似て非なるもの   作:裏方さん

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いつもいつも見に来ていただきありがとうございます。
感謝感謝です。

えっと、季節の変わり目で体調崩しやすい時期ですが、お身体に
気をつけてください。
けっして大雨の中、道路に座り込んでびしょぬれにならないように。

さ、さて、今回修学旅行後編です。
それと、冬、ますます厳しく。

ではよろしくお願いします。


修学旅行編 後編  ―寒気―

”ズキッ”

 

ぐぉ~、あ、頭痛た~

うううう、痛いよ~

 

”ゾクゾク”

 

そ、それに、さ、寒気も止まらない。

風邪だ、完璧風邪だね、風邪ひいちまった。

すごい豪雨だったもんな~、雷もなってたし。

それに・・・・・きっと天罰だよね。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

はぁ~アイスノンが気持ちいい。

でもわたしいつの間にアイスノンなんて持ってきたんだろう。

それにパジャマに着替えてるし。

たしか、お風呂が沸くまでにってプリントしてたところまでは

憶えてるんだけど。

ん~、まっいいっか。

 

”ピピッ”

 

ん、どれどれお熱何度あんだ。

げげ、38℃もある。

わたし平熱が35℃ちょいだからめっちゃ熱あるじゃんか。

はぁ~、今日は学校行けないね。

ちゃんと寝てないと。

でもさ、ちょうどよかったかも。

いろんなことがあって、ありすぎて、少しゆっくり考えてみたかったんだ。

これからのこととか。

 

『俺と一緒に行きませんかアメリカに』

 

『返事、今すぐでなくていいっす。

 とっても大事なことっすから。

 俺、冬休みになったら出発します。

 それまでよく考えてください。』

 

『・・・・・もし、もし美佳さんが卒業してからアメリカに来てくれるのなら、

 俺、絶対美佳さんにふさわしい男に、美佳さんの笑顔を守れる男になるっす。』

 

”ぽっ”

 

はっ、な、なに赤くなってんだ。

い、いや、これは風邪、風邪だから。

ほ、ほら、お熱あるから。

 

・・・・・君は今でもわたしなんかにはもったいないくらいのいい男だよ。

誠実で、かっこよくて、スポーツマンで、そんでめっちゃやさしくて。

そ、それにお金持ちだし!

・・・・・ふぅ~、なにいってんだか。

 

でも、アメリカか~

こことは全く別世界なんだろうなぁ。

外人さんがいっぱいなんだろうなぁって当たり前か。

でも、わたしの知らないこといっぱいあるんだろうなぁ。

ちょっと行ってみたい。

は、で、でもわたし英語喋れない。

ジェ、ジェスチャーで、だ、大丈夫だよねおそらく。

 

     ・

     ・

     ・

 

”カチャカチャ”

 

「ふあ~あ。

 なんだ清川氏、こんなに朝早くからパソコンしてるのか?」

 

「おう、お早うさん。

 急がないとマジでコンテストに間に合わねえんだよ。

 ち、また固まりやがったこのパソコン。

 くそ、あの没収されたパソコンがあればこんなプログラムわけねえのに。

 これもあのジミ眼鏡の所為だ!

 え~い、思い出しただけでも腹が立つ。

 それより今から行くのか」

 

「おう、聖地巡礼の旅に行ってくる。

 なぁ、本当に一緒に行かないのか?」

 

「ああ。

 どっか適当なとこでプログラム組んでるわ。

 こっちは気にすんな、しっかり楽しんでこい。」

 

「ではな」

 

「おう。」

 

”スタスタ”

 

「行った、行ったよな。

 さて俺も準備するか。」

 

”ガサガサ”

 

「ふふふ、ふぁはははは!

 昨日はクラス行動だったから、表立った行動は控えてきたが、

 今日はいよいよこの高倍率ビデオカメラの出番だ。

 ううう、高かった、高かったんだ。

 今日この日のために夏休みバイト頑張ったんだ。

 ふへへへ、今日はこれで撮りまくるぞ!

 覚悟しろ! いっ・・・・・・・・・・」

 

「清川氏、なにをぶつぶつと」

 

「お、お前らまだいたのか」

 

「ちょっと忘れ物な。

 ・・・まぁ清川氏、貴殿の健闘を祈る」

 

「お、おう、サ、サンキュ」

 

     ・

     ・

     ・

 

”ガタ、ガタ”

 

「うーん、やっぱ建付け悪いねこの襖。

 お~い美佳、生きてる?」

 

「あ、おばさ・・・・・麻緒さん」

 

「風邪どんな感じ?」

 

「うん、頭痛い。

 それにゾクゾクって」

 

「どれどれ。

 うわ~すごい汗。

 ちょっと待ってな、いま身体拭くタオル持ってくるから」

 

「あ、ありがと」

 

     ・ 

 

「お待たせ。

 ほら身体拭くよ。

 はい、パジャマ脱いで

 ばんざ~い」

 

「ばんざ~い」

 

”プルン”

 

「ん? ほほう~、成長したね。

 生意気な」

 

”もみもみ”

 

「ちょ、な、なにすんだ!」

 

「なにって、かわいい姪っ子の成長具合を確かめただけ」

 

「んなもん確かめんな!」

 

「あはは、それだけ元気あれば大丈夫か。

 昨日はびっくりしたよ。

 佳紀から電話もらって来てみたら、本当に死にそうな顔してたからね。

 よし、ほら身体拭くよ」

 

”ゴシゴシ”

 

「え、麻緒さんもしかして昨日からずっといてくれてたの?

 あ、アイスノンとかも麻緒さんが?

 ありがと、麻緒さん」

 

「いいって、遠慮しないの。

 なんか思い出すね、あんたが赤ちゃんの頃はよくお風呂あがった後にこうやって

 身体拭いてあげたんだよ」

 

「へぇ~、そうだったんだ」

 

”もみ”

 

「ひゃ!」

 

「いや~本当に成長したね~」

 

「だ、だから触んなって!」

 

「いいじゃん減るもんじゃなし。

 はいはい、ほら新しいパジャマ。

 一人で着れる?」

 

「うん」

 

「さてと次は下のほうだね」

 

「え?

 い、いや、下はいいから、自分でやるから」

 

「今更遠慮しないの。

 それに洗濯するんだから、ほら脱がすよ」

 

「い、いや~、やめて~」

 

     ・

     ・

     ・

 

「ねぇねぇ、みんな今日はお願いね」

 

「柄沢君のことでしょ。

 わかってるって」

 

「そうそう、わたし達に任せておいて」

 

「問題は一色よね」

 

「男子って何であんなのがいいんだろうね」

 

「あいつ男子の前だとめっちゃくちゃあざといから」

 

「うん、めっちゃあざとい」

 

”スタスタスタ”

 

「お早うございま~す」

 

「あ、お、お早う一色さん」

 

「いい天気になってよかったね、一色さん」

 

「そうですね。

 今日とっても楽しみです」

 

「やぁ、おはよう」

 

「あ、おはよう柄沢く~ん、今日はよろしくね」

 

”ピタッ”

 

「う、うん、よろしく。

 あ、一色さんもよろしくね。

 お~い、お前ら早くしろよ」

 

「おう、今行く」

 

”スタスタスタ”

 

「一色さんお早う」

 

「俺、今日一色さん達と一緒だって思ったら、昨日あんまり寝られなかったよ」

 

「嘘つけ、一番に寝てたじゃんか」

 

「お、おい、ばらすなよ~」

 

「「あははは」」

 

「じゃあそろそろ行こうか」

 

”わいわい、がやがや”

 

「くそ、おまえらどけよ、邪魔なんだよ。

 一色が映らねえじゃねえか。

 俺と一色の線上に入るんじゃねぇ。

 ちっ、柄沢の野郎一色からもっと離れろ」

 

     ・

     ・

     ・

 

うううううう。

た、大変な目に遭った。

わ、わたしの純潔が・・・・・・・

いや~、もうお嫁にいけない。

くそ、あのエロばばぁ。

 

あ、そうだスマホ。

ゆきのんやみんなに今日学校行けないってこと連絡しなくちゃ。

 

”カシャカシャ”

 

げ、ジャリっ娘から昨日いっぱいメール入ってたんだ。

そっか、無事京都に着いたんだね。

おっ写真、

ここ清水寺だ。

う~辛かったなぁ~。

新幹線に酔って、その後バスにも酔って、そして人ごみに酔って。

危うく清水の舞台で・・・・・・あぶなかったんだ。

あんなとこでやっちまったら、わたしの人生もう終わってたね。

あっ、恋占いの石だ。

これって目を閉じて片方の石から反対側の石まで歩けたら恋が叶うって

書いてあったんだ。

へへ、みんながいなくなるの待ってやってみたんだよね。

でもおかしいなぁ、一度でたどりついたから恋は早く叶うはずだったのに。

まぁいっか。

ジャリっ娘もやったのかなぁ

 

お、次は銀閣寺か。

まぁ修学旅行で行くところは決まってるからな。

でも、なんで銀閣寺って言うんだろう。

別に銀箔とか貼ってなかったのに。

へへ、ジャリっ娘、楽しそうだなぁ。

・・・・くそ、やっぱりかわいい。

帰ってきたらいっぱいお土産話聞かせてもらおうっと。

あ、やば、連絡! みんなに連絡しなきゃ。

 

