似て非なるもの 作:裏方さん
えっと、8月8日、祝八幡誕生日!
こんな面白い作品を生み出して頂き、渡航先生に感謝っす。
そ、それとそんな記念日の忙しい中、お時間いただき感謝です。
(きっと今日はいっぱい投稿されるんだろうな~)
今話より体育祭です。
あ、ごめんなさい。
八幡と稲村の1万m走は、じ、次話で。
(す、すみません。今話では書ききれなかったす。)
で、ではよろしくお願いします。
ひ、羊が一億一匹、羊が・・・・・
ぐぐぐ。
だ、だめだ、眠れん。
ずっと目を閉じて羊の数を数えているんだが、とうとう羊が一億匹を
超えてしまった。
頭の中にはものすごい数の羊の群れが。
でも眠れない、眠れないんだ。
く、くそ、ひ、羊が一億二匹。
「メェ~」
え、あ、君違うから。
君ヤギだから。
数えているのは羊だから。
・・・・・はぁ~、なにやってんだ俺。
水、水でも飲んでくるか。
”ガチャ”
ふぅ、何であんなこと言ってしまったんだろうな。
ビッチ女か・・・・・本当最低だ。
”スタ、スタ、スタ”
あいつが稲村といるところを見て。
昨日、あいつが稲村と家に入っていくのが思い浮かんで。
そうしたら、一瞬、中学のころの記憶が蘇って。
はぁ~やっぱりこいつもなんだってそんな思いが頭をよぎって。
俺なんかが本当に好かれているわけがない、こいつもやっぱりなにか裏が
あるんじゃないかって。
・・・・・やっぱり裏切られた。
そう思ったら、もうなにがなんだかわからなくなって。
あいつにあんな酷いことを。
本当は、俺は、俺が・・・・・・・裏切ったんだ。
あいつを信じることができなかったんだ。
そんな俺があいつのそばにいていいはずがない。
「ふぅ~」
”キュッ、ジャー”
雪ノ下はそんな俺と三ヶ木のやり取りを”本物”と言った。
そんなわけないだろう。
『すまん、俺帰るわ。』
『待ちなさい。
比企谷君、あなたどうするつもり?』
『あんなの稲村が勝手に言ってるだけだろうが。
そんなのに付き合う必要はない。
疲れるし、苦しいし、面倒だし、断固断る。
そ、それにだな、え、えっと・・・
そうだ、雪ノ下、お前勘違いいしているぞ。
俺と三ヶ木はお前が思っているような関係じゃない。
た、ただの友達だったんだ、さっきまでな。
だ、だから・・・・・俺には走る理由がない。』
『比企谷君。
今の言葉は本物なのかしら?
私には、私にはさっきの三ヶ木さんとのやり取りのほうが、
・・・本物に思えたのだけど。』
雪ノ下お前は間違っている。
あんなもの、あんな何の理性の欠片もない、ただの感情のぶつけ合いが
本物のわけがない。
あれが本物だとしたら・・・・・・すげぇ気持ち悪い。
くそ!
”キュッ、ポタ、ポタ”
『あんたなんか大嫌い!
うわ~ん。』
俺も嫌いだ
三ヶ木の泣き顔すごく嫌いだ、世界でいや宇宙で一番嫌いだ。
あの顔みると、なんかものすごく哀しくなっていたたまれなくなって。
だから、もう二度と見たくない。
”ゴクゴク”
「ふぅ~。」
だったらどうすればいい。
どうすれば、あの泣き顔見なくてすむ。
やっぱり稲村が言う通り、三ヶ木は俺といるといつも辛い思いをさせてしまう
のだとしたら、いつも泣かせてしまうのだとしたら、
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・やっぱり俺には走る理由なんてない。
だが、それでいいのか、本当にいいのか俺。
『比企谷・・・・・・失ってしまったものは簡単には戻らないんだ。
本当に大事だと思うのなら、それを失わない為の努力をするべきだ。』
・・・・・葉山。
本物の関係ってなんなんだ。
雪ノ下が言ってたようにあれが本物なのか?
だとしたら俺は・・・・・くそ、頭ん中がぐちゃぐちゃしていて考えが
まとまらねぇ。
”ガチャ”
「ん? お兄ちゃんまだ寝てなかったの?」
「あ、ああ。
ちょっと喉が渇いてな。」
「ふ~ん。」
”スタスタスタ”
「ふあ~あ、小町もなにか飲もうかなぁ。」
”ガチャ”
「あちゃ~マッ缶しかないよこの冷蔵庫。
仕方ないなぁ~
マッ缶と、えっと牛乳、牛乳、たしか少しだけ残っていたはずなんだけど。
おっ、あった。
どれどれ。」
”トクトクトク”
な、なんてことするんだこいつは!
神聖なマッ缶に、ぎゅ、牛乳を混ぜるだとー
い、いくら世界最強の妹だとしても断じて許せん。
「こ、小町さん、なにしてるのかな~」
「ん? マッ缶と牛乳混ぜてるんだよ。」
”ゴクゴク”
「ふ~、やっぱりこっちのほうが美味しい。」
「こ、小町それは邪道だ。
マ、マッ缶を冒涜している。」
「ん? だけどまろやかになって、とっても美味しいよ。
ほら。」
え、く、くれるの?
の、飲んでもいいのか。
”ゴク”
「う、美味い。」
おお、なんかすごく美味しい。
こ、これは牛乳によるものなのか、い、いや断じて違う!
これは、小町エキスによるものだ。
うむ、間違いない。
”ゴクゴク”
「ふぁー、美味しかった。」
「ん。」
「え、な、なに小町さん、その手は。」
「一万円。」
「な、か、金取るのか!」
「当たり前じゃん。
可愛い小町との間接キッスを堪能できたんだよ。
それぐらい安いものだよ。」
「ぐ、た、確かに。
だ、だが一万円は 」
「仕方ないな~、出世払いにしておいてあげる。
ちゃんと100倍にして返してね。
あ、今の小町的にポイント高い。」
「・・・」
・・・・・100倍返しって、一杯100万円かよ。
この娘、怖い。
「で、雪乃さんとなにかあったの?」
「い、いや、雪ノ下とはなにもない。」
”ポンポン”
え、なにこの娘
ソファを”ポンポン”って、ここに座れってことか?
は、座ったらなんか料金取られない?
可愛い小町の横に座れただけでもって。
「い、いくらだ、小町。」
「100万円。」
や、やっぱりか。
またしても100万円。
お兄ちゃんもう破産しちゃいそうなんだが。
「今日は特別タダにしてあげる。
ほら座って。」
「お、おう。」
「お兄ちゃん、今日は雪乃さんとずっと一緒じゃなかったの?」
「まぁそうだったんだが、いろいろあってな。」
「それで、こんなに遅くまで一人でなにグチャグチヤしてたの?
