似て非なるもの   作:裏方さん

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毎度ありがとうございます。
ほんとすみません、更新めっちゃ遅くなりました。

・・・・・今年も出た4本足の冬の魔物の魔力に勝てなくて。
気がつくとまたもや朝。
え~い、なんとか魔物退治しないと。
え、えっと今回はクリスマス編。
オリヒロの決意は、八幡の決意は。

ではよろしくお願いします。
あ、でも今回2万・・・は、8千字越え。
ほ、本当にすみません、お時間お掛けしますのでご無理なさらず。
(う~、今回すみませんばっかり)

ではよろしくお願いします。


クリスマス編 -二人の決意-

「決めたんだ。

 ちゃんと考えた、いっぱいいっぱい考えた。

 もう迷わない。

 だから、」

 

”パタ”

 

「三ヶ木闘病日記・・・完。

 今日でもう終わり。

 これ以上書き紡ぐことはない。

 今まで支えになってくれてありがと」

 

     ・

     ・

     ・

 

『二度と話しかけないで!』

 

あれからもう10日が過ぎた。

カレンダーもあと最後の一枚を残すのみとなって、街にはクリスマスを彩る

飾りつけが目立ち始めた。

・・・・・・・クリスマスか。

あいつ今年のクリスマスはいないんだな。

冬休みになったらアメリカに行くって言ってたはずだ、刈宿と一緒に。

それが何を意味するか、いくら俺でもわかる。

男子と女子、日帰りじゃない旅行に一緒に行くって意味ぐらい。

 

「はぁー」

 

最近気が付くとよくため息をついている。

なんでも一つため息をつくと、一つ幸せがなくなるという。

だとしたら、あれから俺はどれだけの幸せをなくしたんだろう。

だけどどうしょうもない。

俺の胸の奥に生まれた何かがそうさせるんだ。

あの時、胸の奥に生まれた何かが。

例えるなら黒く、深く、静かな沼。

その沼が生まれてから、なにをするにもすごく疲れるんだ。

まるで生気がその沼に引き込まれ、深く深く沈み込んでいくように。

 

「はぁー」

 

ため息をつくことで少しだけ心が安らぐ。

それが幸せをまた一つ失うこととわかっていても、それしか俺には術がない。

どうしたらこの深い沼から抜け出すことができるのだろう。

どうしたら生気を取り戻すことができるんだろう。

それともこのまま全てが沈み込んでしまうのだろうかこの沼に。

そしてもう二度と俺は・・・

 

「ヒッキー、お待たせ。

 ごめんねいつも待たせて」

 

「あ、ああ、別に問題ない」

 

「え!」

 

「ん、どうした?」

 

「うん。

 あ、あのねヒッキー、最近ちゃんと眠れてる?

 なんかすごく顔疲れてる」

 

「由比ヶ浜、俺達は受験生なんだ。

 十分な睡眠がとれないのは当たり前だ。

 まぁ、ちゃんと数学の授業中寝てるから大丈夫だ」

 

「いや、それもどうかなぁ」

 

「それより塾行くぞ」

 

「あ、うん」

 

”スタスタスタ”

 

     ・

 

「でさ、優美子ったらね 」

 

「はぁー」

 

俺、いつからこんなになってしまったんだ。

人と必要以上に接せず、人に期待せず、人を見たら泥棒と・・・・・

いや最後のはちょっと違う。

と、とにかく!

ぼっち道を極めたはずなのに。

・・・気が付いたら繋がりを求めていた。

はは、ぼっち失格じゃねえか。

 

「はぁー」

 

「ヒッキー?」

 

「ん、なんだ?」

 

「今の話聞いてな・・・・・・・・

 うううん、なんでもない。

 ほら急がいないと塾遅れるよ」

 

「ああ」

 

俺がしてやれることってなんだろう。

あいつのために俺ができることって。

 

”スタスタスタ”

 

「はぁー」

 

「・・・・・」

 

     ・

     ・

     ・

 

「あなたは本当にそれでいいの?」

 

「うん。

 ちゃんと考えて決めたんだ」

 

「そう、でもそれならもう 」

 

「うううん、ゆきのん塾は続けたい。

 ちゃんと勉強頑張りたい。

 特に英語はもっと頑張らないと。

 日常会話できないといろいろ大変なんだ。

 だからこれからも勉強教えて下さい。

 お願いします」

 

”ペコ”

 

「あ、あとね、オープンキャンパスありがと。

 ほんと行ってよかった」

 

「あなたがちゃんと自分で考えて決めたことならそれでいい。

 わたしは構わないわ、勉強続けましょう。

 そうねそれなら今日は英語にしましょう。

 このプリントをやってみなさい」

 

「うん、絶対今日は満点取って見せるね」

 

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

 

”カチャカチャ”

 

「ん、何やってんの清川」

 

「・・・・・」

 

「ねっ」

 

「・・・・・」

 

”ぽか!”

 

「い、いてぇ、なにするんだ蒔田!」

 

「さっきから何してるのって聞いてんの」

 

「プログラムの修正だ。

 くそ、この前も初めからこのパソコン使えていれば。

 結局、中途半端なものになってコンテスト入賞逃したんだ。

 今度はこそ完璧なものに仕上げて入賞してやるんだ」

 

”カチャカチャ”

 

「ふ~ん、ま、どうでもいいけど」

 

「蒔田さん、そろそろ時間だよ。

 一色さん達、校門で待ってるって」

 

「あ、了解、副会長。

 じゃ清川、留守番よろしく」

 

「・・・・・」

 

「きよか 」

 

「わ、わかった。

 わかったから殴るな」

 

「じゃあね」

 

”ガラガラ、ピシャン”

 

「・・・・・行った、行ったよな。

 よ、よし!」

 

”スタスタ”

 

「へ、へへへ。

 これからが俺の時間。

 あいつらがクリスマス合同イベントの打ち合わせに行ったこの時から、

 俺の至高の時間が始まるのだー!

 くそくそくそ、なにが会長と庶務は一心同体だ、なにがぐふふふだ!

 あのジミ眼鏡め!

 一色の奴、蒔田とばっかりじゃないか。

 それに蒔田は蒔田で俺のことこき使いやがって、すぐ暴力振るうし。

 ふ、ふん!

 さてっと・・・

 えへへへへ、い、一色の机。

 はぁ~、さっきまでここにいたんだよな~、微かに温もりが。

 ん? あれって」

 

”ひょい”

 

「あ、これ一色の三色ボールペン」

 

”カキカキカキ”

 

「ふむ、壊れてはいないようだな。

 さっき何か書いてたようだし。

 落としていったのか?」

 

”ジ―”

 

「え、えっと」

 

”スリスリ”

 

「へ、へへへへ」

 

”ガラガラ”

 

「ボールペン忘れ・・・・・ちゃっ・・・・・・・・・・た」

 

「げ、い、一色!

 い、いや、これはだな、そ、その、そこに落ちてたから俺が拾って」

 

「・・・・・」

 

”ガサガサ”

 

「あ、あの~一色、き、聞いてる?

 え、えっと机の中、何を探して?

 ボールペンはこちらに」

 

「あった」

 

「え、なにが?」

 

「消毒スプレー」

 

”プシュー”

 

「ぐはぁ~、や、やめろ」

 

「ウィルス消滅、ウィルス消滅、ウィルス消滅」

 

”プシュー、プシュー、プシュー”

 

「や、やめてくれー」

 

     ・

     ・

     ・

 

「遅いね、いろはちゃん」

 

「あ、来た来た。

 えっ、」

 

”プシュー”

 

「ぐはぁ~」

 

「ほらさっさと歩けこのウィルス!」

 

「あ、あれ、清川?」

 

「藤沢ちゃん、蒔田お待たせ」

 

「うん。

 え、でもいろはちゃん、なんで清川君が?

 留守番じゃ」

 

「蒔田、留守番代わって」

 

「え?」

 

「このキモ川が 」

 

”スタスタ”

 

「あ、いろはちゃん、やっはろー」

 

「あ、結衣先輩、やっはろーさんです。

 ついでの先輩も」

 

お、おい、俺はついでなのか。

まぁいいけど。

でも校門でこいつらに会うなんて珍しいな。

えっと一色に蒔田、藤沢ちゃんに小町にウィルス野郎。

それと・・・・・だれだっけあとの二人。

 

「おう、ご苦労さん。

 でもどうしたんだ、生徒会のみんな揃って?」

 

「今からクリスマス合同イベントの打ち合わせに行くところなんですよ。

 先輩達はお帰りですか?」

 

「あ、あのね今から塾に行くところだよ」

 

「そういえば最近よくお二人一緒にいますね」

 

「そうか?」

 

「あはは、たまたまだよいろはちゃん。

 ほら教室も同じだし、塾も同じだから」

 

「・・・そうですか」

 

は、いろはす、なにその目。

なにかすげ~疑いの眼差し。

この前の早応大からの帰り見られてないよね。

え、もしかして見られてた?

こ、ここは一刻も早く抜け出さないと。

 

「そ、それじゃな、塾遅れるからいくわ」

 

「いろはちゃん、みんなもクリスマス合同イベント頑張ってね」

 

「「はい」」

 

”スタスタスタ”

 

「ね、ヒッキー。

 明日さ、塾休みだよね」

 

「忙しい」

 

「まだ何も言ってないじゃん」

 

”スタスタスタ”

 

「ね、一色」

 

「・・・・・・・小町ちゃん 」

 

「げ!

 あ、そ、そうだ、小町留守番!

 小町は清川先輩の代わりに、生徒会室の留守番に行ってくるであります。

 では!」

 

”ダ―”

 

「あ、逃げた」

 

 

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

 

 

”テクテクテク”

 

「や、やばい、遅くなっちゃった。

 平塚先生、ちょっと手伝っていきたまえって、ちょっとじゃないじゃん。

 う~、散々こき使われた。

 少し相談に行っただけなのに」

 

”スタ、スタ、スタ”

 

「で、でもさ、相談しに行ってよかった。

 ほんとこれですっきりした。

 よし頑張らないと。

 あ、でも・・・今日の平塚先生と広川先生何か変だったなぁ~。

 席隣同士なのに、二人とも一言も話しなかったし、目も会わせようとしなかった。

 いつもだったらマンガ読んでる広川先生に注意するはずなのに。

 抹殺のラストブリットって感じで。

 ・・・・・・・・・・・・なんだろう、なんかいつもと雰囲気が。

 はっ、ゆきのん!

 まずい急がないと。

 あ、で、でも元生徒会役員であるからには廊下を走っては。

 早歩き早歩き」

 

”テクテクテク”

 

     ・

 

「え、えっと~

 ゆきのん怒ってるかなぁ。

 取りあえずノックを。

 ノックしないとゆきのんめっちゃ怒るから。

 ん?」

 

「でさ、ヒッキーたらムキになっちゃってさ。

 涎掛けのハートに縁はないんだ!

