似て非なるもの   作:裏方さん

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見に来ていただきありがとうございます。
ただただ感謝です。
ほんと更新遅れてすみません。

今回は、次話、次次話の冬物語 最終編に向けて小休息。
冬の寒さの合間の寒晴です。
前回頑張った八幡に少しばかりのご褒美を・・・

では、よろしくお願いいたします。


お正月編 -寒晴ー

”スタスタスタ””

 

『誰にもあいつを渡したくない』

 

『俺と付き合ってほしいんだが』

 

うへ~、なんてことを言ったんだ俺。

いや、きっとあの日の俺はどうかしてたんだ。

はっ、もしかして何かに憑依されていたとか。

そうじゃないとあんな恥ずかしいことを次から次と言うはずがない。

・・・・・・・ううううう。

お、俺の黒歴史がまた一ページ。

はぁ~

 

「ヒッキー」

 

だ、だがちょっと待てよ。

三ヶ木は返事ちょっと待ってくれって言ってたけど。

 

『わたしが夢に向かって頑張っている姿を見てもらいたい。

 比企谷君に見てもらいたい』

 

『もう、絶対どこにも行かないから』

 

確かそう言ったんだよな。

・・・・・そ、それってもう内定もらったってことじゃないのか。

その、あの、つまり、お、俺と・・・・・・

へ、へへ、へへへへへへ

そ、そういうことだよな。

 

「ヒッキー、ヒッキーってば」

 

そ、それにあと少しで・・・・・・キ、キスを。

うぉ~キスだぞ、キス!

それもほっぺじゃないやつ。

なに、お、俺ってもしかしてすげーリア充、リア充じゃないのか。

へへ、へへへへ

 

”ぽか!”

 

「い、いた!」

 

はっ、な、なんだ、なにが。

あ、ゆ、由比ヶ浜。

そっか忘れてた、一緒に塾から帰ってたんだった。

え、な、なに?

なんか怒っていらっしゃる?

 

「ヒッキー、さっきからなにいっても生返事ばっかりだし。

 ずっとニタニタ笑ってて、なんかめっちゃキモ!

 それにほらもう駅通りすぎちゃったし」

 

「あ、ああ、すまんちょっとな」

 

「なにかいいことあったの?」

 

「ん、い、いや何でもない。

 なんでもないぞ厳密に」

 

「む~なんか気になるし。

 まぁいいけどさ。

 それよりさ、あのね明日からほら塾って正月休みじゃん。

 ヒッキー正月って何か予定ある?」

 

「勉強するに決まってんだろ」

 

「塾は3日からじゃん。

 よかったら元旦か2日の日に一緒に初詣にい 」

 

「行かない」

 

「即答だ!

 いいじゃん、一緒に行こう。

 あのさ、ゆきのんも誘って三人で」

 

「断る!

 いいか由比ヶ浜、俺達は受験生なんだ。

 正月休みも休まず、塾で必死に特訓している奴らもいるんだぞ。

 それに年明けたら、すぐにセンター試験なんだ。

 初詣に行く時間があるなら勉強しろ。

 あとな、もしあんな人混みに行って、万一風邪を移されてでもしてみろ、

 最悪じゃねえか。

 そんなデメリットは断じて受けるわけにはいかない」

 

「そ、そうだけど。

 でも一日ぐらいいいかなぁって。

 ほら気分転換みたいな」

 

「その一日が命取りになるんだ。

 兎に角、俺は行かない」

 

「わかった、それならいい!

 ゆきのんと行ってくるから」

 

「おう、そうしてくれ。

 ついでに俺の合格を願ってきてくれると嬉しい」

 

「はぁ、なんか利用されてるし。

 まぁいいけどさ。

 わかった、一緒にお願いしてくるね」

 

「おう頼んだ。

 話はそれだけか、ほらさっさと駅戻るぞ。」

 

”スタスタスタ”

 

「ちょ、ちょっと待ってよヒッキー。

 あ、ほら募金してるよ。

 あたし、募金してくる」

 

”テッテッテッ”

 

「歳末助けあい募金お願いしま~す」

 

「お願いしま~す」

 

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

 

う~さぶ。

寒いと思ったら、カマクラいないのか。

さっきまで足元で俺を暖めていてくれたのに。

どこ行ったんだ?

 

「お~い、かまくら~」

 

どこに行ったんだ俺の暖房機器。

 

”ギュルル~”

 

は、腹減った。

なんだもう9時過ぎてんのかよ。

道理で腹減るはずだ。

探すの朝飯食ってからにするか。

 

”トントントントン”

 

ん、そういえば昨日の元旦、俺お年玉貰ってないよな。

親父達、大晦日に騒ぎ過ぎて昨日はほとんど寝てたからな。

今日こそはゲットしないと。

 

”ガチャ”

 

「あ、お兄ちゃん、やっと起きてきた」

 

「お、おう小町、明けましておめでとさん」

 

「それ昨日聞いたから」

 

「ん? あれ親父達は?」

 

「二人とも出かけたよ。

 なんか仕事だってさ」

 

「そうか、よくはたら・・・・・・ちょ、ちょっと待て。

 今日は1月2日だぞ、2日。

 何で正月早々働いているんだ」

 

「あ~なんかさ、朝二人に電話かかって来てさ」

 

ど、どんだけ社畜なんだ。

や、やっぱり俺は働かないぞ、専業主夫を目指す。

親父達みたいには絶対にならん。

はっ、ちょ、ちょっと待てよ。

お年玉!

俺のお年玉はどうなったんだ。

俺はまだもらってないなずだ。

まてよ、この感じで明日も親父達仕事に行ったら、

俺は塾が始まるし、もしかして貰えないってことに。

・・・・・・お、おい!

