東京武偵高校2年A組教室。そこは今、普段の喧騒が嘘のように静まりかえっていた。
本来、彼彼女等がいかに特別とは言え、まだ16、7の未熟な子供。朝から行われるHRは、担任による注意二回目辺りでようやく会話が止むのが常。
それがどこの学校風景でも見当たる普通の光景。
しかし、稀に担任の注意無しで生徒が自主的に静まる事もある。
例えば自分達のクラスに新しい仲間がやってくる時。
謎な事に大抵クラスには情報通な生徒が一人配置されている。その生徒が最新の情報を仕入れ、発信する事によって担任の口から報告される前には既に、皆がその情報を持っている状態が出来上がる。
普通の学校でも上記のような感じなのだから、ここ武偵高だと尚更だ。
なんと言ってもこの学校。名の通り『武装探偵』、通称武偵の卵を育成する機関なのだ。
調査はお手の物で、当然一週間程前から様々な情報と共に校内を飛び交っていた。
「一般高から編入して来る命知らずの転校生」
「校長のお気に入り」
「素人武偵」………etc.
否定的な噂の方が多く流れているのも無理はないのだろう。
武偵は銃器や刀剣類などの武器を扱うことが多い。いかに、防弾防刃装備を着用していようと命を落とす事も有り得るのだ。
半端な気持ちではやっていけない職業だからこそ、今まで平和に暮らしてきた普通の高校生に対してどうしても否定的になってしまう。
とはいえ、やはり自分のクラスに入ってくる新しい‘仲間’が果たして、どのような人間なのかというのも気にはなる。
そのような結果、今2年A組の教室は妙な静けさに包まれているのだった。
実際は、転入生以前にこのクラスで、神崎.H.アリアという女生徒が発砲したのも原因の一つだったりするのだがそれはまた別の話。
「えーっと……。じ、じゃあもう一回注目ー。皆さんにもう一つ嬉しいお知らせがありまーす」
2年A組の静けさを破ったのは担任、高天原ゆとり女史の穏やかな声だった。
チラリとピンクのツインテールが特徴的な件の女生徒と、隣でうなだれている、陰のある男子生徒を一瞥し、一言。
「新しい仲間がこのクラスにやって来ましたよー」
この時既に、誰一人として担任を見ている者はおらず。それに気がついていた高天原女史も涙目になりながら続けた。
「うん…。えっと………巳釧くーん…入ってきて~」
「はいよー」
呑気な返事が聞こえたと同時に扉が音を立て開いた。
入ってきた生徒は赤い髪が特徴的な男子生徒。
興味深々といった生徒達の内、ある女生徒は「イケメン……」などと小声で呟き。ある男子生徒は「ちっ…。抹殺対象が増えた…」と物騒な呟きを。
先程までうなだれていた、遠山キンジは転校生を二度見。
隣に座っていた神崎.H.アリアは息をのんでいた。
「えーっ、初めまして。巳釧隆一と言います。自己紹介は面倒くさいんで割愛。その代わり五つだけ質問に答えるんでご勘弁。………はい、それじゃあ質問ある人ー」
しばらくの静けさの後、そろそろと女生徒が手を挙げた。
「おっ。そこの女の子どーぞ」
「今ぁ~……彼女はいますかぁ?」
「いないけど?」
「「キャアアアァァ!!」」
クラスの八割の女子が突如叫んだ瞬間、約一名恐怖に震える男子が一人。
そう。遠山キンジだ。 彼は女子が苦手なのか、耳を塞ぎ今にもうずくまりそうな、そんな勢いで机に頭を伏せる。
しかし、そんな叫び声なんて何のその、今度は別の女子が立ち上がった。
「じゃあじゃあ、一般校からの転入って本当?」
「本当だな」
巳釧隆一もまた、気にした風もなく平然と答える。その態度が、極一部の非モテ男子に睨まれるとも気付かずに。
「はいーはーい!学科とランクは?」
「学科ってーとアレか?強襲科とか探偵科とかの」
「そうそう!で?巳釧君は何科の何ランク?」
「確か……強襲科の…S、だったかな」