似て非なるもの   作:裏方さん

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毎度ありがとうございます。

す、すみません、更新めっちゃ遅くなりました。
ごめんなさいです。

今回は生徒会選挙編。
選挙が終われば一色生徒会も任期終了。
さて選挙はどうなるか。

ではよろしくお願いします。
(・・・すみません、またまた2万字超えました。
 ご無理なさらずお願いします)


生徒会選挙編 前編 ー想いー

”ヒュ~”

 

う~さぶ。

二学期の最大のイベントである文化祭、体育祭も終わり幾日かが過ぎた。

このベストプレイスから見える木々の葉もその多くが落葉し、

その姿からはいよいよ季節は冬になるのだと無言で告げられているかのようだ。

あ、ちなみに校長先生のあた・・・・・・いや、それはやめておこう。

それでも今日はいくらかの陽光がさし、それほど気温は下がっていないはずなんだが、

まるでもう真冬にでもなったように俺の心は寒々しい。

 

『・・・・・サブレ、元気になるといいね』

 

あの日、あの屋上で俺の横を通り過ぎる時に残していったこの言葉と、

あの寂しそうな横顔が俺の脳裏にこびりついて離れない。

三ヶ木は知ってたんだ。

俺がずっと由比ヶ浜と一緒だったことを。

 

それでも三ヶ木は待っていてくれてたあの公園で。

話がしたいという俺の言葉に応じてくれるために。

それなのに俺は・・・・・

 

『わたし、公園になんか行ってないよ』

 

三ヶ木は一言の責めの言葉もなく、俺にそう言ってくれた。

公園なんか行っていないっか。

・・・・・公園のベンチに置き忘れられていたマッ缶とミルクティ―。

それがすべてを物語っている。

 

くそ!

 

なんで俺、病院からでも電話しなかったんだ。

なんでそれぐらいの気が回らなかったんだ。

・・・・・違うな。

気が回らなかったんじゃない、できなかったんだ。

由比ヶ浜と一緒にいることを知られたくなくて。

卑怯者・・・だな。

 

もうあの日から今日で3日目。

あいつが俺のことを避けるようになってもう3日。

あれ以来、俺達は一言も話をしていない。

もう戻れないんだろうか以前の俺達の様には。

 

今となってはあいつのあの滅茶苦茶痛い空手チョップが懐かしい。

あの何とも言えない痛さが。

想像しただけでゾクゾクっと・・・・・・い、いやそんなんじゃない。

俺、Mじゃないから。

た、ただ懐かしいだけだから。

 

「はぁ~」

 

”バシッ!”

 

「ぐはぁ~いってぇ~」

 

だ、誰だ思いっ切り背中叩いたのは!

は、もしかして三ヶ木、三ヶ木か?

 

「なにするんだ三ヶ・・・・・・

 なんだ一色か、はぁ~」

 

「な、なんですか、はぁ~って。

 こんなかわいい女子の顔見て”はぁ~”って。

 もう、信じられないです」

 

「すまん、ちょっとな」

 

「で、どうしたんですか、そんなに落ち込んで?」

 

「いやなんでもない。

 まぁ、ちょっといろいろあってな。

 で、何の用だ」

 

「あ、えっとですね」

 

”ちょこん”

 

いや、なに君、なに横座ってんの?

ちょっと近い、近いんだけど。

ほらお尻、お尻触れてるんだけど。

これがほんとのお尻合い・・・・・オ、オヤジか!

か、漢字も違うし。

しかしなんか甘くていい匂いだな。

由比ヶ浜も三ヶ木もそうだったが、なんで女子ってこんなにいい匂いがするんだ。

 

「ん~あれ?」

 

ん、なにやってんだ?

そのリュックの中に何か入ってるのか?

 

”ガサガサ”

 

「えっと、あれ確か持ってきたはずなんだけど」

 

お、おい、こんなに密着した状態で背中見せて。

お前不用心すぎるだろう。

絶対俺以外の男子勘違いするからな。

勘違いして押し倒しちゃうレベル。

俺は、ほ、ほら理性の塊だから。

ん? あ、肩のところに糸くずついてるじゃねえか。

仕方ねえな。

 

「あ、あった。

 はいお土産です、せん・・・・・ぱ・・・・い?

 うそ!」

 

「あ、い、いや違う。

 あの、ほ、ほらゴミ、い、糸くずがだな 」

 

「先輩、もしかして今わたしのこと抱きしめようとしたんですか?」

 

「ち、違う、ほ、本当にゴミがだな」

 

「あ、あのですね先輩。

 抱きしめてくれるのはとっても嬉しいのですが、こんなところではだめです。

 もっと人目の着かないところで、そう例えば体育館倉庫とか。

 ですからもう一度出直してください、ごめんなさい」

 

はぁ、また振られたのか俺。

え、体育館?

ま、まさかあれ見られてたのか?

い、いやそんなはずは

 

「・・・・・お、お前なにか知ってるのか?」

 

「はぁ?」

 

「い、いやなんでもない」

 

「あ、そんなことより、はいこれどうぞ。

 修学旅行のお土産です♡」

 

「いらない」

 

「はぁー! な、なんですか、何でいらないって言うんですか!」

 

「いやだってお前、なにか裏があるだろ。

 何か手伝わせようとしているんだろ」

 

「そ、そんなことないです。

 な、なにもないです」

 

いや、おかしい、絶対何もないはずがない。

こいつが何もなしでお土産など買ってくるわけがない。

それに俺の経験上、こういう場合に何もないといって

本当に何もなかったことがない。

 

「・・・・・嘘だ」

 

「ひど、酷いです先輩。

 わたし、折角いつもお世話になっている先輩に喜んでもらおうと思って

 買ってきただけなのに。

 う、ううううう、酷い酷いです~」

 

や、やべ。

一色泣かせてしまった。

マジか、マジでお土産を買ってきてくれただけだったのか。

 

”ヒソヒソ”

 

げ、やばい、あそこの男子こっち見て指さしてやがる。

このままでは。

 

「す、すまん一色。

 な、泣くな、泣かないでくれ。

 わかった、これはありがたく貰っておく。

 ありがとうな」

 

「食べてください」

 

「え?」

 

「それ、賞味期限短いですから、すぐ食べてください」

 

「いや、それならもっと早く持ってこない?

 修学旅行から帰って今日で 」

 

「ううううう」

 

「わ、わ、わかった。

 い、今食べる、食べるから、な、泣かないでくれ。

 生八ッ橋か、美味そうだな」

 

”ジー”

 

な、なにこの娘、そんなに見つめないでくれる。

わかったちゃんと食べるから。

ん~、ちょ、ちょっと緊張する。

 

「頂きます」

 

「はい、どうぞ、にこ♡」

 

”パク”

 

お~うまい、うまいな。

この米粉のもっちり感としっとりとした粒あんのバランスが何ともいい。

それにこのニッキの風味がなんとも。

 

「美味しいですか?」

 

「お、おう。

 めっちゃ美味いなこれ」

 

「それはそれはです。

 遠慮しないで全部食べてくださいね♡」

 

”パクパク”

 

「ふんふんふんふん♬」

 

一色なんかすごく機嫌良さそうなんだけど。

両手で頬杖ついて、足をブラブラさせてなにかハミングしてやがる。

さっきまで泣いていたのが信じられないほどニコニコしてやがる。

 

「ふんふんふん♬」

 

・・・・ま、まあいいか。

こんな姿みてると、本当に可愛いよな一色。

変にあざとくしなくても、地のままで十分可愛いと思うんだが。

ん? そういえば。

 

「なぁ、お前生徒会どうすんだ?」

 

「え?」

 

「あ、いやほら告示してあっただろ。

 たしか受付期間は2週間だから来週の金曜日までだろ」

 

「えっと今はまだ考え中なんですよ。

 あ、もし立候補するときは協力お願いしますね。

 よろしくです」

 

「ぷふぉー」

 

「ひゃ、汚い。

 顔についたじゃないですか! し、信じられない」

 

「お、おい、やっぱりそれが狙いだったんだろこの土産。

 ちくしょう、一瞬でもお前の好意を信じた俺が馬鹿だった。 

 俺は受験生だ、そんなことに関わっている時間はない。

 断じて断る!」

 

「先輩、生八ッ橋食べましたよね」

 

「い、いやだって、お前が食べろって言うから」

 

「食べましたよね」

 

「くそ!