     ・

     ・

     ・

 

「うわ~紅葉が綺麗」

 

「そうだね一色さん。

 うん、本当に橋と紅葉の風景がマッチしてて綺麗だ」

 

「なんか日本的でとってもいいです」

 

”スタスタスタ”

 

「な、なによ一色」

 

「そうそう、さっきから柄沢くんとべったりじゃん」

 

「何とか引き離さないとね。

 あ、そうだ。

 ねぇ男子! みんなで写真撮らない?」

 

「あ、いいね。

 お~い、こっち集合!」

 

「ん、どうした?」

 

”ゾロゾロ”

 

「ね、渡月橋をバックにみんなで写真撮らない?」

 

「いいね」

 

「写真撮ろうぜ」

 

「ほら柄沢君、真ん中真ん中」

 

「いや、端でいいよ」

 

「いいから、それと。

 はい、一色さんこれお願い」

 

「え、スマホ?」

 

「お願いね」

 

「あ、はい、いいですよ~

 じゃあ撮りますよ。

 みなさん、もっと中によって

 いきますよ、3、2、1、ピーナツ!」

 

”カシャ”

 

「あはは、なにそれピーナツって」

 

「い、一色さん面白い。」

 

「あ、これちょっと知ってる先輩がやってたもので。

 なんでも千葉の一部では結構はやってるって」

 

「そうなんだ。

 じゃあ次一色さん入りなよ。

 俺が撮ってあげる」

 

「え~柄沢君はここ、わたし達の間」

 

「いや、だけど

 ん! あ、じゃちょっと待ってて」

 

”ダー”

 

「清川君、ちょうどいいところに。

 すまない、写真撮ってほしいんだけどいいかなぁ」

 

「げ、あ、あ、あの、わ、わかった」

 

「ありがとう助かるよ

 お~い、彼が写真撮ってくれるって」

 

「ほんとう? じゃあ、わたしのスマホでもお願い」

 

「あ、わたしも」

 

「俺も頼むわ」

 

「俺も」

 

「い、いいですか、それじゃ撮りますよ。

 はい、チーズ」

 

     ・

     ・

     ・

 

”ぎゅるるるる”

 

はぁ、お腹すいたぁ~

そういえば昨日から何も食べてなかった。

麻緒さんに何か作って・・・・・い、いや、あの人に言ったらなにされるか。

が、我慢しよう。

 

”ガタ、ガタ”

 

「美佳、起きてる?」

 

げ、エロばばぁ来た!

こ、こっち来るな!

 

「がるるるるる!」

 

「な、なに警戒してるの。

 ほらほら、おかゆつくったけど食べれそう?」

 

「おかゆ? あ、うん、食べる!」

 

「よしよし。

 はい、あ~ん」

 

「あ、い、いや自分で食べれるから」

 

「遠慮しない、ほら」

 

”ぺちゃ”

 

「おい、そこおでこ。

 わたしゃ山姥か

 そんなとこに口ないわ

 あんた知っててやってんだろ。

 え~い、自分で食べるわ!」

 

「ち、ノリ悪~い」

 

”ぱく”

 

う、おいしい。

やっぱおかゆにはサケフレークだ。

かあちゃんのつくってくれたおかゆもそうだった。

はぁ~日本人に生まれてよかった~

 

”ぱくぱく”

 

「ほらそんなに慌てて食べると、身体がびっくりするよ。

 ゆっくり食べな」

 

「うん」

 

     ・

     ・

     ・

 

「清川君、写真ありがとうな」

 

「いえ、どうも」

 

「じゃあ、次どこ行こうか?」

 

「柄沢君、何か食べない?」

 

「そうだね、一色さんはどう?」

 

「あ、そうですね、この近くに美味しい抹茶パフエのお店があるそうですよ」

 

「じゃあ、そこにしよっか」

 

”ワイワイ、ガヤガヤ”

 

「ふぅ、あ~びっくりした。

 いきなり柄沢の奴走って来るんだもんな。

 てっきりバレたかと思ったぜ。

 へへへへへ。

 どさくさに紛れて、俺のスマホでも撮ってやったぜ。

 しかも一色だけのドアップ。

 どれどれ」

 

”カシャカシャ”

 

「おお、ばっちりだ

 ・・・・・・・・やっぱりかわいいんだ」

 

     ・

     ・

     ・

 

「ふぅ~、おかゆ美味しかった。」

 

「はい、お粗末様

 んで?」

 

「え?」

 

「なにか忘れてない?」

 

「・・・・

 大変美味しゅうございました。

 ありがとございました。

 この御恩は決して忘れません」

 

「ふふふ、よし。

 じゃあ後はちゃんと寝てなさい」

 

「うん」

 

そうだ、麻緒さんってずっとアメリカに行ってたんだ。

ちょっと聞いてみようかなぁ。

前々から気になってたし。

 

「あ、あの麻緒さん」

 

「ん?」

 

「あ、あのさ、麻緒さんは何でアメリカに行ったんですか?」

 

「え? なにいきなり」

 

「いや、その、な、なんでかなぁ~って」

 

「教えてほしい?」

 

「う、うん」

 

「あのね」

 

”だき”

 

ま、麻緒さん、なんでだきついて。

はぁ~、麻緒さんってやっぱりちょっとだけどかあちゃんの匂いがする。

ちょ、ちょっとだけだけど!

かあちゃん、こんなエロばばあじゃないし。

 

「あかちゃんの美佳がとっても可愛いかったからだよ」

 

「え、わたし?

 えっと麻緒さんがアメリカに行ったのとわたしとどんな関係が」

 

「・・・・・・」

 

「ま、麻緒さん?」

 

”さわさわ”

 

「ひゃ~、また~」

 

「ふむふむ、これは安産型だね。

 いっぱい子供産めそうだ」

 

「いや、ふむふむじゃない!

 お尻触んな!

 それより、な、なんで」

 

「あははは、

 あのねそれは・・・・・教えてあげない」

 

「な、」

 

「教えてほしかったら、はやくよくなること。

 さてと、じゃあちょっと買い物行ってくるから。

 ちゃんと寝てんだよ」

 

”スタスタスタ”

 

う~、あのエロばばぁ!

ちょっと油断すると触ってきやがって。

・・・・・で、でもなんでわたしが関係してるの?

 

     ・

     ・

     ・

 

「へぇ~美味しいねこの抹茶パフェ

 一色さん、よくこんなお店知ってたね」

 

「あ、うちの、生徒会の副会長に聞いたんですよ。

 去年とっても美味しかったって」

 

「そうなんだ。

 あ、でも一色さん生徒会頑張ってるね。

 いつも感心してるんだよ」

 

「え、あ、それほどでもないですよ。

 柄沢君こそ剣道部頑張ってるじゃないですか~

 それも部長さん」

 

「うううん、一色さんほどじゃないよ。

 生徒会の役員の人って先輩ばっかりなんだろ。

 やりにくくなかったの?」

 

「あ、初めのうちはそうでしたけでど、何とかなっちゃいました、えへ。」

 

「そっか~、すごいね」

 

”こそこそ”

 

「ち、なにあれ。

 一色のやつ柄沢君独占しちゃってさ」

 

「あなたも頑張って会話に割り込まないと。

 ほら行くよ」

 

「あ、う、うん」

 

「あ、でもさ、生徒会ってほら変な人とかいるでしょ

 なんか鹿のコス着てる人とか」

 

「そうそう、それ。

 あれ笑っちゃったね」

 

「あの人って何考えてんだろうね。

 あははは」

 

「いや~何も考えてないって

 ただの受け狙い!」

 

「あんな馬鹿な真似、わたしにはできないや

 やっぱり変な人だ」

 

”バン!”

 

「な、何も知らないくせにそんなこと言わないでくれますか!」

 

「え? な、なにさ!

 い、いやだって変じゃん、あの人。

 生徒会ってあんな変な人ばかりじゃないの!」

 

「みんないい人です!

 みんなとってもいい人です!

 わたしを会長って盛り立ててくれて。

 わたしが急にイベントとか勝手に決めても、一緒に頑張ってくれて。

 わたしがいけないときはちゃんと叱ってくれて。

 こ、こんなわたしでも会長務められたのはみんなのおかげなんです!

 だから!

