今年も本作をよろしくお願い致します。
新年、最初の話は最後の篩落としです。
文字数が平均より少なくなってしまいました、申し訳ありません。
どうやら残りの人数が一桁。
こうなればもはや強者しか残っていない。
そして残り時間は10タック、つまり地球時間で言えば4分48秒を切ったころでしょう。
しかしここに残る戦士が全員、それだけの時間があれば誰かを落とすには十分すぎるだろう。
「そして、落とす候補ですが消去法としても困りものですね」
まず考えたのは第9宇宙。
しかし、距離を確認すると第9宇宙のモギとはそこそこ開いた状態にある。
倒そうと思い、追いかけっこなどしていては、最悪時間を稼がれて落とせずじまいになる。
そうなっては本末転倒だ。
そして考えていた第11宇宙も却下。
残り2人のうちの一人、トッポという戦士ならば勝てる確信は十分にある。
しかしその傍にいるジレンという戦士はどうだろうか?
自分と同格か凌駕している男を退けている。
そしてその戦いにおける疲労をものともしない強靭さ。
「戦う事は良いのですが、負けて流れが止まると孫悟空さんまで落とされますからね」
そうなってしまうと人数で3つの宇宙が並んでしまう。
出来れば人数さで確固たる差をつけておきたい。
消去法の結論としては、第6宇宙しかないだろう。
バーダックさんが悟飯さんとベジータさんを落として疲労が残っているはず。
ですから落とすならばバーダックさんがやりやすい、それにリベンジマッチになりますからね。
そう思った瞬間、鋭い殺気の視線が体中に突き刺さる。
「久々ですよ……その感覚!!」
こちらも殺気の視線を相手へ返す。
しかし相手は風が通り過ぎるように平然とする。
そしてその相手がこちらへ近づいてきた。
「ヒットさんですね」
第6宇宙最強の殺し屋。
今回のルールで本当のスタイルを隠している。
しかし実力は封じられていながら折り紙付き。
相手はコートに手を入れたままこちらを見ていた。
「お前をこの最後に落として終りにする」
こちらこそそのおつもりですよ。
今まで皆さんが忙しくて貴方を落とせなかった。
野放しにするのがいけないと分かっていながらね。
でもそれもこれで終わり。
ここで落としましょうか。
「言っておきますが私は簡単に落とせませんよ?」
ゴールデン状態で相手と戦う。
この相手を落として時間終了。
そして第7宇宙の勝利。
それがベストな形でしょう。
「それは百も承知、だが……」
非常に速い速度の拳の連打。
それらを軽やかに舞うように避けていく。
コートの中に手を入れるのは悟られないためですか。
「俺もそう簡単に落ちる気はないぞ」
そう言うとさらにギアを上げてくる。
こちらの回避速度から当てられるように考えていますね。
厄介なものです。
初めから全開で居てくれたならこちらもやりやすいというもの。
引き出しを小出しにされるというのは面倒だ。
「落とすといった以上、倒すための算段なんでしょうがね」
すると時間がいきなり進んだような錯覚。
胸に相手の拳がめり込む。
一瞬、心臓が止まりかけたが何とかとどめる。
「スー……ハー……」
深呼吸で鼓動を落ち着かせて見回す。
急所をためらいなく打ってきた。
凄まじい威力と技だ。
元々の能力が高いのが嫌でもわかる。
「今の一撃……空恐ろしい真似をやっていますね」
あの一撃の為に0.1秒ほどでしょうか?
時間を操作したのでしょう。
ただ罪を多く背負っている私が言うのもなんですが、あのような技は銀河法に触れるのでは?
