐふふふ。
「ゲスガ谷君、なにを想像してるのかしら?」
「ヒッキー、目が腐ってる。」
「あ、い、いや、な、なんでもない。
目が腐ってるのはいつものことだ。
それより由比ヶ浜、もしかしてお前もマッサージしたのか?」
「え、いや~あたしのは自然にって、ヒッキーなんかすごくうれしそうだし。」
「いや、大事なことだからだ。」
・
・
・
「ま、まあ待てって蒔田。」
「待ちません。
来ないでください。」
”スタスタスタ”
「いや、なんか悪かった。
すまん。」
”ピタ”
「稲村先輩。
悪かったって、何が悪かったのかわかってるんですか?」
「あ、い、いや、その。」
”どさっ”
「ほら、稲村先輩もここ座ってください。」
「あ、ああ。」
”ちょこん”
「え、いや、なんで正座?
ふ、普通でいいです、もう!」
”スー、ハー”
「稲村先輩。
・・・・・わ、わ、わたしは、わたしは稲村先輩のことが大好きです。」
「あ、あ、ありがとう。」
「だから、わたし稲村先輩と付き合いたい。
わたしと付き合ってください。」
「・・・・・」
「・・・あ、あの。稲村先輩?」
「・・・すまん。」
「えっ。」
「俺は蒔田とは付き合えない。」
「なんでですか!」
「いや、なんでって。」
「稲村先輩、頑張ってる娘が好きって言ったじゃないですか!
だからわたし文実で、稲村先輩の近くで頑張ってるところ見てもらいたくて。
それでいっぱいいっぱい頑張って。
頑張ってるうちにみんなと何か作り上げることが楽しくなって、
もっともっと頑張れて。
でもそれは稲村先輩が好きだから、もっとわたしを見てもらいたいから。」
「蒔田、お前よく頑張ってたと思う。
こいつこんなに頑張り屋さんなんだって思った。」
「だったらなんで。」
「お前も知ってるだろう。
俺は三ヶ木、三ヶ木美佳のことが好きなんだ。」
「だって、だって三ヶ木先輩は比企谷先輩が好きじゃないですか!
稲村先輩のことなんか 」
「言うな、わかってる。
だけどな、俺はあいつがテレビ見てゲラゲラ大笑いしてるとことか、
会長と意見が合わなくてプンプン怒ってるとことか、
お母さんとか妹さんのこと想いだしてメソメソ泣いているとことか、
メッチャ機嫌良さそうに鼻唄を口ずさみながら紅茶入れてるとことか、
・・・・・比企谷のことを一途に好きなとことか。
そんなの全てひっくるめて三ヶ木美佳のことが大好きなんだ。
だからお前とは付き合えない。
すまない。」
「そんなの嫌です。」
「嫌って蒔田。」
「だって稲村先輩振られるのわかってるじゃないですか!
だったら三ヶ木先輩なんか諦めて、わたしと付き合ってくれったって
いいじゃないですか!
わた、わた、わたしも!
稲村先輩が・・・・・・三ヶ木先輩のことが好きのままでもいいです。
それでもいいから、わたしそんなんでもいいから、
付き合いたい、付き合いたいんです。
稲村先輩が大好きなんです!
も、もし、天と地がひっくり返って、それに地球が反対周りに回るようになって、
それでそれで、それこそ1000億分の1の確率で、神様の何かの間違いで、
もし仮に、稲村先輩が三ヶ木先輩と、つ、つ、付き合いようになったら、
そうなったら、そうなったら、わたしのことなんか捨ててくれればいいです。
わたしそれでいいです。
だから、わた 」
「できない!」
「な、なんで。」
「俺は好きな人を想いながら、他の女子と仲良くするなんてできない。
俺は一人の人をずっと見ていたい、想っていたい、その人のこと以外
考えたくない。
それに、そんなの蒔田のこと馬鹿にしてるじゃないか。
俺はお前のこと、文実を頑張って引っ張ってきたお前のことを尊敬さえ
するけど、馬鹿になんてできない。
だから、蒔田、お前とは付き合えない。」
「そ、そんなの、そんなのって。」
「すまない。
俺は蒔田と出会う前に知ってしまったんだ、本当はとっても寂しがりの
女の子のことを。
寂しがりだから大事なもの失わないように無茶ばっかりする女の子のことを。
俺はな、あいつのことを守りたい。」
「も、もういいです。
あっち行ってください。」
「あ、ああ。
蒔田、これ、この缶バッジ、やっぱり俺から三ヶ木に渡しておくわ。
蒔田からだって。」
「・・・やです。」
「え?」
「いやです!
