本当は少しだけの予定だった話が予想以上に長くなったので一旦区切っての投稿。設定はけっこう行き当たりバッタリですのでご容赦を。
戦闘描写は無知なのでそこらへんは脳内補完してください!(懇願)
俺が目を覚ますと、そこは真っ赤な空が一面に広がる世界だった。
「?」
俺は立ち上がり辺りを見渡すが、周りは瓦礫だらけであり、ここがどこか皆目見当もつかない。
「戦争中。っとかか?」
周囲にある建物は崩れているものや、かろうじて建ってはいるがすぐにでも崩壊しそうなものばかりだ。
どちらかと言うと戦争をして敗戦した方の国って感じだが、いくら戦争の相手国だからってここまでするだろうか?
とにかく早いとここの場を離れた方がよさそうだな。
しかしよく見ると自分が着ているものも知らない服だ。どこかの学校の制服なのだろうか?
突然のことで頭が追いついていなかったが、なんとか冷静を取り戻してきた。俺は背中に重みを感じ、何かを背負っていることに気付く。
「これは…ライフルか?」
他になにか持っているのかと体を調べるとライフルの他に拳銃も所持していた。
なんだってこんなものを俺は…って考えていてもしかたないか。
俺はとりあえず周囲を調べようと考え歩き始めるが、目指す目標がないとどうにも効率が悪い。しかし今は歩くしかないのも事実。
それから俺は歩きながら思考を巡らせていたわけなのだが、なんとなく思い出してきた。
俺は学園の廊下で蓮華に思いっきり突き飛ばされ気を失ったのだ。つまりこれは夢の中と考えるが妥当だ。
しかし妙なのは俺の夢のはずなのに見覚えがない景色だらけだ。それに意識もはっきりしている。
夢であることには間違いないだろうが、どうにも違和感を感じるな。
「だれか、助けてよぉ。パパ、っぐす。ママァ」
俺は近くから男の子の声がするのに気付いた。声の主を見つけるために周囲を見渡すと、どことなく朱雀に似た少年を見つける。
少年は泣いているようだが、なんにせよこの夢が進展を見せたのはいい傾向だ。
俺は少年に声をかけるため足を進めようとしたところで他にもうひとつ人影があることに気付く。
俺は物陰に隠れながら二人を観察する。
その人影は、泣きながら歩いている少年に近づき声をかけた。
「大丈夫だよいっちゃん。困った時は私を見るの」
その少女にも見覚えがあった。おそらく少女の方は宇多良だろう。ということはもう一人の少年も朱雀で間違いないな。いっちゃん言ってるし。
しかしなぜこんなところにあの二人が?歳はみたところ幼稚園から小学校低学年くらいだろうか。
この世界は過去、なのか?しかしこんな世紀末な世界俺は知らんぞ。
ただ見ているのもあれだな、接触を図ってみるか。俺は周りに注意しながら二人に近づいていく。
俺がある程度近づくと朱雀は俺に気づき、泣き顔で俺の顔をじっと見つめてくる。朱雀の様子が変わったことで気付いたのか、宇多良も俺の方に顔を向けた。
「お前らこんなところで何やってるんだ?」
俺が声をかけると、宇多良は笑顔で「みんなとはぐれちゃったんです」と笑った。まあこいつは困ったときこそ笑顔マンだから(いつでも笑顔マンでもあるけど)こんだけ笑顔という事は困っているということか?
このわけわからん性格は小さいうちに叱っておけば治ったりするのだろうか?
「なに笑ってんだ、お前らここで死ぬかもしれねぇんだぞ」
俺が脅すよう言うと、朱雀の方は「そ、そんな、助けて、ください」と途切れ途切れで言葉をつなぐ。そんな朱雀を宇多良は「よしよし」と頭を撫でる。
「いっちゃん!困った時こそ笑顔だよ!」
宇多良は朱雀に笑いかける。だめだ治る気がしない…。カナちゃん矯正計画第一弾失敗!
