とある一族の落ちこぼれ   作:勿忘草

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『力の大会』の篩い落としが完了です。
ヒットVSゴールデンフリーザ、どちらが勝つのか。
8人の残ったメンバー考えるのは正直悩みました。


『エイト・パーソン・スタンディング』

音が消えた。

単純な速度が音速を越えたのか?

はたまたこちらの聴覚を壊したか?

……いずれにせよ答えはすぐに現れた。

 

「ぐっ……」

 

腹部とこめかみへの痛み。

鎧のこの状態を超えて痛みを感じさせる拳。

そして挙動を悟ることもできない速度。

全く持って素晴らしい。

 

「しかし、そうだからと言って何もしないと思われては困ります」

 

相手の速度を考慮したうえで、さらに『時飛ばし』に警戒してこちらも動く。

尻尾で足元をすくい上げていく。

当然向こうもそれを許すはずもない。

 

「ふんっ」

 

跳躍で回避。

しかしそれを狙っていた私は指先を向ける。

気を高めて黄金の光を指先に宿す。

 

「さて、気弾も使わせていただきましょう」

 

一筋の光が相手へと迫る。

その一撃は速く相手を捉えに行く。

それを気弾で向こうも回避をするが逃がしはしない。

相手の背中に回って組みつく。

 

「とうりゃ!!」

 

相手を上空に放り投げる。そして頭を掴んで大きな気功波を放つ。

相手を倒せる一撃は多くなった。

この形態になった以上はそれが確信めいている。

 

「『ゴールデン・ウォーターフォール』!!」

 

黄金色の気功波で相手を叩きつける。

抵抗を許さないように猛烈の気の奔流で押し流す。

相手の強さ的にこれほどの真似をしないとまずいのは本能で理解している。

 

「やってくれるな」

 

むくりと起き上がって動き始める。

風を置き去りにこちらの後ろにすぐさま張り付く。

それを察知して尻尾で薙ぎ払おうとする。

 

「無駄だ」

 

それよりも速くに尻尾を掴まれてジャイアントスイング。

岩盤に向かって放り投げられる。

それから跳ね返っての反撃は良くない。

自ら場外に飛び込む危険を背負う。

 

「それに……」

 

投げる速度を超えてヒットが後ろを取ってくる。

肘打ちで頭を揺らされた。

そして不可解な構えから攻撃を放つ。

 

「『カイロスの短針』」

 

腕を槍のようにして放つ突き。

それは肩に掠るとなんという事に腕が動かなくなったのだ。

時飛ばしによって積み重ねた時間。

それで動きを止めている。

 

「0.1秒動かなければがら空きの場所が生まれる」

 

そう言われて脇腹に蹴りを喰らう。

0.5秒止めないのは理由がある。

おおよそ重要な場面で使うためだ。

 

「これほどの相手…全力以外の選択肢は用意していませんよ!!」

 

相手の蹴りで飛んだ距離を瞬く間に詰めて拳を振るう。

それを『時飛ばし』で回避をする。

しかしそれでも回避先は予測ができる

瞬間移動のように死角にいく、もしくはカウンターを叩き込める場所。

 

「そこです!!」

 

裏拳に切り替えて何もない空間に一撃を放つ。

それを受け止められる。

しかしそう来ることもすでに読んでいた。

前蹴りをさらに追撃で放っていく。

 

「ぬぐ……」

 

相手も表情を変えてこちらの一撃を喰らっている。

パラレルワールドに入れなくても打ち破る術がある。

 

実力差が拮抗している以上ずっとできるものでもない。

相手がフェイントをかけてきたら外れるような程度。

だが、それでも十分な成果と言える。

 

「もうあなたの『時飛ばし』にも慣れてきましたよ」

 

そう言って蹴りを放つ。

しかしあくまで虚勢。

『0.5秒』はまだ慣れていない。

 

「お前のその状態を見てからその確信はあった」

 

そう言ってこちらに接近をする。

あまりにも余裕が見て取れる。

拮抗の有無ではなく、お互いがわかっている。

 

「お前ひとり始末するのには十分だ」

 

私もそれについては同感です。

つまり両者にとっては慌てるような場面ではない。

だから余裕な態度を保てるというわけですね。

 

「無論、こちらも同じ感覚ですよ」

 

そう言って相手の接近に対して攻撃を仕掛ける。

跳躍をして気弾を放つ。

大技でも何でもなりふりかまっている場合じゃない。

 

「『ゴールデン・デス・クラウン』!!」

 