 なにも生徒会のこと知らないのに、わたしの、わたしの大事な仲間を

 貶めないでください!」

 

「な、なによ、ねぇ」

 

「う、うん。

 そんなにムキにならなくてもね」

 

「そうそう」

 

「今のは君達が悪いよ。

 一色さんにとって生徒会は大事なものだから。

 ちゃんと謝ったほうがいいよ。

 ほらほら」

 

「あ、うん、柄沢君が言うのなら

 ご、ごめんなさい」

 

「ごめん」

 

「さ、一色さんも機嫌直して」

 

「あ、い、いえ、わたしの方こそムキになっちゃってごめんなさい」

 

「さ、仲直りだ。

 それより、ね、みんなであれ乗ってみない?」

 

「え、屋形船かよ!」

 

「一度乗ってみたかったんだ」

 

「で、でも柄沢、あれ高くないか?」

 

「俺が乗りたかったんだ。

 みんなの分、任せておけ」

 

「おお、さすがお坊ちゃま」

 

「お前だけ自腹な」

 

「うそ~」

 

「冗談だよ。

 さ、行こう」

 

”ワイワイ、ガヤガヤ”

 

「お、おい、あいつら船、船に乗るのかよ

 いくらだ、げ!たっけぇ~」

 

     ・

     ・

     ・

 

う~ん、いつのまにか寝ちゃってた。

ふ~、だいぶ身体楽になった。

熱も下がったみたいだし、寒気もしないや。

明日は学校いけるかなぁ

 

”ピンポ~ン”

 

ん、お客さん?

あ、確か麻緒さん買い物に行くって言ってた。

仕様がない、うんしょっと。

 

「は~い」

 

あ、麻緒さん帰ってたんだ。

 

”ガチャ”

 

「ん? えっとどなた?」

 

「あ、雪ノ下雪乃といいます。

 美佳さんとは親しくさせてもらっています。

 お加減、どうですか?」

 

「雪ノ下?

 ん~と、あ、ミス総武高!

 へ~、やっぱり違うね。

 まぁ狭い家だけど入って入って」

 

「はいそれでは失礼します」

 

あ、ゆきのん、来てくれたんだ。

・・・・・って狭くて悪かったな、くそ、人の家を!

襖があってもちゃんと聞こえるんだからね。

これでも親子二人で暮らすにはちょうどいい広さなんだ。

 

”トントン”

 

「あ、はい」

 

「雪ノ下だけど、開けてもよろしいかしら?」

 

「うん。

 あ、建付け悪いから、思いっきりね」

 

”ガタ,ガタ”

 

「こんにちは。

 お加減どうかしら三ヶ木さん」

 

「あ、うん、もう大丈夫。

 熱ももう無いみたいだし」

 

「そう、よかったわ。

 これお見舞い。

 よかったら後で食べて。」

 

「あ、アイス。

 ありがと。

 でもよく家わかったね?」

 

「ええ、刈宿君に聞いたの」

 

「あ、そうだゆきのん、机の上にプリント。

 昨日、刈宿君に持ってきてもらったプリント置いてあるの。

 2日間も休んでごめんね。

 明日からまたお願いしてもいい?」

 

「プリント?

 あら、プリントちゃんとやってあるのね」

 

「うん、そこまでは大丈夫だったんだけど。

 その後に急に熱が」

 

「あら、もしかして風邪じゃなくて知恵熱だったのかしら」

 

「ち、違うと思う、多分」

 

「冗談よ。

 ええ、もし学校に来れるのなら部室で待ってるわ。

 でも絶対無理はしないように。

 まずはしっかり治すことが先決よ」

 

「うん」

 

”ガタ、ガタ”

 

「お待たせ。

 わざわざこの馬鹿のお見舞いに来てくれてありがとうね。

 ジュースでよかったかしら?

 それとよかったら十万石万寿どうぞ」

 

「あ、ありがとうございます。

 あまりお気を使わないでください」

 

「いいのいいの。

 へぇ~」

 

”じろじろ”

 

「あ、あの、な、なにか?」

 

「やっぱりうちのとは違うね。

 何で神様ってこんなに不公平なんだろ」

 

「お、おい、何が違うって言うんだ。

 あ~、比べたね、いまわたしとゆきのん比べてたね!

 そんなの勝負になるはずないじゃんか!」

 

「あはは、なんだ自覚してたんだ」

 

「う~」

 

     ・

     ・

     ・

 

「じゃあすまない、頼む」

 

「ああ、任せておけ。

 頑張れよ柄沢」

 

「ああ」

 

「ねぇねぇ女子~、なんかお腹空かない?

 この先に美味しいお団子のお店あるんだ。

 行かないか?」

 

「え、お団子?」

 

「そう、メッチャ美味しいんだって。

 ほら行こう」

 

”スタスタスタ”

 

「あ、一色さん、ちょっといい?」

 

「え、あ、はい」

 

     ・

     ・

     ・

 

”カキカキ”

 

「ふぅ~」

 

げ、またため息。

さっきからプリント採点してくれてるんだけど、やっぱりため息ばっかりだ。

今日もあんまり結果よくなかったのかなぁ。

 

「三ヶ木さん」

 

「あ、はい」

 

「少しは出来るようになったわね」

 

「え、ほんと!」

 

「ええ、国語のほうはまぁまぁよ。

 後はもう少し英語のほうが」

 

ううううう

だって英語はほんと苦手なんだもん。

 

「まぁ、まだ時間はあるわ。

 頑張りましょう」

 

「う、うん」

 

「あらもうこんな時間。

 それじゃ、そろそろお暇するわ」

 

「あ、うん。

 お見舞いありがと、ゆきのん」

 

「本当にあまり無理しないように。

 身体は大切にしなさい」

 

「うん」

 

「それじゃ」

 

「うん、また学校で」

 

”ガタ、ガタ”

 

「あ、麻緒さんそろそろ失礼します」

 

「あら雪ノ下さん、もう帰るの?

 よかったら夕飯食べて行ったら?」

 

「あ、いえ、家で姉が待っているので」

 

「そう、残念」

 

「あ、あの」

 

「ん、なに?」

 

「三ヶ木さんから聞いたのですが、麻緒さんはアメリカに住まわれていたとか」

 

「ええ」

 

「折り入って相談が」

 

「ん、相談?」

 

ゆきのんが麻緒さんに相談?

 

”ひそひそ”

 

ん~何話してんだろう。

げ、麻緒さんこっち見て睨んでる!

い、いやな予感。

 

「それではお邪魔しました」

 

「またね、雪ノ下さん。

 さてっと、」

 

”ノシノシノシ”

 

げ、こ、こっちきた!

怖い怖い、顔ちょ~怖い。

か、隠れないと。

 

”ガバッ”

 

「美佳~、何布団かぶってんの!」

 

「ふぇ~」

 

「あんた受験めっちゃやばいんだって!」

 

「あ、い、あはは、だ、大丈夫だから、が、頑張るから」

 

「いい! これから学校から帰ったら、私がみっちり英語を教えるからそのつもりで!」

 

「あ、い、いや、ほ、ほらそんなに甘えちゃ 」

 

”ギロ”

 

「あん!」

 

「あ、お、お願いします」

 

     ・

     ・

     ・

 

”スタスタスタ”

 

「あの~柄沢君、どこまで?」

 

「ほらついた。」

 

「え?

 うわ~綺麗、これ着物?

 柱に描かれた着物の模様が灯りで浮かび上がってて、なんかすごく幻想的です」

 

「よろこんでもらえってうれしいよ。

 ここね夕方になるとライトアップするって聞いていたから。

 ちょうど薄暗くなってきてよかったよ」

 

「へぇ~嵐山駅のすぐ近くにこんなところがあったんですね。

 素敵です。

 あ、折角なのでみんなも呼んで」

 

”にぎ”

 

「え、か、柄沢君、手?」

 

「一色さん、君も怒るんだね」

 

「え? あ、さっきのこと

 ごめんなさい、ついムキになっちゃって」

 

「好きなんだね」

 

「え?」

 

「生徒会の仲間」

 

「あっ・・・・・はい、大好きです」

 

「俺はもっと君のこと知りたい」

 

「え? あ、あの」

 

「俺は君のことをもっと知りたい。

 そしていろんな表情の君を見たい。

 一色さん、俺は君のことが好きなんだ。

 俺と付き合ってくれないか」

 

「あ、あの

 ほ、ほら柄沢君ならモテるから。

 わ、わたしじゃなくても」

 

「俺、告ったのって生まれて初めてなんだ。

 君と付き合いたくて。

 心臓バクバクして、今にも飛び出しそうだよ」

 

「か、柄沢君」

 

「今のって、俺振られたってことなのかなぁ」

 

「あ、そ、そうじゃなくて

 あ、あの、わたし、ほら生徒会のことで頭いっぱいで、」

 

「もうすぐ任期終わるんじゃない?

 終わってからでいいんだ。

 それとも次も生徒会がんばるのかい? 」

 

「・・・・・・」

 

「一色さん?」

 

「ま、まだわかりません。

 でも、わたしまだやり残したことがあるような気がして。

 それがなんだかわからないんですけど。

 自分がどうしたらいいのか、そのことで頭がいっぱいなんです。

 だから、だから今は」

 

「・・・・・・・・・・・そっか。

 うん、わかった」

 

「ごめんなさい」

 

「君がやり残したことが見つかったら、応援させてくれないか。

 それで、もしやり残したことが解決したら、その時に改めて告らせてもらっても

 いいかい?」

 

「あ、あの・・・・・・・・・

 わかりました!

 でも、その時もまた振っちゃうかもですよ」

 

「あははは、それはまた辛いな~

 でもそのときはちゃんと諦めるよ」

 

「えへ♡」

 

「あははは、じゃ、みんなのとこ行こうか」

 

「はい」

 

”スタスタスタ”

 

「ふふふふ、馬鹿め。

 柄沢、お前は甘い!

