似て非なるもの 作:裏方さん
暑い日が続きますが、水分補給等お身体に気をつけてください。
さて、慌ただしかった文化祭も終わり、やっと訪れたささやかな休日。
きゅ、休日、人が木のように鋭気を蓄える日と書いて休日なのに・・・・・
二人にはどんな休日が。
それではよろしくお願いします。
「ねぇ、聞いた?
比企谷さんところの息子さん、昨日警察に補導されたそうよ。」
「逮捕されたって聞いたわよ。
下着泥棒だったんでしょ。」
「そうそう、捕まった時も女性用の下着を握りしめてたそうよ。」
「あらやだ、うちの下着もよく無くなるのよ。」
「あらお宅も? 実はうちも無くなるのよ。」
はぁ?
な、なに言ってんだ。
違う、おれは下着泥棒なんかじゃない。
昨日も交番でちゃんと違うってわかってもらえたんだ。
「お兄ちゃん、重要なお知らせがあります。
本日ただいまをもって、兄妹の縁切らせてもらいます。
いままでお世話になりました。
さようなら。」
”スタスタスタ”
お、おい小町、な、なにを言うんだ。
まさかお前も疑ってるのか?
違うんだ俺はなにもしていない。
ちょ、ちょっと待て小町。
お、おい。
「八幡、ここに座れ。
お前はなんてことをしてくれたんだ。
このままでは可愛い小町にまで害が及ぶ。
いいか、お前とは親子を縁を切る。
さっさとこの家から出ていけ。」
「自分を息子を信じられないのか!
俺は何もやってない。」
「出て行け!」
・
な、なんなんだ。
何で俺の言うことを聞いてくれない。
それでも親か。
くそ。
いつもの通り学校に来てしまったが、今日からどこに帰ればいいんだ。
「ひそひそ」
ん? なんだあいつら。
さっきからこっちを見てこそこそと。
「あんれ~ヒキタニ君じゃん。
さすがに学校来たらちょっとまずいっしょ。」
「ヒキオ、最低。
もう二度と結衣に近づくなし。」
「・・・・・比企谷、君ってやつは。
正直、がっかりだ。」
下着泥棒の件、学校まで知れ渡ってるのか。
くそ、お前らなんだその目は。
や、やめろ、そんな目で見るんじゃない。
俺は何もやっていないんだ。
「見下げ果てたぞ八幡!」
「八幡、八幡って本当は変態だったんだ。」
「戸塚! ち、違うんだ。
俺は下着泥棒なんかしていない。
お前だけは信じてくれ。」
「うん、僕も八幡を信じたい。」
「と、戸塚。」
「でも八幡、その手に持ってるものは何?」
「え? なにって、この白くてすべすべしてて・・・・・・げぇ!」
「八幡の変態!」
”ダー”
い、いや、違うんだ戸塚!
これはもらった、もらったものなんだ。
「と、戸塚、待ってくれ。」
”ダー”
「あ、あの~、我は?」
・
「と、戸塚~」
「近寄らないで八幡。」
「うわっ、あいつパンツ持って走ってるぞ。」
「変態だ。」
「え?」
「「変態、変態、変態、変態」」
ち、違う、変態じゃない。
や、やめろ、やめてくれ。
おれは下着泥棒じゃない、変態でもない。
みんなそんな目で見ないでくれ。
「「変態、変態、変態、変態」」
ううううう、うわー!
”ダー”
やめろ、やめろ、やめろ
”ズボッ”
おわっ!
な、なんだここは? 沼、沼なのか。
何でこんなところに沼が。
”ズズッ”
や、やばい、身体が沈んでいく。
もしかしてここって、底なし沼なのか。
まずい、は、早く出ないと。
”ズズ、ズズズズズ”
ぬ、抜けられん、だ、誰か助けてくれ。
もがけばもがくほど身体が沈んでいく。
「だ、誰か!」
”ズズッ”
ぐは、口の中に泥が。
う、嘘だ、俺、俺このまま死ぬのか。
「比企谷君、掴まって。」
だ、誰だ?
手? ここから助け出してくれるのか?
”にぎ”
「だ、誰かわからないかが、引き上げてくれ。
動くと沼に引き込まれるんだ。
た、頼む、助けてくれ。」
「うんしょっと。」
”ぐぃ!”
「え?・・・・・うんしょって。」
「まったくなにやってんの!」
「三ヶ木、三ヶ木、三ヶ木ー!」
”ガバッ”
はっ! な、なんだ?
ここ俺の部屋・・・なのか?
はぁ、はぁ、はぁ、な、なんという夢なんだ。
なんか最近ろくな夢を見ない気がするんだが。
この前は葉山に耳噛まれたし。
・・・・・昨日、初めて交番にいったからか。
あれはマジビビった。
もし、三ヶ木が来てくれなかったら今頃俺は。
”びちゃ”
はぁ~、汗でパジャマびちゃびちゃじゃねえか。
えっと汗拭いて着替えるか。
”ドサ”
えっと、何か身体拭くもの拭くものっと。
あ、いいところにハンカチが。
”ふきふき”
ん?
ハンカチにしては汗が拭けな・・・・・・・・・・げ、三ヶ木パンツ!
何でこんなとこにこんなものが。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・い、いやそ、そんなことはどうでもいい。
すんだことだ。
男は小さなことは気にしないものだ。
はは、はははは・・・・・はぁ~
”トントン”
「お兄ちゃん、起きてる?
朝ご飯食べないの。」
げ、こ、小町。
え、えっとこの状況どうする。
”ガチャ”
「お兄ちゃん?