 いくらだ、金、金払う」

 

「えっと~、ざっと見繕って1000万円で~す」

 

「は、はぁ! い、1000万だと!」

 

「そうですよ、先輩に食べてもらいたくて~

 頑張って京都の名店に並んで買ったんですよ~

 わ・た・し、頑張って並びました。

 頑張って並んだから足が棒になっちゃいました。

 だから慰謝料込みで1000万円です、えへ♡」

 

えへっじゃねえ。

じゃあこれ、この八ッ橋は1個100万円なの。

小町の時といい、お、俺の周りはインフレ、超インフレ状態じゃねぇか。

それに慰謝料ってなんだ。

 

「慰謝料って何ともなさそうじゃねえかその足」

 

「そんなことないです。

 ほらよく見てください、すこし太くなっちゃったんですよ~」

 

”チラッ”

 

お、おお~、こ、こいつスカートを。

だめだ見てはいけない、これは絶対に罠だ。

罠だ、罠だ、くそ、罠だとわかっていながら目が・・・・・

く~、これが生足、生足効果か~

生足とストッキング、俺の永遠のテーマだったんだが、

ついに今日決着がついた。

やっぱり生足、生足だ。

生足に勝るものはない!

 

”ジ―”

 

は、な、なにその満面の笑み、し、しまった。

 

「せんぱ~い、堪能されました?」

 

「・・・・・・は、はい。

 ありがとうございました」

 

「それでは、堪能料も含めて一億円、よろしくです」

 

「は、はぁー、い、一億だと」

 

「当たり前じゃないですか~

 こんなにかわいい女子の太ももを、それもこんなに間近で凝視できたんですから」

 

「・・・・・ぐっ、くそ。

 わかった、その時は協力する。

 だ、だが言っておくぞ。

 さっきも言った通り俺は受験生だ。

 放課後は塾に行かないといけない。

 だから、できる範囲内だ。

 できる範囲内での協力しかできねえからな」

 

「はい、それで十分です。

 その時はよろしくですせんぱい、えへ♡」

 

く、くそ、あざとすぎる。

舌をちょこっと出して、えへって。

ちょ~かわいいじゃねえか。

はぁ~今日は完敗だわ。

 

「・・・・・で、修学旅行は楽しかったか?

 どこに行ったんだ?」

 

「えっとですねー」

 

     ・

     ・

     ・

 

「それじゃわたし新聞部もどります。

 稲村先輩、三ヶ木先輩、部活紹介の取材協力ありがとうございました」

 

「ああ、ご苦労さん」

 

「うん、ご苦労様。

 ・・・あ! 舞ちゃん、来月になるとわたし達もう生徒会じゃなくなるから。

 今までのような協力できないけど大丈夫?」

 

「あ、そうですね。

 う~ん、まぁなんとかなるっしょ。

 新聞部の男子共をこき使ってやりますから。

 それよりそっか最後か~。

 そうだ! 

 ね、三ヶ木先輩、最後の差し入れはチョ~ごーかーなやつで頼みますね」

 

「い、いや。

 あの~、今月はちょっといろいろあって、き、厳しいかなぁ~って。

 あっ稲村君、少しカンパしなさい!」

 

「はぁ? な、何で俺が」

 

「可愛い彼女のためでしょ。

 協力しなさい。」

 

「まて、蒔田は彼女なんかじゃねえ」

 

「え~、な、なんですか稲村先輩。

 や、やっぱりわたしとは遊びだったんですね。

 ひどい、わたしの身体が目的だったんだ」

 

「な、なにいってんだ蒔田!」

 

「稲村、それはひどいぞ。

 男ならちゃんと責任取れ」

 

「い、いや、本牧お前何を言って 」

 

「稲村先輩、稲村先輩がそんな人だとは思いませんでした。

 最低です」

 

「書記ちゃんまでもか~

 わ、わかった。

 カンパする、カンパすればいいんだろ。

 え~い、どうせならすっごい豪華な差し入れにしてやってくれ三ヶ木」

 

「やった~

 よ、稲村君太っ腹」

 

「稲村先輩だ~い好き」

 

「く、くそー

 さっさと部活行け、蒔田!」

 

「「あはははは」」

 

「それじゃ原稿頑張ってきます。

 それではで~す」

 

「あ、舞ちゃん待って。

 途中まで一緒に行こう。

 じゃ、わたしもそろそろゆきのん塾に行くね。

 あ、会長来たらよろしく言っておいて」

 

「ああ、わかった言っておく」

 

「三ヶ木さんまた明日」

 

「三ヶ木先輩、お疲れ様でした」

 

「うん、また明日ね」

 

”ガラガラ”

 

「じゃあね」

 

”スタスタスタ”

 

「いいなぁ~」

 

「ん、どうしたの舞ちゃん」

 

「生徒会って、いつもみんな仲いいんですね」

 

「そう?」

 

「そうですよ。

 文化際とか体育祭とか、隣で見ていてとても羨ましかったです。

 なんかみんながみんなのこと信頼してるって感じして」

 

「えへへ、そうかなぁ。

 でも最初のころは大変だったんだよ。

 みんな遠慮っていうか、疑心暗鬼っていうか、なんか言いたいことも言えない

 雰囲気でさ」

 

「そうなんですか?

 今の生徒会の雰囲気からは全然想像つかないです。

 稲村先輩なんか、三ヶ木・・・ジミ子・・・・エロ先輩!

 エロ先輩に振られたのに全然以前と変わらなくて。

 普通、グループの中でそんなことあったら、

 なんかギクシャクしておかしくなりますよ。

 でも今日もなんかみんなとってもいい雰囲気で」

 

「エロ先輩はいい加減やめろ!

 まだジミ子のほうがいいから。

 そっか、普通そうなるものだよね

 でも、わたしは稲村君のこと大好きだもん」

 

「えー!」

 

「あ、い、いや違った。

 稲村君のこと大事だもん」

 

「え゛ー」

 

「あ、ち、違う、そんなん意味じゃなくて。

 そ、そう、稲村君だけじゃなくて、本牧君も書記ちゃんも・・・会長も。

 みんなのことが大好きでとっても大事な仲間。

 きっとみんなも同じだと思う」

 

「いいなぁ~

 わたし、生徒会に入ればよかった」

 

「うぇ~」

 

「な、なんですか、そのめっちゃいやな顔!」

 

「だって、会長だけでも大変だったのに、舞ちゃんまでいたら」

 

「ひど!

 わたしを一色と同じにしないでください。

 絶対わたしのほうがちゃんとしていますから」

 

「そ、そう?」

 

「ひど!」

 

「あははは、冗談冗談」

 

「もう、ジミ子先輩は」

 

「あ、じゃわたしこっちだから」

 

「はい。

 ジミ子先輩、受験頑張ってくださいね」

 

「舞ちゃんも部活頑張ってね。

 じゃあね」

 

”スタスタスタ”

 

「生徒会か~

 はぁ~わたしもそんな仲間ほしいなぁ~」

 

”スタスタスタ”

 

     ・

     ・

     ・

 

「だって、もしそうなったらやばいじゃん。」

 

「そうだよ、柄沢君も生徒会に立候補してるんだから」

 

「ね、頑張って説得しよう」

 

「うん」

 

”スタスタスタ”

 

「あ、来た来た」

 

「へ?」

 

「蒔田さん、ちょっとお話したいことがあって待ってたの。

 少しだけいい? 」

 

「え、何?

