とある一族の落ちこぼれ   作:勿忘草

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今回で対戦2話目です。
次回決着をめどに書いていこうと思います。


『たった一つの思い』

立ち上がって相手を見る。

息切れを少し起こしている。

大技を隙あらば撃っているわけだから消耗は互いにある。

相手にいいようにやられているというわけでもない。

 

「まだまだ!!」

 

拘束を解いたピオーネに飛びかかる。

バックステップをしていくが逃がさない。

手を後ろの地面に向ける。

 

「はっ!!」

 

気弾の推進力で後ろに下がるよりも距離を詰める。

そしてそのまま頭突き。

腹部に大きく衝撃を与える事が出来た。

 

「くっ!!」

 

起き上がってくるピオーネに膝蹴りを叩き込んでいく。

それを受け止めると同時に体を捻転させての延髄切り。

それを防ぐが距離を取り技を放つ。

 

「『ファイナル・フラッシュ』!!」

 

光の一撃がピオーネを呑み込む。

それに安堵することなく瞬間移動。

後ろに回っていく。

 

「甘いわよ」

 

後ろ手に俺を捉えようと手を伸ばす。

だがそれは空を切る。

姿勢を屈めて手を避けていた。

 

「それは、こっちのセリフさ!!!」

 

そのまま手を掴んで振り回す。

グイングインと音を立てていく。

そのままハンマー投げのように放り投げていく。

上空を斜めに舞うピオーネへ照準をつける。

 

「『デスビーム』!!」

 

フリーザの技を使う。

今までの技は全て出させてもらう。

出し切らねば勝てない。

 

「『どどん波』!!」

 

同じ系統の技。

威力も同程度になっている。

追尾性能がある俺の技。

回避していれば、技を出す余裕がないほど追いかけるから、相殺などもなかったのだが。

 

「これならばどうだ、『新狼牙風風拳』!!」

 

超速度の連打。

ちなみに、足元に油断はない。

たとえ、誘いのものでも潰してくる。

足がお留守なら手痛い一撃、騙しを考えても手痛い一撃。

そうなれば真っ向から打って、相手の綻びを見つけて叩き込まないといけない。

 

「『鶴翼の舞』!!」

 

桃白白の技で相手も対応する。

肘の一撃を当てれば相手も肘を当ててくる。

鏡合わせのように、同じ攻撃で互いを打ち付けあう。

フェイントでもクロスカウンターになっていく。

 

「カアッ!!」

 

弾き合って再度距離を置く。

肉弾戦でも徐々に差が詰まっていく。

互角のはずなのになぜ相手が優勢なのか?

それは経験の差。

ピオーネは俺より年上。

かつての女王の君臨した期間。

勝負勘がその分研がれている。

あとは自分への自信、それが技の完成度につながる。

 

「まだまだいくぜ!!」

 

そう言って指先を全て相手へ向ける。

相手の技を見て己のものにするのはいつもいいものだ。

それが使いやすいものならば尚更な。

 

「『ジャスティスフラッシュ』!!」

 

紅色の気弾を放つ。

この物量に対しての対策をピオーネが打つ。

忌々しい存在の技だったが、それを持ち込まない。

 

「『神裂斬』!!」

 

桜色の刃が振られて切り裂かれる。

そして接近してこっちの腕を切り裂いてくる。

それを見極めて……

 

「りゃあ!!」

 

真剣白羽どりで止める。

そして腹部へ強烈な蹴り。

距離を開かせる前に技を使って逃がさない。

 

「『ディスリリース・ドーナッツ』!!」

 

『ギャラクティカ・ドーナツ』に鎖型の気弾をつけた気弾。

捉えたまま膂力を活かし引き寄せていく。

そして片腕を高々と掲げて頭を掴む。

 

「うぉおおおお!!」

 

雄たけびとともに頭を武舞台へ叩きつける。

ここが好機。

大技を使わせてもらう。

 

「『ギガンティック・ミーティア』!!」

 

巨大な気弾で追撃。

この一撃はグロッキーに追い込む。

ピオーネは起き上がるがさっきの俺と同じほどのダメージを負っている。

 

「強靭さは流石だよ」

 

基本的に考えても今までの技は相手を倒すには十分だ。

それを複数個、お互いが使っているのだからな。

こっちを視界にとらえたまま、ゆらりと動く。

気がピオーネを包み込んで、まるで陽炎のような状態となる。

 

「行くわよ!!」

 

一瞬で目の前から消える。

トップスピードが変わったのか。

それを見たディスポが大きな声で驚く。

 

「俺の『超高速モード』だと!?」

 

最速の男の技能さえ盗む。

これはまずすぎる。

直線的な動きしかできないやつとは違う。

本当の使い方を見せてくれる。

 

