とある一族の落ちこぼれ   作:勿忘草

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主人公は再始動させますが、まだ少々お待ちください。
第7宇宙は誰を落とそうか最後まで迷いました。


『サイヤと奇術師』

視線の先の戦士に向かう。

相手は構えて呼吸を整えて待っている。

だが向かい合ったら合図となる。

決して油断も何も許されない。

それがサイヤ人の在り方。

 

「ハアッ!!」

 

着地と同時に飛び膝蹴り。

それを相手がバックステップでかわしていく。

 

「ふんっ!!」

 

アッパーを放ってきて顎を狙う。

その動きからこちらは首を動かして最小限で避ける。

 

「しっ!!」

 

右フックでカウンターを狙う。

相手に合わせて放つなんて冷静な方法。

それが超サイヤ人ブルーの恩恵。

これが普通の超サイヤ人ならできない芸当だろう。

 

「けっ」

 

ヘッドスリップで衝撃を逃がされる。

そして即座に地面に手をついて蹴りを放ってきた。

カウンターにカウンターを悠々と合わせてくる。

 

「ぐっ!!」

 

こめかみに来た一撃を防いで互いに距離を取り合う。

その一撃の攻防で相手は笑っていた。

 

「なんだ、こんなもんかよ、ベジータ王子」

 

バーダックが言ってのける。

その言葉には嘲りというよりは余裕があった。

 

「俺は第6宇宙で自分を磨いた」

 

そう言って拳を繰り出す。

それに合わせて打ち付けあう。

または防ぎあう。

一進一退に思える中……

 

「あんた以上に成長した自負があるぜ」

 

腹部に一撃を喰らってしまって後ずさりをする。

隙を作った覚えはないが、さすがは歴戦の戦士。

俺のような若造の無駄な動きなんぞ手に取るようにわかっているんだろう。

 

「さて……もっと遠慮なくいかせてもらうぜ」

 

そういって手刀に気を宿す。

この系統の技はよく見る。

これを受け止めて反撃をしてやる。

 

「『レイジ・デュランダル』!!」

 

黒色の気の剣が俺を切り裂こうとする。

それを白刃止めで受けて、脇腹に蹴りを打つ。

 

「ぐっ!!」

 

一撃を喰らって飛んでいく。

しかし飛ぶ最中に体勢を入れ替えて……

 

「ハアッ!!」

 

気弾を放ってその推進力でこっちに向かってきた。

手の形を変えて相手も技を繰り出す。

 

「『リベリオン・ファング』!!」

 

肩口を抉られる。

徐々に血が出ていく。

量も増えていくほどだ。

 

「おいおい、まだこっちは血を流すほどの攻撃を受けてはいないんだぜ」

 

肩をすくめて笑ってくるバーダック。

悔しいが事実は事実。

 

「すぐにその余裕の面を変えてやる」

 

ブルーの全力で向かってはいる。

冷静さもある。

相手が成長で俺を越えた可能性。

 

「それを踏まえても足りないのは」

 

冷静さゆえの攻め気。

相手の動きを観察しようとしてしまう。

それが後手に回って今の状況を作り出す要因となる。

 

「それが超サイヤ人4との違い」

 

攻撃的なサイヤ人の本能のすべてをさらけ出した姿。

防御など一切いらない。

どこまでも暴力的な力でねじ伏せようとする心。

先手必勝、そして野生の力。

 

「はっ!!」

 

先に動いていく。

相手の攻撃を待つのもいい。

だがそれでは今の状況は変わらない。

 

「ハアアッ!!」

 

ラッシュを仕掛ける。

相手の防御からの隙を見抜く。

 

「そこだ!!」

 

隙間を縫ってアッパーを放つ。

顎への手応えがある。

 

「しっ!!」

 

ローキックで体勢を崩す。

腹部への掌底。

流れる連打でダメージを与える。

 

「ははっ!!」

 

しかし深刻なものではない。

けろりとしている。

それどころか気弾で浮き上がり、股に俺の顔を挟み込む。

そして力の限り投げられた。

 

「『フランケンシュタイナー』っていう技だ」

 

地面に叩きつけられる前に気弾で体勢を整える。

深追いはできない。

隙があちらにはない。

 

「ならば……!!」

 

一気に接近して顔を掴みに行く。

それを首を動かして避ける。

だがそこで終わらない。

肩を掴み、片方の腕は脇の下に差し込んで投げようとする。

 

「があっ!!」

 

それを踏ん張って止まるバーダック。

だがその一瞬で顔を掴む。

 