は、ま、待てよ。

もしかして小町に預けているってことも。

 

「こ、小町、お前お年玉どうした?」

 

「ん? お父さん達が出かける前に貰ったよ」

 

「お、俺のは、俺の分は?」

 

「あー、えっと~、ほらお兄ちゃん寝てたから」

 

「・・・・・」

 

ま、マジか。

はっ! も、もしかして親父達、俺にお年玉やりたくなくて

それで仕事に行ったんじゃ。

 

「そ、それより、ほらちゃちゃと朝ご飯食べちゃって。

 小町もこれから出かけないといけないから」

 

「ん? どこに行くんだ、初詣か?」

 

「もう、ちゃんと言ってたじゃん

 今日は生徒会の新年会があるって。

 なにか出し物しないといけないから大変なんだよ」

 

「そっか、それで年末ずっと何か練習してたんだな。

 なんか”踏み潰せ踏み潰せ”とか、”殲滅だ!”とか歌ってたけど、

 物真似でもすんのか。

 まぁ、そこそこ声似てたんじゃねえのか。

 ご苦労さん。

 いっただきまーす」

 

”パクパク”

 

「・・・そこそこって

 お兄ちゃんポイント低い」

 

     ・

 

「ふ~、ごっそさん」

 

「あ、洗っておくから食器はシンクのとこに浸けておいて」

 

「お、サンキュー

 さて、それじゃ勉強すっか。

 その前にカマクラカマクラっと」

 

”キョロキョロ”

 

「なぁ小町、カマクラ知らねえか?」

 

「うん? カー君ならさっきまでソファのとこにいたよ。

 なんかものすごく眠たそうだったけど」

 

「そうか?」

 

”スタスタ”

 

「お、いたいた。

 お~い、カマクラ探したぞ~

 ほら仕事だぞ~」

 

”ぷぎー!”

 

「お、おいカマクラ!」

 

「シャー!」

 

”ガリガリ”

 

「い、いてぇ~」

 

「お兄ちゃん何やってるの」

 

「い、いや勉強すっからカマクラを暖房の代わりにだな」

 

「はぁ~、カー君嫌がってるじゃん。

 まったく何やってんだか。

 ね、それより本当に初詣にいかないの?」

 

「行かない」

 

「合格祈願は?」

 

「ふふふ、小町、お兄ちゃんは神になんぞ頼らない。

 自分の力でのし上がるのだ

 神に頼らないと合格できないような奴らと一緒にしてもらっては困る」

 

ま、まぁ本当は由比ヶ浜に頼んだんだが。

正直藁にも縋りたい心境だが、わざわざ寒い思いしてあんな人混み行きたく

ないしな。

 

「折角仲直りできたんだから、美佳さん誘って行ってくればいいのに」

 

「い、いや、あいつも受験勉強で忙しい・・・はずだ」

 

まぁ、あいつの場合、東地大なら余裕で合格するはずだ。

それにこっぱずかしくて会えない。

いったいどんな顔して会えばいいんだ。

新年のあいさつした時もなんか微妙だったし。

 

「ふ~ん。

 あ、もうこんな時間。

 じゃあ小町行ってくるね、留守番よろしく!」

 

「お、おう」

 

     ・

     ・

     ・

 

”スタスタスタ”

 

「ん~、ん~」

 

「こ、こ、小町ちゃんどうしたの?

 さっきからなんか難しい顔」

 

「鈴ちゃんちょっとごめんね」

 

”カシャカシャ”

 

「あ、もしもし」

 

     ・

     ・

     ・

 

寒い、やっぱり寒い。

何でよりによってこの時期にエアコン故障するんだ。

電気ストーブだけでは足りん。

やっぱりここはカマクラを。

 

”トントントントン”

 

カマクラカマクラっと、確かまだソファにいたはずだ。

 

”ピンポ~ン”

 

ん、なんだ、正月早々。

 

「お~い小町」

 

あ、そっか、新年会に出掛けてていなかったっけ。

ちっ、くそ、面倒くさい。

隣のおばさんだったらどうすっかな。

あの人な話長いんだよな。

それに俺パジャマのままだし。

は、そうだ居留守、ここは居留守ってことで。

 

”ピンポ~ン,ピンポ~ン”

 

し、仕方ない。

 

”ガチャ”

 

「はい、なんすか?」

 

「ひ、比企谷君、け、怪我大丈夫?」

 

「げ、三ヶ木!」

 

”ベシ”

 

「ぐはぁー、いてぇ~」

 

「だから、いつもなんで”げぇっ”なんだし、もう!」

 

「い、いや、その、な、なんだ、何の用だ!」

 

「あ、小町ちゃんから電話かかってきて、比企谷君が猛獣に襲われて

 すごい大けがをしたって。

 小町ちゃん外出してて、ご両親もいないから助けてって言われたから」

 

「大怪我?

 いや、この通り何ともないんだが?」

 

「よ、よかった」

 

”へなへなへな”

 

「お、おい大丈夫か三ヶ木」

 

「う、うん、だ、大丈夫。

 慌ててきたから、ちょっと安心して。

 はぁ~、でもほんと何ともなくてよかった」

 

ったく、小町の野郎やりやがったな。

・・・しかしこいつなんて恰好してんだ。

この寒空にそのスカート、しかも生足・・・生太ももじゃねえか。

 

”ジー”

 

「え? あ、あの比企谷君、やっぱりなんか服装変かな?

 慌ててたから、つい手に取ったの着てきたんだけど」

 

「い、いや変じゃない。

 まぁ、そのなんだ、ご馳走さん」

 

「へ?」

 

「あ、そ、それより、そんなとこに座っていないで、

 よかったら家に入ったらどうだ。

 折角来たんだ、コーヒーぐらい出すわ」

 

「え、あ、で、でも」

 

「まぁ、今誰もいないしな。

 遠慮するな」

 

「え、ご両親はほんとにいないの?」

 

「ああ、二人とも仕事だ」

 

「え! き、今日から?

 だ、だって今日はまだ2日」

 

「ああ、まったくだ。

 だから絶対俺は社畜にならないからな。

 やっぱり専業主夫、専業主夫こそ俺の天職だ」

 

「・・・・・・うん、わたし頑張る」

 

「え?」

 

「え?」

 

「「・・・・・・・・・」」

 

「ま、まぁ、とにかく入れ。」

 

「う、うん」

 

ん~、こいつ今なんか変なこと言ってなかったか?