うへぇ~、上半身裸でなにしてるの?」
「ふん、ふん! みよ、この筋肉美!」
「は~、頭いた。
朝っぱらからなにやってんだか、うちの愚兄は。
はいはい、そんなことやってないで、早くご飯食べちゃって。」
「お、おう、すぐいく。」
”ガチャ”
ふ、ふ~、行った? 行ったよね。
やばかった。
見つからないように、ちゃんと保管しておこう。
・・・・・多分、何でもよかったんだ。
昨日、俺は三ヶ木を感じていたかったんだ。
ハンカチでもボタンでも、このベッドにかすかに残る残り香でもなんでも
よかったんだ。
材木座から子供のころの話を聞いて、稲村と二人で一緒にいるところを見て、
交番に迎えに来てくれた時の青ざめた三ヶ木の顔を見て、
なんだか、無性に三ヶ木のことを身近に感じていたかった。
”ガシガシ”
はぁ~、なに言ってんだか俺は。
さ、メシだメシ!
・
・
・
”カチャカチャ”
「ん~なんだ、食器の音?
あれ? とうちゃん今日仕事だったけ。
昨日はそんなこと言ってなかったんだけど。」
”ガタ、ガタ”
「う~ん、この襖、ほんと最近建付けが悪くなって。」
”スー”
「ふ~、やっと開いた、えっ!
か、かあちゃん。
な、なんでかあちゃんが台所に?
そ、そんなことどうでもいい。
かあちゃん!」
”ダー”
「かあちゃん、かあちゃん、かあちゃん。」
”だき”
「かあちゃん、会いたかった、会いたかったよ~」
「美佳。」
「えっ、かあちゃんこんな可愛くない声だったっけ?」
”ゴン!”
「いったぁ~」
「危ないだろうが!
後ろから急に抱き着くんじゃない。
いま包丁持ってたんだからね。」
「・・・・・な、なんだ、叔母さんか。」
”ゴン!”
「ぐはぁ~」
「お・ねぇ・さ・ん。」
「ムリ!」
”ぐりぐりぐりぐり”
「ぐはぁ~、いたたたたた。
や、やめて~、こめかみ痛い痛い。」
「ふふふ、必殺梅干し攻撃。
ほらそこに座ってて。
もうちょっとで朝ご飯できるから。」
「あ、朝ご飯?」
「今日だけ特別だよ。
言っておくけど、家事するのは平日の午前中だけだからね。
土曜と日曜ぐらいは親子水入らずがいいでしょ。」
「あ、はい。」
「朝ご飯とお弁当、それと晩ご飯の下拵えぐらいはしておくから。
あとは、そうそう洗濯物はちゃんと出しておくこと。
それと買い物しておいてほしいものあったら、ちゃんとメモに書いて
おくこと。」
「う、うん。」
「掃除は適当にね。
見られてまずい物は本棚に隠しておくこと。」
「え! ほ、本棚って。」
「はは、昔よく佳紀がエッチな本隠してたから。」
「えっと・・・・ん?」
「よしっと朝ご飯できたっと。
ほらほら、ボケっとしてないで運んで。」
「はいはい。」
”ガチャガチャ”
「佳紀はまだ起きてこないから、後で温め直してやって。」
「うん。」
「よし、それじゃ、頂きま~す。」
「頂きますっす。」
”ぱく”
「うっ!
う、うまい。
この卵焼きふわふわで美味しい。
なぜ、なんでこんなにふわふわ?
あ、マヨネーズだ。」
「ふふ、正解。」
”ず~”
「え、この味噌汁の味、かあちゃんの味にそっくり。
焼き魚もジュシーだし、この大根のきんぴらもマジ美味いし。」
「ふふふん。
一応聞くけど、どうよ?」
「え、あ、あのとても美味しいです。」
「ん? 聞こえないな~、もう一回。」
「へん、年取って耳が遠くなったんだ。」
”ゴン!”
「いてててて。」
「まったくこの子は!
その大根のきんぴら、いっぱいつくって冷蔵庫に入れておいたからね。
胡麻は健康にいいんだぞ、たくさん食べな。」
「あ、う、うん。
ま、麻緒さんって見掛けによらず、お料理得意だったんですね。」
”ゴン!”
「ぐぅ~、いたたた。」
「一言余計。
それに得意なのは料理だけじゃないわよ。
伊達に16年間一人暮らししてないから。」
「え? 麻緒さん独身?」
「おうよ、なかなかいい男いなかったからなぁ~」
「美佳は?」
「え?」
「美佳はどっちが本命なの?」
「え、えっと~なんのことかなぁ~」
「昨日家に連れ込んだ男の子? それとも校舎の壁のとこでイチャイチャしてた男の子?」
「校舎?
あ゛ー! み、見てたの。」
「うんばっちり。 ほら写メも取ったよ。
佳紀に送ろうかなぁ~」
「や、やめ!」
「じゃあ、どっち?」
「・・・・・・」
「わたし的には家に連れ込んだ子かなぁ。
だってほら、この校舎の子はなんかね。
目が死んでるし、ややこしそうだし、全然いいとこなさそう。
こりゃモテそうにもないわ。
あんぱいあんぱい。」
「はぁ! な、な、なに言ってんだか!
麻緒さんには比企谷君のいいとこなんてわかりませんよ~だ!」
「ふふふ、そっか、こっちが本命か。」
「え、あ、いや、今のは、その・・・・・・」
「いいよ、佳紀には内緒にしてあげる。
で、どこまでいったの? もうエッチした?」
「は、はぁ! し、してません、もう!」
”ぱくぱく、ぱくぱく”
「美佳、そんなに急いで食べると。」
「う、ううううう。」
「馬鹿、ほらお茶。」
”ごくごく”
「ふぁ~、し、死ぬかと思った。」
”ガタガタ、スー”
「ふぁ~、おはよ~」
「あ、とうちゃん、おはよ。」
「あ、佳紀、よかったね美佳まだ処女だって。」
「ぶふぁ! あ、あんたなんてことを!
