似て非なるもの 作:裏方さん
長かった文化祭編もようやく最終話っす。
オリヒロの相談とは。
また次章冬物語編に向けていろいろと。
はぁ~我ながら文才なく申し訳ないです。
読みにくいと思いますが、我慢頂ければありがたいです。
ではよろしくお願いいたします。
「三ヶ木さん、あなたのお母様を思う気持ちはわかるつもりよ。
でもそれはお母様が望んでいることなのかしら。
ごめんなさい、他人の私がこんなこと言うのは間違っているかもしれない。
だけど、お母様はきっとお父様のこと許してあげると思うの。
だからね 」
わたしは悪いやつだ。
ゆきのん、こんなに真剣にわたしのこと心配してくれているのに。
でもね、でもね。
わたしの目は、ゆきのんの指のパンさんに釘付け。
ごめんね。
わたしさっきから、それがそのパンさんの絆創膏がずっと気になって、
ゆきのんの言葉が耳に入らない。
ムフ、ムフフフフ、その凶悪な目、サイコー!
お主なかなかやるの~
なんちゃって・・・・・ほんとはね
どうしてもその絆創膏を見ると胸が苦しくなるんだ。
「・・・・・三ヶ木さん。」
「え、あ、はい。」
「ちゃんと聞いていてくれてたのかしら?
これでも真剣にお話しているつもりなんだけど。
もし、聞くつもりがないのなら 」
「あ、聞いてた、ちゃんと聞いてたよゆきのん。
うん、あのね、ありがと。
そ、そうだよね、かあちゃんなら絶対喜んでくれると思う。」
「そ、そう。
ちゃんと聞いていたのね。
それならいいわ。」
ごめんなさい。
うそです。
ちゃんと聞いていませんでした。
わたしのうそつき。
だ、だってゆきのんの目怖いんだもん。
いまの目、パンさんより怖かった。
「美佳っち、美佳っちのお父さんが選んだ人だよ。
絶対にいい人に間違いないよ。」
「うん。」
ありがと結衣ちゃん。
わたしもそう思う。
きっとかあちゃんみたいに、やさしくて、清楚で、つつましくって、
そんで抱きしめられるといい匂いがするんだ。
だってとうちゃんが選んだ人なんだもん。
"ジー”
・・・・・えっと、左斜め前からすごいプレッシャーなんだけど。
”チラッ”
「ん、なんだ?」
「あ、う、うううん、な、なんでもない。」
そう、さっきからずっと訝しそうに睨まれてるんだ。
その目で見られると、なんか心の底まで見透かされているよう。
やっぱ、やっぱりやっぱ憶えてるよね。
ゆきのんと同じこと、比企谷君に言われたもんね。
そんでわたし言わなくてもいいこと言っちゃって喧嘩になって。
だって、いきなり街でとうちゃんがあの人といるところ見かけたから。
なんか頭ん中が混乱しちゃって。
それも二日連続だったから。
それにさ、とうちゃんに嘘つかれたんだもん。
ほんとショックで。
だからめっちゃ気が動転したんだ。
でも、わたしちゃんと考えたんだ。
かあちゃん、わたしに言ってくれたんだ。
『これからはもっともっと自分を大切にしなさい。
自分のために、自分のやりたいことを頑張りなさい。
お母さんも美紀も、美佳が幸せになってくれるのが一番うれしいの。』
だから、きっとかあちゃんなら、絶対とうちゃんが幸せになることを
喜んでくれるってわたしは確信した。
だからわたしは、わたしも頑張るつもりなんだ。
頑張らないといけないんだ。
”ぶるぶる”
でも怖い、怖くて怖くて自然と身体が震えて。
・・・・・もう戻りたくない、戻りたくないだ。
あんな思いするぐらいなら、それぐらいなら。
この大バカ者。
わたしはこんなわたしが嫌い、嫌い、嫌い、お前なんか消えてしまえ!
「三ヶ木さんどうしたの?
顔色悪いけど大丈夫かしら?」
「あ、ごめんなさい。
なんでもない。」
「そう、それなら今後のことだけど 」
「・・・・・あのさ、ゆきのん。
もう大丈夫。
うし!
わたし頑張ってみる。」
「そ、そう。」
もういいんだ。
大事なものを守るためなら絶対できるはず。
こんなの相談することじゃない。
「な、なぁ、三ヶ木、お前 」
「それじゃ、わたし行くね。
そろそろエンディングの準備しないといけないから。」
「三ヶ木さん、いつでも相談にのるわ。
だから一人で悩まないで。」
「そうだよ美佳っち、一人で考えこんじゃだめだよ。」
「う、うん。」
「お、おい。」
”ペコ”
「奉仕部の皆さん、ほんとありがと。
じゃあ。」
”スタスタスタ”
・
・
・
「へぇ~、今年は林間学校行ったんだ。」
”ペラ”
「あ、奉仕部のみんなの写真もアルバムに貼ってある。
そうか、奉仕部さん今年も駆り出されたんだ。」
「えっと、城廻先輩の時は行かなかったんですよね。」
「そうなんだよ。
平塚先生から打診あったんだけどね、その前に生徒会役員で海に行くって
約束してたから。
ちょうど予定の日が重なっちゃっててね。」
「へぇ~、生徒会役員で海水浴に行ったんですか。」
「うん、そうだよ。
みんなで文化祭ガンバローって感じでね。」
”ペラ”
「え! な、なにこれ。
あの美佳がこんな水着着たの?
へぇ~、あの子にしては頑張ったんだ。
よしよし。」
「そうなんですよ。
てっきりスクール水着だと思ってたのに。
ほらこっちの写真みてください。
横から見たらガバッて開いてて。」
「あははは、そうだね。
うん、頑張った頑張った。
成長したねあの娘。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あのね一色さん。 」
「え? あ、はい。」
「ありがとう。」
”ペコ”
「え、な、なんです。
いきなりどうしたんですか。」
「うううん、なんでもない。
ちょっとね、うれしくて。」
「あの~城廻先輩、一つだけ聞いていいですか?」
「おう、一つだけだよ。」
「あ、あの~、それは言葉の綾で。」
「ふふふ、冗談だよ~
なにかな?」
「城廻先輩が美佳先輩を連れてきてくれたじゃないですか。
それって、美佳先輩をわたしの生徒会に残してくれたのって、
やっぱりわたしが会長では頼りなさそうだったからですか?」
「そうだよ~
もう心配で心配で。」
「ガ~ン、や、やっぱり。」
「あははは、ガ~ンって一色さんおもしろい。
ごめんごめん。
確かにちょっと心配だったけど、それは半分だけかな。」
「え、半分?」
「うん。
あのね、後の半分は・・・・・美佳のため。」
「え?」
「あのね、あの子はとっても寂しがりやで。
うううんちょっと違う。
あれは寂しがってるんじゃなくて・・・怖がって。
そう、ずっと怖がってるの。」
「怖がってる?」
「今ならもう言ってもいいか。
でも他言しないでね。
あのね、あの子は・・・・・・・」
・
・
・
”ガタッ!”
「ん、ヒッキー?」
「すまん雪ノ下、俺ちょっと行ってくる。」
「そう、わかったわ。
わたしもちょっと気にはなってたの。
あの程度のこと彼女なら相談するまでもないはず。
本当は別のなにか・・・・・
比企谷君、お願いしてもいいかしら。」
「ああ、任せろ。」
”スタスタ”
「ヒッキー。」
「ん、なんだ?」
「ヒッキーは・・・・・うううん。
ヒッキー、お願い。」
「行ってくる。」
・
・
・
「はぁ~、後でもう一回、蒔田に謝ってこよう。
もっと早いうちにちゃんと断っていれば、蒔田を傷つけずに済んだのかも。
やっぱり俺が悪い。」
”とぼとぼとぼ”
「ん、あ、三ヶ木!
