俺はゲームの主人公?   作:abd

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因縁

 時刻は午前10時を回った頃。屋上にさす朗らかな陽光に身を包み、俺は現実から夢の世界へ逃げ出そうとしていた。

 

 今頃我がクラスメイト共は、机に向かって現実と向き合っているのだろう。しかし、人間イヤな事から逃げだしたくなるモンだ。

 嫌な事でも我慢を繰り返し、募り募るストレスの先にある未来は、禿散らかすような将来だけ。

俺は無毛地帯なんてゴメンなんだよ。

どうやってストレス解消するのか?ではなく。そもそもストレスを受けない環境作りってのは大切な事だと思うぞ。

 よって一限目の数学を受けた時点で俺はギブアップ。だったらサボタージュ決め込む以外に道はないだろ?

 そもそもつい最近まで、俺の最終学歴が‘中卒’だったのも勉強から逃げ出した結果なワケで。自由を謳歌したかったってのも有るんだが……七割り逃げ。

そんな俺に真面目に授業を受けろなんて、土台無理な話なんだ。

 

 

 

 

「それにしても……武装探偵、武偵…ねぇ。現実的な正義の味方ってか?」

 

 思い出すのは、予め配布されていたパンフレットの内容。

『武装探偵、通称‘武偵’は凶悪化する犯罪に対抗して新設された国家資格の一つ。武偵免許を持つ者は武装の許可や逮捕権を有するなど警察に準ずる活動ができる。しかしその一方で、武偵は金で動くと言った便利屋的な側面も。

 武偵憲章─────国際武偵連盟が発足時に作成した武偵の心得。全部で十条あり、武偵は常にコレを胸に行動すること。

 

 一、仲間を信じ仲間を助けよ。

 二、依頼人との契約は絶対守れ。

 三、強くあれ。但し、その前に正しくあれ。

 四、武偵は自立せよ。要請なき手出しは無用の事。

 五、行動に疾くあれ。先手必勝を旨とすべし。

 六、自ら考え、自ら行動せよ。

 七、悲観論で備え、楽観論で行動せよ。

 八、任務は、その裏の裏まで完遂すべし。

 九、世界に雄飛せよ。人種、国籍の別なく共闘すべし。

 十、諦めるな、武偵は決して諦めるな。

 以上十条武偵の心得より。』

 

 つまり武偵ってのは、利益を求める警察みたいなモノ。まぁ殆ど“今まで”と変わりはないって事だ。

 

「気楽にやっていこっかねー?」

 

「何をよ?」

 

「………あぁ…やっぱ耳鼻科行くべきか…?幻聴が…治まらない……」

 

「安心しなさい。それは幻聴じゃなくてアタシの声なんだから」

 

 まるでアニメのキャラクターのような高い声。

つまり只のアニメ声が俺に語りかける。

(この声どっかで……)なんて考えながらも視線を向けると、そこにいたのは同じクラスの小さな女生徒。

 

「確か………、神崎.H.アリアだっけ?」

 

「よく覚えてたわね。名乗ったのは一年も前なのに」 

 

 一年、と言ったところで意味ありげにニヤリとした神崎に俺も合わせるようにニヤリとしながら言う。

 

「フッ…。当たり前ですよ。美人の名前を忘れる程、愚かではありませんので…っと」

 

 ヘッドスプリングで跳ね上がる。この時の気分はさながら英国紳士。

 振り返ったとき神崎の顔が真っ赤になっていたが気にしないでおいてやろう。

そう。紳士なんだ、俺は。

 

「……で?何しにきたんだ?お前は。まさか俺にパンツ見せに来ただけなワケじゃねぇよなー?」

 

 そう言った瞬間真っ赤だった顔が更に朱に染まり、ガキのように地団駄を踏む。

 形も只でさえガキっぽいんだ。行動までガキっぽいと本当にガキにしか見えなくなっちまうよ。

素敵な紳士だから口には出さないけども。

 

「ア、ア、アンタねぇ…!当たり前でしょ!この変態!犯罪者!聞きたいことがあって来たのよ!」

 

「へぇー。聞きたいこと、ねぇ?‘コレ’次第じゃ答えないこともないけど?」

 

 人差し指と親指で輪っかを作って見せつける。

 

「ぐっ……後払いよ!情報の価値に見合った報酬を出すわ!」

 

「りょーかい。んで?聞きたい事ってのは?」

 

「ゴホン……!…まず一つ。どうしてアンタ───“裏の便利屋”が武偵高にいるワケ?」

 

 聞いた瞬間俺は後悔した。

 今まで意図的に耳に入れないようにしていた厨二病的単語を、シリアスシーンで言われてしまったのだ。

今すぐ逃げ出したい!そしてコイツはなんで恥ずかしげもなく、裏の便利屋なんて言えるんだ!?だいたい裏の便利屋って!裏も表も俺タダの便利屋ですからー!

 しかし、そこはポーカーフェイスが十八番の俺。

 不適に笑いながら、

 

「依頼だ」

 

 なんて言っちゃったりして、更に内心で身悶える。

 

「あっそう。……じゃあ、二つ目。依頼内容を教えなさい。内容によったら今度こそ……アンタを逮捕してみせる!」

 

「まぁ無理だろうが…「なんですってぇ!?」…敢えて言わせてもらおう。────だが断る!」

 

 声高に断言したおれに、今にも発砲しそうな勢いの神崎。

 

「なんとなくこうなるとは思ってたわ…!いいわ!アタシと勝負しなさい!」

 

 しかしなんとか堪えたのか、ドーン、と効果音が付きそうなほど堂々と神崎はふんぞり返りそう言った。

 

「いいだろう。その勝負…乗った!」

 

 俺もまた、ドーンと効果音が付くぐらいの勢いでふんぞり返って言ったのだ。場の空気に流されて。

(あぁぁ……なんてめんどくさい事を……。俺って奴は……)

 コレが所謂NOと言えない日本人なのか…。

 

 中と外の温度差が広がりつつも、俺は神崎の話をぼんやりと聞いていたのだった。

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