聞き間違いだよな、そ、そうだ聞き間違いに違いない・・・多分。

 

     ・

     ・

     ・

 

「小町さん、煤ケ谷さん明けましておめでとう!」

 

「あ、藤沢先輩、あけおめです」

 

「です」

 

”スタスタスタ”

 

「ねぇ、ねぇ、柄沢君の家ってここでいいよね?

 なんかすごくでかいから」

 

「はい、確か頂いた地図だとこのお屋敷のはずですね」

 

「こ、ここ、ここでいいです」

 

「煤ケ谷さん、柄沢君の家知ってるの?」

 

「あ、は、はい。

 わ、わたし、か、柄沢先輩と清川先輩と同中なので」

 

「そうなんだ。

 ね、煤ケ谷さん、柄沢君のご両親って何してるの?」

 

「あ、あ、あの、た、確か雪ノ下建設のお偉いさんって聞きました」

 

「「へぇ~」」

 

「あ、会長、蒔田先輩」

 

”スタタタタ”

 

「あけおめです」

 

「です」

 

「あけおめ、小町ちゃん、鈴ちゃん。

 あ、藤沢ちゃんもあけおめ」

 

「いろはちゃん、蒔田さん、明けましておめでとうございます」

 

「あけおめ藤沢さん。

 金持ちって知ってたけど、それでも伊達にでかいよね柄沢んち。

 いや~さすが柄沢ボンボン」

 

「蒔田さん柄沢ボンボンって、くくくくく」

 

「じゃ、みんな揃ったことだしそろそろ行こっか」

 

「くくくく、あ、でもいろはちゃん、清川君がまだだよ」

 

「あ、あ、あの、わたし電話します」

 

「煤ケ谷ちゃん、清川のアド知ってんだ」

 

「は、はい、蒔田先輩。

 あ、あの、き、清川先輩と小、中と同じ・・・・なので」

 

     ・

     ・

     ・

 

「お、おい三ヶ木。

 や、やっぱりするのか?」

 

「もう往生際が悪い!

 男なんだから覚悟決めなさい。

 それに、今・・・家に誰もいないんだし。

 そ、その二人だけなんだから」

 

「その、まぁなんだが。

 ・・・しないとダメか?」

 

「だめ。

 ここまで来たらやめられない。

 ほら出して」

 

「う・・・・・」

 

「ちゃんと出してよく見せて」

 

”にぎ”

 

「い、いやそんなに強く握られると」

 

「あ、ごめん。

 やさしくするね」

 

「・・・い、痛くしないでね」

 

「・・・・・女の子じゃないんだから。

 ほらするよ」

 

”ペタ、ペタペタ”

 

「ぐはぁー、し、染みるー」

 

「ぐふ、ぐふふふふふ」

 

「や、やっぱりお前めっちゃ嬉しそうだし。

 ぜ、絶対Sだ、このS子」

 

「ひど!

 でもさ、放っておいたら駄目なんだからね。

 手のひらを引っ掻かれただけだとしても、そこからばい菌でも入ったら

 大変なんだから。

 さて、あとは絆創膏っと」

 

”ピタ”

 

「はいOK。

 大したことじゃ無くてくてよかった。

 小町ちゃんから電話もらった時はほんとびっくりしたんだから。

 でも猛獣ってこの子だったんだ。

 へへ、可愛い」

 

”なでなで”

 

「ふにゃ~♬、ゴロゴロゴロ」

 

「す、すまん。

 あ、コーヒー冷めてしまったな。

 もう一回淹れ直すわ」

 

「あ、いいよ、もったいないもん。

 それよりさ、おコタ出してあるんだ」

 

「冬は炬燵が一番だ。

 まぁ、つい眠たくなってしまうのがネックだけどな」

 

「うん、そうだね。

 わたしもよく寝ちゃう」

 

ん?

だがおかしい。

炬燵あんまり暖かくない。

スィッチ弱だったかな?

 

「すまん、ちょっと炬燵の温度設定高くするわ」

 

”ガバ”

 

えっと・・・・・・・・・・・・

マ、マジか!!

こ、こ、こ、こ、これは!

炬燵の中の暗闇に浮かび上がるむっちりしっとりとした質感。

こ、これは太もも、い、いや生太もも。

 

”ゴク”

 

ま、待てよマジ、マジか!!

ぴったりと閉じられられている太もも。

その太ももと太ももの間、わずかな隙間の奥。

おお! あの禁断の三角地帯に朧気に白く見えるもの。

ま、まさか、あ、あれは・・・・・・パンツ、パンツなのか!

くそ、はっきり見えん。

も、もう少し近くで。

 

「あ、比企谷君、コンセントが抜けてるよ」

 

はっ!

 

”ガバ”

 

「あ、ほ、本当だな。

 はは、そうか、小町が出かける前に抜いていったんだな。

 ちっ!」

 

「え?」

 

「あ、い、いや何でもない。

 い、今コンセント差し込む」

 

「あ、う、うん。

 お願いします」

 

「おう、お願いされてやるこの野郎!」

 

「え、な、何か怒られてる」

 

     ・

     ・

     ・

 

「それではみなさんゆっくりしていってね」

 

「あ、お正月早々押しかけてすみませんでした」

 

「いいのよ。

 でもごめんなさいね。

 他にもお客様がお見えになってるからこれで失礼するわね。

 あ、そうそう。

 会長さんてどなたかしら?」

 

「あ、はい、わたしです」

 

「えっ! あなたが会長さん?