いいから小町に言ってみそ。」
「い、いやいい。
これは俺の問題だ。」
「お兄ちゃん。
小町はなにがあってもお兄ちゃんの味方だよ。
だから言ってみ。
さっ、ささっ。」
「こ、小町~
お、お兄ちゃんも、小町さえいれば世界中を敵にまわしても平気だぞ。」
「小町はヤダよ。」
「・・・・・あれ?」
「だって、世界中の人が敵になるってことは、間違いなくお兄ちゃんが
悪いんじゃん。」
「そ、そだな。」
「で、どうしたの?
世界中の人が敵になるようなことしたの?」
「あ、あのな小町。」
・
・
・
「うわ~何やってんだこの人、最低だ。
お兄ちゃん、本日ただいまをもって兄妹の縁を切らせてもらうから。」
「こ、小町!」
「お兄ちゃん、これまで大変お世話しました。」
”ペコ”
「あ、お世話なりました。」
”ペコ”
「じゃない!
こ、小町、お兄ちゃんを見捨てないで。」
「まったく、何でそんなこと言ったの!」
「頭の中ではそんなこと言っちゃいけないってわかっていたのに。
なにがなんだかわからなくなっちまって。
俺、何であんなこと言ったんだ。
まさか、何かの病気なんじゃないのか。
ほら、考えていることと違うことを言ってしまう病気。
きっとそうだ、そうなんだ。
なんかこう胸の奥のほうがイリイリってしてるし。
は、もしかして不治の病なんじゃ。」
「・・・お兄ちゃん。」
「はい。」
「兎に角、謝りなさい。」
「・・・・・」
「まったく、たかが映画と食事行ったぐらいなのに。
なにやきもち妬いてるの!
そんなの友達とだったら普通だよ、ふ・つ・う! 」
「ば、馬鹿小町。
俺がやきもちなんか妬くはずがない。」
「あのさ、滅茶苦茶やきもちじゃん。
それを世間一般ではやきもちって言うの。
間違いなくお兄ちゃんが悪いんだよ。
それなのに、美佳さんはちゃんと謝ってくれたんでしょ。」
「あ、ああ。」
「で、お兄ちゃんは謝ったの?」
「い、いや。」
「はぁ~
全く自分のことは棚に上げて。
小町、本当に美佳さんが不憫で不憫で、オヨヨ。
いいから、いますぐ謝りなさい!」
「い、今すぐ謝らないといけないのか。
こ、こんな時間に電話はまずいだろ。」
「お兄ちゃん。」
”ジー”
はっ、な、なにその目。
そのあきれ果てた目はやめて。
小町にそんな目されるとお兄ちゃん耐えられない。
「兄妹の縁。」
「わ、わかった、今から行ってくる。
三ヶ木の家行って謝ってくる。」
「いや、それマジ迷惑だから。
ラインしておくの。」
「ライン・・・・・め、メールでもいいか?」
「どっちでもいいから。」
「な、なんてメールすればいいんだ?」
「そんなの自分で考えて!
小町、もう寝るけど、ちゃんとメールして謝っておくんだよ。
わかった!」
「あ、ああ。
そ、そうだな、小町がいう通り俺が悪いんだと思う。
すまない小町。」
「小町はいつもお兄ちゃんの味方だよ。
あ、今の小町的にポイント高い!」
「・・・・・そ、そだな。」
・
・
・
ごめんなさい・・・・自分の罪を認めて相手に許しを請うこと。
すみません・・・・いくら謝っても謝り切れないこと。
申し訳ない・・・・弁解の余地がないこと。
ふむ、どの言葉で謝るのが正解なんだ。
なにかどれもちょっと違うような気がするんだが。
いっそ三つ全部使って。
いや待てよ他にも言葉が。
・
・
・
”トントントン”
「ふぁ~あ。」
”ガチャ”
「え! お、お兄ちゃん。
まだ起きてたの?」
「こ、小町、この場合だな、ごめんなさいがいいのか、すみませんがいいのか、
それとも申し訳ないがいいのかどれがいいと思う?」
「はぁ? お兄ちゃんまさか朝までそれずっと悩んでたの?」
「あ、ああ。」
「お兄ちゃん、国語学年3位なんでしょ。
まったくもう。
ほらもうこの時間なら電話のほうがいいよ。
まったく、こんなのは少しでもはやく謝ったほうがいいのに。」
「い、いや、だがもし電話出てくれなかったら。
ほ、ほら、着信の時、誰からかわかるじゃねえか。
も、もし俺ってわかったら電話出てくれないんじゃないか。
た、たしか以前、俺着信拒否されていたし。
そ、そうだ小町、お前から電話して謝っておいてくれ。」
「・・・最低だこの男。
ほれちょっとスマホかして。」
「ん? ああ。」
”カシャカシャ”
「お、おい、俺のスマホでなにしてるんだ?」
「お兄ちゃん、美佳さんなら大丈夫だよ。
きっとお兄ちゃんからの電話待ってるよ。
もしかして徹夜でスマホ握りしめて待ってたかも。」
「な、何でそんなことわかるんだ。」
「そんなのわかるよ。
美佳さん、お兄ちゃんのこと大好きなんだもん。」
「・・・・・」
「はい、もしもし?」
「はい、お兄ちゃん、あとよろしく。
じゃあね~」
”タッタッタッ”
「お、おい、小町。」
げ、本当に行っちまいやがった。
ど、どうするんだ。
な、なんていえばいいんだ?
そ、そうだ、まずはお早うからだよな。
で、電話出てくれたってことは挨拶ぐらいはしてくれるんじゃねえか。
「あの~、もしもし?」
「あ、あ、お、お、俺だが。」
「俺? 俺じゃわからないよ。
もしかして詐欺?」
「え? あ、あの比企谷だが。」
「比企谷って?」
「え? あ、あの、同じ学校の 」
「比企谷、比企谷、あっ!」
なにこれやっと思い出してくれたの。
忘れたくなるぐらい俺のこと怒ってたの。
「比企谷君、お早う。」
「あ、お、お早う。
あ、あのな。」
「なにかなぁ~比企谷君。」
え? あれ?
なんかいつもと違う気が。
少し声の感じも落ち着いてないか?
若さがないというか。
えっとスマホの画面は確かに三ヶ木って表示されている。
間違いなく三ヶ木のはずなんだが。
「ね、ね、比企谷君、比企谷君ってわたしのこと好き?」
「は?」
な、なにを言い出すんだいきなり!