ってとにかく話を進めねぇとらちがあかん。
「あー、悪かった。っでそのみんなっていうのはどこにいるんだ?」
宇多良は大きな塔を指差す。あんなのさっきまであったか?全然気づかなかったぞ。もしかして話が進んだから出現したとかか?なにそれゲームみたい。
まあいい、とりあえず目的地は決まったな。
ふと俺は手に温もりを感じた。下を見ると二人が俺の左右の手を握っている。
朱雀は泣きそうな顔で「助けて、お兄ちゃん」と声をかけてくる。それは卑怯だろう。
宇多良の方は「えへへ」と笑いかけてくる。しかし、俺は宇多良の手が震えていることに気づいてしまった。
ったく。まるで新しい妹と弟ができたみたいだ。しょうがない、お兄ちゃん頑張っちゃうか。
それにどちらにしてもこの夢を先に進めるためにはあの塔に行く必要がありそうだ。俺は二人の手をしっかり握り、大きな塔を目指し歩き始めた。
俺は今、得体の知れない生物をライフルで撃ち抜いていた。朱雀と宇多良の二人は俺の後ろにぴったりくっついて耳をふさいでいる。
「なんなんだこいつら」
地球上の生物にはとても思えない。俺に突っ込んでくるため迎え撃つ他ないのだが、なぜかそれ以外に仕掛けてくる気配もない。
目的は俺たちを倒すことじゃない?しかしそれなら突っ込んでくる理由も分からん。
それとも…。俺は後ろの二人を見る。こいつらが俺の近くにいるから攻撃できないとかか?
それにしてもこのライフル。驚くほど俺に馴染んでいる。おかしいな、俺ライフルなんて使ったことないのに。まさかこれが主人公補正!?
さっきからずっと使っているが銃弾もきれない。夢の中だからこそのご都合主義だろうか。
霞「これで最後か」
こちらに向かってくる謎の生物をライフルで撃ちぬき、俺は周りに敵影がいないか確認する。
敵の気配はない、一端はなんとかなったみたいだな。俺は後ろにいる二人に「終わったぞ」と声をかける。
「すごい、お兄ちゃん全部倒しちゃったの?」
朱雀は目をキラキラさせながら俺に羨望の眼差しを向けてくる。今の朱雀が見たら恥ずかしさで俺をぶん殴りに来るまであるな。
俺は朱雀の頭に手を置き、「おまえもいつか強くなれる。大切なものを守り抜けるように」と声をかけた。やだ中二病発症しちゃってない?恥ずかしさのあまり今すぐ現実世界の朱雀をぶん殴りに行きたい気分だ。
「ほんと?」
「きっとだ」
俺は周囲は見渡す。気になるのは先ほどの奴らだ。この世界の惨状は奴らによるものと考られるが、奴らの目的はなんだ?
だめだ、情報が少なすぎる。とにかく今は進むことを考えるべきか。
俺が歩き出すと二人ともしっかり後ろをついてくる。二人の様子は先ほどまでよりか落ち着きを見せており、不安そうな顔をみせる回数も幾分か減った、気がする。
目的地は大きな塔、そこに何があるのかは分からないが、みんなとやらのところにこいつらを送り届けるのが当面の目的だ。
少し歩いたところで自分の手を引っ張られるのを感じた。俺は後ろを確認する。手を引っ張っていたのは宇多良のようだが、宇多良の顔を見ると遠くを見ているのに気付く。
「お兄さんあれなんだろう?」
宇多良が指差す方角を確認すると、そこにはこちらの様子を見ている生物がいた。先ほどまで戦っていた謎の生物と同じ雰囲気ではあるのだが。
「人型…」
皮膚があるわけでもないし人ではないのだが、その生物の形状はたしかに人型だった。ほんとなんなんだこいつら。
警戒をしながら逃げるように後方へ下がろうとすると、その人型は手を前に突き出した。
「なにかくる?」
その瞬間周囲から敵が複数体飛び出してくる。俺は即座にライフルを構え、後方にいた敵に向かって発泡する。敵を倒したことを確認すると、俺は二人の手を掴み走り出した。
走りながら後ろを確認すると、敵の一体が体の一部を光らせている。何かしてくる気か?理由は分からないが先ほどまではただ俺に向かって突っ込んでくるだけだったが、先ほどの人型がなにかするように指示したのか?