と、とうちゃん、そこで固まってるんじゃない!」
・
・
・
録画の確認、よしOK。
ふふふ、さぁ至福の時間の始まりだ。
俺の1週間の苦行が報われるこの時間。
そう、全てはこの30分間の至福のためにあるといっても過言ではない。
5、4、3、2、1
「何度でも起こすよ きらめく奇跡♬」
”ブ~、ブ~”
ち、誰だ、俺の至福の時間を邪魔する奴は!
俺は無視する、断固無視だ!
電源オフっと。
ふふふ、何人たりともこの時間の邪魔はさせん。
・
「輝く未来を抱きしめて! みんなを応援! 元気のプリキラ! キラエール!」
おお、その切りすぎた前髪、かわいいぜ。
今朝の悪夢に苛まれた俺の魂を癒してくれる。
「フラワーシュート!」
お、おお~
・
ふ~、あ~今回もよかった、感動した。
まったく途中はヒヤヒヤしたぜ。
満足満足。
さて、それじゃもうひと眠りするか。
”ガチャ"
「お兄ちゃん。」
「お、おう小町。
おやすみ。」
「まだ寝るの?
それより、ちゃんと電話出て。
あのね、雪乃さんが13時にららぽの東の広場で待ってるって。」
「はぁ?
いや、なにそれ?
俺何も約束してないんだが。」
「そんなの小町知らないよ。
ちゃんと伝えたからね。
あ、行かないと小町がちゃんと伝えたか疑われちゃうから。
もし行かなかったら後でひどいからね。」
「え? ひ、ひどいってなんだ。」
「もうお兄ちゃんの前では笑ってあげない。」
「わ、わかった。
すぐ行く、今から行ってくる。」
「まだ早いから、ほらちゃんと着替えて。」
「お、おう。」
・
・
・
「うん、わかった。
じゃあ、15時にららぽでね。」
「ああ、あとでな。」
「えっとなに着ていこうかなぁ~
フンフンフ~ン♬
げ、な、何で音楽口ずさんでんだわたし。
わたし・・・・・うれしいの?」
『俺と住もう』
”ぽっ”
「わたし・・・・ば、馬鹿。
ち、違う、違うわい!
晩ご飯が楽しみなだけだい!
な、何食べようかなぁ。
なに・・・・・食べよう・・・かなぁ。」
『明日、時間空いてないか?』
「あっ、そうだ。
比企谷君、時間空いてないかって、何か用だったのかなぁ
・・・・・・・会いたい。」
・
・
・
”スタスタスタ”
あっついな~
雪ノ下の野郎、何の用事なんだ、まったく。
はっ、もしかして文化祭の後片付けサボったからか。
しかしあれは材木座が。
はぁ~気が重い。
”ブ~、ブ~”
「もしもし比企谷だが。」
「あ、三ヶ木だよ。」
「お、おう。
で、なんだ?」
「あ、あのね、昨日ごめん。
今日、お昼少しだったら時間あるんだ。
も、もしよかったらどこかで 」
「すまん、急用ができたんだ。
いま移動中だ。」
「え、あ、そ、そうなんだ。
わ、わかった。
じゃあまたね。」
「ああ。」
今、それどころじゃない。
どんな仕打ちを受けるか。
”ゾ~”
あれ、おかしいなぁ、急に寒気が。
・
・
・
「じゃあ、美佳行くね。」
「・・・・・う、うん。
つ、次はいつ帰ってこれるの?」
「そだね。
う~ん、少し先になるけど年末かなぁ。」
「そう・・・・か。」
”だき”
「み、美佳。」
「めぐねぇ、寂しい。」
”なでなで”
「美佳、美佳は大丈夫。
一色さん、本牧君、藤沢さん、それに稲村君。
ちゃんと心許せる仲間がいてくれてる。
それに昨日のあの娘、えっと蒔田さんだっけ?
美佳を慕ってくれる娘もいる。
そしてお父さんと、麻緒さんもね。
大丈夫だよ、もう美佳は一人っきりじゃない。」
「めぐねぇ~」
「美佳。」
”ぎゅ~”
「あ、そうだ、それに彼氏さんもいるんだ。
うらやましいぞ~」
「彼氏?」
「またまたとぼけて。
じゃ行くね。」
「うん・・・・・・いってらっしゃい、お、お、お姉ちゃん。」
「おう、行ってくるぜ、妹。」
”ビシッ”
「め、めぐねぇ、サムズアップかっこいい。」
「ふふふ、俺に惚れるとケガするぜ。
なんちゃって。
あ、美佳!
ラインはちゃんと返しなさいよ、いい? 」
「うん。」
「じゃあね。
比企谷君と仲良くね。
それとキスする時は場所を選びなよ。
病室はだめだよ病室は。」
「え?」
”プシュ~”
「いや、め、めぐねぇ、ち、違くて。」
”ガタン、ガタン、ガタンガタン”
「げ、やっぱりめぐねぇ勘違いしてる。
キ、キスなんて・・・・・・し、したいけど。」
・
・
・
”ウィーン”
ふ~、やっぱりららぽの中は冷房が効いてて涼しい。
タダで快適な時間が過ごせるんだ。
はぁ、休みの時はずっとここにいようかなぁ。
いやいるべきだ。
この快適さは誰かが享受しなければエネルギーの浪費になる。
し、仕方がない、俺が引き受けてやろう。
し、仕方がないからだからね!
ふ~、馬鹿やってないでマッ缶でも飲むか。
第一、こんなに人ゴミ、いやこんなに人の込んでるところには
あまり長居はしたくねぇ。
”ガタン”
ふぅ~冷たい、よく冷えてる。
”ガチャ”
さてっと、雪ノ下はどこにいるんだ?