 そう、あなたなの」

 

”ジロジロ”

 

「あ、あの~なにか?」

 

「母さん、保護者会役員の皆さん待ってるじゃなかった?」

 

「あ、そうそう、そうだったわね。

 それではね」

 

”スタスタスタ”

 

「すまない、一色さん。

 嫌な思いしただろう?」

 

「あ、うううん。

 それより、それじゃ新年会始めましょうか。

 まずは、みなさん、新年あけおめです」

 

「「あけおめ!」」

 

「おめでとう」

 

「明けましておめでとうございます、いろはちゃん」

 

「以下省略」

 

”パコッ”

 

「いて、新年早々スリッパで叩くな蒔田!」

 

     ・

     ・

     ・

 

く、くそ、頭の中、あの白いものがこびりついて離れない。

あれって絶対にパンツだよな。

へへへへ、新年早々なんて縁起がいいんだ。

これも日ごろの行いが・・・

い、いや待て、はっきり確認できたわけじゃない。

もしかしたらスカートの裏地だったのかもしれん。

そ、そうだとしたら・・・

く、くそ! ど、どっちだ、パンツなのか裏地なのか。

う~気になって仕方がない。

そ、そうだ。

ここはやっぱり確かめないと。

ちゃんと確かめないと今後の勉強にも差し障りがあるに違いない。

い、いや、もうすでに差し障っている。

よ、よし、ここは勉強のため。

そう、勉強のためだ。

 

「えっと、比企谷君さっきから何をぶつぶつと 」

 

「あ、い、いや、なんか炬燵がなかなか暖かくならないな~って思ってな」

 

「そう?

 ちゃんと暖かいけど」

 

「いや、寒い、寒いぞ、間違いない。

 そ、そうだ、もしかしたら温度調節が弱になってたのかもしれん。

 強、強にしないと」

 

「あ、う、うん」

 

”ガバ”

 

「えっと~、切り替えスイッチどこだったかなぁ~」

 

”ちら”

 

お、おお、やっぱり炬燵の中で見る生太ももって何とも言えない。

なんでだろう、この薄暗さがそそるのか?

い、いや、今大事なのは生太ももじゃない。

そ、その奥にみ、見えるこの白い物の正体を。

 

”ゴク”

 

う~、どっちだ、ここからはよくわからん。

も、もっと近づいて。

 

「比企谷君、もしかして切り替えスィッチこっちにあるの?

 あの、わたし見ようか」

 

”すり”

 

お、おお!

あ、足が、ぴったりと閉じられていた生太ももがズレて、

禁断の三角地帯が今俺の目の前に開かれた。

 

”ツー”

 

あ、やべ、鼻血が。

 

「比企谷君?」

 

「だ、大丈夫だ、スィッチあったから。

 い、いま強にするから、お前はもう少しそのままでいてくれ。

 絶対に動くな」

 

「え? あ、うん」

 

よ、よし。

ど、どれ、禁断の三角地帯の奥に見える白くて柔らかそうなもの。

今、その正体をあきらかに。

 

”ゴク” 

 

「ただいまー

 八幡、誰かお客さん来てるの?」

 

え! うそ母さん。

 

”ガチャ”

 

「あら」

 

「あ、お、お邪魔してますお母様」

 

げっ、な、なんで。

し、仕事に行ったんじゃなかったのか。

や、やばい。

 

”ゴツン”

 

「い、いたー」

 

「あ、あんた炬燵に頭突っ込んでなにして・・・・・・・・八幡」

 

「い、いや、ち、違う。

 母さん、そ、そんな悲しい顔して見ないでくれ。

 お、俺はただ。

 お、俺はただ炬燵の温度設定を強にしようとして」

 

「・・・・・」

 

「・・・・・あ、あの~、母さん?」

 

「・・・・・あんた鼻血」

 

「えっ、なに、なに? 

 比企谷君?」

 

「・・・・・な、なんでもない。

 聞かないでくれ三ヶ木」

 

「まったくこの子は。

 ほらティシュ。

 それより美佳さん」

 

「はい」

 

「あなた、わたしとの約束憶えてる?」

 

「・・・・・・・はい。

 もう会わない・・・です」

 

「約束も守れないのかしら」

 

「ごめんなさい、お母様」

 

”ペコ”

 

「待ってくれ母さん。

 三ヶ木は約束破ってない。

 確か母さんと三ヶ木が交わした約束っていうのは、三ヶ木から俺に連絡をしないって

 ことだったはずだ。

 信じてくれないかもしれないが、あれから三ヶ木が俺に連絡してきたことはない。

 いやむしろ俺を避けていたぐらいだ。

 今日だって小町が三ヶ木に連絡したからで。

 だから三ヶ木は母さんとの約束を破ってない」

 

「・・・」

 

「・・・ち、違うの比企谷君。

 確かにそういう約束だったけど違うの。

 わたし達はお互いに大学受験を控えた身でしょう。

 お母様はそのことを心配されて、今はとっても大事な時期だから、

 後から後悔しないようにしっかり勉強に集中しなさいって意味で言われたの。

 だから、お母様ごめんなさい。

 もう帰ります。

 帰ってしっかり勉強します。

 比企谷君、勉強の邪魔してごめんね」

 

”ペコ”

 

「はぁ~、まったく何でこんなのがいいのかねぇ。

 こんなんじゃなくても、もっといいのいると思うんだけど」

 

「母さん言い過ぎだ!

 母さんは三ヶ木のこと知らないんだ。

 こ、こいつは母さんが思っているような 」 

 

「なに言ってるの?

 美佳さんに言ったのよ。

 親が言うのもなんだけど、この馬鹿のどこがいいんだか。

 捻くれてて、屁理屈ばかりで、それに引き籠りだし」

 

「・・・・親が言うな、それに引き籠ってないし」

 

「・・・・あ、あの。

 比企谷君はとっても優しくて。

 うううん、それだけじゃなくて、わたしが悪いときはちゃんと

 わたしが悪いっって言ってくれて。

 それに自分のことのようにわたしのために泣いてくれたり、

 そんで一緒に笑ってくれたり。

 こんなわたしなんかでもそばにいてくれって、そばにいてもいいって言ってくれて。

 わたしのこと・・・・・

 いつもわたしのことをちゃんと見ていてくれるんです。

 だからわたしは、あの、その・・・・」

 

「・・・三ヶ木」

 

「あ、ご、ごめんなさい。

 な、なに言ってんだわたし。

 も、もう帰ります。

 お邪魔しました」

 

「待ちなさい。

 八幡、あんたその格好だと今日もどこにも行ってない様ね」

 

「お、おう。

 当たり前だ、ちゃんと勉強してたぞ。

 それに俺は引き籠りらしいし」

 

「美佳さん。

 今日本当はね、この馬鹿を連れて合格祈願のお守り頂きに行く

 予定だったの。

 でもなんか仕事で疲れちゃって。

 悪いけど代わりにこの馬鹿を連れてもらってきてくれないかしら」

 

「え、あ、は、はい」

 

「はぁ?