「ぬぐぐ!!」

 

渾身の力を込めた握力で引き剥がせない状態を作る。

そのまま持ち上げて旋回をする。

 

「『アンガー・トルネード』!!」

 

飛び上がって勢いよく後頭部を叩きつける。

しかしバーダックは……

 

「舐めるなよ!!」

 

足の力だけで立ち上がり、俺は首を絞められて持ち上げられる。

苦しいが気弾で抜ける。

 

「どんな体勢でも反撃できるのか……」

 

くの字に曲がった状態からの『フランケンシュタイナー』

逆立ちからの『ネックハンギングツリー』

真っ向勝負でも切り返されてしまう。

 

「流石は伝説の戦士」

 

第6宇宙でのサイヤ人伝説。

それ以外にもこちらの宇宙でも伝説的な存在とはなっていた。

下級でありながら王族に比肩しうる戦闘能力を持っていた男。

だからこそ勝ちたいと願う。

 

「ふんっ!!」

 

拳を突き出していくと、相手がピクリと動く。

それにフェイントを織り交ぜる。

脇腹への一撃から顔面へ。

 

「はっ!!」

 

叩き落しにきた瞬間、後ろに体重をかける。

そして跳躍。

 

「かああっ!!」

 

飛び後ろ回し蹴り。

防御を弾き飛ばして後退させる。

ここで大技を仕掛ける。

 

「『ガンマ・バースト・フラッシュ』!!」

 

片手で『ファイナルフラッシュ』を2発撃つ技。

強烈な技である。

 

「『リベリオン・トリガー』!!」

 

その一撃が迫る中、相手も技を放つ。

互いの一撃が衝突した。

しかし両者の一撃は一緒の威力。

 

「ちっ!!」

 

俺はもう一発の光弾を出す。

それは直撃はするが無傷のまま。

相手から反撃が始まる。

 

「『ヒートファランクス』!!」

 

手に火を宿した一撃。

それを喰らわないように後ろへ下がる

 

「まだまだ、『ライオット・ジャベリン』!!」

 

一撃を片手で弾き飛ばす。

これでは、人の技を借りてでも隙を作るしかない。

天津飯の野郎の技を借りるか。

上手くいってくれよ……

 

「『太陽拳』!!」

 

相手の技の硬直を狙って放つ。

そこで出来た隙次第で俺の動きは決まる。

ここで目を隠していたら……

 

「ちくしょう……小細工を!!」

 

そう言って怒りのままの一撃が放たれる。

俺はそれを回避。

技を出すための多大な隙を作り出した。

 

「『ファイナルゴッドシャインアタック』!!」

 

俺の最大の技を放つ。

その完璧なタイミングは、バーダックを無防備なまま呑み込んでいった。

 

「うがああああ!!」

 

しかしそれは勝利を確定させるものではなかった。

呑み込まれていても、その力は衰えず。

ボロボロになりながらも俺の懐まで入ってきた。

 

「『スピリット・オブ・サイヤン』!!」

 

腹部へ一撃を喰らう。

すると最高速度、最高の攻撃力。

その二つを両立させたラッシュが始まる。

 

「オラオラオラ!!」

 

内臓が揺さぶられてこみ上げる。

肋骨が折れて痛みがはしる。

脳を揺らされて思案すら許されない。

 

「終りだあああ!!」

 

再度、腹部へ喰らった一撃。

そしてそこから気弾を出して吹っ飛ばされていく。

 

「完敗だぜ」

 

体がろくに動かない。

完全な敗北だった。

時の流れとともに『強さ』という名前の木に年輪を刻み、太く雄々しくなっていった。

それが若い自分を倒せるだけの力を生み出していた。

そう思うと自然に笑みさえ浮かべていた。

それだけ清々しい敗北だった。

 

.

.

 

「ベジータが落ちたか」

 

そう言ってワシは動く。

相手が瞑想で完全に回復しきる前に落とす。

その相手を探すと、平然とそこにいた。

 

「会えて嬉しいぞ、ジレン……」

 

そう言うと目を開く。

そしてじりじりと動いてくる。

 

「ようやくディスポの仇が取れるわけか」

 

そう言ってこちらへ近づいてくる。

その言葉と同時にこっちは魔術の用意をした。

 

「『タウルス・ブレイク』!!」

 

先に動いたのは自分。

一気呵成に攻めて今の体力を奪いきる。

両腕のラリアットを放つ。

 

「むん!!」

 

目力のバリアーで防ぐ。

だったら次はこうだ。

バリアーに今触れたのだからな。

 

