とある一族の落ちこぼれ   作:勿忘草

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ルタVSトッポです。
その後に対戦を始めています。

日曜日の超でジレンの過去が明かされましたね。
願いはまだ出てこないですが。


『破壊の化身』

互いに向き合っている。

ルタは陽炎のように揺らめいている。

気で己を包むようにしているから実現できているものだ。

 

「覚悟は決めたのだ」

 

おもむろに服を破り捨ててルタを睨むトッポ。

肌は紫がかっていく。

筋肉が隆起して、本当に昨日までと同じ人物かと疑う。

 

「誰にも負けぬ強さ、栄光のため、欺いた者へ購わせるために!!」

 

こちらを睨んでくる。

内心、はらわた煮えくり返っていたのか。

しかし、ジレンと張り合っていたあの戦い。

あれを見て、今の自分で勝てぬと決断したのだろう。

 

「全てを捨てると!!」

 

そう言ってルタに突っ込む。

それと同時に大神官様から試合開始を告げられる。

岩のようなトッポの拳。

威力も速度も上がっている。

それをルタは手を前に差し出して……

 

.

.

 

 

「そい!!」

 

俺は掌底で顎を叩く。

最小限の動きで相手の出鼻を挫く。

そして脇下に腕を差し込むと『ダブルアーム・スープレックス』の体勢を取っていく。

 

「まずはこっちの攻撃だ!!」

 

そのまま大木を引っこ抜くような勢いでトッポを投げる。

それに対してトッポは空中で体を反転させる。

だがこちらの追撃はやまない。

 

「まだまだ!!」

 

『キッチンシンク』を叩き込む。

空中で体勢を入れ替えた相手でも、こっちから全て読める。

さらに容赦なく頭を掴むと一気に引き寄せる。

 

「頭蓋を砕いてやる!!」

 

『ココナッツクラッシュ』でトッポの頭に自分の膝を叩き込む。

その一撃に意識が飛んだのか背中をつけてダウンする。

あの何の変哲もない技の連打で今のトッポからダウンを奪った。

 

「まだやれるなら早く立ってくれないと困る」

 

そう言うと跳ねあがる様にトッポは起きる。

そしてローリングソバットを放つがそれを受け止める。

威力は強いが腕が痺れるような感じもない。

 

「破壊神になったのにその程度なのか?」

 

力が上がったようだが、それほど脅威に感じない。。

少しばかり、自分が思い描くような神の強さかと思っていたのだが。

やはりなりたてのものに対してそれは高望みか。

 

「今、真骨頂を見せてやる……」

 

手のひらをこちらに向けると紫の気弾の様なエネルギーが射出される。

そのような技が真骨頂か?

少し拍子抜けだぞ。

 

「『破壊』!!」

 

その言葉が響く。

回避してはいたが直撃した壁が砂のようになる。

なるほど、イワン様のものと同じか。

神々しさがなく禍々しさがある。

きっと他人を己の為に破壊しようとしているからなのだろう。

 

「それが奥の手ならば……」

 

下らない。

その感情を押し殺して相手に歩みよる。

己の肉体が微塵も干渉しない。

ただただ、楽な力。

ゆえに破壊神も有事や己の使命以外の使用は軽々しく行わない。

 

「使命でもなく勝つためだけに使うお前は見苦しい」

 

そう言って構える。

トッポを倒すために本当の強さを見せてやる。

全力で相対してお前の目を覚ましてやろう。

 

「はああああああ……」

 

この会場中にある熱が冷めるように。

ただひたすらに吹きすさぶ風。

雪が徐々にちらつき始めて肌につく。

気が風となり雪をかき集めていく。

その風貌、吹雪を纏うがごとく。

 

「はー!!」

 

解放した瞬間、周囲に氷柱が出来上がる。

極寒の北風のような暴威を振るおう。

覚悟を決めて全てを捨てた男よ、次は敗北の覚悟を固めるがいい。

 

「フッ!!」

 

懐に瞬く間に忍び込む。

破壊をする間もなかったようだ。

こちらの気の量に呑まれたか?

 

「容赦はしない」

 

アッパーの一撃を放つ。

相手はピクリを体を動かして防御をする。

防御が何の意味もない事を教えてやる。

 

「カアッ!!」

 

腕の骨が軋むような重い一撃で防御を弾き飛ばす。

頑丈になっていなければ腕の骨に罅が入っていただろう。

それぐらいの手応えがあった。

がら空きな脇腹へ蹴りを見舞っていく。

 

「『破壊』!!」

 

こっちの攻撃に合わせて足を狙ったか。

無駄な真似が好きなようだな。

そんな回避方法では……

 

「お前の腕が逆に破壊されるだけだ!!」

 

手のひらで受け止める事ができない、途轍もない威力の蹴りをトッポは喰らう。

『気』を『破壊』の力を超える量で纏えば防げる。

幸い、気は莫大にあるから今のトッポぐらいの破壊には耐えきれる。

 

「ぐああああっ……!!」

 

うめき声をあげるトッポ。

その理由は明確だった。

腕は完全に折れてしまった。

さらに肘の開放性骨折。

 

「うめき声をあげる暇はないだろう」

 

一気に脇腹に狙いを定める。

もう勝負を決める。

『破壊』に頼った愚か者に、神の力を甘い覚悟で持とうとした奴に。

 

「絶望的なまでの制裁を」

 

片腕で俺の拳を防ごうとする。

わざわざ防げる場所を狙う奴が居るのか?