 一色はあの葉山に惚れてんだ。

 いくらお前でも葉山には敵わん。

 今のはお前を傷つけないように気を使ったんだ。

 俺も同じこと言われたぞ。

 わははは、お前も俺も同じだ。

 わは、わは、わはははは・・・・・・・・・・・・はぁ~

 今日はもう宿舎に帰ろっか」

 

”トボトボトボ”

 

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

 

「それではな、清川氏」

 

「ああ、行ってこい」

 

「なぁ清川氏、何か落ち込んでいるようだけど一緒に行かないか?」

 

「あ、いやいい。

 気にしないで楽しんで来いよ」

 

「ああ。 

 それではな」

 

”スタスタスタ”

 

「はぁ~、俺は京都に来てまで何やってんだろうな。

 昨日は一日中、一色の写真や動画ばっかり撮ってて。

 俺もあいつとしゃべりてぇ。

 あん時告白なんかしなけれやよかった。

 そうしたら、ただのクラスメートとして話ぐらいできたのかもな。

 くそ、何でおれ勘違いしたんだろうな。

 あいつのあれって、ただあざといだけで、誰にでもあざとくて。

 俺なんか葉山以外のその他大勢だったのにな。

 ・・・・・話してぇなぁ」

 

”ヒソヒソ”

 

「ん、誰か来やがった」

 

”スタスタスタ”

 

「本当、一色ってムカつくよね」

 

「男子、みんな一色一色って」

 

「そうそう、柄沢君達を誘うために仲間に入れてやっただけなのにね」

 

「マジむかつくよね」

 

「ね、あいつさ、ちょっと締めてやらない?」

 

「いいね。

 あ、そうだ。

 ほら今日は太秦行くじゃん。

 そこのお化け屋敷でさ、とっちめてやろうよ」

 

「あ、それで一色の恥ずかしい写真撮っちゃうとか」

 

「それいける

 それにお化け屋敷だったら、あいつ泣いても変じゃないしね」

 

「ね、やっちゃおう」

 

”スタスタスタ”

 

「い、一色の恥ずかしい写真だと、ぐへへへへへ。

 チャ、チャンス! 俺もばっちり撮って・・・・・・

 い、いや、違う。

 くそ、あいつら。

 まぁ、一色誘ったのはそんなことだろうと思ったけどな 

 なにせ、あいつら一年の時も一色の陰口たたいていたからな。

 どうする? 一色に教えてやるか?

 ・・・・・でも恥ずかしい写真か、ぐへへへ」

 

      ・

      ・

      ・

 

「ああ、面白かった。

 だけどなんだあの恐竜は。

 池からでて煙はいたら、何もしないでまた潜ってしまったぞ。

 なんてシュールなんだ」

 

「いや~ちょ~うけた」

 

「ねぇ、男子達。

 ほらあそこにお化け屋敷あるよ。

 ちょっと行ってみない?」

 

「お化け屋敷?」

 

「なんかメッチャ怖そう」

 

「いいとこ見せてよ男子」

 

「それとも、もしかしてビビってるとか?」

 

「こ、こんなの怖くねえぞ、なぁ」

 

「当たり前だ。

 柄沢、ここ行こうぜ」

 

「ん? ああ、そうだな」

 

「へ~頼もしい。

 なんか見直した。

 じゃあさ、男子先入ってよ。

 女子、すぐ後から行くから」

 

「え、別々なの?」

 

「あ、やっぱりもしかして怖いの?」

 

「怖いはずないよな」

 

「お、おい行こうぜ」

 

     ・

 

「そろそろいいかな?」

 

「うん、男子たち入ってから時間たったからいいかも」

 

「じゃ女子チームも行こう。

 ほら一色さんも」

 

「え、あ、わ、わたしあんまりこういうのって」

 

「いいから行くよ」

 

”ぐぃ”

 

「え、あ、はい」

 

”タッタッタッ””

 

「はぁはぁ、い、今の一色達だよな

 ちょっと準備するのに手間取ったけど何とか間にあった。

 げ、なんかメッチャ怖そうだぞこのお化け屋敷。

 はぁ~、仕方ねえか

 すみません、高校生一枚お願いします」

 

「はいはい、1300円ね」

 

「げ、た、たけ~」

 

     ・

     ・

     ・

”カチャ”

 

「はい本牧君」

 

「ありがとう三ヶ木さん。

 いつも紅茶ありがとう。

 それより風邪ひいたんだって?

 もう大丈夫?」

 

「あ、うん、昨日一日休んだからもう大丈夫。

 本牧君ありがと。

 さて、うんしょっと」

 

”ドサ”

 

「三ヶ木さんその荷物どうしたの?」

 

「あ、これ。

 う、うん、ちょっとね。」

 

今日、ゆきのん塾終わったら行ってこないと。

う~、やっと集めたわたしのコレクション達。

辛いけど仕方ない、わたしにできることするって決めたんだ。

 

「・・・がいいんじゃないか」

 

ん、稲村君まだ電話してる。

結構長電話だね、紅茶冷めちゃったかなぁ?

でも誰と電話してんだろう?

どれどれ

 

”そ~”

 

「わかりました。

 じゃあ、今からオルゴール博物館行ってみますね。

 あ、それで稲村先輩、お土産どんなものがいいですか?

 もしかしてわたしとか?

 きゃ~稲村先輩のス・ケ・ベ

 仕方ないな~、帰ったら真っ先に家に会いに行ってあげます。

 だからご住所を」

 

「いや、いらない」

 

「ぶ~、なんでですか!

 ノリ悪いですよ。

 で、なに、なにすんの?

 ほれいってみ」

 

「いや、なにその言い方。

 まぁ、そうだな木刀」

 

「木刀? なんすかそれ」

 

「木でできた刀だけど」

 

「そういう意味じゃなくて。

 そんなのがいいんですか?」

 

「だって、ちょ~カッコいいだろう。

 欲しかったけど、買えなかったんだ去年。

 ちゃんとお金払うから買ってきてくれ」

 

「はいはい、あったら買ってきてあげます」

 

ほほう!舞ちゃんと電話してんだ。

・・・舞ちゃん達オルゴール館行くんだ。

はぁ~、わたしそこで置いて行かれたんだよ、トイレに入っているうちに!

トイレからでてきたら、誰もいないんだもんなぁ。

はぁ~、なんか腹立ってきた。

ふむ、ちょっといじわるしちゃえ。

 

「あ~ん、稲村君、そんなとこ触ったらだめだよ~

 稲村君のエッチ~」

 

「はぁ? み、三ヶ木?」

 

「え? ええ゛~

 稲村先輩、何やってんですか!

 い、いつの間に三ヶ木先輩とそんな関係に!

 それもわたしと電話している最中にいやらしいことを。

 こ、このドスケベ!」

 

「い、いや、何もやってないから」

 

「で、で、でも、いま三ヶ木先輩があ~んって」

 

「お、おい、三ヶ木!」

 

「でへへへ、ごめん冗談だよ舞ちゃん」

 

「はぁ? な、なんですか、もう!

 信じられない!

 三ヶ木先輩なんかにはお土産買ってあげませんから」

 

ひゃ~怖い、めっちゃ怒ってる。

へへ、退散退散。

でも・・・・・あ~面白かった。

 

「・・・三ヶ木さん」

 

あ、しまった本牧君いたんだ。

え、も、本牧君マジ呆れてる。

 

「あは、あははは。

 それより本牧君、昨日は何も変わったことなかった?」

 

「うん大丈夫。

 何も変わったことはなかったよ」

 

”ガラガラ”

 

「邪魔するぞ」

 

「邪魔するならかえっ、あ、ひ、平塚先生」

 

「邪魔するなら何だ三ヶ木」

 

”ボキボキボキ”

 

「あ、い、いや何でもないです」

 

「平塚先生、なにかご用でしょうか?」

 

「ん、ああ、本牧、少し確認したいことがあってな。

 ちょっといいかね」

 

「こちらの席、どうぞ」

 

「あ、先生も紅茶飲みますか?」

 

「ん、おお、気が付くな。

 いただこうか」

 

「あ、じゃ今淹れますね。

 本牧君、稲村君もおかわりどう?」

 

「ありがとう三ヶ木さん」

 

「おう、頼む」

 

「それで平塚先生、確認したいことというのは?」

 

「ああ。

 一色だが、あいつは次の生徒会選挙どうするつもりか知ってるかね?」

 

「次? えっと会長が立候補されるかってことですか?」

 

「ああそうだ。

 で、君たちは何か聞いているかね?」

 

「あ、いえ、今のところそんな話は聞いていませんが。

 稲村、三ヶ木さんはどうだ?」

 

「いや、俺は聴いてない」

 

”カチャ”

 

「先生どうぞ。

 わたしも聞いていませんけど」

 

「平塚先生、誰も会長からそのような話は聞いてないですね」

 

「そうか」

 

「でもそれがどうかなされたのですか?」

 

「ああ、今ちょっと選挙管理委員会に行ってきたのだがな」

 

”ゴクゴク”

 

「ふむ、美味いな」

 

「ありがとございます。

 あ、そういえば来週告示でしたね」

 

「そうなんだ。

 まあ本来はもう少し早い時期に行われていたのだがな。

 去年が遅かったからな、そのまま今年もこの時期になったんだ。

 いま必死でポスターとか作っているところだ」

 

「でも先生、わたし達は選挙のご協力は」

 

”ゴクゴク”

 

「ああ、わかっている。

 去年は生徒会役員からの立候補者がないってわかっていたこともあって、

 つい城廻に頼ってしまったが、あれは特別だ。

 ちゃんと選挙管理委員会でやるつもりだ。

 まぁ例年、会長の立候補がなかなかなくてな。

 で、一色はどうするのかと思ったんだ。

 君達に何も言ってないとしたら、まだ決めかねているってとこだろう」

 

「でも先生、2期連続で生徒会会長って過去ないですよね」

 

「ああその通りだ、さすが三ヶ木だな。

 まぁ一年で生徒会長っていうこと自体がなかったからな。

 初めは心配だったが、結構よくやってくれている。

 先生達の評判も上々だ。

 これも君達が後輩の会長をよく支えてくれていたからだろう。

 さてっと、邪魔したな。

 三ヶ木、紅茶ご馳走になった」

 

「1,000円っす」

 

「お、お金取るのか?」

 

「平塚先生、世の中そんなに甘くないですよ。

 お金がないのなら身体で 」

 

”ガタッ”

 

え、稲村君?