 ってさ」

 

「馬鹿、お前それは言わない約束だぞ」

 

「あっ、この声って結衣ちゃん?

 それに比企谷君も」

 

「まったく、あなたって人は」

 

「うっせ」

 

「やっぱり結衣ちゃんと比企谷君来てるんだ。

 いつもは挨拶だけして塾行っちゃうのに」

 

「えへへ、ゆきのん」

 

”ピタ”

 

「いきなり、く、くっつかないでくれるかしら由比ヶ浜さん」

 

「いいじゃん、少し寒いし」

 

「そ、そ、それなら今暖房の温度を。

 はっ、デバガメ谷君、いやらしい目で見ないでくれるかしら」

 

「い、いや見てないから。

 いつもと同じ目だし」

 

”ワイワイ、ガヤガヤ”

 

「ふ~、これじゃ部室に入れないや。

 うんしょっと」

 

”ドサ”

 

「はぁ~、ゆきのんほんと楽しそうだなぁ。

 まぁ、わかっていたんだ。

 わたしはあくまでも二人の代役だもん。

 この三人の関係は特別なもの。

 どんなに頑張っても、わたしにはこの中には入れない、入っちゃいけない。

 目の前にあるのに、それはとても遠くにあって。

 わたしごときには手が届きようもないものなんだ」

 

”スク”

 

「いつまでここに座ってても仕方ない。

 今日はもう帰ろう」

 

”トボトボトボ”

 

「まったく、あなたはそうやって」

 

「いや、俺にも譲れないものがある」

 

「へへ、こうやってゆっくり話できるのって久しぶりだね」

 

「ん?

 由比ヶ浜、お前ら昼ご飯は一緒に食べているんじゃないのか?

 だったら久しぶりじゃ 」

 

「だって、ヒッキーいないじゃん。

 こうやってさ、三人が揃ってゆっくりってのが久しぶりって言ってるの」

 

「そういうことか」

 

「うん、そうだ、そういうこと。

 あっ、あのさ今度の土曜日ってさ、みんな何か用事あったりする?」

 

「今度の土曜日・・・ええ、特に用事はないわ」

 

「やったー。

 ね、ヒッキーは?」

 

「いや俺は勉強が 」

 

「だったらさ、みんなで図書館で勉強しない。

 あたし、ゆきのんとかヒッキーにいろいろ教えてほしいところあるし。

 それでさ、帰りにららぽにでもよってさ」

 

「俺は自宅で・・・・・ららぽっか」

 

”ガシガシ”

 

そうだな、ついでに見に行ってくるか。

ららぽならきっと売っていると思うんだが。

 

「ま、いっか。

 あ、ららぽでちょっと買いたいものがあるんだがいいか?」

 

「うん!

 じゃあ決まりね。

 えへへ、チョ~楽しみ」

 

     ・

     ・

     ・

 

”トボトボトボ”

 

「・・・・・あ、そうだ、一応ゆきのんに電話しておかなきゃ。

 えっと、うん?」

 

”パタパタパタ”

 

「へ、あ、か、会長」

 

「あ、美佳先輩。

 今お帰りですか?

 あれ? でも確か奉仕部さんで雪ノ下先輩とお勉強しているはずじゃ」

 

「あ、う、うん。

 ちょ、ちょっとね今日は・・・」

 

「ふ~ん。

 あ、雪ノ下先輩はまだ部室にいました?」

 

「あ、うん。

 あ、でも今は結衣ちゃんと比企谷君も来てるから、そ、その邪魔は 」

 

「え、本当ですか?

 ちゃんす!」

 

”ダ―”

 

「あ、か、会長~」

 

     ・

     ・

     ・

 

”ちらっ”

 

「ふぅ~」

 

「今日は美佳っち遅いね」

 

「ええ。

 連絡もないし、どうしたのかしら?」

 

・・・ん?

三ヶ木ってまだ雪ノ下と勉強しているのか?

あいつはもう勉強しなくてもいいんじゃね。

 

「なぁ雪ノ下。

 三ヶ木ってまだお前と勉強会やっているのか?」

 

「え? ええ。

 三ヶ木さん、英語は日常会話程度ができるようになりたいっていうから、

 特に英語に絞ってやっているわ。

 それがどうかした?」

 

「い、いやなんでもない」

 

そ、そうか。

日常会話できるように勉強しているのか。

頑張っているんだなあいつ。

でもきっとそれだけじゃないんだろう。

俺達が塾に行った後、この部室には雪ノ下一人。

完全下校時間までの間、その場所でずっと本読んでいたんだろう。

三ヶ木は多分それを放っておけなかったんじゃねえのか。

さっきからずっと時計を見てため息をついてる雪ノ下を見れば、

二人がどういう時間を過ごしてたのかなんとなくわかる。

三ヶ木、早く来るといいな。

 

”ガラッ!”

 

「あ、来た!」

 

「三ヶ木さんノックを 」

 

「失礼しま~す」

 

「・・・・・・いろはちゃん・・・やはっろー」

 

「・・・・・・一色さん・・・ノックを・・しなさい」

 

「え?

 ・・・・・えっと~なんかすみません」

 

”トントン”

 

いや、中に入ってからノックしても意味ないのだが。

それより、うむ、わかるぞ一色その気持ち。

何もしていないのに、ただ部室に入って来ただけなのに。

なぜかいきなりの期待を裏切ってしまった感。

 

「うんうん」

 

・・・俺も何度中学の時に経験したことか。

そうなんだ、ただ教室に入っただけなのに。

くそ、サッカー部のさわやか少年、永山!

お前もっと早く登校しろよ。

何でいつも俺の後に教室に入ってくるんだ。

 

「な、なんですか先輩。

 なに一人でうんうんって納得しているんですか!

 それになんでそんな哀れなものを見るような目!」

 

「いつもと同じ目だ。

 で、一色何の用だ」

 

「えっと実はですね。

 あ、ちょっと座りますね」

 

”ガタ”

 

「ルンルン♬」

 

由比ヶ浜の真向かい。

さも当然のようにその場所に座って頬杖ついて何かを待っている。

だがなんの用事なんだ。

どうせ碌な用事じゃないんだよな。

 

”ガチャ”

 

「はい、どうぞ」

 

「あ、ありがというございます、雪ノ下先輩」

 

君、紅茶待ってたのね。

なにそのカップ、おしゃまキャットメリーちゃんのカップ

いつからここにあったのそのマイカップ。

・・・・・・まぁ、こいつがここに来るのもあと少し。

三学期になったら、すぐに三年生は自由登校。

俺達以外に部員のいない奉仕部は自然と・・・

 

「ね、一色さん。

 三ヶ木さん、見かけなかったかしら?」

 

「え、あれ?

 さっきここにくる途中の廊下で会いましたよ。

 先輩達が来てるって教えてもらいましたし。

 えっと~、美佳先輩、奉仕部に来てたんじゃ・・・」

 

「そ、そう」

 

「美佳っち来てたんだ」

 

「あの~、美佳先輩ここには来てなかったんですか?

 でもじゃなんで先輩達がいるの知って・・・・・・」

 

そっか。

俺達がここにいることを知ってるってことは、あのドアの外にいたんだ。

俺達が話しているのそこで聞いてて。

あいつまた変な気を使って。

さっき一色が入ってきた時のこいつらの顔。

歓喜から一気に落胆に変わった表情。

お前はちゃんと認められてんだよ、こいつらに。

だから変な気、使うんじゃない。

・・・・・全然気を使わない奴いるのに。

いつの間にかさも当然のように、ここに居座っていたやつ。

勝手にマイカップ置いてある奴。

 

「・・・で、お前は何の用だ」

 

「あ、えっとですね、ほら今度クリスマスのイベントやるじゃないですか~

 海浜さんと合同で」

 

「うん、昨日校門で会ったね」

 

「そこでちょっと奉仕部さんにお願いがあるんですよ」

 

お願い?

クリスマスイベントのお願いって。

そうか、海浜と合同でやるんだよな。

去年の玉繩達もあれだったが、今年も大変なのか?

そういえばこの前も小町、飯食いながらなんかぼやいていたっけ。

生徒会も新体制になって始めてのイベントだ。

一色も何かと気を使っているのかもしれん、そういうところは。

だけど、その依頼は受け入れられない。

少なくとも俺と由比ヶ浜は受験生だ。

センター試験までもう一ヵ月ちょっとしかない。

・・・・・・・それに三ヶ木、言ってたよな。

去年のやり方は間違っていたって。

だから俺は、

 

「一色、この依頼は受けられない。

 これは生徒会が自分達で何とかする問題だ。

 俺達に相談するよりもっと生徒会の中で話し合いを持つべきだ」

 

「そうね。

 ごめんなさい、一色さん。

 奉仕部は魚の捕り方を教えるのであって、魚を与えるのではないの。

 わたし達はあなた達が困った時に助言やサポートはできると思う。

 でも去年みたいに前面に立つことはできない。

 それに比企谷君達は受験生、センター試験が迫っているの。

 わかってくれるかしら」

 

「ヒッキー、ゆきのん」

 

「えっと~、皆さん何か勘違いされていません?

 別に去年みたいなことお願いしに来たわけじゃないですよ。

 そりゃ海浜さんは去年みたいにややこしいですけど。

 わたしも先輩達が受験生だってことわかってます。

 それにわたしには藤沢ちゃんや蒔田、それに小町ちゃんもいますから、

 去年みたいなことはないですよ」

 

「じゃ、な、なにを手伝ってくれって言うんだ一色」

 

「あのですね、いろいろ割り当てを考えているんですが、

 どうしても当日の人手が足りないんですよね~。

 それで、もし当日2、3時間だけでもお手伝い頂けたら助かるなぁ~って、

 それで来たんですよ」

 

「そ、そうなの」

 

「そうです。

 あ、先輩は受付お願いしますね」

 

「え、お、俺は受付決定してるの?」

 

「当たり前じゃないですか。

 先輩はわたしの推薦人、責任ありますからね」

 

「・・・・」

 

「雪ノ下先輩、結衣先輩も来て頂けるとありがたいです。

 奉仕部さんとはこれが最後になるかもしれないから。

 あ、でも本当に時間があればでいいですから。

 受験を優先して下さいね」

 

「いろはちゃん」

 

「一色さん、わたしは参加させていただくわ」

 

「あ、はい、ありがとうございます」

 

「あ、あたしも」

 

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

 

”トボトボトボ”

 

「ううう。

 英語、もう少し何とかしないとなぁ。

 早く日常会話程度はできるようにしないと、このままだと

 ほんとやばいんだよ。

 うん、頑張って勉強しよう。 

 でも、昨日電話した時さ、ゆきのんなんかすごく怒ってたような。

 やっぱり昨日さぼっちゃったからかなぁ~

 はぁ~、だってさ、わたしは 」

 

”ドタドタドタ”

 

「え、な、なに?

