似て非なるもの 作:裏方さん
いつもほんと同じ言葉しか思いつかず、ごめんなさいです。
さて今話は冬物語編の最終話。
八幡のダミープロム計画に対してオリヒロは。
そしてオリヒロのお願いとは。
今回も2万7千字越え。
ほんとグダグダと長くすみません。
ご無理をなさらない程度に、よろしくお願いします。
「ね、三ヶ木。
あのさ、よかったら今から家に来ない?
けーちゃんが、あんたに会いたがっててさ」
「あ、ごめん沙希ちゃん。
今からちょっと行くとこあって」
「そ、そっか、ならいい。
また今度ね。
・・・・・・さっきの比企谷の話だけど。
・・・あんたさ、馬鹿なこと考えていないよね。
なんか様子変だったから」
「え、な、な、なんにも考えてない、考えてないよ。
そ、それにさ、馬鹿なことって、さっき話していたダミープロムほど
馬鹿なことないじゃん」
「まぁそうだけどさ。
・・・・・・ね、約束だよ。
何かあったら・・・うううん、何かする前に必ずあたしに相談すること。
一人で抱え込むんじゃないよ。
わかった?」
「あ、う、うん。
じゃあ行くね」
「・・・・・・」
”スタスタスタ”
沙希ちゃん、ごめん嘘ついた。
でもわたし馬鹿だから、馬鹿なことしかできないんだ。
・・・けーちゃん元気してるかな。
もう一回、みんなでカレーライス食べたかったなぁ。
・・・はぁ~
あっ、やば、急がないと。
”テッテッテッ”
・
・
・
”スタスタ”
ふ~、やっと着いた、千葉ラッキーってここにあるんだ。
えっと、義輝君、義輝君と。
ん~、どこだどこだ?
いないなぁ~
あ、もしかして沼エースの方に行ったのかなぁ。
”キョロキョロ”
で、でもさ、なんて言おう。
ダミープロム潰すには、なんとしても義輝君はこっち側についてもらわないと。
戸塚君や結衣ちゃんなら何とかごまかせると思うけど、
義輝君には見抜かれる気がする。
だからなんとしても。
でもどうやって説得しようかなぁ。
う~ん。
「ん? お、おう三ヶ木女子ではないか」
「ひゃっ、よ、義輝君!
あ、あ、あの今日はお日柄もよく」
「ぬ? お日柄?」
な、なに、お日柄って。
だ、だって背後からいきなりだったんだもん。
あ、そ、そんなことより、えっとどうしょう。
なんて言おう。
「ごらむごらむ。
三ヶ木女子もよくここに来るのか?」
「あ、う、うん。
こ、ここで、よく遊んでるんだ。
さ、さて、今日は何やろうかなぁ~」
「お、おうそうか。
ならば我と格ゲーでもしょうではないか」
「格ゲ? あ、うん、格ゲやろ格ゲ」
え、えっと格ゲって、あのアタタタタってやるやつ?
あんまりやったことないからよくわからんけど、
と、とにかくボタン押しまくればいいんだよね。
・
・
・
「あ~、また負けたー」
ボタン押しまくってるのになんで勝てないの?
それに義輝君の方は手からかめはめ波みたいなのが、ドカーンって出てくるし。
なんかわけわからんうちに負けてる。
ようわからん!
「よ、弱い、マジ弱いすぎる。
のう、三ヶ木女子本当にここでよく遊んでるのか?」
「う、あ、遊んでるもん。
か、格ゲはちょっと苦手なだけなんだ。
じゃあさ、ん~と、あ、あれだ!
次はあれで勝負しよ」
「ぬ? おう、エアホッケーか。
よかろう勝負してやろう」
こ、これなら小学生の時、とうちゃんとやったことある。
これ、時間が来てもゴールさえ入れられなければ、ずっと遊んでられたんだ。
ちょっとパック打ち返すの大変だったけど、とうちゃんとたくさん遊べて
楽しかったなぁ。
わたし結構上手だったからこれは勝つよ。
それに悪いけど、義輝君こういうのは苦手そうだし。
「義輝君、覚悟しな。
わたし結構強いよ、神レベル」
「・・・ふむ。
よかろう、それではこうしようではないか。
このゲーム、勝ったほうが負けたほうに一つ言うことを聞いてもらうことが
できるというのはどうであろう?」
ん? 言うこと聞いてもらえる。
あ、チャンス。
わたしが勝てば、義輝君にダミープロム潰すの協力してもらうことができる。
実際、こっち側についてもらう自信、あんまりなかったんだ。
比企谷君とは親友だもんね。
だから、土下座してお願いしようと思ってた。
それでも五分五分かなぁって思ってたんだ。
それが、このゲームに勝てば言うこと聞いてもらえる。
だったら断る理由はない!
「いいよ!
でも絶対言うこと聞いてもらうからね!」
「おう。
我が勝てば、ぐふ、ぐふふふふ」
え? なにその下卑た笑みは。
義輝君が勝ったら、わたしに何をさせる気なんだ?
義輝君が言い出しそうなことっていうと・・・・・・
は! も、もしかして、やおもも!
い、いやー!
き、きっとやおもものコス着ろって言うつもりなんだ。
そ、それだけは絶対に嫌。
あ、あんなの着たら、絶対に胸見えちゃうって。
わ、わたし、あんなに胸大きくないから。
ちょ、ちょっと屈んだりしたら絶対に隙間出来てアウトだろ!
い、いやだ、ど、どうしょう。
「三ヶ木女子、嫌ならやめておくが」
や、やおももはいや、でも義輝君にこっち側についてもらおうとしたら。
ん~どうしよう。
・・・・・・う、うん、大丈夫。
これ自信ある、絶対負けないもん。
「い、いいよ。
わかった」
「いいのだな。
ぐふぐふふふふ」
だ、だからその不気味な笑みはやめて。
「よ、よし勝負だよ義輝君。
絶対負けないから」
・
「てやー!」
”パコーン”
へへ、やっぱり思った通りだ。
義輝君、パックの速さについていけてない。
楽勝楽勝!
わたしの勝ちだよ、これ。
うん、わたしマジ神レベル!
「それ」
”パコーン”
よし、また決まった。
「義輝君、3対0だよ。
もうギブする?」
「・・・ふふふふ、ではそろそろいいかの。
ではいくぞ」
”カン”
え!
”パコーン”
は、はや!
パ、パックが見えなかった。
え、 ど、どういうこと?
「あ、あの~、義輝君?」
「けふこん、けふこん。
三ヶ木女子! ハンデの時間はもう終わりだ。
ここからは本気でいかせてもらうから覚悟せい。
さぁ、さっさと打って参れ!」
う、うそ、今まで本気じゃなかったってこと?
そ、そんなことない。
きっと今のまぐれだ。
よ、よし。
「えい!」
”カン”
「あま~い」
”パシ!”
げ、パックをマレットで押えつけやがった。
すばやい。
さ、さっきまでの動きと全然違う。
マ、マジでハンデだったの?
「三ヶ木女子、まだまだよのう。
パックが止まって見えるぞ。
では、こちらから参る!
神に代わって粛清だよ♡」
げ、キモ。
なにその決めポーズは。
「デスフリスビーセンセーション!」
”カーン、カコン、カコン、カコン”
げ、え、パックが壁に当たって、え、えっと、右、左、右・・・
「ひゃっ!」
”パコーン”
「もははははは、2対3だ三ヶ木女子。
あまりの高速である故、パックの動きについてこれまい。
さぁ、どんどん行くぞ。
ほれ、覚悟して打って参れ!」
ど、どうしょう、つよ、つよいよ義輝君。
このままじゃ負けちゃう。
もし負けたら、きっとやおもものコス。
はっ、き、きっと着るだけじゃすまないんだ。
いろんなポーズ要求されるんだ。
あ、あんなポーズやこんなポーズとか・・・・・・・
い、いやー!
ぜ、絶対負けられん!
「え~い、どりゃー」
”カン”
「なんの」
”カン”
「くそ、はぁー!」
”カン”
「ん、お、おい、あれって剣豪さんじゃないか?」
「え、あ、剣豪さんだ。
帰ったんじゃないんだ」
「お、おい女子とエアーホッケーやってるぞ。
剣豪さん、すっげ楽しそう。
あれ、剣豪さんの彼女さんか?」
「え、あ、あの人は確か」
「相模、知り合いか?」
「た、たしか姉の」
”カコン”
「ひゃ、あぶな。
うりゃー!」
”カン”
「むはははは、まだまだよの。
それ」
”カン”
「ぐぅおー、この野郎死ね、とりゃー!」
”カン”
「・・・・・・相模」
「い、いや、し、知らない。
あんな人知らない」
「そ、そっか。
・・・帰ろっか」
”スタスタスタ”
「けふこん、隙あり!」
”カン!”
げ、や、やば。
反応が遅れた!
”パコーン”
「ぬほほほん」
げ、これで3対3、ど、同点。
ど、ど、ど、どうしょう。
まともにやっても勝てる気がしない。
ゲームの時間的にもそろそろだよね。
次、点取られたら負ける。
あ、でも逆に1点取れたら・・・
よ、よし絶対勝つんだ!
「とりゃ!」
”カン”
「むはははは!」
”パシ”
げ、ま、またパック押えやがった。
は、ということはまたあの技が。
「行くぞ三ヶ木女子!
神に代わって粛清だよ♡」
い、いやキモいから、ほんと!
いちいちそれやらないとダメなの?
あ、いやそんなことより。
「デスフリスビーセンセーション!」
”カーン、カコン、カコン、カコン”
き、きた!
右、左、右、え、えっと。
え、えい
”パス”
と、止めた、パック止めたぞ・・・・・・手で。
いたたた、めっちゃ痛かった。
あ、で、でも故意じゃないから。
マレット持ってる手にパックが当たって偶然、偶然だから。
「ちょ、ちょっとまて~い!