青ざめてどうしたの?

ん、財布?

 

「も、本牧、ちょっとお金貸してくれ。

 今月ちょっと厳しんだ」

 

「稲村、すまない。

 俺もちょっと」

 

「あ、い、稲村君、本牧君、違う、冗談だから」

 

「ふふ、それではな」

 

”スタスタスタ”

 

「なぁ、本牧、三ヶ木、会長どうするんだろうな?」

 

     ・

     ・

     ・

 

「そろそろいいんじゃない?」

 

「そうね」

 

「あっ、一色さん、こっちこっち」

 

「え? でも男子達あっちのほうに」

 

「うん、ここで経路が二つに分かれているみたいなの。

 こっちのほう行ってみよう」

 

「あ、う、うん」

 

”スタスタスタ”

 

「ち、あいつらそっちは関係者以外立ち入り禁止って書いてあるじゃねえか。

 ここでやるつもりか。

 それじゃこっちも準備すっか。

 しかし・・・・・一色の恥ずかしい姿かぁ。

 やば、鼻血出てきた」

 

”スタスタ”

 

「あれ?

 こっちの道、やっぱり行き止まりみたいですよ」

 

「・・・・・ね、あんたさ 」

 

”ヒュ~、ドロドロドロ~♬”

 

「「え?」」

 

「あ、あそこに誰かいる」

 

「な、なに、なんかこっち見てる」

 

「顔、血、血が出てるじゃない?」

 

「ううううううううう・・・ぐぅあー!!」

 

”ストン!”

 

「ぎゃ~、あ、頭が落ちた!!」

 

「「きゃ~」」

 

”ダ―”

 

「・・・・・・・・ふぅ~

 成功だ。

 急いで作ったにしては上出来だな。

 ハンガーと靴ベラとカッパで作った頭が落ちたように見えるトリックか。

 まぁ、動画のようにはうまくできなかったけど、あいつら結構びっくりしてたし。

 成功成功っと。

 さて、パソコンの音楽止めてっと」

 

”トントン”

 

「え、なに?」

 

”クル”

 

「げ、い、一色!」

 

「えっと~、何やってんですか~」

 

「あ、いい、いや、そ、その、ちょっと驚かせようかなぁ~って。

 あは、あは、あはははは」

 

「あの、昨日もずっとわたし達の後、つけてましたよね~」

 

「あ、い、いえ、そ、その」

 

「ちょっとキモいのでそういうのやめてくれます!

 それとも警察、呼びましょうか!」

 

「あ、い、いや、そ、それは・・・・・・ごめんなさい」

 

「えっと~、わかってくれればいいんですよ。

 それで~、もう二度とついてこないでくださいね。

 今度ついてきたら、警察そっこーで~す♡

 はぁキモ!」

 

”タッタッタッ”

 

「・・・・・・・・・、ま、こんなもんだわな。

 あ~あ、恥ずかしい姿、見ておけばよかった」

 

     ・

 

”ドタドタドタ”

 

「はぁはぁはぁ、な、なにあれ 」」

 

「な、なんか頭がストーンって」

 

「鼻、鼻から血が出てたし」

 

「し、仕掛けだよね」

 

「やぁ、やっと出てきたね。

 どう、怖かった?

 ん?・・・・・一色さんは?」

 

「あ、柄沢君。

 あ、あの一色さんは」

 

「あ、なんか一人で行きたいところがあったみたいで、お化け屋敷入らずに行っちゃった。

 ねっ」

 

「あ、うん」

 

「そ、そう、一色さん、他のとこに行ったんだ」

 

「ね、それより柄沢君、あっちの広場で忍者のイベントがあるんだって、行ってみようよ」

 

「え、忍者?」

 

「おもしろそうだな、行こうぜ柄沢」

 

「ああ、行こうか」

 

”ワイワイ、ガヤガヤ”

 

     ・

 

「きゃ~」

 

”ダー”

 

「はぁはぁ、やっと出口。

 ちょ~怖かった、怖すぎですよ~このお化け屋敷。

 あ、あれ、みんないない。

 どこいったのかなぁ」

 

     ・

     ・

     ・

 

さて、そろそろゆきのん塾行こうかなぁ

 

”ブ~、ブ~”

 

ん、ジャリっ娘からだ。

どうしたんだろ?

 

「はい、三ヶ木だよ」

 

「あ、美佳先輩。

 今どこにいるとと思います?」

 

「え? い、いやわからないけど」

 

「愛宕念仏寺、来ちゃいました。

 あのリーゼントのお地蔵さん、みつけましたよ~」

 

「あ、いや、まじ、そこに行ったの?

 よく他の人も一緒に来てくれたね」

 

「あ、いえ他の人はいなくて」

 

「え、もしかして一人?」

 

「えっと~、みんなとはぐれちゃいました、えへ」

 

「いや、会長、えへって」

 

「まぁいいじゃないですか。

 それより本当にいっぱいお地蔵さんあるんですね。

 それも全部違うお顔。

 あ、これなんか美佳先輩にそっくりですよ。

 いま写真送りますね」

 

「い、いやいい、いらない!」

 

「え~、なんでですか~」

 

「いいからいらない!」

 

な、なんか想像つくから。

どうせお多福さんみたいなのに決まってる。

わかってんだ、ふん!

 

「ねえ彼女、一人なの」

 

「え?」

 

「一人ならさ、俺達と少しお話しない?」

 

「あ、いえ、友達待ってるんですよ」

 

「うそだ~

 さっきからずっと一人じゃん」

 

「ねぇ、俺達と少し話しようよ」

 

「いえ、結構です」

 

「いいじゃん、ほらあっち行こうぜ」

 

「み、美佳先輩!」

 

「か、会長!」

 

”プー、プー”

 

げ、電話切れた。

やば、ジャ、ジャリっ娘が危ない。

へ、変なのに連れて行かれちゃう。

ど、どうしよう。

え、えっと、引率している先生に連絡!

平塚先生、平塚先生にお願いして先生に連絡してもらって。

で、でも間に合うかな、ど、どうしよう急がないと。

あ、そうだ!

 

”カシャカシャ”

 

「なんすかエロ先輩」

 

「・・・・・・いや、エロ先輩はやめろ」

 

げ、舞ちゃんまだ怒ってる。

声、ちょ~低いし。

 

「心配しなくてもちゃんとお土産買ってあげましたよ、高級油取り紙」

 

「うわぁ~ありがと、舞ちゃん。

 って、今それどこじゃない!

 ね、舞ちゃん、いまどこ?」

 

「え? あ、あの、嵐山のオルゴール博物館ですよ。

 あ、藤沢さんも一緒ですよ。

 偶然会っちゃいました。

 電話代わりましょうか?」

 

「あ、い、いやいいから。

 あのね 」

 

     ・

     ・

     ・

 

「ねぇ、いいじゃん。

 ほらあっちのもっと静かなところでお話しようぜ」

 

「いやです、離してください。

 人、人呼びますよ!」

 

「面倒くせ。

 いいから連れてこうぜ」

 

「い、いや!」

 

”スタスタ”

 

「げ、あいつら何やってんだ、一色があぶねぇ。

 くそ、ど、どうすっかな。

 3人もいるしな、ちょっとこぇ~し。

 ・・・・・そ、そうだ、警察!

 警察に連絡してだな」

 

「やめてください!」

 

「し、仕方ねぇのかよ。

 もうつけてこないでくれって言われてんだけどなぁ~

 殴られると痛たいだろうなぁ~

 ・・・・・・・・はぁ~まったく。

 えっと、パソコンとビデカメラここに置いてだな。

 ポチっと。

 い、いやだなぁ~」

 

「や、やめてください

 手離してください。

 本当に、人呼びますよ」

 

「おい、お前口押えろ。

 うるせえわ、こいつ」

 

「おう」

 

「や、やめろ!」

 

「ああん?