あれ? 元気ないな。
さっき城廻先輩とあんなに楽しそうにしてたのに。
城廻先輩とケンカでもしたのか?
み、」
「お~い三ヶ木。」
「はっ、比企谷!」
”サッ”
「いや、何で俺隠れてるんだ?」
”タッタッタッ”
「三ヶ木!」
”とぼとぼとぼ”
「おい!」
”ぐぃ”
「うひゃ! あ、比企谷君。
びっくりした~
どうしたの? 奉仕部はいいの?」
「何度も呼んだんだが。
まぁいい。
あのな、ちょっと話がある。
少しだけ時間いいか?」
「話?
うん、いいよ。
あ、じゃ、そこのベンチで。」
「いや、少し日差しきついしな。
あの校舎の陰でいいか?」
「校舎の陰?
人目に付きにくいところでなにする気?
は、もしかして変なことするつもり?
キ、キスするとか。」
「いやしないから。
お、おいその目やめろ。
そんな何か期待しているような目やめろ。
な、なんもしないから。」
「ちっ!」
「おい!
まぁいいか。
ほら、ちょっと先行ってろ。
あのな、ミルクティ―でいいか?」
「え、あ、うん。」
”スタスタスタ”
あ~びっくりした。
比企谷君、何の用なんだろう。
もしかしたら相談のことに気づいて、わざわざ追いかけてくれたのかなぁ。
まさかね。
でも、だったとしたら少しうれしいけどちょっと怖い。
だってわたしのほんとの相談のこと話ししたら、きっと幻滅されちゃう。
この臆病者って。
”ピタッ”
「ひゃ~つめたい!」
「ほれ、待たせた。
ミルクティ―だ。」
「あ、ありがと比企谷君。
でも。」
”ベシ”
「つめてぇ~だろうが!」
まったく、いきなり女子のうなじに何すんだ。
思わずゾクってしちゃっただろうが。
「いたたたた。
よかった。
元気あるみたいだな。」
”カチャ、ゴクゴクゴク”
「ふ~、やっぱり冷えたマッ缶は最高だ。」
「ふふふ、冬は温かいのが最高って言うくせに。」
”カチャ”
「頂きます。」
”ゴクゴク”
「ふ~、ね、ほんと今日は青空だね。」
「ん? ああ、そうだな。」
へへ、こうやってさ、校舎の壁に二人並んで寄りかかって一緒に空を見上げてるなんて、
なんかうれしい。
はっ、もしかして恋人同士に見えるかも。
でもさ、恋人同士に見てもらうには二人の距離は遠すぎる。
もちっと、近づかなくちゃ。
”そ~”
「ん?」
”ピタ”
「えへへへ。」
「?」
”そ~”
「んん?」
「いや~、いい天気だな~」
「??」
”ピタ”
「お、おい、近いんだが。
いや、すでに腕と腕がくっついてるんだけど。」
げ、なにその嫌そうな目!
くそ、ここは結衣ちゃん直伝の上目遣いで。
こうやって、不安そうにチョット下のほうから見上げる感じでっと。
それでさ、
「あの~、三ヶ木さん聞こえてる?」
「もっと近づきたい比企谷君に。
だめ・・・かなぁ。」
「うっ!
い、い、いや、駄目ってことは・・・ないです、はい。」
「うん♡」
えへへ、やった~
めっちゃ恥ずかしかったけど良かった♡
この上目遣いさ、万が一に備えて鏡見で練習してたんだ。
とうちゃんの冷たい視線に耐えながら。
えへへ、ずっとずっとこうしていたいなぁ~
あ、腕を通して比企谷君のぬくもりが伝わってくる。
わたし、いま幸せ。
「あ、あのな三ヶ木、さっきの相談の件だが。」
「あ、う、うん。」
あ、そ、そうだよね。
このままずっとこうして青空見ていたいけど、彼がわざわざ追いかけて来てくれたのは
そのためだもんね。
ちゃんと話しないと。
でもそれってさ、やっぱり話さないといけなくなるよね、わたしの中にある暗く深いもの
について。
知られたら嫌われちゃうかも。
だったら、やっぱり比企谷君には知られたくない。
どうしょう。
「・・・・・あ、あのな 」
「・・・・・う、うん。」
「・・・・・え、えっとな。」
「・・・・・うん。」
「・・・・・あ、すまんその前にこれ返しておく。」
”ごそごそ”
ズコ!
あやうく”ズコ!”って口に出すとこだっただろ。
ま、まぁいいけどさ。
なに、なにを返してくれるの?
「ほれ。」
「え、あ、制服のボタン。
ありがと。
いつ取れたのかなぁって思ってたんだ。」
「ほら、一昨日、お前俺の部屋で服脱いだろ。
あの時取れたんだと思うぞ。」
「あ、あの無理矢理脱がされたときか。
その時にボタンが取れたんだ。
きゃ~、比企谷君のけ・だ・も・の。」
「ば、ばっか!
お、お前が自分で服脱いだんじゃんねえか。」
「えへへ。」
いや、でも実際わからないんだよ。
なんかさ、朝目覚ましたらいきなり下着姿で、しかも比企谷君のベッドで
寝てたんだもん。
たはは、今更ながらすっごく無防備。
でもさ、ほんとに服脱いだこと記憶にないんだ。
もしかしてもしかしたら比企谷君が・・・・・
そんなわけないか。
”ガタッ”
え、何の音?
”きょろきょろ”
んっと、何もないね。
何の音だったんだろう?
「ん、どうした三ヶ木。」
「あ、何でもない。」
「ゴホン、本題に入るが。
あのな、今日のお前の相談だがあれでよかったのか?
もっと違う相談があったんじゃないのか?」
やっぱり気付かれてた?
で、でも。
「え、あ、い、いや、そ、そんなことない。
すご~く参考になったよ、ありがと。」
「うそつけ。
お前、雪ノ下の話の時、ずっと別のこと考えてただろうが。
それにあの雪ノ下の答えは既に俺がしている。」
「あ、う、うん。
・・・・・・・・・・ご、ごめんなさい。」
「やっぱりか。」
”こく”
「・・・・・で、本当の相談したかったことってなんだ?」
「・・・・・」
「言えないのか?」
「・・・・・」
「三ヶ木、お前が相談したかったのは、お母さんとお父さんのことじゃない。
お前自身のことじゃないのか?」
「・・・・・あっ、う、うん。」
え、比企谷君、なんでわかったの?
うれしい。
なにも言わなくてもわかってくれてるんだわたしのこと。
比企谷君、相談したかったのは
「あのな、お前が帰った後もずっと考えていたんだ。
なぜお前が相談に来たのかって。
お母さんのことは、お前の中ではもう解決していたはずだ。
進学することを選ぶことができたお前なら。
それならわざわざ相談に来るはずがない。
だから本当は他に相談したかったことがあるんじゃないかってな。」
「う、うん。」
「お前の相談。
それはお前とお父さんのことだ。
今までのお前の行動を思い返していたらすぐ思い当たった。
お前はお父さんのことになると、決まって冷静でいられなくなる。
ほら、進路相談の時もそうだったろ。
お前はお父さんが大好きなんだ。
そんな大好きなお父さんが再婚する。
お前は大好きなお父さんとの関係が壊れるのが嫌だったんだ。
お父さんが再婚したら、どうしても今の関係は維持できないからな。
お父さんにとってお前のウエートは減らざるをえない。
お前だけのお父さんではなくなる。
だがそれだけじゃない。
お父さんにとって血のつながりがある特別な関係はお前だけだ。
今はな。
だがいずれ新しい命が誕生したら、それもお前だけものじゃなくなる。
つまり、お前はお父さんの特別な存在じゃなくなる。
お前はそれが嫌だったんだ。
お前の相談したいこと
それはどうしたらお父さんとの関係を壊さなくていられるかだ。」
「あ、あ・・・・・・・・」
「だがな三ヶ木、前も言ったけど、お前はずっと一緒にお父さんといられる
ものじゃないんだ。
遅かれ早かれ、いずれはお前はお父さんから自立しなければいけない。
そんなことお前もわかっていたはずだ。
それがお父さんの再婚によって少し早まっただけだ。
この問いの解はお前の父ばな・・・・・・・”自立”しかない。」
わかってるよ、そんなの、わかってる!