それを『時飛ばし』で回避する。

どこまでも時間の貯蔵に費やすつもりのようだ。

遠距離戦は彼の思うつぼになりますね。

爆風に紛れる形で接近をする。

 

「ハアッ!!」

 

尻尾での一撃を狙う。

すると察知していたのか防御する。

しかしここで終わらせない。

体に巻き付けて、遠心力で上空へと投げる。

 

「もらった!!」

 

跳躍で追い越してそのまま一撃を叩き込みに行く。

すると体からすり抜ける。

『時飛ばし』での回避。

また読み切って一撃を喰らわせてあげますよ。

 

「そこ!!」

 

しかしその攻撃を受け止めるヒット。

それならばと蹴りを放つが、またもやすり抜ける。

捉えられないように連続して使っている。

 

「しかし!!」

 

それでも無駄ですよ。

そのような真似をしても私からは逃れられない。

気を網状に張り巡らせて結界にしている。

しかもそれは私の手に連結している。

 

「ですから……」

 

貴方がどこに動いても腕が震える。

そしてその結界を巻き上げてしまえば、貴方を射程に捉えられる。

そんな事を考えていたら腕が震える。

 

「そこですか!!」

 

振り向くが触れていたのは手のひらだけだったのだ。

空中で倒立の体勢を取るヒット。

そして手の力で勢いよく体を弾きだして攻撃を放つ。

 

「『クロノスの長針』!!」

 

足を揃えた非常に鋭いドロップキック。

空気抵抗も減らし尽くしたフォルムから放たれる一撃。

その一撃に対する回避は間に合わない。

 

「はあっ!!」

 

腕を交差して気を全開にして防御に回す。

しかし空間が真っ白いものへと一瞬変わる。

そして、次の瞬間には一撃が腹部に突き刺さっていた。

 

「ごふっ……」

 

地面に勢いよく叩きつけられる。

立ち上がるが、相手もそれに追い付いて追撃の一打を放ってくる。

それを受け止めて僅かに距離を取る。

 

「あれに耐えるとはな」

 

こちらに向かって言ってくる。

耐えれたのも場外の蹴り出しではなく、地面へ叩きつけられたから。

痛みが己を覚醒させて何とか耐えたように見えているだけ。

 

「お返ししないといけませんね」

 

やられてばかりは性に合わない。

自分も手痛い仕返しをしなくては。

構えて相手を見る。

 

「『ゴールデン・デス・イクスパンション』!!」

 

小さな気弾を放つ。

それを回避すると同時にこちらが追いつめる様に動く。

徐々に膨張する気弾にヒットを誘い込む。

 

「それそれそれ!!」

 

ラッシュをかけていく。

緻密な計算を積み重ねて放つもの。

回避をしてもそれを『0.1秒』の時飛ばしであれば完全にとらえている。

相手が強ければ強いほど眠っていたものが呼び覚まされる。

相手もそうなのでしょう。

 

「くっ!?」

 

跳躍をして気弾の膨張から逃れる。

しかし私がそれを掴んで投げる。

おいそれと簡単には逃がしませんよ。

 

「なにっ!?」

 

まさか一度使った気弾を投げるとは予想外だったのか。

無防備な状態で炸裂する。

ダメージを受けているのか、煙をあげる。

 

「ここを逃す手はありませんね!!」

 

相手の懐に入り込んで、指先だけのラッシュ。

空気の弾丸のように相手の体へ一撃を絶え間なく叩き込む。

そして尻尾でギリギリと締め上げる。

 

「絞め落とせないぞ……」

 

そう言うと親指を突き刺す。

鉄指功とは……

想像以上の芸達者ですね。

 

「固くても意味はない」

 

『時飛ばし』で尻尾の力を封じて抜け出す。

そして距離を取っていく。

互いに向き合うのも回数としては少なくない。

 

「いい加減終わらせるぞ……」

 

こちらを見て言ってくるヒット。

まあ、もう残り時間も少ない。

次の攻防の一連の流れが最後でしょう。

 

「こちらも相対するのみです」

 

じりじりと間合いを詰める。

そして、互いの攻撃が当たる危険地帯に入る。

その瞬間、先に動いたのはヒットだった。

 

「ふんっ!!」

 

放ってきた『0.1秒』の時飛ばしの攻撃を捌く。

『0.5秒』の方を使えば、十分な余裕を持って私に当てられるものを。

なぜそこまで頑なに使おうとしないのか。

 

「はっ!!」

 

再度攻撃を仕掛けてくる。

このままカウンターでこちらが勝利する。

もはや同じ速度の攻撃なんて目を瞑っても……

同じ速度……!?