 なんだお前」

 

「い、嫌がってんだろその娘。

 離してやれよ」

 

「なんだこの野郎、正義の味方か?

 うっせんだよ、この野郎!」

 

”ボコ”

 

「ぐはっ」

 

「おいおい、正義の味方なんだろどうした。

 ほらもう一発!」

 

”ボコ”

 

「い、いてぇ~

 も、もう、やめてください」

 

「ほら立てよ、正義の味方!」

 

”ボコボコ”

 

「ぐはぁ~」

 

「へ、よわっち~の。

 ざまあねえな。

 さ、行こうぜ。

 か~のじょ、お待たせ。

 あっちで楽しいお話しような」

 

「ん~、ん~」

 

”バタバタ”

 

「あんま暴れんなって。

 おい、ちゃんと口押さえてろよ」

 

「おう。

 さっさとあっち連れて行こうぜ」

 

「ん~、ん~」

 

”スタスタスタ”

 

「い、いってぇ~よ。

 くそ、どうだ、ちゃんと映ってんだろうな」

 

”カチャ”

 

「よ、よし映ってる。

 それじゃ、このパソコンに取り込んで」

 

”カチャカチャ”

 

「よし、正義の味方の登場だ」

 

     ・

 

「お、おいこのくそ野郎ども!!」

 

「ああん、なんだお前また殴られてえのか!」

 

「このパソコン見てみろ!」

 

”カチャ”

 

『なんだこの野郎、正義の味方か?

 うっせんだよ、この野郎!』

 

”ボコ”

 

『ぐはっ』

 

「わかるよな、お前らの暴行動画だ。

 今からこの動画、YouTubeに投稿してやるぞ!

 もちろん、ちゃんとお前らの制服と顔、映ってるからな!

 しかも超ドアップで」

 

「お、おい、やべえぞ」

 

「いや、あのパソコン壊して」

 

「おい、動くなよ。

 このリターンキー押せばそれまでだからな」

 

「ちっ!」

 

「わかったら、さっさと消えな!

 消え失せろこのゲス野郎!」

 

”プツン”

 

「あ、あれパソコンの画面が?

 げ、バッテリー切れ!」

 

「おい、あれ」

 

「ああ。

 おい、お前今なんか言ったか」

 

「あ、あははは、い、いや、な、なにも」

 

「この野郎、ぶっ殺してやる!」

 

「す、すみませ~ん」

 

”ドタドタドタ”

 

「い゛っじぎー!!」

 

「いろはちゃーん!」

 

”がぶっ”

 

「い、いってぇ~、この女噛みつきやがった」

 

「ま、蒔田ー!

 書記ちゃーん!」

 

「いっしきー!!

 て、てめぇらー一色に何しやがった!

 そこで待ってろ!!」

 

「お、おいあの女、木刀振り回してるぞ。

 それになんかあっちの眼鏡、どこかに電話してるって」

 

「ち、くそ、いくぞ」

 

「お、おう」

 

”ダー”

 

「た、助かった。

 しっかし肝心な時にバッテリー切れるってさすがにやばかった」

 

「うぉー!てめぇーこの野郎、変態ナンパ野郎が!!」

 

”バシ!”

 

「い、いてぇ~

 ち、違うって、お、俺は 」

 

”バシ、バシ、バシ”

 

「なにが違うだこの変態!、女の敵!

 え~い、これでもくらえ!」

 

”バシッ!!”

 

「ぐはぁ~」

 

”グタ~”

 

「はぁはぁはぁ、どうだ思い知ったかこの変態くそ野郎」

 

「いろはちゃん大丈夫?

 怖かったよね。

 本当、この変態!」

 

”ポカ”

 

「あ、い、いや、違うのこの人は助けてくれて」

 

「え?」

 

     ・

     ・

     ・

 

「うんうん、了解。

 ありがと、書記ちゃん。

 あ、書記ちゃん、電話借りてごめん。

 舞ちゃん、そこにいる?

 いたらちょっと代わってもらってもいい?」

 

「あ、はい、今代わりますね」

 

「は~い、もしもし蒔田だよ~」

 

「舞ちゃん、絶対無茶したら駄目って言ったでしょ。

 なんでそんな無茶したの!」

 

「え? 

 いや、そのなんだか無我夢中で、気が付いたら。

 あ、でも、そんなことエロ先輩に言われたくないです。

 エロ先輩だっていつも無茶ばっかりって聞いてますよ!」

 

「おい、だからエロ先輩はやめろ。

 今回は書記ちゃんがいてくれたからよかったけど、そんな無茶してもし舞ちゃんに

 まで何かあったら。

 舞ちゃん、舞ちゃんはかよわい女の子なんだから。

 ほんと、なにもなくてよかったよ」

 

「・・・・・三ヶ木先輩、ごめんなさい」

 

「わかってくれればいいの。

 でも、会長を助けてくれてほんとにありがと。

 それじゃね」

 

「はい」

 

ふぅ。 

ま、まぁ、みんなが何ともなくてとにかくよかった。

・・・・・清川君にもお礼言わないとね。

へぇ~、あのストーカー君がねぇ~

ん、あ、もうこんな時間。

ゆきのん塾行かないと。

 

”スタスタスタ”

 

今日こそはいい点数取りたいなぁ。

ゆきのんも国語はそこそこって言ってくれたし。

あっ。

 

「ヒッキー耳の様子どう?」

 

げ、比企谷君と結衣ちゃん。

やば、こっち歩いて来た。

 

”サッ”

 

い、いやなんで隠れるんだって。

うへ~ほらやっぱり蜘蛛の巣だらけじゃん。

ね、ちゃんと掃除しようよ。

 

”スタスタスタ”

 

「あ、ちゃんと聞こえてるんだね」

 

「ああ、もう大丈夫だと思う。

 まぁ、明日もう一回病院行ってくるつもりだ。

 ずっとノートとってもらってすまなかった」

 

「えへへ、あたしもあれだけ集中して授業受けたの久しぶりかも。

 そっか、そうなんだ耳治ったんだ。

 でもちょっと残念」

 

「はぁ? なにが残念なんだ?」

 

「あ、い、いやなんでもない。

 あ、それよりもさ、ヒッキー明後日の日曜日って暇?

 あ、あのさ、よかったらあたしの家に来ない?」

 

「断る!

 何でお前の家に行かないといけないんだ」

 

「ヒッキーこの前今度サブレに会いに来てくれるって言ってたじゃん」

 

「げ、憶えてたのか

 残念だな、そんな昔のことはもう忘れた」

 

「ひど」

 

「・・・・・ま、まぁ日曜日、午前中は無理だが昼からなら。

 午前中は1週間の英気を養うための、何人たりとも邪魔することを許さない

 神聖な儀式がある」

 

「本当!

 うん、それじゃ明後日待ってるね」

 

「ああ」

 

”スタスタスタ”

 

なんかいい雰囲気だなぁ。

二人の距離ってあんなに近かったんだ。

もう少しで肩が触れあうぐらい。

手もちょっと伸ばせば握りあえるくらい。

 

”トボトボ”

 

そっか比企谷君、結衣ちゃんの家に行くんだ。

結衣ちゃん嬉しそうだったなぁ~

わたしは、まだ彼に会えないんだ、まだ会うわけにはいかない。

うん、まずは勉強頑張ろう。

 

”ガラガラ”

 

「ゆきのんお待たせ」

 

「だからノックしなさい」

 

     ・

     ・

     ・

 

「店長、こんにちわ」

 

「ああ、美佳ちゃん、こんにちわ。

 で、今日はどうしたの?」 

 

「あの~、これお願いしたいんですけど」

 

「ん? そのアカ俺のグッズ売りたいのかい? 」

 

「うん。

 どうしてもお金がいることができて」

 

「ん~、本当は18歳未満は保護者同伴が決まりなんだが」

 

「だ、駄目ですか~」

 

「まぁ~仕方ない。

 じゃあこれは私が個人的に買うってことにしよう。

 でもどうしたんだい、これってお気に入りのグッズだったんじゃないのかい?

 よく聞かせてくれたグッズだと思うけど」

 

「うん、ちょっといろいろあって」

 

「そう。

 わかった、じゃあ査定するからちょって待ってて」

 

     ・

     ・

     ・

 

「美佳ちゃん、査定終わったよ。

 はいこれね」

 

・・・・げ、こ、これだけ。

査定厳しい~

治療費足りるかなぁ

よ、よしここは必殺の上目遣いで

ふふふ、いろいろ試したんだ。

こうやって上目遣いで、そんで人差し指を口に当てて。

 

「店長さ~ん、あの~もう少し何とかなりませんか~えへ♡」

 

「無理!」

 

そ、速答か~

ぐぞ~、現実は厳しい。

 

     ・

 

”トボトボトボ”

 

はぁ~、わたしのイレギュラーヘッドグッズ全部売り払ってもこれだけかぁ~

部屋にはもう、舞ちゃんにもらった缶バッジと義輝君に買ってきてもらった下敷き、

それと、比企谷君にもらったポスターしかない。

それでもこんだけか~、マジ現実は厳しい。

でも、わたしができること、ちゃんとけじめつけなくちゃね。

 

     ・

     ・

     ・

 

「ふ~、ご馳走さま」

 

「あ、あの~とうちゃん、ちょっといい?」

 

「ん、なんだ?