あ、あんまり怒りすぎて頭おかしくなったのか?
いや待て、そうだ!
あいつはいつも電話した時や電話してきた時は決まって・・・
「だ・か・ら、わたしのこと好き?」
「・・・・・あんた誰だ!」
「え~、美佳だよ。」
「ちが~う、三ヶ木はそんなんじゃない。
あいつはいつも電話の時はだな、もっと馬鹿っぽく『三ヶ木だよ♡』って
いうんだ!
お前は誰だ!」
「げ、バレた?
ふふふふふ、三ヶ木は預かった。
返してほしければ、君の好きな人の名前を言うんだ。」
「い、いや、もういいから
あんた誰?」
「もう、ノリが悪いな~
私は美佳のおば・・・・お姉さん。」
「え、三ヶ木にお姉さんいたんですか?
てっきり亡くなられた妹さんだけかと。」
「話せば長くなるんだよ
聞きたい?」
「あ、それいいです。
そ、それより美佳さんはいらっしゃいませんか?」
「ちっ。
美佳はさっき学校に行ったけど。」
「え? でも今日は振替休日じゃ。」
「さぁ?
あっ、スマホ忘れるくらい慌ててたから、もしかしたら学校デートかなぁ~
なんていったっけ、ほら、稲何とか君と。
私もよくやったなぁ~、誰もいない教室に二人っきりで、うふふふ。 」
「し、失礼します。」
「あはは、冗談だよ。
でもなんか用事あるって学校に行ったのは本当だよ。
ね、それよりちょっとだけいいかなぁ。」
・
・
・
”シャー”
「はぁ、はぁ、はぁ。」
くそ、いつも自転車で通ってるのに、今日は何でこんなにペダルが重たいんだ。
本当に体なまってる。
しかし、お前何で学校にいるんだ、なにしてるんだ。
学校デート、そんなことないよな。
だがスマホ忘れるぐらい慌てる用事って、生徒会でなにかやってるのか。
生徒会・・・・・稲村もいるんだよな。
なんだこの嫌な感じ、また胸の奥が痛くなってきやがった。
くそ!
・
・
・
”シャー”
『今朝、あの子の瞼、すごく腫れていたんだけど、
君、なにかしらない?』
『え、あ、あの、そ、それは 』
『あれってさ、あの子一晩中泣いてたね。
わたしね、昔同じ経験あるからわかる。
女の子があんなに瞼腫らすのって、君が原因だね。』
『あ、あの 』
『今回はあんまり聞かないでおいてあげる。
でもね、一つだけ教えてくれるかなぁ。
あんな子だけど、わたしにとってはとってもかわいい姪っ子なの。
あの子を泣かす奴は許さない。
だから・・・・・
君はどうしたいと思ってるの?
うううん、どうありたいと思っているの?』
『・・・・』
俺は、あの人の問いに答えられなかった。
俺はどうしたい、どうなりたいと願うんだ。
・・・・・えっ、姪っ子? 確か姪っ子って言ったよね。
・
・
・
”キキキッ”
総武高。
ふぅ、やっと着いた。
ここに三ヶ木がいるんだ。
だけど会ってどうするつもりだ。
もしかしたら本当に稲村と一緒にいるかもしれない。
一緒に・・・・・か。
そうだったらちょっと辛いな。
辛い? 辛いのか俺。
だけど、いやだからこそ、俺は行かないといけない。
俺はどうしたいのか、答えはそこにあると思う。
だから探しに行くんだあいつを。
・
・
・
”スタ、スタ、スタ”
しかし我が母校ながら大丈夫か
校舎のカギ壊れてて、割とすんなり入ってこれたんだが。
確か、屋上に出る扉の鍵も壊れてたよな。
「・・・・・」
静かだ。
当たり前か、今日は振り替えの休日だから誰もいないが当然だ。
部活も休みのようだしな。
休日の学校ってこんなに静かなんだな。
”ガクガク”
は~、足がガタガタで、う、うまく歩けねぇ。
これ明日は筋肉痛決定だ。
・
・
・
”スタスタスタ”
ふぅ~、やっとまともに歩けるようになった。
だが、あいつどこにいるんだ。
生徒会室には鍵がかかってたし。
もしかして校舎内にはいないのか。
だとしたらどこに・・・・・
『今朝、あの子の瞼、すごく腫れていたんだけど、
君、なにかしらない?』
はっ! も、もしかして。
い、いやそんなはずはない、ないはずだ。
あってたまるか!
「あ、あの馬鹿!」
”ダ―”
・
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。」
や、やっぱりこの扉、鍵壊れたままだ。
あいつはここから屋上に出れること知ってるはずだ。
”バタン!”
「み、三ヶ木!!」
”キョロキョロ”
い、いねぇ。
屋上、だ、誰も、誰もいないよな。
いない、いない、いない。
ま、まて、もしかしてもう。
”ダー”
いない、いない、いない、いない、いない、いない、む、向こう側!
”ダ―”
いない、いない、いない、いない、こ、こっちにもいない。
い、いない、いねえよ。
よかった、よかったじゃねえか、この馬鹿野郎!
”ヘナヘナヘナ”
く、くそ、安心したら足が。
さすがに屋上まで階段一気に登ったから足が限界だ。
学校まで自転車必死で漕いできたしな。
・・・・・ははは、まったく何してんだ俺。
で、でも、でもな、ぐす、ううううう、よ、よかった、よ゛か゛った゛。
は、な、なんだ俺、泣いてんのかよ。
・
・
・
”スタスタスタ”
はぁ~、でもどこにいるんだあいつ。
これだけ探してもいないっていうことは、もう帰ったのか?
「君、なにしてるのかね。」
「え、あ、いえ、あの 」
「ちょっと来たまえ。」
・
「いや~、度々お騒がせしてすみません。」
「いえ、仕事ですから。
あ、お帰りになられる時は、ひと声お願いします。」
「はい。
お仕事、ご苦労様です。」
”スタスタスタ”
「まったく。」
「すみませんっす。」
「で、君も何か用事があったのかね。」
「あ、あの・・・・・・え、君もって?」
・
・
・
い、いた。
体育館倉庫、平塚先生の言う通りあいつはここにいた。
「ん~と、これは大丈夫だ。
得点板問題なし、OKっと。」
で、何やってんだあいつ。
何かチェックしてるのか?