わたしは自立しないといけないんだ。
もうとうちゃんをわたしから解放してあげないといけないんだ。
だから違う、違うよ。
わたしの相談したかったことは違う。
そんなの、そんなのはわかってるんだ。
わたしは怖い、怖いんだ。
またあの暗闇の中に戻るのが。
でも、頑張ろうって、頑張ってとうちゃんのこと祝福してあげようと思ってるの。
”ぶるぶるぶる”
だけどやっぱり怖い。
「み、三ヶ木?
どうした、大丈夫か?」
「な、なんでもない、なんでもないよ!
そうだよね、そうなんだよね。
わたし自立しないといけないんだ。
一人でちゃんと生きていかないといけない。
ちゃんとするから。
ちゃんとできるから。」
「い、いや、三ヶ木?」
”ブ~、ブ~”
「あ、会長から。
やば! も、もう行くね。
ほんと、エンディングの準備しないと。
あの・・・・・心配かけてごめんね、比企谷君。
ごめんありがと。」
「あ、お、おう。」
”タッタッタッ”
やっぱりわかってもらえてなかった。
当たり前だろうが。
ちゃんと言葉にしなけりゃ伝わらないって。
心配して追いかけてきてくれた。
わたしは果報者なんだ。
・
「ふぅ、ま、あいつなら大丈夫だろう。
ちゃんと自立できるはずだ。」
「比企谷。」
「おわ、な、なんだ稲村、お前そこにいたのか。
おい、今の話、聞いてたのか?
いつからだ、どこから聞いてたんだ。」
「・・・・・ボタン
いや、そんなことはどうでもいい
お前、本当にあれが解だと思うのか?」
「な、なに?」
「自立するべきだと言うのが解だと思うのか。」
「ああ。
俺はちょうどいい機会だと思う。
それにあいつとお父さんの関係はそんな薄っぺらいものじゃないだろう。
三ヶ木が心配す 」
「お前、なにも知らないんだな。」
「は、はぁ?」
「俺は比企谷ならわかっていると思ってた。
あいつが何を相談したかったのか。」
「は?
稲村、いったい何を言いたいんだ。
あいつの相談はだな 」
「あ、お兄ちゃん。」
”タッタッタッ!
「お、おう小町。」
「お兄さんこんにちわっス。」
「大志、お前小町から離れろ!
いいか、100Km以内に近くんじゃない。
じゃないと俺がお前を殲滅してやる!」
”にぎ”
「お兄ちゃん!
もう行こう、大志君。」
「う、うん。」
”スタスタスタ””
「おい、こ、小町!
手を、手を放せ!
く、くそ、大志の野郎。」
「比企谷、あれってお前の妹か?」
「ああ。」
「そっか、お前妹いたんだな。」
「さっきの続きだが、稲村、俺は何がわかっていないって言うんだ。」
「言わない。」
「お、おい。」
「お前にはわからないよ。
あいつがお前になにを相談したかったかなんて。
お前は三ヶ木のこと何もわかっていない。」
・・・・・あの林間学校からの帰り 車の中で・・・・・
『稲村君、あんね、お願いがあるの。』
『ん、なんだ?』
『ちょっとだけ、胸かして・・・・くれる?』
『ああ、こんな胸でよかったら。』
『ありがと。
うううううううう、うわーん。』
”なでなで”
『うわーん、嫌だよ、わたし、生徒会やめたくないよ。』
『三ヶ木。』
・
・
・
『スー、スー』
『はぁ、寝たのか三ヶ木。
こんなに涙流して。」
”なでなで”
『三ヶ木。』
”ぎゅ”
『寝たのか?』
『あ、はい。
ひ、広川先生すみません。
い、いま離れます。』
『いやいい。
こいつの家に着くまで、そうやって抱きしめていてやってくれ。
あ、でもそれ以上はだめだからな。
一応、俺教師だから。』
『はい。』
『意外だな、三ヶ木、君には甘えるんだ。』
『え、甘える? 俺に?
そ、そうですか。』
『こいつ、小さい頃はずっとひとりぼっちでな。
学校でも・・・・・家でも。』
『え、で、でも家ではお父さんが。』
『こいつが小学校の頃は、お父さんあまり家に帰ってこなかったそうだ。
三ヶ木はとうちゃんは仕事が忙しいからって言ってたけどな。
お父さんは家に帰りたくなかったんじゃないかと思うんだ。
家に帰ったら、いやでも奥さんと娘さんがいないって現実を
感じちまうからな。
仕事に没頭することで忘れたかったんじゃないかって、まぁ俺の勝手な
思い込みだ。』
『で、でも、そんなことしたら、ずっと三ヶ木は一人であの家に。』
『ああ、ずっと一人でお父さんが返ってくるのを待ってたらしい。
わたしが悪いんだってずっと自分を責めながら。』
『・・・・・・』
『小学校でもこいついじめにあっててな。
あ、言ってなかったっけ、俺こいつの学校に教育実習にいってたんだ。』
『そ、そうだったんですか。』
『ある日、こいつが学校の校門で泣いててな。
どうしたんだって聞いたら、靴を隠されたらしくてな。
ずっと探してたんだが見つからないって。
しばらく俺も探したんだが見つからなくて、俺がお父さんに話してやろうって
いったら、泣きじゃくりながら言うんだ。
”とうちゃんに言わないで。
靴買うためにとうちゃんもっとお仕事しちゃう。
そしたら、とうちゃんもっと帰ってこなくなって、帰ってこなくなって。
わたしずっと一人になっちゃうもん、もっと一人になっちゃうもん。
うわ~ん、うわ~ん、やだよ、やだよ。
それぐらいなら靴なんかいらない。
ずっと裸足でいる。”
まったく靴一つ買うぐらいで変わらないと思うんだがな。
こいつにとっては必死だったんだろうな、寂しくて。
って、お、おい稲村、泣いてるのか?』
『うううううう、だ、だって。
それで、く、靴、どうしたんですか?』
『ああ、その後な、もう一回一緒に探し回ってやっとごみ箱から見つけたよ。
見つけた時の三ヶ木の笑顔がすごっくかわいくてな、いまでも脳裏に
やきついてる。
”ありがと先生。
先生、大好き♡”
はぁ~、かわいかったなぁ~。』
『先生、なにもしなかったでしょうね。』
『ば、ばっか、相手は10歳だ。
するわけないだろう。』
”ジー”
『い、いや本当だって。
本当に何もしてないって。』
『だって、広川先生ロリだって噂が。』
『・・・・・・』
『スー、スー、むにゃむにゃ。』
”ぎゅ”
『こいつ、寂しかったんだろうな。
いや違う、きっと怖かったんだ。
お母さんと妹さんがいなくなって、お父さんも帰ってこなくて
ずっとあの家で一人きりで。
すごく心細かったんだ。
先生、俺カギっ子だったんです。
家に帰っても誰もいなくて。
そんなの三ヶ木と比べる全然マシなんだけど。
それでも親が帰ってくるまで心細かった、怖かった。』
『そうか。
なぁ、稲村、今回三ヶ木は生徒会やめることになったが、
お前らはずっと友達でいてやってくれないか。』
『・・・・・無理です。』
『お、おい稲村。』
『・・・・・広川先生、俺はこいつを、三ヶ木を守りたい。
友達としてじゃなく。』
・・・・・そして今・・・・・・
「比企谷、お前妹さんと仲よさそうじゃないか。」
「稲村、それは違うぞ。
仲がいいんじゃない。
おれは小町を愛している。」
「・・・・・お、おい。
ちっ、まあどうでいい。
いいか、俺は三ヶ木がどう思っていようとお前を認めない。
お前なんかに三ヶ木の気持ちがわかってたまるか!」
「な、なんだと。」
「自立しろか。
いいか比企谷、お前この件にもう関わるな。
この件は俺が解決する。」
「稲村。」
「一度はお前なら仕方ないと勘違いしたが、
やっぱりお前に三ヶ木は渡さない。」
「おい、ちょ 」
「話は終わりだ。
俺も今からエンディングの準備あるからな。
三ヶ木が待っている。」
”スタスタスタ”
「な、なんだ、
なにがわかってないって言うんだ。
この件の解は三ヶ木の自立しかありえない。
違うのか?
