似て非なるもの   作:裏方さん

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祝 八幡生誕日!
誕生日おめでとうっす。
それと八幡を世に生み出してくれた渡先生に感謝っす。
ほんとにおもしろい作品をありがとうございました。
・・・あ、まだ終わってない。
早く14巻でることを願いながら、八幡の誕生日を祝って乾杯っす。
(マッ缶ないので、シロップ多めのアイスコーヒーで)


さてさて。
今回は卒業編。
オリヒロは無事卒業できるのか。
八幡との関係は。

それではよろしくお願いします。


卒業

”ドタドタドタ”

 

「廊下を走らないでください!

 って、あなたあの時の」

 

「す、すみません。

 あとでまた怒られに行きます」

 

     ・

 

「ずっとここにいるから、安心してゆっくりお休み美佳」

 

「・・・・・・・スー、スー」

 

「ふぅ~、やっと落ち着いたみたい」

 

”なでなで”

 

「可愛そうに。

 こんなに顔腫らしちゃって」

 

”ドタドタドタ”

 

「ん?

 な、なにこの足音、だんだん近づいて。

 は、もしかして」

 

”ガチャ ドン!”

 

「み 」

 

”ぼご!”

 

「ぐはぁ

 お、お義姉さん何で腹パン 」

 

「やっぱり佳紀だった。

 あのね、美佳やっと落ち着いて寝たんだから。

 起きちゃうでしょう、この馬鹿」

 

「す、すみません。

 あのう、それで美佳の容態は?」

 

「ね、いい、絶対静かにね。

 くれぐれも大声出さないでね。

 本当に寝かせるの大変だったんだから。

 さ、中に入って」

 

「は、はい」

 

”スタスタ、スタ、スタ”

 

「え! み、美佳!」

 

”ギュ~”

 

「ぐ、ぐぇ~、お、お義姉さん、く、くるしい。

 ちょ、チョーク、チョーク、首締まってる締まってる」

 

「し・ず・か・にって言ったでしょ」

 

”こくこく”

 

「まったく」

 

「す、すみません。

 で、でもこの顔、いったい何が」

 

「あのね、さっき婦警さんに話してるの聞いてたんだけど。

 どうやら道で男の人に顔を殴られたみたい、何回も何回も」

 

「えっ」

 

「それでね、お医者さんが言うには、殴られて顔がすごく腫れてて

 痣とかもできてるけど、幸い骨折とかヒビ入ってたりとかはないって」

 

「ほ、他には

 あ、あ、あの、お義姉さん、顔以外には、そ、その・・・・・・」

 

「・・・顔だけだから。

 大丈夫、他には何もない。

 着衣の乱れとかもなかったし、佳紀が思ったようなことはなかったから」

 

「あ、は、はい」

 

「でもね、何回も何回も顔を殴られてすごく怖い思いしたらしくてね、

 男に対する恐怖症になってるみたい。

 警察の人とかお医者さんとかでも、男性が近づくと悲鳴上げて頭から布団被って。

 ブルブル震えてるの。

 だからごめん、佳紀もしばらく美佳に近寄らないで。

 今は美佳を刺激したくない」

 

「で、でも・・・・・・お義姉さん、俺は美佳のそばに」

 

「気持ちは分かるけど、美佳が落ち着くまで我慢して」

 

「・・・・・・け、けど」

 

「佳紀、美佳はわたしにとっても掛け替えのない可愛い姪っ子。

 わたしに任せて、ね?」

 

「・・・・・・はい」

 

「あ、そうだ美佳の着替え持ってきてくれる。

 わたしも気が動転しちゃってたから何も持ってこなくて」

 

「・・・・・・」

 

”バシ”

 

「いた!

 お、お義姉さん?」

 

「ほら、こんな時こそあんたがしっかりしなさい。

 大事な娘なんでしょ」

 

「・・・お義姉さん」

 

”ペコ”

 

「お義姉さん、美佳を、美佳をお願いします」

 

     ・

     ・

     ・

 

”ブロロロ~ン”

 

「ごめんね遅くまで」

 

「いえ、それより送ってもらってすみません」

 

「全然大丈夫、気にしないで。

 それにゆきのんちゃんも来てくれて、結衣も落ち着いたみたいだし。

 それよりヒッキー君、本当に駅まででいいの?」

 

「ええ。

 まだ最終に間に合いますから」

 

車の窓から見える景色はもう漆黒の闇に包まれている。

この道は駅に向かう道なのに、さすがにこの時間になると人影はまばらだ。

三ヶ木、ちゃんと家に帰ったかな。

まさかあの時みたいに公園にいるってことないだろうな。

・・・大丈夫だよな。

 

「ヒッキー君、本当にありがとうね。

 今日のことだけじゃないわ。

 いつもあの子によくしてくれてありがとう」

 

「え?

 あ、い、いや別に俺は」

 

「あの子ね、学校から帰ってくるとずっとあなたのことばっかり話すの。

 今日はあなたが何をしたとか、こんなこと言ったとか、いろいろとね」

 

いろいろって、由比ヶ浜、何話してるんだ?