確か待ち合わせはこの東の広場だったはずだな。
”ゴクゴク”
ふ~、まぁ、まだ20分前だから、ちょっと早かったか。
そこのゲームセンターにでも・・・・・・い、いた。
ゲームセンターの左隣のペットショップに。
・・・いや、あなた何してるの?
「にゃ~にゃ~」
「うふふ、にゃ~、にゃ~」
「にゃ~」
あいつ、もしかしてネコと話しできるんじゃねえのか?
ガラス越しに子ネコと語り合ってやがる。
まぁ、こうやって見ていると、本当に可愛いんだよな。
さすがは3年連続ミス総武高。
まったく、あの口の悪ささえなければ、完璧な美少女キャラなんだけどな。
「はっ!」
げ、気が付きやがった。
”スタスタスタ”
「何か用かしら?
その腐った目で視姦するのやめてくれるかしら。
それともやっぱり変質者?」
「お、おい。
くそ、可愛いって見惚れてた俺が馬鹿だったわ。」
「はっ、な、な、な、なに言ってるのかしら。
目だけでなく、頭まで腐ったのかしら。」
「・・・・・」
「ご、ごほん。
それにしても、10分も前に来るとは少しは更生したようね。」
「・・・・・で、今日は何の用だ。」
「あ、あの・・・・そ、そう!
由比ヶ浜さんのところのペット、えっと、確か 」
「サブちゃんだ。」
「え、そう、そうだったかしら?」
「ああ、間違いない。」
「そのサブちゃん・・・・・・サブちゃんよね?
最近元気ないっていうから、お見舞いに行こうと思うのだけど、
なにを持っていこうか、よかったら一緒に考えてもらってもいいかしら?」
「ああ、そのことは俺も聞いた。
なんでも、もう12歳ぐらいだっていうからな。
そろそろ年なんだろう。」
「そう。」
「まぁ、とにかくペットショップ行ってみようぜ。」
「そうね。
あ、あの、ありがとう。」
「おう。」
・
・
・
「うひゃぁ~、涼しい、ここは楽園だ~。
お、自販機発見!」
”タッタッタッ”
「何にしようかなぁ~
よ、よし、今日は、マ、マッ缶でいくぞ!」
”ガタン”
「ふふふ、お主は相変わらず禍々しいのう。
覚悟しろ!」
”カチャ、ゴクゴクゴク”
「ぐわ~、あ、あま~
久しぶりに飲んだけど、やっぱこの甘さは凶器だよ。
これってカロリーめっちゃ高いよね。」
”ゴクゴク”
「ふ~でもさ、誰かさんと一緒で、飲めば飲むほど良さがわかるんだよね。
えへへへ。」
・
「ドッグフードでも結構種類あるのね。」
「ああ。
まあサブちゃんの場合 」
「ちょっと待って比企谷君。
由比ヶ浜さんのペットって、本当にサブちゃんて言ったかしら?」
「えっと、サ、サボ、サビ、サバ・・・・・サブちゃんだ。
間違いない。」
「そ、そう・・・・・サブちゃん、サブちゃん?」
「そ、それでだな、サブちゃんの場合、高齢だからな。
成犬用じゃなくてシニア用にするべきだ。」
「どう違うのかしら?」
「シニア用は高タンパク・低脂肪で、さらに穀物が入っていなくて消化吸収しやすく
なっているんだ。
あ、でもな雪ノ下、ドッグフードなら昨日由比ヶ浜にも同じ話してるから、
もしかしたらもう買っているかもしれんぞ。」
「そう、それなら他のものにしましょう。」
・
・
・
「う~ん、沙希ちゃんのプレゼントどんなものがいいかなぁ~
小物とかだけでなく服でさえ自分で作っちゃうもんな。
なにがいいんだろう。」
”うろうろ”
「あ、あれがいいかも。」
”スタタタタ”
・
・
・
「これなんかどう? 比企谷君。」
「げ、ド、ドッグカメラ。
雪ノ下、これはとってもいい、いいと思うが、この値段を見てみろ。
とてもありがとうって簡単に貰ってもらえるような値段ではないぞ。」
「え、あ、そ、そう?」
「まったく。
ほらこういうのってどうだ?」
「えっと、ハーネス?」
「ああ。
足腰が弱くなったとしてもやっぱり適当な散歩は必要だ。
特にサブちゃんは散歩が好きだからな。」
「あらよく知ってるのね。」
「ああ。
一度うちで預かったことがあるからな。
このハーネスなら散歩もあまり足腰に負担にならねえだろう。」
「そうね。」
「まあ値段的にもそれなりだしな。」
「ちょっと待って。」
”ゴシゴシ、ビシビシ”
「ふむふむ。」
「えっと雪ノ下さん、なにをしてるのかなぁ?」
「強度とか縫製の状態は問題ないようね。
いいわ、これにしましょう。」
・
「毎度ありがとうございました。」
「お待たせ。」
「おう、じゃ俺はこれで 」
「あ、あの、ひ、比企谷君。
よ、よかったら・・・・」
「うん?」
・
・
・
「えっと沙希ちゃんのって、このくらいだったかなぁ
え~と、確かあの感触はDかなEかな。
ぐへへ、こんなの似合いそう。
は、こ、これは。
このスケスケ具合、比企谷君のもろ好み。
ほ、ほら、これこの前の本で女優さんが着けてたのとそっくり。
・・・・・あ、あの時さ、もしこんな下着を着けてたら、もしかしたら。
きゃ~」
「あの~お客さま、どうかされました?」
「え、あ、い、いえなんでもないです、ごめんなさい。
ひぇ~」
”ダ―”
・
お、おうカメレオンか。
このふれあい動物園、カメレオンもいるんだ。
カメレオンってその時の体調とか感情で色が変わるんだよな。
もし自由に身体の色変えられるんなら、俺カメレオンになりてぇ~わ。
そうすれば誰に気付かれることもなく、周りと同化してぼっちライフを
満喫できるんだが。
「にゃ~にゃ~」
はっ、あなたまたそこに掴まってるのね。
は~、もうネコ飼ったら?