他に解があるのに俺が気がつけていないのか?
俺が三ヶ木のこと何もわかっていない?
何がわかっていないって言うんだ?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
わからない。
そ、そうだ、めぐり先輩。
めぐり先輩がいたじゃないか。
えっとめぐり先輩に電話してっと、
・・・・・連絡先しらねぇ。
えっと連作先知ってそうな人っていうと・・・・は、陽乃さんか~
きっと昨日のチークのことなんか言われそうだよな。
はぁ~気が重い。
・・・・・あっ、そうだ。」
”カシャカシャ”
「我だ。」
「いや、お前はえ~よ。
まだ呼び出し音もなってないだろ。
なにずっとスマホ見てたのか?」
「ぬほほん、違うぞ八幡。
お主の我を呼ぶ声がしたのだ。
助けて~材木座く~んという 」
”プー、プー”
「えっと他に誰かいなかったっか。」
”ブ~、ブ~”
「もしもし。」
「なぜ切るのだ!
ひどいではないか八幡!」
「うっせぇ。
仕方ねぇ、もう一回だけチャンスをやる。
な、材木座、お前三ヶ木と幼馴染だよな。」
「なんだ藪からステッキに。」
「き、切るぞ。
いいから教えろ!
お前は三ヶ木の何を知っている。」
「む? 三ヶ木女子に何かあったのか?
八幡、お主が何かしたのか。
場合によっては、我は貴様のこと抹殺する。」
「なにもねぇ。
ただな、お父さんの再婚の件で三ヶ木が奉仕部に相談に来てな。
その相談の真意を知りたい。
そのために情報がほしい。」
「ふむふむ。
よかろう、そういことであればだな、我と三ヶ木女子の恋物語を聞かせて 」
”プー、プー”
「マジ他に誰かいないか。」
”ブ~、ブ~”
「はちま~ん。」
「いいか、もうこれで最後だ。
これ以上、貴様の戯言に付き合ってる暇はない。」
「ひゃい。
だ、だが本当に三ヶ木女子のためになるのだな。」
「三ヶ木のためになるかはわからん。
兎に角情報がほしい。」
「ふむ、少し長くなるかもしれんが 」
「いや、なるべく手短に頼む。
時間がねぇ。」
「ならば語ってやろう、心して聞かれい!
初めて我と三ヶ木女子が出会ったのは、我が小学生のころに学習塾からの帰り道でだ。」
「お前学習塾行ってたのか?」
「馬鹿にするではない。
これでもいま現に総武高にいるのだぞ。」
「あ、ああ、すまない。
続けてくれ。」
「あの日も学習塾が終わって、そうだな夜7時は過ぎていたと思うが。
帰り道の公園に通りかかった時にブランコの音がしたのだ。
こんな時間に誰がと思ってな、公園を見てみるとそこにいたのだ三ヶ木女子が。
顔や服やズボン、髪の毛から、お腹、背中まで泥だらけになっての。」
「い、いじめか。」
「周りに泥の塊がおちていたからの。
恐らく間違いなかろう。」
「そっか。」
「我は、我らしくないのだが、なぜか無性にほっとけなくなっての。
気が付いたら話しかけていた。
それが我と三ヶ木女子の出会いと始まりだ。
それから我は学習塾のある日は、帰りに公園で話をするようになったのだ。」
・
・
・
”さらさら”
「最優秀地域賞っと。」
「ひぇ~、書記ちゃん字うま~」
「え~、そんなことないですよ。」
「ほんとだって。
さすが書記って肩書は伊達じゃないよね。
ね、習字習ってたの?」
「いえ全然です。」
「それでそのうまさ、いいなぁ~」
「み、美佳先輩、これどうですか、ほれ。」
な、なにジャリっ娘、書記ちゃんと張り合ってるの?
どれどれちょっと見してみそ。
・・・・・え、えっと。
「・・・・・あの~、会長お元気な字体で。」
「はぁ、綺麗じゃないですか! わたし一応習字やってたんですから。」
「そ、そう。
習字を習っててこの字。」
「な、なんですか!」
「あははは。
いろはちゃん、わたしはいろはちゃんの字好きだよ。
ね、さっさと書いちゃおう。」
「うん書記ちゃん。
わたしの字の良さは美佳先輩なんかにわかりませんよ~だ。」
ははは、ここは二人に任せておいてっと。
ステージの方大丈夫かなぁ。
本牧君からは特に連絡ないから大丈夫だと思うけど。
「はいはい。
じゃあわたしステージの状況見てきますね。
あ、会長、このトロフィーとかステージまで運んでおきます。」
「はい、お願いしますです。
でも大丈夫ですか?」
「ふふふ、みよこの上腕筋を。」
「「おお!」」
い、いや、驚きすぎ。
え、そんなに太いかなぁ~
くそ、ま、いいや。
”スタスタスタ”
んと、でもめぐねぇどこ行ったんだろう。
まだ帰っていないと思うんだけど。
まぁいいや、ひと段落したら電話してみようっと。
・
・
・
”スタスタスタ”
「ふ~、さすがにちょっと重たかったかなぁ。」
「そら重いだろ。
よくここまで持ってこれた。」
「え? あ、稲村君。」
「ほらかしてみろ。」
「あ、う、うん。ありがと。」
「なぁ、まだ腕の金具取れてないんだろ。
いつ頃取れるんだ?」
「あ、今月末って言ってた。」
「そっか。」
「でも、ちょっと痕残っちゃうんだ。
水着、もう着れないや。」
「命があったんだ、我慢しろ。」
「あ、うん、わかってる。」
・
・
・
「え、本牧君、舞ちゃんまだ来てないの?