 あなた達、C組の子だったっけ。」

 

「あ、あのさ蒔田さん、今度の生徒会選挙で会長に立候補してほしいの」

 

「はぁ!

 な、なに突然。」

 

「ほら、うちのクラスの一色さん、いま生徒会の会長やってるんだけどね、

 本当はあれ、一年の時のクラスの子にはめられて立候補させられたの。

 わたし達同じクラスだったんだけど、つい悪乗りしちゃって」

 

「なんかみんなで一色さんを立候補させちゃえって雰囲気になってね」

 

「な、なにそれ。

 すごくひどくない?

 一色そんなんで会長になっちゃったの?」

 

「うん、わたし達も反省してね。

 それに一色さん会長になっちゃったから、サッカー部のマネージャーも

 できなくなっちゃって」

 

「そうそこなの。

 一色さん、葉山先輩に憧れてマネージャーになったのにね」

 

「それでさ、葉山先輩達も今の大会で負けたらもう引退でしょ。

 だからせめてその前にマネージャーに戻してあげたくて」

 

「他に誰も立候補する人いないと、一色さん責任感強いから

 マネージャー諦めてもう一回立候補すると思うの」

 

「だからお願い。

 今ならまだ最後の大会に間に合うと思うんだ。

 蒔田さん会長に立候補してくれない?

 推薦人なら必ずわたし達でなんとかするから」

 

「で、でもなんでわたしなの?」

 

「蒔田さんは、ほら2年生の中では人気投票2番目ですごく人気あるし。

 それに文実の子からも聞いたんだけど、委員長さんすごく頑張ってたって

 聞いてるし。

 ねっ、お願い!」

 

「一色、葉山先輩に憧れてたのかぁ。

 そういえば、ディスティニーで一緒にいるところ見たって聞いたことあるし、

 それにマラソン大会で葉山先輩も名前呼んでたし。

 ・・・・・生徒会かぁ~

 わたしやってみようかなぁ~」

 

「えっ、本当!

 ありがとう」

 

「ありがとう蒔田さん。

 これで一色さんもマネージャーに戻れるね」

 

「じゃあ、早速、推薦人集めてくる」

 

「ありがとう、蒔田さん」

 

「あ、う、うん」

 

     ・

     ・

     ・

 

”スタスタスタ”

 

「どうしょう。

 やっぱりわたしは先輩達をちゃんと送り出したい。

 想い出に残るような送別会もやりたいし、卒業式の送辞もしたい。

 でも、推薦人30人かぁ。

 ・・・それにわたしには今の生徒会以外に生徒会なんて」

 

”ワイワイ,ガヤガヤ”

 

「ん?」

 

「ね、ねぇ、聞いた?

 今度の生徒会選挙、蒔田さんが会長に立候補するんだって」

 

「へぇ~、蒔田さんならいいんじゃない。

 ほら文化祭の実行委員長頑張ってたじゃん」

 

「そうだね。

 あ、体育祭の時も一生懸命だったじゃん」

 

「俺、学校新聞の部活紹介コーナー結構好きなんだ」

 

「お前、記事の内容より蒔田さんの写真目当てだろ」

 

”ワイワイ,ガヤガヤ”

 

「え、蒔田が会長に立候補するんだ。

 そ、そうなんだ」

 

”トボトボトボ”

 

     ・

 

”ガラガラ”

 

「遅くなりま 」

 

「ほんと?」

 

「へぇ~、書記ちゃん立候補したんだ」

 

「あ、はい。

 あの、副会長やってみたいなぁって」

 

「「へぇ~副会長」」

 

”ニヤニヤ”

 

「な、なんですか!

 い、稲村先輩も三ヶ木先輩もお二人してそのいやらしい目は!」

 

「いや~、ね、稲村君」

 

「な、三ヶ木」

 

「も、もう。

 い、いいじゃないですか、ほっといてください」

 

「しょ、書記ちゃん、副会長に立候補したの?」

 

「あ、いろはちゃん。

 うん、立候補しちゃった。

 いろはちゃんも会長に立候補するんでしょ?」

 

「え? あ、あの 」

 

”ガラガラ”

 

「な、なぁ、みんな聞いたか!

 蒔田さん、会長に立候補したんだって」

 

「「はぁ!」」

 

「も、本牧、本当かそれ」

 

「い、いろはちゃん」

 

「あ、あの、わ、わたし・・・・・・・

 あっ、今日ちょっと用事があったの忘れてました。

 お先に失礼しますね」

 

”ダ―”

 

     ・

     ・

     ・

 

”トボトボトボ”

 

「はぁ~、書記ちゃんも立候補したんだ。

 それに蒔田が会長に立候補したんなら、わたしは 」

 

「あっ、いろはちゃんだ。

 いろはちゃん、やっはろー」

 

「おう、一色」

 

「あ、結衣先輩、やっはろーさんです。

 今から塾ですか~

 ご苦労様です」

 

「うん、ありがとう」

 

「大変ですね結衣先輩。

 あ、それでですねこの前  」

 

”スタスタスタ”

 

あれ?

俺スルー、スルーなの?

いつの間にかステルスヒッキー発動してたっけ?

いや、絶対さっき目が合ってるよね。

しっかり俺のこと視認したよね君。

 

「お、おい」

 

「あ、先輩いたんですか?

 全然気がつかなかったです」

 

「・・・・・」

 

「え、えっと~、いろはちゃんお土産ありがとう」

 

「あ、いえいえ。

 結衣先輩にはいつもお世話になってますから」

 

「由比ヶ浜、おまえもなにか頼ま 」

 

”ぎゅ”

 

い、いてぇ。

一色の奴、思いっ切り尻を抓りやがった。

な、なにしやがるんだ。

 

「せんぱーい、美味しかったですか~生八ッ橋。

 にこ♡」

 

げ、こ、こえ~

顔は笑顔なのに、目だけマジ冷たい。

 

「は、はい、とっても美味しかったです」

 

「あはは、ヒッキーは八ッ橋貰ったんだ。

 あたしはこれ。

 ほらこの匂い袋、すごくリラックスできるいい匂いだよ。

 ほらほら」

 

「お、おう」

 

い、いや近い、そんなに押し付けなくても大丈夫だから。

胸、胸が腕に当たってるんだが。

ほら、むにゅむにゅって。

そ、それにお前ボタン外してるから、それだけ近寄られると

む、胸の谷間がだな、お、おおっ。

 

「ヒッキー、ね、いい感じでしょ」

 

「え、あ、お、おう、なかなかいい感じだ。

 そ、そのすごく柔らかそうで」

 

「え?」

 

「せ・ん・ぱ・い」

 

はっ、い、一色さん見てたの。

やめてそんな蔑ました目で見ないで。

お、男なら、し、仕方ないんだからね!

 

「ごほん!

 あ、そ、そうだ一色。

 そんなことよりお前、選挙 」

 

「あ、わ、わたし急いでいるのでお先に失礼します

 それではです。」

 

”シュパッ”

 

いや、その敬礼まだやってるの。

ま、まぁ、可愛いからいいんだけど。

今度俺もやってみようかなぁ

了解です♡とか

 

「ヒッキー、なんか顔キモい」

 

 

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

 

 

”ガラガラ”

 

「お疲れ様で~す」

 

”ガサガサ”

 

「あ、会長お疲れ様」

 

「美佳先輩、何やってんですか?」

 

「うん、ほら選挙終わったら、この机も空けないといけないから。

 それでちょっと綺麗にしておこうかなぁって。

 まぁ、なんだかんだいって、この机には1年の時からずっとお世話に

 なってたから」

 

「・・・わたし手伝いますね」

 

「あ、いいですよ。

 それより会長、引継ぎの資料できました?