「うんと、あ、これチバセンのコスか。
大丈夫だね、でも今年もこれやるのかなぁ。」
”ガサガサ”
「玉入れの玉、あちゃ~綻びてるじゃん。
しゃ~ない、これ持って帰って修繕しようっと。」
はは、はははは。
そっか、体育祭で使う備品、確認しているのか。
学校デートとかじゃなかったんだ。
本当にご苦労なこった。
文化祭終わったばっかりだっていうのに体育祭か。
しゃ~ない、ミルクティーでも買ってきてやるか。
・
”スタスタスタ”
おう、お疲れさん!
ミルクティ―飲まないか?
ってこんな感じでいいよな、自然だよな。
「スー、ハー、スー、ハー」
よ、よし!
”ガタガタ”
ん、まだ備品の確認やってたのか。
「なつかしいなぁ、入場門。
去年、比企谷君と一緒に作ったんだ。」
ん? えっと~そうだったっけ?
確か暑いなか由比ヶ浜に無理矢理手伝わされたのは覚えているんだが。
三ヶ木いたっけ?
「へへ、わたしが暑くてへばりそうになった時、比企谷君助けてくれたんだ。
嬉しかったなぁ~」
あ、思い出した。
あの時の生徒会の役員って、あれ三ヶ木だ。。
まぁ、文化祭の件もあったし、生徒会で一番話しかけやすかったからな。
「うん、入場門も大丈夫そうだ。」
”ツー”
「あ、あれ? お、おっかしいなぁ。
また涙でてくるの?
昨日あんだけ泣いたのに、まだ涙って出るんだ。
こんなんじゃ、いまに体中の水分全部なくなってミイラになっちゃうよ。
で、でも・・・・・・ぐす、涙とまらない。」
み、三ヶ木。
あ、そ、そうだハンカチ、ハンカチは
「やり直したい。
あの頃に戻ってやり直したい。
それで、ちゃんとわたしの気持ち伝えたい。
月が綺麗とか茶化してでなく、ちゃんと比企谷君の目を見てわたしの本物の
気持ちを伝えたい。
・・・・比企谷君、好き。」
”ガタ”
「へ?」
「あっ 」
「・・・・・あ゛ー!!
な、なんで、こ、こ、こ、ここにいるのよ!」
「いや、ちょっと 」
”グラッ”
「あ、あぶねぇ。」
「え?」
”ガッターン!”
「きゃぁ!
・・・・・え? あれ? い、痛くない?
でもなんか身体にかぶさってて重たいんだけど?
えっと眼鏡眼鏡。」
「ほら眼鏡。」
「あ、ありが・・・・
あ、あ゛ー!」
「よ、よぉ。」
げ、ちょっとやばい。
つい飛び出したけど、これって、この状態ってまずいよな。
入場門が重たいのもあるけど、そんなことより俺いま完全に三ヶ木の上に
覆い被さってる。
これちょっと見たら、俺が三ヶ木押し倒しているように見えなくない?
三ヶ木の顔、すごく近くて、ほ、ほら三ヶ木の吐く息が感じられて。
あ、あの時みたいに。
あの時はこいつこのまま目覚まさないじゃないかって、全く余裕なかったけど今は。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・こいつ、こんな顔してたんだ。
瞳、本当にきれいな茶色で、こうやってずっと見つめられると・・・・・
あの、その、い、いや、そんなに見つめないで。
なんかほんとやばいから。
あっ、瞼ぽってり腫れてる。
やっぱりこいつ昨日の夜はずっと・・・
鼻、ちょっと小さめで丸っこくて可愛くて。
こいつの顔の中で一番好きかもしれない。
あっ、ちょっと眼鏡の跡ついてんだ。
たしかシリコン製のやわらかいパッドがいいって聞いたことがある。
今度プレゼントしようか・・・でも、もらってくれるだろうか。
唇、なんかプルンって感じで、とても柔らかそうで艶があって。
これって天ぷら食べた後じゃないよな。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・キスしてぇ。
は、な、なに言ってんだ俺。
ばっかじゃないの。
こんなこと言ってる場合じゃないんだ。
もし今誰か来たら。
「比企谷君?」
「け、怪我してないか?」
「あ、う、うん。
ひ、比企谷君のほうこそ大丈夫?」
「ああ。」
「あの! 昨日はごめんなさい。」
「いや、昨日は俺が悪かったんだ。
全面的に俺が悪い。
今日、謝りたくて。」
「で、でもわたしが悪くて 」
「い、いや、違うんだ。
俺、何であんなこと言ったのかわからないんだ。
なんか頭の中がわけわからなくなって。
自分で何を言ってるのかわからなくなって。
本当にすまない。」
「うううん。
わたしの方こそごめんなさい。
ロ、ロリ八だなんて。」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・あ、す、すまん。
い、いま入場門どかしてからどくから。」
”ぎゅっ”
「お、おい三ヶ木、なんで抱き着いて 」
「もうちょっとだけこのままで・・・いてください。
お願い。」
「え?
あ、ああ。」
はぁ~、なんかいい匂い。
女子って何でこんなにいい匂いするんだ。
これってシャンプーとか石鹸の匂いなんだろうか?
はっ、や、やばい。
この抱き着かれた状態だと、俺の何が何になってて・・・ちょっとやばいんだが。
「み、三ヶ木、あ、あの 」
「へへへ、去年の文化祭の時のこと思い出しちゃった。
後片付けの時、あの時もこんな感じでわたしを助けてくれた。」
「・・・・・そ、そうだったか。」
い、いや、そ、そんなことより、今の俺は非常事態なんだ。
その俺の何が何の状態で、すごく元気よくて。
このまま抱き着かれてると、さすがに三ヶ木に気付かれて。
も、もし気付かれたら微妙な雰囲気になって、こ、こいつのことだ、
もしかしたらもしかしちゃって。
な、なに、俺たちの初体験は体育館倉庫って、この前読んでた小説と同じ
シチュエーション?。
この場合、あの小説と違ってすでに抱き着かれている状態であって・・・・・
これ、肩揉むぐらいじゃすまないよね。
ま、まずい、まずい、まずい、これマズイわ~、ど、どうすっぺ。
いやなんで戸部? 戸部はいいから。
何とかまずは気持ちを落ち着かせないと。
えっと、あ、そ、そうだ!
ひ、ひつまぶしが、ち、違う!
羊が1億二匹、羊が一億三匹、羊が一億・・・・・
「・・・・・あ、あのね比企谷君。」
「・・・・・」
「あ、あのさ・・・・・
わ、た、わたしね、あの文化祭の時からあなたに恋しました。
あれからわたしには比企谷君しか見えない。」
「・・・・・」
「ちゃんと言うから聞いてね。
わたし・・・・・わたしは比企谷君が好きです。
比企谷君のことが好き、好き、好き、大好き。
今までも大好きでした。
そんで、これからもずっとずっと比企谷君のことがだいす 」
「ぐぅ~」
「へ?」
「ぐぅ~、ぐぅ~。」
「って、おい!