でも次の葉山君たちの演奏が最後だよね。」
「うん、電話してるんだけど、全然繋がらないんだ。」
「本牧、三ヶ木、どうしたんだ?」
「は! もしかして。」
そうだ。
舞ちゃんは今日、稲村君と一緒に見回りしてたはず。
尻相撲で一緒だったし。
もしかしてその時に何かあったんじゃ。
「い、稲村君、ちょっとおいで。」
”ぐぃ”
「あたたた。
お、おい耳引っ張るな。」
・
「で、舞ちゃんに何したの?」
「え、あ、い、いや。」
あ、目逸らした。
なんかあったの間違いない。
あんま時間ないんだ、急がないと。
「今日は舞ちゃんと一緒に校内見回りしたよね。
それに尻相撲にもいたし。
おら、はけ!」
「あ、あのな、告られたんだ、蒔田に。」
「え?、えー!」
・
・
・
「で、断ったんだ。」
ま、まさか舞ちゃんがそこまでやっちゃうなんて。
計算違いだ。
それに断ったって。
あんないい娘、めったにいないのに。
「ああ。
あたりまえだろ。
俺が付き合いたいのは一人だけだ。」
「べ、別につ、付き合うぐらいいいじゃん。」
「三ヶ木!」
「ご、ごめんなさい。」
稲村君に怒られた。
稲村君がそんなことできるわけないもんな。
どうしょう、期限直してくれるかなぁ。
・・・いや、そんなの後回しだ。
今しないといけないことは。
「もう時間ない。
舞ちゃん探さなきゃ。」
「俺探してくる。」
「う、うん、わたしも。」
”カシャカシャ”
「あ、本牧君、今から稲村君と舞ちゃん探しに行ってくる。」
「ああ、頼んだよ三ヶ木さん。」
”タッタッタッ”
・
・
・
「・・・・・」
「・・・・本当にそうするつもりなの?」
「は、はい。
部長、俺このままじゃ駄目っす。
もっと強くなりたいテニスも・・・・・男としても。
だから決めたっす。」
「もう僕は部長じゃないよ。
でもご両親は許してくれたの?」
「父さんは励ましてくれたっす。
でも母さんは・・・・・」
「そう。
でもちゃんとお母さんにもご了承してもらわないとね。」
「うっす。」
「僕は応援するよ。」
「ありがとうございます。」
「でもそのこと三ヶ木さんには言ったの?」
「あ、え、えっと、まだ。」
「お~い、戸塚君、刈宿君。」
「げぇ、美佳先輩。」
”べし”
「いたたた。」
「刈宿君! いきなり、げぇってなんだし。」
「あ、いや、そ、その、そういう意味じゃ。」
まったく。
人の顔見るなり、いきなり。
そりゃ戸塚君見てたあとじゃ仕方ないけどさ。
ん? 待てよ、いま二人なんかいい雰囲気だったね。
も、もしかして刈宿君そっちの道へ
・・・・・そんなわけないよね、た、多分。
「まぁまぁ。
で、どうかしたの三ヶ木さん?」
「あ、そうだ
あのね舞ちゃん見なかった?」
「え、見てないけどいないの?」
「う、ううん、なんでもない。」
しまった。
迂闊だった。
委員長がいないなんて話が広がったらマズイ。
ごめん、戸塚君。
「・・・・・そっか。
よし刈宿君、蒔田さん探すよ。」
「あ、あの。」
「わかってる。
他の人には気づかれない様に探すから大丈夫。」
「う、うん、ごめん。
ありがと戸塚君、刈宿君。」
「うん。
さ、刈宿君行くよ。」
「うっす。」
・
・
・
”タッタッタッ”
はぁ、はぁ、はぁ、ほんと、どこいったんだろ。
”ブ~、ブ~”
え、あ、本牧君から。
舞ちゃん見つかったのかなぁ。
”カシャカシャ”
「もしもし三ヶ木だよ。
ま、舞ちゃん見つかった?」
「あ、本牧です。
うううん、まだなんだ。
それじゃ三ヶ木さんのほうもだね。」
「う、うん。
保健室とかトイレとかいろいろ探してるんだけど、どこにもいなくて。」
ほんとどこ行ったんだろう。
はっ、もしかして帰った?
可能性ある。
だってわたしがもし舞ちゃんだったら他の人に会いたくない。
帰っちゃったらどうしよう。
「わかった。
だけど、そろそろエンディング始めないとまずい。
後は稲村に任せて、三ヶ木さんは持ち場に戻ってくれないか?」
「あ、う、うん。」
「あ、それとこの件に関しての連絡はスマホで頼むね。
インカムは使わないで。
話しが広がらないようにしたいから。」
「あ、うん、わかってる。
いま戻るね。」
・
・
・
”ざわざわ”
「いろはちゃん、これ以上待たせられないよ。」
「そうだよね。」
「会長、先に地域賞とかの発表やりましょう。
集計結果もわかってますし。
最悪、挨拶も会長にお願いできますか?」
「副会長、わたしもそう思ってました。
それじゃ美佳先輩が照明のほうに戻ったら始めましょう。
副会長はすぐ音響の方に戻ってください。
あと書記ちゃん、ここでカンペお願い。
蒔田さんが来たらすぐカンペで教えて。
それと副会長。
なるべく表彰式を長引かせるけど、最悪わたしが終わりの挨拶します。
会場の雰囲気からもう駄目だと思ったら・・・書記ちゃんに指示して下さい。
判断は副会長に任せます。
それじゃ各自よろしくです。」
「「はい。」」
「はぁ、はぁ、はぁ、こちら三ヶ木、照明の持ち場にスタンバイしました。」
「了解です。
副会長、書記ちゃん、エンディング始めましょう。」
「「はい。」」
・
「特別地域賞、ありがたくいただくね。」
「はい、雪ノ下先輩、バンド演奏ありがとうございました。
えっと、ま、また来年も参加していただけますか?」
「一色ちゃん、それさっきも聞いたよ。
そろそろ賞状、頂けるかなぁ。」
「あ、あははは。
・・・・・はいどうぞ。」
やばいなぁ、そろそろジャリっ娘も限界。
表彰式終わっちゃうよ。
舞ちゃんほんとにどこ行ったの。
まさか二年も続けてこんなことになるなんて。
”タッタッタッ”
「はぁはぁはぁ。
み、三ヶ木、蒔田来たか?」
「稲村君、見つからなかったの?」
「だめだ、どこにもいないんだ。」
・
”ざわざわ”
「ど、どうしょう。
も、もう表彰終わっちゃうよ。
会場の雰囲気もなんか微妙だし。
本当に蒔田さんどうしたのかなぁ。」
”ブ~、ブ~”
「沙和子。」
「あ、牧人君。」
「まだ蒔田さん来てないかな?」
「あ、う、うん。」
「そろそろ会場の雰囲気限界だ。
すまない、会長への指示を頼む。」
「あ、う、うん、わかった。」
「嫌な役をさせてしまってごめんな。」
「うううん、大丈夫だよ。
牧人君の方こそ辛いよね。
あ、あのね、今日ね一緒に帰ろ。」
「あ、うん。
それじゃ生徒会室の前で。」
「うん。
じゃあ、いろはちゃんに指示するね。」
”カキカキ”
「いろはちゃん、終わりの挨拶お願いしますっか。
仕方ない、仕方ないよね。
よ、よし。」
”とんとん”
「え?」
「ごめんね、藤沢さん。
お待たせしちゃった。」
「ま、蒔田さん。
大丈夫、大丈夫なの?
目が真っ赤だよ。」
「あ、う、ううん、ちょっとね。
いっぱい目にゴミが入っちゃって。
それより、ねっ。」
「あ、う、うん。
ちょっと待ってカンペ書き直すから。
あ、それと。
みんな聞こえてる?
実行委員長、スタンバイOKです!
よかった!」
・
「はい、それでは最後に実行委員長の挨拶です。
実行委員長どうぞ。」
”スタスタスタ”
「蒔田さん、はいマイク。
ね、大丈夫?」
「うん、ごめんね一色さん。」
「・・・頑張って。」
”スタスタスタ”
「じ、実行委員長の蒔田です。」
舞ちゃん、大丈夫かな?
まったくこの馬鹿村は。
”ベシ”
「い、いた。
な、なんだ三ヶ木。」
「何でもない!」
「・・・・・・・・・・・・・」
ま、舞ちゃん。
げ、やば!