きっと碌なこと言って・・・・・・

も、もしかして教室で寝たふりしながら、いつも由比ヶ浜の胸をチラ見している

こととか言ってないだろうな!

い、いや、待て。

それは気付かれていないはずだ。

大丈夫だ、多分。

はっ! も、もしかしてこの前部室で勉強してた時のこと!

あ、あの時、落とした消しゴムを拾う時、思わず由比ヶ浜の太ももが目の前にあって

凝視してしまったんだ。

あの後、頭上げた時、由比ヶ浜と目があって、思いっきり目を逸らされた。

あれ、きっとバレてたよな。

だ、だが、あれは不可抗力だ。

あ、あんな短いスカート穿いているほうが悪い。

そ、そうだ、俺は悪くない。

ピンクのだってちょっとしか見えてなかったし。

 

「ねぇ、ヒッキー君」

 

「は、はい、すみません、ごめんなさい」

 

「え?」

 

「はっ?」

 

「え、えっと~大学のこと・・・だけど」

 

「あ、あは、あはははは」

 

「・・・・あのね大学のことなんだけど。

 まさかあの子が早応大に受かるなんて。

 本当にびっくりしたわ

 あの勉強嫌いの子が、あなたと同じ大学行きたいからって、

 本当に寝る間も惜しんで勉強するなんて」

 

「・・・・・・」

 

「これもヒッキー君のおかげね。

 ありがとう。

 でも、あの娘、東京で一人暮らしするって言ってね、どうしょうと思ってるの。

 ほらやっぱり心配で。

 女の子でしょう。

 近くにいてやれないから不安でね。

 でもすっごく頑張って早応大受かったの知ってるからダメとは言えないし。

 だれか近くに頼れる人いるといいんだけど」

 

「そ、そうですね」

 

「・・・・・・ヒッキー君が気にかけていてくれると安心なんだけどなぁ」

 

「・・・・・ま、まぁ、俺にできる範囲なら」

 

「本当!

 ありがとうヒッキー君。

 そう言ってもらえると本当に安心。

 それなら安心して東京に送り出せるわ」

 

「は、はぁ」

 

「それでねヒッキー君。

 ・・・・・・結衣とはどこまで行ったの?」

 

「はぁっ!」

 

「まさかと思うけど、最後まで」

 

「え、い、い、いや、な、なにも、なんにもしてません。

 お、俺達はそういう 」

 

「なにも?

 もしかして、キスとかも?」

 

「・・・・・・」

 

「キス・・・したんだ」

 

「す、すみません」

 

「うふふ、結衣をよろしくね」

 

「・・・・・・は、はい」

 

「ところでヒッキー君、東京で住むところは決まってるの?」

 

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

 

”ガラ”

 

「えっと~

 いないっか、今日来てないのかなぁ。

 あ、そうだ」

 

”スタスタ”

 

「ね、川崎さん。

 今日さ、三ヶ木学校に来てる?」

 

「え? あ、相模。

 いや三ヶ木なら今日は来てないけど」

 

「そうなんだ」

 

「・・・・・・」

 

「・・・・・・どうしたんだろう」

 

「あのさ、平塚先生には風邪ひいたって連絡があったらしいんだけど」

 

「風邪・・・か」

 

「ん?」

 

「いや、あのさ、うち、三ヶ木と3日前から連絡がつかなくて。

 ラインも既読にならないし」

 

「・・・あんたも」

 

「川崎さんも?」

 

「うん、どうしたんだろう。

 こんなこと今までなかったから」

 

「・・・・・・やっぱりあのことかなぁ」

 

「あのこと?

 ね、あんた何か知ってるの?」

 

「・・・・・・ちょっと向こういい?」

 

「え、ああ」

 

     ・

     ・

     ・

 

「でさ、どっちがいいか決められなくて思わずケーキ2個食べちゃった」

 

「結衣、あんたそれちょっとやばくない?

 あのケーキって結構カロリーあるよ」

 

「でへへ、そ、そうだよね」

 

ふ~、由比ヶ浜のやつ大丈夫のようだな。

こうやってみている限り、今までと変わらない。

どうやら吹っ切れたようだな。

 

「でね優美子もさ 」

 

”ごくっ”

 

・・・・・・や、柔らかかったなぁ唇。

まだあの感触残ってる。

なんか甘くて、心が安らいで、すごく気持ちがよくて。

 

「あ、姫菜も 」

 

う~

だ、だめだ、くそ。

意識しないでおこうと思っても、ついあの唇に目がいってしまう。

この世にあの万乳引力以上のものがあったとは。

 

「はぁ~」

 

「ん? あ、ちょっとごめんね」

 

げ、やば、気がつかれた。

あ、こ、こっち来やがる。

まずいまずいまずいまずい、え、えっとそうだ自然体、自然体で。

 

”スタスタスタ”

 

「ね、ヒッキー

 今からさ、みんなでカラオケ行くんだけど。

 ・・・あのさ、一緒に行かない?」

 

「はぁー!