がら空きの場所だけ狙う。

最後に何もできない状態になるように。

 

「だああ!!」

 

防御を間に合わせずに脇腹を蹴りぬく。

アバラを数本圧し折って横薙ぎに飛ばす。

それを超える速度で追いつくと頭を掴んで武舞台へ叩きつける。

 

「ぐはっ!?」

 

頭を掴んで起こすと、そのまま無造作に上空へ投げる。

そしてそのままこっちが跳躍して追い越す。

アバラと片腕が折れても攻撃の手は緩めない。

 

「次は……」

 

蹴って武舞台へ叩きつける。

仰向けで大の字の状態となったトッポ。

それを見てこっちは落下速度をあげる。

膝を立てて足めがけて徐々に落ちていく。

 

「ちょろちょろと動き回れないように足だ!!」

 

ボキッという音を立てて足が折れてあらぬ方向に曲がる。

しかしこれでもまだ終わらない。

まだ片足と片腕が残っている。

全て奴の体が戦いの機能を無くすまで。

 

「神の領域に踏み入れるまでは許そう」

 

俺とてその次元に至っているのだから。

だがそうであっても許されないもの。

それは破壊神となったのであれば…

 

「御業を軽々しく使い、品位を下げたことがお前の罪」

 

神に相応しい心と振る舞い。

それを知らずに技を使うのは憚れるもの。

その償いの裁きを俺は与えているのだ。

 

「お前の言い分を聞いてやってもいい」

 

歯を食いしばり、痛みを紛らわそうとしている。

これでは話すこともできないな。

すぐにその意識を断ち切ってやろう。

 

「もう一本!!」

 

片足に腕を絡みつかせる。

そして力任せに圧し折っていく。

軋む音なんてほんの数秒。

あっという間にボキッと音が響く。

 

これで残ったのは片腕のみ。

『破壊』ももはや使えない。

むしろ段々と力を失っている。

 

「無様に朽ちろ」

 

そう言って最後の仕上げに入ろうとする。

しかしまだ闘志を失ってはいなかった。

歯を食いしばってこちらを睨む。

 

「ぬがあああ!!!」

 

気弾を推進力にしてこちらへ突撃してくる。

そして拳を握り締めて気を集中させていく。

これで一発逆転でも考えているのか?

 

「私の全力をこの一撃にかける!!」

 

そのボロボロの肉体では全てをかけても俺には手傷を負わせられはしない。

万全ならば受け止める構えを見せていた。

しかしこれならばもはやこれで十分。

 

「私の全力が手のひらで……」

 

手のひらで易々と受け止める事で奴の希望を根こそぎ砕く。

その事実で目から光を無くすトッポ。

そして最後の綱であった腕を圧し折るために絡みつかせる。

これで十分な勝利になる。

だがまだ容赦はしない。

 

「まだアバラを折るのも残っているんだからな」

 

そう言って横に陣取って体が浮き上がるほどの蹴りを脇腹へと放つ。

またもやバキバキという音を立てて骨が折れていく。

内臓に骨が刺さっていないあたり、運がいいようだな。

 

「この一撃で終わりにしてやる」

 

神になったつもりでいた者の償いの完遂。

それは敗北と痛みを持って初めて成立がされる。

そのまま場外負けとさせるために前蹴りで壁にめり込ませようと振りかぶる。

するとこの光景に何か感じ居るものがあったのか。

一つの影がとてつもない速度で迫っていた。

 

「いい加減にしやがれ!!」

 

ウサギ型星人がトッポを抱えてこっちの攻撃の距離から離れる。

溜息をついて蹴りを止める。

お前のやったことがどれほどのことが認識しているのか?

 

「水を差してただで済むと思っていないよな」

 

大神官様と全王様が見ている前でやらかしているのだぞ。

消滅する可能性もある。

お前らの友情とか仲間思いが今回は身を滅ぼす結果につながるのだ。

それに規律上、殺す気はない。

 

「いえ、彼は最早戦闘続行の状態でなかったので、不問といたします」

 

全王様は凄い凄いと言っていたから許された。

これで勝者は俺になるはずだ。

俺はその確認を取った。

 

「ええ、第三者介入によりトッポさんは脱落となりますのでルタさんが勝者です」

 

それならばよし。

再試合ならばもう容赦せずノックアウトさせるつもりだった。

十分力の差を見せつけることもできた。

神の力を軽々と使う不届きものに制裁を与えた。

 

「研鑽して神の振る舞いをまず身につけろ」

 

そう言って去っていく途中。

第7宇宙のガタバルとやらが睨んでくる。

今の動きに何か思う事があったのか?

 

.

.