三ヶ木女子、今パックを手で止めたであろう!」
げ、やっぱ見てたのか。
・・・そ、そうだ、ここはしらばっくれてっと。
「は、はぁ? な、なんのこと?
そんなことするわけないじゃん。
ちゃんとマレットで止めたよ」
「い、いや、確かに我は見た」
「そ、そんなこと言うんなら、ほらこっちに来て手を見てよ。
手で止めたんなら赤くなってると思うから。
ほらこっち来て、よく手を見てみて。
はいどうぞ」
「ふむ、どれ」
”スタスタ”
チャンス、かかった!。
もっとこっち歩いてこい。
よ、よし、今ならゴール前がら空き。
「馬鹿め、かかったな!
乙女の純潔を汚すこの不埒者に聖なる鉄槌を!
必殺エクスプロージョン!
どりゃー!」
”カーン”
「あ、あわわわ、ひ、卑怯!」
”カコーン”
「あ!」
くそー、は、外れた!
ゴールの横の壁に。
”パシ”
「はぁ、はぁ、ふぅ~。
あ、危なかった。
三ヶ木女子、この卑怯なる企て、その報い受けてもらうぞ!」
やば、またパッド押えられた。
ま、またあれやるつもりだ。
えっとデスフリスビーなんとか。
「いざ、受けてみよ!
天空より駆け下りし正義の破壊神!
メテオストライクⅡ、材木座バージョン!」
え、メテオ何とか?
さっきの技と違うの?
ど、どんな技なんだ。
「そりゃ!」
”カーン、カコン、カコン、カコン”
「お、おい!
デス何とかと一緒だろ!」
え、えっと右、左、こ、ここだ!
「メテオストライク返し!」
”スカ”
「あっ!」
”パコーン”
げ、げげ!
「けふけふ、見たか正義の破壊神の威力!
逆転だ。
どうやら我の勝ちのようだな」
な、ま、まだ!
も、もう一回・・・・・・
あ、あれパックがでてこない。
え、時間切れ?
「・・・・・・う、うそ」
ま、負け?・・・・・・・や、やだー!
「三ヶ木女子、4体3で我の勝ちだ。
では我の言うこと聞いて貰うぞ。
ぐふ、ぐふふふふ」
い、言うことって、やっぱりやおもものコスであんなポーズやこんなポーズを?
う、う~いやだ、恥ずかしい。
”ガタガタガタ”
「あ、そ、そうだ、今日、予定があったんだ。
じゃ、じゃあまた今度ね、義輝君」
”ガシ”
「ふふふ、逃がしはぬ」
「よ、義輝君、あ、あの、や、やっぱなしってことで」
「いや、神の前で誓った神聖な約束。
絶対に守ってもらうぞ!」
「いや、誓ってないし、神の前でなんて誓ってないし」
「ええい、往生際が悪い!
ほれ行くぞ」
”ぐいぐい”
え、どこ、どこ連れていかれるの?
も、もしかして義輝君の部屋に連れ込まれて。
あ、そんで、目の前で着替えろとか。
「いやー、義輝君のエッチ!
スケベ、ド変態、エロ中二!」
「ば、馬鹿者―
でかい声で、な、なにを言い出すのだ。
ほれ、さっさと我とプリクラを撮ってもらうぞ」
「うわ~ん、義輝君の馬鹿ー、もうお嫁にいけない。
・・・・・・え?
えっと~、プリクラ?
義輝君、プリクラでいいの?」
「うむ、い、一度撮ってみたかったのだ。
だがここにはカップルでないと近寄ることさえできぬ。
すぐ店員がよってくるのだ。
だ、だから今日こそは」
「ふぅ、な~んだそんなことか。
そんなの言ってくれればいくらでも一緒に撮るのに。
ほら、いこ、義輝君」
”にぎ”
「ぬおー、手、手。
あ、あの~三ヶ木女子」
「ほら行くよ」
「お、おう」
・
「義輝君、顔でかいんだからもっとこっち来ないと入らないよ。
ほら、はやく。」
「むおー
そ、それは絶対に言ってはいけないこと」
「いいから、もっとこっち来て」
”ぐぃ”
「い、いや、近い、近い、近すぎでは。
ほ、ほら髪の毛が顔に触れて、それに、はぁ~いい匂い。」
「なに言ってんの馬鹿!
じゃいい? 撮るよ。
はい、ピーナッツ!」
・
・
・
「お待たせしました。
コーヒーとミルクティ―、それとチーズケーキです。
ご注文はすべてお揃いですか?
それではごゆっくり」
「義輝君、ほんとにいいの?」
「お、おう、遠慮せず召し上がるがよかろう。
プ、プリクラのお礼・・・だから」
「えへ。
じゃあ、遠慮なくいただきま~す」
”パク”
「ん~おいしい~」
”パクパク”
「ふむ、ふむ」
「な、なに?
え、何か顔に付いてる?」
「や、や、やっぱり、み、三ヶ木女子は食べてる時の笑顔が一番だと」
「は、なに言ってんの・・・馬鹿。
あ、でもなんか楽しかった。
子供の頃、あの公園でいろいろ遊んだじゃん。
あの頃のこと思い出しちゃった」
「そうだの。
駆けっことか、ブランコでの靴飛ばしとか」
「あと、探検!
いろんなとこ探検したね」
「ふむふむ。
それで人の家に入り込んでしまってよく怒られたの」
「そうそう。
あ、前から聞きたかったんだ。
昔は美佳っペって言ってたじゃん。
なんで今は三ヶ木女子なの?」
「そ、それは・・・・・・
そ、そうだ三ヶ木女子、本当はなんの用事だったのだ?」
「え?」
「さっきのゲームの腕を見ていればわかる。
いつもここでゲームをしてるというのは嘘であろう。
ここに来るのも初めてなのではないのか?」
「う、うん」
「で、我に何の用事なのだ?」
「あ、あのね~、ちょっとお願いが 」
・
・
・
「三ヶ木女子、マジでそのようなこと考えているのか?」
「うん」
「だがそんなことしたら、あやつは 」
「・・・わかってる。
多分めっちゃ怒ると思う。
きっともう今までのような感じではいられない。
でもさ、こうするしかないんだ。
だから、協力してほしい」
「・・・・・・」
「・・・・・・義輝君」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・断る。
我は協力できぬ」
「な、なんで?」
「三ヶ木女子・・・・・・我にはそれが一番いい方法とは思えぬ。
他にも何か方法があるのではないか?」
「これしか・・・ないんだよ。
わたしはゆきのんの願い叶えたい。
でも、比企谷君と結衣ちゃんのゆきのんへの想いもわかる。
だからこうするしかないんだ」
「・・・・・・」
「あのね、わたしね思うんだ。
プロムが仮にできなくなっても、それに向けて精一杯頑張ったってことのほうが
大事じゃないかって。
それで、今回なにが悪かったのかとか、何が足りなかったのかとか反省してね、
それを糧にして、次また頑張ればいいと思うんだ。
そのやり遂げるって気持ちさえ持ち続ければ、これからまだまだ絶対に
チャンスはある。
でもさ、ここでダミープロムのおかげでプロムができるようになったら、
ゆきのん、なんかすごく後悔するんじゃないかって思うんだ。
また助けられたって。
そうしたらきっとゆきのん達の関係がおかしくなって。
だからわたしが悪者になってダミープロムを潰す。
そうすればきっと・・・・・・
だから、だからさ、」
”ぺこ”
「義輝君お願い、わたしに協力して。
協力してくれたら、わたし・・・・・・な、なんでもする」
「・・・・・・・」
「お願いします」
「・・・・・・ふむ、それなら我と付き合ってもらおう」
「えっ」
「我の恋人になるっというのなら協力しよう」
「・・・・・・恋人に」
「・・・・・・そうだ」
「・・・・・・」
「できまい。
だったらこの話はなかったこと 」
「・・・なる」
「へ?」
「いいよ。
で、でも少しだけ時間下さい。
少しだけ」
「本当なのだな」
”こく”
「・・・・・・三ヶ木女子」
「・・・・・・」
「ふぅ~
やっぱり我は協力できん」
「な、なんで、なんでさ。
わたし、恋人になる、義輝君の恋人になる。
な、なんならやおもも、やおもものコス着てもいい。
そ、そんであんなポーズやこんなポーズなんかも。
義輝君の言うこと何でも聞くから」
”ガタン!”
「もういい!
そんなつらそうな顔見せるでない。
なぁ、 三ヶ木女子・・・・・・美佳っペ。
我に美佳っペが傷つくとわかっていることに協力しろというのか。
そんなことできるはずなんかないじゃないか。
我は、我は、ずっと前から美佳っペのことが・・・・・・
少しは、我の気持ちも考えてくれ」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・す、すまぬ、大きな声を出した。
それと変なことも。
忘れてくれるとありがたい」
「・・・・・・わたしこそごめん」
「協力はできん、しかしこの件は他言は絶対せぬゆえ安心するがよかろう。
では、我はそろそろ帰るとしよう」
”すく”
「よ、義輝君、あ、あのさ」
「サラダバー、三ヶ木女子!
・・・・・・また明日」
「あ、う、うん。
また明日」
”スタスタスタ”
・・・・・義輝君。
ーーーーーーーー
”トボトボトボ””
放課後に特別棟の二階に集合っか。
はぁ~、義輝君も来てるかなぁ。
いや義輝君からの連絡だって比企谷君言ってたから絶対来てる。
・・・顔合わせにくいなぁ、な、なんか恥ずかしい。
ん?
あ、体育館倉庫、明かりが点いてる。
生徒会、誰かいるのかなぁ
でも確か昨日学校から自粛って言われたはずだけど?
