とある一族の落ちこぼれ   作:勿忘草

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今回はジレンの強さを示す回でもあります。
あとは原作ではいいとこなしだった人の活躍。
そして第6宇宙のナメック星人の片割れの代わりになった戦士の登場です。


『ドクターたる所以』

「俺に喧嘩を売る奴はお前か、赤い犬」

 

俺様は戦う相手を探していた。

ようやく見つけた相手は不意打ち気味に攻撃を仕掛けてきた。

まあ、問題はない。

一番首はガタバルが取っていったがそこはこだわらない。

 

「一人でも多く落としておかないとな」

 

そう言ってブルーになって戦いを始める。

速いがそれでもあくまで超サイヤ人などで考えていればの話。

ブルーの俺ならば悠々と対応できる。

 

「『シャイニング・ブラスター』!!」

 

蹴りから赤い気弾を放つ。

だがその程度……

 

「ハアアアッ!!」

 

腕一本で弾き飛ばせる。

『ブラスター』の名を冠していても、あいつとじゃあ天地の差がある。

 

「ぐっ……」

 

遠距離では分が悪いと読んだのか。

距離を詰めて近接から蹴りを放つ。

連射砲のように継ぎ目がない。

休まず放つことでこちらの回避の穴、もしくは防御の穴をつく算段だ。

間違ってはいないが、それはあくまで拮抗していた場合の仮定。

 

「ふん!!」

 

足を掴んでジャイアントスイング。

そのまま上空へ放り投げて照準を合わせる。

 

「『ファイナルフラッシュ』!!」

 

光の奔流が敵を呑み込み場外へ突き落す。

ブルーだからこその瞬く間の打倒。

次の相手は……

 

「むっ!!」

 

歩こうとした瞬間に狙撃をされる。

回避はしたが頬をかすめていた。

どこに居やがる?

 

「遠ければ見渡せる場所にいくしかない」

 

そう言いながら進むが相手の影が見当たらない。

球体が浮いているのが見て取れる。

これが直接狙撃に関係していやがるな。

 

「これがスコープ代わりか?」

 

放り投げて砕いておく。

それ以外にも感知する手立てはありそうだが。

 

「あいつらのような千里眼があればな」

 

気の察知も難しい。

よく知った第7宇宙の奴らならいいが知らない宇宙の奴らなんてあてずっぽうもいい所だ。

 

「ちっ!!」

 

縦横無尽ではある。

だが気弾で相殺をしながら進むと見当違いの場所へ着弾している。

これで分かった。

熱とスコープの二段構えで感知をしている。

 

「動く的に当てるのは至難の業だ」

 

ましてやブルーの速度を当てるなんて砂漠で砂金を探すようなもの。

非常に難しい。

追尾型の気弾ならば可能だろうがな。

 

「あれは……」

 

一撃を避けるとちらりと影が見える。

反射してはいたがかなり近いところまで来ていたか。

 

「見つけたぜ」

 

俺は見失わないように相手の速度と己の速度を比較する。

そして距離との計算で導いた答えは……。

 

「この程度であれば問題ない」

 

悠々と追いつけるという事。

こそこそとしやがって気に食わないやつだ。

捕まえて場外に叩き落してやる。

足に力を込めて駆けだした。

 

.

.

 

さっきから当たらない場所に光線を打つ影があった。

きっと狙撃をするためにツーマンセルで動いている。

仮に一人ならば岩場などすべてをすり抜けた物理法則の無視が生まれる。

 

「フロストさんも落ちたし、僕が一人でも多く落とさないと」

 

そう言いながら岩場を駆けていく。

戦闘力は大したことない。

それは自分でもよく知っている。

でもこの大事な戦の一員になった以上、情けない事は言わない。

 

「あの人が折角シャンパ様に推薦してくれたんだから」

 

恩師であり何時までも心の中にいる英雄。

バーダックさんが強くなりたいといった僕に時折修行をつけてくれていた。

実力の上昇は僅かずつだった。

処世術で自分の非力さを補うものを手に入れて徐々に自分を磨いていた。

 

「それに報いて見せる」

 

次の光線の射出。

これで場所を割り出した。

岩場を駆け回ってあと少し。

 

「あの青髪の男、回避していやがる!!」

 

近くに行くと声を荒げていた。

その相手に不意打ちとも言うべきハイキックを決めていた。

 

「ぐあっ!!」

 