 

「しまった!!」

 

今までの動きが全て罠だったなんて。

まさか想像だにしなかった。

これが戦いの年季で生まれる壮大な先までの構築か。

 

「お前のリズムは掴ませてもらった!!」

 

その通りなのだ。

同じ速度だから同じように防御、同じように攻撃。

それを刻み込まれたことで、危機感もなく同じ対応をしてしまった。

 

「喰らうがいい!!」

 

そう言って拳を突き出す。

『時飛ばし』抜きで無防備な状態を作り出していた。

その一撃を回避することはできない。

 

「くっ!!」

 

喰らう瞬間にバックステップで逃れようと試みる。

しかし完全に軽減することは叶わず打撃を胸に受けた。

手応えや耐えた感覚からはまだ全然問題なく動ける。

しかし踏み出して反撃に転じようとした次の瞬間、驚愕の事態が我が身に起こっていた。

 

「なっ!?」

 

先ほどとは違い、体が全て動かない。

そして手をかざしながらヒットが見ている。

どうやら最後の大技の為にこれを発動しましたか。

 

「流石のお前も『時の牢獄』からこの技を受けきる事はできない」

 

渦を巻いて唸りを上げる気弾。

私もこのまま受けるつもりは全くない。

指をじりじりと上げて気弾を作っていく。

 

「大きな気弾だな……」

 

『ゴールデン・デス・ボール』を作っていく。

そして相手を見据えて指を高々と上げていた。

もう時間も残り少ない。

この一撃に全てをかけましょう。

 

「この一撃で変わる……第6宇宙の運命…この俺の運命…同胞たちの運命…そしてお前の運命も!!」

 

その言葉に妙な聞き覚えがある。

ああ、バーダックさんが最後に攻撃を放つ時に言った言葉ですね。

それではこの技以上にふさわしいものはない。

 

「貴方のその心意気すらもこの『無の界』を彩る花火になるのです!!」

 

指をくいと下げてこちらも射出する。

それは徐々に近づいていく。

その接近を見て、振りかぶりその気弾を投げてくる。

 

「『アイオーンの慟哭』!!」

 

こちらの気弾とぶつかる。

『無の界』を揺らしていく。

打ち勝った方がこの戦いの勝者。

 

「ぐぐぐ……」

 

互いに全精力を注ぎこみ打ち勝とうとする。

しかしこの拮抗にも唐突に終りが来る。

『時飛ばし』を解除して奇策とも言うべきものを取る。

それは気弾にその力を宿させるというもの。

まさかそんな運用方法があったとは。

 

「ハアアッ!!」

 

気合を込めてヒットが力を振り絞る。

すると止まっていたこちらの気弾を突き抜けていく。

あの日と同じようにはいかない。

それこそが相手の強さを認める結果に他ならなかった。

 

「無念ですね…」

 

そう言って私は場外へと吹き飛ばされる。

私が落ちていくのと最後の段が音を立てて落ちていくのは同時だった。

ほんの僅かともいえるような時間。

濃密で凄まじい戦いができた。

敗北は悔しい事である。

しかし、それ以上の充足感が心を満たしていた。

 

.

.

 

「『力の大会』を終了いたします」

 

そういう大神官様。

全王様に視線を向ける。

そしてボタンを押した。

すると消滅していたと皆が思っていた第2宇宙、第3宇宙、第4宇宙、第10宇宙が現れる。

 

「この度は皆さんを騙す結果になりましたが、これは名目上『消滅』を掲げた挌闘試合」

 

その言葉に全ての破壊神と界王神が驚く。

なおも大神官様は言葉を続ける。

 

「そしてこれは『本戦出場』をかけたふるい落としでした」

 

本戦と聞いてさらに驚きの声が上がる。

まさかこの戦いまでが前座だったなど思いもよらなかったのだろう。

 

「この戦いは消滅をかけていないと知っているのはたった一人、出場選手に居ました」

 

その言葉に騒めく。

キテラ様はビルス様に疑いをかける。

するとビルス様が今度はベルモッド様の方に疑いをかける。

明らかに落としまくっている第7宇宙が怪しい。

そう言われた時には確かに間違いではない指摘だった。

 

「今言いますので、疑いあうのはおやめください」

 

そして俺を指さしてきた。

少し呼吸を整えて発表をする。

 

「第7宇宙のガタバルさんだけが今回の消滅の有無についてご存じでした」

 

何故言わなかったのかとビルス様から怒号が飛び出る。

キテラ様もここぞとばかりにビルス様を責め立てる。

こっちも言えないわけがあったんだけどな。

 