「『スコーピオン・パイル』!!」

 

バリアーの内側から杭を出す。

それを見たジレンは……

 

「遅い!!」

 

拳の一撃で杭を壊しきった。

その次の蹴りを受け止めて、抱え上げる。

 

「ぬう……」

 

地面に向かって投げる。

それも難なく着地をして肘打ちを放ってきた。

 

「ぐおっ!!」

 

後ずさりをしてしまいそうになるが胸倉を掴まれる。

そして引き寄せられて……

 

「ふんっ!!」

 

勢いのついた頭突きを喰らう。

さらに腹部への強烈なアッパー。

体がくの字に曲がるし、胃からは内容物が出てきそうになった。

 

「『ジェミニ・ゲヘナ』」

 

無防備なジレンの後頭部へ膝蹴りを入れる分身。

しかしその分身の練度も疲れとダメージから落ちていた。

 

「甘い!!」

 

片手で防いでいく。

その瞬間の緩みで脱出をする。

こいつには催眠術も通用しそうにない。

 

「フッ!!」

 

拳を突き出していく。

近接距離での戦いになっていく。

 

「ぬっ!!」

 

こちらの拳を掴むが前蹴りを同時にこちらが放っている。

相手の腹部へと迫っていく。

 

「かあっ!!」

 

こちらの前蹴りの足を蹴りで弾く。

そして体勢を崩したところにタックルを打ってくる。

 

「ぐっ!!」

 

馬乗りに近い状態になる。

ジレンが鉄槌のように拳を振り下ろしてくる。

 

「『アリエス・ケープ』!!」

 

ほんの僅かではあるが拳を逸らす。

事なきを得た。

ブリッジで弾き飛ばしてお互いが向き合う。

 

「確かにディスポではそっちには勝てないな」

 

分析までしていたか。

単純な身体能力のみで練度が落ちたとはいえ、魔術がろくに通用していない。

こちらとしては由々しき事態だ。

 

「こいつを倒せる奴はあの二人しかいない」

 

孫悟空もまだ足りない。

片や復活の予兆はあっても時間が間に合うか。

片や最終兵器であるが故に出るのか。

拮抗だけならばフリーザが可能だろう。

 

「しかし、奴も別の標的が見つかっているから期待できない」

 

全員がジレンを狙うわけではない。

むしろ遠巻きに眺める事もある。

 

「後を託すなんて不確かなものだが……」

 

致し方なし。

己の全力を賭して奴との戦いを長引かせる。

 

「『レオ・ストローク』!!」

 

腕を振り、奴の脇腹を裂きに行く。

この技に対してジレンの行動次第で技は変わる。

 

「ヌン!!」

 

攻撃を受け止めた。

しかし掴んでいないのであれば……

 

「『キャンサー・シザー』!!」

 

居合のように技を繰り出す。

しかしそれも……

 

「まだまだ!!」

 

両手で掴まれて防がれる。

だがそれならば!!

 

「『カプリコーン・スタンプ』!!」

 

地面を蹴って飛び上がり、蹴りの連打を繰り出す。

狙うは顎や顔面の周囲。

 

「遅いぞ!!」

 

爪先がぐちゃりと潰れるような音。

頭突きでこっちの蹴りを止めたのだ。

 

「だが……『フィアー・パンデミック』!!」

 

腕を掴み返して気弾を放つ。

烏の羽根がまとわりついて行く。

 

「流石のお前でも脱力させられてはどうなる!?」

 

握り拳を作って圧縮させていく。

行きつく先の消滅。

だが打ち破る事は不可能ではない。

 

「ギギギ……」

 

全力の技に全力で抵抗する。

ギリギリと音を立てて軋む羽根の球。

 

「うおおおお!!」

 

両手で握り潰す様に力を込め続ける。

徐々にエネルギーが衰退している。

だが、こっちの消耗もある。

 

「このまま……」

 

抵抗を続けている間に復活するだろう。

そこでようやくワシが十分な仕事ができたということになる。

 

「があああああ!!!」

 

しかしそんな思いを抱いた刹那。

ジレンが張り裂けんばかりの絶叫で技を打ち破る。

やはり想像以上に規格外だったか。

こちらの技としては正攻法の手はもう尽きた。

こうなれば、もはや……

 

「『ルナティック・ギルティ』!!」

 

月光が照り返し、ブルーツ波を集める。

光のエネルギーを体中に纏わせる。

 

「そして……」

 

