とある一族の落ちこぼれ   作:勿忘草

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今回から16人の本戦が始まります。
一試合で何話か書ければいいのですが、グダリもあっけなくもない塩梅で進めていきます。



『本戦トーナメント』

翌日、みんなが体を回復させて気力を充実させた状態で全王様の宮殿へと向かう。

界王神ならば可能という事で関係者をみんな観客席に送り届ける。

そしてその後に参加選手だった俺達10人を送る。

 

「一番乗りかな?」

 

そう言うと気配を感じる。

もうすでに誰かがいる。

そう思って入っていくと、第1宇宙のイワン様がいた。

 

「強き戦士よ、一番は我々のものだ、そしてルタが勝者となる」

 

そう言って近づいてくる。

ケブルーの隣にいる2メートルを超える筋骨隆々とした男。

それを見た瞬間、ピッコロが俺の前に出る。

 

「あんた、ナメック星人だな」

 

その言葉を聞いて頭を下げる。

見た目こそ人間そのものだが……

同族だから分かる何かがあったのだろうか?

 

「消滅した宇宙にも同族がいたとは思わなかった」

 

ピッコロがそう言うといきなりピッコロの手を取る。

少し友好な感じにしては嫌な予感がする

そしてこともなげに……

 

「むっ……」

 

ピッコロの腕がちぎれた。

意図したわけではないが軽く揺らしただけである。

再生したのを見てさらに驚いていた。

 

「どうやったらそれができる?」

 

ピッコロはきょとんとしていた。

自分の腕を平然と引きちぎるほどの実力者が再生能力を使いこなせないという現実。

とは言っても悪意なく普通にやってちぎれているので嫌悪感もなかった。

しかしその実力の片鱗を見せられているような気がする。

 

「教えてあげた方がいいと思うか?」

 

俺に聞いてくる。

出来れば教えなくてもいいとは思う。

しかし、ここは教えておくべきだ。

相手がその気になれば口を割らせるための武力行使もあり得る。

下手な刺激ほど危なっかしい事はない。

 

「良いのかね?」

 

ピッコロとルタが去った後にイワン様が俺に言う。

良いも悪いもしなければ貴方がピッコロを破壊する可能性もあったので。

そう言うと少し怒気を孕んだ目で俺を見る。

 

「それほど器が小さいとでも?」

 

そう言う気は別にない。

しかしそれをできるだけの能力はある。

そしてこの度のお祭り騒ぎ、普段とは違う心が鎌首をもたげる可能性はある。

そう伝えると……

 

「確かに浮足立っているのは認めよう、それに事を荒立てる可能性は消しておきたいものだ」

 

こっちの言葉に納得をしたのか第1宇宙は用意された部屋に入っていく。

本戦出場選手には一人一人の部屋まである。

流石にこれには優越感を感じてしまう。

 

「とにかく大神官様たちに到着を伝えよう」

 

ビルス様が俺達を含めた3名を連れて全王様の部屋を訪れる。

全王様が見てくる。

そしてトテトテとこっちに近づいてくる。

 

「ありがとうなのね、楽しかったのね」

 

消さなくてよかった。

だからもっとワクワクさせてほしい、ドキドキさせてほしい。

そう言って全王様は玉座へ戻る。

 

「皆さん、もうすでに関係者の部屋に入られているようですね」

 

到着は2番目です。

そう言われて少しばかり安心をする。

皆さん、呼ばれるまでは自室で待機しておいてください。

その通達の後、俺達は部屋に分かれる。

 

「ルタという戦士……最強に恥じないだけのものが見えた」

 

あのピッコロとのやり取りの時にルタが持っている気に一瞬包み込まれた。

しかし一瞬でそれは消えた。

気のせいとは思えない。

 

「とにかくウォーミングアップでもして……」

 

そう言った瞬間、扉が開く。

そこにはベジータがいた。

わざわざ俺の所に来るなんて何かあったのか?

 

「お前のウォーミングアップにこの俺様が付き合ってやるという訳だ」

 

ピオーネやカカロットのウォーミングアップには誰が付き合うんだ?

