俺はゲームの主人公?   作:abd

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スタートライン

 場所は東京、芝浦~台場間の海上。レインボーブリッジ───正式名称『東京港連絡橋』───の南に浮かぶ人工浮島、通称‘学園島’に今俺はいる。

 

 普通ここ日本で16歳と言えば、義務教育を卒業した若き世間知らず共が、学生なる職業に自主的に就き、日々必死に勉学を励み青春をドブに捨てている愚かな年代だ。

 

 しかし何事にも例外はあるもので、学生ではなく社会人として。又現代日本の底辺から二段目、自宅警備員として生きる者もいれば、普通の学生とは言い難い‘特別な学生’となる者もいるのだが………今は置いておくとして。

 

 どうしてついこの間まで社会人だった俺が、学生集う学園島なんぞにいるのだろうか?そんな疑問を抱く者も少なくないだろう。

 しかし、これを回送シーンでお送りするには尺が必要なんだ。 少なくとも今思い出すような事ではないので先送りさせてもらおう。あしからず。

 

 

『じゃあ今は何をするべきなのか? 違うだろ。することは他にあるんじゃないのか、巳釧隆一よ。さぁ、とりあえず振り向け。全てはそれからだ』

おかしな話だ。薬物には手を出していないはずなのに、幻聴が聞こえてくるなんて。一度耳鼻科にいってみるべきか?

 そんな事を考えつつも後ろを振り返ってみた。

 

 

 すると、どうだろう。

自転車に乗った独りの青年が、必死の形相で迫ってくるではありませんか。 ……隣に愉快な仲間を連れて。ちなみに、‘独り’と表現はしたのはなんとなくだ。決して他意はない。

 

「おーい!そこの誰かッ!助けてくれ!!」

 

 表情と合わせれば尚更必死さが伝わってくるセリフだな。

一体あの青年には、今!なにが起こっているのでしょうか!?

 

テロップが視界右上に流れている……前提で選択肢が表示される。  『少年は必死に助けを求めている。助けますか?』

 

 

 

 

 しばしの黙考の後、俺はYESにカーソルを合わせていた。たまたま起きた気紛れの効果で。 

 

 それにしても恐らく今の俺は、幻聴の事など全く気にしてないような凄くいい笑顔なんだろう。 実際は凄く気にしているんだが。

 けど、だ。誰だって嬉しいんもんだろ?お金が手に入るのは。人助けに少しの興味もないんだけど、お金が絡むと別なんだよな。 大好きになっちまうよ、人助け。

 

「お前の命の値段はいくらかなー?」

 

そう呟いた俺と、青年の愉快な仲間はその場から文字通り“消えた”のだった。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆遠山 キンジ

 

 

一体全体どういう事だ。どうして、なんで、よりによってオレの自転車に………。

 ‘爆弾’が取り付けられてんだよッ!?

 

そんな疑問を胸に抱えつつ、オレは全力でペダルを漕いでいた。 『武偵』という職業柄、そりゃ買った怨みなんて数えきれないし、こんな状況なのにわりと落ち着いて対応策も考えられる。

 しかし、こう考えずにはいられない。

(これだから武偵はイヤなんだよ……!)

 

 たった今直面している、チャリジャックという世にも奇妙な現実と武偵である自分に対しての憤りが心中に溜まり燻ぶっている。

 

 だからだろうか。‘たまたま’見かけた同じ武偵高の生徒に助けを求めてしまったのは。 

普段なら、他人を巻き込むことに躊躇が生まれるはずなのに。

 

「おーい!そこの誰かッ!助けてくれ!!」

 

そう叫んでしまったのは。

しかし、次の瞬間。オレを襲ったのは後悔でも罪悪感でもなく、爆弾が取り付けられていると気付いた時にも感じた、あの‘寒気’だった。

 

「お前の命の値段はいくらかなー?」

 

 赤く染めたであろう短髪に、肩に掛かる襟足。どこかの優男とタメを張るような整った顔立ち。そんな男が不敵に笑いながら呟くように言葉を吐いた。次の瞬間。

 

赤髪の男はその場から姿を消していたのだ。

オレの隣を併走していたUziを積んだセグウェイと共に。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

「いやいやいや。良いことした後ってのは気分がいいなぁ、おい」

 

 今にも鼻歌を歌い出しそうな程上機嫌な俺は、背後に転がるセグウェイだったモノをゴミ箱に“飛ばし”再び歩き始めた。  

 

 目的地はさっきの必死な青年と同じであろう『東京武偵高』。今日から新学期という話で、校長から2年A組の教室に来るよう言われている訳だ。

正直ブッチしても構わないんだが、これもお金のため。

 誠心誠意働かしてもらうとしましょうかね。

 

 道中巨大な爆発音やら、度重なる発砲音が聞こえてきたがなんのその。 俺と関係ないなら無問題。

 あらかじめ覚えておいた脳内地図と照らし合わせながら、俺は教室へと進んでいく。

 

 

 ‘特別な学生’としての生活第一歩を踏み出すために。

 

 

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