 あと会長だけですよ」

 

「あっ・・・・・はい、今からやります」

 

「会長?

 ・・・・・会長は今度のせんき 」

 

「あ、美佳先輩これなんですこれ。

 ほらなんか綺麗にラッピングしてあるの」

 

「あ、これ?

 これは前の生徒会の副会長に返すはずだったハンカチ。

 つい返しそびれちゃって」

 

「どんな人だったんですか副会長さんって」

 

「うん、とっても優しい人でね。

 わたしが失敗して三増先輩に泣かされてると、いつも慰めてくれて。

 なんかお兄ちゃんみたいな人。

 なんか懐かしいなぁ~

 はぁ~、みんなに会いたくなっちゃった」

 

「美佳先輩、あの、前から聞きたかったんですけど」

 

「ん?」

 

「美佳先輩、美佳先輩は前の生徒会と今の生徒会を比べたりしますか?

 前の生徒会のほうがよかったな~とか」

 

「はい、それはいつも」

 

「え゛~、や、やっぱりそうだったんですか」

 

「あはは、冗談、冗談ですよ。

 あ、えっと~」

 

”ガサガサ”

 

「あ、あった。

 ほら、この写真憶えてます?」

 

「え? あ、これって」

 

「はい。

 前の生徒会の役員が初めて集まったときに撮った写真です。

 これはわたしにとって前の生徒会の大切な想い出。

 そしてね、この写真の裏。

 この会長が破れた写真を治してくれたセロテープ。

 これは会長との、うううん、今の生徒会での大切な想い出。

 前の生徒会の想い出に今の生徒会の想い出が加わって、わたしにとって

 二つの生徒会の大切な想い出になりました」

 

「美佳先輩」

 

「・・・・・あのね会長、正直比較したことはあるよ。

 なにこの会長、なんでこんなのがとか」

 

「・・・・や、やっぱりそんな風に」

 

「えへへ、ちいっとだけ。

 でも、それもこれも含めて今ではとっても大切な大切な想い出。

 わたしにとってどっちの生徒会も同じくらい大切なものだよ。

 今の生徒会、前の生徒会、それぞれにそれぞれの想い出がある。

 けして優劣つけられるものじゃない。」

 

「美佳先輩」

 

「ん゛ー! 

 でもやっぱ思い出したらムカつく。

 ほんと会長って自分勝手だったんだから!

 すごく振り回されたんだからね!」

 

「な、なんすか!

 美佳先輩だって。

 いつも自分勝手に暴走してたくせに」

 

「会長ほどじゃありませ~ん」

 

「わたしだって美佳先輩ほどじゃありませんよ~だ!」

 

「「む~」」

 

「・・・・・」

 

「・・・・・」

 

「「ぷ~、あはははは」」

 

「もう美佳先輩は」

 

「会長こそ」

 

”だき”

 

「か、会長?」

 

「美佳先輩、ありがとうござました」

 

「・・・・・・会長。

 寂しい、なんかとっても寂しいです。

 やっぱりこの場所はわたしにとって特別な場所」

 

”ぎゅ”

 

「わたしもですよ美佳先輩」

 

”ガラガラ”

 

「ご苦労・・・さ・・・ま。

 す、すみませ~んお邪魔しました!」

 

”ダー”

 

「あ、ふ、副会長~」

 

「な、なにも見てませんからー

 ご、ご、ごゆっくり」

 

「い、いや違うんです副会長~

 はぁ、もう美佳先輩の所為ですからね!

 ど、どうすんですか、副会長完全に勘違いしてるじゃないですか」

 

「だ、だって~」

 

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

 

”ビュ~、ビュ~

 

はぁ~、さすがにちょっと寒くなってきた。

今日はずっと鉛色の空で、すっかり冬って感じだ。

 

”パコ~ン、パコ~ン”

 

だが戸塚がいる限り、あの天使の舞が観れる限り俺がこの場所をはなれ

 

”ピタ”

 

「うぉー、あちー」

 

な、なに、なにが起こって・・・

頬に急に熱いものが。

 

「い、一色!

 またしてもお前か」

 

「な、なんですかまたしてもって。

 ま、まあいいです。

 あの先輩、はいこれどうぞ。

 先輩の大好きなマッ缶です。

 わたしみたいに温かくてあま~いですよ~」

 

「おお、サン・・・・・いらん」

 

「な、何でですか!」

 

「一応聞く。

 なんだ、なにが狙いだ」

 

「え? あ、あのですね。

 え~と、わたし会長に立候補することにしました。

 それで、約束通り手伝ってくださいね、先輩♡」

 

やっぱりか!

やっぱりこのマッ缶はそれが狙いか。

確かに前回、一色の誘惑に負けて協力すると言ってしまったが、

あの時とは状況が変わった。

聞けば蒔田が会長に立候補したっていうじゃねえか。

だとすれば間違いなく選挙戦になる。

そんな面倒なことに関わるわけにはいかない。

 

「断る、断じて断る!

 あの時とは状況が変わった。」

 

「一億円、生八ッ橋、生足、スケベ」

 

「・・・・・こ、こ、断る」

 

「あ、それと、この前は結衣先輩のどこみてたんですか~。

 はっ! ま、まさか結衣先輩の豊満な胸の谷間とか。

 うわ~最低、信じられないです~

 結衣先輩言っちゃおうかなぁ~

 ね、せ・ん・ぱい♡」

 

「ぐっ」

 

「さっ先輩、冷めないうちにどうぞです」

 

「はぁ~」

 

”カチャ、ゴクゴクゴク”

 

「・・・・・俺も受験生だ。

 前も言ったが、あんまり期待されてもムリだぞ」

 

「はい。

 ありがとうございます、せんぱ~い♡」

 

     ・

     ・

     ・

 

「は、はぁ!

 お、お、お、おい、一色、今なんて言った?

 推薦人、俺一人だと!」

 

「えっと~、実はそうなんです」

 

「いつだ?」

 

「へ?」

 

「立候補の締め切りはいつだって聞いているんだ」

 

「えっと~、確か今週の金曜日の完全下校時間までだったと思いますよ」

 

いや、思いますよじゃねえ。

間違いなく金曜日だ。

こいつマジで立候補しようと思っているのか?

あと4日。

今日の放課後を入れて4日だ。

この4日で30人もの推薦人を集めろっというのか。

 

「よろしくです、先輩」

 

「い、いやよろしくってお前。

 な、クラスで推薦してくれそうな奴いないのか?」

 

「それがですね、クラスの子にその話をしようとすると、なぜかみんな離れて

 行っちゃうんです。」

 

「お前もしかしてクラスの嫌われ者なのか?」

 

「はぁ? ち、違いますよ、そんなわけないです。

 これでも一応人気投票、総武高女子2位なんですからね!」

 

まぁ確かにそうなんだが。

しっかしマズイな。

クラスの奴らの協力得られないのか?

それならこっちもそれなりの覚悟が必要だ。

だからはっきりしておかなければならない。

 

「な、一色、お前なんで会長に立候補したいって気になったんだ」

 

「・・・えっとですね、わたし先輩をはじめ結構3年生の先輩方に

 お世話になってきたじゃないですか。

 だから、卒業生を送る会とか卒業式とか、ちゃんとわたしの手で送らせて

 もらわなければいけないんです。

 わたしはそうしたいんです」 

 

「そ、そうか」

 

「・・・・・それとですね、あの人の居場所を守りたいんです。

 あの人すごく寂しがり屋ですから」

 

「お前、あいつにまた庶務やらせるのか?