 待て、俺は断るぞ。

 なんであんな人混みにわざわざ疲れに行かないといけないんだ。

 それに先立つものも 」

 

”ヒラヒラ”

 

「そ、それはお年玉、お年玉なのか」

 

「初詣、いってらっしゃい」

 

「わ、わかった。

 初詣行くからお年玉くれ」

 

「まったくこの子は。

 あ、それと美佳さん」

 

「あ、はい」

 

「はい、これお守り代。

 あなたのお守りの分もね。

 それと余ったら何かお昼食べてきなさい」

 

「え、お母様」

 

「あなたに渡しておくわ。

 悪いけどこの馬鹿よろしくね」

 

「あ、はい」

 

     ・

     ・

     ・

 

「それでは場も温まったことですので、

 そろそろ恒例の出し物の発表といきます」

 

「蒔田、恒例って今年初めてやったんだろ新年会」

 

「うっさい清川。

 じゃ、一発目は清川やって」

 

「はぁ! な、何で俺なんだよ」

 

「司会者の権限」

 

「くそ、ちょっと待ってろ準備してくるから」

 

     ・

 

「え~それじゃ、俺今から手品やります」

 

「あ、それって頭がストンて落ちるやつだ。

 ほら、ハンガーとかで仕掛け作って」

 

「い、一色、ネタバレすんじゃねえ!」

 

     ・

     ・

     ・

 

”ざわざわ、がやがや”

 

はぁ~、やっぱりスゲ~込んでるじゃねえか。

さっきからちっとも前に進まない。

鳥居までもすごく遠い。

 

「・・・・・」

 

「・・・・・」

 

そうなんだ。

これだけ待つ時間が長いと次第に話すことがなくなって、

自然と無口になるんだよな。

そしてだんだん雰囲気が悪くなって、ギクシャクして。

俗にいうディステニーの伝説。

俺達もさっきから会話が続かない。

三ヶ木はずっと俺に背を向けて黙りこんでいる。

背を向けられるっていうのは、なんかものすごく嫌な気分だ。

だけど何を話せばいいんだ。

あ~くそ、何か考えようとすると、頭の中にあの白いものが浮かんで

なにも考えられん。

だけど

 

「な、なぁ、三ヶ木。

 知ってるか佐賀のほうでだな、なんか犬の・・・・

 って、こっち向いて 」

 

”ぐぃ”

 

「げ!」

 

”もぐもぐ”

 

「お、お前口いっぱいになに詰め込んで・・・あ、それ、カ、カステラ焼き!

 いつも間にそんなもの買ってたんだ?

 は、そ、そっかさっき花摘みにいった時だな。

 そういえば帰ってからずっとお前、後ろ向いて黙ってたし」

 

”ムシャムシャ”

 

「だ、だっで、おなぎゃずいで。

 朝から何も食べてなかったんだもん」

 

”パク、ムシャムシャ”

 

「お、おい!

 俺にも一個くれ」

 

「やだ」

 

「く、くそ!

 お、俺も買ってくる」 

 

「へへ、冗談だよ、はいあげる」

 

「お、おう、サンキュ」

 

”パク”

 

「うん、美味い」

 

「だね。

 ・・・あのさ、大丈夫だよ」

 

「え、な、なにがだ?」

 

「ディステニーの伝説

 わたしはさ、好きな人のそばにいれたらそれだけで十分。

 ずっと何も会話なんてなくてもさ、それだけで幸せだよ」

 

「・・・・そ、そっか」

 

「比企谷君はそんなの嫌?」

 

「いや、お、俺もそのほうが助かる。

 まぁ、俺に気の利いた話題とか求められても無理だからな。

 なんなら一生何も話さなくてもいいぐらいだ」

 

「い、いやさすがに一生は・・・・・」

 

     ・

     ・

     ・

 

「なに拗ねてんの清川」

 

「拗ねてない」

 

「一色がネタバレしたから?

 あんなの同じネタするほうが悪い」

 

「う、うっせ」

 

”ポロロロン、ポロロン♬”

 

「それよりさ、柄沢ピアノ上手だね。

 なんでもさ、3歳のころから習ってんだってさ。

 いや~金持ちは違うね。

 ほら一色なんて聞き惚れてるし」

 

「ちっ!

 お、親が金持ちだからだろ。

 俺だってこんな家に生まれてたら」

 

「無理無理。

 自然と滲み出る気品? なんか違うんだよね」

 

「・・・」

 

”ペンペン”

 

「僻まない僻まない。

 でもさ清川、修学旅行の時にあんたがいなかったら、

 一色は今こうやっていられなかったかもしれない。

 一色もそれはわかっていると思うよ。

 だからさ、もっと自信持ちなって」

 

「・・・ま、蒔田」

 

「ほら飲め飲め」

 

「・・・お前本当はいい奴なんだな」

 

「え?」

 

”バシバシ”

 

「い、いてぇー」

 

「ダメダメ、わたしに惚れても。

 わたしの身も心も全て稲村先輩のものなんだから」

 

「ぜ、絶対に惚れん。

 いつもいつも、この暴力女!」

 

     ・

     ・

     ・

 

ふ~、やっと境内までたどり着いた。

さ、さっさとお願いしてお守り買って帰るか。

えっとお賽銭お賽銭っと。

 

・・・・・・・・げっ!