「まあ、見て見ぬふりでいいでしょうけど」
銀河パトロールの気持ちは理解できます。
捕まえようにも無理でしょうからね。
かつての私だって、彼らにしてみれば捕まえようと思って捕まえられる相手ではないですし。
「『時飛ばし』といった所でしょうか?」
止めたわけではないですし。
まるで時間が進んでしまった。
それを飛ばしたと形容した結果、そう言った呼び方にしておきましょうか。
「当たりだ」
そしてもう一度攻撃が放たれる。
超能力で自分の聴覚を高めてみた。
どういった原理か確かめないとお話にならない。
「音が……」
動こうとする筋肉の音。
そしてその力み具合。
つまり『時飛ばし』と普段では動きが違う。
……とは言っても聴力が人並み以上で視覚も素晴らしくないと看破できませんね。
さらにそこへ対応力が必要になってきますし。
「まだまだいくぞ」
抑揚のない声。
冷徹な心を反映した冷たさを感じる。
仕事を成し遂げようとするプロフェッショナルの眼差し。
「しかし……」
こちらも急所狙いだと分かれば対処可能。
その部分を防御していく。
そして一瞬でも途切れたら相手の懐へ飛び込む。
「甘い」
そう言って振り払うようにアッパーを放ってくる。
連続して発動させることもできるんですね。
しかし甘い考えですよ。
「ハアッ!!」
気を開放してゴールデン状態でさらなる進化の前兆を見せつける。
顔にマスクが出てくる。
さながら兄のクウラのように。
「なっ!?」
マスクに拳を打ち付けるヒット。
防御をしたことで隙ができた腹部へ蹴りを叩き込む。
胸への一撃を返しましたよ。
「防御専用にしかまだ使えないのが難点ですがね」
ガタバルさんに勝てるであろう可能性。
もしかしたら破壊神を超える力かと思った状態。
しかし当然マスターはそうそう簡単に行くわけもなく、現状の有様だった。
「流石にやるな……」
そう言って腕が動く。
ガードをしようと動くが……
違和感を持ったまま、こめかみに一撃を叩き込まれる。
「貴方、時飛ばしの同じ筋肉の動きでフェイントをかけましたね……」
確かにそれならば違和感を感じて当然。
だがこれで一気に見抜けなくなった。
しかし、嘆いても仕方ない。
「帝王と言われた私にとってこのような逆境…」
ヒットからの攻撃。
急所でも飛び切り危険な心臓を庇いながら、それをあえて受ける。
腹部でも内容物がせりあがるので、まったくダメージがないわけではない。
しかし、最悪の事態は免れる。
「恐れる事もない!!」
肉を切らせて骨を断つ。
その言葉のまま腹部に一撃を叩き込む。
相手もくの字に曲がった瞬間、こめかみにハイキック。
ヒットも片膝をつく。
「まだまだ、やれますよねぇ」
そう言うと立ち上がるのではなく跳躍。
胴回し回転蹴りを放ってくる。
いきなりの大技。
そんなものを喰らう訳もない。
「甘いぞ……」
『時飛ばし』を使われる。
一瞬の間に接近をされている。
それを見てからのバックステップ。
だがさらなる驚愕の景色がそこにはあった。
「いつから……」
何故眼前にもう迫っている?
それが今、脳裏によぎる言葉。
防御型変身には間に合わない。
しかし……
「かあっ!!」
自分に向かって気弾を撃って吹き飛ぶ。
それで回避することはできた。
相手の攻撃を回避して感じたこと。
「俺の時飛ばしが0.1秒『程度』だと錯覚していた?」
やはり本当の時間はそれより多かったのですね。
おおよそ5倍ほどと仮定した場合……
隙だらけの私に攻撃を叩き込みたい放題。
こちらもこうなれば……
「残りの時間はもう5分もないほどでしょうか?」
この短い間だけであれば……
あの形態で戦ってもいいのではないか?