 

「あそこまでする必要はあったのか?」

 

両足を砕き、アバラを全て圧し折っている。

明らかに相手を倒すには超過したダメージ。

過剰なまでの攻撃だ。

すると悪びれた様子もなく肩をすくめる。

 

「俺はいつも通りに蹴りを放って、いつも通りに拳を打っただけだ」

 

意図した部分は足を膝で折りにいった時と絡ませて折った時。

アバラと片腕に関しては自分が普段の全力で相手をしただけの話。

それを耐えられないトッポにも問題はあると言ってきた。

 

「お前の一撃を耐えられる相手なんてそうそういないだろうがな」

 

そう言ってこちらもため息をつく。

こいつの攻撃を見る限りはジレンに近いものを感じる。

特別な力などおおよそ使った事がない。

ただ、その己が持つ力を研鑽によって果てなく積み上げた存在。

 

「あの男の神の御業を使えば勝てるなどという思い上がりを潰した」

 

『破壊』にばかり頼ろうとしていたトッポの事を言っているのだろう。

あいつは確かに破壊神としての力を身につけた後、『破壊』しか使っていなかった。

鍛え上げた肉体が泣くような真似をしていた。

 

「それについては制裁としてやったことも認める、しかし俺はあの振る舞いを悪いとは思わない」

 

その言葉には強固な思いがあった。

神の威厳を守るのも役目。

力を手に入れたとはいえど神は神。

敬われる模範的な振る舞いを本来するべきだというように。

 

「破壊神になれれば勝てるなど簡単にこの戦いを考えていたのではないか?」

 

その言葉に少しばかり思うところがある。

破壊神の力や能力は地力のアドバンテージとなっていく。

それならば勝てる可能性が飛躍的に上がる。

ましてやトッポは第11宇宙のナンバー2。

 

「きっとあいつは自分の強さを考えたうえで、リスクを背負わないなどと計算づくだったんじゃないのか」

 

その言葉に俺はこくりと頷く。

全員が代表宇宙で一番、もしくは二番の相手。

そんな浅はかな考えで勝てる軟な相手なんかじゃない。

まだ、負けても己を貫いた方がましだろう。

 

「あれではただトッポは無様な結果を生んだだけ」

 

俺の言葉にルタが頷く。

神の技を安売りして敗北。

それはその宇宙の神の強さに疑問を抱かせる。

 

「お前らがあのような軽率な真似をしない事を心から願っている」

 

神の御業。

それを使うから痛めつけるような真似をしたわけではない。

神の力は人のため、世のための存在に他ならない。

それを己の勝利だけに目を向けた理由で使う事に腹を立てた。

故にあれだけの攻撃を加えた。

 

「こっちは神の力を軽く扱うような精神は持ち合わせてもいない」

 

その言葉に虚偽はない。

それを感じ取ったのか柔和な顔になる。

そしてこちらの肩に手を置く。

 

「そういえば気づいているのか?」

 

神妙な面持ちでこっちを見てくる。

何を気づくことがあった?

俺は何が何かわからずに首をかしげる。

 

「そちらの対戦相手はきっと不正されている」

 

なんだ、そんな事か。

確かに引く時には違和感はあった。

だがそんな不正なんてものは気にしていない。

何故ならば……

 

「誰が来ようとやる事なんて変わらないからな」

 

そう言って次の試合の為に集まる場所へ向かう。

そして大神官様がとんでもない事を言い始めた。

トーナメント表の決まった相手ではつまらないし、もっと楽しい試合が見たいという全王様の要望。

 

「つまりベスト8が出そろった時点で再度抽選を行います」

 

それは望む相手との対戦を決勝まで待たなくていいという事。

その提案に全員が微笑む。

そして第4試合のカードが明かされる。

明かされる瞬間、運命のように互いを見ていた。

 

「第7宇宙代表:ガタバル選手、そして……」

 

皆まで言うなと手で制す。

そして対戦相手の方に視線を向ける。

無言で武舞台へと向かっていく。

 

「……」

 

背中を向ける。

対戦相手なんて聞く必要もない。

そして相手が武舞台に来た次の瞬間……

 

「シェアアア!!」

 

飛び後ろ回し蹴りを放っていた。

すでに超フルパワー超サイヤ人4と『身勝手の極意』を使用している。

出し惜しみは全くない。

 

「ハアアッ!!」

 

それに合わせた前蹴りで相殺をしてくる。

互いが顔を見てニヤリとしながら着地する。

それを見ていた大神官様が手を下げて試合の初めを告げようとしている。

 

「それでは第4試合、第7宇宙代表:ガタバル選手と第7宇宙代表:ピオーネ選手の試合……始め!!」

 

その言葉と同時に駆けだす。

互いに『身勝手の極意』を使っている。

これで都合4回目の戦いとなる。

今日こそは貴方を超える。

その一念で今、向かい合っていた。




イカサマはキテラがやったが、結局関係なく引き当ててました。
対戦カードシャッフルは試合カードに自由度を持たせようと思ったからです。

何かご指摘の点がありましたらよろしくお願いします。

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