”ガラガラガラ”
「あ、藤沢ちゃん」
「三ヶ木先輩!」
「どうしたの?
確かプロム自粛って」
「え、あ、昨日、いろはちゃんから連絡があって 」
・
・
・
「ふ~ん、ガイドラインにSNSアップ禁止、え、プロのカメラマン?
ね、藤沢ちゃん、プロのカメラマンに写真撮ってもらうの?」
「はい、そうみたいですよ」
「そ、それって無料?」
「いえ、販売だそうです」
「あ、そう。
無料じゃないのか~」
”ブ~、ブ~”
「あ、比企谷君。
藤沢ちゃん、ちょっとごめん」
「はい。」
”スタスタスタ”
「もしもし、三ヶ木だよ♡」
「お、おう。
今な、遊戯部の部室で打ち合わせしてるんだが、お前今日は来れるか?」
「あ!
ご、ごめん、今ね生徒会のほうに来てるんだ。
あと、後から行くね」
「そっか。
あ、いやそれなら今日はそっち手伝ってやってくれ。
今日決めたこととかは、後から連絡するから。
あ、それに明日も放課後に遊戯部の部室に集合なんだが」
「う、うん、わかった。
明日は必ず行くね。
じゃ、また後で」
「おう」
しまった。
ダミープロムの件、すっかり忘れちゃった。
「三ヶ木先輩、もしかして何か用事が?」
「え、ああ、大丈夫、大丈夫。
それより、これさっさと仕上げちゃおう」
「はい」
”タッタツタッ”
「こんち、遅くなり、 あ、ジミ子先輩!」
「・・・・・・舞ちゃん、もうその呼び名やめて」
「すみませ~ん、遅くなりました。
あ、美佳・・・ジミ子先輩ご苦労様です」
「小町ちゃんまで
しかも言い直したし」
「ご、ごめんなさい、に、日直で遅くなりました。
あ、ジ、ジ、ジミ子先輩こんにちわ」
「げ、鈴ちゃんまで・・・・・・う~
鈴ちゃん、ジミ子はやめて」
「え、ジミ子って、ほ、本名じゃないんですか?」
「ジミ子なんてそんな名前の人いないから!」
「で、でも、ま、蒔田先輩に聞いたら本名だって」
「舞ちゃん、お前か!」
「いや~、そのほうが親しみがわくというか~
や、やば
ご、ごめんなさ~い」
”ダー”
「ま、待てー」
”ダー”
「すまん、おそく 」
”ドン!”
「おわー
な、なんだ?」
「あ、ご、ごめん清川君」
「まったく、なに騒いんでんだ。
いい年なんだからいい加減に落ち着いた 」
”ベシ”
「いてぇ」
「いい年って言うな、い、一個しか変わらないんだから」
「清川君、ご苦労さま。
ね、柄沢君知らない?」
「え、あれ、藤沢、こっちに来てなかったのか?
教室にはいなかったぞ。
だから俺はてっきり」
「そ、そう」
・
・
・
「お疲れ様」
「ご苦労様でした」
「また明日です」
”スタスタスタ”
ふぅ~、もう比企谷君のほうは終わっちゃったよね
何か決まったのかなぁ。
確か後から連絡するって。
ん~とスマホにメールか何か?
”カシャカシャ”
ふむ、まだ連絡入ってないか。
じゃあ、ちょっと電話かけてみよっと。
”カシャ”
「駅前にあったよな」
「うん、あったあった」
え、あ、比企谷君・・・・・・と結衣ちゃん。
あ、比企谷君、今日は自転車じゃないんだ。
二人並んで歩きながら何話してるんだろう。
すごく楽しそう。
くやしいけど、お似合いだよ。
わたしなんかよりずっとずっとお似合い・・・誰がどう見ても。
う~、なんか、なんか!
比企谷君のお馬鹿。
・
・
・
”ヒュ~”
う~さみー、めっちゃ寒くなってきた。
とっくに日も沈んでもう真っ暗。
カイロ持ってくればよかった。
なにやってんだろわたし。
なんでついてきちゃったんだろう。
ついてきてどうする気だったの?
わからない、でも、でも、でも!
”ポタ、ポタポタ、ポタポタポタ”
げ、雨降ってきた。
やば、ちっとこの入り口のとこで雨宿りさせてもらわないと。
・・・はぁ~、ネットカフェっか。
二人がこの中に消えて何時間経ったんだろう。
まだ出てこない。
何してるんだろう、二人っきりで。
きっと、きっとさ、手とか繋いだり見つめあったり、そんでキ、キスとか。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
最低!
最低、最低、最低、最低・・・・・・ほんと最低!!
何考えてんだわたし。
彼を誰だと思ってんだ。
彼は”理性の化け物”、あの比企谷八幡だよ。
こんなわたしなんかと一緒にするんじゃない!
きっと二人は、二人にとってとても大事な人を助けるため頑張ってるんだ。
それなのにわたしは・・・・・・キスとかそんなことばっかり考えて。
ほんと”欲求不満の塊”だよ、わたしは。
何考えてんだ、最低。
・・・そして、わたしはその二人の想いを潰す、潰さなきゃいけない。
・・・・・帰ろ。
わたしはここにいるべきじゃない。
”ダー”
「おわっ!」
”ドン”
「きゃっ。
あ、ご、ごめんなさい」
「あたたた。
ん、三ヶ木じゃないか。
お前こんなところでなにしてんだ?
傘も差さないで」
「へ? あ、広川先生。
あ、あの、ほ、ほらここ、ネットカフェでちょっとDVD観てて」
「・・・そうか。
あ、そうだ。
なぁ、お前今からちょっと時間あるか?」
「え、あ、う、うん」
「だったら、ちょっと付き合え」
「え?」
・
・
・
”プシュー”
「あ、すみません、今日はもう終わって
ん? あ~、広川君か」
「親父さん、ご苦労様です」
「ああ、ご苦労様。
おや、今日は彼女連れかい?」
「あ、いえこいつは俺の学校の生徒で」
「あ、こんばんわです。
あの、広川先生の愛人で三ヶ木美佳といいます」
”ペコ”
「お、おい!」
「ほほほ。
そうか、お嬢ちゃんが美佳ちゃんかい。
広川君に聞いてた通りの子だね」
「へ? あ、はい、どうもです」
え? なにそのおじさんの笑顔。
聞いてた通りでどんな風に聞いてたんだ。
きっと碌なこと言ってないはず。
くそ、後で問い詰めてやる。
それよりさ、広川先生って駅前のケーキ屋さんと知り合いだったんだ。
でもなんの用事だろ?
は、もしかしてケーキ奢ってくれるの?
やった、儲け儲け。
どれにしようかなぁ。
「親父さん、ようやく辞表受理して頂きました。
実際には4月からになると思いますが宜しくお願いします」
「おお、そうかい。
いや、こちらこそ無理を聞いてもらってありがとう。
すまなかったね、よろしく頼むよ」
「はい、よろしくお願いします」
「辞表? あ、あの先生、辞表って」
”ぎゅるるるる”
「ふぇー、ご、ごめんなさい!」
な、なんでこんなときにお腹が。
広川先生が学校やめるって大事なお話なのに。
で、でも、お腹すいた。
だって、もうとっくに晩ご飯の時間過ぎてるから。
「ははは、いやいや。
そうだ何か食べるかい?
といってもケーキしかないけど。
どれがいいいかね」
「え、ほんとですか!
あ、どれでも。
わたしここのお店のケーキどれも大好きです。
とっても美味しいから」
「そうかいそうかい。
ありがとうね。
よし、じゃ当店自慢の隅っこ弁当食べるかい?」
「へ、ほ、ほんとですか~
隅っこ弁当、食べたかったんです。
で、でも何時も売り切れだったから」
「それじゃそこに座ってて待ってておくれ。
今コーヒーでも淹れてこよう」
「あ、ありがとございま~す」
ぐへへ、や、やっとあの夢にまで見た隅っこ弁当が。
あれってさ、いろんなケーキの切り落としがいっぱい入ってんだよね。
それを生クリームとフルーツでデコデコされてて。
中身がなに入ってるかわからないからそれも楽しみで。
げへ、え~とケーキケースをよく見ておこっと。
何が入ってるかなぁ。
・・・・・ん?
えっと、でもその前になにか重要なことが?
あ、そ、そうだった。
「ね、ねぇ広川先生、さっき学校やめるって」
「ん、ああ。
実はな、ずっと前から親父さんからそろそろ年だから店をやめるって聞いててな。
親父さん頑張ってきたの知ってるからすごく残念でな。
俺にとっても大学の頃バイトさせてもらってた想い出の店だし。
このままこの店が無くなるのってとても寂しいから。
でな、いろいろ考えていたんだが、俺が引き継ぐことにした。
まぁ、しばらくは二人で共同経営だがな。
その間に何とか親父さんの味を引き続ぐつもりだ」
「先生」
「そんな心配そうな顔するな。
それに俺にその決断をさせたのはお前なんだからな」
「え、わたし?」
「憶えているか去年の4月ころだったかな。
あの時もお前、泣いて学校走ってたろ」
「あ、進路相談の時」
「ああ。
あの時な、俺のケーキをすごく美味しそうに食べてくれて、それで笑顔になった
お前を見て思ったんだ。
俺のケーキで人を笑顔にできるんだって。
それで俺は決心した」
「せ、先生」
「まぁ、いずれはケーキ屋やろうと思ってたんだけどな。
やっと学校も辞表受領してくれたんでな」
「で、でも先生、平塚先生は了解してくれたの?」
「はは、ちゃんと話しよと思ったんだけど、なかなか話できなくてな。
だって怖いから。
いや~それで話する前に辞表見つかってしまって、すげ~怒られた。
それ以来一言も口きいてくれない」
「それでも先生ケーキ屋さんやるの?」
「ああ。
自分の信じた道だ、俺は後悔したくない。
それにいつかきっと静ちゃんもわかってくれると信じてる」
自分の信じた道。
いつかきっとわかってくれるっか。
・・・・・・そっか。
「うん、先生頑張ってね。
わたしいっぱい買いに来るから」
「おお。
この店をやっていけるかどうかはお前にかかっている。
有り金残らずもってこい」
「・・・・・・」
・
・
・
「あ、先生ここでいいよ。
この角曲がったらアパートだから」
「そうか」
「うん」
「な、なぁ三ヶ木。
お前何かあったのか?」
「・・・・・・・」
「何かあったのか?」
「うううん、大丈夫。
あのね、先生のお話聞いてたら解決した。
めっちゃ元気貰った。
先生、いつもありがと。
学校やめても、先生はずっとわたしの先生だよ、わたしの憧れ」
「そ、そうか」
「うん。
それじゃ、お休みなさい」
”ペコ”
「ああ、お休み」
先生、ありがと。
わたしも自分が信じたこと頑張るよ。
わたしにはこんなやり方しか出ないけど、それでもやっぱり後悔したくはない。
ーーーーーーーー
ここでいいんだよね。
えっと遊戯部の部室だって言ってはず。
なんか緊張する。
「す~、はぁ~、す~、は~」
よし、は、入ろ。
”ガラガラ”
「こ、こんちは」
「おう三ヶ木、やっはろー」
え、比企谷君がやっはろーって?