 

こ、こ、小銭がない。

財布の中には数枚の野口さんとさっき貰ったお年玉しかない。

何で小銭が・・・・・・

 

『歳末助けあい募金・・・・』

 

そ、そうか、あの時に財布の中の小銭さらって募金したんだった。

ど、どうする。

いくら何でも正月早々に野口さんとサヨナラするのは辛い、辛すぎる。

そ、そうだ、三ヶ木に。

 

”チラ”

 

「ん、どうしたの?」

 

「い、いや」

 

お賽銭貸してくれ。

さすがにそれは無いよな。

くそ、サヨナラだ野口さん。

お、俺は、俺は君のこと忘れない。

う、ううううう、お釣り貰えないかなぁ。

 

”ヒラヒラ”

 

「げ、比企谷君、せ、千円もお賽銭!」

 

「お、おお。

 あ、あ、当たり前じゃないか。

 お、お、俺は一点豪華主義なんだ。

 ここ一番では、ここ一番では、うううううううう」

 

「なんで、なんで泣くの?」

 

「い、いいから、ほらさっさとお願いするぞ」

 

「う、うん」

 

”ガラガラガラ”

 

なに願おうか。

お賽銭、千円もしたんだから元は取らんとな。

まずはやっぱり大学合格だよな。

早応大、絶対合格出ますようにっと。

それと小遣いアップしますようにっと。

それと戸塚!

卒業してからも戸塚と会えますように。

出来れば週7日ぐらい。

あとは戸塚と卒業旅行に行きたいし。

それに戸塚と映画、ショッピング、あ、そうだディステニー。

それと、それとだな、

 

”ニタニタ”

 

戸塚と二人で・・・

 

”ジー”

 

「はっ!

 な、なに、何見てんだお前」

 

「なんでもない」

 

え、なに、なんか機嫌悪くないか?

もしかして今の声出てた?

い、いやそんな筈は。

 

「ど、どうかしたのか?

 なんでそんなに機嫌が」

 

「なんとなく!

 だって、その顔見れば何をお願いしてたか想像つくから!

 ふん!」

 

な、なに?

わ、わかったの俺の願い事。

え、顔に出るの俺。

 

「い、いや、はははは。

 そ、そうだ、お前、お前は何願い事したんだ?」

 

「教えない」

 

「お、おい」

 

「それより、ほらお守り頂きに行くよ」

 

「お、おう」

 

     ・

 

「すみません。

 合格祈願のお守り一つお願いします」

 

「はい」

 

「ん、なぁ、お守り一つって」

 

「あ、うん。

 わたしの分はね、昨日とうちゃん達と来た時に頂いてるからいいの。

 だからこれは比企谷君の分。

 はい、これお釣りね。

 あとそれと、すみませんこっちのもお願いします」

 

「お前それって」

 

「はい、これはお母様とお父様、それに小町ちゃんの分。

 健康祈願のお守り。

 お母様とお父様、今日もお仕事だったんでしょ。

 お仕事も大事だけどお身体も大事にしてほしいから」

 

「いや、しかし」

 

「いいのいいの。

 あのね、今日さお母様とお話しできて少しうれしかったから」

 

「しかしだな。

 ・・・・・あ、ちょっと待ってろ」

 

「え?」

 

”スタスタスタ”

 

まったく、いいのって言われて、はいそうですかって貰えると思うのかよ。

といっても一度言ったら聞かないだろうしな。

そういったところ頑固だし。

ま、あいつらしいけどな。

だったら俺は。

 

「すみません。

 これ2つ頂けませんか」

 

「あ、はい」

 

”スタスタスタ”

 

「どしたの?」

 

「ほれ、お守りのお返しだ」

 

「え、あ、絵馬」

 

「まぁなんだ、ありがとうなお守り」

 

「う、うん。

 絵馬ありがと」

 

「ほら、あそこにマジックとかあるから」

 

「うん」

 

     ・

 

”カキカキカキ”

 

よし、ま、これでいいだろう。

 

「三ヶ木書けたか?」

 

「あ、うん書けたよ」

 

「なに書いたんだ?」

 

「い、いや、ひ、比企谷君のほうこそ」

 

「内緒だ。

 いいかこういうものはあまり人に見せるものじゃない」

 

「比企谷君が聞いてきたくせに」

 

「ま、まあそこに吊っておくか」

 

「うん。

 み、見ないでよ」

 

「お、お前こそ」

 

     ・

 

”ガサガサ、ガサガサ”

 

「うー」

 

な、なにやってんのこいつ。

お御籤の箱に思いっきり手を突っ込んで掻き回してやがる。

い、いやすげー真剣なんだが、そ、それはさすがに。

 

「お、おい、三ヶ木、そんなに御籤の箱を掻き回すな」

 

「だって、ほらもしかしたら底の方にいいのが固まってるかも。

 う~ん、どれにしようかな」

 

「いや、いいのがってお前」

 

「よし、これだ!」

 

・・・・ふふふ、まだまだだな三ヶ木。

このお御籤初心者め。

そなに傍若無人にお御籤の箱を掻き回して、神様が許すわけないだろう。

お御籤というもはだな、こうやって心を落ち着かせて、

自然体で箱の中にすーっと手を入れて、そ、そう、無の境地!

無の境地で自分の運命を引き当てるものなのだ。

 

”ピクッ”

 

こ、これだ。

 

”ひょい”

 

これが、このお御籤こそが俺の運命なのだ。

ほらなんとなく後光がさしている気が。

 

「ね、何が出るか楽しみだね。

 それじゃ早速見てみよう。

 うんしょっと。

 えっ・・・・・・・・・」

 

「ど、どうした凶か、凶だったんだな、そっか凶か~

 まぁ、出たもんは仕方ないよな、それがお前の運勢なんだ。

 あきらめて全てを受け入れろ」

 

「大吉♡」

 

「だ、だい・・・・・はぁ!」

 

「へへ、大吉だった。

 わたし大吉引いたの初めて。

 ね、ね、ね比企谷君は?」

 

「お、俺はだな。

 ・・・・・・・・・・・・」

 

「え? ど、どうしたの?

 見せて」

 

「断る!」

 

「あ、ゆきのん」

 

「え?」

 

”ひょい”

 

「あ、お、お前」

 

「げ、大凶!

 ご、ごめん、か、返すね」

 

な、なぜだ、なぜ大凶なんだ。

うー。

くそ、何書いてあんだよまったく。

 

願望・・・望み薄し

仕事・・・周囲の協力なければ失敗する

健康・・・甘いものの取り過ぎに注意

学業・・・希望を捨てず努力せよ

金運・・・貯まらず、あきらめよ

旅行・・・控えるべし

 

げ、な、なんだこれは。

こ、今年の俺はどうなるんだ。

えっとあとは恋愛か。

・・・・・・・・・女難の気配あり、気をつけよ。

然もすれば大事なものを失う。

お、おおおおい!