不意打ちだから回避もできずに地面へ叩きつけられる。

岩場だったから全身を打ち付けているだろう。

 

「お前……何者だ?」

 

痛みに歪んだ顔をしながらこちらを見てくる。

聞かれたら答えるのが常識だ。

 

「僕の名前はベリー、惑星プラントの男だ」

 

そう言って構える。

とは言っても自分から積極的にはいかずに様子を見る。

 

「ハアッ!!」

 

光線を撃ってくる。

近接距離が苦手なのか。

はたまた遠距離でこちらのペースに引きずり込まれないようにしているのか。

 

「体重が軽いからこその利点、速度で貴方を翻弄する」

 

光線を当てられずに焦る相手。

顎に一撃を加えて意識を刈り取りに行く。

 

「ぐっ……」

 

重くない拳は意識を刈り取るがダメージが残るわけではない。

ヘビーパンチャーならこの一撃で足をもつれさせることもできる。

 

「当たれぇ!!!!」

 

乱れ打ちだ。

そんなやけになって光線をいくら撃っても結果は同じ。

ひょいひょいと避けていく。

そしてがら空きになった腹部へ蹴りを叩き込み、顎を拳で跳ね上げる。

 

「ぬぐ……!!」

 

くらいながらも組みついている。

足を払っていく。

それで背中をつけさせて顔面を殴打するつもりなのだろう。

しかしこんな荒い動きだったら……

 

「甘い!!」

 

相手が払おうとした勢いを利用して足払い。

そのまま相手は自分の技と足払いによって加速した勢いのままに投げられていく。

頭を打ちつけさせるように体重をかけて叩きつける。

 

「ハア!!!!」

 

相手の体重と自分の体重。

そして投げの速度。

相手の頭の形状を意識して気絶させる威力を割り出す。

そして威力に関しては、相手の一撃を利用すれば巨竜も倒せる。

理詰めの戦法で貢献する。

 

「まずは一人目」

 

気絶した相手を見て勝利を確信。

場外へ投げる。

そして次の相手を探しにいくのだった。

 

.

.

 

「おい、ハーミラ!、どうしたんだ、ハーミラ!?」

 

そんな大きな声を出してはいけない。

既にバレてはいるが、仮にも狙撃手のパートナーならば慌てて居場所を分からせるなど愚の骨頂。

 

「こそこそとネズミのようにしやがって、虫唾が走るぜ」

 

ブルーの状態で気を高める。

一気に仕留めてやるぜ。

 

「このプランを馬鹿にするな!!」

 

そう言って相手が攻撃をしてくる。

しかし攻撃が相方任せ。

そして気弾反射という特殊能力のせいで肉弾戦が弱い。

拳を掴んでそのまま上空へ投げる。

特殊な力にかまけず努力をしないと伸びないぜ。

 

「うおっ!!」

 

相手の背中に肘打ちをして岩に叩きつける。

その一撃だけであっけなく決まった。

遠距離で戦う奴はやはりこのシチュエーションになると弱い。

 

「対して強くもなかったな」

 

プランという奴を場外へ吹っ飛ばして岩から降りる。

その瞬間、息が詰まる威圧感があった。

その出所は前方の灰色の肌を持った男。

 

後方からくるのは紫色の肌を持つ壮年の男性。

方向から考えて奴が狙撃手を倒していたのか。

 

「…」

 

構えてはいない。

だが来る。

その目をしていやがる。

 

「来やがれ!!」

 

その言葉と同時に空気が爆ぜる。

速度が空気を摩擦した。

こいつ……強い!!

 

「ぐっ!!」

 

ブルーになった状態のままで良かった。

解除したままだったらこの一撃で決着がついていた。

後ずさりするが異常な力だ。

破壊神の次元じゃあないのか?

もしくは……

 

「面白い……!!」

 

勝てば全宇宙はこの俺様だ。

そうと決まれば俄然やる気が出る。

 

「ハアアッ!!」

 

向かって行って拳を突き出すがバリアか何かで防がれる。

なるほど、超能力じゃあない。

気を高めて集中した結果か。

こんなのは初めてだぜ。

 

「フンッ!!」

 

一撃で罅を入れる。

そしてハイキックを寸分たがわず放って割ってやる。

こんなものも破れないと思ったか。

 

「少しはできるようだな…」

 

相手の気も高まる。

まだ全力ではない。

カカロットのように舐めているのではない。

どうやらエンジンがまだかかっていないだけだ。

 