「ぬほほほ、やっはろー」
「や、やっはろー」
「やっはろーさんです」
「あ、さがみんの弟さん。
こんにちわ、お久しぶり」
「ど、どうも」
あ、そ、そんなことより、なんでみんなやっはろーなの?
え、えっと~いつからみんなやっはろー教の信者に?
「ううううう、や、やっはろー」
結衣ちゃん、なんか下向いて赤くなってる。
なに、なにがあったの?
「あ、あの~」
「三ヶ木、今日からこの実行委員会でのあいさつはやっはろーに統一した」
「ヒ、ヒッキーの馬鹿!」
”ポカポカ”
「お、おいやめろ由比ヶ浜」
「「あはははは」」
そういうことか。
・・・気のせいかなぁ。
何か二人の距離がすごく近くなった気がする。
やっぱりネットカフェで何かあったの?
それに昨日は結局連絡なかった。
わたしずっとスマホの前で待ってたのに。
わたしのことなんてきっと忘れて・・・
「三ヶ木、どうかしたのか?」
「え、あ、うううん、なんでもない」
・
・
・
「つまり、このダミープロムの信憑性を高めるために、部長会の
名前を貸してもらうってことだよね。
わたし、部長会の事務局さんなら知ってるから当たってみるね」
「ああ、部長会の看板を借りられれば、このダミープロムの信憑性を
かなり高めることができる。
なんなら、俺も一緒に行くわ」
「あ、いいよ、わたし一人で大丈夫」
部長会の事務局って、確かサッカー部の子だったよね。
こんなダミーの計画に部長会の名前使わせるわけにはいかない。
ここは断られたってことにしないと。
なるべく他の人に迷惑をかけないようにしないといけない。
「そっか、じゃすまんが頼む。
あと祝ってもらうほう、三年生の意見もほしいな」
「三年生でっていうとやっぱり隼人君だよね」
「そうだな、葉山の協力を得られることになったら大きい。
あいつの影響力は半端ないからな。
部長会のほうは三ヶ木に任せて、俺は葉山のとこ行ってくるか」
「あ、隼人君ならあたしもいくね」
「ああ、そうだな。
由比ヶ浜がいたほうがいいかもしれん」
「じゃ、あたしから連絡しておくね」
「ちっ」
「え、み、美佳っち?」
あ、や、やば、つい声に出ちゃった。
ど、どうしよう
え、えっと
「ちっ、ちっくしょん!」
「おい、三ヶ木風邪か? 大丈夫か?」
「あ、う、うん、大丈夫。
驚かせてごめんなさい」
ふ~、な、なんとかごまかせた。
でも、そっかー葉山君はまずいなぁ。
結衣ちゃん達と話す前になんとか手を打っておかないと。
「あのさ、部活終わっちゃうとマズイから、そろそろ部長会の方
行ってくるね。
それからその後、ちょっと生徒会の方顔出してくる」
「おう、吉報を待っているぞ三ヶ木」
「頑張って美佳っち」
「う、うん」
”ガラガラ”
「はぁ~」
さて、どうしょうかなぁ。
わたし葉山君の電話番号知らないし。
誰か知ってる人・・・・・・あ、ジャリっ娘!
ジャリっ娘なら知ってるはず。
でもな、なんかいろいろ聞かれそうだし。
それにゆきのんと一緒だろうしなぁ。
ん~どうしょう。
あ、そうだ。
部長会の事務局さん、サッカー部の部長だった。
彼ならきっと知ってるはず。
よし取り合えずグラウンドまで行ってみようっと。
・
・
・
”ワー、ワー”
おーおーやってるやってる。
いや~元気だね、若いっていいなぁ~って、おい!
たははは、わたしゃ幾つだって言うの。
「あんれー三ヶ木ちゃんじゃね」
「やぁ、今日はどうしたんだい?」
え、あ、あれって葉山君と戸部君?
なんでグラウンドに?
「あ、あの、ちょ、ちょっと学校に用事があって。
葉山君たちは部活?」
「この高校に来るのもあと少しだけだからね。
いままでお世話になったお返しに練習の手伝いをね」
そっか、部活の練習手伝ってんだ。
結衣ちゃん、もう葉山君に連絡したかなぁ。
葉山君にダミープロムに協力されると非常にやばい。
だからちゃんとお願いしないと。
「へ~、感心感心。
・・・・・あ、そ、そうだ。
あのさ葉山君、ちょっと話があるんだ。
少しだけいい?」
「ん? どうしたんだい改まって」
「あ、あのできれば二人っきりで。
あ、そ、そんな感じの話じゃないから」
「わかってるよ。
戸部すまない、先行っててくれないか?」
「んじゃ先行ってるペ。
三ヶ木ちゃん、またね」
「うん、ごめん戸部君」
”スタスタ”
「で、どうしたんだい?」
「あのね」
・
「そうか、さっきの結衣からの電話はそういうことか。
ダミープロム、彼らしいといえば彼らしいが」
「うん。
だから葉山君には絶対協力しないでほしいんだ」
「・・・君はそれでいいのかい?」
「え?」
「それは比企谷のやろうとしていることの足を引っ張ることになる。
君はそれでいいのかい?
それよりもなぜ、君はダミープロムを潰そうとしてるんだい?
確かに確実な方法じゃない。
だが、もし2つのプロムの内、どちらかを選ばせるような状況にもっていけたら、
プロムがやれる可能性はあるんじゃないか?」
「・・・・・・理由は・・・言えない」
ゆきのんのため、ゆきのんの願いをかなえるため。
それと奉仕部の三人のあの雰囲気を守るため。
そのためわたしは・・・
でも、もしそのことがゆきのんや比企谷君に知られたら。
だから・・・・・・言えない。
「理由は言えないっか。
そうか、わかった。
今日、部活の後、比企谷に会うことにする。
そこで、彼の話を聞いてそれから協力するかどうか判断する」
「は、葉山君」
「結衣と約束したからね。
それに彼の話を聞けば、君がなぜ彼の邪魔をしようとするのかが
わかるかもしれない」
「葉山君」
「心配しなくていいよ。
君のことは比企谷達には言わない。
じゃ、部活の途中だから行くね」
「・・・・・・」
・
・
・
”トボトボトボ”
はぁ~葉山君、説得することできなかった。
話を聞いてから判断するっか。
もしダミープロムに協力されたら万事休すだよ。
はぁ~
あ、やば、もうこんな時間。
めっちゃ遅くなっちゃった。
完全下校時間まであんま時間ないじゃん。
”テッテッテッ”
あ、体育館倉庫の照明まだ点いてる。
よかった、まだみんないたんだ。
”ガラガラ”
「みんなやっはろー」
「え?」
「はぁ?」
「や、やっはろー?」
「・・・・・・・・・・・ご苦労様です、はい」
し、しまったー、つ、ついやっはろーって言っちゃった。
み、みんながなんか痛い子を見るような目で。
「あ、あのー、ジミ子先輩。
やっはろーって」
「え、えっと、あは、あははは。
い、いや~熱いね~。
い、今飲み物買ってくるね」
”ダー”
も、もう、比企谷君のバカ!
はぁ~
・・・・・・え、えっと何人いたっけ。
会長とゆきのんはきっと生徒会室だよね。
藤沢ちゃん、舞ちゃん、清川君、小町ちゃん、鈴ちゃん・・・・
あれ、柄沢君いなかった。
どうしたんだろう?
確か昨日も来てなかったし。
ーーーーーーーー
「あ、もしもし玉繩君?」
・
「うん久しぶり。
あのね、ちょっと話があるんだ。
今、少しいい?」
・
「うん、ありがと。
あのね」
昨日、あの後比企谷君から連絡があってこのダミープロムに、海浜総合高校を
巻き込むことを聞いた。
部長会のみならず、よその学校まで。
そんなことだめだよ、やり過ぎだよ。
・・・幸いさ、一昨年のクリスマスイベントの件があって、
玉繩君とは知り合いになれててよかった。
彼を通じて向こうの生徒会に話してもらわないと。
さて、それと今日は・・・
寒そうだなぁ~、今日はカイロ持っていこうっと。
・
・
・
”バシャバシャ!