 なに、それ新種のいじめ?

 ちょっと考えてみろ、俺がお前らに交じって歌えると思うのか。

 浮くだろう、間違いなく。

 だから行くはずがない」

 

「そっか、そだよね。

 ・・・・・・あ、あのさヒッキー」

 

「ん?」

 

「さっきから見過ぎだから。

 それだけ見つめられると、ちょ、ちょっと意識しちゃって。

 う、うれしいけど、ちょっと恥ずかしい」

 

「い、いや、そ、その、すまん」

 

「それとさ・・・」

 

「ん?」

 

”すー”

 

いや、近い、近い、顔近いから。

ほら唇が、そのプルンとした唇が。

ま、まさかここでキス、キスなのか!

 

「あたし、初めてだったから」

 

「え?」

 

「ビ、ビッチじゃないから・・・ねっ♡」

 

「お、おう」

 

”ダー”

 

「お待たせ。

 じゃ行こ」

 

な、なんだ、なんだったんだ。

すごく可愛かったじゃないか。

 

”ザワザワ”

 

は! な、なんだこの視線。

げ、他の奴らの視線、すげ怖いんだけど。

いや、あいつ睨んでる睨んでる。

こ、ここは寝たふり、寝たふりだ。

 

『初めてだったから』

 

ち、あ、あのバカ。

 

     ・

     ・

     ・

 

「ダミープロムの時、そんなことが」

 

「昨日、弟から聞いてね。

 ほらうちの弟もなんか関係してたらしくて。

 それで、そのことが原因になってるんじゃないかって思うんだけど」

 

「・・・そうだね、ありえるかも」

 

「うち、今から三ヶ木の家行ってくる」

 

「あ、じゃあたしも一緒に」

 

「・・・・・・・川崎さん。

 川崎さんにはちょっと頼みたいことあるんだ」

 

     ・

     ・

     ・

 

『もう、やだ』

 

み、三ヶ木、違う、違うんだ。

ま、待ってくれ。

 

”ガバッ”

 

はっ、ゆ、夢か。

やば、マジ寝ちまった。

え~と、話し声とか聞こえないな。

どうやら他の奴らあらかた帰ったようだ。

それじゃ、そろそろいいよな。

 

「ふぁ~あ、よく寝た」

 

「お目覚めですか先輩」

 

「はっ! い、一色!

 な、何でお前が」

 

「とてもよく寝てたので、起こすのもなんでしたし」

 

「そ、そうか」

 

「ところでせんぱ~い」

 

”ゾクゾク”

 

ん、な、なんだ急に寒気が

な、なんだこの一色の笑顔は。

何か嫌な予感がする、ずげー嫌な予感がする。

逃げよう、うん逃げないと。

 

「い、一色、あのドアから清川がお前のこと見つめてる」

 

「え?」

 

”ガタ、ダー”

 

「あ、に、逃げた!

 先輩、ちょっと待ってください!」

 

「断る!」

 

     ・

     ・

     ・

 

”スタスタスタ”

 

「え~と、確かこの辺のアパートだったと思うけど。

 あっ」

 

「ごめんね、わざわざ来てもらったのに」

 

「いえ、それよりお身体を大切にとお伝えください。

 それでは」

 

「ええ。

 あ、そこ、階段ぼろくて急だから気をつけてね」

 

「はい」

 

「えっと、あれ蒔田さんだね。

 あの子も三ヶ木の様子を見に来たんだ。

 あ、こっち来た」

 

「蒔田さん」

 

「え? あっ」

 

”タッタッタッ”

 

「久しぶりです、相模先輩」

 

「久しぶり。

 ね、三ヶ木に会いに来たようだけど、どうだった?」

 

「あ、はい。

 あの~、三ヶ木先輩には会えませんでした。

 なんか、おたふくかぜになったらしくて、うつるといけないからって」

 

「そうなんだ」

 

「でも、昨日一色が来た時は、お父さんはインフルエンザって言ってたのに。

 インフルエンザこじらせておたふくかぜになったのかなぁ三ヶ木先輩」

 

「え? そ、そんなことあるの?」

 

”ブ~、ブ~、ブ~”

 

「あ、すみません、ちょっと。」

 

「うん」

 

”カシャカシャ

 

「はい、もしもし蒔田だよ。

 え! あ、うんわかった。

 じゃ、今戻るから。

 相模先輩、あのわたし生徒会に行かないといけないので失礼します」

 

「あ、うん。

 じゃあ、また」

 

「はい」

 

”テッテッテッ”

 

「インフルエンザにおたふくかぜって・・・どうしたんだろ三ヶ木」

 

      ・

      ・

      ・

 

”キョロキョロ”

 

よ、よし、撒いたみたいだな。

このまま、一気に玄関まで。

それ!

 

”ダー”

 

げぇ!

あそこにいるのは藤沢ちゃんか。

くそ、玄関で見張ってるのか。

なんだもしかして生徒会総出で俺を探しているのか?