わたしが直接渡して、そんで、そんで文句いっぱい言ってやるんです!
だからそこに置いて、とっととどっかに行ってください。」
「蒔田。」
「いいから早くどっか行って!
じゃないと、じゃないと、わたし、わたしは・・・・・」
「あ、ああ。
それじゃまた後でな。」
「・・・・・・・」
”スタスタスタ”
「ううううううう、うわぁぁぁぁん、うわぁぁぁぁん、ひっくひっく。」
・
・
・
ヒ・マ・ダ!
相変わらず暇だ。
あれから客一人として来ないじゃないか。
ラノベ読もうとすると二人から睨まれるし。
ね、もう終わらない?
「あ、あの~、いいですか?」
「え、あ、はい、ほ、ほらお客さんだ。
ん、だけどこの声って。」
「あ、ちょっとそのままテントの外で待っててくれるかしら。」
「はい、これヒッキーの。」
「やっぱりこれ着けるのか?」
「ええ、お互いのプライバシーを守るためよ。」
「だがこのマスク本当に必要なのか?
まぁ、プリソナ5みたいなマスクで格好いいけど。」
「ヒッキー、ムードだよムード。
でも、踊れカルメン! なんちゃって。」
「比企谷君、時には形から始めることも大事よ。」
「だが、由比ヶ浜、お前は特に意味ないだろう。」
「え、なんで?」
「なんでって、そのお団子・・・・・まあいいか。」
いや、まぁそうなんだけどな。
相談する側とされる側。
確かにプライバシーは守らないとな。
このマスクでどれだけ守れるかは知らんが。
特に由比ヶ浜。
「あ、あの~、入ってよろしいですか?」
「ええ、大丈夫よ
そこの入り口のところに架けてあるマスクしてもらえたかしら。」
「マスク? あ、プリソナマスク、これプリソナ5のマスクだよね。
かっこいい。
踊れカルメンって。」
いや、かぶってるし。
さっきのこっちの人とセリフかぶってるし。
なにパンサーって人気なの?
由比ヶ浜も雪ノ下もパンサーのマスクだし。
は、ね、猫!
もしかして相談者のマスクもパンサーなのか?
「マスクを着けたら、中に入っていただけるかしら。」
「あ、はい失礼します。
おわっ
な、み、みんなもマスクしてるの。
あ、イゴールだ、イゴールがいる。
な、なに、ここはベルベットルーム?」
「イゴール違うわ!
ちょ、ちょっと気にしてるんだからな。
最近ちょっと・・・・・い、いや、だ、大丈夫だから。」
”ジ―”
「お、おい、お前ら三人どこみてる!」
「だって気になるもん。
とうちゃんも最近やばくなってきたし。」
「う、うん、ちょっと気になるかも。」
「いいお医者さん紹介しようかしら。」
「うううう、俺捻くれるから。」
「まぁまぁヒッキー。
もうそれ以上に捻くれるの無理じゃん。
それでさ、美佳っち相談ってなぁに?」
「三ヶ木さん、どうぞそこに座って。」
「あ、うん、ゆきのん。」
「お、おい、お前らいきなり名前呼んでるじゃねえか!
マスクの意味ないだろうが。」
「・・・・ご、ごほん。
それで、相談って何かしら三ヶ木さん。」
「あ、あのね、ゆきのん。」
「いや、だからマスクの意味が 」
最後までありがと様です。
文化祭が予定より1話増えてしまって、
どうしょう、結衣りんとオリヒロでキャンプ行きたかったんだが。
なんかキャンプ慣れてそうだから。
でも食事はインスタントラーメンで、しかもそこでもう一人のお団子が・・・
す、すみません。
もう一人のお団子○○リンちゃんはでません。
調子にのってごめんなさい。
でもでも、どっかで結衣ちゃんとオリヒロでキャンプ行きたいなぁ~と
最近、ゆ○キャン△にはまっている今日この頃です。
は、気を取り直して。
次話、いよいよ文化祭最終話。
また読んでいただけるよう頑張ります。
※なんでもないですが、ハーメルンさん、こんな駄作でも投稿できる場を
与えてくれてありがとうございます。
チラシの裏、大好きです。