光が収束している、まずいか?そう思い俺たちはビルの陰に隠れるように飛び込んだ。
その一瞬後、俺たちがいたところに赤いレーザービームみたいなものが直撃し、ビームの着地点が爆発する。
「おいおい、完全にやりにきてんじゃねぇか」
俺はビルから顔を出し、先ほどビームを打ってきた敵を撃ち抜く。その後すぐさま二人を物陰へ連れて行った。
「少しの間ここでじっとしてろ」
なんか蓮華につい先ほど言った気がするセリフだな。あいつは結局勝手に動いたけど。
「お兄ちゃんは?」
朱雀は震えながら俺の裾を掴む。俺は朱雀の頭に手を置き、「ちょっと悪い奴らと戦ってくる」そう言い宇多良の方へ視線を向ける。
「俺は少し離れるが待っててくれるか?」
「うん!」
いつもの笑顔で送り出してくれている。宇多良は朱雀の手を握り、安心させるように声をかけた。
「いっちゃん大丈夫だよ、私がついてるから」
「カナリアおねぇちゃん」
なんとなく年上っぽい立ち振舞してると思ったが、ほんとに朱雀より年上だったのか。
とにかくここを離れねぇと敵に見つかっちまう。
「おとなしくしてろよ」
俺はそれだけ言い、敵がいた場所へ走り出す。あの人型を倒せば道は開けるはずだ。もちろん倒せるのかは分からない。しかし試してみるしかない。
すぐに敵影は確認できた。敵の数は全部で6体。しかしその中に人型の姿はなかった。人型のことはあとで考えよう。まずは目の前の敵だ。
俺はビルの陰から敵を捕捉しライフルで打つ。まずは1匹目。その音でこちらの居場所に気づいた他の5体がこちらめがけて光線を放ってくる。
しかし狙いが単調だ。俺がいるところめがけて放ってきているため少し移動するだけで回避できる。頭はあまり良くないのか?俺はすぐさま2匹目・3匹目と倒していく。
こうなってくると問題は人型か。やつはどこに…。
突如、俺の背後から何者かがすごいスピードで近づいている音がする。やばいと思いとっさに体を横に跳ね除ける。なにかが通り過ぎ、その際俺の頬になにかが掠れる感覚が伝わった。俺の頬からは血が滴り落ちている 。
突っ込んできた正体を確認すると、先ほどいた人型が俺の目の前に立ちふさがっていた。
お出ましか、そのままどこかに行ってて欲しかったが、そううまくはいかないようだ。
俺は人型に向かいライフル構えるが、人型は一気に距離を縮めてくる。やはり人型の方が知能指数は他よりあると見て間違いなさそうだ。俺は近づいてくる人型の腹をめがけてライフルをぶっ放す。
人型は手と思われる箇所(しかしまるで刀のような形状)で銃弾を真っ二つに切った。
「はは、まじかよ」
俺はすぐさまもう少し下に照準をずらし、今度は足をめがけて銃弾を発射する。人型は右にステップし見事にかわしてなおもこちらに突進してきた。
人型が刀のような左手を俺の首元めがけて横薙ぎしてきたため、俺は間一髪しゃがむことで回避するが、そこを周りにいた敵に狙いうちにされる。
俺は横に飛び退くことで直撃は避けれたが爆風に巻き込まれ地面を転がる。
ゴホッゴホッと咳をしながらもなんとか相手の方に体を向け警戒体制をとる。
「これまじできっつ」
またも人型が俺に突っ込んできたところで横から声が聞こえてきた。
「お兄ちゃん!」
「お兄さん…」
しまった!いつの間にかこいつらの近くまで来てしまっていたのか!