下向いたまま黙り込んで、これって。
「うっ、ううっ、ううううううう、ひっく。」
やばいやばい、やっぱ無理だよ。
失恋したばっかりなんだもん。
挨拶なんて出来る心情じゃないって。
「じゃり、あ、いえ、会長。
舞ちゃんやっぱり無理だよ。
代わって挨拶を 」
「うっさいです。
ここまで、このステージまで頑張って来たんです。
もう少し待ってあげて下さい。」
「だ、だって。」
「うううううううう、ご、ごめんなさい。
わたしってダメだ。
絶対泣かないって決めて来たのに。」
”ざわざわ”
「絶対泣くもんかって思って来たのに。
・・・・・・・・・・あの! わたし今日振られちゃいました。」
「「えー!」」
「いま振られたって言ったの?」
「うそー」
ま、舞ちゃん、なんでそんなこと。
ほら、会場がすごくざわついて。
は、そうだ、きっとまだショックで混乱して。
「だ、だから、本当はここに来るの辛くて辛くて、ううううううう。
我慢しても我慢しても勝手に涙が出てきちゃって。
本当はここに来たくなかったんだけど、来たくなかったんだけど。
でも文実のみんなや総武高生徒のみなさん、地域の皆さんと一緒に頑張って作り上げた
文化祭だから、わたし一言だけでもお礼言いたくて来ました。
文実のみんな、それといろんな出し物や模擬店で頑張ってくれた
みなさん、それにOGの雪ノ下さんはじめ協力して盛り上げてくれた地域の皆さん。
たくさん、たくさん、ありがとうございました!
ううううう、うわ~ん。」
「舞ちゃん、頑張れ!」
「頑張れ!」
「だ、誰だ蒔田さんを振ったやつって。」
「お前知らないか」
「確か誰か男子と歩いているところみたけど。」
げ、稲村くん、ちょっとやばいかも。
二人で文化祭見回りしてたから、顔見られてるよね。
「あ、ありがとうございます。
わ、わたし・・・・」
「舞ちゃん負けるな!」
「頑張って~」
「俺たちがついてるぞー」
「ぐすん。
あ、ありがとうございます。
わたし頑張って告ったんですけど、その人には好きな人がいて。
その好きな人っていうのが、わたしの憧れの先輩で。
その人と比べたら、今のわたしは全然歯が立たなくて。
でもわたし負けません。
今のわたしが全然だめなことちゃんと認めて、でも希望を捨てずに頑張ります。
今日よりも明日、明日より明後日。
少しづつでも近づいて、きっとわたしのほうに振り向かせて見せます。
だから 」
は、この雰囲気ってもしかして舞ちゃん。
そ、それはまずいって。
「お、おい稲村君、
これってちょっとやばいよ。」
「え?」
「舞ちゃん、稲村君の名前だしちゃうって。」
「ま、マジか。」
「今日はもう帰ったほうがいいかも。」
「だから、三ヶ木先輩、わたし負けませんからね。」
げ、わたし、わたしか!
何でそこでわたしの名前言うの!
「誰?」
「誰だよ三ヶ木って?」
「舞ちゃんよりかわいいのか?」
「昨日、葉山君と踊ってた人って確か 」
「あ、そうだ! あの鹿娘、三ヶ木っていってたぞ。」
やばい、やばいって。
くそ、なんてことしてくれたんだあのアマ!
げ、み、三ヶ木探しが始まったじゃん。
「い、稲村君、どうしよう・・・・・って、あいつ逃げやがった。」
・
・
・
げ、まただ。
くそ、さっきからすれ違う人、みんなサムズアップかガッツポーズしてくる。
わたしの隣を並んで歩くこの小娘に!
そうかと思うとわたしとこいつの顔見比べて、首傾げていくし。
”スタスタスタ”
え?
なんか男子近づいてきた。
「舞ちゃん、楽勝!」
う、うううう、うっさい!
もう勘弁ならんわ!
「あんたなんてことしてくれたんだ、もう!」
「え~、だってエンディング盛り上げるには女子の涙が必要じゃないですか。」
「だ、だったら普通にやれ、文化祭よかったですとか。」
「それじゃありきたりじゃないですか。
全然面白くないです。
ここはやっぱり傷心の美少女の涙っしょ。」
ぐぐぐ、た、確かに。
わたしなんかが泣いたってなんもないけど、舞ちゃんだったから。
自分で美少女って言ってるし。
まぁ確かにあのエンディング、男子の声援すごかった。
でも、でもさ!
「だったら、あの場合は流れからいって、稲村君だろうが。
稲村先輩、あきらめませんとか。
なんでわたしなんだ!」
「え~、だってそんなことしたら、稲村先輩に嫌われちゃうじゃないですか。
そんなの嫌です。」
くそ~、こ、この小娘。
ぜ、絶対泣かしてやる。もう一回泣かしてやる。
「それに、わたし嘘ついてませんもん。
ジミ子先輩はわたしの目標、憧れなんです。」
「え?」
”だき”
「ジミ子先輩、わたし、わたし頑張りました。
ううううう、頑張りました!」
「舞ちゃん。
う、うん、舞ちゃん頑張った。
えらかったよ。
さすがわたしの妹分だ。」
「ううう、は、はい。」
”なでなで”
うんうん、ほんとはとってもいい娘なんだ。
お姉さんは知ってるよ。
それとありがと。
わたしも頑張ってみるよ。
妹分に負けてられないからね。
頑張って、ちゃんととうちゃんの話・・・・聞かないとね。
「あ、ジミ子先輩、そこごみ落ちてます。」
「え、あ、はい。」
”ひょい”
「あ、あっちも。」
「はいはい。」
”ひょい”
「ジミ子先輩、ほらここにも落ちてますよ。」
「お、おい、お前も拾え!」
「う、うううううう。」
「あ、わかったわかった、わたし拾うから。
お願い、泣かないで~」
・
・
・
「そうか、三ヶ木はずっといじめにあっていたんだな。」
「ああ、一時期収まった時もあったのだ一時期だけだったが。
その後もまたいじめにあっていた。
別クラスの我にも伝わるぐらいのな。」
「同じ・・・か」
「八幡、いま貴様は自分と同じと思ったのではあるまいな。」
「あ、そ、そうだが。」
「何も聞いておらなかったのだな八幡。」
「はぁ? いや、ちゃんと聞いていただろう。」
「我が三ヶ木女子と会っていたのは、いつも学習塾の帰りだといったであろう。
それが意味するところが分からぬ貴様ではなかろう。」
「学習塾の帰り。」
「八幡、我にも貴様にも帰るべき場所があったのだ。
待っててくれる人がいたのだ。」
「いやまて、三ヶ木にはお父さんが。」
「そんな時間に、小学生の女子が公園で一人でいるということがどういうことか、
貴様わからぬのか。」
「・・・・・」
「八幡。」
「・・・そ、そうか。
そういうことだったのか。
すまん材木座、助かった。」
「八幡、もう一回だけ聞くぞ。
この話は三ヶ木女子のためになるのだな。
もし三ヶ木女子を傷つけることになったら、我は貴様を絶対許さない。」
「ざ、材木座、もしかしてお前三ヶ木のことが。」
「げふっ、ば、馬鹿なことを言うな!
三ヶ木女子は我の大切なファン第1号であるからだ。
ファンは大事にするものであろう。
・・・・・っで、任せていいのだな。」
「おう、任せろ。」
「ふむ、任せてやろう。
ところで八幡、お主よかったのか?」
「ん、なにがだ?」
「もう下校の時間だが。」
「はぁっ! おわ、お、おい材木座!
お前、話が長すぎだろうが!
き、切るぞ!」
「うぬ、は、はち 」
”プー、プー”
「まずい、まずいぞ。」
”カシャカシャ”
「えっと、ゆ、由比ヶ浜さん、お片付けは終わられたでしょうか?」
「ヒッキー!
もう、ヒッキー最低。
ゆきのんと二人で片付けたんだからね。
ゆきのん、体力ないから結局あたしが、もう!」
「す、すまん。」
「・・・・・それでさ、美佳っちの本当の相談ってわかった?」
「ああ、わかった。」
「よかった!
ね、ヒッキーは助けてくれるよね。」
「ああ、そのつもりだ。」
「絶対だよ。」
「ああ。」
・
・
・
「ん~、牧人君遅いなぁ~。」
”タッタッタッ”
「え?」
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、しょ、書記ちゃん!」
「あ、はい。
ひ、比企谷先輩、ど、どうされたんですか?」
「はぁ、はぁ、あ、あのな、み、三ヶ木、三ヶ木しらないか!」
「え、えっと、三ヶ木先輩ならちょっと前に帰りましたけど。
今ならまだ追いつけるかも。」
「そ、そっか!
