何故だ。どうしてこうなった。そんな疑問をさっきから何度脳内で叫び、訴えただろうか。
俺の立つ現状は、面倒くささ極まりない状況……やっべ、こりゃ禿げるかもしれん。それほど今の状況は面倒くさい。
スケートリンクみたいな楕円形のフィールドの中央に棒立ちの俺と、相変わらず自信のせいかふんぞり返るように立つ豆粒ドチビ。もとい神崎.Hアリア。
それと防弾ガラスの向こうに虫のように集る武偵高の生徒たち。
その合間にゃあ、どっから聞き付けたのか武偵高の教師陣までいやがる。
「まぁしょうがないっちゃ、しょうがないか…………」
どうやらクラスの連中から聞いたが、俺の転入してくる前にいろいろな噂が流れていたようなのだ。曰く、校長のお気に入りだとか。一般高から転校してくる命知らずだとか。
まぁ実際、俺が校長のオッサンにスカウト?されて武偵高に入ったのは事実。そして書類上は一般高からの転校になってもいる。
オマケにそんな奴が、入って早々強襲科のSランクと来たもんだ。
そりゃ誰だって気になるだろうよ。
誰だって気になるんだろうが……一つ言わせてくれ。
(暇人かよ……)
「最初はまた逃げ出したかと思ったけど……良く来たわね。誉めてあげるわ」
思考の海にフルダイブを極め込む俺に、これまた偉そうな発言の神崎。
「お前な…………三下臭醸し出してんじゃねぇよ……。なんかスッゲー負けフラグたってんぞ?」
「なっ!うるさいわね!だいたい─────────!」
俺の発言が気に触ったのか、神崎がギャーギャー喚きたてる。それがさらに三下臭を醸し出しているのだが……言わないでおいてやろう。知らぬが仏って言葉も有るわけだしな。
「──────────ア!ン!タ!ねぇ!人の話はちゃんと聞きなさいよ!人としての礼儀でしょう!?」
コイツに人としての礼儀を語られるのは非常に違和感があるが、まぁその通りだ。
だからこそ言わせてもらおう。
「ゴチャゴチャ言ってないでかかってきな。俺は何時でも準備OKだぜ?」
鳥肌が……!鳥肌が止まんないぜッ!!自分で言っといてアレだけど!
「いい度胸じゃない……!どっちが三下か身体に教え込んでやるわ!」
そういい放った瞬間、脱兎の如く駆け出した神崎。両手には銀と黒の大型拳銃。
それを水平に構えながら立て続けに発砲してくる。
流石に拳銃の種類迄は俺には分からないが……。というより、見ただけじゃ種類なんてわかんねぇよ。
俺は“拳銃には詳しく”ないんだ。
「よっ……と」
俺も意識を切り替えて軽い掛け声と共に、しゃがんで4発の銃弾を避ける。
しかし相変わらず恐ろしい奴だ。牽制目的であろう銃弾は全て、俺の頭部があった位置に。
殺す気か、と訪ねたい。
10メートル近くあった距離は、一瞬にしてほぼ0へ。
距離を詰めた神崎はここでも左右一発ずつ発砲。狙いは、またしても俺の頭部。
「殺す気かよ……」
それをしゃがんだ体勢で右足を軸に、クルンと回転して神崎の後ろに回り込みながら回避。そのついでに膝の裏に軽く手刀を決める。
「くっ……!」
急に脱力した片足──────所謂膝かっくん──────を逆に利用して神崎は、倒れ込むように蹴りを放つ。しかし、予想していた俺も上体を出来るだけ反らしつつ両手を後ろに付き、ヘッドスプリングで跳ね起きて、そのままバックステップで後退。
神崎も体勢をなんとか維持して跳ね起きバックステップ。バリッ、バリッ!と牽制で発砲するのも忘れない。
ってまた狙い頭かよ!殺す気だよな!?このくそ女!
「ほっ!」
内心で正直殺す勢いでかかってくる神崎に若干の恐怖を覚えつつ、懐から右手用の特注グローブを取り出す。
同時に軽く半身をいなして銃弾を避けつつ装着。
「今度はこっちの番だッ……!」
自分のトップスピードで神崎へと肉薄。この間神崎が発砲しているのだが、そんなもの当たる訳がない。この僅か5、6メートルの距離で俺のトップスピードなんぞ出したら、神崎からしたら消えて見えるだろうよ。
「お、わ、りぃ!」
そして、「お」の時点で右手の銃を。「わ」の時点で左手の銃を掌打で弾く。「りぃ!」の掛け声と共に右手を掴んで、上段回し蹴りの要領で首に足をかけ、体重をかけて倒した神崎にそのまま腕十字固め。
必死に抜け出そうとするが、それは無理な話だ。俺の腕力値は今でさえ半端じゃねぇんだしよ。
「確か神崎はバリツの達人だったろうけど、よ。この状態じゃどうしようもないぜー?大人しく降参しときな」
「ぐぬぬぬッ……!だ、れ、が、降参なんてするもんですか……!」
そう言って、神崎の抵抗が心なしか強まる。まだまだ涼しいもんだが…………めんどくせぇな。
落とすなり、腕を折るなりなんとでもできるが、一応こいつも美少女だ。
ギブアップと言わせた方が後味はいいんだよなー……。
(あの方法使うか……)
正直躊躇われる。今から俺のする事は。
しかし、たった今俺の思い付く方法で穏便な方法はコレしかないのだ……!
イヤイヤでもするしかないんだ……!
そうして俺は、イヤイヤ。致し方なく行動に移す。
「ぬフフっ!か、神崎たんの柔らかい身体気持ちいいんだな……!」
空 気 が 死 ん だ 。
「へっ…………?」
フッと神崎の身体から力が抜けたのを感じた俺は、コレを好機と‘仕方なく’続ける。
「ぺ、ペロペロしてやりたいんだな……!て言うかするんだなッ……!」
「ギ、ギブアップよ!!お願い……!ギブアップさせてッ!」
こうして僅かな時間でアッサリと、俺と神崎の決闘は俺の勝利という形で幕を閉じた。
しかし、俺の失った人として大切な何かは、未来永劫取り返すことはできないのだった。