俺の状況を見て二人はこちらに走ってきてしまう。
「馬鹿野郎…」
俺は相手の方に視線を戻すと、人型は二人に気づいたのか一瞬視線が俺から外れる。俺はその一瞬を見逃さずにすぐさまライフルで足を撃つ。
発射された銃弾はしっかり人型の足に命中。相手の動きが止まったところをさらに追い討ちをかけようとするが、またも周りの敵からビームが発射され邪魔をされてしまう。
「先にあいつらを倒さねぇとらちがあかねぇ」
だがちゃんとダメージがあるというのは朗報だ。
そうこうしているうちに二人が俺のところまできてしまった。
「お兄ちゃん血でてる!」
朱雀が俺の頬を見て心配をしてくる。俺は朱雀の顔を見て感慨に浸る。いやぁ小さい頃のお前はこんなにいい子なのになぁ、今の朱雀には面影すらないのが解せない。
「とにかく下がってろ」
視線を前に戻すと少し目を離した隙に相手はいつの間にか近くまで接近していた。
「しまった!」
俺は相手と同じミスをした自分を呪いながらライフルを構えようとするが、人型はもうすでに俺に向かって刃を振り下ろしていた。
俺はライフルを両手で持ち、振り下ろしてきた刃をライフルで受け止める。頑丈なライフルで助かったぜ。
「お前ら早く逃げろ!」
俺は目的の地である大きな塔を目線で示し、二人に自分たちだけで向かうよう指示する。この状況で二人だけにするのは抵抗があるが、ここにいるよりかは安全のはずだ。
「お、お兄ちゃん」
「いっちゃん行こう!」
宇多良は朱雀の手を取り塔に向かって走り出す。そうだ、それでいい。
俺はライフルにかかっている力を受け流すようにして相手の攻撃からなんとか逃げる。
人型のやつも周りのやつも二人には目もくれずこちらに警戒心を向けている。標的はなっているのは俺だけなのか?しかしそれならなお好都合か。
二人はすでに少し離れたところまで走りきっている。朱雀の方はしきりにこちらを気にしている様子だったが。
今はそんなことよりこっちをどうするかだな。
俺は後方に向かって走り出した。敵は俺をちゃんと追いかけてくれる。できる限りあいつらから離れとかないといつ気が変わるとも分からん。
追いかけてくる人型の動きは先ほどよりも鈍く感じる。足のダメージが効いてるのだろうか?
まあなんでもいい、とにかくチャンスだ。俺は振り返り人型に向かって銃弾を撃つ。ふりをして周りの敵の一匹を仕留める。
周りの敵はあと2匹。相手のビームを避けながら今度は人型の方に二発連射して足止め。次に俺は後ろではなく人型に向かって走り出す。相手は俺の行動に一瞬たじろいだように見えたが、すぐに俺を迎え打とうと刃を構えた。
そのまま動揺してくれてたらよかったんだが仕方ない。俺は走りながら拳銃を取り出し相手に顔に向かって連射する。人型は両手を顔の前に構え銃弾を防いだ。
だが今なら。俺はライフルを思いっきり人型の足元めがけて投げた。人型は顔を守っていたため前がうまく見えておらず、俺の投げたライフルを直に食らう。
もちろん大したダメージがあるとは思えないが、それでも体のバランスを崩すことには成功した。
崩れたところに俺は銃弾を人型の足をめがけて連射する。人型はたまらず後ろに後退した。
「逃がすかよ」
俺はさっきまで人型がいたところに落ちているライフルを拾いそのまま人型に向かって銃弾を発射する。人型はまだ防御体制も取れていない。
「やったか!」
フラグばりばりなセリフを吐きながらもちゃんと俺はライフルを構えたままである。
捉えたと思った銃弾は人型ではなく人型の前に飛び出してきた謎の生物二匹のうちの一匹にあたり、仕留めるのを邪魔される。やはりさっさと全部片付けておくべきだったか。
俺はさらにライフルの引き金を引いて最後の一匹も倒す。そのまま人型にライフルを向けようとするが人型はそのうちに颯爽と去ってしまっていた。
「逃げ足早すぎでしょ」
とりあえずなんとかなったか。俺は大きい溜息を一度つく。あの人型が他にもたくさんいるようなら正直これから厳しいな。
あの二人のことが心配だ。倒しきれなかった以上、あの人型の化け物が二人のところに向かった可能性だってある。
俺は塔を目指し歩き始めた。
そのあと20分ぐらい歩くと目的の塔までたどり着いた。わりと近かったな。ここに向かう道中ではさっきみたいなやつらも何匹か遭遇したが、人型に遭遇しなかったのが幸いし特に問題なく到着した。
目的の塔の入り口はシェルターが閉じられていた。俺は近づいて調べてみるがどう開けるのか検討がつかない。
「え?これ入れんの?」
中からしか開けれない構造っぽいんですけど…。最悪俺はいいけどあの二人はちゃんと中にはいれたのだろうか?