「全力を出すまで待ってやるほど今日の俺は甘くない!!」

 

宇宙の消滅という重大な内容。

美学などいらない。

勝利という結果のため、誇りを捨てる。

 

「だあっ!!」

 

反応できていない。

エンジンがかかる前に殴り倒す。

 

「ぐっ……」

 

脇腹に一撃。

筋肉に阻まれたがまだ止めない。

 

「オラァ!!」

 

左アッパー。

右上段蹴り。

右フック。

左下段蹴り。

右正拳突き。

左前蹴り。

頭突き。

左後ろ回し蹴り。

 

数えること八度。

その怒涛の連撃に反撃すらさせない。

蹴りを喰らって横に流れる体を掴み、頭を地面へ叩きつける。

 

「ぬっ…」

 

さっきまでの連撃の手応え。

そして今の一撃で確信を得た。

この相手は想像以上に頑丈だ。

今の叩きつけでのダメージは裂傷も僅かで血も滲む程度。

随分と石頭のようだ。

 

「どうやら俺の7割と同格ぐらいのようだな」

 

追撃で放った俺の拳を受け止める。

そしてそのまま膝蹴りを放つ。

 

「がはっ……!!」

 

胃の内容物が逆流する。

とてつもない威力の蹴りだ。

さっきが半分ほどだったとしても伸び率がおかしい。

 

「このっ!!」

 

拳を振りかぶった瞬間、肘打ちを喰らう。

軌道が見えなかった。

これではうまく防御もできやしない。

 

「こいつ……」

 

ブルー状態の俺も見抜けない速度。

このレベルだと7割でもえげつない。

やはり予想通りの実力だ。

 

「ふっ!!」

 

顔へ繰り出す上段蹴りを避けて掴む。

そのままジャイアントスイングをするが……

 

「投げられはしない」

 

地面に手をつきその膂力のみで回転を止める。

そして足で挟み投げられて上空を舞う。

その勢いは身動きを取らせない。

脚力も全てが規格外だとこのわずかな探り合いで俺に示したのだ。

 

「終りだ」

 

手のひらの気弾を放とうとしている。

身動きが取れないせいで避けられない。

まさか、この俺がカカロットと戦う前に終わってしまうとは……

脱落する覚悟を決める。

するとひとつの影が灰色野郎を蹴り飛ばす。

 

「むっ……」

 

照準がずれて俺の方に気弾は来なかった。

しかし僅か横へ向かって行く一撃は背筋が寒くなるほどのものだった。

 

「どうやらあなた、バリアと攻撃は同時にできないようですね」

 

紫肌の男だ。

気を感じ取るがその実力だと殺されるぞ。

さらに後ろから猪のような奴が来ていた。

 

「ベリー君、気を付けたまえよ」

 

どうやら支援するタイプのようだが、どういった能力だ?

そして紫肌の男、ベリーとの戦いが始まる。

 

「フッ」

 

巨岩のごとく拳。

最短距離で届くようにストレートで放たれる。

実際のサイズはともかく威圧感が凄い。

しかしその一撃をベリーというやつは……

 

「はっ!!」

 

受け流して前蹴りを叩き込む。

その威力はあの男の拳の勢いを利用したのだろう。

体格に見合わない弩級のものだった。

 

「フッ!!」

 

ハイキックを受け止めて後ろに飛び、その勢いのまま延髄蹴り。

ぐらりと揺れて片膝をつく。

相手の攻撃力がそのまま突き刺さる。

そうなると片膝をつくのも納得だ。

 

「少々それができないようにするか」

 

そう言って再度拳を突き出すジレン。

それを見てベリーがカウンターを放つ。

しかしジレンがそれを回避してさらにカウンター。

 

「なんの!!」

 

それをひらりと避けてさらにカウンター。

ギリギリのように取れるが……

 

「こちらの番だ」

 

頭を下げてカウンターでアッパーを放つ。

勢いが徐々に互いの威力を利用しているから強くなっていく。

 

カウンター返しの応酬。

ジレンが攻撃の速度で徐々にベリーの反応速度を引き離して一撃を見舞う。

その一撃は前蹴り。

即座に判断したベリーは後ろへ飛んで威力を軽減するが…

 

「ぐえっ……」

 

片膝をつく。

やはり戦闘力の基礎において差が大きすぎる。

カウンターなど技術面でどうにか詰めてはいるものの、いかんともしがたい差が出来ている。

ましてや相手もその技術を使い始めたらそれはさらに顕著だ。

そして片膝をついたという事は…

 