 お小遣いの前借りか?」

 

「あ、違くて。

 あの、あのねわたし 」

 

 

 

 

--------

 

 

 

 

「もう大丈夫だ、ちゃんと鼓膜治ってるよ。

 でも、これからは耳掻きする時は気をつけてね」

 

「はい、ありがとうございました」

 

     ・

 

”ガチャ“

 

「ふ~、やっと鼓膜治った。

 ちゃんと聞こえるってやっぱりいいもんだな」

 

”ブ~、ブ~”

 

「ん、もしもし。

 どうした小町」

 

「お、お兄ちゃん!!」

 

「おわぁ、な、なんだでかい声で。

 また鼓膜破れるかと思っただろうが」

 

「いいから、今どこ? なにしてるの?」

 

「いま病院でたところだ。

 喜べ小町、鼓膜はもう完璧だ」

 

「そんなことどうでもいいから。

 それより早く帰ってきて」

 

「いや、そんなことってなんだ、お兄ちゃん的にポイント低~い」

 

「・・・・・」

 

「ご、ごほん、それでどうしたんだ?」

 

「み、美佳さんと美佳さんのお父さんがうちに来てて。

 それで、それで。

 いいから早く帰ってきて」

 

「あん? わかった。」

 

     ・

     ・

     ・

 

”ガチャ”

 

「もし治療費が不足でしたらご連絡ください。

 誠心誠意、できるだけのことさせて頂きます」

 

「いえ、もう十分ですよ。

 これ以上は気になさらないでください」

 

「比企谷さん、大切なご子息にそれもこの大事な時期に怪我をさせてしまい、本当に

 申し訳ありませんでした」

 

「ほんとにごめんなさい」

 

”ペコ”

 

「それでは失礼いたします」

 

「あ、お待ちください三ヶ木さん」

 

「はい?」

 

「えっと、美佳さんだったわね」

 

「はい」

 

「美佳さん、悪いけどもう八幡に会わないでほしいの」

 

「えっ」

 

「比企谷さん、それは」

 

「いえ、三ヶ木さん。

 お宅の娘さんもそうだけど、八幡も今がとても大事な時期。

 お互い浮ついていられる時ではないと思います。

 ですから、美佳さんもう八幡に会わないようにしてほしいの」

 

「比企谷さん」

 

「美佳さん、いいかしら」

 

「・・・・・は、はい。

 わかりましたお母様。

 わたし、わたしからもう比企谷君に連絡はしません」

 

「そう。

 わかってくれてうれしいわ。

 それではね」

 

「はい。

 ほんとにすみませんでした」

 

     ・

 

「はぁはぁはぁ」

 

”ガチャ“

 

「お兄ちゃん!」

 

「こ、小町、三ヶ木は?」

 

「ちょっと前に帰ったよ。

 お兄ちゃん遅いよ。

 美佳さん、お母さんにもうお兄ちゃんとは会わないって約束させられて」

 

「はぁ?

 何でそんなことに。

 ちょっと前に帰ったとこなんだな小町」

 

「うん」

 

”ガチャ”

 

「待ちなさい八幡。

 あんた、鼓膜のことなぜ嘘ついてたの?」

 

「いや違う。

 前にも言った通り、これは俺が耳掻きしてて自分でやったことなんだ。

 あいつは関係ない。

 三ヶ木は勘違いしてるんだ」

 

”ガチャ”

 

「八幡!」

 

「あとで、ちゃんと説明する」

 

”ダー”

 

     ・

 

”スタスタスタ”

 

「なぁ美佳、あれでよかったのか?」

 

「うん。

 とうちゃんほんとにごめんなさい」

 

「気にするな。

 子供が仕出かしたことの責任を取るのは親の役目だ。

 それにな、お前が理由もなしに暴力を振るう子じゃないってことは、

 とうちゃんが一番知ってる」

 

「とうちゃん」

 

「よし、それより久しぶりに昼ご飯なにか食べて帰るか」

 

「うん」

 

     ・

     ・

     ・

 

”きょろきょろ”

 

「ち、もう電車乗ってしまったのか?

 駅のどこにもいない。

 電話、出てくれよ」

 

”カシャカシャ””

 

「はい、もしもし三ヶ木・・・・だよ。

 比企谷君、な、なにか用?」

 

「なにか用じゃねえ。

 三ヶ木違うんだ、どこで何を聞いたか知らんがお前勘違いをしている。

 これは俺が自分でやったことなんだ。

 俺が耳掻きをしていてだな 」

 

「もういいよ」

 

「もういいって、何がいいんだ。

 俺には何がどうなっているのかさっぱりわからない。

 話、ちゃんと話がしたい。

 会えないか?」

 

「今からとうちゃんとご飯食べに行くの」

 

「そ、それじゃ明日」

 

「明日?」

 

「ああ」

 

「・・・・・」

 

「み、三ヶ木?」

 

「・・・・・あのさ、それじゃ14時にあの公園来れる?」

 

はぁ、なに言ってんだわたし。

明日のお昼からは比企谷君、結衣ちゃんちにいくって約束してたじゃん。

結衣ちゃんあんなにうれしいそうな顔してたのに。

 

「公園ってお前の家の近く公園か?

 明日の14時だな」

 

「うん。

 わたし明日の午前中は掃除とか洗濯とかいろいろあるから。

 でもお昼からって無理・・・だよね」

 

こんなの汚い、わたし汚いよ。

何でこんなこと言っちゃったんだ。

お願い比企谷君、無理って断って。

 

「わかった。

 14時にあの公園でな」

 

「・・・・・う、うん」

 

だ、駄目だよ比企谷君。

だって、結衣ちゃん悲しむのわかってるじゃん。

わたし最低だ、最低の人間だ。

で、でもわたし・・・・・

 

      ・

 

「はぁ~、でもなんでこんなことになったんだ?

 あ、それより」

 

”カシャカシャ”

 

「ヒッキーどうしたの?」

 

「あ、由比ヶ浜か、すまない明日の約束だが」

 

 

 

 

--------

 

 

 

 

”ピンポ~ン”

 

「は~い」

 

”ガチャ”

 

「あ、ヒッキーいらっしゃい」

 

「おう」

 

”ワンワン”

 

「おわぁ!」

 

”ペロペロ”

 

「や、やめろサブレ。

 お、おい由比ヶ浜、どこが元気がないだ。

 めっちゃ元気いいだろうが」

 

「あ、でもさっきまでリビングで寝てたんだよ」

 

「そ、そうか」

 

”ペロペロ”

 

「わ、わかった、わかったからもうやめろサブレ」

 

”ワンワン”

 

「ふぅ~」

 

「さっ、ヒッキーに中入って」

 

「ああ」

 

     ・

     ・

     ・

 

「ヒッキーピザ焼けたの。

 食べていかない?

 ん、サブレ寝ちゃった?」

 

「ああ。

 俺の膝の上で寝ちまった」

 

「本当だ、さっきまでキャンキャン騒いでいたのに。

 えへへ、こんなに安心してるサブレの顔、見たことない」

 

”なでなで”

 

「よしよし、いい子だねサブレ♡」

 

「お、おい」

 

「ん?」

 

「い、いや近い、顔近い」

 

「え! あ、ご、ごめん」

 

「い、いや、まぁ、なんだ、その、い、いい香りだな髪」

 

「え? あ、う、うん、ありがとう」

 

「・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

「・・・ヒッキー」

 

”グ~”

 

「あ、ごめん、お腹空いたよね。

 いまピザ持ってくるね。

 ちょっと待ってて」

 

「お、おう」

 

「えへへ、でもあんなにはしゃいでたサブレ本当に久しぶり」

 

「そうなのか」

 

「うん。

 やっぱりヒッキーのことが、す、す、好き・・・・・なんだ。」

 

「そ、そっか」

 

「・・・うん。

 あ、ヒッキーも手洗ってきて」

 

「お、おい、ちょっと待て。

 そういえば、家の人はどうした?