「ひー、海老名やめ、冷たい!」
「ぐふふふ、それ結衣も」
「きゃ、ちょ、ひ、姫菜」
はぁー、やっぱ敵わないなぁ。
海で戯れる結衣ちゃん達。
やっぱすっごく絵になる。
ほんとかわいくて、綺麗で、腐女子で。
見惚れちゃう。
比企谷君もさっきから夢中で写真撮りまくってるし。
あ~あ、昨日あんだけいっぱいの”るてるて坊主”吊るしたのに。
さっきまでの雨空がウソみたいじゃん。
撮影始まったらすっかり青空。
さすがリア充、お天気まで変えちゃうんだ。
「三ヶ木、レフ版ずれてっぞ。
ちゃんとモデルを照らしてくれ!」
「あ、う、うん、ごめん。
これでいい?」
む、むー!
すげぇ、腹立つ!
これ、結構重たいんだよ。
撮影始まってからずっと持ってるのに。
もう少し労わってくれてもいいじゃんか。
実際、ほら、う、腕がプルプルって。
もう限界。
「三ヶ木!」
「あ、はい!
ごめんなさい」
なんか、くやしい、くやしいよ~
「よしこれぐらいでいいだろう。
由比ヶ浜、ご苦労さん」
お、終わった。
う~、疲れたー
腕は痛いわ、風で髪はぼさぼさだわ、さみいし、怒られるし、もう最悪ー
「三ヶ木、お前も写真撮ってやるよ」
「や、やめ、カメラ向けないで」
なに言ってんだこいつ。。
こんな状態で写真なんか撮るな。
せ、せめて、髪ぐらいとかせろ。
それに絶対めっちゃ疲れた顔してるはずだし。
「ほら、撮るぞ」
「や、やめてって」
「はい、3、2、1、ピーナッツ」
「う~、もう! ピーナッツ♡」
”ビュ~”
「きゃ~、スカートが」
”カシャ”
「あ、白、やっぱり白」
「お、おい、いまの撮ったんじゃないだろうな!」
「い、いや、何のことだ」
「貴様、見せてみろカメラ!
げ、やっぱ、パンチラ撮ってんじゃん!
け、消せ!、すぐこれ消せ!」
「断る!」
「は、はぁー!」
な、なにこいつ、開き直りやがった。
よしそれなら実力行使で。
まずは一発、ベシってチョップを。
「こんな素晴らしいもん消せるわけがない!
これは我が家の家宝として子々孫々伝えていく」
「や、やめろー、それだけはやめろ」
「それに・・・」
「え?」
「俺、お前の写真、お前だけの写真持ってない」
「・・・・・・」
「だ、だから! これは絶対に消さない」
「ば、馬鹿!
も、も、もう知らない」
”スタスタ”
「・・・あ、あとから、わたしの写真、メールするから」
「え、あ、お、おう」
「さ、先帰る、ば~か♡」
”スタスタスタ”
「あれ? 美佳っちどうしたの?」
「あ、あ、え、えっと、用事、なんか用事あるそうだ」
「ふ~ん。
あ、ヒッキー、今日撮った写真見せて」
「あ、いや、今はちょっと」
「はぁ! いいからヒキオ見せろし」
「お、おい」
”カバッ”
「「・・・・・・」」
「ヒキオ、最低」
「いや~比企谷君もやっぱり男子だねぇ~」
「ヒッキ~、なに撮ってるの」
「・・・・・い、いや、偶然だ、偶然風が」
・
”スタスタスタ”
ば、ばっか、ほんと比企谷君の馬鹿。
へ、へへへへへ、でもちょっと嬉しい。
なんかいい写真あったかなぁ。
わたしでもそれなりに写ってるやつ。
早く帰って、パソコンに保存しているのチェックしなくちゃ。
・・・でも、やっぱ、パンチラ消してほしい。
しかも子々孫々って。
”ぶるぶる”
うぉ~さむ~
やっぱこの時期の海は寒いや。
よくこんな海に入れたもんだよ、結衣ちゃん達。
ん? あ、あれって。
”タッタッタッ”
やっぱりそうだ。
あそこに座ってんの柄沢君。
でも、こんなところでなにしてんだろう?
いま頃ここにいるってことは、今日も生徒会行ってないのか。
ほんとどうしたんだろ?
「お~い、柄沢君」
「あっ!」
”ダー”
え?
あ、あれ、に、逃げられた?
なんで?
でも、逃がすか!
「ま、待ってー」
”ダー”
ひゃ~、柄沢君、走るの早い、早いよ。
もうあんなとこまで。
”ガシッ”
え、あ、やば、足が絡まって。
だ、だめ、それは絶対いやー
うー、ぐぐぐ、あ、だ、駄目~
「い、いやー!」
”バシャーン!!”
・・・・・・・お、終わった。
よりによって顔面から海に。
ち、ちめたい、しょっぱい。
”ザッブ~ン”
げ、追い打ちの波が。
はぁ~、終わったなぁ~、わたしの人生終わったなぁ~
このまま流されて、どこかに行っちゃうんだろうな~
「だ、大丈夫ですか!
何やってんですか三ヶ木先輩。
ほら、そんなところでうつ伏せで固まってないで、起きてください」
「・・・・・・だって」
”ビュ~”
「ひゃー、寒い!」
「もう、本当に何やってんですか」
”バサッ”
えっ、コート。
柄沢君、自分のコートを。
で、でも汚れちゃうよ。
「柄沢君」
「ほら、あっちのまだ風の来ないとこ行きますよ」
「あ、う、うん。
でもコートが 」
「ほら行きますよ」
”トボトボトボ”
「う~、寒い」
「全く当たり前ですよ。
こんな時期に海に入るなんて」
「い、いや、だって、好きで入ったわけじゃ。
でもどうしょう、びしょ濡れ」
「あ、そうだ、ちょっと待てて下さい」
”カシャカシャ”
「あ、秀じいちゃん?
ん、俺。
すまない、今迎えに来れるかい」
え、電話?
秀じいちゃんてって誰?
「うん、助かるよ。
あ、学校じゃないんだ、学校の近くの海岸。
じゃ、着きそうになったら連絡してくれるかい。
よろしく」
「え、えっと~」
「あ、今車呼びました。
家まで送っていきますよ。
その格好で帰るのはちょっとあれでしょ?」
「あ、うん。
ごめん、でも車も汚れちゃう」
「気にしないでいいですよ。
あ、そうだ、なにか温かいもの買ってきます」
「あ、い、いや、大丈夫。
そんな悪いから」
「いつも差し入れ貰ってたお礼です。
いいから、そこで待っててくださいね。
あ、これカイロ、使ってたやつだけどまだ温かいからどうぞ」
「は、はい。
重ね重ねごめんなさい」
”タッタッタッ”
はぁ~、柄沢君優しいなぁ。
コートもすごく温かい。
あ、でも悪いことしちゃったなぁ~
ちゃんとクリーニングに出して返さないと。
ん?
あ、内ポケットに何か?
汚れちゃうといけない。
”がさがさ”
え、辞表?
何で辞表なんか・・・・・・・。
”タッタッタッ”
「お待たせです。
すみません、お汁粉しかなかったんですけどいいですか?」
「あ、うん、ありがと。
うわ~温かい
ごめんね、ほんとに」
「本当に気にしないで下さい」
”カチャ”
「頂きます」
「はい、どうぞ」
”ゴクゴク”
「あま~い」
「本当にめっちゃ甘いっすね」
「「あははは」」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・生徒会、行かないの?」
「行けないです」
「なんで? みんな待ってるよ」
「・・・・・・」
「よかったら話してみそ」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「俺・・・・・・聞いちゃったんです」
「聞いた?」
「俺、母さんにプロムの件、何とかやらせてほしいって頼もうと思ったんです。
そしたらちょうど会社の人が来てて」
「会社の人?」
「今回の件、プロムがどうのこうのってより、雪ノ下さんのお母さんに対する
嫌がらせだったんですよ」
「え、で、でもなんで雪ノ下さんに」
「俺の親、雪ノ下建設の専務なんですよ。
なんかあんまり雪ノ下さんとうまく行ってないようで。
今回の件は、その腹いせみたいなんです」
「雪ノ下建設の専務さん・・・・・・あっ!」
「え?」
「ごめん、なんでもない」
雪ノ下建設の専務・・・そういえば陽乃さんが言ってた。
なんか会社を乗っ取るつもりとか。
それに会社訪問した時、専務さん達が話しているの聞いたし。
そっか、柄沢君のお父さん、専務さんなんだ。
「だから、今一色さん達がプロムをやるために一生懸命対策とか考えているけど、
どんな対策をしても何をしてもプロムはできない。
だから、俺は 」
”がさがさ”
「このコートの内ポケットにはいってたこれって辞表だよね。
それで生徒会、やめよって思ったの?」
「え、あ、見たんですか?」
「うん、ごめん」
「全て、俺の親の所為なんです。
俺はみんなに申し訳なくて・・・・・・だから俺、責任取らないと」
「・・・・・・柄沢君は生徒会好き?」
「・・・好きです。
一色さんや、藤沢さん、蒔田さん、比企谷さん、煤ケ谷さん、
それに清川。
みんなのいる生徒会、みんなとの活動、そしてあの下校までの生徒会室のひと時。
俺は・・・・・・全部好きです」
「だったら、君はやめられない」
「え?
で、でも」
「わたしが辞めさせない。
ね、この辞表、わたしに預からせてほしい。
絶対に悪いようにはしないから、預からせてもらっていい?」
「え、あ、はい」
そっか。
この件には雪ノ下建設の派閥争いが絡んでたのか。
くそ! そんなもののせいで。
わたしは、わたしは柄沢君をやめさせない。
だから、絶対プロムやる、やらないといけない。
でもどうする? どうすればプロムやることができる?