お前寝てるのかい!
こんな状況で寝てるのかい!
人の上に覆い被さった状態で寝れるのかい!
林間学校の時といい、よくこんな状況で 」
「ぐぅ~、ぐぅ~」
「いや、ぐぅ~じゃないから。
この、ば、馬鹿!
ちゃんと伝えたくて、持ってる勇気、全部振り絞って、
最後の一滴まで絞り切って告ったのに!
もう!
げ、寝やがったからめっちゃ重たくなってきた。
お、おい、起きろ!」
「ぐぁ~」
「げ、ほんとマジ寝てる。
重い、重い、重いって。
ど、どいてくれ~
あ、でも、もう少しこのままでもいたいかも。
い、いや、でも重たい! もう限界。
で、でももう少し・・・・・・
やっぱり重た~い!
だ、誰か、だずげで~」
ーーーーーーーー
「よしっと印刷スタート♡」
“ガ~、ガ~”
「るんるんるん♬
へへ、えへへへ、うふふふ。」
”つんつん”
「稲村先輩。」
「え? あ、会長なにか?」
「稲村先輩、あれどうしたんですか?」
「あれって?」
「あのプリンターのとこにいる超ご機嫌さん。」
「プリンター? あ、三ヶ木のことですか?
あ、い、いや、俺にもちょっとわからなくて。
てっきり落ち込んでるのかと思ったけど。」
「え?」
「あ、い、いや何でも。」
”ガ~、ガ~”
「よし、打ち出し完了。
かいちょ~
体育祭の資料、準備出来ました。」
「え、あ、はいはい。
そ、それじゃ、体育祭運営委員会の対策会議始めましょう。」
・
・
・
「ということで、去年片付ける時、カバーとかラップとか結構気をつけて片付け
ましたから、大抵のものはそのままでもいけそうです。
た、た、ただ・・・・・あの~、にゅ、入場門だけはなんか倒れてたみたいで。
な、なんでかなぁ~。
ちょっと補修が必要です。」
「そうですか。
でもなんで美佳先輩、顔赤らめてるんですか?」
「え、うそ!
い、いやなんでもないです。」
「ふ~ん、まぁどうでもいいですけど。
それじゃ、来週からの体育祭運営委員会は、企画進行の関係は副会長と
書記ちゃん。
製作物関係は稲村先輩と美佳先輩が担当ということでお願いしますね。」
「「はい。」」
「あ、会長、あと運営委員長の選出の件が。」
「あ、それなんですよ~
誰かいい人いません?」
「・・・・・」
「えっとそれじゃ、明日はお休みにして、明後日までに一度検討してみて下さい。
あ、蒔田はダメですよ!
絶対ダメです!
いいですか! 蒔田はダメ! 」
「「・・・・・」」
「わかりました?」
「「あ、はい。」」
「ね、ねね、書記ちゃん、会長どうしたの?
なんか舞ちゃんとあったの?」
「あ、ほら、蒔田さん文化祭の件があって人気上がってるから、
それでいろはちゃんちょっとナーバスに。」
「あ、ああ、そうなんだ。」
「ふ~。
あ、あと、それとですね、副会長、書記ちゃん、稲村先輩、見習いさん、
この生徒会にとって体育祭は最後の大きな行事です。
だからあの、あのですね・・・・・・・・思いっきり、みんなで楽しみましょう。
ではよろしくです。えへ♡」
「「は、はい!」」
「お、おい、わたしは名前じゃないのかよ。」
・
・
・
”チラ”
そろそろいい時間か。
今日も誰も依頼に来ないしな。
俺にはやらないといけないことがある。
「ヒッキー、さっきから時計ばっかり見てるね。
何か用事?」
「え、あ、ああ。
雪ノ下、すまん今日先帰っていいか?」
「あら、何か用事があるのかしら?」
「あ、おれ今日、家まで走って帰るつもりなんだ。
だから少し早めに帰りたい。
まぁ、ほら俺1万メートル走に出ないといけないから。」
「え?」
「あ、いや、1万メートル走に出るから。
だからちゃんと練習しないとな。」
「そ、そう。
・・・・・比企谷君、あなた走る理由が見つかったということかしら。」
「ああ。」
走る理由っか。
仕方ねえだろう、あいつにああまで言われちまったんだ。
走るしかねえ。
『わたし・・・・・わたしは比企谷君が好きです。
比企谷君のことが好き、好き、好き、大好き。
今までも大好きでした。
そんで、これからもずっとずっと比企谷君のことがだいす 』
答えはみつかったんだ。
俺はどうしたい?
俺は・・・あいつを守りたい。
だからこの1万メートル走、絶対に負けるわけにはいかない。
まして逃げ出すことなんかできない。
だったら俺は、
「だから、ちゃんと練習したいんだ。」
「・・・・・わ、わかったわ。
それじゃ今日はもう終わりましょう。
私も今日は姉さんから食事に誘われていたから。」
「え、ヒッキーマジで走って帰るの?
でも自転車どうするの?
今日の朝も自転車だったよね。」
「まぁ、おいて帰るわ。
明日朝はちょっと早起きして電車で来る。」
「あ、じゃあ、あたしが自転車で後ろからついて行ってあげる。
ほらよくマンガなんかに出てくるじゃん。
それにさ、朝ちょっと早くって大変じゃん。
あ、ち、違うよ。
ヒッキーがじゃなくて、早めに朝食の準備しないといけない小町ちゃんがだよ。」
「小町・・・そうだな。
すまん頼むわ。」
「うん。
ゆきのん、あとお願いしてもいい?」
「由比ヶ浜さん、あなた・・・・・
いいわ、カギは返しておくから。」
「ありがとうゆきのん。
ほら、ヒッキー行くよ。」
”ガラガラ”
「ね、ゆきのん。
指、もう絆創膏してないんだね。
傷、治ったの?」
「え、ええ。」
「・・・・・そっか。
じゃ、また明日。」
「ええ、明日。」
”スタスタスタ”
「・・・・・・」
”カシャカシャ”
「もしもし、姉さん。
今日、早く帰ってこれるかしら?