いやもう飼うべきでしょう。
”むにゅむにゅ”
「うふふ、にゃ~、にゃ~」
”ジー”
「は、あ、あの~、そ、そんなに見つめないでいてくれるかしら。」
「あ、わ、わりぃ。
・・・・・の、喉かわいたな~
俺、そこの自販機コーナーに行ってるわ。
まぁなんだ、飲み物飲みたくなったら来てくれ。」
「え、ええ。」
・
「う~ん、なかなか決まらない。
沙希ちゃんどんなもの喜んでくれるかなぁ。」
「ワンワン。」
「あ、わんちゃん。
柴犬、めっちゃかわいい。
あ、今日ふれあい動物園やってんだ。
へへ、やっぱり子犬ってかわいい。
昔から飼いたかったんだ。
ほれほれこっちおいで。」
「ワンワン。」
”ぺろぺろ”
「き、貴様、わたしの大事なファーストをって。
えへへ。」
「にゃ~にゃ~」
「へ、今のにゃ~にゃ~って声。
も、もしかして。」
”きょろきょろ”
「はっ、やっぱりゆきのん。」
「にゃ~にゃ~、うふふふ。」
「う、ゆ、ゆきのんのイメージが。
い、いけないものを見てしまった。
これゆきのんに見つかったらやばいかも。
・・・・・でもこのゆきのんも可愛い。」
「はっ!」
「ヤバッ!」
”サッ”
「き、気のせいかしら?」
「あっぶなかった。
大丈夫だったよね、み、見つかってなかったよね。
くわばらくわばら。
ここは退却、退却。」
・
”スタスタスタ”
「えっと隣に座ってもいいかしら?」
「あ、お、おう。」
”すとっ”
「もういいのか?」
「え、ええ。」
「なぁ、雪ノ下。
今日、お前が俺を誘った本当の目的はなんだ。」
「えっ。
・・・・・そ、それは、あ、あなたのことが、き、気になったから。」
「気になる?
ああ、そうか。
昨日の三ヶ木の相談のことだな。」
「え? い、いえ、あ、あの 」
「まぁそれぐらいしか思い浮かばん。」
「はぁ~。
そ、そうよ、この唐変木。
・・・・・で、三ヶ木さんの真の相談ってなんだったの?」
「唐変木? まぁいいか。
三ヶ木の相談だが、あいつが相談したかったことって言うのはだな、
あ、プライバシーにかかわることは省くぞ。」
・
・
・
「いらっしゃいませ。
ご注文、お決まりでしょうか?」」
「あ、アイスコーヒーお願いします。」
「はい、かしこまりました。」
”スタスタスタ”
「ちょっと早すぎたかなぁ。」
”ガサガサ”
「へへ、三ヶ木、この映画のチケット見せたら喜ぶかなぁ。
結局勘違いだったけど、三ヶ木結構辛かっただろうからな。
ここらへんで元気つけてやらないと。
”アカ俺 The 二人のヒーロー”っか。
あいつ、イレギュラーヘッドの大フアンだもんな。
いっつもこの目で見つめられたら死にそうって言うけど、あの目のどこがいいんだ。
・・・・・に、似てるのかあいつに。
ちっ、まぁいい。
それより、三ヶ木早く来ないかなぁ。」
・
「そ、そう。
そうだったの。」
「ああ。
俺より稲村のほうが先に気付いていてな。
だから結局のところ俺は何もしていない。」
「それであなた昨日・・・」
「昨日?」
「朝電話した時、小町さんから聞いたわ。
昨日帰ってきた時のこと。」
「こ、小町、またいらないことを。」
「そんなこと言うべきじゃないわ。
すごく心配してたわよ小町さん。」
「・・・・・」
「ね、今日この後、何か予定あるかしら?」
「はぁ? い、いや何もないが。」
「き、昨日、文化祭の後片付けサボった罰よ。
ちょっと付き合いなさい。」
「いや、後片付けは由比ヶ浜がほとんどって 」
”ギロッ”
「なにか。」
「い、いえ何も、何もありましぇん。」
・
・
・
「お、お客様。
あ、あの~」
「え? なにか?」
「ま、窓の外のお客様はお知り合いの方ですか?」
「は?
おわっ! 三ヶ木何覗いてんだ!
す、すみません、ちょっと呼んできます。」
”ダー”
「三ヶ木、お前何やってんだ!」
「え、あ、稲村君。
えへへへ、ちょっと・・・・確認を。」
「馬鹿、そのガラス、中からは丸見えだぞ。」
「え? え゛ー。」
・
・
・
「で、どこに行くつもりだ?」
「そうね、なにかスポーツしましょう。
お互いモヤモヤしてる気持ちを発散させましょう。」
「え? お前もモヤモヤしてるの?
あ、もしかしてまだ猫が 」
「い、いいから、なにをするかあなたが決めなさい。
そ、そうね、勝負しましよう。
も、もし私が負けたら、あなたの依頼一つだけきいてあげるわ。
その代わりあなたが負けたら、私の依頼、一つだけきいてもらうわ。」
え、いいのか。
何かなんでも願いこときくって、あんなことやこんなこともいいのか。
そ、それなら白猫物語のコスプレでブラック雪ノ下なんかもありか。
いや、こいつ猫耳、似合うだろうな。
それであんな下着姿でにゃ~んって。
・・・・・お、おぉ!