・・・どうすれば。
「み、三ヶ木先輩?」
「ぶぇっくしょん!」
「うわ!」
「あ、柄沢君、ごめん顔に・・・・・・
は、はい、ハンカチ。
重ね重ねほんとに申し訳ないです」
「・・・・・・い、いえ、大丈夫です。
き、き、気にしないで下さい」
ーーーーーーーー
やっぱこの手しか思いつかない。
でも・・・・・・辛い。
はぁ~、なんでわたしってこんなやり方しか考えつかないんだ。
・・・・・・仕方ない、ほんと仕方ない。
だってこれがわたしなんだもん。
わたしはそう簡単には変われない、彼みたいに。
わたしはわたしのやり方で・・・・・・
「な、なぁ、あの人さっきからずっとぶつぶつ言ってるぞ」
「あ、ああ、なに言ってんだろう?
ちょっと剣豪さんに聞いて・・・・・・お、おい」
「ん? うぇ、剣豪さんなんか、すげー彼女さんを凝視してんぞ」
「お、おう」
”ガラガラ”
「ただいまー
あ、美佳っち、お疲れ様」
「やっは・・・お疲れ様」
「おう、三ヶ木も来てたのか。
やっはろ―」
「あ、うん、あ、あの~」
「ヒ、ヒッキーのバカー。
もうやっはろーはやめてって言ってるのに!」
「結衣ちゃん、帰ってくるの早かったけど海浜さんどうだったの?」
「あはは、えっとね、なんかこっちのことよく知っててね。
この件がダミーだってバレちゃってたみたい。
それで、早々に断られちゃった」
「そ、そう、駄目だったんだ」
よ、よし。
玉繩君ありがと。
これで部長会と葉山君に続いて、海浜さんも駄目ってことで、
このダミープロムに信憑性を持たす方法はなくなった。
だったら比企谷君のこの方法はもう実現性はない
だったら、今ならやめさせられるかも。
「ね、比企谷君、このダミープロムだけど、このまま進めても信憑性が 」
「くく、くくくくく」
「え、あ、あの比企谷君?」
「由比ヶ浜、三ヶ木、海浜との打ち合わせが失敗だと?
何を言ってるんだ、結果は成功じゃないか」
「ヒッキー?」
「で、でも断られたんじゃ」
「海浜との打ち合わせ、相手が話しにのってくるかどうかなんて別にどうでもいい。
大事なのはこの写真だ」
「え、あ、これ話し合いの時の写真。
ヒッキー、ちゃんと撮る前に言ってよ。
ほらあたし変なとこ見てるし」
「今回は、この写真さえ撮れればよかったんだ」
「えっと~、どういうことなの比企谷君?」
「今回、絶対に必要だったのは、海浜と話し合いをしたという証拠、実績だ。
俺達は確かに海浜とプロムについて打ち合わせをした。
その証拠の写真、これを俺達のサイトに載せる」
「そうなんだ、写真が撮れればよかったんだ」
「それに、海浜がもしこの話に乗って、次回の打ち合わせ予定とか言われても
困るからな。
そういう意味でも大成功だ。
な、お前らすまんがこの写真、すぐ公式サイトにアップしてくれ。
で、どうだ公式サイトの状況は?」
「あ、えっと何とか明日にはテストアップできると思いますよ」
・・・・・・写真。
そ、そっか-、比企谷君の狙いはそこだったか。
くそ、た、確かにそうだ。
しまった、それなら打ち合わせ自体をやめるように
言わなければいけなかったんだ。
どうしょう、もうすぐ公式サイト出来ちゃうし、このままじゃ駄目。
・・・・・・やっぱやるしかないんだ。
・
・
・
「じゃあ、藤沢、蒔田、俺先帰るわ」
「ご苦労様でした清川君」
「また月曜日、清川」
「おう」
”スタスタスタ”
「う~肩いてぇ~、腕もパンパン。
くそ、あいつら散々使いまわしやがって。
都合のいい時だけ男子でしょって。
俺は頭脳派担当だってんだ、力仕事なら柄沢に・・・いないんだよな。
あいついつもSHR終わったら、そっこーでどこに行ってんだ。
仕方ねえ、明日の休み、あいつん家まで行ってみるか。
こう毎日こき使われたらたまらん」
”ピタ”
「あち!」
「大袈裟だ~。
はい、マッ缶。
今日もお仕事ご苦労様、にこ」
”ジー”
「え、ど、どうしたの?」
「何だ、何が目的だ」
「え、も、目的って?」
「いや、絶対何か目的あんだろう。
何もなしでマッ缶奢ってくれるわけがない」
「ひ、ひど!
この前も奢ってあげたじゃん。
いらないなら上げない」
「なんにも無いんだよな。
だったら折角だもらっておく」
”カチャ、ゴクゴク”
「ふぅ~、やっぱ仕事終わりに呑むマッ缶ってサイコーだな」
「・・・・・・でさ、ちょっとお願いしたいことあるんだけど~」
「ぶはぁ、ゴホゴホ。
や、やっぱりじゃねえか!
ち、くそ、もう飲んじまった。
お前のお願いっていいことないんだよな、いつも。
・・・・・・で、なに?」
「ごめん。
あ、あのさ」
・
「はぁ!
本気でそんなこと考えてんのか?」
「うん。
だからあん時みたいに協力してほしい」
「断る。
あの時、お前に協力して、すげー嫌な思いした。
今の話ってそん時以上じゃねえか。
こんなことしたら、お前が言ってた一番大事なものが 」
「いいんだよ。
わたしにはこのやり方しか考え浮かばない。
それに、これはもっと大事なものを守るため。
わたしのもんなんかよりもっと大事なもの。
だから」
「・・・い、いや駄目だ。
俺は協力しない」
「ふぅ、そう言うと思った。
じゃあさ 」
”がさがさ”
「協力してくれたら、ほらこの会長の生写真あげる。
これ以前、会長からもらった写真なんだけど」
「え、お、おー
こ、これ私服、私服じゃないか。
それにこっち向いて笑顔で。
・・・・・い、いや、、こ、こんなもの、い、いらない。
お、俺別に一色のことなんとも思ってないし」
「そっか~いらないのか~。
じゃこの水着の写真もいらないのか~」
「は、はぁ! み、み、水着だとぉ!」
「うん、林間学校行った時の水着コンテストの写真。
すっごくセクシーな水着着てんだけどな~」
”ゴクリ”
「み、見せ 」
「え、会長のこと別に何とも思ってないんでしょ?」
「お、お願いします、見せてください。
ひ、一目だけでも」
「はい」
「お、おー、こ、これは!」
”ひょい”
「あ゛ー、も、もうちょっと」
「協力してくれたらこれ上げる。
他にも水着の写真、ほら3枚も。
あ~、こっちのなんかめっちゃすごいポーズ」
「・・・・・・わ、わかった。
協力する、協力するからそれくれー」
「ありがと、清川君。
はいあげる」
「お、おー、すげ。
・・・だけど、だけど本当にお前はそれでいいのか?」
「ごめんね、いつも嫌な思いばっかさせて」
「気にするな」
「清川君、君ってさ 」
「・・・・・・お、俺はこの写真さえあれば。
へへへへへ、すげー、こ、これちょっと何かが見えてないか?」
「・・・・・・君ってやっぱりゲス」
ーーーーーーーー
”ガラガラ”
ふぅ~、よかった、まだ誰も来ていない。
そりゃそっか、だってまだ7時ちょっと過ぎたくらいだもん。
それに今日は土曜日。
えっとたしか昨日帰る時に、比企谷君今日は9時集合って言ってたし。
それじゃ、始めよっか。
ノートパソコン、パソコンっと。
あった、あった。
そんで、電源スィッチON。
”カチ”
え~と確かパスワードは、
”カチャカチャカチャ”
よし、画面でた。
まずは清川君に言われた通りこのハードにプロム関連以外をコピーしてっと。
これだけは忘れちゃいけないって清川君にさんざん念押しされたもんな。
”カチャ”
・・・・・・・・・・静かだなあ~
休日の学校ってほんと静か。
当直の先生以外、誰も学校に来てないしね。
ふぅ~、卒業式まで今日を入れてあと10日か。
ほんといろいろあった。
『俺と付き合ってほしいんだが』
う、うん、それももう・・・・・・終わり。
あ、コピー終わった。
よし、それじゃUSBを差し込んで・・・・・・さ、差し込んで。
”カチ”
あとはUSBのこのファイルを・・・開けば。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・ひら・・・・・・開けば・・・開けばすべて終わり。
『三ヶ木』
比企谷・・・くん。
出来ない!
出来ないよこんなの。
このファイルを開いたら、わたしはもう比企谷君に会えない。
だって、だって・・・・・・やっぱそんなのやだもん。
”へなへなへな”
「うううううう、だってやだもん」
・
・
・
”ガラガラ”
「チース」
「は、ひ、比企谷君。
え、あ、も。もうこんな時間」
「おう、三ヶ木早いな。
職員室行ったら鍵もっていってるて言ってたから、まさかと思ったけど。
ん、どうした?
何でお前そんなところに座り込んでんだ?」
「ひ、比企谷君、あ、あの」
「ヒッキー、なんで先に言っちゃうのさ。
ちょっと待っててって言ったのに」
「ば、馬鹿お前、トイレの前でなんか待ってられるか。
今日は休日で人が少なくて、すげー静かなんだぞ。
そんな状況でトイレの前で待っててみろ、なんかいろいろやばいから」
「え、あっ」
「わかればいい。
で、三ヶ木どうしたんだっけ、なにかあったのか?」
「・・・・・・今日も一緒に来たんだ」
「へ? あ、ああ。
由比ヶ浜とちょっといろいろ話もあったしな」
「・・・そう。
わたしの話は聞いてくれないくせに」
「え?」
「あの時、ちゃんと返事しようと思ったのに。
もういい、馬鹿!!」
”カチャ”
「ん? それ俺達のプロムのサイトだよな。
なにして・・・・・・・お、おい!」
「え、どうしたのヒッキー?」
「が、画面が、俺達の公式サイトが消えていく。
こ、これって、ウ、ウィルスか!
