「決闘、か……。なんて古風な。おまけにハンカチなんて投げつけてきやがるし……」
辺りはもうすっかり日も沈み、暗がりを月の光が照らし出す頃合い。
時間が経つにつれ太陽が西へと沈むように、俺のテンションもすっかり沈み込んでいた。
戦闘自体は嫌いではない。むしろ好きよりなんだが……。
どうしてだろうか。‘決闘’の響きが面倒くさがり気質の身体に、ダルさを押し付けるのだ。
いっそ逃げ出してしまうか……?そんな考えが脳裏を過る。と言うよりそっち一択で脳内議員は可決を推し進める。
しかし、去り際に放った神崎の一言がどうしても忘れられない。
「逃げたら、承知しないわよ!あんたが泣こうが喚こうが、何時までも追い続けるんだから!!」
軽く恐怖だ。今夜悪夢として夢に見そうなくらい。
「地の果てまで」ではなく「何時までも」と来たもんだから、その執念を伺える。
いや、できれば伺いたくはないんだけども。
「しかしまぁ、よく覚えていたもんだな俺の顔なんて」
確か俺が神崎と出会ったのは、約1年前。丁度便利屋を初めて最初の依頼で出向いた、ロンドンだったはずだ。あの時は、お嬢さん今いくつー?なんて聞いて、攻撃にキレがかかって死にかけたっけな。いやいや懐かしいねー全く。
その後調べた情報によると、どうやら神崎は海外でも有名なSランク武貞らしく…二つ名なんてのも持っているらしい。「双剣双銃のアリア」。
二つ名って……信じらんねぇ。よく堪えられるな……。俺だったら付けた奴見つけ出して速攻ゴミに変えるのに。
え?裏の便利屋?あぁ勿論可燃物として灰にしたぞ。
それよりも明日の決闘だ。
作戦は……考えた事ないわ。準備は……特にこれといったモノはないな……。
(敢えてするべき事と言えば───────寝る、か?)
思考を巡らせていると、時刻は既に9時過ぎに。少し早いが、まぁ損をするわけではないし。
ゆっくり休ませていただきましょうかねー。
「あっ、塩まいとかんとな」
こうして俺の夜は更けていった──────────。
朝、なぜかとてもスッキリした気分で眼を醒ました俺は、気分よく時計に視線を送ってみた。
[11時5分]
うん。そりゃスッキリしとるがな。14時間も寝てんだもん。気分もいいわ。
「ふぁ~あ……。行くかー……」
何だかんだ言って、あのガキに逃げたなんて思われんのも癪だしな。
内心でぼやきながらも、のろのろと準備をして部屋を出る。
決闘とやらの時刻は13時ジャスト。武偵高は1限目から4限目までが一般科目。
その後の昼休みを隔てた5限目からが、各々の履修科目による実習授業という感じだ。
俺の履修科目は強襲科で、通称‘明日無き学科’と呼ばれるハズレ学科。どうやら噂では、生存確率97、1%とな。一体全体どんだけ面倒くさい事をしているのやら……理解に苦しむ。
そして俺を知らぬ間にこの学科に入れ込んだ、あのオッサンも理解しがたい。
というより引く。勝手にランクと学科決められてんだからな。本人の希望もなにも聞かずに。
そりゃ引くわ。
ウォーミングアップがてらに学校まで歩いていると着いた頃には、いい時間に。
と言うわけで指定されていた、第一体育館へと足を運んだのだが…………。
「なんだこりゃ…………」
人、人、人。見る限りかなりの人が体育館に集まっている。入り口からはみ出す程の人の群れや、二階の窓から見ようとしてか、何脚あるかわからないような脚立に乗って覗き込む馬鹿共。
てかその脚立絶対市販じゃ売ってないだろ。レスキュー隊からパクってきたのか?
だが、疑問もたくさんあるが同時に分かった事もある。
それは今更ながらに気づく揺るぎない事実。
武偵高の生徒は馬鹿ばかり。そんな事を今更認識する俺、巳釧隆一であった。