少し、話しがしたいのだけれど。」
ーーーーーーーー
「部長さん、運営委員の協力の件、よろしくお願いします。」
「しかし、県予選近いしな。
うち部員少ないから、いま抜けられるときついんだよな。」
「あ、でもそこは、ほらほら来年の部費査定の件もあるから。
よろしくお願いします。」
「ん~、でもなぁ。」
”にぎ”
「部長さん、よろしくお願いします、にこ♡」
「げ、あんたどこから?」
「お、おお、舞ちゃん任せとけ。
生きのいい奴を行かせるから、思いっ切りこき使ってやって。」
「ありがとうございます。」
「あ、あの、舞ちゃん、よかったらアド交換しない?
ほ、ほらいろいろと委員会の件とか連絡したいことが 」
「あ、それじゃ、連絡必要な時はこのアドに。」
「お、おい!
それわたしのアドじゃん。
なにすんだ!」
「え~、いいじゃないですか~」
「よ、よくない!
ほ、ほら行くよ。」
「あ、じゃあ、部長さんよろしくです。」
「お、おう、舞ちゃん任せておいて。」
”スタスタスタ”
「お、おい! 何が狙いだ!」
「え~、狙いなんかないですよ。
運営委員長候補としてあたりまえじゃないですか~」
「はぁ!
あんたまた委員長やるつもり!」
「そうですよ。」
「なんで!」
「だ、だって・・・・・・・
これが最後の大きなチャンスなんですもん。」
「え?」
「体育祭、生徒会にとって最後の行事じゃないですか。
・・・生徒会だから、稲村先輩相手してくれるんです。
役員だから仕方なく。
生徒会じゃなくなったら、稲村先輩にとってわたしなんか、その他大勢の
生徒の一人で。
・・・わたし、ジミ子先輩と違うから!
だからこれがわたしにとって最後の大チャンスなんです、頑張るんです。」
「生徒会じゃなくなったら・・・・か。」
「だけど、ほら体育祭の運営委員って運動部の人しか入れないじゃないですか。
わたし新聞部だから委員になれない。
だから委員長になるしかないんです。
それで委員長になって稲村先輩と 」
「そっか。」
「そうです。
ということなので、ジミ子先輩、協力よろしくです。
いつもみたいに裏でこそこそ手まわして、わたしを委員長にしてください。」
「・・・・・おい!」
「も、もちろんタダでとは言いませんよ。
はいこれ。」
「え?
あ゛! イレギュラーヘッドの缶バッジ!
し、しかも限定版じゃん。
ど、ど、どうしたのこれ? 」
「ほらほら、いいんですか?
これいらないんですか?」
「で、でも会長がね。」
「え、一色さんがなにか?」
「舞ちゃんだけは委員長ダメって念押しされてるから。」
「ぐ、くそ、あのアマ!
ジミ子せんぱーい、そこを何とか。」
「ん~ 」
「せんぱ~い。」
「あ、そうだ。
舞ちゃん、クラスの後期委員会決めおわった?」
「え? あ、まだですけど。
確か次のLHで決めるって。」
「よし!
ぐふふふ、わたしにいい考えが。
任せなさい。
だからそれ頂戴。」
「ジミ子先輩、ではよろしくです。
ぐふふふふ。」
「しかし蒔田屋、お前もワルよのう。」
「お代官様ほどでも。」
「「ぐふ、ぐふ、ぐふふふふ」」
「・・・・」
「・・・・」
「何やってんだわたし達。」
「ジミ子先輩が悪いんです。
ちょ~恥ずかしかったじゃないですか」
「いや、あんたものってたから。」
「え~、無理矢理あわせただけですよ~
ん? あっ、あれ、ほら学校の外周走ってるのって稲村先輩!」
「え? あ、ほんとだ。」
「稲村先輩って運動部入ってましたっけ?」
「いや、塾があるからって帰宅部だったはずだけど。」
「ですよね。」
ーーーーーーーー
「平塚先生、色分けの名簿、コピー頂いていきます。
ありがとうございました。」
「ああ、ご苦労。」
「それじゃ。」
「ちょっと待ちたまえ。」
「え?」
「ここに座れ。」
「あ、は、はい。」
「君はまじめに大学行く気があるのかね。」
「あ、はい。
進学したいと。」
”ペラ”
「この前の模擬試験の結果だ。
この点数をどう思うのかね。」
「げ、あ、は、はい。
そ、その文化祭とかいろいろと忙しかったもので。」
「まったく。
生徒会や家事も忙しいと思うが、もう少しだな。
・・・ふむ、三ヶ木、君は塾に通う気はないのだな。」
「えっと、さすがに家計的にちょっと。
あ、あの、頑張ります。
か、家事も叔母が手伝ってくれるようになったし。
あ、あの、次の中間テスト、中間テストで巻き返します。」
「そうか。
わかった、もう行っていいぞ。」
「え? あ、はい。」
「あ、そうだ三ヶ木。」
「はい?」
「あんまり学校で如何わしいことはしないようにな。」
「え? あ、は、はい。
ご、ごめんなさいです。」
”ダ―”
「ふ~、まったく・・・・・う、うらやましい!
は、さ、さてと、今日はまだ学校にいるはずだな。」
”カシャカシャ”
「あ、わたしだが,一つ依頼したいことがあるのだが。」
・
・
・
「会長、各色の振り分けもらってきました。」
「あ、美佳先輩、ご苦労さまです。
それじゃ、会議始めますね。
えっと、まずは運営委員長の件ですが、どなたか思い当たる人いらっしゃい
ました?」
「・・・・」
「あ、あの会長、その件なんですが。」
「なんですか美佳先輩?
あ、蒔田はダメですからね!」
「あ、いや去年の運営委員会でのことなんですが 」
「え?」
・
「そ、そうだったんですか。」
「はい、運動部の部員さんって基本お手伝いって感じだから、生徒会側との
温度差が出来ちゃって。
それに地区大会とかをもってこられるとあまり強制はできなくて。」
「そ、そうですか。」
「そこで提案なんですが、是非会長のお力を。」
ーーーーーーーー
”トントントン”
「ふぅ~、ここはこれでよしっと。
三ヶ木入場門の補修できたぞ。」
「あ、うん、稲村君ご苦労さん。
こっちも玉入れの玉の修繕終わったよ。」
「飾りつけとかはまだいいんだな?」
「それは委員会のみんなでやろうと思って。」
「そうか。
じゃあ後片付けして引き上げるか。」
「うん。
あっ!」
「ん、どうした?