 なにかが後ろから」

 

”クル”

 

「あ、小町ちゃん、それと・・・確か会計の鈴ちゃん!

 どうしたんだろ、なんかあったのかなぁ。

 すごい顔してこっちこっち向かってくる。

 あ、でも、

 小町ちゃん、鈴ちゃん、廊下は走っちゃダメ!

 二人とも生徒会役員なんだから、校則はちゃんと 」

 

”ガシ”

 

「へ?」

 

”ガシ”

 

「あ、あの~」

 

”カシャカシャ”

 

「こちら小町!

 美佳さんの身柄確保しました」

 

「し、しました!」

 

「これより生徒会室に連行します」

 

「し、します」

 

「い、いや、あの~お二人さん?

 わ、わたしこれから勉強が 」

 

「行くよ鈴ちゃん」

 

「は、はい小町ちゃん」

 

”ズル、ズルズルズル”

 

「え? あ、あの~、な、なに?

 どうしたの二人とも。

 歩くから、ちゃんと歩くから引きずらないで~」

 

     ・

 

”スタスタスタ”

 

「えっと、これって生徒会室に向かっているんだよね。

 いい加減に腕離してくれないかなぁ~

 あの~逃げないから」

 

「美佳さん、ダメなんです。

 ごめんなさい」

 

「ね、小町ちゃん何か生徒会に問題起きたの?

 あ、もしかしてクリスマスイベントの件とか?」

 

「黙秘します」

 

「・・・・・」

 

”トントン

 

「小町です、美佳先輩を連行してきしました。

 入ります」

 

”ガラガラ”

 

「さ、美佳さん、狭苦しいところですが、どうぞどうぞ」

 

「小町ちゃん、し、知ってるから狭いの。

 失礼しま~すって、なんか変だね。

 でも・・・・・なんか懐かしい。

 引き継ぎの時以来だ」

 

「お久しぶりです、三ヶ木先輩」

 

「おひさ! しょ・・・藤沢ちゃん。

 へぇ~、よく見るとやっぱり生徒会室の雰囲気違ってるね」

 

「あ、美佳先輩、そこの席に座っててください」

 

「あ、はい会長。

 え、これってわたしの使ってた机。

 あれ? この机だけ誰も使っていないんだ。

 うんしょっと」

 

”ドサ”

 

「三ヶ木先輩すみません。

 ご用事とか大丈夫でしたか」

 

「うん、今からゆきのん塾に行くとこだったの。

 ね、藤沢ちゃん何があったの?

 役員さんみんな難しい顔して座ってるけど」

 

「実は」

 

「蒔田!」

 

「なによ一色!

 三ヶ木先輩まで呼んでくることないじゃん!

 まったく!

 はい、三ヶ木先輩どうぞ」

 

”カチャ”

 

「へ? あ、あの~」

 

「美佳先輩、いいですから、まずはそれ飲んで下さい」

 

「え、会長、な、なに?

 あ、い、今は全然喉乾いてなくて。

 いや~、折角舞ちゃんが紅茶淹れてくれたのに残念だなぁ~」

 

「小町ちゃん、鈴ちゃん」

 

「「はい、会長」」

 

”ガシ”

 

「え、あの、小町ちゃん、鈴ちゃん?

 な、なんかいやな予感が。

 小町ちゃん、鈴ちゃんお願い腕離して!」

 

「さ、飲め!」

 

「い、いや、か、会長や、やめて~

 の、飲みたくない! いや~」

 

”ゴクゴク〝

 

「ぐわぁ~! に、にげぇ~」

 

”バタン”

 

「み、三ヶ木先輩、お気を確かに」

 

「ふ、藤沢ちゃん、もうだめ・・・」

 

「ほら、やっぱり不味いじゃない蒔田!」

 

「う、うそ、そ、そんなはずは。

 ちょっと貸してみて」

 

"ゴクゴク"

 

「うん、やっぱり美味いじゃん」

 

「「・・・・・はぁ~」」

 

「美佳先輩、これ何とかして下さい」

 

「わ、わ、わたしが連行されたのはこれが理由?

 こ、こんなことで」

 

「こんなことってなんですか!

 わたし達、毎日こんなの飲まされてるんですよ。

 これはちゃんと引き継ぎをしなかった美佳先輩が悪いんです!」

 

「い、いや、だって舞ちゃんの味覚までは」

 

「いいですか、これは美佳先輩の責任です。

 蒔田が美味しい紅茶を淹れられるようになるまでは、

 引き継ぎは終わってませんから」

 

「い、いやでも」

 

「・・・あの、時間がある時でいいんですよ。

 蒔田に紅茶の淹れ方を教えに来てやって下さい。

 それまでこの席は、美佳先輩のこの席はずっと空けておきますから」

 

「え?・・・・・う、うん」

 

「三ヶ木先輩。

 この三ヶ木先輩の机って、毎日いろはちゃんが拭き掃除してるんですよ。

 なんか寂しそうに。

 この前も清川君が座ろうとしたらめっちゃ怒られて」

 

「はっ! な、なに言ってんの藤沢ちゃん、ち、違うから。

 さ、寂しいとかないから。

 何を言ってるのかなぁ~

 わ、わたしは 」

 

「「会長」」

 

「な、なんですかみんなしてその目は!

 ち、違いますからね!

 え、えっと」

 

”キョロキョロ”

 

「あ、ほ、ほら」

 

”コト”

 

「ほら、花瓶!

 この美佳先輩の机の位置って、この花瓶を置くのに丁度いいかなぁって。

 う、うわ~、ベストポジションだなぁ~この机の位置」

 

「花瓶って、それなんかいやなんだけど」

 

「いろはちゃんそれはちょっと」

 

「と、とにかくです!

 この憶えの悪い蒔田にちゃんとした紅茶の淹れ方を教えに来て下さい。

 い、いつでもいいですから。

 ・・・ちゃんと、美佳先輩の机空けてますから」

 

「あ、う、うん。

 了解です会長。

 ありがと、また来るね」

 

「はい、よろしくです♡」

 

「・・・・・おっかしいな~、この紅茶こんなに美味しいのに」

 

”ゴクゴク”

 

「う~ん、美味い」

 

「「はぁ~」」

 

「会長、ちょっと無理かも」

 

「・・・・・・・」

 

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

 

「あ、先輩。

 もしかしてわたしを待っててくれたんですか?」

 

「いや違う、断じて違う、厳密に違う」

 

「なんですかそれ、チョ~ひどすぎじゃないですか。

 で、誰を待っているんですか?」

 

「・・・由比ヶ浜だ。」

 

「この前もそうでしたけど、最近いつも結衣先輩と

 一緒なんですね」

 

「・・・た、たまたまだ」

 

「美佳先輩と何かあったんですか?」

 

「・・・・・」

 

「先輩、先輩はあの時 」

 

「ヒッキーごめんお待たせ。

 あ、いろはちゃんやっはろー」

 

「結衣先輩。

 やっはろーさんです。」

 

「ごめんね、ちょっと優美子につかまってて」

 

「いや、いい。

 じゃ、じゃあな一色」

 

「またね、いろはちゃん」

 

「え、あ、は、はい。

 それではです」

 

”スタスタスタ”

 

「ヒッキー、ららぽで何買いたいの?」

 

「ん? ああちょっとな」

 

”スタスタスタ”

 

「・・・」

 

「いろはちゃん、お待たせ」

 

「あ、うん」

 

「えっと、どうかした?」

 

「え、あ、うううん、何でもないい

 行こっか藤沢ちゃん」

 

     ・

     ・

     ・

 

”スタスタスタ”

 

「まったく海浜の奴らってさ、本当に自意識高すぎ、高杉君じゃん。

 ね、去年もあんな感じだったの」

 

「あ、まぁね。

 去年はもっとひどかったかも」

 

「ふ~ん、あ、そうだ。

 ねっ一色、お腹空いてない?」

 

「はぁ?

 蒔田、持っていったお菓子、ほとんど一人で食べたくせに」

 

「だってめっちゃムシャクシャしたからさ。

 ね、それよりそこの喫茶店でケーキを・・・・・・え!」

 

「ん、どうしたの」

 

「あ、あれ。

 あそこのベンチに座ってるのって三ヶ木先輩と 」

 

「あ、刈宿君」

 

「何かあの雰囲気ってさ。

 もしかしてって感じじゃない?」

 

「あ、う、うん」

 

”だき”

 

「「え゛ー!!」」

 

「な、なんで三ヶ木先輩と刈宿君が抱き合ってるの?

 ね、い、一色、三ヶ木先輩ってさ」

 

「・・・・・・・」

 

「い、一色?」

 

「・・・・やっぱりなにかあったんだ」

 

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

 

”パクパク”

 

「どうですか先輩?

 久しぶりにちょっと頑張ってみたんですけど」

 

ふぅ~、急に一色から呼び出しを食らったから、

てっきり由比ヶ浜とのことかと思ったが、

どうやら違うようだな。

本当にお弁当の味をみてほしいのか。

ふむ、確かに以前のお弁当も美味しかったが、さらに腕を上げたようだな。

特にこの卵焼きの甘さが何とも言えん。

 

「素直に美味い。

 また腕上げたな一色」

 

「そうですか~、えへ♡」

 

「おう、これならこれからもずっと作ってもらいたいぐらいだ。

 いい嫁になれるぞ」

 

「は、な、なんですか

 この前振っておきながら俺の飯を作れって。

 それって愛人、愛人になれと?

 残念ながら本妻にしてもらわない限りお断りです。

 ずっと作ってほしいのなら本妻にしてください、ごめんなさい」

 

「ま、また振られたのか俺」

 

「・・・・まったくこの先輩は。

 本当に耳悪いんじゃないですか。

 もういいです!

 で、美佳先輩と何があったんですか?」

 

げ、や、やっぱりその話だったのね。

だが、これは俺の問題だ。

そして俺の中ではもう解決している。

解決した問題なんだ。

 

「はぁ?

 何もないぞ、断じて何もない」

 

「先輩、

 『あいつは俺にとって特別なんだ』

 あの時、そう言いましたよね先輩」

 

「・・・・・なんでもないんだ」

 

「わかりました。

 それじゃお弁当も食べ終わったようですし。

 はい、これ請求書です」

 

「え、請求書?」

 

「選挙の時の分と今日の分のお弁当代です。

 しめて10億円」

 

「じ、10億円!

 それ、ま、マジか!」

 

10億だとぉ。

サラリーマン生涯年収は確か3億いかなかったはずだ。

む、無理じゃねえか!