いや、無事入れたと考えておこう。それにしてもこれからどうするか、また目的がなくなってしまった。俺は周りを見渡すが特に目立ったものがはない。
俺が悩んでいると、急に先ほどまで閉まっていたシェルターが動き始める。中の人が開けてくれたのだろうか?とにかく助かった。このまま立ち往生しなきゃいけないかと思ったぜ。
シェルターが開くと、今度はドアが現れた。俺がドアに近づくと自動で開き始める。二人もちゃんとたどり着けてたとしたら大丈夫そうだが。
ドアが完全に開き、その先を見た俺は目を疑った。俺の頭が完全に回る前に、俺の左腕が切り落とされる。
その先にいたのは先ほど戦っていた人型の化け物だった。
「ぐぅっ!?」
俺は激しい痛みに見舞われ崩れ落ちる。しかし相手は俺を待ってはくれない。すぐに第二撃が振り下ろされる前に、俺は前へ転がり込む。
ライフルは左肩にかけていたため地面に転がってしまう。
俺は右手に拳銃を構えながら頭の中を整理する。こいつがここにいるってことはこの施設はもう敵の手に落ちたということか。じゃああいつらは?
くそったれが!俺は牽制で人型に発泡しながら施設の中に逃げ込む。
施設を少し走った先からまた新たな人影が現れた。しかしそれは敵ではなく。
「君!大丈夫か!」
「はぁっはぁっ、あんたらは普通の人間っぽいが」
前から来たのは軍人の服装に身を包んだ人間だと思われる男と。
「霞君、明日葉ちゃん、必ず…必ず取り返しに来るから…」
俺のよく知る女性だった。というか母さんだった。っていうか今と全然かわらねぇ。
俺が驚いていると後ろから先ほどの人型が追いついてきた。
「君!はやくこっちに!」
俺は言われるがままに軍人さんの後ろに隠れる。
「あなたひどい怪我じゃないですか!」
俺の母親である千種夜羽は、俺の左腕がないことに気づいたのか心配の声をかけてくる。母さんって他人の心配できたんだな。
「母さんは自分の心配だけしとけばいいんだよ」
確かにめちゃくちゃ痛いけど、そもそもこれは俺の夢だ。夢なのになんでこんな痛いのか謎なんですけど。
「母さん?」
しまったぁ。俺のことを母さんが知ってるはずないじゃん。俺が訂正しようとすると母さんが俺の顔をジィ〜っと見つめてくる。
「確かに顔は霞君に似てる気がするわね」
そりゃそうでしょうね、本人だもの。ってこんなまったりしてる場合じゃねぇだろ!