「あ、あの比企谷君、なんか顔が変なんだけれども。
ね、ねぇ、聞いているかしら?」
は、まてよ。
もし負けたら、俺が何か依頼を受けないといけないんんだ。
こ、こいつの依頼ってなんだ。
”ゾ~”
な、なんだかまた背筋が寒くなったんだが。
そうなんだ、こいつはあの雪ノ下雪乃なんだ。
も、もし負けたら・・・・・・
ぜ、絶対に負けられん。
しかしよく考えればこいつも完璧超人の一族。
冷静に考えて俺が勝てそうなのは体力しかねえ。
ならば競技は一つしかない。
「雪ノ下、勝負はボウリングだ。」
「ボウリング?
いいわ、行きましょう。」
”スタスタスタ”
・
・
・
「ううううう、は、恥ずかしい。」
「あはは、写メ取っておけばよかった、あのバカ面。」
”ベシ”
「うっさいわ!」
「ごめんごめん。
もう機嫌直せって。
ほら、これ行くか?」
「ん? え、これって。」
「ああ、ちょうどそろそろいい時間だ。」
「あ、ありがと。
この映画行きたかったんだ。
で、いくら?」
「は?」
「チケット代。
自分の分、ちゃんと払うよ。」
「お、俺のおごりだ。」
「う、うそ、あのケチ村君が!」
「おい、何だケチ村って。」
「でも悪いよ。」
「いいって。
それより早く行こうぜ。」
「じゃ、じゃあ、ポップコーンとか飲み物はわたしが買うね。」
「ああ。」
・
・
・
”ゴロゴロゴロ、パカ~ン”
げ、ま、またストライク。
こ、こいつ化け物か。
これで4フレームまで全部ストライクじゃねぇか。
マジでプロになれるんじゃねえか。
・・・・・体力さえあればだが。
今のうち、この世の春を謳歌するがよい。
最後に勝つのは俺だ。
”ゴロンゴロンゴロンゴロン、パタパタパタ”
「よ、よし!」
俺もここまで全てスペアー。
俺はストライクなんていらねえ。
手堅く全てスペアー狙いだ。
”ゴロゴロゴロ、パカ~ン”
げ、またストライクかよ。
「な、ナイスストライク。」
「ええ、ありがとう。」
”ちょこん”
う~、こ、このハイタッチ、俺にはレベルが高すぎる。
・
おお、こ、これは。
見つけたぜベストポジション。
そう、ちょうどこの椅子。
雪ノ下、ボールを取るとき前かがみになるのだが、そうすると
おおっ!
大きく開いた胸元から微かに黒い布地が。
あ、あれってつまりあれだよな。
”スタスタスタ”
しかもこいつ今日のスカート短いから投げた時の後姿も。
お、おお~、こっちも黒。
・・・・・いや、なにしゃがんでるの、俺最低。
”ゴロゴロゴロ、パタパタ”
え、最後も7本なのか。
ふふふ、さすがにバテてきたようだな。
5フレーム以降、ストライクがでなくなった。
「どう、219対174、私の勝ちね。」
「まて雪ノ下。
誰が1ゲームの勝負だと言った。」
「え?」
「勝負は2ゲームの合計だ。」
「・・・・・そ、そう。
確かに確認してなかったわ。
2ゲーム合計なのね。」
「おう。」
・
・
・
”ゴロゴロゴロ、パタパタパタ”
よ、よし、このフレームもスペアーだ。
「比企谷君、少しいいかしら?」
「ん?」
「あ、あのちょっと。」
”チラ”
「ああ、花摘みか、花摘みって言うんだろ。
ああ、気にするな花摘み行ってこい。」
「比企谷君、あなたって人は。」
”スタスタスタ”
・
「もしもし小町さん?」
「あ、雪乃さん、電話大丈夫でした?」
「ええ。」
「あの~、兄はどうでした?」
「そうね、やっぱり昨日ちょっとあったみたい。
でも、もう大丈夫だと思うわ。」
「そ、そうですか
ありがとうございます、雪乃さん。」
「わ、私は特になにも。」
「いえいえ、兄の相手してくれているだけで。
それに小町のリクエストの服装までお願いしまして。」
「比企谷君、こんな感じの服装が好きなのね。」
「ええ、兄はムッツリですから。」
「ムッツリ?」
「ええ、雪乃さんのその格好みてるだけで兄は元気になります。
あ~小町も見たいな。
あ、そうだ。
雪乃さん、小町、いま兄に元気を出してもらおうと、
腕によりをかけて晩ご飯を作っているのです。
今日のお礼もあります。
ぜひ、我が家にお越しください。」
「い、いえ、それは。
今日はご両親もいらっしゃるのでしょ?」
「あ、いえ、両親は今日も休日出勤で。
全く社畜で困ったものです。」
「そ、そう? それなら 」
「お~い小町、アイス勝ってきたぞ~」
「げ、お、お父さん。」
「小町さん。」
「す、すみませ~ん。」
・
遅いな雪ノ下。
俺もちょっと花摘みに行ってくるか。
い、いや俺の場合は花摘みとは言わねえか。
”スタスタスタ”
「だから気にしないで小町さん。」
え? この声って。
それに小町?
「私は今まで何度も比企谷君に依存してしまったの。
その結果、彼を幾度も傷付けてしまった。
結局今回も。
こんなことぐらいで私が彼のためになれるって言うのなら、
私は、私は・・・・・・・・・うれしいと思う。」
ゆ、雪ノ下。
今日、俺を呼び出した本当の理由って。
だがな、違うぞ雪ノ下。
俺は俺がそうしたいからしてきただけであって、その結果による称賛も、
嘲笑も、侮りも、卑しめも、蔑みも当然俺に返ってくるべきものなんだ。
だからそのことについて、お前たちが気にするべきものではない。
全ては、俺の俺による俺のために選択した行動なんだ。
「ふ~」
”スタスタスタ”
・
「ごめんなさい、お待たせしたわね。」
「いや、ちょうどいい休憩になった。」
「そ、そう。」
「んじゃまぁ~お前の投げる番だ。
10フレーム目だ。
言っておく。
9フレームまで終わって、323対325。
2ピン俺が勝っている。
さらに俺の場合、9フレーム目もスペアーだから、少なくても9フレームの10ピン
がプラスされて12ピン差だ。」
「あら、もう勝った気でいるのかしら?」
「はぁ?