俺一人がアドバンテージを持ってしまうと……

しかしそんな俺の気持ちを汲んだのかベジータが言ってくる

 

「カカロットに関しては悟飯が来れたから問題ない」

 

さらにピオーネにはサラガドゥラが付く。

実力的にはブロリーで十分なのだが、傷つける可能性を減らす為らしい。

それなら気兼ねなく俺も取り掛かれる。

 

「本気で来い!!」

 

ウォーミングアップとは言えど生ぬるい真似は許さない。

それを表すように超サイヤ人ブルーになって攻撃を仕掛けてくる。

こちらも超フルパワー超サイヤ人4で相対する。

 

「ハアアッ!!」

 

速度があるラッシュ。

キレまであって生半可な回避では皮膚を切り裂く。

顎に当たれば意識を刈り取るカミソリのような切れ味鋭いパンチ。

 

「フッ!!」

 

こちらも息を吐き出してその攻撃を回避する。

受け止めるとさらに押し込むために回転をあげるだろう。

回避をしつつも腕を捕まえに行く。

 

「甘い!!」

 

それを蛇のようにすり抜けさせる。

速度が有り、急ブレーキをかけるフェイント。

卓越した技のたまものだ。

 

「易々とはくらわん!!」

 

すり抜けてきた一撃を叩き落していく。

そして懐まで詰める。

ベジータがバックステップついでにジャブを放つ。

 

「ちっ!!」

 

ジャブを喰らってしまう。

しかし次の攻撃を喰らわないように構える。

そして集中していく。

 

「『我が身に委ねる』」

 

本気で来いといったなら。

これこそが全力の証。

さて、第2ラウンドだ。

 

「そうだ、その状態を見せろ」

 

そう言うベジータに接近。

攻撃を最小限の動きで回避をしながら懐へ入り込む。

隙の無い動きでこちらを牽制してはいるが……

 

「はっ!!」

 

尻尾で足元を絡めとる。

気づいたベジータが跳躍。

それを狙ってのアッパー。

 

「ばっ!!」

 

爆風のような息で落下を止めて蹴りを放つ。

それを掴んで放り投げる。

いつもなら喰らいかねない動きもこの状態ならば回避できる。

 

「くそっ!!」

 

ベジータが悪態をつきながら着地をする。

その隙を逃すまいと再度懐に体を押し込む。

額を胸にこすりつける様に固い頭でぐりぐりと。

 

「くっ!!」

 

こうなると俺の頭部がつっかえとなりベジータの動きが限られる。

腕力で引き剥がしにかかる。

それこそが罠。

俺はすぐに頭部を離し、腕を動かしたことによってがら空きの心臓へ一撃を放つ。

 

「がっ……」

 

ハートブレイクショット。

一瞬、時が止まったように回避不可能の状態となる。

ハートブレイクショットの一撃はベジータの隙を狙った己の本能が導いた最適解である。

そして返しの刀はどうあがいても回避不可能な一撃。

 

「終りだ!!」

 

硬直が解けるがもはや無理だ。

しかしその予想を覆してくるのがベジータ。

肘を拳の軌道に合わせていく。

固い肘に当たれば拳は玉砕。

したたかにこちらの自爆を狙っていた。

だがそんな一撃を掴む一つの影が現れた。

 

「貴様……ジレン!!」

 

ベジータが激昂する。

いつの間に部屋に入っていたのか、ジレンが前に立っていた。

俺は『身勝手の極意』を解く。

 

「ジレン、お前も到着したのか」

 

すると後ろからトッポ達も出てきた。

ベルモッド様がニヤリと笑っている。

まるで貸し一つだというように。

 

「お前との戦いのせいで昨日は眠れなかった」

 

そう言うと力があふれ出す。

触れては火傷では済まされない灼熱のような闘気。

息が詰まる威圧感さえも昨日のまま。

臨戦態勢なのだ。

 

「この熱い炎を全てお前にぶつける、それだけだ」

 

そう言うと去っていく。

それを追ってカーセラル達も向う。

トッポとディスポがいるがトッポもこちらに拳を突き出してきた。

良い戦いをいようという意思表示なのだろう。

 

「ジレンから狙われるとはな、全宇宙で最も不幸な野郎だぜ」

 

頬をかきながらディスポが言う。

それは普通の戦士の発想だ。

俺たちサイヤ人からすれば強者に認められたという事。

それが嬉しいのだ。

それに言うのもなんだが……

 

「残り8人となっていたあの時点で誰も一筋縄でいくはずがないと思っているし、覚悟があるのさ」

 

ましてや回復アイテム無しでのトーナメントマッチならばどうなる?