俺も拳銃を構え人型の迎撃に参加する。人型は姿勢を低くし完全にガード体制になっており、こちらから崩すのは難しそうだ。
「これからどうするつもりだ」
俺は牽制しながら母さんに尋ねる。母さんは少し言い淀んでいたが、しっかりと一旦ここの施設を放棄するらしいと伝える。
「この施設に知り合いの子供がいるはずなんだがどこにいるか分からないか?」
「ごめんなさい、でももうこの施設は手遅れよ。一旦引いて体制を整えてから子供たちを奪い返すしか」
子供たち。という事はあいつら以外にもここに子供がいるってことだろうな。あいつらもみんなこの塔にいるって言ってたし。
「そもそも助ける前に子供たちが殺される可能性はないのか?」
「その可能性は低いと考えられる。なぜかは分からないがやつらは子供たちに手を出してこないことが分かっているからな」
俺の質問に軍人の方が答えてくれる。確かにあの二人が無防備になっても基本俺にしか攻撃してこなかった。
完全に賭けだが、それに賭けたということか。
「他の連中は?」
「我々で最後だ」
軍人の方の銃がカチャッカチャッと空振りする音が聞こえる。
「もう弾切れか!」
え?この世界の銃って弾切れ起こすの?なにそれ斬新…。
人型の化け物はその隙を見逃さず、すぐさまこちらに飛び込んでくる。俺は拳銃を打つが片腕がないせいかうまく狙いが定まらない。
近づいてきた人型は前にいた軍人の首を一瞬で切り落とす。
さらに今度は母さん目掛けて刃を振り下ろそうとしやがる。
俺は母さんを庇うために敵との間に入り込み背中を刃で切られる。背中からは大量の血が流れ、俺は攻撃された勢いで母さんに倒れかかってしまうが、まだ倒れるわけにはいかない。
「大丈夫ですか!」
大丈夫なわけないんだよなぁ。しかし俺も男だ、大切な人の前では強がるのが性である。
「いいからはやく行って。こいつは俺が引き受けるから」
「そんな傷でなにができるというんですか!?」
「あんたはどうしても生き延びなきゃいけない理由があるんだろう」
そうこう言ってるうちにも人型はこちらに攻撃を仕掛けてくる。俺は拳銃を人型に向かって打つが見当違いのところにあたる。
止まらない人型の攻撃を避けようとするもうまく避けれず左の脇腹あたりをえぐられた。口から血が漏れる、意識も朦朧としてきた。
「母さんが逃げる時間ぐらい粘ってやる」
俺は今にも気を失いそうになる痛みを我慢しながら俺は最後の力を振り絞り拳銃を相手に構える。
「ッ!ごめんなさい霞君に似た人!」
やっと行ったか。あとはこいつの注意を引いておくだけだ。
母さんが人型の横を通り過ぎようとすると、やつもただ見ているわけではもちろんないので母さんに刃を振りかぶるが、その隙を見逃してやるほど俺は優しくはないんだよなぁ。
俺が相手の刃に弾を撃ち込んだため、人型の刃が振り降ろされる事はなかった。ちゃんと狙いのところに当たってよかった。
「おいおい俺以外のやつのことなんて考えんなよ、俺たち両思いだろ?」
人型は一瞬で俺の近くまで近づき、俺の拳銃を握っている右手を切り落とす。
なに?だるまプレイがお好みなの?ないわー超ないわー。でももうちょっと付き合ってあげるんだからね!
俺はその状態で敵に思いっきり突進し、思いっきり敵にかぶりつく。しかし固すぎて嚙みつけませんでした。
人型は俺を壁に突き飛ばす。俺はもう気を失ってしまいそうだったが、なんとか踏みとどまり壁に寄り添う形で立ち続ける。
もう体も動かせないくらい限界まできていた。俺のこの世界での役割もここまでかな?
「お兄ちゃん!」
声がした方向に視線を移動させると、そこには泣きそうになっている朱雀と宇多良の姿があった。
俺はその光景を最後に目を閉じる、その直後に俺の首は切り落とされたのだった。
訳わからんと思いながら今回の話を最後まで読んでくださった方ありがとうございます。前書きでも書きましたが最初は少しだけの予定だった話を広げちゃって1話になりました。
ご指摘等ありましたら聞きます。可能な限りは修正しますので。