タイトル通りです。短いお話です。
※Pixivでも同タイトルで投稿しています。投稿テストも兼ねてますので、ご了承ください。
私は、海岸線にある廃墟へと足を踏み入れた。
初めて訪れたこの場所のとある部屋へ、私は迷わず真っ直ぐに向かう。そこはこの施設を管理する者の部屋だ。
……なぜ私はそれを知っている?
その部屋で、小さな写真立てを見つけた。埃をかぶり、写真を守るはずの硝子板は僅かを残してほとんど無くなっている。
埃がひどくて写真がよく見えない。
私は窓際へと移動する。割れた窓から差し込む月明かりを借りて、ようやくぼんやりと、人物の輪郭が浮かんだ。
きっちりとした服を着た男性と、制服を着た少女だろうか。
自分の服が汚れるのも気にせずに、裾で埃を拭う。もう一度、月明かりのもとで、写真を見た。
私は、目を見開く。
誰だ、これは。
見覚えが……ある?
たしか、今朝、見た。
出掛ける前にも、見た記憶がある。
いや、記憶があるとか、見覚えがあるとか、そういう問題じゃない。
これは……これは、私だ。
あまりにも似過ぎている。
なぜ、私が、写っている?
隣の少女は誰だ?
ここはなんだ?
私は何をしている?
よく似た別人だという可能性は、最初から考えなかった。これは自分だと、確信さえしている。
写真を眺め、思考に嵌る。
気が付けば、外から聞こえていた波の音が消えていた。とても静かで、時計の秒針がうるさく思える。
――時計? 私は時計など持ってきていない。廃墟に、動く時計などあるはずがない。じゃあなんだ、この音は。
気になった私は写真から目を逸らし、周囲を見て、言葉を失った。
どこだ、ここは?
さっきまで私は廃墟にいたはずなのに、そこは立派な部屋になっていた。明るいのは、陽射しのせいか。窓も、硝子がはめられていて、きちんと機能している。そのまま外を見ると、波間が眩しかった。
私はさらに混乱した。手元へ視線を戻すと、真新しい写真立てに先程の写真が収まっている。埃など見当たらない。
なんだ、これは。
私は夢でも見ているのだろうか。目を閉じ、その場に座り込む。頭を抱え、歯を食い縛り、必死に夢から覚めるように、心で念じる。意味があるかもわからないのに、それを繰り返す。
繰り返す。繰り返す。繰り返す。くり返す。くりかえす。くりかえ――
「あの、どうしたんですか?」
……誰だ?
女の声が聞こえた。幼いが、芯のある声だった。
なんだろう。この声はとても落ちつく。聞き覚えのある声だ。
「頭でも痛いんですか?」
私は、この声の主を、知って――
〔提督が、鎮守府に着任しました。これより艦隊の指揮に入ります。〕