やばい、なんか知らんけどすごくやばいんじゃないか。

俺の危機センサーがギンギンに反応して、捕まると本当にやばいと教えている。

くそ、どうする。

どこか逃げ道はないか。

い、いったん戻るか。

 

”くる”

 

げ、あ、あれは小町と会計の娘じゃねえか。

あいつらもなんか探しながらこっち向かってくるぞ。

 

ブ~、ブ~

 

げ、小町から着信!

 

くそ、やっぱり俺を探しているんだよな。

なんだ、なんで生徒会が俺を探しているんだ?

ど、どうする。

前には小町達。

後ろは藤沢ちゃん。

一色もどこから来るかわからん。

ど、どうすれば。

 

”キョロキョロ”

 

はっ、こ、こっちっだ。

取り合えず、この物陰に

 

”スタスタスタ”

 

「あ、藤沢先輩」

 

「小町ちゃん、鈴ちゃん、比企谷先輩いた?」

 

「あ、いえこっちには。

 確かこっちのほうからスマホの着信音がしたと思ったんだけど」

 

「いろはちゃんからも連絡ないし。

 わたしもう少し玄関で見張ってるね」

 

「じゃ小町達、もう少し見廻ってきますです」

 

「うん、お願い」

 

”スタスタスタ”

 

ふぅ~、行ったか。

でもなんであいつら俺を探しているんだ?

 

”チョンチョン”

 

「へっ?」

 

「あんた女子トイレで何してるのさ」

 

「え、あ゛ー

 あ、い、いや、あ、あの」

 

「ね、警察行く?」

 

「あ、い、いや何でもします勘弁してください」

 

「まぁ、ちょうどよかった。

 あんたに用事があったんだ。

 通報されたくなかったら、ちょっといいかい?」

 

「・・・・・・はい」

 

     ・

     ・

     ・

 

「もうこんな時間。

 どうしょう、帰ろうかなぁ。

 やっぱり三ヶ木、ライン見てないし。

 でも川崎さんと約束したしなぁ。

 絶対三ヶ木の顔見てくるって。

 よ、よし、やっぱりチャイムを」

 

「美佳、じゃちょっと買い物行ってくるね。

 鍵かけて行くから」

 

”ビクッ”

 

「え、あ、やば!

 どうしょう、ひ、ひとまず下に降りて」

 

”ダー”

 

「あっ!」

 

”ドタドタドタ”

 

「い、いったぁー」

 

「だ、大丈夫?」

 

「あ、あの~」

 

「あなたその制服、総武高の子?」

 

「あ、は、はい」

 

”ズキッ”

 

「いたっ!」

 

「どうしたの?

 足、ちょっと見せてみなさい」

 

「うう、はい」

 

”ズキッ、ズキッ”

 

「ひゃ、い、痛い!」

 

「こりゃ捻挫かなぁ。

 ・・・・・・仕方ない。

 ちょっと家においで」

 

「はい」

 

     ・

     ・

     ・

 

「えっ、3日前から三ヶ木と連絡がつかない?」

 

「ああ、それに今日学校休んだんだ。

 ね、相模から聞いたけど、あんたダミープロムの時、三ヶ木のこと殴ったんだってね」

 

「・・・・・・・」

 

「どうなんだい?」

 

「ああ、引っ叩いた」

 

「何でそんなことを」

 

「俺にもわからないんだ。

 なぜ、あんなことしてしまったのか。

 気が付いたら、俺は三ヶ木を引っ叩いていた」

 

「そっか、引っ叩いたんだ。

 三ヶ木やっぱりそれがショックで」

 

「・・・・・」

 

違う。

それが原因じゃないんだ。

3日前だとしたら・・・・・・あのことが原因だ。

俺はあの時見たんだ、俺と由比ヶ浜を見つめるあいつの顔を。

今まで生きてきて、俺はあんな悲しい顔を見たことがない。

・・・・・・また三ヶ木を傷つけた。

 

「比企谷?」

 

・・・だが、これでよかったのかもしれない。

俺はあいつに暴力をふるった。

だから振られた。

だったら、これでちゃんとあいつとの関係を終わらせることができるじゃねえか。

これでいい・・・・・・これでよかったんだ。

 

(本当にこれでよかったのか)

 

は、な、なに、な、なんなんだ?

 

(お前は三ヶ木とやり直したかったんじゃないのか?

 もう一度最初からちゃんと)

 

・・・・・・

 

(本当にこれでいいんだな)

 

お、俺はあの時、走り去る三ヶ木を追いかけなかった。

追いかけてちゃんと説明すればわかってもらえたと思う。

だけど、俺は三ヶ木じゃなく由比ヶ浜を選んだ。

あの時、由比ヶ浜のそばにいてやりたいと思ったんだ。

だから俺は

 

(それだけか?

 違うだろう?

 お前はあれからも三ヶ木に連絡をしようともしなかった。

 もしかしたらわかってくれるかもしれなかったのに。

 いや、ずっとそばにいてお前のこと見ていてくれていた三ヶ木なら、

 きっとわかってくれるって知ってたはずなのに。

 でもお前は連絡しなかった。

 それはなぜだ)

 

・・・・・・

 

(なぜだ?)