後で倒れようとも問題はない。
彼ならばきっとそうしたに違いありません。
それに……
「追いつきたいならば茨の道を通ってこそ!!」
体から金色の光を噴き出させる。
そして今の自分の限界を超えていく。
それは危険な賭け。
だがその価値はある。
「はあああっ!!」
ボディアーマーの様に新しく頑強な皮膚が生まれ、私を形作る。
そして発光が止んだ時、私の力は『無の界』へと充満していた。
体の軋む音に耳を貸してはいけない。
そう己に言い聞かせて相手を見据える。
「お待たせいたしました……」
そう言ってじりじりと近づく。
警戒心をそのままに。
しかし相手に与える威圧感は強く。
相手の動きを見て動く事にする。
「はっ!!」
『時飛ばし』の一撃。
それを感知することが出来る。
今まではできなかったが、この形態になって強くなったからできるのだろう。
「そこ!!」
受け止めて、カウンターを放つ。
しかし奇妙な感覚に再度とらわれる。
なんと攻撃が体をすり抜けたのだ。
それを見て一つの結論を導き出す。
「『時飛ばし』とは言いますがその飛んだ時間の軸……つまりパラレルワールドに居ますね?」
だからこそその空間を打ち破る。
もしくは彼の貯蔵した時間を使いきらせる。
そうする事で真っ向勝負に持ち込める。
「素晴らしい洞察力だ」
そう言って再度攻撃を仕掛けてくる。
もはや軌道を読むことをやめてヒットの周りを己の気で包むようにする。
そこで異変のある箇所まで超速度で移動。
その攻撃を受け止めてカウンターを放つ。
「くっ!?」
攻撃は当たる。
現れる瞬間、消える瞬間の察知。
さらに相手と自分の一帯を包むといった方法。
気の浪費が非常に大きなやり方。
力技というものだが仕方ない、勝ちの形式にこだわっている場合でもない。
「まだまだ終わりませんよ!!」
そう言って徐々にペースは自分のものになっていく。
変身が解けないのが救いだ。
攻撃を放ってくる。
「フッ!!」
尻尾で防いで肘打ちを放つ。
その一撃をバックステップでかわそうとするが尻尾で足を巻きとる。
それでも体勢を不用意に崩さない。
肩でこちらの攻撃を受けきる。
「ハアッ!!」
『0.5秒』の時飛ばし。
それを使われても察知ができる。
反撃は気の浪費上、厳しい。
「フッ!!」
さらに『0.5秒』の時飛ばし。
それでスライディングキックを放ってくる。
跳躍をして回避する。
「捉えたぞ!!」
三度目の『0.5秒』の時飛ばし。
跳躍した自分の上に現れて踵落としで地面に真っ逆さまに落とされる。
幸い変身のおかげでダメージそのものは無かった。
「カアッ!!」
またもや時飛ばしでこちらへの追撃を仕掛ける。
しかしこの時飛ばしはさっきまでのものとは違っていた。
私はすぐに構えて対処に当たる。
「いきなり心変わりですか?」
連続しようとしていた『0.5秒』の時飛ばしをやめた。
もしかして彼も負担があったのかもしれない。
しかしこれならば捉えられる。
「ハアッ!!」
攻撃を受け止めて後ろへ跳躍。
その一撃の勢いを活かして、そのまま蹴りを相手の側頭部に叩き込む。
強烈なカウンターの一撃で蹴り飛ばしてから、次の相手から攻撃に備えて構える。
深追いしすぎは禁物。
そう言う高次元な相手だ。
ここに至った相手が見せる隙や動きは罠と思って掛からねばならない。
「ふふふ…」
こちらに対して彼は不敵な笑みで微笑む。
そして立ち上がると同時に首を鳴らす。
深呼吸をした後、コートに手をかけてこう言ってきた。
「悪いが少し待ってくれ」
構いませんよ。
こちらも変身の時に待ってもらいましたからね。
しかしそのコート、脱ぐ必要があるんですか?
「このコートは伊達や酔狂で着ていたものではない」
こちらの心を見透かしたのだろう。
そう言いながら徐々にコートの下の素肌が晒されていく。
そして脱いでいくうちにこちらにも伝わってくるプレッシャー。
まるであのコートがそう言う系統のものであったというように。
「挙動へのカモフラージュもあったが本当の意味合いは……」
脱ぎきったコートを場外へと投げ捨てる。
それはひらりと舞っていき、ベンチへと戻っていく。
そして次の瞬間……
「きゃあっ!?」
ケールというサイヤ人が悲鳴を上げる。
なんと彼女の隣に落ちたコートはけたたましい音を立てて沈んでいったのだから。
強さを抑える重りの意味合いもありましたか……
「本来の速度や強さを抑えるためのものだ」
そう言って気を噴き出させる。
それは私の気と同じように『無の界』へ充満する。
拳を晒しても、問題なしという事。
今、本当の戦いが始まろうとしていた。
ゴルフリの進化系を書きました。
見た目はクウラのようなマスクがついて、薄い軽めの鎧を着こんだような肉体になっています。
実力は『身勝手』ガタバル並みに伸びるが現状は長期運用不可といった感じです。
そしてコートを脱いだヒットの強さの上昇。
実力は伸びていますが基本はバーダックと同格のままです。
常時本気のバーダックがいるので強さを隠せていたといった感じです。
今回は脱落者がないので記述していません。
矛盾した点や誤字脱字などがありましたら、指摘宜しくお願いします。