い、いや待て、確か選挙の時は手伝いの見返りのはずだ。

だとしたら対象は今日の分だけだ。

 

「一色、選挙の時はお前を手伝う代償にって」

 

「はぁ?

 わたし、そんな労働契約してませんよ。

 確か誰かさんもそう言ってませんでしたか?」

 

「ぐっ」

 

「それにあったりまえじゃないですか。

 このくそ寒いのに、朝頑張って早く起きて作ってたんですよ。

 このわたしが。

 これでも先輩にはお世話になっていますから、サービスしてるんですよ。

 だから10憶円よろしくです、えへ♡」

 

「かわいくねぇ」

 

「はぁ!

 絶対にびた一文たりとも負けませんから。

 耳を揃えて支払って下さい。

 さぁ、さぁ!」

 

「あ、あの~1000年ぐらいの分割で」

 

「なんですか、1000年って。

 ゾンビじゃないんですから、わたしそんなに長く生きてられるわけない

 じゃないですか。

 先輩なら生きてるかもしれませんけど」

 

「いや、しかし・・・」

 

ど、どうする。

10憶なんて絶対に払えないぞ。

げ、こいつマジ、マジな顔してる。

な、なんとか誤魔化さないと。

 

「あ、そ、そうだ。

 お前知ってるか?

 ゾンビといえばだな、佐賀のほうでなんか犬の 」

 

「先輩、誤魔化さないでください。

 ふむ、でも先輩に10憶円は無理か。

 仕方ないです。

 それなら美佳先輩と何があったのかちゃんと話してください。

 それで勘弁してあげます」

 

「・・・」

 

「なにがあったんですか!」

 

「・・・・・・ちっ、あのな」

 

     ・

     ・

     ・

 

「先輩、先輩は本当にそれでいいんですか?」

 

「あいつが決めたことなら俺はそれでいいと思う」

 

「本当に、本当にそう思うんですか?」

 

「ああ」

 

「馬鹿ですよ先輩」

 

「・・・」

 

わかってる、わかってるんだ一色。

俺も本当にそう思う。

もう少しうまくやれたんじゃないのかって、後悔ばっかりしているんだ。

だけどあいつがそう決めたのなら、俺は俺のやり方で

あいつを応援してやりたい。

だからきっとこれでいいんだ。

もう決めたんだ。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

「・・・・・やっぱりこのままじゃ」

 

「ん、どうしたの一色。

 それ食べないならも~らい」

 

”パク”

 

「あー!

 な、なにするの蒔田!」

 

「え、だってこのイチゴいらないのかと思って」

 

「違う、それ大好きだから最後まで残してたの!」

 

「残してるほうが悪い」

 

「はぁ!

 じゃこれもらい」

 

「あ、そ、それだめー」

 

”パク”

 

「残しているほうが悪い」

 

「よ、よくもわたしのケーキのメロンを・・・

 い、一色!」

 

「なに!」

 

「「あ、あの、お客様お静かに」」

 

「「す、すみません」」

 

「・・・」

 

「・・・」

 

「・・・・ね、蒔田」

 

「ん、なに?」

 

「ちょっと相談があるんだけど」

 

 

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

 

 

”ガチャ”

 

「あ~、やっぱりまだ寝てる。

 お兄ちゃん、今日大丈夫?

 ちゃんと憶えているよね」

 

「ん、小町か。

 今日何かあったか?」

 

「マジ?

 それマジだったら小町的にすごくポイント低い」

 

「えっと・・・・・」

 

「クリスマス合同イベント。

 お兄ちゃん手伝いに来てくれるって聞いてるんだけど」

 

「げ、やっぱりあれマジだったのか」

 

「ちゃんと来てね。

 小町は先に行ってるから」

 

参ったな。

そういえば前に一色に約束させられていたような気がする。

受付やれって。

 

”ボリボリ”

 

はぁ~面倒くさい。

あ、そうだ、勉強!

勉強してて時間忘れたってことにしておけば。

念押ししていなかった一色が悪い。

ふふふ、決めた、そうしておこう。

そう決めたのなら・・・・・・・・寝よう。

 

”ガチャ”

 

「お兄ちゃん来てくれないと、小町は生徒会的にチョ~やばいんだからね。

 ただでもいろいろ聞かれてるんだから」

 

「お、おう」

 

仕方ねえ。

小町をやばい目には合わせられん。

支度するか。

はぁ~面倒くさい。

 

     ・

     ・

     ・

 

う~、暑い!

それに長靴蒸れる。

髭はこそばいし、喋ると口の中に入るし。

くそ、なんでこんなの着なければいけないんだ!

 

「先輩、結構お似合いですよ。

 いや~やっぱり先輩です。

 先輩ほどサンタさんの格好の似合う人っていませんよ。

 ふむ、サンタさんはやっぱり先輩じゃないと」

 

「・・・・・おい。

 似合うも何もこの髭と眉毛、かつら、そしてこの眼鏡!

 誰がやっても一緒だろ。

 どこから見ても俺って絶対わからない」

 

「あ、あははは。

 ・・・・・そんなことないですよ、わかる人には先輩だって

 すぐわかりますよ。

 それでは受付よろしくです。

 あ、雪ノ下先輩、結衣先輩、そろそろケーキ作りのほうお願いしま~す」

 

”パタパタパタ”

 

「・・・

 お、おい一色、他には誰か 」

 

くそ、行ってしまいやがった。

顔全然出てないんだ、喋らない限り俺ってわからないだろうが。

わかるとしたら小町ぐらいだろう。

それより、受け付けって俺一人でやるのか?

他に誰もいないんだが。

それにどうすればいいんだ?

何の説明もなし放置されたんだが。

ん~どうすっかな、さすがに一人ではきつい。

そ、そうだ、戸塚だ、戸塚。

戸塚と一緒ならこんな苦行も耐えられる、いや苦行じゃない至福の時間に。

電話・・・しよう。

 

”カシャカシャ”

 

「どうしたの八幡?」

 

「戸塚、今時間ないか?

 ちょっと人手が足りなくてな。

 もし時間あったら去年クリスマス合同イベントやった 」

 

「あ、ごめん。

 今、テニス部で刈宿君の送別会してるんだ。

 だからちょっと」

 

「そ、そっか。

 すまなかった。

 じゃあな。」

 

「あ、うん。

 ごめんね八幡」

 

”ブー、ブー”

 

はぁ~戸塚無理なのか。

いきなりやる気なくなった。

この衣装思ったより暑いし。

長靴チョ~蒸れ蒸れだし。

バ、バックレよっかなぁ。

ほ、ほら一色も時間あるだけでって言ってたような気がするし。

ん?

 

”タッタッタッ”

 

「会長、遅くなってすみません。

 って、あれ会長?

 えっと~」

 

”キョロキョロ”

 

「どこ行ったんだろ?」

 

み、三ヶ木!

なんでここに?

げ、こっち来た!

し、知らんふり、なんか知らんが知らんふり。

 

「あ、サンタさん

 受付、もう一人いるってサンタさんだったんですね。

 それじゃ今からやること説明しますので、隣失礼しますね。

 うんしょっと。

 えっと、海浜さんですか?

 一応、去年やったことをベースにマニュアル作ってみたんですよ。

 これどうぞ。

 えっ・・・・・・・・あっ」

 

ん?

どうしたんだ急に俯いて。

えっと、俺ってわかったのか?

いや、そんなはずはない。

鏡でチェックしたが、これだけ顔隠していれば俺とわかるはずがない。

それに一言も発していないし。

 

「・・・・・・」

 

えっと、わかるはずないよな。

でもどうすっかなぁ。

こいつずっと俯いてるし。

いつまでも話しないわけにもいかないし。

 

”スク”

 

ん、み、三ヶ木?

急に立ち上がって、お、おい。

 

”ダー”

 

え?

 

     ・

 

ふむ、あいつどこ行ったんだ?

戻ってこないんだが。

は、もしかして帰ったのか。

うん? これマニュアルって言ったよな。

どれどれ

 

”パラパラ”

 

ふむ、なるほどな。

しかしあいつ勉強もしないでこんなの作っていたのか。

勉強って、そ、そっかあいつは・・・

 

”カタ”

 

へ、マッ缶?

えっと~

 

「ここ、暖房効いてるから、その格好暑いでしょ。

 ・・・・・比企谷君」

 

「み、三ヶ木

 わかってたのか」

 

「うん」

 

「なぜだ、なぜわかったんだ」

 

「うん、なんとなくわかった」

 

「そ、そっか」

 

「うん、そうだ」

 

なんでだろう。

『なんとなくわかった』って何の理由にもなっていないんだが

納得してしまう。

納得してしまうんだこいつなら。

 

「・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・」

 

「「あ、あの」」

 

「あ、ごめん、比企谷君からどうぞ」

 

「い、いやお前から」

 

「うううん、わたしは後でいいよ」

 

「そうか。

 あのなこの前、すまんちょっと言いすぎた」

 

「え、この前って」

 

「屋上で」

 

「あ・・・う、うううん。

 わ、わたしのほうこそ変なこと言っちゃった。

 ごめんなさい。

 わ、忘れてくれると嬉しい」

 

「そっか」

 

「うん」

 

「・・・・・」

 

「・・・・・」

 

そういえば今日は制服なんだな。

ん、最近、髪伸ばしてるのか?

そういえばこいつと最初に出会った時、ロングだったよな。

眼鏡もしていなかったし。

マラソン大会の時、ショートと眼鏡に変わってて。

だから初めは気が付かなかったんだ。

 

「え、えっと~比企谷君。

 あの、何か変?」

 

「あ、いや。

 き、今日はトナカイじゃないんだな」

 

「うん、もう生徒会じゃないから。

 今日はお手伝い、舞ちゃんから頼まれて。

 比企谷君、サンタさん似合ってるよ」

 

「いや、似合うとかほとんど顔出てないから」

 

「えへへ。

 あ、ほらお客さん、もう来たみたい」

 

「あ、そうだな。

 で、どうすんだ?」

 

「うん、まだ会場のほうは準備中だから、連絡があるまでロビーで待ってって

 もらわないと」

 

「そうか、じゃやるか」

 

「うん」

 

     ・

     ・

     ・

 

”ワイワイ、ガヤガヤ”

 

「ロビー混んできたな」

 

「わたし会場の様子をちょっと見てくるね」

 

”ちょんちょん”

 

「え?