 

・・・・・・お、俺は由比ヶ浜の甘く柔らかい唇に触れた時、

すごく気持ちがよくて、もう少しこのままでいたいってそう思った。

何かこう、心が満たされていくそんな気がして。

もっとこのままキスしていたいって思った。

・・・・・・思ったんだ!

あの時、もう一回始めたいって、三ヶ木とやり直したいって思っていたのに。

俺は三ヶ木のことを・・・・・・・・・

それなのに、三ヶ木に会って、会えたとして俺はなんて言い訳をする?

どんな言葉で繕っても、それはきっと欺瞞でしかない。

・・・だから俺はあいつに会えない。

会ってはいけない。

会う資格がない。

 

「ね、比企谷聞いてるのかい?

 今から三ヶ木に会いに行こう。

 あたしが一緒に行ってあげる。

 それで、ちゃんと謝んな。

 あんたがそんなことしたの、三ヶ木にも原因があったと思う。

 だから謝りに行けば三ヶ木もきっと」

 

「川崎、すまない。

 ・・・俺は行けない」

 

”スタスタスタ”

 

「はぁっ!

 ちょ、ちょっと比企谷!」

 

「・・・・・・」

 

「ね、あ、あんた、行かないって。

 もう卒業式なんだよ、わかってるのかい」

 

「・・・・・・すまない」

 

「ひ、比企谷!」

 

     ・

     ・

     ・

 

「これでよしっと。

 ね、一応応急処置はしておいたけど、ちゃんと病院に行ってみてもらってね」

 

「あ、はい。

 あ、あの~」

 

”キョロキョロ”

 

「三ヶ木、三ヶ木さんは?」

 

「え、あ、あの、え、えっと、あ、そうそう。

 今ちょっと買い物、買い物に行ってていないの。

 ごめんね。

 あ、そうだ、何か飲む?

 たしか冷蔵庫にオレンジジュースが」

 

”スタスタ”

 

「・・・嘘」

 

”すく”

 

「え、あっ、だ、だめ相模さん!

 その襖は開けないで」

 

”ガタ、ガタ”

 

「えい!」

 

”ガタ、スー”

 

「み、三ヶ木?」

 

「いゃー!」

 

”ブルブルブル”

 

「み、三ヶ木あんたどうしたのその顔!

 すみません、三ヶ木どうしたんですか!」

 

「はぁ~、仕方ないか。

 相模さん、ちょっと座って」

 

「・・・はい」

 

「これでも少しは腫れとか痣とかひいたんだけどね。

 あのね、警察から連絡があってね。

 ほら、今防犯カメラとかそこら中にあって・・・・・・そこに映ってたんだって。

 この娘、この前の土曜日に路上で肩がぶつかった男に散々殴られたの。

 引き倒されて、馬乗りになられて顔を何発も何発も」

 

「そ、そんな」

 

「それでこの娘、男性恐怖症になっちゃって。

 また殴られるんじゃないかて怖がって、ずっとこんな感じなの」

 

「三ヶ木」

 

「だから相模さん、せっかく来てもらったのに悪いんだけど 」

 

「いやです」

 

「え?」

 

「すみません。

 少しだけ、もう少しだけ、ここに、三ヶ木のそばにいさせてください」

 

「で、でも」

 

「こんなに震えてる三ヶ木を見たら、うちは放って帰るなんてできない。

 お願いします。

 うちは、うちはこれでも三ヶ木の親友のつもりだから一緒にいてやりたい。

 いさせてください。

 お願いします」

 

”ペコ”

 

「相模さん・・・・・・わかった。

 じゃ、わたし買い物してくるから、その間お願いしてもいい?」

 

「はい」

 

     ・

     ・

     ・

 

「ただいま~

 相模さん、ごめんねありがとう」

 

”ガタ、ガタ、スー”

 

「し~」

 

「え、あっ」

 

「はい、三ヶ木今よく寝てるから」

 

「・・・・・・本当、美佳よく眠ってる」

 

「あ、あの、すみません。

 もう少しだけこのままここにいてもいいですか?

 あ、家の方にはラインで連絡しておきましたので」

 

「でも」

 

「お願いします」

 

「・・・・・・ありがとう、相模さん」

 

     ・

     ・

     ・

 

「い、いやー!」

 

「え、な、なに?