ありがと書記ちゃん、愛してるぜ!」
”ダ―”
「え? え゛― 」
「ごめんね、遅くなった。」
「あわわわわ。
ど、どうしょう牧人君。」
「え? 沙和子どうしたんだ?」
・
・
・
”スタスタスタ”
「でも馬鹿だね。
あんなに可愛くて、明るくて、いい娘なのに。
もう二度とないかもよこんなチャンス。」
「言うな。」
「でもまったくその気がなかったわけじゃないんでしょ。」
ほれほれ、白状しちまえ。
あんな娘に言い寄られたら、わたしなら、ぐふふふ。
「・・・お前マジで言ってるのか。」
「えっ。」
「マジで言ってるのか!」
「あ、・・・・・・・・・・ご、ごめんなさい。」
「まったくお前は。
・・・・・・・・・・仕方ないだろう。
もっと素敵な、魅力的な娘がこうやって俺の目の前にいるんだから。
地味で、可愛くなくて、馬鹿なことばっかりやって、心配ばっかりかけられるけど、
でもとっても家庭的で、頑張り屋で。
絶対にほっとけない女の子が。」
「え、あ、あの 」
”スタスタスタ”
やばいなぁ。
すっかり怒らしちゃったかな。
さっきから何も話してくれない。
なんかずっと前の方向いてて。
”ピタ”
「なぁ、三ヶ木。」
「あ、は、はい。」
「お前、今日奉仕部に行っただろ。」
「え、あ、う、うん。」
「なにか相談あったのか?」
「あ、あの、えっと・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「お前の相談、これが答えだ。」
”にぎ”
「え、い、稲村君?
あの~、なんでいきなり手を握るの?」
”ぎゅ”
「三ヶ木、俺が見ててやる。
お父さんの話、俺が一緒に聞いてやる。」
「・・・・・・稲村君。」
「お前が相談したかったこと。
お前は怖かったんだろ、過去のトラウマに耐えられる自信がなかったんだ。
だからもしお父さんに再婚のこと言われたとき、耐えられなくなったお前が嫌だって
言ってしまうことが怖かったんだろ。」
「・・・・・あ、あ、あの」
「お前は大切なもの、大事なもののためなら自分を犠牲することを厭わないやつだ。
そんなお前がお父さんの幸せを願わないわけがない。
そりゃいきなり見かけたときはびっくりして反発しただろうがな。
でもお前なら、きっと自分でそういう結論に至ることができる。 」
「・・・・・う。」
「それならなにを相談したかったんだって思ったんだ。
お前は怖かったんだ。
お前の小学生の頃のこと、俺は知ってる。
あの一人ぼっちの世界に戻ってしまうんじゃないかってそれが怖くて。
だからその恐怖に耐えきれなくなって、お父さんに嫌って言ってしまうのが
怖かったんだ。」
「だって、だって怖かったんだよ。
うん、小学校の時のこと怖いよ。
いまでも時々夢に見るぐらい。
でもそんなことより、とうちゃんの幸せを奪っちゃうことがもっともっと怖い。
とうちゃんのことだもん、わたしが嫌って言ったら絶対再婚あきらめる。
そうしたら、わたしの所為でまたとうちゃんの幸せ奪っちゃうんだ。
・・・・・ほんと、わたしなんていないほうがいいんだよ。
いっそのこと 」
”だき”
「ちょ、ちょっと稲村君。」
「そんなこと言うな。
そんなこと言うなよ、お前がいなくなったら俺どうかなっちゃうよ。」
「い、稲村君。」
「お前の相談したかったことの答え。
お前の手、俺がずっと握っててやる。
お前がトラウマに負けそうなときは負けない様に強く握りしめてやる。
頑張れって。
だから、安心してお父さんと話しろ。」
「で、でも稲村君。
・・・・・稲村君は他人だから、とうちゃん稲村君がいる時にその話はしないよ。」
「他人でなくなりゃいいんだろ。」
「はぁ?」
「あのな三ヶ木。
もしお父さんが再婚して、それでお前があの家にいる場所がなくなったと感じたら
・・・・・・俺と一緒に住まないか。」
「お、おい!
な、なに言ってんだかわかってるの!
い、い、一緒に住むってことはだな、あんなことや、こんなこととか。
と、とにかく馬鹿!」
「わかってるさ、一緒に住むってことの意味。
その覚悟はしている、いやそうなりたいと願っている。
俺は大学受かったら一人暮らしするつもりだ。
だからもしお父さんが再婚の話をする前に、その前に俺がお父さんにそのこと
話をするつもりだ。」
「い、稲村君。」
「だから、ほら行くぞ!」
「い! ちょ、ちょっと待って、待ってって。」
・
・
・
「はぁ、はぁ、はぁ、け、結局、三ヶ木の家にまで着いちゃったじゃねえか。
くそ、材木座との話しでスマホの充電なくならなければ。
途中で追い越していないだろうな。」
”タッタッタッ”
「確かこの角を曲がるとアパートが・・・・・・
はぁ! 稲村。
なんで稲村が三ヶ木と一緒に家の中に入って 」
・
”ガチャ”
「た、た、ただいま。」
”ダッダッダッ”
「お、み、美佳~、おかえり♡」
”ギュ~”
「ぐはぁ、や、やめろ、とうちゃん離せ。
ぐるじー、髭いてー」
「し、心配してたんだぞ。
ほ、ほら、早く中に入れ。
今日は奮発してお肉買って来たんだ。
めっちゃ高いお肉!
今日はすき焼きだぞ。」
「うそ、とうちゃんが晩ご飯作ってくれたの?」
「え! あ、い、いや、作るのは美佳ちゃん。」
「お、おい・・・・まったく。
ほらほら、準備するから離して。
稲村君も呆れてるじゃんか。」
「え、あ、お前いたの?」
「・・・・す、すみません。」
「冗談だ、ほら折角来たんだ晩ご飯食べていけ。
すき焼きだぞすき焼き。
美佳の料理、すき焼きだけは美味しいぞ。」
「何でも美味しいわ!
まったくこの馬鹿親父。
ほら稲村君、遠慮しないで中入って。」
「そうだ。
家の中に入るのは遠慮しなくていいぞ。
お肉だけは遠慮しろ。
高かったんだから。」
「は、はい。」
「とうちゃん!」
・
”うろうろ”
「は~、やっぱり家には入れないよな。
くそ、電話さえできれば。
稲村の奴、何話してんだ。
さっさと出てこい。」
「君、こんなところでなにしてるんだね。
ちょっと来なさい。」
「へ?」
・
・
・
”ぐつぐつぐつ”
これでよしっと。
へへ、いい匂い。
へー、ほんと高いお肉買ってきたんだ。
やっぱりなんか違うね、とっても美味しそう。
よし、そろそろ豆腐にも味染みたぞっと。
「お待たせ、できたよ。
とうちゃん、ビールそれとも麦茶?」
「んっとまずは麦茶。」
「いま取ってくるね。」
「美佳、ご飯食べる前に話がある。
ちょっとそこに座れ。」
え、い、稲村君いるのにその話しちゃうの?
と、とうちゃん、そんなに再婚したいのあの人と。
どうしょう、どうしょう。
稲村君、あんなこと言ってくれたけど、やっぱり自信が。
それにあの話をさせるわけにはいかん!
ど、ど、同棲しようなんて言われて、どうせいっていうんだ!
って、おいそんなこと言ってる場合か!