 どうしたの僕?」

 

「サンタさんとお姉ちゃんって付き合ってるの?」

 

「え、あ、あの~」

 

「あのね、みんなが聞いて来いって言うんだ」

 

「え、えっと」

 

「サンタさんとお姉ちゃんは、大変仲の良い友達なんだぞ」

 

「友達なんだ。

 お~いみんな、サンタさんとお姉ちゃんは友達なんだって」

 

「友達か」

 

「な~んだ」

 

「はは、最近の園児はマセてるな。

 なぁ、三ヶ木。

 ん、三ヶ木?」

 

「・・・友達・・か」

 

「三ヶ木?」

 

「あ、うううん、なんでもない。

 会場見てくるね」

 

”テッテッテッ”

 

     ・

     ・

     ・

 

「ふ~、ひと段落だな」

 

「うん、ご苦労様でした」

 

「いやお互いさん。

 あ、そうだ、ちょうどいい」

 

「え?」

 

「これ、お前に渡そうと思ってたんだ。

 生徒会の行事だから、もしかしてお前も来るかと思って持ってきた。

 それにほら来週の週末から冬休みだしな。

 もし渡せなかったらまずいからな」

 

「え、これって」

 

「音声翻訳機だ。

 お前、アメリカ行くんだろ。

 よかったら持っていってくれないか。

 まぁ、お前にはいろいろと世話になったからな。

 餞別っていうわけじゃないんだけど、これお前にやるよ」

 

「・・・・」

 

「これすごく使いやすくて便利なんだぞ。

 双方向対応だし、オフラインでも使えるし。

 雪ノ下に聞いたけど、お前スペルの間違いが多いっていうからな。

 貰ってもらえるとありがたい」

 

「あ、あのさ、わたしアメ・・・・・」

 

「ん?」

 

「・・・ね、教えて比企谷君、比企谷君は平気なの?」

 

「ん、なにがだ?」

 

「わたし、わたしがアメリカに行っても平気なの?」

 

「いやそれはお前の問題だ。

 お前が決めたのならそれでいいんじゃねぇのか」

 

「・・・」

 

「み、三ヶ木?」

 

「・・・そ、そっか。

 わたしの問題だもんね。

 うん、わかった」

 

「おう。

 しかしアメリカか、いいなぁ。

 俺も一度行ってみたかったんだ。

 いや~、うらやましい。

 まぁ向こうでも頑張れ」

 

「・・・・・・・・・・ばか!」

 

”ダー”

 

「え、お、おい三ヶ木。

 翻訳機忘れてるぞ」

 

     ・

 

「ふむ、まだ間に合うのか

 他ならぬ戸塚氏の頼みゆえ、結構急いで来たのだが。

 さすがにちょっと遅かったかも」

 

”ダー”

 

「え、み、三ヶ木女子?」

 

”どん”

 

「おわー」

 

「あ、ご、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい。

 うううううう、うぐっ、うぐっ、ううう」

 

”ダー”

 

「み、三ヶ木女子。

 何があったのだ」

 

     ・

 

ち、あいつどこに行ったんだ。

翻訳機忘れやがって。

ん、あれ材木座じゃねえか。

 

「八幡!」

 

「材木座。

 なぜお前ここにいるんだ?」

 

「ふむ、戸塚氏に代役を頼まれてな。

 いや、そんなことより八幡、いま三ヶ木女子が泣いていたのだが。

 なにがあったのだ?」

 

「い、いや別に何も」

 

「何もないわけがなかろう!

 ちゃんと話せ八幡」

 

「い、いや、わからん。

 俺はただあいつがアメリカに行くって聞いていたから、頑張れみたいな励ましと

 この餞別の翻訳機をだな。

 見ろこれすげぇ便利なんだぞ」

 

「・・・八幡、貴様それマジで言ったのか?」

 

「なんだ、どうした?」

 

「マジで言ったのかと聞いておる」

 

「いや意味が分からねぇ。

 なに怒ってだ。

 それにあいつが決めたことなら、それを俺がとやかく言うもんじゃないだろう」

 

「八幡!」

 

”ボゴ!”

 

「ぐっ、な、なにするんだ材木座!」

 

「今のは貴様の親友としての一発だ!」

 

”ボカ!”

 

「ぐおー、な、なにをする八幡」

 

「なにをするじゃねえ。

 意味わからんだろうが。

 いきなり殴りやがって」

 

「き、貴様まだわからぬか!

 はちま~ん、この正義の鉄拳を食らえ!」

 

”スカ”

 

「食らうかそんなもの」

 

「あ、キラエールが」

 

「なに!」

 

”ボゴ!”

 

「ぐはぁ!

 ざ、材木座ー、てめぇ!」

 

「今のは、今のは 」

 

”ゴス!”

 

「けふっ、まだ我のターンではないか」

 

「わけのわからんこと言ってるんじゃねぇ材木座!」

 

「黙れ!

 これは不甲斐ない恋敵への一撃だ!」

 

”ボゴ!”

 

「かはぁ! ちっ、なに言ってんだ材木座。

 お前いい加減にしないと」

 

”ポカ!”

 

「ざ、材木座―」

 

「はちまーん!」

 

”ベシ!”

 

”ズゴ!”

 

”バキ!”

 

”ドゴ!”

 

「はぁ、はぁ、八幡、貴様本当は行ってほしくないのであろう!」

 

「そんなわけあるか!

 あいつが決めたことだ、それなら俺は応援する」

 

”ボゴ!”

 

「うぐぐぐぐ、は、八幡!

 あ、あれ、キラエールが歩いて」

 

「二度も騙されるか!」

 

”ボカ!、ボコ!”

 

「いたたた、ぐぅ~、は、八幡」

 

”どた”

 

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、ったく」

 

”どて”

 

「はぁ、はぁ、は、はち、まん。

 八幡よ、す、素直になれ」

 

「はぁ、はぁ、はぁ、うっせ、材木座」

 

「な、なぁ八幡。

 失ってからでは遅いのだぞ。

 後から後悔しても失ったものはもう戻らないのだぞ」

 

「わ、わかってないのはお前だ。

 俺にはあいつを止める資格がないんだ!

 あいつが選んだのは・・・

 だったら、それなら俺にはあいつを後押しをしてやるぐらいしか

 できねえだろうが」

 

”ボカ!”

 

「つっ~、材木座!」

 

「は、八幡。

 人を好きになるのに、資格なんて要らぬわ。

 もっと貴様の想いを素直にぶつければよかろう。

 今、本当に大事なのは三ヶ木女子の気持ちどうこうではない。

 貴様の想いを素直に伝えることではないのか。

 三ヶ木女子は迷っているはずだ。

 今ならまだ間に合う。

 必ず貴様の想いを受け止めてくれる。

 貴様わかっていたのであろう、三ヶ木女子の気持ちが」

 

「・・・・・遅いんだ」

 

「八幡。

 ・・・・・ずっと近くにいても、ずっと見続けていても、

 ずっと思い続けていても伝わらない、叶わない想いもあるのだ。

 貴様なら、貴様の想いなら三ヶ木女子に届くのだ。

 だから素直になれ、八幡!」

 

「ざ、材木座、お前もしかして三ヶ木のことが。

 だがもう遅いんだよ材木座。

 俺はもう・・・遅いんだ」

 

「あきらめたというのか?

 嘘をつくな八幡!

 ならば、貴様はスマホの三ヶ木女子のアドレス消せるのか?

 消せるわけがあるまい。

 口では資格がとかもう遅いとか戯言を言っておるが、

 本心は未練があるのだろう。

 まだあきらめてないのであろう。

 それが貴様の本 」

 

”カシャ”

 

「は、八幡!

 貴様、今なにを 」

 

「これでいいんだろ材木座。

 もうこのことに関わるな」

 

「八幡」

 

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

 

今日から冬休みか。

いつもなら学校に行かなくてもよくて、一日中炬燵でゴロゴロできるから

最高の気分だったんだが。

さすがに受験生としてはそんな余裕はない。

さて、早速朝飯食ったら勉強を・・・・勉強しないとな。

 

「はぁ~」

 

くそ、駄目だまた気持ちが。

もうセンター試験は近いってのに何やってんだ俺。

くそ、まずはメシだ、メシ。

 

”ガチャ、トントントン”

 

階段になんかいい匂いが漂ている。

小町が朝飯作ってくれたのか。

ん? 

 

「るん、るるるんるん♬」

 

鼻歌?

そっか、今日は小町機嫌が良さそうだな。

 

”ガチャ”

 

「おう、お早う小町」

 

「・・・・ふん!」

 

こ、小町?

さっきまであんなに機嫌良さそうに鼻歌歌っていたのに。

スゲ~不機嫌そうな顔して睨んでいる。

 

「えっと、あ、サンドウィッチ。

 お兄ちゃんもそれ頂こうかなぁ~」

 

「これは小町のサンド!

 朝ご飯食べるなら自分で作れば。

 あ、それと、年末は予定あって忙しいから、今のうちにゴミとか出しておいて。

 はぁ~、このごみぃちゃんも引き取ってもらえないかなぁ」

 

”ギロ”

 

「・・・・・」

 

げ、小町チョ~機嫌悪い

クリスマスイベントで俺が三ヶ木を泣かしたってこと知られてから1週間。

小町の俺を見る目がチョ~冷たい。

いやマジ年末のゴミに出されそうなんだが。

 

「こ、こま 」

 

「ご馳走さま。

 ふん!」

 

”バダン!”

 

・・・はぁ、朝飯いいか。

 

     ・

 

ふ~、まず勉強の前にゴミ出しだな。

引き出しの中の整理から始めるか。

 

”がさがさ”

 

お、おう、百円!

百円見つけたぞ。

他にないか?

ん、この紙袋は・・・・・

 

”がさ”

 

はぁ~、結局返せなかったな。

あいつ冬休みに一度アメリカに行くって言ってたな。

今頃準備でもしてるんだろうか?

・・・パンツ足りるかなぁ。

持っていってやるか。

い、いや、何をいまさら。

 

『素直になれ八幡』

 

うっせ。

・・・・・・おっと、そんな暇はない。

掃除だ掃除。

早いところ片付けて勉強しないとな。

 

”ガタガタ”

 

ん、なんだこの手紙?

誰からだ?

こんなのいつ貰ったんだ?

ふむ、どれどれ。

 

”パサ”

 

『前略、 比企谷八幡様

 

 昨日は突然泊めてくれなんて言ってごめんなさい。

 きっと変な奴って、ビッチって思われたよね。

 あのね、昨日とうちゃんとケンカしたのって再婚のことでなんだ。

 とうちゃんきっとあの人と再婚したいって言おうとしたんだと思う。

 でもわたしはまだやっぱり・・・・』

 

ん、これって三ヶ木の手紙?