三ヶ木、お前!!」
「・・・そうだよ。
あの時の、生徒総会の時のウィルス。
へへ、これでこの公式サイトだけじゃない、このパソコンに保存していたファイルも
ぜ~んぶ消えちゃったね」
「お、おい」
”ぐぃ”
「答えろ三ヶ木、なんでだ、何でこんなこととしたんだ!」
ごめん比企谷君、結衣ちゃん。
でもわたしはこの計画を、このダミープロムを潰さなきゃいけない。
君にゆきのんを助けさせない。
そして、わたしの邪魔もさせない。
だから。
「決まってるじゃん。
いつもいつも結衣ちゃんと一緒にいてさ。
目の前でイチャイチャして」
「え、美佳っち?」
「み、三ヶ木」
「わたしがどんな思いで見てたと思うのさ。
あ~せいせいした。
ざま―見ろって感じ。
へへ、自業じと 」
”バシ!!”
「きゃっ」
”ドガッ”
「ヒ、ヒッキー!
何も引っ叩かなくても。
み、美佳っち、大丈夫。
あ、口から血が
は、はいハンカチ」
「・・・うるさい・・うるさい・うるさい!」
「え?」
「どけよ、邪魔なんだよ。
な、なにが美佳っちだ。
お前なんかとわたしは、もともと住む世界が違うんだよ。
こっちは我慢して付き合ってやってたんだ。
いい加減に気が付けってーの。
それより、おい、なにしやがんだ!
いってぇーな、よくも人のことを引っ叩きやがったな」
「お前、自分が何やったかわかってんのか。
わかってんのか!」
「なにがって、たかがプロムの公式サイト潰しただけだろうが」
「たかがだと」
”ぐぃ”
「ヒ、ヒッキー、もうやめて」
「離せよ、なにさ、また引っ叩くの」
「お前も雪ノ下を助けたかったんだろうが。
だからお前もこの計画に協力してたんだろ。
だったら、このサイトがどれほど大事なのかわかってんだろ」
「知るかそんなもん。
なにさ、いつもいつもゆきの・・・したとか、ゆいち・・がはまってばっかり。
わたしの気持ち考えたことあんのかよ。
わたしの気持ち知ってるくせに。
この前も二人で。
だから、だからこんなの壊してやったんだ!」
「この前? 二人?
な、なに言ってんだ?」
「二人でネットカフェ入っただろうが。
ずっと出てこないで。
二人っきりで何時間もあんなところでなにしてたのさ!」
「あ、い、いやそ、それは 」
「美佳っち違う。
あれはDVD、プロムの参考にDVD観てたの」
”ガラガラ”
「やっはろーです」
「やっはろー・・・・え?」
「わたし、ずっと待ってたんだ、出てくるの。
・・・あん時だけじゃない、いつもいつもずっと待ってたんだ」
「・・・・・・三ヶ木」
「このぼっちもどき!
お前なんかお前なんか!」
”ダー”
「み、三ヶ木!」
「くんな!」
”ガターン”
「お、おわ、ドアが外れた」
「あ、あの~、いったいなにが?」
・
”ダ―”
終わった。
もう終わった。
これでいいんだ、これで。
”スタスタスタ、スタ、スタ”
で、でも、結衣ちゃんや比企谷君にすごい酷いこと言っちゃった。
なんで、何であんなことまで言っちゃったんだろう。
もっとうまく言うはずだったのに。
ちゃんと練習もしたのに。
でも、比企谷君に叩かれて、そんでわけわからなくなって。
わたしは・・・やっぱり最低だ!
「う、うう、うううう、うぐ」
”ヘナヘナヘナ”
「う、うぐ、うぐ、ひっく、ううう」
だめ、こんなとこで泣いてなんかいられない。
わ、わたしにはまだすることがあんだ。
な、泣くのは、もうちょっと後から。
「うううう」
で、でも、ちょっとだけ。
ちょっとだけ泣かせて・・・・・・お願い。
「う、うう、うぐ、うぐ、うわーん、うわーん 」
・
・
・
”ガラガラ”
「やっはろ―・・・・え、ど、どうしたのだ?
八幡、なにかあったのか?」
「・・・・・・」
「あ、あの剣豪さん、サイトが消された」
「消された?」
「三ヶ木さんがウィルスをノートパソコンに」
「ふむ」
「パソコンのデータが全部消されて」
「プロムだけじゃない、俺達の他のデータもな」
「ああ」
「そのウイルスは除去できるのか?」
「ウイルス自体は除去したけど、データが。
また一から作らないと」
「・・・・・・ふむ。
ちょっと待っておれ」
”ごそごそ”
「八幡、これを使うがよい」
「これって?」
「このUSBの中に、一応昨日までのデータを保存しておる。
これでなんとかなるであろう」
「ざ、材木座、サンキュー、助かった。
だが、何でお前 」
「いや、な、なんとなくな。
そんなことより急がないと時間がないのであろう」
「お、おう」
ーーーーーーーー
「で、なんの用かなぁ、三ヶ木ちゃん」
「陽乃さん、お願いがあります。
わたしにお母さんと話をさせる場を作ってもらえませんか?」
「え? それってもしかしてプロムの件?」
「はい」
「どうかなぁ~、あの人も忙しいから」
「これ知ってます?」
”カシャカシャ”
「ん、なに、スマホ?
どれどれふ~ん裏総武高、こんなのあるんだ。
で、これが何?」
「見て下さい」
”カシャ”
「・・・・・・・これって」
「はい、まだそんなに広がってはいませんけど、プロムが一部の保護者の
圧力で中止になったって非難が」
「で、これがなに?」
「今なら炎上する前に何とかできます、わたしなら。
こんなの炎上させたくないですよね」
「ふ~ん、わたしならっか」
「放っておくと、今に実名入りになって大変なことになりますよ。
わたしそんな実例、よく知ってますから」
「へぇ~、三ヶ木ちゃん、わたしを脅すんだ。
う~ん、でもちょっと迫力が足りないなぁ~
三ヶ木ちゃんじゃ、まだ役不足かなぁ」
「・・・・・・名前出ると、ゆきのんも非難の的になりますよ」
「・・・君がそこまでできる?」
「えっ・・・・・・・・・・」
「んー、ちょっと計画が雑かなぁ。
これ誰が広めてようとしているのかすぐわかるよ。
この件を知ってるのって限定されるよね。
そのなかでこんなことするのは二人しかいない。
その内、一人とは昨日の夜に会っているから彼じゃないことはわかる。
残りは三ヶ木ちゃんしかいない」
「・・・・・・」
「三ヶ木ちゃんが雪乃ちゃんを傷つけることできる?」
「・・・・・・」
「出来ないよね」
「・・・・・・陽乃さん。
陽乃さんが、もしまだわたしのことを少しでもかってくれているのなら」
「うん?」
「・・・・・・わたし大学行くのやめて、雪ノ下建設に入ります。
そして陽乃さんの言うこと何でも聞きます。
だからその代わり」
「ふ~ん。
でもなんでそんなことまでするのかなぁ~
別にいいじゃん、プロムなんてやらなくても」
「ゆきのん、ゆきのんはわたしの大事な友達。
こんなわたしなんかに、真剣に勉強教えてくれた。
それにわたしのこと・・・わたしのこと大事な友達って言ってくれたんです。
だからわたしは 」
「友達っか」
「ゆきのんは自分の力でプロムをやり遂げたいといった。
わたしはゆきのんの力になりたい。
だからお母さんにあって、ゆきのんの話をちゃんと聞いてもらうように
お願いするつもりです。
ちゃんと話を聞いてもらえれば、ゆきのんなら絶対にお母さんを
説得できると思うから。
だから、 」
”ペコ”
「お願いします。
わたしをお母さんに会わせてください」
「三ヶ木ちゃん。
会わせることができても、この裏総武の件だけじゃ、あの人を説得するのは
難しいよ」
「わかってます。
・・・・・・ちゃんと考えてます」
「そう」
ーーーーーーーー
「つまりお話ってプロムの件なのね。
えっと、三ヶ木さんだったかしら。
その件でしたら、先生方とお話させていただいてるの。
今日も今からその件で学校のほうへお伺いするつもりなのよ。
陽乃がどうしてもっていうからお会いしたけど、その件なら 」
「これ知ってますか?」
「え、これは?」
「裏総武高ってHPです。
ここで今回の件が非難の的になりつつあります。
一部の保護者の圧力で、プロムが潰されたって」
「・・・それで?」
「今なら炎上する前になんとかします。
まだ、広がる前ですから」
「それで、見返りにプロムを認めろと要求する気かしら?」
「いえ、ゆきの、雪乃さんの話を聞いてあげて下さい」
「あら、あなたに言われなくても、ちゃんと聞いてるつもりよ」
「聞いてません!
初めからプロムは中止って前提じゃないですか!
ちゃんと聞いてください、このプロムに対する雪乃さんの想いを。
それからプロムをやるかどうか考えてください」
「はいはい、じゃあそうしますね。
それじゃ、あとから雪乃に電話しておくわ。
それでいいわね。
陽乃、話は終わったから帰ってもらいなさい」
「・・・・・・雪ノ下建設のみにくい派閥争い」
「え?」
「はぁー、折角雪ノ下建設の名前守ってあげようと思ったのに。
こんな人が会社のトップにいるんじゃ、先が見えてんなー
駄目だこの会社、入社しなくてよかったー」
「あなた、なにを」
「あ、わたし知ってるんですよ。
このプロムの件、雪ノ下建設の派閥争いが絡んでるんですよね」
「な、なにを言ってるのかしら」
「保護者会の会長、柄沢さんって雪ノ下建設の専務さんですよね。
その専務と社長である雪ノ下さんの中が悪いの知ってますよ。
このプロム中止の件は、雪乃さんが企画しているのを知った柄沢さんが、
雪ノ下家への嫌がらせで潰そうとしているって」
「あなた、妄想がひどいようね。
なにを言ってるのかしら。
陽乃、なにニヤついてるの?