 さすがにそれは」

 

「ち、違いますよ。

 庶務なんてやらせるわけないじゃないですか」

 

「まぁお前の想いはわかった。

 一色、とりあえず知り合いのやつを当たってみよう。

 放課後、放課後もう一度集合だ。

 塾行くまでの時間しかないがいいな。」

 

「はい、先輩。」

 

     ・

     ・

     ・

 

”スタスタスタ”

 

「はぁ~義輝君しつこかった。

 もしかして隠してるのバレたかなぁ。

 どうしょう、あんまりぐずぐずしている時間はない。

 他の人に知られたら面倒だし」

 

「ジミ子先輩!」

 

「あ、舞ちゃん。」

 

「あの、ちょっといいですか?」

 

「え、あ、うん、いいよ」

 

     ・

     ・

     ・

 

「いろはす~、また生徒会やんべ?

 マネージャに戻ってくるのかと思ってたのによ~」

 

「はは、まぁ、そういうな戸部。

 わかったよいろは。

 俺は推薦人になるよ。

 戸部、お前もいいよな」

 

「うぃーす。

 隼人君が言うのならそれでいいべ」

 

「ありがとうございます、葉山先輩、戸部先輩。

 あ、決勝トーナメント、必ず応援行きますね」

 

「いや、試合の日程と選挙期間は被るだろ、無理しなくていい。

 それよりこれは個人的なことだから、俺から他の部員のみんなには言えない。

 わかるよな比企谷」

 

確かに部長の葉山が言うと強制的と捉えられることになるかもしれない。

部員なかには、マネージャーでありながら少しも部活に顔を出さない一色のことを

快く思っていないやつもいるのだろう。

今度の大会はサッカー部にとって、いや葉山達3年生にとっては最後の大会だ。

今どんなささいなことあろうとも、部内の雰囲気を悪くするようなことは

避けたいということなのだろう。

 

「ああ、わかってる。

 勝手にあたらせてもらう」

 

     ・

     ・

     ・

 

「お、おい、お前どれだけ人望ないんだ」

 

「仕方ないですよ。

 会長のお仕事忙しくて、マネージャーほとんどやれてないんですから」

 

・・・いや、忙しいってその割には、お前結構奉仕部に来てなかった?

そのまま居着いちゃうかと思うぐらい。

ま、まあそれはいいとして。

一色がマネージャーやっているところを知らない一年は仕方ないとして、

2年や3年から一人も推薦人を得られなかったのは痛い。

人気投票2位の一色ブランドがあれば、まぁ何とかなるんじゃねえかと

思った俺の考えは些か甘かったのかもしれない。

 

「仕方ねえ、それよりほら次行くぞ。」

 

     ・

 

”ガラガラ”

 

「チ~ス」

 

「比企谷君、入るときはノックをしなさい」

 

「ああ、すまん・・・・・・って、お、おい三ヶ木、お前何してるんだ?」

 

「・・・・・」

 

「三ヶ木?」

 

「・・・・・」

 

・・・・・そ、そっか。

やっぱりそうなんだよな。

三ヶ木は目の前のプリントをじっと見つめて、俺のほうを見てくれない。

わかっていたんだ。

あの日以来、俺はずっと避けられていることを。

それでも、俺は、俺は

 

「比企谷君、何か用があったのではなくて?

 それにあなた塾に行ったのではなかったのね」

 

「・・・・・まぁちょっとな」

 

「こんにちわです雪ノ下先輩。

 あ、先輩知らなかったんですか?

 美佳先輩は生徒会のあと、こうやって雪ノ下先輩に勉強を

 見て頂いているんですよ」

 

「そうか」

 

「比企谷君、一色さん、それで何の用かしら?」

 

「あ、ああ。

 実はな一色が会長に立候補することになってな。

 いま推薦人を集めているところなんだ。

 雪ノ下、それと・・・三ヶ木、お前たちも推薦人になってくれないか?」

 

「お願いします雪ノ下先輩、美佳先輩」

 

「あら、立候補の届け出の締め切りは金曜日でなかったかしら?

 まだ推薦人集めてるって、間に合うの?

 まぁいいわ、一色さんなら喜んで推薦人になるわ」

 

「ありがとうございます、雪ノ下先輩」

 

「三ヶ木、お前もお願いしていいか?」

 

「・・・・・」

 

「あ、あの~美佳先輩?」

 

「会長、ごめんなさい。

 わたしは推薦人になれない」

 

「「えっ」」

 

「ごめんね会長。

 わたし、舞ちゃんに応援演説頼まれてて。

 会長、立候補しないのかと思ってたから。

 だから 」

 

「・・・・・・そ、そうですか。

 それなら仕方ないですね。

 大丈夫です美佳先輩、気になさらないでください。

 ほら先輩、次に行きますよ」

 

「・・・・・あ、ああ。

 すまない、邪魔したな」

 

     ・

 

”ガタン”

 

それと確かあいつもこれだったな。

 

”ガタン”

 

あちっ。

ふぅ~、今日は塾に行くのやめておくか。

一色結構参ってるみたいだからな。

ああやって落ち込んでベンチに座っている一色を、このまま置いて行くわけ

にはいかない。

 

”スタスタ”

 

「結局生徒会、駄目だったな」

 

「仕方ないです。

 副会長は書記ちゃんの応援だし、稲村先輩は・・・・無理言えませんから」

 

「横、いいか?」

 

「あ、はい。」

 

”どさ”

 

「ミルクティーでよかったか?」

 

「あ、ありがとうございます」

 

「一億だ」

 

「ふぇ~、か、返します。

 まだ飲んでませんから」

 

「冗談だ、ほら温まるぞ」

 

「はい」

 

”カチャ、ゴクゴクゴク”

 

ふ~、よりによって相手が蒔田だからな。

これが他の奴なら、稲村も・・・三ヶ木も頼りになるのだが。

あいつらがいれば俺なんかいらないくらいだ。

それが今回、一色にとって頼れるべき生徒会の仲間が誰も頼れない。

まして三ヶ木においては敵か。

ダメージ大きいよな。

 

「大丈夫か一色?」

 

”ちょこん”

 

「お、おい」

 

「先輩、少しだけ肩貸してくれませんか?」

 

「・・・・・ああ」

 

「正直、ちょっと辛かったです今日。

 わたし、元気無くなっちゃいました。

 先輩、すこし力分けて下さい」

 

「一色」

 

”なでなで”

 

「まだ。時間はある。

 大丈夫だ、俺が何とかしてやる」

 

「・・・・・ありがとうございます先輩。

 なんだか先輩にこうやって頭撫でられてると、すごく気持ちが安らぎます」

 

「そっか」

 

     ・

     ・

     ・

 

「・・・ということなんだ。

 由比ヶ浜、すまんがお前も推薦人になってくれないか?」

 

「それで今日は塾に来なかったんだ。

 ヒッキーらしいね。

 うんいいよ、あたし推薦人になる」

 

「サンキュ。

 あ、あとそれとだな 」

 

「わかってる。

 優美子とか姫菜にも聞いてみるね」

 

「ああ、すまん頼む」

 

「うん。

 ・・・・・ヒッキ―あのね、今度 」

 

「ん?」

 

「え、えっと、あのね・・・今度一緒に早応大行かない?

 あたし、まだ行ったことないから一度見ておきたいなぁって」

 

「ん、ああそうだな。

 まあなんだ、今度適当にな」

 

「本当! う、うん絶対にね。

 お、お休みヒッキー」

 

「お、おう、お休み。

 また明日な」

 

「うん、また明日学校でね」

 

ふぅ~、戸塚と由比ヶ浜はOKっと。

あと他には・・・・・・ち、しゃあねえな。

 

”カシャカシャ”

 

「我だ!」

 

「いやお前出るのはぇ~て。

 今何時だと思うんだ。

 もしかして一日中寝るまでずっとスマホの画面見てるのか?」

 

「し、失敬な。

 我はそれほど暇人ではない。

 お告げだ、お告げがあったのだ。

 ウトウトした時にどこからともなく地味な感じの眼鏡をかけた天使が現れて、

 まもなく貴様から我に助けを求める電話がかかってくると告げていったのだ。

 で、なにがあったのだ?