 

「ね、何、何書いてあったの?

 何か気になること書いてあった?」

 

「・・・・・」

 

な、なんだ、その慈愛に満ちた目は。

そ、そんな目で俺を見るんじゃない。

く、くそ、よりによって大凶だと。

だ、だが、

 

「あ、あの比企谷君?」

 

「まて、お前何か勘違いしてるんじゃないか?」

 

「え?」

 

「もしかして大凶引いて俺が落ち込んでると思ったんじゃないだろうな」

 

「え、でも」

 

「は、はは、はは、はははは。

 ま、まったくこれだからお御籤初心者は困るというものだ。

 いいかよく考えろ。

 大凶というのはもうこれ以下のない運勢なんだ。

 いわば、運勢カーストの最下層。

 ということはだな、今がどん底ということでだな、これからの俺の運勢は

 良くなる一方しかないということじゃねえか。

 カースト最底辺の俺が言うんだ間違いない。

 いや~これは正月から縁起がいい、いいなぁ」

 

そ、そうなんだ。

こんなもの考え方次第なんだ。

今が最底辺なのだから、後は運勢は上昇するしかないのだ。

うんうん、きっとそうなんだ。

よ、よし。

 

「・・・・・大大凶」

 

「へ?

 み、三ヶ木?」

 

「大凶の下は大大凶」

 

「な、なんだそれは」

 

「さらに恐、大恐、白紙」

 

「い、いや、ちょ、ちょっと待て。

 恐だと!

 そ、それになんだ白紙って、おい!」

 

「そして」

 

「ま、まだあるの?

 も、もうやめ 」

 

「おっかない恐」

 

「・・・・・・・う、うわぁー」

 

”ガクガクガク”

 

し、知らなかった。

大凶の下にまだそ、そんなものが。

しかもなんだその極めつけは。

お、おっかない恐だと!

ど、どれだけなんだ。

もしかして、俺の運命はこれからそこまで転がり落ちていくのか。

お、おっかない、おっかなすぎる。

 

「ううううううううう」

 

”ひょい”

 

「お、おい」

 

え、三ヶ木?

俺の大凶のお御籤どうする気だ?

 

「ちょっと借りるね。

 うんしょっと。

 へへ、わたしのお御籤とこうやって重ねてね、そんで枝に結んじゃおう」

 

「・・・?」

 

「ね、こうすればわたしの大吉と足して2で割ることになるんじゃない?

 平均、平均だよ。

 そうすれば二人とも末吉位にはなるんじゃない?」

 

「三ヶ木」

 

「えへへへへ。

 だからあとは本人の努力次第ってことで。

 ね、それよりお腹空かない?

 もうペコペコ」

 

「お、おう。

 ・・・・・そうだな努力次第だ。

 サンキュな三ヶ木。

 それじゃ昼飯にするか。

 たしか近くにサイゼが」

 

「うん」

 

     ・

     ・

     ・

 

「蒔田さん、そろそろ」

 

「え、あ、もうこんな時間。

 えっと! 宴たけなわではございますが、

 そろそろいい時間なので新年会を閉めたいと思います。

 最後に一色から・・・・・・ごほん!

 会長から締めのあいさつを」

 

「はい。

 今日はみんなご苦労様でした。

 出し物のほうも清川君の以外、すごく楽しかったです」

 

「お、お前と蒔田の漫才もだだ滑りだったじゃねえか!」

 

「はぁっー、な、なんですと!」

 

”ギロッ”

 

「清川、なんか文句あんの!」

 

”ボキボキ”

 

「い、いえ、なんでもないです」

 

「いろはちゃん、蒔田さん・・・」

 

「ごほん。

 えっと3学期に入ると、マラソン大会とかお料理教室とか

 いろいろ行事がありますけど、一致団結して頑張りましょう」

 

「「はい 」」

 

「あ、後ですね・・・

 ほらその後に卒業生を送る会ってあるじゃないですか。

 毎年同じようなことやってるので、今年はちょっと違うことやってみたいなぁ~

 って思うんですよ。

 それで、3学期入ったら役員会で話してみたいと思うのでよろしくです。

 では今年もよろしくです」

 

     ・

     ・

     ・

 

”プシュ~”

 

「ありがとうございました」

 

「ふう~、やっぱサイゼだな。

 美味かった」

 

「うん、もうお腹いっぱい。

 ご馳走様でした。

 お母様によろしく言っておいてね」

 

「おう。

 じゃ、そろそろ帰るか。

 まぁ、家まで送るわ」

 

「・・・・・・・あ、あのね、帰る前にもう一か所だけ寄りたいところがあるの」

 

「ん?

 どこか行きたいとこあったのか?」

 

「あ、う、うん。

 ちょっとね」

 

     ・

     ・

     ・

 

”テクテクテク”

 

「それでね、俺の分も合格を願って来てくれって、ヒッキーたら

 そんなこと言うんだよ」

 

「まぁ、彼らしいわ。

 でも、彼の言うことも一理あるのよ。

 由比ヶ浜さん、人混みの中ではちゃんとマスクしなさい」

 

「あ、う、うん。

 あ、そうだ、ゆきのん、絵馬、絵馬書かない?」

 

「ええ、比企谷君の合格も願ってあげましょう」

 

「うん」

 

「あ、すみませんこの絵馬を2つ下さい」

 

「あ、はいはい」

 

「えっとなに書こうかなぁ

 う~ん、やっぱりあたしは」

 

”カキカキ”

 

「えへへ、ヒッキーと同じ大学に行けますようにっと。

 ゆきのん書けた?」

 

「ええ」

 

「なんて書いたの見せて見せて」

 

「由比ヶ浜さんと比企谷君が志望校受かりますように」

 

「ありがとう、ゆきのん♡」

 

”だき”

 

「は、離れてくれるかしら由比ヶ浜さん。

 ほ、ほら、ほ、他の人の迷惑だから」

 