お父さんとケンカって、これ文化祭の前日に泊めてやったときに書いて

いったのか。

 

『それでね、家飛び出しちゃったんだけど、気が付いたら比企谷君の家の前に

 来ちゃってたの。

 おかしいね、沙希ちゃんやさがみんのところじゃなくて、比企谷君のとこに

 来ちゃった。

 ・・・とうちゃんの再婚。

 ほんとはちゃんと喜んであげないといけないってわかってるんだ。

 だけどわたし弱いから、今のわたしには無理。

 ・・・・・怖いんだ。

 今、そんなこと話しされても、きっととうちゃんに変なこと言っちゃいそうで。

 はは、駄目だねわたしって』

 

三ヶ木。

やっぱりお前そのことを相談したかったんだよな。

あの時、俺はそこまでお前をわかってやれていなかったんだ。

だからそれをわかっていた稲村に嫉妬して。

 

『あ、あのね、まだ絶対秘密だよ。

 今日のチークタイム、葉山君からパートナーに選ばられた。

 あ、でも勘違いしないで。

 わたしが選ばれるはずないもん。

 これは葉山君流の気遣いだよ。

 あのね、その前にゆきのんからチークの件、比企谷君をパートナーにって

 相談されてね。

 でもほらそんなことになったら、きっとまた比企谷君・・・

 みんなほんとの比企谷君知らないから。

 でもゆきのん、真剣だった。

 本当に比企谷君と踊りたがっていた。

 それでね、どうしょうって悩んでるわたしを見て、葉山君がパートナーにって

 言ってくれたの。

 多分、葉山君はわたしに何かするチャンスをくれたんだと思う。

 

 それでね、わたし決めたの。

 今日、わたしはめっちゃ嫌な女を演じる。

 高慢ちきで高飛車で、みんなを見下しているような女。

 わたしはあなた達と違って、あの葉山君に選ばれたのよって感じで。

 学校一の嫌われ者になるんだ。

 みんなの反感がわたしに向くように。

 

 だからお願い。

 チークの時はゆきのんだけ見てて。

 絶対こっちのほうは見ないでほしい。

 わたし比企谷君に見つめられたら、そんな女演じきる自信がない。

 きっとその場に泣き崩れて・・・・・

 だからお願い。

 チークの時はゆきのんの声と音楽だけ聞いてて。

 絶対にわたしへの非難の声は聞かないで。

 だってきっと比企谷君のことだから・・・・・

 でもそんなことになったら、二人が悪者になってしまう。

 それじゃ、わたしのやったことが意味のないことになってしまうから。

 

 ・・・そんでね、もう学校であってもわたしのこと無視して。

 だって悪者は一人で十分。

 わたしなんかに絶対話しかけないで。

 話しかけると比企谷君まで悪く言われちゃう』

 

み、三ヶ木、あいつ文化祭の時にもこんなことしようと思ってたのか。

あの馬鹿野郎。

そんなこと、無視なんてことできるかよ。

 

『でも大丈夫だよ。

 わたしは大丈夫。

 これがわたしのやり方、これはわたしがやりたくてやること。

 だからわたしは大丈夫。

 比企谷君ならわかってくれるよね、このやり方。

 多分・・・うううん、これしか解はないんだ。

 

 わたしね、もう去年の文化際みたいなこと絶対に嫌なんだ。

 わたしは、あの時比企谷君のためになにもできなかった。

 めぐねぇ問い詰めて、いろいろ調べて比企谷君が何をやったのかわかったのに。

 わたしは何もできなかった。

 だからわたしは頑張るんだ、去年の分も。

 

 あのね・・でもね、も、もしかして。

 もしかしてね、わたしが駄目になりそうな時、負けそうになった時、

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・抱きしめてほしいんだ。

 い、一度だけでいいんだ。

 それだけでわたしは無敵モードになるの。

 

 あ、でもね、そうならないように頑張るつもり。

 だからしばらく寂しいけど学校では無視してね。

 シ・カ・ト、よろしく!

 

 じゃあ、文化祭の準備とかあるから先に学校行くね

 ほんとうにありがと。

 あのね、

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・愛してます、八幡。

 

                           美佳♡ 』

 

み、三ヶ木。

 

”ポロ、ポロ、ポロポロ、ポロポロポロポロ”

 

ば、ばっか野郎!

何でこんな手紙、引き出しの奥に置いておくんだよ。

机の上に置いてけよ。

い、今頃になって。

あ、あのバカ!

 

”ガチャ、バダン!”

 

「お兄ちゃん!

 ドアは静かに締めて。

 え、お兄ちゃん」

 

”ドタドタドタ”

 

「お、お兄ちゃん。

 何で泣いて・・・・・・」

 

     ・

     ・

     ・

 

「はぁ、はぁ、はぁ」

 

あ、あのバカ、くそ馬鹿、大馬鹿野郎が

・・・・・・ちっ! 馬鹿なのは俺のほうだろうが。

 

”タッタッタッ”

 

「はぁ、はぁ、はぁ」

 

”ドンドンドン!”

 

「あ、は~い」

 

”ガチャ”

 

「そんなに叩かないでくれるかなぁ。

 ドア壊れちゃうから・・・って比企谷君!

 どうしたの、そんなに息切らせて」

 

「み、美佳・・・・美佳さんはいらっしゃいませんか?」

 

「んん?

 ・・・・・・・・・美佳に何か用?」

 

「あ、あの、お、俺、俺は」

 

「俺は?」

 

「お、俺は、あ、あいつに、美佳さんに大事な話が」

 

「・・・・・ふ~ん、美佳にね~」

 

「・・・・・」

 

「・・・・・あのね、美佳は空港に行ったよ。

 知らなかった?

 今日から刈宿君とアメリカ旅行に行くの。

 男と女、二人っきりでアメリカ旅行。

 君もこの意味わかるよね」

 

「お、俺は」

 

「それにちょっと調べたんだけど、

 刈宿君ってさ、あの東地グループの御曹司なんだよね。

 うわ~美佳ってチョ~玉の輿。

 まぁ、今まで貧乏してたからやっと報われたのかなぁ」

 

「・・・・・」

 

「・・・ね、比企谷君。

 この前の質問、もう一回聞くね。

 君はどうしたい? どうありたいと思うの?」

 

「お、俺は・・・・・」

 

「俺は?」

 

「・・・・・・・・あいつといつも一緒にいたい。

 誰にもあいつを渡したくない」

 

「それが美佳から幸せを奪うことになっても?」

 

「もしかして俺といることが、あいつから幸せを奪うことに

 なるかもしれません。

 俺はいつもあいつを泣かしてばかりで。

 ・・・・・だけど俺は、それでも俺はあいつを誰にも渡したくない!」

 

「そっか、それが君の答えか」

 

”スタスタスタ”

 

「ま、麻緒さん?」

 

”カキカキカキ”

 

「あ、あの~」

 

”スタスタスタ”

 

「はい、これ。

 これが美佳の乗る飛行機と出発時間。

 ロサンゼルス行きのAAN305便。

 でも電車だと間に合うかなぁ~」

 

「あ、ありがとうございます」

 

”ダー”

 

「あ、ちょ、ちょっと比企谷君。

 行っちゃった。

 『誰にも渡したくない!』っか。

 ふふふ、若いっていいなぁ。

 さてとそれじゃ」

 

     ・

     ・

     ・

 

「はぁ、はぁ、はぁ」

 

で、電車の時間どうだった。

タクシーで行くか

・・・・・今月使いすぎた。

思ったより翻訳機って高かったしな~

小遣いまでまだまだだし。

え~い考えていても仕方がない。

まずは駅だ、駅に着いてから時効表を調べてだな。

それでだめだったらタクシーだ。

駅ならタクシーも。

 

”ブ、ブー”

 

え?

 

”キキキ―”

 

え、あ、あぶねぇ!

は、な、なにこれサイドカー。

えっとヘルメットから長い髪?

これ女の人?

 

”バサ”

 

「ふぅ~、やっぱりヘルメット嫌いなんだよね」

 

「ま、麻緒さん!」

 

「空港まで送ってくわ。

 いいから乗りなさい」

 

「え、えっと」

 

「早く!」

 

「は、はい。

 お願いします」

 

     ・

     ・

     ・

 

「ひぇ~」

 

こ、こぇー

と、隣の車すげぇ近い!

い、石とか飛んでこないよな。

それにさむ~、マジ寒いって。

麻緒さんの着ているのって、毛がモカモカでなんか温かそう。

 

”キキキキッ”

 

ぐわっ、う、浮いた!

い、いまこっちの車浮いたって。

 

「ま、麻緒さん、もう少し安全運転で」

 

「うっさい!」

 

「は、はいすみません」

 

こ、こぇ~。

なにこの人、ハンドル握ると人が変わるの?

で、でも道を曲がる度にこっち浮いてんだけど。

え? こ、高速!

マジ高速のるの?

 

     ・

     ・

     ・

 

「ちっ!」

 

「・・・・・・」

 

「混んでんね。

 ちょっと下道に降りるの早かったかなぁ」

 

「す、すみません

 メッチャ怖かったんで」

 

だって、本当に怖かったんだから。

あ、でもちょっとやばいかもな、すげえ渋滞だ。

事故でもあったのか?

さっきから少しも進まない。

看板出てたからもう空港は近いと思うんだが。

えっと確か麻緒さんからもらったこのメモの出発時間は・・・

 

「比企谷君、ごめんね。

 ちっとも動かない」

 

「麻緒さん、ここから空港までどのくらいっすか」

 

「えっとさっきの看板には確かあと10kmって書いてあったけど」

 

「10kmか」

 

”カパッ”

 

「へ、比企谷君?」

 

「ヘルメットここ置いておきます。

 麻緒さん、俺走っていきます」

 

”スタ”

 

「え、でもまだ空港まで10kmも」

 

「大丈夫っす。

 それくらいの距離、走ったことありますから。

 なんとかなります」

 

”ペコ”

 

「麻緒さん、ありがとうございました」

 

”ダー”

 

「ふ~、頑張れ比企谷君。

 でもごめんね嘘ついて。

 美佳は・・・」

 

     ・

     ・

     ・

 

「はぁ、はぁ、はぁ」

 

く、くそ、まだ何百mも走っていないのに、足が痛くなってきた。

それに心臓もバクバクして張り裂けそうだ。

無理もねえか。

体育祭以来、運動らしい運動していない。

まぁ、受験を控えたこの時期に真剣に体育の授業を受けて

勉強の体力を削る奴なんてもいない。

あの厚木ですらそれくらいわかっていて、暗黙の了解事で見逃している。

運動といえるのはあの材木座との喧嘩ぐらいだ。

 

”ビュ~”

 

うへ~

それに時たますごい向かい風が吹いてくる。

その度に押し戻されそうで、すごく走りにくい。

 

・・・・・・風・・か。

そういえばあいつと初めて話した時もこんなふうに風が強かったよな。

確か次の日が台風だったはずだ。

 

あの日、あんなに風が強くなかったら、校舎の窓誰かが開けっ放しにしてなかったら、

俺が窓に気を取られてなかったら、俺はあいつと出会うことはなかった。

 

「はぁ、はぁ、はぁ」

 