全員が満身創痍のままの戦いにしかならない。

その時点でこの戦いにおける相手の選り好みなど大したものではない。

 

「カッコつけやがって、どうなっても知らねえぜ」

 

そう言って去っていく。

するとその姿を見ていたのか笑っている人がいた。

それはバーダックさんだった。

 

「ベリーに負けちまう程度の奴が何言ってんだ」

 

そう言ってこっちを見る。

こっちの体勢を見て口角をあげる。

獰猛な笑みの形へと変わっていく。

 

「やる気があって嬉しいぜ」

 

どいつもこいつもぶっ倒すだけだ。

そう言って指をゴキゴキと鳴らして去っていく。

相変わらずのその姿に苦笑いを浮かべていた。

 

「気持ちはわかるが抑えるのも度量だがな……」

 

ヒットがコートなしの状態で居た。

既に臨戦態勢である。

その後ろにはケールやキャベがいた。

こっちに頭を下げて挨拶をする。

 

「随分と集まってきたようね」

 

第9宇宙のモギも紛れてそこに居た。

綺麗なケープを纏っている。

まさに女王といった衣装で今回は戦うようだ。

 

「貴方をこの歯と爪で仕留めてあげる」

 

笑顔と手のひら。

その二つにはあからさまに武器と言えるものが見え隠れする。

俺にとって練磨し続けた拳や脚の様に。

あれもまた彼女の在り方なのだ。

 

そしてしばらくすると大神官様からお呼びがかかる。

どうやら全宇宙が集合したようだ。

くじの抽選を始めるという事。

俺が行くと15名がその場にはいた。

それを見ているのは破壊神や観客。

 

ジレンとトッポ、ピオーネとカカロット。

バーダックさんとヒット、そしてモギ。

勝者宇宙の8名。

そして免除宇宙の8名。

第1宇宙のルタとケブルー。

第5宇宙のアレキサと輝かしい光沢を放つもう一人の戦士。

第8宇宙は両方とも知らない女性、気品のある姿からまさかとは思うが王族ではないだろうな。

第12宇宙はケージンと、痩身の男性。

 

「それではくじを引いていきます」

 

誰と誰が当たるかわかると面白みに欠けるので私にしかわからないようにしております。

そう言って用意をした。

まずは誰が引くのか。

 

「落とした数が少ない方の五十音順と免除宇宙の選手と交互に引いていきます」

 

つまり最初はモギか。

モギが引いて大神官様に見せる。

それだけで終わる。

まさに誰が相手かわからない。

しかしだからこそ楽しいものもある。

次々に皆が引いていく。

 

「ガタバルさん、どうぞ」

 

8人落としたメンバーを並べてしまうと……

自分、バーダックさん、ピオーネ、ヒットの順になる。

間違ってはいないが中ごろに引くという事。

本来見えていれば対戦カードが決まっているというような順番だ。

 

「んっ……」

 

手を突っ込んで引っ張りだす。

番号こそ見えてはいない。

だが今掴んだものに違和感を感じている。

 

「一体何が……」

 

観客席のどこかからキキキという笑い声が聞こえたような気がした。

そして皆が引き終える。

一度控室に戻って舞台を再度整えて審判を用意する。

どうやらラムーシ様が務めるようだ。

脱落した宇宙の中では一番適任な気がする。

 

「それでは対戦カード:第1試合の発表を行います」

 

対戦カードの発表。

皆が緊張の最中。

その隠されていた部分が明らかとなる。

そして現れたカードは……

 

「第7宇宙代表:孫悟空選手!!」

 

いきなりカカロットの戦いか。

対戦相手は誰なのだろうか?

生き残った奴らの中でもトッポかモギでないと一回戦に終わってしまうだろう。

 

「悟空頑張れよー!!」

 

クリリンたちが応援をしてカカロットが武舞台へ上がる。

そして首をコキコキと鳴らして、体をほぐす。

 

「そして向かう相手は第6宇宙代表:バーダック選手!!」

 

その瞬間、第6宇宙の人たちの熱気あふれる応援。

そして第7宇宙にいるバーダックチームたちからも声援が上がる。

ギネさんとラディッツさんは非常に困った表情で二人を見ていた。

 

開幕戦はまさかの親子対決となった。

それは同時にカカロットの敗北を意味する。

片ややる気満々のカカロット。

どこか冷めた目のバーダックさん。

あまりにも対照的な二人。

『力の大会 本戦トーナメント』が始まろうとしていた。




とにかくお灸を据えるのはこの人以上に適任なしだと思いました。
まさかのジレン、興奮して眠れなかった勢。
そしてベジータからウォーミングアップ相手の申し出という。

指摘などありましたらお願いします。

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