いいからさっさと帰ってもらいなさい」
「あ、うちの生徒会の副会長知ってますよね。
そう柄沢君。
彼からすべて聞きました。
それとこれ」
”ぱさ”
「これは彼が書いた副会長をやめるって辞表です。
これがどういう意味か分かりますよね。
もしちゃんと話を聞いてもらえないのなら、ネットでこの話を拡散します。
雪ノ下建設の派閥争いのせいでプロムが潰されたって。
その証拠に柄沢君が責任とって副会長をやめたって。
あ、知ってますよね?
副会長が辞めたら、もう一回副会長を選出するため選挙やるんですよ。
その時何でやめたんだろってことになって、一気に学校中に広がりますよ。
雪ノ下建設の恥が」
「・・・・・・」
「どうです、わたしの要求聞いてもらえますよね」
「はいはい、もう終わり。
あなたの茶番はもうたくさんよ」
「茶番?」
「そう。
その話の通りになったら、雪乃が学校で苦しい立場になるんじゃなくて?
プロムを潰した原因なんだから。
あなたは雪乃の話をちゃんと聞けといったわね。
つまり、あなた雪乃のお友達でしょう?
そのあなたがそんなことできるわけがない。
だから茶番。
まだまだね」
「え? そんなことどうでもいいですよ。
別にこの件で雪乃さんが学校中の嫌われ者になっても全然構わないですよ。
だって、わたしは生徒会が大事なんです。
生徒会のみんなはわたしの大事な友達。
そのみんなが頑張ってるプロムを守りたいだけで、
別に雪乃さんのことなんてどうでもいいですよ。
話を聞いてほしいって言ったのは、悔しいけど彼女のほうが説得力あるし、
それにあなたの娘、血を分けた実の娘・・・だからですよ。
つまり肉親の情にかけたってやつで。
それに実際のところ、あの娘、頭いいし、綺麗だし、実家金持ち。
ほんとチョ~嫌なやつだったから、これで学校中の嫌われ者になったら
わたし的にサイコー、ざまあみろって感じ。
あ、そのほうがスカッとしていいかも。
あんなやつ嫌われちゃえば 」
”パシ!”
「い、いた
な、なにするんですか!」
「・・・陽乃、さっさと連れていきなさい」
「はいはい。
ほら、三ヶ木ちゃん立てる?
さっさと帰るよ」
「・・・・・・」
”スタスタスタ”
・
「はぁー、あそこまで言うかね~三ヶ木ちゃん。
あの人が人を引っ叩くの久しぶりに見た」
「ごめんなさい。
陽乃さんにも嫌な思いさせました」
「うん、少しだけムッときたかな。
でも・・・それだけ真剣だったんだね」
「・・・うれしかった」
「え?」
「わたしね嬉しかったの。
お母さんが怒ってくれて。
自分の娘のことあんだけ言われて怒らなかったらどうしょうって思った。
でもちゃんと怒ってくれた。
陽乃さん、きっと、きっとお母さん、ゆきのんの話ちゃんと聞いてくれる思う」
「う~ん、どうだろうね」
「あ、あの陽乃さん、この件はゆきのんには」
「わかってる、内緒にしておく」
・
・
・
「そうですね・・・・・・保護者の方たちとは私が話してみましょう。
できれば先生にもご同席頂けると助かります」
「雪ノ下さん、日程の候補をいただければ調整します」
「あ、それと」
「はい?」
「その前に、生徒会の会長さんと・・・雪乃の話を聞きたいのですけど、
呼んで頂いてもよろしいですか?
保護者の方たちとのお話は、プロムが本当にやる価値があるのかちゃんと
話を聞いて納得してからにしたいのですが」
「わかりました。
比企谷。
一つ、頼まれてくれるか」
「は、はい」
・
・
・
’スタスタスタ”
「ん、おう八幡ではないか」
「おう」
「で、プロムの件、どうであった?」
「ああ、サンキュな材木座。
お前が公式サイトのコピー持っててくれて助かった」
「では」
「ああ。
多分大丈夫だ。
まあ、この後、雪ノ下達の話を聞いてってことにはなっているが」
「そ、そうか」
「じゃあな、俺雪ノ下達に伝えてこなければいけないから」
「は、八幡!」
「ん?
どうした材木座」
「あ、い、いや。
あ、あの、み、三ヶ木女子をあまり責めないでほしいのだが」
「・・・・・・わかってる。
俺の方にも原因があったんだ」
「そ、そっか。
な、なぁ、本当に三ヶ木女子を頼む」
”ドサ”
「こ、この通りだ」
”ペコ”
「お、おい、材木座、ど、土下座はやめろ。
わかった、わかったから」
・
・
・
「プロムの件な、最終的にお前らの修正案が無事通りそうだ。
反対していた一部保護者にはちゃんと説得して、納得してもらうそうだ。
そのために、お前の母親、お前達とちゃんと話がしたいそうだ。
ちゃんと話して納得したいそうだ」
「そ、そう」
「だからまぁ・・・・・・、俺の負けだな」
「ええ。
・・・・・・あなたの勝ちね」
「いや、プロムはお前の説得にかかっている。
あとはお前が母親をちゃんと納得させられるかどうかだ。
だから・・・・・・俺の負けだ」
「そう。
・・・・・・でも、ありがとう比企谷君」
ーーーーーーーー
「一色、三ヶ木来てるか?」
「え、あ、せんぱ~い。
ええ、来てますよ。
でも、なんか昨日から元気なくて。
先輩、何かしました?」
「あ、い、いや、そ、その 」
「まぁいいです。
でも何かしたのなら、ちゃんと謝ってくださいね。
卒業式まであと1週間しかないんですから。
じゃないと絶対後悔しますよ。
それにわたしの計画も台無しですから」
「あ、ああ。
ん、計画?」
「あ、な、何でもないです。
え、え~と、あ、いたいた。
本当地味だから気が付かない。
お~い、美佳先輩!
ちょっと来てください。
え、先輩なにわたしの後ろに隠れてるんですか?」
「あ、い、いや、ちょっと」
”タッタッタッ”
「会長どうしたの?
リハ、もう準備できてるよ」
「それじゃ~、あとはよろしくです先輩!」
「え、先輩?」
「みんな~リハ始めますよー
柄沢君、音響大丈夫?」
”タッタッタッ”
「三ヶ木、ちょっといいか?」
「・・・・・・」
「あ、あの、土曜日は暴力を振るってすまなかった。
それとお前のこと、気にかけてやれなくて。
ちょっとプロムのことばっかり考えててな」
「もういいよ」
「え?」
「もういいの。
あれはわたしが悪い、絶対に悪い。
引っ叩かれてるの、当たり前。
だから、わたしのほうこそ、ごめんなさい」
”ペコ”
「い、いや俺の方こそすまない」
”ペコ”
「あ、あのな、お、俺 」
「比企谷君!
あのさ、一つお願いがあるんだ。
絶対に聞いてほしいお願い♡」
「ん、なんだ?
絶対聞いてやる。
あ、わかった温泉だな、おう旅行は温泉でいいぞ。
確か嬉野温泉だったな。
俺が連れて行ってやる、任せておけ」
「別れてください」
「え?」
「へへ、ちゃんと返事もしてないのにおかしいよね。
でもごめんなさい。
わたしと別れてください」
”ペコ”
「な、なんでだ。
いや、本当に俺が悪かった。
もう二度と暴力は振るわない。
だから 」
「あのね、とうちゃんがさ、女子に暴力を振るうやつは絶対に許さないって
言うんだ。
だから、はい」
「え、手?」
「お別れの握手」
「・・・・・・・」
「もう、ほら!」
”にぎ”
「み、三ヶ木」
「今までありがとうございました。
ではでは。
・・・・・・さようなら!」
「・・・・・・み 」
「あ、じゃ、みんな待ってるから」
”テッテッテッ”
「み、三ヶ木!」
はぁはぁはぁ
辛い、辛いよ。
なんで、なんでわたしってこんなんなんだろう。
あのまま仲直りしちゃえばいいのに。
・・・でも、わたしは比企谷君を裏切ったんだ。
比企谷君の気持ちを知ってて裏切った。
それにひどいこと言った、結衣ちゃんにも。
だから、ちゃんと、ちゃんと・・・けじめ・・つけないといけないんだ。
だから仲直りなんてできない。
比企谷君のやさしさに甘えたら駄目なんだ。
・・・ほんと馬鹿。
もうやだよ、こんなの。
わたしは、わたしは・・・・・・こんなわたしが大嫌い!
この世から消えてなくなっちゃえばいいんだ。
そしたら、そしたら、もうこんな辛い思い・・・・・・
人魚姫。
あの話は続きがある。
人魚姫は人知れず海の泡になって消えた。
・・・でも彼女の意識は空に昇って、風の精になった。
人に優しい風を届ける風の精に。
そしてその優しさで人々を幸せにして、いつか天国に行くために。
わたしは、今のわたしに届けられるのは深い悲しみの唱だけ。
わたしは天国になんか行けない。
だからわたしは、わたしは! 人魚姫の物語なんて大嫌い!
最後までほんとにありがとうございます。
お疲れ様でした。
冬物語最終話、ハッピーエンドとならずすみません。
だって冬ですから。
さて、この駄作も次話より最終章、春物語編。
オリヒロと八幡に春は訪れるのか、それとも。
また次話にてお会いできたらありがたいです。
ではでは。