 ど、どうしたの三ヶ木」

 

「いや」

 

「え?」

 

「殴らないで。

 もう、殴らないで」

 

”ブルブルブル”

 

「み、三ヶ木?」

 

”だき”

 

「大丈夫、大丈夫だよ三ヶ木。

 うちが守ってあげる。

 ね、だから大丈夫」

 

”なでなで”

 

「・・・・・・スー、スー」

 

「よっぽど怖かったんだね三ヶ下」

 

”にぎ”

 

「三ヶ木、うちがずっとこの手を握っててあげる。

 だから安心して。

 文化祭の時、あんたがずっとうちの手を握っていてくれたように。

 あの時さ、うち本当にうれしかった。

 うちはあの時のあんたの手の温もりを一生忘れない。

 あの温もりのおかげで、うちは文化祭をやり直すことができた。

 だから、今度はうちがあんたの手を離さない。

 しっかりと握り締めててあげる。

 ね、三ヶ木」

 

     ・

     ・

     ・

 

”ガタ、ガタ、スー”

 

「相模さんそろそろもう遅いから・・・・」

 

「スースー、スースー」

 

「あらあら、仲良く手をつないで。

 ・・・ありがとう相模さん。

 良かったね美佳。

 あ、風邪引かないように毛布もう一つもってこないと」

 

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

 

「それでは最後に

 ・・・君たち卒業おめでとう」

 

「起立!」

 

”ガタガタ”

 

「礼!」

 

「ありがとうございました」

 

”ワイワイ、ガヤガヤ”

 

「平塚先生、三ヶ木の卒業証書と記念品、あたしが持って行っていいですか?」

 

「ん、いや、川崎、これはわたしが」

 

「あたし、知ってます」

 

「・・・・・・」

 

「・・・・・・知ってます」

 

「・・・・・・そうか、君は知っているのか。

 うむ、それなら君に頼もう。

 そのほうが三ヶ木も喜ぶだろう。

 頼めるか、川崎」

 

「はい」

 

     ・

     ・

     ・

 

”スタスタスタ”

 

「えっと、確かこの公園曲がったとこだったね。

 ん、あ、あれベンチにいるのって三ヶ木の」

 

”タッタッタッ”

 

「こんにちわ、お父さん」

 

「え、あ、君は確か美佳の」

 

「あ、はい同じクラスの川崎です。

 あ、あの、これ卒業証書と記念品を預かって」

 

「そうか。

 今日は卒業式だったんだね。

 わざわざありがとう」

 

「美佳さんの容態はどうですか?」

 

「・・・まだ怖がって部屋から出てこれなくてね」

 

「そうですか」

 

「はは、だから美佳を怖がらせないようにね。

 なるべく顔を合わせないようにしてるんだ」

 

「お父さん」

 

「こんな時に美佳のそばにいてやれないなんて。

 だめだ俺は。

 あの時から、もう絶対に美佳を一人にしないって決めてたのに。

 いつもそばにいてやるって決めたのに」

 

「・・・・・・」

 

「あ、ご、ごめんね。

 えっと川崎さんだったね。

 もしよければ、これ家までもっていってくれないか?

 美佳に顔を見せてやってほしいんだが。

 今ね相模さんも来てるんだけど、川崎さんも顔見せてやってくれると

 きっと美佳も喜ぶと思うから」

 

「あ、はい」

 

     ・

     ・

     ・

 

「それじゃまた来ます。

 三ヶ木、またね」

 

「ありがとう相模さん、川崎さん。

 気を付けて帰ってね」

 

「「はい」」

 

”スタスタスタ”

 

「よかった、三ヶ木、少し元気になったみたい」

 

「ね、相模」

 

「え?」

 

「あのさ、ちょっと相談があるんだけど」

 

 

 

 

--------

 

 

 

 

えっと、この本はいいか。

もう何回も読んだし。

えっと、あと持っていくものはとっと。

 

”ガサガサ”

 

あっ、これ

 

”ビロ~ン”

 

・・・・・・ふぅ~、結局返せなかったなこのパンツ。

どうすっかな。

ここに置いておくわけにもいかないっか。

小町のことだ、俺がいなくなったら絶対この部屋探索するに違いない。

それに・・・・・・

 

”ぎゅ”

 

ぐふ、ぐふふふ。

 

”ガチャ”

 

はっ!

 

「お兄ちゃんいる?」

 

「お、お、おう、ど、ど、ど、どうした小町?

 ノ、ノックぐらいしろ」

 

「あ、引っ越しの準備してた?」

 

「あ、ああ。

 まぁ、取り合えず必要な物だけに荷造りしておかないとな。

 えっと、こ、この、この本は持っていかないと」

 

ふぅ~、見つかってないよな。

とりあえずこの本に挟んでおいてっと。

小町が出て行ったらどこかに。

 

「で、どうしたんだ小町?」

 

「あのさ、お兄ちゃん、美佳さんのことだけど」

 

「・・・・・・」

 

「あのね、美佳さんと卒業式の前ぐらいからずっと連絡がつかなくて。

 いろはさんとか蒔田先輩とか、それに稲村先輩も心配して会いに行ったんだけど、

 なんかインフルエンザこじらせておたふくかぜになったとかで誰も会えなくて。

 お兄ちゃんは、最近美佳さんに会った?」

 

お、おい、インフルエンザこじらせておたふくかぜになるのか?