「言わなかったのは、言えなかったのですよ」

 

そう言うと聞こうという雰囲気になる。

そして俺にそのバトンが渡される。

俺は頭を下げて話をする。

 

「実は約束がありまして……」

 

口が堅くなければとんでもない事が起こるといったニュアンスで話をしていた。

だからこそ誰にも言えずに隠してきた。

しかし、それでも理解はされない。

少しばかり虚しさがよぎる。

 

「言ったらこの試合を待つことなく8宇宙消滅するように全王様に進言するつもりでしたので」

 

そう大神官様が言うと一気に空気が変わる。

むしろ口外しなくてよかったと。

消滅の危機は双肩にかかっていたという訳なのだ。

それに戦いを楽しませる事が出来なければ、その時点で消滅。

二重で消滅の危機を背負っていた。

 

「では、本戦のトーナメントについて説明いたします」

 

今回の勝者、8人全員は全王様の宮殿の特設リングで免除宇宙の8人を加えた16人での試合を行う事。

そしてその日時は明日。

優勝賞品については……

 

「破壊神と界王神、天使の地位の向上です」

 

全王様の業務補佐になるという事。

それを聞き、喜ぶ者も居れば頭を抱える者もいる。

ビルス様も頭を抱える一人だ。

 

「そして優秀選手には……」

 

超ドラゴンボールを見せてくる。

皆が興奮の眼差しで見ている。

さらに大神官様は言葉をつづける。

 

「さらに敢闘賞には……」

 

第7宇宙のナメック星のドラゴンボールを見せる。

確かに十分な商品だろう。

しかし皆は超ドラゴンボールに見入っている。

 

「皆さん、全王様に善き戦いと思われる激戦を期待しております」

 

そう言って大神官様は全王様の玉座に戻り、ひとまず『力の大会』予選は終了したのだった。




全力合戦の結果はヒットに軍配。
コートを脱いだ本気は『身勝手』に劣るが、『時飛ばし』という強力無比な一芸を持ってるためほぼ同格といった感じです。
バーダックも『身勝手』には劣りますが、『経験値』とか『洞察力』など目に見えない部分で補って、ほぼ同格にしています。
ジレンの最強は揺るぎませんが原作以上に肉薄する戦士達が揃った形になっています。
原作みたいな瞑想なんてできないでしょう。
次回からは1VS1のトーナメント方式です。

残った八人:
第6宇宙:バーダック,ヒット 第7宇宙:ガタバル,孫悟空,ピオーネ
第9宇宙:モギ 第11宇宙:ジレン,トッポ

脱落者は

第2宇宙:10名脱落
リブリアン,カクンサ,ラパンラ,ビカル,ロージィ,ジーミズ,ハーミラ,ザーブト,
ザーロイン,プラン

第3宇宙:10名脱落
コイツカイ,ニグリッシ,ボラレータ,ナリラーマ,ザ・プリーチョ,パンチア,パパロニ
ビアラ,カトスペラ,マジ・カーヨ

第4宇宙:10名脱落
ガノス,マジョラ,ショウサ,ダーコリ,キャウェイ,ニンク,ダモン,モンナ,
ガミサラス,シャンツァ

第6宇宙:8名脱落
フロスト,ドクターロタ,ボタモ,カリフラ,マゲッタ,ケール,ベリー,キャベ

第7宇宙:7名脱落
亀仙人,ピッコロ,サラガドゥラ,悟飯,ベジータ,ブロリー,フリーザ

第9宇宙:9名脱落
ホップ,コンフリー,ベルガモ,ラベンダー,オレガノ,チャッピル,ローゼル,ソレル,バジル

第10宇宙:10名脱落
ジラセン,リリベウ,ジルコル,ザマス,ナパパ,オブニ,ムリサーム,ジウム
メチオープ,ルベルト

第11宇宙:8名脱落
カーセラル,ゾイレー,ケットル,タッパー,ブーオン,ココット.クンシー,ディスポ

撃墜数
8人:ジレン,バーダック,ガタバル,ピオーネ
4人:カリフラ,フリーザ,ブロリー,サラガドゥラ
3人:ケール,悟空,悟飯,ベジータ
2人:ヒット,ベリー,亀仙人
1人:キャベ,ピッコロ,ベルガモ,ディスポ,トッポ,モギ

宇宙別:
第2宇宙:0 第3宇宙:0 第4宇宙:0 第6宇宙:20
第7宇宙:40 第9宇宙:2 第10宇宙:0 第11宇宙:10


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