あ、あいつ!」
”タッタッタッ”
「ヒッキー、本当に1万メートル走にでるんだ?」
「はぁ、はぁ、あ、ああ。」
”タッタッタッ”
「でもまだ色分けとか教えてもらってないじゃん。」
「はぁ、はぁ、はぁ、まぁな。
だが、あれ一番人気のない種目だろ。
なんか知らないうちにグラウンドを出発して、みんなが盛り上がってる中で、
なんかすまなそうに戻ってくるんだろ。
疲れるだけだし、あんなもの誰も出たい奴いないだろう。」
「そ、そだね。
で、でもヒッキーその種目に出るんだ。」
「・・・・・お、おう。」
「それよりさ、あっ!」
”ドン”
「ぐはぁ!」
「ほ、ほらちゃんと走らないと轢いちゃうぞって。」
「お、お前、轢いてから言うんじゃない。」
「ご、ごめん、ブレーキ間に合わなかった。」
「いたたた。
まったく、ほら行くぞ。」
「おう、頑張れヒッキー。」
”タッタッタッ”
「み、三ヶ木。」
「あ、大丈夫だよ稲村君。
わたしは全然大丈夫。
さ、片付けちゃおう。」
「な、なぁ。」
「ん? 」
「お前・・・・・・・・・・・
い、いや何でもない。
さ、片付けようぜ。」
「う、うん。」
ーーーーーーーー
「な、なぜだ。」
「うん? さっきからなに言ってるのヒッキー?」
「い、いや、由比ヶ浜、俺いつから体育委員だったんだ。
まったく知らないんだが。」
「この前のLHで後期の委員会決めたじゃん。
ヒッキー寝てたから、あたしが決めておいてあげた。」
「な、なんてことするんだお前は。」
「いいじゃん。
あとさ、体育委員だけだったけどなかなか決まらなかったから。
ほら、駄々こねてないで、体育祭運営委員会いくよ。」
そこなんだ。
去年は体育祭に体育委員会からんでなかったはずだが。
だから戦力がたりなくて。
少なくとも生徒会側の体育委員会がいれば抑えも効いて。
だが、なぜなんだ?
「なぁ、なんで去年は運営委員会に体育委員いなかったんだ?
いればあんなに苦労しなかったんだが。」
「う~ん何でだろう、総武高7不思議の一つだね。」
総武高7不思議。
君は知っているのだろうか。
そのひとつは君が入学できたことなのだが、ここではあえて黙っておいておこう。
「ん? ヒッキーなんか言った。」
「あ。い、いやなんでも。」
「あたしもなんか不思議だったんだけど。
でも今年は体育委員会も一緒にするんだって委員会で決まって。」
「いや、俺知らないが。
委員会っていつあったんだ?」
「委員会だよって言おうと思ったら、ヒッキ―走って行っちゃたし。」
「はぁ~、またなにかやらされるのか
去年散々だったんだが。」
「あははは、そだね。
大変だったね。」
「「はぁ~」」
・
・
・
”ガラガラ”
「あ、せんぱ~い、ご苦労様で~す。」
「お、おう。」
「先輩、体育委員だったんですね。
いろいろよろしくです。」
「こんちで~す。」
「げ、蒔田!」
「あん、なに一色!」
「なに!」
「なによ!」
え、なにこれちょ、ちょっと怖いんだけど。
え、ほ、ほら君たちやめないと後から来る生徒の邪魔だから。
「ちょ、ちょっとどいて~
あ!」
”バサバサバサ”
「か、会長、入り口で立ち話してないでください。
もう、資料散らばっちゃったじゃないですか。」
「だってこの蒔田が 」
「あん! 当たったのあんただろ一色。」
「なに!」
「なによ!」
ま、またはじまった。
こわいよ~、なんかメッチャ怖いこの二人。
何でこの二人こんなに仲悪いの?
文化祭の時、めっちゃ仲良くなかった?
「もう、会長も舞ちゃんもそのぐらいにしておいて。
委員のみんな引いてるじゃん。
ほら、資料拾うの手伝って 」
”ひょい”
「ほら三ヶ木。」
「あ、比企谷君、ありがと。」
「お、おう。」
「ヒッキー、何で赤くなってるし!」
「い、いや赤くなってないだろう。」
「美佳先輩、美佳先輩も顔真っ赤です!」
「い、いや、その 」
「あ、あの~いろはちゃん、中入れないんだけど。」
「あ、ご、ごめん書記ちゃん。」
・
・
・
「ということで、競技につきましては、棒倒しの取りやめとチバセンの一部変更
それと色別対抗リレーの追加が大きな変更点になります。
えっと、何かご質問ありませんか?」
「三ヶ木、去年やった棒倒しは取りやめってことでいいんだな。」
「あ、あの~比企谷君、その~」
”モジモジ”
「な、なにモジモジしてんですか美佳先輩。
えっと、去年、棒倒しでまさかの反則をされた方がいたそうで。
土壇場で結果が覆るという前代未聞の不祥事が発生したそうなんですよ。
それでやむなく取りやめとなりました。
その代わりに男子は色別対抗リレーを行うんです。
ま、定番ぽいですけど。
まったくどこのバカなんでしょうね、そんな反則をしたやつって。
ねっ先輩。」
「あ、そ、そうだな。
だ、誰だそんな不届きなやつは。」
「ヒッキー・・・・」
「あとはよろしかったですか?」
「・・・・・」
「では、今日決めました通り、各担当お願いしますね。
あ、それと各組の団長決めと各種目の選手名の取り纏めも
各色別の体育委員さん主体でお願いしますね。」
「「はい」」
「それでは、体育委員長、締めお願いしますです。」
「え、あ、はい、会長。
あの、体育委員の皆さん、それと各運動部の皆さん。
体育祭まであまり時間ないですが、よろしくお願いします。」
「「はい」」
今年は運動部だけでなく体育委員会まで引っ張り込んだんで、
わりと楽できそうだな。
人数が倍ぐらいに増えてるし、委員会だからモラルも高そうだしな。
どうやら去年のようなことはなさそうだ。
さてっと、今日は仕事ないから帰るか。
えっと三ヶ木は・・・・
「お~い、一色、ちょっと体育祭の件で話があるんだが 」
「げ、あ、厚木。
美佳先輩、一緒に来てください。」
「あ、でも。」
「一人で行ってセクハラされたらどうするんですか。
言い出しっぺは美佳先輩なんだから責任取ってください。
ほらはやく。」
「だって、一緒に行くと思いっ切り嫌な顔すんだもん、厚木。」
「お~い一色。」
「ほ、ほら美佳先輩、はやく行きますよ。」
「ふぇ~い。」
”スタスタスタ”