そっか、三ヶ木はまだ・・・・・・

だ、だけど、俺は。

 

「お兄ちゃん?」

 

「あ、い、いや何でもない。

 俺も三ヶ木には会えていない」

 

「ふ~ん、そっか。

 大丈夫かなぁ美佳さん。

 小町もお見舞い行って来ようかなぁ。

 お兄ちゃん、美佳さんの家知ってるよね、後で地図書いて」

 

「・・・あ、ああ」

 

「あ、そうだ。

 ね、お兄ちゃん、引っ越しの日ってさ、美佳さんにはちゃんと言った?」

 

「い、いや」

 

「何やってるのお兄ちゃん。

 仕方ないなぁ~、じゃあ小町がお見舞いのついでに伝えてきてあげるね」

 

「・・・・・・いらない」

 

「え、なんて?」

 

「いらないと言ったんだ」

 

「だってお兄ちゃんも連絡つかないんでしょ。

 だったら小町がお見舞いに行ったときに 」

 

「いらないって言ってんだろ!」

 

「な、なにさ、おこらなくてもいいじゃん!

 折角小町が」

 

「うるさい!」

 

「お、お兄ちゃんのバカ!

 何さ、ふん!」

 

「や、やめろ、そ、その本は投げるな!」

 

”ドサッ”

 

「い、いてぇ」

 

”ぱさっ”

 

「げ!」

 

「・・・・・・お兄ちゃん、これ」

 

「・・・・・・あ、い、いや」

 

「最低」

 

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

 

「えっとこんな感じか?

 難しいもんだな」

 

”ぼきっ”

 

「げ、やば口紅折れた。

 み、美佳に怒られっぞ。

 ど、どうする。

 えっとくっつくかなぁ」

 

”がちゃ”

 

「美佳、卒業おめでとう!

 でもなんで電話に・・・・え?」

 

「あっ」

 

「・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

「・・・お父さん、そんなご趣味があったんですね」

 

「い、いや違う、違うんだめぐりちゃん」

 

「だ、大丈夫です。

 ご趣味は人それぞれだから」

 

「ち、違うんだめぐりちゃん、これには深い訳が」

 

「し、失礼します」

 

「は、話しを聞いて」

 

”にぎ”

 

「いやー!

 誰にも言わないから手を放してー」

 

     ・

     ・

     ・

 

「へぇ~、これはどっから見ても女の人だ。

 めぐりちゃんすごいね」

 

”パチッ”

 

「ちょ、ウ、ウィンクはやめてくださいお父さん」

 

「う~ん、でもなんか癖になりそう」

 

「や、やめてください!

 そんなことになったらわたし美佳に怒られますから!

 ね、ねぇ、お父さん聞いてます?

 お、お~い」

 

「あ、ごめんごめん」

 

「でも美佳にそんなことが。

 だから連絡全然つかなかったんだ」

 

「ずっと部屋にこもってたんだけどね。

 相模さんと川崎さんのおかげで、やっと外に出れるようになって。

 でも、やっぱり男の人がいるとダメみたいで」

 

「そうですか。

 ・・・・・・でもお父さん、わたしはこんなことしなくても大丈夫だと思いますよ」

 

「え?」

 

「だってあの娘、美佳は史上最強のファザコンですから」

 

「ファザ・・・

 そ、そうだといいんだけど。

 あ、もうこんな時間か。

 めぐりちゃん、そろそろ学校に行かないと」

 

「あ、そうですね。

 あ、その前にちょっとすみません」

 

”カシャカシャ”

 

「あ、うん、城廻。

 久しぶりだね。

 あのさ、ちょっといい?」

 

     ・

     ・

     ・

 

「平塚先生、無理を言ってすみませんでした」

 

「いや、いいんだ相模、気にするな。

 ちょうど今日は宿直だったからな。

 それより、そろそろ始めるとしょうか」

 

「はい。

 それでは卒業式を始めます。

 卒業証書授与。

 卒業生 3年C組 三ヶ木美佳」

 

「ほら、三ヶ木いくよ」

 

”ガタ”

 

「大丈夫かい?

 ほら、あたしに掴まんな」

 

「う、うん」

 

”スタ、スタ、スタ”

 

「卒業証書、3年C組 三ヶ木美佳

 ここに本校所定の全課程を修了したことを証する。

 代読 平塚静。

 三ヶ木、おめでとう」

 

「あ、ありがとございます先生。

 さ、さがみん、さ、沙希ちゃんもありがと」

 

「「おめでとう、三ヶ木」」

 

「うううううう」

 

「ね、ね、めぐりちゃん、その人どなた?」

 

「え、えっと~、あ、う、うちの母です麻緒さん」

 

「そう。

 でもどこかで 」

 

「あ、つ、次、送辞、送辞ですよね」

 

”キョロキョロ”

 

「え~と、間に合わなかったみたい。

 あ、わたしが送辞しますね」

 

”スタスタスタ”

 

「ごほん、送辞。

 美佳、卒業おめでとう」

 

”ガタン!”

 

「ちょっと待ったー!!」

 

”スタスタスタ”

 

「送辞は、はぁはぁ。

 送辞は在校生の特権ですよ城廻先輩!