 貴様とは主従の間柄。

 主人として下僕の願い事の一つぐらい聞いてやろうではないか」

 

”プー、プー”

 

ち、やっぱりあいつはいい。

めんどくさい。

それに今の俺に、地味と眼鏡は禁止キーワードだ。

マジ答える。

 

”ブ~、ブ~”

 

げ、電話かけてきやがった。

無視だ無視!

 

ブ~、ブ~、ブ~、ブ~、ブ~

 

ええい、しつこい!

 

”カシャカシャ”

 

「酷い酷いではないか八幡!

 何ゆえ毎度毎度、いきなり電話を切るのだ」

 

「うっせ。

 お前ちょ~しつこいぞ。

 まあいい仕方ねぇ、電話出てしまったからな。

 材木座、お前の名前貸せ」

 

「は、なんだ藪からスティックに」

 

”プー、プー”

 

さてマジで他に誰かいないか。

 

”ブ~、ブ~”

 

ち、くそ。

 

”カシャカシャ”

 

「だ、だから何ゆえ電話を切るのだ」

 

「うっせ。

 一色が生徒会会長に立候補するんだが推薦人が足りねぇんだ。

 お前の名前、書いておくからな」

 

「なんだそんなことか。

 構わぬ、貴様と我は古き戦友、仲間ではないか」

 

「おい、主従の関係っていってたんじゃなぇか?

 まぁいい、すまんな」

 

「そんな小さいこと気にするな。

 なぁ、それよりも八幡。

 我も貴様に聞きたいことがあったのだが」

 

「ん、なんだ?」

 

「最近なんだが、毎日昼休みに我の魂の安息場に三ヶ木女子が来ててだな」

 

「安息場? ああ図書室な」

 

ぐっ、こいつ禁止キーワード通り越してマジ直じゃねえか。

なんだ三ヶ木、昼休みに教室に行ってもいないと思ったら図書室にいたのか。

俺を避けてずっと図書室に行ってたのか。

 

「ま、そ、そうともいう。

 それでだな、いつもアメリカの紹介本ばかり読んでおるのだ。

 同じ本ばかりをな。

 しかもため息をつきながら真剣なまなざしでの」

 

「アメリカ?」

 

「そう、アメリカだ。

 それで我がアメリカにでも行くのかと聞いてみたのだが、

 三ヶ木女子はニコニコ笑うだけで何も答えてくれぬ。

 貴様は何か知らぬか?」

 

「い、いや何も聞いてない」

 

俺が何か聞いているハズなどない

なぜならあの日以来話していないのだからな。

今日も結局のところ俺とは一言も話をしてくれなかった。

アメリカ?

なんだ三ヶ木はアメリカ旅行に行きたかったのか?

あいつからそんな話聞いたことがない。

そういえば、どこか行こうとかそんな話したことなかったな。

あいつのこと知っている気でいて何も知らなかったんだ俺。

 

「そうか。

 貴様になら何か話してるかと思ったのだがな。

 まぁ期待せずに待っておる故、何かわかったらよろしく頼む」

 

「ああ」

 

 

 

 

--------

 

 

 

 

「ふあ~」

 

昨日は一色にはああいったが結構やばい。

考えれば考えるほどやばすぎて、全然眠れなかった。

元々、俺に人を集めるスキルは無い。

それでも一色のブランドならって思ってたんだがな。

結局、葉山、戸部、雪ノ下、川越、戸塚、材木座、戸塚

戸塚二人いる。

戸塚ならいいだろう、なんなら全員戸塚でもいい。

はぁ~戸塚に囲まれて暮らして~

 

「ヒッキーやっはろ~

 あ、また顔キモくなってる」

 

「あ、お、おう。

 まぁいつもの顔だ、気にするな。

 それよりどうだった?」

 

「うん、あのね。

 えっと優美子と姫菜、大和君は推薦人okだって」

 

「大岡は?」

 

「あ、なんか大岡君はなんか駄目だった。

 ごめんね」

 

「そ、そっか。

 いや、すまない面倒かけた」

 

「でもどう、人数何とかなりそう?」

 

「ちょっと厳しいな。

 ほらここに書き出した人数に俺とお前を入れて11人だ」

 

「そっか。

 あ、生徒会は?

 生徒会の人の名前って誰も書いてないじゃん」

 

「生徒会はダメだ」

 

「え、うそ!」

 

「本牧は書記ちゃんの推薦人、稲村は、まぁ中立を選んだ」

 

「美佳っち、美佳っちは?」

 

「・・・あいつは蒔田派だ」

 

「え、うそ。

 そ、そうなんだ」

 

正直、やっぱり戦力不足だ。

まぁないものは仕方がねぇ。

さてどうするか。

 

     ・

     ・

     ・

 

”ゴクゴクゴク”

 

「ふぅ~」

 

マッ缶うめぇ~

脳みそに糖質が染み渡るようだ。

何でも糖質が不足すると脳細胞間のコミュニケーションが損なわれるという。

ならば俺はいつも糖質が不足しているのだろうか。

だから俺がマッ缶を飲み続けるのは間違っていない。

・・・・・さ、さてっと。

 

放課後、一色はもう一度クラスの連中に推薦人になってもらえないか頼みに行くと

言ってたな。

だが、昨日の今日で状況が変わるとは思えん。

 

だとすれば、味方がいないのだとすれば、敵の敵を味方にするしかない。

蒔田が会長になることによって不利益を被るもの。

そこに当たってみるか。

 

”パコ~ン、パコ~ン”

 

それにしても今日も天使の舞が観れて幸せだ。

マジ心が救われる。

戸塚は大学行ってもテニス続けるんだろうなぁ。

俺もあの時、戸塚の依頼に応えてテニス部に入っていれば、

今頃戸塚と二人で・・・

おお、戸塚がこっち見て手を振ってる。

天使! マジ天使だ戸塚~

・・・テニス部か、そうだな、あいつにも頼んでみるか。

 

     ・

     ・

     ・

 

「比企谷、断る」

 

「な、なぜだ瀬谷。

 新聞部にとっても悪い話ではないはずだ。

 蒔田の部活紹介は学校新聞の目玉になってるんだろ。

 あいつが生徒会会長になって抜けられたら、新聞部としても痛手なはずだ。

 だから 」

 

「比企谷、確かに蒔田に抜けられるのはすごく痛い。

 だけど、蒔田はここまで一緒にやってきた仲間なんだ。

 初めは何だこの女はって思ってたけど、今では大事な仲間だ。

 仲間が会長をやりたいって言うのなら、俺たちは喜んで応援してやりたい。

 お前ならわかるはずだと思うが」

 

「・・・・・・・そうだな。

 すまん、悪かった忘れてくれるとありがたい」

 

     ・

     ・

     ・

 

「断る!」

 

「は、な、なんでだ。

 推薦人に名前貸してくれるだけでいいんだ。

 お前ひとり分でもいい」

 

「お前に協力なんかしない。」

 

「な、なぜだ」

 

「・・・自分の胸に聞いてみるんだな」

 

「自分の胸にだと?」

 

”スタスタスタ”

 

「お、おい刈宿」

 

     ・

     ・

     ・

 

どうする。

新聞部もテニス部も協力得られなかった。

くそ、マジやばいな。

こうなったら一色が頼みだが。

 

”タッタッタッ“

 

「せんぱ~い」

 

「お、おう一色どうだった?」

 

「はぁ、はぁ、はぁ。

 体育委員長さんと文実の時の広報部長さん、お二人にOKもらえました」

 

「お、おうそうか。

 で、クラスのほうはどうだったんだ」

 

「・・・・・」

 

「ダメだったのか」

 

「はい、おかしいんですよ~

 やっぱりその話をしようとするとなんか避けられて」

 

おかしい、どう考えてもおかしい。

まぁ女子の反応はわかるとして、一色は男子には結構人気があったはずだ。

それが推薦人になることを避けられているというのは何かあるのか?