・・・・・体育委員会の件、なんか裏が見えてきたんだが。
厚木か、あいつが体育委員会の担当だったもんな。
たしか一色を気に入ってるって三ヶ木言ってたから。
はは、思いっ切りいやな顔されてやがる三ヶ木。
”ガタ”
さてっと、それじゃ俺は帰るか。
「ヒッキー、今日も走るの。」
「あ、ああ。」
「そっか。
よし、じゃあ行こ。」
”だき”
「お、おい、腕離せ。」
「えー、いいじゃん。」
・
『いくよ、はい横ピース! 』
『え~、俺もかよ。』
『そうだよ、ほら早く。』
「ふ~、はは、二人して横ピースかよ。
三ヶ木と撮ったプリクラか。
なんかすごく昔のようだな。
・・・・・運営委員会の後、由比ヶ浜さんと帰る比企谷を見てた顔。
やっぱり三ヶ木は比企谷が好きなんだろうな。
だったら、俺何してるんだろ。
もう二度と三ヶ木に会うなっか。
俺がやろうとしてることって、三ヶ木から好きな人を引き離すってことだろ。
それで一番悲しむの三ヶ木じゃないのか。
なんでそんなこと言ったんだ。
俺、嫉妬したのか。
目の前であんな痴話げんか見せつけられて。
俺がああなりたくて。
違う。
俺は三ヶ木を悲しませたくないから、その元凶を取り除きたいだけなんだ。
あいつが三ヶ木の前からいなくなれば、もう三ヶ木は辛い思いをしなくて済む。
あいつがいるから三ヶ木はいつも辛いんだ。
ほんとうにそうか。
比企谷と会えなくなるほうが、三ヶ木にとって辛いんじゃないのか。
だとしたら、
・・・・・・くそ、俺は何のために走るんだ。」
”ひょい”
「へ~、二人でプリクラ撮ってたんですね。」
「え! あ、蒔田。
ば、馬鹿返せ!」
「お、激レア。
稲村先輩が横ピースしてる。」
「いいから返せ!」
”バッ”
「え~いいじゃないですか~
結構楽しそうに写ってましたよ。」
「うるさい。」
「稲村先輩、今日は走らないんですか?」
「・・・・・・・もう走らない。」
「俺、嫉妬したのか。」
「蒔田、お前聞いてたのか!」
「稲村先輩、あんなことは胸の中で言わないと。
口に出してはだめですよ。」
「・・・・・・」
「諦めていいんですか?」
「・・・・仕方ないだろう。」
「仕方ないか。
でもそれってわかってたことじゃないですか。
わかっていても諦めたくなかったんじゃないですか?」
「うるさい。」
「へ~、稲村先輩の想いってそんなもんだったんだ。」
「・・・・・」
「そんな簡単にくずれるものだったんですか?
そんな想いにわたし振られたんだ。」
「・・・・・」
「あなたは誰ですか?」
「え、な、なにいってんだ。」
「わたしの恋焦がれている稲村先輩はそんな人じゃないです。
あんまりがっかりさせないでください。
わたしは、わたしなら諦めませんよ。
例え何回、何十回振られても。」
「蒔田。」
「ほら、立って。
こんなところでグダグダしてるなんて似合わないです。
いつもの稲村先輩に戻ってください。
あ、そうだ!
仕方ないから、今日はこの蒔田が一緒に走ってあげます。
大サービスですよ、大サービス。」
「・・・・・いらない。
一人で走る。」
「え~、なんでですか!
こんなに可愛い女子が一緒に走ってあげるっていうのに。」
「お前、走ってる間もなんかうるさそうだから。」
「し、静かにしてます。」
「・・・・・ありがとうな、蒔田。」
「はい。」
・
・
・
「ぐはぁ~」
「あ、ヒッキーごめん。」
「お前、もっと離れてくれ。
こう何度も轢かれてはかなわん。」
「だって離れたら寂しいじゃん。」
いや、それより何度も自転車で惹かれるこっちの身にもなって。
まったく
ん? あの校門にいるのって。
「なぁ、あれ三浦じゃないか?」
「え? あ、そうだ。
どうしたんだろ。」
「お前、一緒に帰る約束してたんじゃないのか?」
「うううん、しばらく一緒に帰れないって言ってあるから。
でもどうしたんだろ。
お~い、優美子。」
「あ、結衣。」
”スタスタスタ”
「俺、先行ってるわ。」
「あ、ちょっと待ったヒキオ。」
「ぐぇっ。
いや、急に襟、引っ張らないでくれる。」
「ちょ、ちょっと話、あるんだけど。」
「話?」
ーーーーーーーー
「続きまして、選手宣誓。
紅組団長、雪ノ下雪乃さん、 白組団長、三浦優美子さん。」
”タッタッタッ”
「「宣誓、わたし達は総武高精神に恥じぬよう、正々堂々全力で
戦うことを誓います。」」
「紅組団長、雪ノ下雪乃。」
「白組団長、三浦優美子。」
・
・
・
あの日の三浦の話、いやあれは依頼だな。
『勝ちたい』か。
まぁ、理由はどうあれ依頼受けちまったからな。
一応、それなりに選手は決めたつもりだが、こればっかりはやって
みないとわからない。
特に得点の高い、チバセンと色別対抗リレー、これをどうするかだ。
「きゃ~、刈宿君早~い。」
「やっぱりスポーツ万能だね。」
「いいなぁ、わたしも白組になりたかったぁ~」
刈宿か、確かに同じ組でよかった。
葉山に運動能力で勝てるとしたらあいつぐらいだろう。
あと、と、戸塚。
戸塚も同じ白組なんて、やっぱり俺たちは結ばれる運命にあったんだ。
隣で必死に応援している姿。
はぁ~、やっぱり天使だ。
い、癒される。
「1万メートル走の選手の方、集合場所に集まってください。」
げ、いよいよか。
まぁ、いろいろ考えるのは1万メートル終わってからだ。
今打てる手はない。
まずは俺にとって絶対負けられない勝負に集中だ。
行くか。
「あ、八幡、頑張ってね。」
「おう。」
”スタスタスタ”
「比企谷。」
「なんだ稲村。」
「約束、忘れんなよ、俺が勝ったら 」
「わかってる。」
「そ、そうか、ならいい。」
”スタスタスタ”
わかってる、だからこの勝負、絶対に負けられないんだ。
大事だと思うもの、それを失わないために。
お忙しい中、最後までありがとうございます。
次話、秋物語 体育祭編最終話。
二人の勝負の行方は。
秋物語が終わったら冬物語。(季節感全くないっす。)
さぁ、冬支度冬支度。
あ、今日はサイゼっす。
一人で八幡気分満喫してくるっす。
ではでは。
※す、すみません。
関節 → 間接っす。