「終りだ」

 

それは敗北を決定づける宣告。

気絶はこのルールでは敗北に当たらない。

しかし負けかと言われれば負けだろう。

 

「お前は弱くとも俺を熱くさせる稀有な男だった」

 

手を組んだ鉄槌がベリーの頭に振り下ろされる。

死ぬ事はルールとして相手もしない。

だから生死の問題については安心できる。

しかし見るからに思いその一撃はベリーの体をワンバウンドさせた。

意識を断ち切るには十分すぎるほどの威力だった。

 

「ぐあっ……」

 

流石のカウンターの名手も沈む。

そして顔を上げてこちらを見てジレンが言ってくる。

 

「お前たち二人にはなかなかに熱さを感じた、感謝する」

 

そう言って落とす事もなく俺達の前から去ろうとしていた。

コケにされた気分だと苛立ちを感じる。

しかし次の瞬間……

 

「ぐおっ……」

 

ベリーが後ろからガムシャラに突進をしたのだ。

後ろから予想外の渾身の一撃を喰らって体がよろめいている。

たたらを踏んで足が不安定な状態。

流石に強い奴でも隙ができる一瞬だったのだろう。

倒した後の余韻。

その時間は1秒にも満たないもの。

 

「うぉおおお!!」

 

しかしこの男はその隙を逃しはしない。

追撃のショルダータックルで武舞台から落として羽交い絞めをしていく。

その一連の行動には勢いがあった。

自分たちとは違う弱者の気迫と意地があった。

相手もあそこからここまでやられるとは想像していなかっただろう。

 

そしてその姿を見ていたもう一人の男がついに動く。

 

「この私がなぜドクターロタと呼ばれているか教えてやろう、それはな……」

 

首を鳴らして深呼吸をする。

ベリーの方をしっかりと見ていやがる。

まさかこいつ……

 

「肉体的や精神的といった原因のありとあらゆる病を治してきた、そしてそれは!!」

 

やはり場所から届くか判断していやがったか。

そう言って武舞台から飛び出す。

その手からの発光はなんだ?

 

「命の『危機』、心の『危機』というように『危機』から救ってきたということなのだよ!!」

 

紫肌の奴に触れると場外の『危機』から救うという事か。

自分がさっきまで居た箇所の武舞台に戻し、自分が羽交い絞めをして身代わりになりやがった。

だがそんな中でもジレンは気を高めていやがる。

まさかあいつ……

 

「俺は落ちん!!」

 

感情を初めて露わにした大きな声。

ドクターの羽交い絞めを解いて踏み台にして跳躍。

指一本だけ武舞台に掛かってから刹那。

武舞台に戻っていやがった。

 

「流石に心が揺れぬ俺でも今のは久方ぶりに驚愕を覚えた」

 

首を鳴らし羽交い絞めにされた体をほぐす。

素子と手のひらを開閉させて問題がないという事を示していた。

 

「実力が全てではないという事を教えてもらい体に強烈な熱が灯った、お陰で……」

 

無の界を包み込むような気が出てきた。

それは即座に引っ込んだが俺とベリーに冷や汗をかかせるには十分だった。

これがこのジレンの……

 

「全力を出す事が出来そうだ」

 

そう言って去っていく。

第6宇宙の奴らのおかげで命を拾う事が出来た。

何かあれば助けないとな。

ベリーという奴もいつの間にかここから消えていた。

どうやら別の所へ向かったのだろう。

俺も敵を探さないとな。

追いかける事もなく、次の敵を求めて歩を進めた。




第6宇宙の戦士に『エピソードオブバーダック』からベリーが参戦しています。
バーダックが直々に鍛えてくれた戦士なのですが、元々戦闘系種族ではないので、強さは大した事はありません。
しかし、てこの原理など理詰めの戦いやカウンターの名手で相手の力を利用できる巧者です。
ジレンの規格外の攻撃力を逆用してみたり、余韻に至る一瞬の隙をついての道連れ狙いなど泥臭く戦う、絶対に宇宙代表に一人は欲しいという枠の存在です。

ジレンがエンジン掛かる前に仕留めにいくなりふり構わないベジータは原作ブレイク感あって申し訳ありません。

あとはドクターロタの『ドクターと呼ばれる理由』はオリ設定です。
ちょっと見せ場が原作でなかったので作ってみました。

指摘などありましたらお願いします。

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