そうだ、あの風のおかげで俺はあいつに出会うことができたんだ。

初めてあった時から不思議となんだか話がしやすくて。

それで文実がやばかった時、あいつがやろうとしたこと聞いて、

すげぇ親近感がわいて。

それであの後、ステージ裏で。

 

『・・・・・あ、あのね、わたし信じてるよ。

 何があったかわからないけど、わたしは比企谷君を信じてる』

 

文化祭で二人で片付けしてる時、お前俺に言ってくれたよな。

あん時のお前の言葉で俺がどれだけ救われたか。

お前はあの時からずっと俺のことを信じてくれてたんだよな。

 

「はぁ、はぁ、はぁ、あっ!」

 

”ズデン”

 

いってぇ。

はぁ、はぁ、くそ、気持ちだけ先走って足がもつれやがった。

あっ、ズボンの膝破けてる。

うゎ、膝結構擦りむいている。

・・・そういえば、マラソン大会の時も結構派手にこけたっけ。

それで、介護テントに行ったら久しぶりにあいつに会って。

 

『そこに座って~♬』

 

『うぇ~、染みるー』

 

『あっ、ごめんなさい、消毒しすぎて骨が見えてきた』

 

『うっ、うそ・・・・』

 

あいつ、消毒してる時ってすげ~うれしそうだった。

はは、絶対S子だ。

うん、間違いない。

・・・・・文化祭の後、修学旅行や生徒会選挙とかいろいろあって、

すっかり忘れてた。

でも久しぶりに会ったのにやっぱりなんか話しやすくて。

 

『S子』

 

『なによⅯ男』

 

はは。

本当に、お前には何でも話できた。

由比ヶ浜や雪ノ下にも言えないことでも。

 

『な、なぁ三ヶ木、ちょっと聞いてもらってもいいか?』

 

『ん? なんだ、スケが谷君』

 

『あのな、修学旅行でのことなんだが』

 

だからあの修学旅行でのこと、お前に聞いてほしくなって。

お前なら俺のやり方どう思うのかどうしても知りたくて。

お前は俺の話を聞いて、それで俺の頭撫でてこう言ってくれたな。

 

『比企谷君、マジでとてもよく頑張ったねって思った』

 

『話ししてくれてありがと』

 

『やっぱ信じててよかった』

 

『ね、わたしごときでいいなら、比企谷君が話したいこと聞いてあげる。

 それで少しでも気が楽になるならいつでも話して。

 だ・か・ら、これからもそばにいてあげるね』

 

俺は、お前の言葉がうれしくて。

俺のやり方を理解して、認めてくれて、信じてくれるのがうれしくて。

だから、そのとき思ったんだ、俺はお前にそばにいてほしいって。

でもそれでついお前の気持ちに土足で踏み込んで。

・・・・・くそ、こんなところでモタモタしていられない。

こんな傷なんて俺が今まであいつを傷つけてきたことに比べたら。

 

”スク”

 

なんでもないだろうが!

 

     ・

     ・

     ・

 

「はぁ、はぁ、はぁ」

 

俺の心の中でお前に対する想いがどんどん広がって強くなっていくのに、

俺はお前に心の中の痛みや辛さを知らなくて、それを知っていた

稲村に嫉妬してお前に・・・・

まったく俺は。

 

     ・

     ・

     ・

 

「はぁ、はぁ、あ、赤信号か」

 

どこでボタン掛け間違ったんだろう。

いつから俺たちの想い変わってしまって。

いつも間にかお前は刈宿と・・・

 

『わたしが駄目になりそうな時、負けそうになった時、

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・抱きしめてほしいんだ』

 

『もっとやさしくしてよ、わたしのこと、わたしのこと抱きしめてよ馬鹿!!」

 

いや、掛け間違えてなんかいなかったんだ。

少なくともお前はあの時と全然変わっていなかった。

 

そうなんだ、あの時、俺はお前のやり方は間違ってるって否定するんじゃなくて、

これがお前なんだって認めて、それで一緒に変わろうって言ってやるべきだったんだ。

あいつはあんとき本当に参っていたんだ。

なぜ気が付かなかった。

なんだよ、俺はあいつとこんなにも長い時間を共有していたのに、

なんで気が付かなかったんだ。

笑ったり、泣いたり、嫉妬したり、ケンカしたり、

少しずつ、少しずつ距離ちじめながら理解しあって。

いつもお前は俺のそばにいてくれて、俺を見ていてくれたのに。

それなのに俺は、俺は・・・

 

『わたしは比企谷君が好き、好き、好き、大好き。

 今までも大好きでした。

 そんで、これからもずっとずっと比企谷君のことがだいす 』

 

くそ!

 

”ダ―”

 

     ・

     ・

     ・

 

「はぁ、はぁ、はぁ、つ、着いた。」

 

ま、まだ時間は十分にあるはずだ。

 

”プシュ~”

 

どこだどこだ、どこにいるんだ?

 

”きょろきょろ”

 

あ、そうだ掲示板、発着の案内確認しておくか。

この時間なら、あいつの便はまだ搭乗手続きの時間ではないはずだ。

 

”スタスタスタ”

 

えっと、AANの305便だったよな

305、305・・・・ん?

305ってないぞ。

いや、でもこの麻緒さんのメモにはAAN305便って。

他の航空会社の間違いか?

カウンター、AANのカウンターで聞いてみるか。

 

”スタスタスタ”

 

     ・

     ・

     ・

 

「あの、お客様、この便は午前中に出発している便になりますが」

 

「え、い、いや、そんなはずは。

 あ、もしかして麻緒さん間違って。

 あの、他にロサンゼルスに行く便はありませんか?」

 

「いえ、本日はロサンゼルス行きの便はこの305便が最後です」

 

「い、いやそんなはずは。

 あ、そ、そっか、他の航空会社の便だ。

 はは、麻緒さんそそっかしい」

 

「いえ、AAN305便は確かに我が社の 」

 

「そんなはずないですから!!」

 

”タッタッタッ””

 

     ・

     ・

     ・

 

な、なんでだ、なんでどこにもいないだ。

う、うそだ、嘘だろ三ヶ木。

お前、本当にもう行ってしまったのか?

だ、だってこの麻緒さんのメモじゃ、まだ時間は十分にあるはずなんだ。

お前に会えるはずだったんだ。

 

”どさ”

 

・・・なんだよ、午前の便って初めから間に合わなかったんじゃねえか。

 

”キーン”

 

この展望デッキから見える飛行機。

あ、あの飛行機のようにお前はもうアメリカに飛んで行ってしまったのかよ。

 

”ドン!”

 

「くそ、くそ!」

 

み、三ヶ木!

な、なんでだ。

お前、俺のそばにいてくれるって言ったじゃねえか。

ずっとずっと俺のそばに・・・・・・いてくれるって言ったじゃねぇか。

それなのに。

 

”ドン!”

 

「何で行ってしまったんだ!

 三ヶ木、馬鹿野郎帰って来い!

 俺はお前にずっと・・・・・そばにいてほしい。

 俺はお前のことが・・・

 お前を誰にも渡したくない!

 う、うううううう。

 くそ!」

 

”ドン!”

 

「お、お客さま、あんまりガラスを 」

 

”ドン、ドン!”

 

「お客様!」

 

「・・・・・す、すみません。」

 

”スク”

 

「お客様大丈夫ですか?」

 

「・・・・・はい」

 

”トボトボトボ”

 

     ・

     ・

     ・

 

・・・・・お、俺は

 

”トボトボトボ”

 

今頃、あいつ何してんだろう

まだ飛行機の中だよな。

刈宿と話とかしてるんだろうか。

それとも機内食でも食べてるんだろうか。

 

『う~、お腹いっぱい。

 これだけ満足してあのお値段。

 ふふふ、余は満足じゃ~』

 

へへ、そういえばあいつ牛丼、めっちゃ美味そうに食べてたなぁ。

・・・・・

あ、それとも寝てるのかもな。

あいつ良く寝るもんな。

俺の前でも平気で。

全く俺のことなんだと思ってんだ。

 

『お、おい三ヶ木、いい加減起きろ!』

 

『ふぁ、ふぁ~い、とうちゃん』

 

『いや、とうちゃんじゃないから』

 

あいつの寝顔はもう俺だけのものじゃないんだ

・・・・・三ヶ木。

 

『・・・・・愛してます、八幡』

 

く、くそー、俺は・・・

 

”ぎゅるるる~”

 

は、なんだよ、こんな状態でも腹減るのかよ。

そういえば朝から何も食ってなかったっけ。

なんだよ、お誂え向きにサイゼあるじゃないか。

・・・・・まったく俺ってどうしょうもない人間・・・なんだ。

 

     ・

     ・

     ・

 

「いらっしゃいませ。

 ご注文はお決まりですか?」

 

「あ、ミラノ風ドリアとドリンクバーで」

 

「はい、畏まりました」

 

アメリカにもサイゼってあるのだろうか。

もしあるのなら行ってみようか、俺もアメリカに。

・・・・・はぁ~、なに考えてんだか。

 

     ・

     ・

     ・

 

「お待たせしました」

 

”カタ”

 

「あ、あの~」

 

「はい?」

 

「サイゼってアメ・・・・・い、いえ何でもないです」

 

「は、はい?」

 

”スタスタスタ”

 

なに聞こうとしてんだ俺。

ばっかじゃないの。

聞いてどうするんだ。

行くのか、行きたいのかアメリカに。

・・・・・はぁ~、食べるか。

 

”パク”

 

ん?

 

”パク”

 

あ、あれ? 

 

”パクパク、もぐもぐ”

 

「ん、なんだこれ!

 全然味がしない。

 ち、なんなんだこのドリアは。

 この店はどうなってんだ。

 お、俺を馬鹿にしてるのか!」

 

”パク”

 

「ん? そんなことないよ。

 いつもと一緒だよ」

 

「い、いやそんなはずはない!

 味なんかちっともしないだろう」

 

”パク、もぐもぐ”

 

「そうかなぁ~、普通に美味しいけど。

 そんじゃこれわたしが貰ってあげる」

 

”パクパク、もぐもぐ”

 

「ん~美味しい♡」

 

「そんなはず・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・え?

 え゛ー!!

 な、な、な、な、な、な、お、お前!」

 

「ん?

 ほら慌てないで、はいコーヒー入りシロップ」

 

”ゴクゴク”

 

「う~、美味い。

 じゃない!

 な、何でお前がここにいるんだ!

 お前はアメリカに 」

 

「ん、わたしアメリカ行かないよ」

 

い、いや、あれ?