 もしかしてピザってお前が作ったのか?」

 

「誰もいないよ。

 パパとママは昨日から旅行。

 今日の夕方には帰ってくると思うけど」

 

「お前一人なのか。

 い、いや昼飯は、よ、予定があってだな」

 

「そ、そっか。

 予定があったんじゃ仕方ないよね。

 結構上手に作れたんだけどなぁ」

 

「・・・・・」

 

”パク”

 

「ヒッキー」

 

「お、美味いぞこれ」

 

「ヒッキー♡

 い、いま飲み物、飲み物持ってくるね。

 ヒッキーも手洗ってきて」

 

「おう」

 

     ・

     ・

     ・

 

「ご馳走さん。

 いや、本当に美味かったわ」

 

「本当! えへへへ、ありがとうヒッキー」

 

「すまない。

 午後から本当に予定があってだな」

 

「うん。

 お昼一緒に食べてくれてありがとうヒッキー」

 

「ああ」

 

”ガチャ”

 

「じゃあな」

 

「うん、また来てね」

 

”スタスタスタ”

 

     ・

     ・

     ・

 

「さて、まだ1時前だ。

 なんとか時間までに公園につけそうだな。

 三ヶ木とちゃんと話しな 」

 

”ブ~、ブ~”

 

「ん、由比ヶ浜から?」

 

”カシャカシャ”

 

「どうした?」

 

「ヒッキー、サブレがサブレがなんか変なの。

 ヒッキーどうしょう、どうしょう」

 

「落ち着け。

 サブレはどう変なんだ」

 

「息がとっても荒くて、すごく苦しそう」

 

「わ、わかった。

 いま戻る」

 

     ・

     ・

     ・

 

”ヒュ~”

 

ひぇ~、風が冷たい。

もう4時か。

比企谷君遅いなぁ~

いま頃まだ結衣ちゃんと一緒なのかなぁ。

へへ、わかってたから来てくれるはずがないって。

変な期待したわたしが悪い、ほんと馬鹿だね。

わたしなんかが結衣ちゃんに敵うはずない。

・・・・・・でも、もう少しだけ待ちたい、待っていたい。

もう少しだけ待ってたら、きっと来てくれる・・・・・・と思いたいんだ。

 

     ・

     ・

     ・

 

「ヒッキー君、本当にありがとうね。」

 

「いえ、大事にならなくてよかったです。

 疲れただけですんでよかったです」

 

「サブレ、ヒッキーに会えたから無理しちゃったんだね。

 すごく嬉しそうだったもん。

 あ、ヒッキーごめん、午後から何か用事あったんだよね」

 

「用事、あ!

 い、今何時だ、げ、6時過ぎてる。

 す、すみません。

 俺失礼します」

 

「あ、ヒッキー君、送っていくわ」

 

「すみません、駅までよろしいですか?」

 

     ・

     ・

     ・

 

”ブルブル”

 

うう、寒くなってきた、

えっと今何時だろう、あ、もう7時過ぎてんだ。

すっかり暗くなっちゃった。

へへ、わたし何やってんだろう。

こんなに待ってても来てくれるわけないじゃん。

だって、結衣ちゃんと約束してたの知ってるもん。

きっと今頃、まだ結衣ちゃんと楽しいおしゃべりとかしててさ。

で、でもさ、もしかしたらさ、ほんとはもうすぐそこまで来てくれててさ。

そんで、お~い三ヶ木って呼んで・くれ・・て。

そ、それ・・・で、そし・・たら・・・わた・・し、わたし・・・きっと・・・

あ、あれ? お・か・し・いな。

なんか眠くな、って、き・・・・・・・

 

     ・

     ・

     ・

 

”ガタンガタン、ガタンガタン”

 

「くそ、やばいな。

 外、真っ暗じゃねえか。

 三ヶ木、待っててくれるわけねえよな。

 は、電話、なにしてんだ俺、電話!」

 

”カシャカシャ”

 

「頼む、出てくれ」

 

”プー、プー、プー”

 

「だ、駄目か。

 あいつ怒ってんだろうな。

 と、とにかく公園まで行かないと」

 

     ・

     ・

     ・

 

”ゆっさゆっさ”

 

ん、あれ? ここどこ?

え、背中?

あ!

 

「と、とうちゃん」

 

「おう、気がついたか」

 

「あれ、なんで?」

 

「馬鹿、あんなところで寝てたら折角治った風邪をぶり返すぞ」

 

あ、そっか。

わたしあのまま寝ちゃったんだ。

比企谷君、来てくれなかったんだね。

そっか。

 

「寒くないか?」

 

「うん」

 

とうちゃんの背中あったかい。

とってもあったかい。

う、うう、ううううううう。

 

「とうちゃん、ごめんね」

 

「ん、どうした?」

 

「心配ばかりかけてごめんなさい」

 

「馬鹿泣くやつがあるか。

 子供のこと心配出来るのは親の特権だぞ」

 

「とうちゃん」

 

「でもな、お前は俺の大事な大事な宝物なんだ。

 身体は大切にしてくれるとありがたい」

 

「とうちゃん、とうちゃん、とうちゃん。

 ごめん、ごめんなさい。

 うううう、うぐ、う、うわぁ~ん、うわぁ~ん」

 

     ・

     ・

     ・

 

「はぁはぁはぁ、み、三ヶ木!」

 

”きょろきょろ”

 

「やっぱりいないか。

 今何時だ。げ、8時かよ

 待ってるわけねえよな。

 俺があいつだったとしても待ってるわけねぇ」

 

”カシャカシャ”

 

「頼む、出てくれ。

 三ヶ木、電話出てくれ」

 

”プー、プー、プー”

 

「なんでだ、何で電話出てくれねえんだ。

 くそ、あの時電話しておけばよかった。

 なんでそんなこと気がつかなかったんだ。

 メール、メールなら見てくれるだろうか」

 

     ・

     ・

     ・

 

”チャポ~ン”

 

ふぅ~、温まる。

なんか、生き返ったみたい。

・・・・・わたし何してるんだろう。

わたしの所為で、とうちゃんにも麻緒さんにもゆきのんにも、

・・・・・比企谷君にもいっぱい迷惑かけた。

比企谷君のお母様にも。

わかってるんだわたし、このままじゃだめだってこと。

だから・・・ちゃんとしよう。

 

「美佳、パジャマここ置いておくぞ。

 ちゃんと温まるんだぞ」

 

「うん」

 

 

 

 

--------

 

 

 

 

「比企谷君、話ってなに?

 わたし今から生徒会行かないといけないから時間あんまりないんだ。

 比企谷君も、塾あるんでしょ」

 

「あ、あの、まぁなんだ。

 あ、そうだ。

 その前にこれ返しておく」

 

「え?」

 

「この前も言ったろ、俺の鼓膜は耳掻きをしていて自分で破ったものなんだ。

 だからこの治療費はもらうわけにはいかない」

 

・・・・・そっか。

やっぱり比企谷君はそう言ってくれるんだ。

やさしいね。

わたし知ってる、知ってるんだ。

そのやさしさはわたしだけにじゃないって。

比企谷君は頼ってくる人、みんなにやさしいんだ。

口ではもっとも効率のいいやり方だとかそれらしいこというけど、わたしは知ってるんだ。

 

あのね、わたし気づいたの。

そのやさしさを独り占めにしたいって思うすごく強欲な自分がいることを。

だからあの時、結衣ちゃんとの約束あるの知ってて、それでもあんなこと言って

あなたのこと困らせたの。

ほんと、わたしは汚い。

 

来てくれるはずなんてないのに。

わたしなんかより結衣ちゃんのほうが比企谷君との繋がり深いし、それに大事な存在って

知ってたはずなのに。

それでももしかしたら来てくれるんじゃないかって勝手に思い込んで。

ほんと馬鹿だ、馬鹿で強欲で汚くて最低なんだわたしは。

 

わたしどうしたんだろ。

どんどん自分を抑えられなくなってる。

もっと自分の分をわきまえてたはずなのに。

 

このままじゃ今にまたきっと自分を抑えられなくて、比企谷君に迷惑をかけちゃう。

お母様が言ってた通り比企谷君にとって大事な時期なのに。

だから、だったらわたしは・・・・・

 

「もういいよ」

 

「いや、なにがいいんだ?」

 

「そんな嘘つかなくてもいい」

 

「嘘じゃない。

 鼓膜は俺が自分で 」

 

「自分で耳掻きしていて鼓膜を破るなんてできないよ。

 少し当たっただけでもすごく痛いんだ。

 絶対鼓膜が破れる前に気が付くよ」

 

「い、いや、あの 」

 

「それにずっとわたしのこと避けてたじゃん。

 あれ、わたしに鼓膜が破れたの気づかせないためだよね」

 

「いや、な、なんのことだ。

 俺は避けたりしてないぞ」

 

「・・・アイス美味しかった?

 居留守、すごく辛かったよ」

 

「あっ、い、いや」

 

「だから、もう嘘つかなくていい。

 ごめん、いっぱい嘘つかせちゃって」

 

「・・・・・・」

 

「じゃあ行くね」

 

「み、三ヶ木、昨日はすまなかった。

 じつは 」

 

「えっと~昨日ってなんのこと?」

 

「い、いや、公園で会おうって約束。

 じつは俺昨日 」

 

「え? わたし公園なんて行ってないよ。

 あ~、あれ本気にしてた?

 行くわけないじゃん。

 わたしも受験生だよ。

 そんな時間あったら勉強するよ。

 やだな~」

 

「お、おい」

 

「話はそれだけ?

 じゃあ、みんな待っているといけないから行くね。

 あ、比企谷君、わたしたち今とっても大事な時期なんだよ。

 しっかり勉強しないとだめだよ」

 

”スタスタスタ”

 

「・・・・・み、三ヶ木」

 

「・・・・・・・・・・・・・・あのさ、サブレ元気になるといいね」

 

”ダ―”

 

「え? 三ヶ木お前」




最後までありがとうございます。
今回も2万字超えてしまいすみません。
(お時間とらせました)

さて、次話から生徒会選挙編。
ジャリっ娘の去就は?

また次話読んでいただけたらありがたいです。
ではではっす。


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