このエネルギーをそのまま特攻して爆発させる。

自爆技での道連れ。

情けないが、『復活パワー』でかなりの力を使っている。

目が開いていたらこれで代用できたのだが。

 

「いくぞ!!」

 

自分の体格差を活かして戦車のごとく突っ込む。

ジレンが手を触れた瞬間、光のエネルギーのすべてを爆散させた。

自分の肉体がズタズタになる衝撃。

しかしそのエネルギーをぶつけたのだ。

ジレンもただで済んではいない。

 

「うおおおお!!」

 

現に叫びながら自分の力で威力を減らし、場外へ行くのをこらえようとしている。

爆風が幾らかジレンを運んではいく。

しかし、しばらくその音が続いた後、唐突にピタリと音が止む。

それが何を意味するのか、ワシにはよくわかる。

ギリギリまで追い詰めることもできない自分に歯噛みする。

もはやこうなれば潔く敗北を選ぶほかない。

 

「最後の輝き、やはり皆が俺の心を震わせる強者には変わりない」

 

そう言ってジレンがワシの脇下に自分の腕を差し込む。

そしてワシの腕が背中側を向くように固める。

 

「強く勇ましくそして多彩な技をお前は持っていた」

 

力を込めてワシを回し始める。

勢いをつけられていく中、抵抗も許されない。

 

「賞賛の意を込めてこの技でお前を落とそう!!」

 

そう言うとジレンが投げの体勢へと入り、ワシの体が浮く。

ダブルアームスープレックスで場外に投げられる。

豪快な投げにより宙に長く舞い続け、ベンチへと移動した。




ベジータとバーダックの対決にしました。
サラガドゥラもベジータも強いですが相手の方が一枚上。
ジレンとバーダックがそしてついに撃墜数トップになりました。

第2宇宙:10名脱落
リブリアン(ガタバル),カクンサ(ガタバル),ラパンラ(ガタバル)
ビカル(ピオーネ),ロージィ(ピオーネ),ジーミズ(ピオーネ)
ハーミラ(ベリー),ザーブト(悟空),ザーロイン(サラガドゥラ),プラン(ベジータ)

第3宇宙:10名脱落
コイツカイ(悟空),ニグリッシ(悟空)
ボラレータ(バーダック),ナリラーマ(ヒット),
ザ・プリーチョ(ガタバル),パンチア(悟飯),パパロニ(ピオーネ)
ビアラ(ベルガモ),カトスペラ(モギ),マジ・カーヨ(ジレン)

第4宇宙:10名脱落
ガノス(バーダック),マジョラ(バーダック),ショウサ(バーダック)
ダーコリ(亀仙人),キャウェイ(亀仙人),ニンク(サラガドゥラ),ダモン(サラガドゥラ)
モンナ(キャベ),ガミサラス(ピオーネ),シャンツァ(ベジータ)

第6宇宙:7名脱落
フロスト(ジレン),ドクターロタ(ジレン)
ボタモ(悟飯),マゲッタ(ピッコロ),ケール(ブロリー)
ベリー(ディスポ),キャベ(トッポ)

第7宇宙:6名脱落
亀仙人(ジレン),ピッコロ(ジレン),サラガドゥラ(ジレン)
悟飯(バーダック),ベジータ(バーダック)
ブロリー(カリフラ)

第9宇宙:8名脱落
ホップ(フリーザ),コンフリー(フリーザ)
ベルガモ(ジレン),ラベンダー(ジレン)
オレガノ(バーダック),チャッピル(ガタバル),バジル(ベジータ)
ローゼル(サラガドゥラ)


第10宇宙:8名脱落
ジラセン(ブロリー),リリベウ(ブロリー),ジルコル(ブロリー)
ザマス(ガタバル),ナパパ(ガタバル)
ムリサーム(フリーザ),ジウム(フリーザ)
メチオープ(悟飯)

第11宇宙:8名脱落
カーセラル(カリフラ),ゾイレー(カリフラ),ケットル(カリフラ)
タッパー(ケール),ブーオン(ケール),ココット(ケール)
クンシー(バーダック),ディスポ(ベリー)

現時点:67名脱落
残り13名
撃墜数
8人:ジレン,バーダック 7人:ガタバル 5人:ピオーネ
4人:カリフラ,フリーザ,ブロリー,サラガドゥラ
3人:ケール,悟空,悟飯,ベジータ
2人:ベリー,亀仙人
1人:キャベ,ヒット,ピッコロ,ベルガモ,ディスポ,トッポ,モギ

指摘などありましたらお願いします。

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