もう俺の勝ちは決まっただろう。」
「まぁ見てなさい。」
「へっ?」
”ゴロゴロゴロ、パカ~ン”
え? ストライク。
”ゴロゴロゴロ、パカ~ン”
お、おい、またス、ストライクかよ。
”ゴロゴロゴロ、パカ~ン”
・・・・・マジか。
こ、ここでターキーかよ。
「ふ~、どうかしら?
私にもちょうどいい休息だったわ。」
いや休息って、マジかよこいつ。
くそ、こいつ今ので353。
18ピン負けてんじゃねえか。
ここで最悪スペアー取れないと負けだ。
ブラック雪ノ下が・・・・
ま、負けられん。
ここは、今まで以上にスペアー狙いに徹して。
”ゴロンゴロンゴロン、パタパタ・・・・パタ”
「げっ!」
「あら、ここで7-10のスプリット。
あなたの悪運もここまでのようね。」
「う、うっせ。」
た、確かにこのスプリットはプロでも一番難しいやつじゃねえか。
これで9フレームまでの合計点数が343。
今のスプリットの8本をたして351。
1ピン倒せても352か。
くそ、俺の夢も消えた。
ふぅ~、でもこれで良かったのかもな。
さっきの雪ノ下の想い、素直にうれしかった。
だったら、こいつにあんな恰好させるわけにはいかないよな。
・・・・・だ、だが、いったい俺何やらされるのこいつに。
も、もしかして、ゆ、指、足の指舐めろとか。
はぁ~、最悪だ。
「ほれ。」
”ゴロゴロゴロゴロゴロゴロ、パタ”
あっ。
”クルクルクル”
う、うそ。
”コンッ、パタ”
「「えっ!」」
ス、ス、スペアーだと。
10番ピンに当たって、そのピンが7、7番ピンを。
おおっ~
お、俺ってプロ? いやプロ以上だろ!
これで353。
俺はあと1回、投げることができる。
すなわち、これで、この1投で1ピン以上倒せば俺の勝ち。
・・・だが。
『私は、私は・・・・・・・・・うれしいと思う。』
そ、そうだよな。
だったら俺は。
「雪ノ下! 言い残すことはないか。
そこで敗北の瞬間を、しっかりとその目に焼き付けるんだな。」
”チラッ”
はは、そんなに心配すんなって。
さて、そんじゃ思いっ切りぶんなげてっと。
「待ちなさい比企谷君!
ガターは絶対許さないわ。」
「えっ、あっ!」
”ゴロゴロゴロ、パカ~ン”
「う、うっそ、ここでストライクかよ。」
・
・
・
「む~、ありえない!」
”パクパク”
「な、さっきからそればっかだな三ヶ木。
いい加減、食べるか愚痴るかどっちかにしろ。」
「もぐもぐ。
だ、だってだよ稲村君。
折角のアカ俺の映画なのに、わたしの消ちゃん出番ないじゃん。
なんで主役を外すかなぁ。」
”パクパク”
「いや、主役はデクだろう。
イレギュラーヘッドは脇役。」
「む~、ミラノ風ドリアお代わり。」
「まだ食べるのか!」
・
・
・
”スタスタスタ”
「それで、あなたの依頼って何かしら?」
「あ、いいわ、それ無しで。」
「そうはいかないわ。
決りは決まりよ。
・・・・・わ、私、覚悟してるから。
さぁ、あなたの依頼、言いなさい。」
え、な、何の覚悟?
いや、そんな目で見つめないで。
そんなに見つめられると、俺の豆腐でできた決意が崩れちゃうから。
・・・・ど、どうすっかなぁ。
あっ、そ、そうだ。
「なぁ、雪ノ下。
お前、指定校の校内選考、もう推薦決まったんだよな。」
「ええ。」
「お前への依頼、三ヶ木に勉強教えてやってくれないか。」
「え?」
「あいつYさんとは違って、それほど成績悪くなかったと思うのだが、
進学決めるのが遅かったし、生徒会とかもあるからな。
ちょっと心配なんだ。」
「そ、そう。
・・・・・わかったわ。
あなたの依頼、喜んで受けさせてもらうわ。」
「すまん、頼む。
あ、そ、そうだ、メシ、晩飯食っていかないか?
今日はお前にボウリングで勝てて気分がいいんだ。
俺に奢らせろ。
依頼の件もあるからな。」
「今日はやめておくわ。
ちょっと疲れたし。
それに小町さんが、腕によりをかけて晩ご飯を準備しているそうよ。」
「そうか。
それじゃ、駅まで送ろ 」
「あ~美味しかった。
余は満足じゃ。」
「あ、馬鹿、ちゃんと前見ろ三ヶ木。」
”ドン!”
「きゃっ!」
「す、すみま・・・・・み、三ヶ木。」
「あ、比企谷君。
・・・・・と、ゆきのん。」
「三ヶ木、大丈夫か?」
「あ、ありがと、稲村君。
うんしょっと。」
み、三ヶ木、お前の用事ってこういうことだったのか。
また稲村と一緒に・・・・・
な、なんだ、何でいつまでも手を握ってんだ。
さっさと手を離せ。
それになんで笑顔で見つめあってんだ、くそ。
”イラ”
え、なんだこの気持ち。
すごく気持ち悪い。
「み、三ヶ木、き、今日用事があるって言ってたよな。」
「あ、あ、あの、」
「用事って言ったのは、こういうことだったんだな。」
「え? こういうことって?」
や、やめろ俺、なに言ってんだ。
き、きっと今日も生徒会の用事がなんかで。
くそ、なにがこういうことってだ!