 

「先輩?」

 

「あ、ああ。

 これで13人だな。

 あと残り17人」

 

どうする。

さすがに知り合いに頼むってのはそろそろ限界かもしれん。

俺、そんなに知り合いいねぇ~し。

だとすれば残る手は。

 

「なぁ一色、生徒会室に入れるか?

 まだほかの奴らいたりするのか?」

 

「え、あ、大丈夫だと思いますよ

 今はあまりやることもないですし、受験とかありますから

 早めに切り上げているはずですよ。

 書記ちゃんも選挙の準備とかありますし」

 

「そうか。

 それなら生徒会室行くぞ」

 

「あ、じゃあ、鍵借りてきますね」

 

     ・

 

”ペラペラ”

 

「先輩、なにしてるんですか?」

 

「利益誘導だ。

 一色の生徒会になって利益を享受したやつらを探してるんだ。

 そういえばお前、今年部費の全面見直ししたな

 それで恩恵をあずかったのは」

 

”パラパラ”

 

「柔道部とバスケ部と演劇部か。

 一色、明日の放課後はこいつらのとこ当たってみるぞ」

 

「あ、はい」

 

     ・

     ・

     ・

 

「ただいま」

 

「あ、お兄ちゃんおかえり。

 ご飯できてるからさっさと食べちゃって」

 

「・・・・・」

 

「ん? どうしたんお兄ちゃん」

 

そうだ。

小町がいた。

俺には世界一の妹がいたんだ。

小町とそのコミュを頼れば、10人や20人は問題ではない。

なぜ気が付かなかったんだ。

全く灯台もと暗しとはこのことだ。

 

「な、なぁ小町。

 今度の生徒会選挙だがな」

 

「あ、お兄ちゃん。

 お兄ちゃんも小町の応援よろしくね」

 

「は、はぁ?

 何のことだ」

 

「え、マジ? 今のマジ?

 この前、小町生徒会書記に立候補したって言ったよね。

 うへぇ~忘れてんだ。

 小町的にポイントチョ~低い」

 

「・・・・・お前立候補してたの」

 

「お兄ちゃん、晩ご飯抜き」

 

 

 

 

--------

 

 

 

 

まずい、柔道部、バスケ部、演劇部の奴らに来年度の部費見直しの

脅しをかけて、なんとか合計20人まで推薦人を確保できたが、

まだあと10人も足りねぇ。

部活紹介の取材もあって、結構蒔田の支持者多いんだよな。

くそ、締め切り明日かぁ。

 

「先輩」

 

一色、そんな心配そうな顔するな。

・・・だがこんな感じの一色もいいもんだな。

この表情を見ていると是が非でも何とかしたくなる。

 

”なでなで”

 

「心配するな一色。

 お兄ちゃんが何とかしてやる」

 

「は、はぁ! な、なんですかそれ!」

 

「あ、い、いやすまん。

 ついお前見てたら頭を撫でたくなってな。

 それにほら、お前頭撫でられると安心するんだったろ」

 

やば、思わずまた一色の頭な撫でてしまった。

え、げ、一色、めっちゃ怒ってる。

だが、な、なぜだ、頭なぜたら落ち着くんじゃなかったのか?

やばい、いつもの時の2倍、いや3倍はほっぺが膨れてる。

 

「あ、あの、い、一色?」

 

「せ、先輩のバカー!!」

 

”スタスタスタ”

 

「お、おい、一色」

 

     ・

     ・

     ・

 

「ゆきのん、今日も勉強見てくれてありがと。」

 

「最近、英語の方の成績も上がっているようね。

 これも麻緒さんのおかげかしら。

 この調子で頑張りなさい」

 

「だって、麻緒さん家では日本語禁止って言うんだよ。

 もし英語間違ったり日本語で喋ったりしたら、その都度百円も

 貯金させられるんだから。

 とうちゃんなんて麻緒さん帰るまで一言も喋らないし」

 

「そ、そう、大変そうね」

 

「大変だよ。

 でも頑張るね、折角ゆきのんや麻緒さんが勉強見てくれてるんだから。

 それじゃまた明日ね。」

 

「ええ、また明日」

 

”スタスタスタ”

 

「へへ、ゆきのんに褒められちゃった。

 この調子で頑張らないと。

 ・・・でもジャリっ娘大丈夫かなぁ。

 立候補の締め切り、もう明日だよね。

 推薦人集まったかなぁ。

 もちっとはやく教えてくれてたら、せめて推薦人集めるぐらい手伝えたのに」

 

「ね、聞いた?

 一色のやつやっぱり会長に立候補しようとしてるんだって」

 

”ヒソヒソ”

 

「うん? あの子達が話してるのジャリっ娘のことだよね。

 なんだろう?」

 

”ソ~”

 

「うん、聞いた聞いた。」

 

「ねぇ、絶対一色を会長にしたら駄目よ。

 折角、蒔田さん担ぎ出したんだから」

 

「そうそう、それに柄沢君も副会長に立候補してるんだから、同じ生徒会になったら

 絶対柄沢君とられちゃうよ」

 

「うん。

 みんな力貸してね」

 

「任せといて。

 明日投票の締め切りだから、みんな今まで通りちゃんと一色の周りキープね。

 絶対一人にしたら駄目だよ」

 

「そうそう、みんなで周りを囲んで、男子達が推薦人にならないように

 圧力かけなくちゃ。」

 

”スタスタスタ”

 

「は、はぁ!

 な、なに言ってるのあの人たち。

 推薦人、集めさせないようにしてるんだ。

 比企谷君‥・・・ジャリっ娘に伝えないと」

 

”ダー”

 

     ・

     ・

     ・

 

「な、なぁ、一色機嫌直せって」

 

「知りません!」

 

「ほ、ほらミルクティー、ミルクティー買ってやるから」

 

「な! そ、そんなものでわたしが釣られるとと思ってるんですか?」

 

「だめか?」

 

「・・・反省しているようですし、仕方ないですね釣られてあげます。

 早く奢ってください、えへ♡」

 

「お、おう」

 

な、なにこの笑顔、ちょ~かわいい。

そんなにミルクティ―好きなのねこの娘。

まぁ機嫌治ってよかった。

 

”ガタン”

 

「ほら」

 

「ありがとうございま~す。」 

 

”ゴクゴク”

 

「ぷはぁ~、やっぱりミルクティ―ですね、先輩」

 

「いや、マッ缶だろ

 この甘さは他の追従を許さん」

 

「それ、甘すぎですから。

 先輩だけですよ、そんな甘いの好きなの。

 それより先輩、明日どうしましょう」

 

「そうだな」

 

あと十人か。

立候補の締め切りまで時間ねえし、実際打つ手がないんだよな。

・・・・・正攻法では。

 

「まぁ、明日はもう一度生徒会に関係したやつ片っ端から当たってみよう。」

 

「それで大丈夫でしょか?」

 

「心配するな。

 いざっていうときは俺に考えがある」

 

「考え?」

 

     ・

     ・

     ・

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ、どこにいるんだろう?

 自転車あったからまだ帰っていないと思うけど」

 

「はぁ!!」

 

「な、なに今の声、ジャリっ娘?

 えっと、あ、いた!