え、えっと・・・・・

 

「何で行ってしまったんだ!」

 

「お、おい、お前見てた・・・・い、いつからだ!」

 

「はい?」

 

「いや、いつから見てたんだ。

 み、見てたんならなんであの時に 」

 

「いやだよ、あんなに大声で名前呼ばれて、

 は~い、なんて出ていけるわけないじゃんか」

 

「な、なぁ、いつから・・・・い、いた?」

 

「へへへへ」

 

な、なにその笑顔。

ま、まさか初めからずっと見てたんじゃないだろうな。

嘘だ、嘘だ! ね、嘘だと言って。

 

「お、おい!」

 

「教えてあげな~い」

 

「お、教えてください。

 お願いします」

 

「うん?

 へへ、麻緒さんから電話もらってさ。

 そしたら比企谷君、見つけることができて。

 そんなことより、はい、あ~ん」

 

「断る!」

 

「三ヶ木、馬鹿野郎帰って来い!」

 

「わー、だ、黙れ。

 わかった、わかったから、あーん」

 

「はい♡」

 

”パク”

 

「あ、あれ? 美味い。

 いつもの味だ。

 な、なんで 」

 

「ね、美味しいでしょ」

 

”もぐもぐ”

 

「お、おい待て!

 お前、なに勝手に俺のドリア食ってんだ。」

 

「いらないって言ったじゃん」

 

「言ってない。

 よこせ!」

 

「いいのかぁ~、俺はお前にずっと 」

 

「わ、わかった、黙れ。

 くれてやるこの野郎!

 すみません、ミラノ風ドリアもう一つ」

 

「あ、それとハンバーグステーキも一つ」

 

     ・

     ・

     ・

 

”スタスタスタ”

 

「へへ、満腹満腹、余は満足じゃ~」

 

「ち、ハンバーグまで奢らせやがって。

 それにしてもお前食いすぎだろう」

 

「ご馳走様でした」

 

”ペコ”

 

「・・・ま、まぁいいけど」

 

「だってさ、今月もチョ~やばいんだよ。

 家では麻緒さんとの日常会話さ、英語でしなければいけないんだよ。

 そんで間違ったら、1回100円徴収されるんだもん。

 1回100円だよ、100円!」

 

「そ、そうなのか。

 それはちょっときついな」

 

「入試終わったらちゃんと埋め合わせするからね」

 

「期待せずに待ってる。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ・・・な、なぁ三ヶ木、お前ずっと聞いてたんだよな」

 

「え、あ、う、うん。

 初めからずっと」

 

「くそ!」

 

「だってぇ」

 

「・・・こ、答え、欲しいんだが」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ・・・んと、な、なんのことかなぁ」

 

「おい!」

 

「忘れたなぁ~

 いや~最近ほんと忘れっぽくて、と、年かなぁ~

 だ・か・ら、もう一回言ってくれない?」

 

「断る」

 

「じゃ、やだ。

 答えてあげな~い」

 

「・・・・・・・三ヶ木」

 

「・・・・・・やだ」

 

「・・・・う~」

 

「へへ、ごめん。

 冗談だよ。

 あのね比企谷君、わたしはもうどこにも 」

 

「三ヶ木、俺と付き合ってほしい」

 

「え!」

 

「・・・いや、俺と付き合ってほしいんだが」

 

「あ、あれ?、そばにいてくれってことじゃなかった?

 付き合ってって、ほ、ほんとに?

 あ、あのさ、ほんとにわたしで・・・・・いいの?」

 

「ああ、お、お、お前だ」

 

「だ、だってわたしなんか。

 ゆ、ゆきのんみたいに綺麗でないし、結衣ちゃんみたいにスタイル良くないし。

 せ、性格だってこんなんだし。

 そ、そんでもいいの?」

 

「ああ。

 確かに世間一般的にそんなに可愛いいわけじゃない。

 まぁ、中の中ぐらいか。

 スタイルも・・・まぁ、雪ノ下には勝ってるけどな。

 性格は言わないでおいてやる。

 武士の情けだ」

 

「お、おい、なんだ武士の情けって!」

 

「だけどな、俺、お前にどこにも行ってほしくないんだ。

 ずっとずっとそばにいてほしい。

 ・・・・・・・・・・・お前を失いたくない。

 誰にも渡したくない、俺だけの人になってほしい。

 だから俺と付き合ってほしいんだが」

 

「ひ、比企谷君♡」

 

”だき”

 

「み、三ヶ木、こ、こんな場所で。

 い、いや、ほら人多いから」

 

「う、うううう、うぐ、うぐ、う、うれしい、わだじうれじい」

 

「三ヶ木」

 

”なでなで”

 

「三ヶ木、返事いいか?

 ちゃんと聞きたい」

 

「ぐす、あ、う、うん。

 えっと・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ごめんなさい!」

 

「え?

 え゛ー!!

 ・・・・・・・な、なんで、なんでだ、あれ?」

 

「わたし比企谷君のこと大好き。

 好きで好きでほんとに大好き」

 

「え、えっと、だ、だったら 」

 

「だからね、付き合っちゃうともう比企谷君しか見えない、考えられない。

 頭の中が隅から隅まで比企谷君でいっぱいになっちゃって、

 絶対に勉強なんて手につかない。

 勉強してても今なにしてるのかなぁって思っちゃって、

 絶対に会いたくなっちゃう。

 うううん、きっと会いに行っちゃう。

 でもそれじゃ駄目。

 ・・・・・だから、ごめんなさい。

 返事は、入試が終わるまで待って下さい。

 入試が終わったらちゃんと返事する。

 それまで待って」

 

「三ヶ木」

 

「わたしね、決めたの。

 わたしは東地大に行く。

 あ、洋和女子受かりそうにないからとかじゃないから。

 東地大だから行きたい、東地大じゃないとできないこと見つけたの。

 だから絶対に東地大に入学して、いっぱい勉強して経験してちゃんと保母さんになる。

 わたしね、わたしが夢に向かって頑張ってる姿を見てもらいたい。

 比企谷君に見てもらいたい。

 いっぱいいっぱい頑張るから」

 

「三ヶ木」

 

「だからちょっとだけ、返事待っててほしいの。

 ・・・もう、絶対どこにも行かないから」

 

「ああ、わかった」

 

「・・・・・・・ごめんね」

 

「・・・・・・・いや、いいんだ。

 俺もお前が頑張ってる姿見てみたい。

 お前が保母さんになった姿見てみたい。

 だから入試頑張れ」

 

「・・・比企谷君♡」

 

「三ヶ木」

 

「・・・・・」

 

「・・・・・」

 

そうなんだ。

俺はこの目を、この鼻を、この口を・・・この三ヶ木をずっと見ていたかったんだ。

 

『素直になれ八幡』

 

俺はこいつをずっとずっと見ていたい。

 

「・・・・・」

 

「・・・・・」

 

「・・・・・ひ、比企谷君、あ、あの」

 

「えっ」

 

”こく”

 

う、うそ。

え、いいの?

キスしてもいいのか?

お前、目を瞑ってうなづいてって。

 

”ゴクッ”

 

み、三ヶ木、お、俺は絶対お前のこと・・・

だから。

 

”そー”

 

「あー、おかあちゃん、あのお兄ちゃん達チュ~するよ」

 

「こ、こら静かにしてなさい。

 い、今いいとこなんだから」

 

「「へっ?」」

 

「いや~最近の若いのは大胆だね」

 

「ねぇねぇ、写メ取った?」

 

”ワイワイ、ガヤガヤ”

 

「・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

「いや~!」

 

”ダー”

 

「み、三ヶ木ー」

 

     ・

     ・

     ・

 

「う、うううううう」

 

「あ、あの~お客様、どうかされました?」

 

「あ、い、いえなんでもないっす」

 

「あの、よろしかったらお絞りどうぞ」

 

「あ、す、すみません」

 

     ・

 

『刈宿君、ご、ごめんね』

 

『美佳先輩、なに謝ってんすか。

 見送りに来てくれただけでもうれしいっす』

 

『あ、あの、ほんとにごめん』

 

『本当にもう謝らないでください。

 俺の方こそ、あの時急に抱き締めてすみませんでした』

 

『う、うん。

 へへ、あん時はちょっとびっくりしちゃった』

 

『す、すみませんっす。

 ・・・美佳先輩、美佳先輩はちゃんと自分のやりたいことに向かって頑張るっすよ。

 もう迷ったらだめですよ。

 俺は美佳先輩が自分の夢を叶えることが一番っすから。

 ずっと応援してるっす』

 

『わたしも!

 わたしも刈宿君がいつかプロの選手になって活躍することを祈ってる』

 

『うっす。

 俺も絶対夢叶えるっす』

 

『・・・・・』

 

『・・・・・』

 

『・・・・・』

 

『じゃ、行きます』

 

『あ、刈宿君。

 刈宿君、ちょっと、ちょっと』

 

『ん、なんすっか?』

 

『いいから耳かして』

 

『うっす』

 

”ちゅっ”

 

『み、美佳先輩』

 

『ほっぺでごめん。

 ・・・・・・・・・・・・あのね、いっぱいいっぱいありがと』

 

『う、うっす。

 ・・・俺の方こそ。

 じゃ、行ってきます』

 

『うん。

 行ってらっしゃい』

 

”スタスタスタ”

 

『美佳先輩、頑張るっすよ!』

 

『うん。

 刈宿君も頑張れ!』

 

     ・

 

「・・・・・う、うううう。

 お、俺頑張るっす。

 もっともっと強くなって帰ってくるっす」

 

     ・

     ・

     ・

 

「ば、ばかー

 比企谷君の所為で、すごく恥ずかしかったじゃんか!」

 

「いや、お前が先に。

 それに目瞑って上向いてただろうが。

 口だって、ん~って感じで」

 

「だ、だって~

 ずっと見つめられていたから」

 

「・・・・・」

 

「・・・・・」

 

”スタスタスタ”

 

「な、なぁ」

 

「うん?」

 

「今日、今から時間ないか?」

 

「え、あ、うん大丈夫だよ」

 

「これからカラオケでも行かないか?」

 

「カラオケ?」

 

「ほ、ほら、ク、クリスマスだから」

 

「あ、うん、行く♡」

 

「よ、よし、それじゃ戸塚戸塚っと」

 

「へ?」

 

「おう、戸塚か。

 なぁ、今からカラオケ行かないか?

 ほらクリスマスだから 」

 

”トントン”

 

「比企谷君」

 

「ん、なんだ三ヶ木?」

 

「比企谷君のバカ―!」

 

”ベシ”

 

「ぐ、ぐはぁー」

 

な、なんで空手チョップ?

でも・・・・・・・・・久しぶりの快感。




最後までありがとうございました。
長くて長くてすみません。

今話でやっと八幡とオリヒロが。
これにてこの駄作も完結・・・・・じゃない!

すみません、物語はまだ次話で1月、春までまだ少し。
もうちょっと続きます、ごめんなさい。

また次話見に来ていただけるとありがたいです。
ではではです。
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