「あ、で、でも、ほら折角のお肉が。
ね、ね、あ、後にしよ。」
「いいから座れ美佳。」
”にぎ”
「へ、い、稲村君。」
げ、腕掴まれた。
く、くそ逃げられん。
「いいから座れ三ヶ木。
ちゃんとお父さんと話しよう。」
「あ、い、いやそっちの話はほんと待って。」
「お父さん、その話の前に俺の話を聞いてください。」
「いや、ちょっと稲村君!」
”ガチャ”
「おお、いい匂い。
あ、すき焼き食べてるの!」
”ドタドタ”
「うひゃ~美味しそう。
ほら、めぐりちゃんも上がって。」
「あ、し、失礼します。
ご無沙汰してますお父さん。
美佳、寄せてもらったよ。」
「お―、めぐりちゃん、いらっしゃい。
いや~綺麗になったね。
女子大生だね華の女子大生。
うちの馬鹿娘とは大違いだ。」
「と、とうちゃん!」
くそ、いつも実の娘のことをそうやって。
でも、まぁ、めぐねぇならいいや。
って、なに、なんであの人がここに。
「へ~すき焼き、本当に美味しそう。
わたしもご馳走なろうかなぁ。
ほら、めぐりちゃんも座った座った。」
”どさ”
な、な、な、なに、こいつ!
なに勝手に上がり込んだだけでなく、勝手に座り込んで!
かあちゃんみたいに、やさしくても、清楚でも、つつましくもない!
こんなやつ、こんなやつ、絶対にイヤだ!
「あんた!
勝手に他人の家に上がって、なにしてるんですか!」
「え?」
「なんで他人のくせに勝手に人の家に 」
”ぎゅ~”
「いにぁい、いにゃい、いにゃ、いにゃ、いにゃ!」
な、いきなり、ほ、ほっぺ抓られたー
いたいよ~、ほっぺ離して~
なんだよこの女!
「まったく。
こら佳紀! お前娘にどんな躾してきたんだ。」
「あ、い、いや、その~」
「な、なにゅをー、あにゅたにいにゃれるしゅじあいはにゅい!」
「こ、この馬鹿姪っ子は!」
「ふにゅぇ?」
「あんだけ抱っこしてあげたのに、このお姉さんのことを忘れるなんて!」
「い、い、いや、お義姉さんは叔母だから。」
”ゴン!”
「い、いててて。」
「と、とうちゃん大丈夫? え、叔母さん?」
”ゴン!”
「いてててて、な、何でげんこつが。」
「お、ねぇ・さ・ん。」
いたたたた、ほ、本気で殴りやがったこの女。
いったい何者なんだよ。
もう訳わかんない!
「美佳、本当に覚えてないの?
麻緒さんだよ。」
「う~痛かった。
めぐねぇ、麻緒さんて?」
「美佳のお母さんのお姉さん。」
「え、かあちゃんの? 」
「まったく、薄情な子だよ。
あれだけ可愛がって、いっぱい抱っこしてあげてたのに。」
「お義姉さん、それはこいつが赤ちゃんの頃の話だから。
それからしばらくしてお義姉さん、アメリカ行っちゃったから。」
「でもお葬式の時は帰ってきたじゃない。」
「あ、でも麻緒さん。
お葬式の時って、美佳、ずっと放心状態だったから。」
「でもねめぐりちゃん。
お葬式の間、ずっと手握ってあげてたのよ。
まったくね。
まぁ、いっけど。
ちょっと待てよ。
おい佳紀! ということはまだ話してないのあのこと。」
「あ、あの~すみません、なかなか話す暇がなくて。
ごほん。
あのな美佳、お前大学の受験勉強大変だろ。
今迄みたいに家事やりながらは勉強できない。
最近いつも寝てたし。
それでな、ちょうど麻緒さんから日本に戻ってきたって連絡あったから
相談したんだ。
そうしたら、お前が大学受かるまでの間、代わりに家事やってくれるっていうんだ。
で、一応、お前に話してからと思ってな。」
「え、とうちゃん話ってそのこと?」
「そうだけど。」
「あは、あは、あははははははははは。」
そ、そうなんだ。
再婚するんじゃなかったんだ。
この女の人って、かあちゃんのお姉さんなんだって。
道理できれいだなって思ってたんだ。
そっか、そっか。
「ぐすん、ぐす。」
あれ、なんで?
涙出てきた。
”ちょんちょん”
え?
「良かったな三ヶ木。」
「う、うん。」
「えっと、お前だれだっけ?
何でそこにいるの?」
「お、お父さん、酷い!」
・
・
・
「それじゃ、失礼します。」
「ああ、気をつけてな。」
「はい、お父さん。
あ、お肉本当に美味しかったです。」
「お前にお父さんって言われる筋合いはねぇ。」
”ゴン!”
「いたたた。」
「ひっく!
なに言ってんだお前、しつこいと嫌われるぞ。
ほら佳紀、こっちこい今日は飲むよ~」
「お義姉さん、酒癖悪い。」
「お、そんなこと言っていいのかなぁ~
頼まれた美佳の写メ送ってあげな~い。
ほら、この割烹着姿なんて可愛くてサイコーなのになぁ~」
「さ、ささ、お義姉さん飲みましょう。
いや~お義姉さんとお酒飲めて嬉しいな~
だから、写メ頂戴。」
”ガチャ”
「ふぅ~」
”スタスタスタ”
「良かったな三ヶ木。
って俺何やってんだ。
やば、急に恥ずかしくなった。
明後日から三ヶ木にどんな顔して会えばいいんだ。」
”だき”
「え? だ、だれ後ろから抱き着いて。」
「普通の顔でいいよ。」
「み、三ヶ木!」
「あ、あのね、今日はありがと。」
「あ、ああ。
でもなんかはずかしー」
「俺と住もう。」
「や、やめろ!
い、いいから消去しろ、お前の頭の中からすべて消去しろ。」
無理だよ。
消せないよ。
ほんと嬉しかったんだ。
稲村君、わたしの過去知ってた。
何で知ってたのか知らないけど。
でも、でもそれでも一生懸命心配してくれたんだ。
ほんとにうれしい。
でも、
「うれしかった、ほんとにうれしかったよ稲村君。
・・・・・けど、わたしは 」
「あ、そうだ三ヶ木!
明日さ、晩ご飯食べに行こう。」
「え?」
「ほ、ほら、この前の約束まだだったろ。」
「あ、う、うん。」
「な、明日行かないか?」
「・・・・・」
「すまん、調子に乗った。
これも忘れてくれ。」
「・・・・・いいよ。」
「ほ、ほんとか!
じゃ、じゃあさ、また明日連絡するな。」
「う、うん。」
「じゃ、明日。」
「うん明日。」
仕方ないか。
いっぱい稲村君に心配かけちゃったもん。
さてと、ああ~、あのばか騒ぎいつまで続くんだろ。
今日は疲れたから、はやく眠りたいのになぁ~
”ブ~、ブ~”
え、あれ電話?
「はい、もしもし?」
・
・
・
「どうもすみませんでした。」
”ペコ”
「まったくなにやってんの!
なんで下着泥棒と間違われてるのさ。
なんか間違われるようなことしてたの比企谷君?」
「あ、いや、なんでだろうな。」
「まったく。
ほんとに心配したんだからね。
いきなり警察から電話って。
もしかしたらって。」
「す、すまん。」
「い、いいけどさ。」
「・・・・・あ、あのな。」
「ん?」
「明日、時間空いてないか?」
「明日・・・・・・・明日はごめん。
ちょっと用事があるんだ。」
「そうか。」
「うん、ごめんね。」
”スタスタスタ”
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
感謝感謝です。
ようやく文化際も終わって、生徒会もあとわずか。
でもどうしょう。
文化祭長引いてしまったので、体育祭編・・・・・
ちょっと予定修正っす。
それではまた次話読んでいただけたらありがたいです。
おやすみなさい。