 でもなんか変な雰囲気。

 何かあったのかなぁ?」

 

”スタスタスタ”

 

「そんなの駄目ですよ」

 

「大丈夫だ一色。

 推薦人なんて誰も確認なんかしねえ。

 ちゃんと人数分あるかどうかを確認するだけだ。

 去年お前が会長に立候補させられた時も、お前が言うまで誰も気がつかなかった

 じゃねえか。

 立候補者に対してもそんなもんなんだ。

 推薦人ならなおさら気にするやつはいねえ」

 

「で、でも先輩。」

 

「まぁ、これは明日残りの10人が集められなかったときの方法だ。

 あとな、万一なんかあった時はお前は知らないことにしろ。

 これは俺が勝手にすることだ。

 いいな」

 

「先輩、明日絶対10人に集めますから」

 

無理だ一色。

常識的に明日一日で10人は集められない。

もしそんなに簡単に集められるものであるなら、今日までに集められてるはずだ。

なぁに一度受理されてしまえばこっちのもんだ。

選挙管理委員会も自らの不手際を公にはするまい。

だから締め切りギリギリに持ち込んでさっさと受理させてしまおう。

まあ万が一の時も一色は被害者だ。

こいつにダメージは絶対与えない。

そうこれでいい。

 

”スタスタスタ”

 

「10人、あと10人も集めなきゃいけないんだ。

 もし集められないと比企谷君が・・・・・」

 

 

 

 

--------

 

 

 

 

”ガラガラ”

 

ダメだった、やっぱりそうは簡単にいかねえか。

まあこれでなんとかなるぐらいだったら、とっくになんとか

なっているってことだ。

締め切りまでもう30分もないじゃねえか。

やっぱり他に手はない。

 

「先輩、やっぱり駄目だったです。

 わたし本当に信用されてなかったんですね」

 

そんなことはない。

お前は立派な会長だ。

今まで生徒会はちゃんとお前を中心に機能してきたじゃねえか

今回は少し時間が足りなかっただけだ。

こいつなら次の会長も安心して任せられるはずだ。

それに俺はお前の想いかなえてやりたい。

だから

 

「なぁ一色、仕方ねぇ。

 やっぱり残り10人、誰でもいいから名前書いて提出するぞ」

 

「・・・・・」

 

「いいから推薦人名簿かせ。

 俺が書く」

 

「せ、先輩。

 ・・・・・・だ、駄目です、やっぱりそれはダメです。

 わたし、それくらいなら立候補は 」

 

”ガラガラ”

 

「比企谷、いいか?」

 

「瀬谷」

 

”バサ”

 

「推薦人の名簿だ。

 時間がなかったのでな、新聞部全員とまではいかないがもらえた部員の名前だ。

 8人分ある、これ使ってくれ」

 

「瀬谷。

 だがなんで、どうしてだ。」

 

「・・・選挙の協力はできないからな。

 急がないと締め切りまで時間ないんじゃないか?」

 

「あ、ああ、わかってる。

 すまない瀬谷。」

 

「じゃあ。」

 

”スタスタスタ”

 

「せ、先輩」

 

「ああ、あと二人だ。

 一色、あと二人何とかするぞ。

 電話だ電話。

 知ってるやつに電話して、少し強引でも推薦人になってもらうぞ」

 

「はい」

 

”ガラガラ”

 

「今から電話しても無理だろ。

 締め切りまであと何分あると思うんだ」

 

「か、刈宿!」

 

”バサ”

 

「テニス部で推薦人の了解をもらった部員の名前だ。

 全部で10人分ある。

 これで足りるんだろう」

 

「刈宿」

 

「じゃあな。」

 

「ま、まて刈宿!

 なんでだ、なんで急に」

 

「・・・・・」

 

”スタスタスタ”

 

「一色、取り合えず推薦人名簿の提出の準備しろ」

 

「あ、はい」

 

     ・

     ・

     ・

 

「これで良かったのかい三ヶ木さん」

 

「うん、ありがと瀬谷君」

 

「いいって。

 三ヶ木さんにはいつも差し入れとかお世話になってるからね。

 この前も豪華な差し入れ貰ったばかりだし。

 でもさっき言ってた件、蒔田には言っておかなくていいのか?」

 

「うううん、まだ言えない。

 だって証拠がないもん。

 わたしが聞いたってだけでは証拠にならない。

 あ、瀬谷君もこの件はまだ内緒にしてね」

 

「ああ、わかってる

 それじゃあ」

 

「うん、またね」

 

     ・

     ・

     ・

 

おかしい。

瀬谷にしろ刈宿にしろ、あれだけきっぱりと断られてたのに、

なんで急に手のひらを返したように協力してくれたんだ。

瀬谷と刈宿、あいつらを結ぶ何かが。

・・・・・・・はっ!

 

「すまん一色、その名簿一人で提出してきてくれ」

 

”ダー”

 

「え? あ、せ、先輩?」

 

     ・

     ・

     ・

 

「お~い刈宿~、今からみんなでららぽ行くけどお前どうする?」

 

「あ、俺今日疲れたから帰るわ」

 

「そっか、じゃあまたな」

 

「おう」

 

「あ、それと彼女さんによろしくな」

 

「ば、ばっか、うっせ」

 

”ワイワイ、ガヤガヤ”

 

「彼女っか」

 

    ・

 

”タッタッタッ”

 

確かあいつも自転車通学のはずだ。

一年の自転車置き場はこの奥だがまだ帰ってないか。

完全下校時間、過ぎてるからな。

・・・・・だけどいたらどうする気だ。

ただ確認したいんだ俺。

ん、あ、いた。

 

「おい、刈宿!」

 

「・・・・・ちっ!」

 

”スタスタスタ”

 

「はぁはぁはぁ、ちょ、ちょっと待て刈宿」

 

「・・・何の用だ」

 

「ひとつお前に聞きたいことがある。

 なぜだ、なぜ急に手伝ってくれたんだ」

 

「どうでもいいだろう」

 

「よくねぇ。

 協力できねぇって言ってたお前が、いやお前だけじゃない、

 瀬谷までも急に話を合わせたように推薦人の名簿持ってきた。

 なぜだ」

 

「・・・・・」

 

「三ヶ木だな」

 

「・・・・・」

 

「だがそれがわからない。

 おかしいだろ!

 俺はあいつに嫌われてて、ずっと避けられていたのに。

 だのになぜだ、なぜあいつは・・・・・

 そ、そうか一色、一色のためにあいつは 」

 

”ぐぃ”

 

「ぐ、く、くるしい。

 やめろ刈宿」

 

「俺はな、お前のそういうところが気に食わねえんだ」

 

「な、なんのことだ」

 

「あの人、美佳さんはな 」

 

『・・・刈宿君、人を好きになるってこんなに辛いの?』

 

「くそ!

 美佳さんがあんたのこと嫌いになるわけないだろうが。

 そんなこと出来るぐらいなら、あんなに辛い思いしなくてすんだんだ。

 あの名簿だってな、あんたのこと心配して美佳さんがテニス部の部員一人一人に

 頭下げてお願いして集めたんだよ」

 

「三ヶ木が頭下げて。

 お、俺のこと心配してだと」

 

「いいかよく聞け。

 前に言ったよな、今度美佳さんを泣かせるようなことがあったら、俺が美佳さんを

 奪うって。

 あんたのことなんか俺が忘れさせてやる。

 お前になんか美佳さんを渡さない」

 

     ・

     ・

     ・

 

「はっくちょん!

 ふぇ~、やばいまた風邪ひいたかなぁ。

 それとも誰か噂してるのかも」

 

「Bless you。

 はい美佳」

 

「え? 麻緒さん何で貯金箱を」

 

「百円」

 

「な、何で!」

 

「くしゃみの時はAhchooっていいなさい!」

 

「い、いやだって~

 そんなの無理ー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




最後までありがとさまです。

何とかいろはす立候補できました。
修学旅行と今回といろはすフアンの方ごめんなさいです。
どうしてもテレビシリーズの昼食風景が頭をよぎり、いろはすぼっち疑惑が。
(原作では数人の友人といたはずなんだけど)

さて次話、蒔田との宿命の対決っす、勝者はどっちだ。

あ、そういえば13巻そろそろかと。
やばい、また更新遅れそう。
き、気をつけますっす。
ではでは、また次話読んでいただけたらです。
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