なに惚けてやがる。
いや生徒会だって。
おいやめろ、もう喋るなって。
「な、なに惚けてんだ。
お前の用事って言うのは、稲村との、デ、デ、デート!
デートだったんだろ。」
「え、ち、違うよ、デートって。
ほら文化祭の前にサイゼの前であったじゃん。
あの時、文化祭の準備の帰りに晩ご飯食べよってなったんだけど、
とうちゃん待たせてたから。
そんで今度食べに行こうってことになって、それで、それで 」
「晩ご飯食べただけなのか!」
「あ、い、いや、その、え、映画に。」
「映画。
お前、それって完全にデートっていうんだよ。」
「・・・ご、ごめんなさい。」
「それに、お前夏休みの時に、俺との映画の約束破って刈宿と海行ってたよな。
俺とは映画行けないのに、稲村とはいくのか。」
「で、でもあん時は 」
な、なに言ってんだ俺。
そ、そんなことまで言うことないだろう。
それにあれは俺が馬鹿なことを言ったのを、あいつが三ヶ木が聞いていたから。
川越も言ってただろうが。
”イライライラ”
お、俺何言ってんだ。
違う、そんなこと言いたいんじゃない。
他にも言うことあるだろうが、べ、勉強のこととか。
だ、だけど、なんかなんか変なんだ。
き、気持ちが収まらない。
「はん! お前、誘われたら誰とでもどこにでも行くんだろ!」
「ち、違う。
そんなんじゃない。」
や、やめろ。
もうそれ以上言うな。
何でこの口が止まらないんだ。
なんでそんなに必死になって三ヶ木を傷つけることばっかり。
「どうだか。
この、し、尻軽女!」
「な、なにさ、自分だって!
今日会えないかなって電話したら、急用ができたって言ったじゃん!
急用って、ゆきのんとデートだったんだ。
ふ~ん、デートしてたんだ!
自分だって、自分だって!」
「馬鹿、雪ノ下とはそんな 」
「そんなって何よ!」
”ちら”
な、何でそんな悲しい目で見てるんだ雪ノ下。
くそ、こいつと、三ヶ木とこんなところで会わなければ。
え? や、やめろ。
それは言うな!
「うっさい、この馬鹿女が。
そんなデートなんかしてる暇があったら、受験勉強してろって言うんだ。
この尻軽、ビッチ女!」
「ううううううう、うわ~ん、ビ、ビッチじゃないもん。
わたしは、わたしは、ずっとずっと・・・ずっと!
ひ、比企谷君にとってわたしってなんなのさ!
ど、どうせ、彼女とかじゃないくせに!
それなのに、なんでそんなことまで言われないといけないのさ!
ば、馬鹿、阿保、間抜け、えっと、えっと・・・・このロリ八!
あんたなんか大嫌い!
うわ~ん。」
”ダ―”
な、なんだロリ八って!
俺はロリじゃねえ。
俺はお前のこと心配して・・・・
なのに、お前稲村なんかと。
昨日だって、こいつと家に入っていったじゃねえか。
家の中でなにしてたんだ。
く、くそ!
なんだよ俺。
小さいこと気にしないのが男だったんじゃないのか。
「比企谷君、なにしてるの追いかけなさい。
そして謝りなさい。」
「はぁ?
な、何で俺が謝らないといけないんだ。」
「比企谷君!」
「ほら、駅行くぞ。」
”ぐぃ”
「ちょっと待て比企谷!」
「なんだ。」
「比企谷、今度の体育祭、お前1万メートル走に出ろ。」
「はぁ? なに言ってんだお前。」
「俺も1万メートル走に出る。
俺と勝負しろ。
俺が負けたら、俺は三ヶ木のことをきっぱりあきらめる。
生徒会終わったら、二度と近寄らない。
俺が勝ったら、お前はもう二度と三ヶ木の前に現れるな!」
「はぁ? さっぱり意味が分からないだが。
それにまだ色分けさえ決まってないだろうが。」
「1万メートル走は各色から2名でる。
たとえ同じ色になったとしても大丈夫だ。
それに1万メートル走は毎年誰も出たがらないからな。」
「断る。
なんでそんなことしないといけないんだ。」
「理由か。
お前は俺の掛け替えのない人を侮辱した。
これ以上の理由があるか。
本当は今ここでぶん殴ってやりたい、死ぬほどにな!
だがそれじゃ俺の気が済まない。
勝負しろ。
俺がお前より三ヶ木のことを想っているってことを、
お前にわからせてやる。」
「・・・・・断る。」
「やっぱりな、お前の三ヶ木に対する気持ちなんてレプリカじゃねえか。
だから昨日もあいつの相談の意味がわからなかったんだろ。
このレプリカ野郎が。」
「な、なんだと!」
「勝負、するんだな。」
「ち、勝手にしろ。」
「選手に登録しておく。
逃げたらお前の負けだ、もう絶対に三ヶ木に近づくな!
雪ノ下さん、君が証人だ。
いいな、比企谷。」
”スタスタ、ピタ”
「じゃあな比企谷。
俺は絶対お前を許さない。」
”スタスタスタ”
「雪ノ下、さっきの依頼は取り下げさせてくれ。
この件を三ヶ木には言わないで欲しい。
これが俺の依頼だ。」
「比企谷君。 」
「すまない、俺帰るわ。」
なんだこの気持ち、滅茶苦茶気持ち悪い。
・・・・・・・・くそ! 最低だな、俺。
最後までありがとうございます。
二人の休日のはずがこんなことに。
次回より嵐の体育祭編。
さて、三ヶ木への想いをかけたこの勝負。
勝つのは。
また次話読んでいただけたらありがたいです。
ではでは。