「あ、ごめん、つい嬉しくて。

 えっとどこに吊るそうかなぁ」

 

「奉納」

 

「え、オーノー?」

 

「奉納よ。

 絵馬を納めることを奉納するって言うのよ」

 

「そうなんだ。

 で、どこに吊るす?」

 

「だから奉納」

 

「まぁ、細かいこといいじゃん。

 あ、じゃあたしこの枝にしようっと。

 うわぁ、でもやっぱり受験関係の絵馬多いね」

 

「由比ヶ浜さん、あまり人の絵馬を覗くものじゃないわ」

 

「えへへ、えっ・・・・・・・・・」

 

「どうしたのかしら?」

 

「あ、あのねこの絵馬」

 

「え?」

 

『比企谷君が早応大に受かりますように

             三ヶ木美佳』

 

『三ヶ木が東地大合格しますように

             比企谷八幡』

 

「・・・・・」

 

「・・・・・」

 

「あはは、ヒッキー初詣に来てたんだ。

 ・・・あたしには絶対初詣なんか行かないって言ってたのに」

 

「・・・・・」

 

「・・・なんか、やだなこういうの」

 

「・・・・・」

 

「・・・・・」

 

「・・・・・由比ヶ浜さん、ひとついいかしら。

 あなたはどうしたい」

 

「どうしたい?」

 

「あ、あの、その・・・つまり、比企谷君と 」

 

「・・・・・あたし」

 

「・・・・・」

 

「あたしは・・・・・ヒッキー・・・が好き。

 この気持ちはずっと変わらない。

 でも何も失いたくない、ずっと今のわたしたちの関係も守りたい。

 そんなの無理ってわかってる。

 それは共存できる願いじゃないってこと。

 でも、それでもあたしは何も失いたくない。

 全て・・・・・ほしい」

 

「・・・・・由比ヶ浜さん」

 

「ゆきのん、ゆきのんはどうなの?」

 

「わ、わたしは・・・・・・・・」

 

     ・

     ・

     ・

 

「なぁ、ここ最近来たんじゃないのか?

 お墓すげえ綺麗だし、花も全然萎れてない」

 

「あ、う、うん。

 昨日初詣の帰りにね、とうちゃんと麻緒さんと一緒に寄ったの」

 

「そうなのか」

 

「・・・わたしさ、事故の後に初めてここに来た時ね。

 お墓の前で手を合わせて泣いているとうちゃん見て、

 すごく胸が苦しくなった。

 そんで息ができなくなって、気を失って倒れちゃったんだ。

 だ、だってさ、わたしの所為でかあちゃんと美紀が・・・・・わたしの所為でって。

 それから後もとうちゃんとお墓参りに来る度、足が震えて動かなくなって。

 頑張って歩こうと思うんだけど、一歩踏み出すごとにどんどん胸が苦しくなって、

 それで倒れちゃうの。

 とうちゃん、わたしのために泣かないように無理して笑顔でいてくれてたのに。

 だからわたしね、お墓参りは今までずっと一人で来てたの」

 

「三ヶ木、でもあの事故は 」

 

「う、うん。

 でも昨日さ、やっととうちゃんと一緒に来ることができた。

 やっぱり、すこし胸が苦しかったけど。

 とうちゃんと麻緒さんがこの手をね、ギュって握っててくれて。

 そんでやっと来ることができた」

 

「三ヶ木」

 

「・・・比企谷君。

 わたしね、変わりたい。

 無理かもしれないけど頑張ってみる。

 選挙の時に比企谷君が言ってくれた言葉、あの後よく考えたんだ。

 何度も何度も考えた。

 そして思った・・・・・・比企谷君、ありがと。

 わたし変わらなくちゃってね。

 すぐには無理だけど、少しずつ少しずつ」

 

「三ヶ木」

 

「へへ、だからこれからも見捨てないでね。

 よろしくお願いします」

 

”ペコ”

 

「あ、い、いやこちらこそ。

 でも、あんまり無理しないようにな」

 

「うん」

 

     ・

     ・

     ・

 

「比企谷君、送ってくれてありがと」

 

「お、おう。

 今日はなんか小町が悪かったな」

 

「うううん、とっても楽しかった。

 いい息抜きになった。

 お母様ともお話しできたし」

 

「そうか」

 

「あ、あのさ、もうすぐセンター試験だよね。

 頑張ってね」

 

「お前も入試って確か月末だったよな、頑張れ」

 

「うん。

 しばらくはお互い受験に集中だね」

 

「ああ、そうだな」

 

「じゃあ」

 

「ああ、じゃあ」

 

「比企谷君、健闘を祈る!」

 

「おう、健闘を祈る。

 ・・・・・・って、お、おい俺は今から決闘に行くのか?

 それにお前ノーパンなのかよ」

 

「実はノーパンなんだ」

 

「うそつけ。

 白だったじゃねえか」

 

「へ?」

 

「あ、い、いや」

 

「ひ・き・が・や・くん」

 

「は、はい」

 

”ベシ”

 

「ぐはぁ、いてぇー」

 

「このスケベ、やっぱり炬燵で覗いてたんだ。

 ・・・・馬鹿。

 じゃ、じゃあ行くね。

 比企谷君、また新学期で会おう!」

 

「おう、新学期でって、だからお前何物語なんだ!

 それに新学期じゃねえ、3学期だ」

 

     ・

     ・

     ・

 

”スタスタスタ”

 

「ね、ねぇ一色」

 

「ん?」

 

「卒業生を送る会さ、何か違うことやってみたいって言ってたじゃん。

 何か考えてることあんの?」

 

「・・・・・・プロムやりたい」

 




最後までありがとうございます。
本当に更新遅れてすみません。

今回、これがエタるってことなのかって実感しました。
原作読み直しして、決めていたラストのところの修正考えていたら
あっという間に一ヵ月が・・・
初めはやばいと思いながら、つい流されてしまいました。
ここは気を入れ直さないと。

次話、冬物語の最終編 三人の願い前編です。
また読んでいただけたらありがたいです。

それではです。
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