 はぁ、はぁ、はぁ。

 だから、そ、送辞、送辞はわたしがするんです!」

 

「一色ちゃん」

 

「一色さん」

 

「一色」

 

「送辞、そ、送辞・・・・・・・・・・・」

 

「一色さん?」

 

「う、う、うううう、ぐす。

 ここに来るまでにちゃん考えたのに。

 全部、全部忘れちゃって・・・・

 うぐ、うぐ、う、う、

 美佳先輩の顔、やっと見えたと思ったら全部忘れちゃったじゃないですか。

 うううううう。

 美佳先輩、美佳先輩・・・・・・・

 卒業、おめでとうございます。

 そして・・・・・・

 ありがとうございました。

 うわぁ~ん、うわぁ~ん、み、美佳先輩!」

 

"だき"

 

「か、会長」

 

「わたし、わたし卒業式の時ずっと待ってたんですよ、受付で。

 このリボン徽章、わたしが先輩につけてあげたくて。

 それで、それで、卒業おめでとうございますって言いたかったのに。

 美佳先輩の馬鹿~

 ぐす、うっ、うっ、うううう」

 

「ごめんなさい、会長」

 

「ほらほら一色さん、泣いてないでリボン徽章つけてあげて」

 

「はい、城廻先輩」

 

「ううううううう」

 

「あ、あの~、めぐりちゃんのお母さん、よかったらハンカチどうぞ」

 

「ずみまぜん」

 

”ごしごし”

 

「え、その声本当にどこかで・・・

 あ、あんたその顔、佳紀!

 な、なにその恰好。

 馬鹿、あんた見たら美佳が怖がって」

 

「あ、三ヶ木のお父さん」

 

「あちゃ~、化粧が。

 お父さん泣き過ぎ」

 

「だ、だってお義姉さん。

 俺、俺も、み、美佳の卒業式が、卒業式が・・・・・・・」

 

「三ヶ木、あんた大丈夫かい?」

 

「三ヶ木」

 

「・・・・・・と、とうちゃん?

 と、とうちゃん!!」

 

”ダー”

 

「とうちゃん、とうちゃん、とうちゃん!」

 

「み、美佳!」

 

”だき”

 

「うわ~ん、とうちゃん、とうちゃん」

 

「美佳」

 

「とうちゃん、わたし、わたし・・・・・・怖かったよー」

 

”なでなで”

 

「ずっとそばにいてやれなくてごめんな美佳。

 それと・・・卒業おめでとう」

 

「うん」

 

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

 

”キョロキョロ”

 

「どうしたの?」

 

「いや、な、何でもない」

 

「・・・・・・そう」

 

やっぱり来ないよな。

来るわけないか。

小町も伝えていないだろうし。

 

「ね、比企谷君。

 引っ越しのこと、三ヶ木さんには伝えてあるの?」

 

「いや、伝えていない」

 

「そう。

 ・・・・・・ね、あなたはそれでよかったの?」

 

「・・・・・・ああ」

 

これで良かったんだ。

小町から三ヶ木のこと聞いて何度も会いに行こうって思ったんだ。

でも、どうしても行けなかった。

それに、あいつは卒業式もプロムにも行けなかったんだ。

俺の所為で、全て俺の所為だ。

だとしたら、もう俺たちは・・・・

 

「これでよかったんだ、きっと」

 

「比企谷君、あ、あのね」

 

「ん?」

 

「あ、いえ、いいの、なんでもない」

 

「そっか」

 

「ええ。

 ・・・ね、こちらに帰ってくる時があったら連絡してくれるかしら」

 

「ああ、必ずするわ。

 ん、なんだ雪ノ下、もしかして俺のために泣いてくれてるのか?」

 

「は! な、な、なにを言ってるのかしら!

 そんなわけがあるはず・・・・・・ないじゃない。

 東京に出発というのに、誰も見送りに来てくれないあなたのことを憂いているのよ」

 

「そ、そうか。

 なんかすまん」

 

来るわけがない。

誰にも今日が東京に行く日だなんて伝えていない。

三ヶ木に知られるのが怖かったからな。

もしどこからか漏れて、三ヶ木が見送りに来てくれたとしても、

今の俺には何を話せばいいのかわからない。

だから誰にも伝えてなんていない。

知っているのは、小町から無理やり聞き出したお前ぐらいだ。

さて、そろそろ電車が出る時間だな。

 

「じゃ、そろそろ行くわ。

 雪ノ下、見送りありがとうな」

 

「ええ。

 由比ヶ浜さんによろしくね」

 

「ああ。

 じゃあな」

 

「ええ。

 いってらっしゃい」

 

     ・

     ・

     ・

 

”ガタンガタン、ガタンガタン”

 

東京・・・か。

この見慣れた風景もしばらくは見納めだな

 

”ツー”

 

え、な、なんだなんで涙が

俺、な、泣いてるのか?

へへ、俺の千葉愛どんだけなんだ。

度が過ぎんだろう。

さよならだ千葉。

さよなら・・・・・・・・・・・・・三ヶ木。

 

 

 

 




最後までありがとうございました。
今回、特にセリフばかりですみません。

さて、オリヒロたちも卒業し、八幡も東京に。
次話、この駄作もいよいよ最終話。

また見に来ていただけるとありがたいです。

ではでは。

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