「立体的に……」

 

身勝手の極意で感知できる速度を凌駕した。

回避不可能の拳足の嵐が吹き荒れる。

皮膚を刻むように、肉を打つように

圧倒的な手数が襲い掛かる。

 

「こうなったら……」

 

額に手をかざす。

瞬間移動でもこの速度で先回りしかねない。

ならばこれだ。

 

「『太陽拳』!!」

 

目くらましで難を逃れる。

転がりまわって嵐をかいくぐる。

だが次の瞬間……

 

「『跪きなさい』」

 

膝立ちになっていた。

イエラの技能まで使うくらいなりふり構わないのか。

同格であれば通用してしまう。

振り切って体勢を整えるが遅い。

 

「がはっ!!」

 

膝蹴りを入れられて吹っ飛ばされる。

そして見覚えのある構えで技を放つ。

そっちがそう来るのならばこっちはこの技だ。

 

「『かめはめ波』!!」

 

こちらに向かってくる技に対してこの技で相対する。

同じ系統同士でぶつけるのが最善手だ。

打ちかてばさらに言う事なし。

 

「『ギャリック砲』!!」

 

ぶつかり合う気功波。

相殺された瞬間に次の一手が飛んでくる。

それは接近戦。

 

「喰らいなさい!!」

 

『アルゼンチン・バックブリーカー』に捉えられる。

力づくで外しにかかるが本来の目的は違っていた。

そのままぐるぐると旋回をして、その遠心力で上空へ放り投げる。

 

「ぐっ!!」

 

体勢を整えようとするが上手くいかない。

遠心力によってそれをできないようにしているのだろう。

さらに跳躍でこちらに追い付く。

 

「さあ、仕上げと行くわよ!!」

 

俺と背中合わせになって技の動きへ移行する。

こちらの両足に対してピオーネが外側から両足を差し込む。

さらにこちらの両腕をピオーネが掴む事で、両腕の反撃も封じられた。

付け加えるように鳥の羽のようにこちらの肩を上げさせて痛めつけてくる。

徐々に体勢を反らしていって猛烈な圧力をかけて落下。

 

「心が折れる音を聞かせてもらうわ、『ラヴァー・ハーベスト』!!」

 

受け身を取らせない無慈悲な一撃は轟音とともに完成する。

またもや肉弾戦の強烈な一撃。

意識が飛ばない丈夫さ。

しかし肉体の悲鳴が聞こえる。

 

「まだ……付き合ってくれ」

 

起き上がって構える。

一歩も引きたくないんだ。

もうこれで技へのつなぎを失った。

残った己のフェイバリットが一つしかないピオーネ。

 

「俺にはあと2つあるんだ」

 

だからその駆け引きを間違えなければまだまだ勝機はある。

それまで心が折れる事は無い。

勝利を掴み取る。

気をまだ噴き出させてじりじりと距離を詰めていくのだった。

 

.

.

 

「まずいな……」

 

僕はあの二人の戦いを見て素直にそう言葉にした。

ガタバルの方が実力なら若干上かもしれない。

それでも、ピオーネの方が勝てている。

きっと、深層心理ではピオーネに対する苦手意識が刷り込まれているのだ。

ピオーネには逆にガタバルに対して得意な意識が刷り込まれているだろう。

 

「『身勝手の極意』がまた互いに極められていない戦いだがこれほどの次元になるなんてね」

 

顎を撫でて見応えがある戦いを反芻する。

ガタバルの一つ上を行く経験の差。

戦いの中でどこまでも練磨しあう二人。

戦いが一つの芸術として成り立っていた。

 

「極めていただければと思いますがねえ……」

 

ウイスは言うが僕はため息をついた。

一度真剣にあの技能と僕は向き合った。

そして一つの結論が出てしまった。

出てはいけない結論。

それは単純に僕が認めた愛弟子の限界を知らせるものだった。

 

「奴は極められないんだ、ウイス……」

 

『身勝手』と付くが故に。

『身体』が『勝手』に動くだけではなく、もう一つの『身勝手』。

すなわち悟空のような心がなくてはいけない。

純粋であり、戦いを楽しむ余裕。

それは己を満たす要因。

 

そういったものがガタバルからは著しいまでに欠如している。

良い形で言ってしまえば『人の為』に力を使い続ける心の優しさを持つもの。

悪く言うと『大人すぎた』が故に他者に捧ぐ事でしか見いだせなかった。

 

「ではピオーネさんは?」

 

あいつも同様だ。

ガタバルよりは可能性があるがあの二人は似た者同士。

別に金が欲しいからチャンピオンになったわけでもなく走った結果がそれ。

まあ、あいつにも言えるが、自分の強さがどれほどか知りたい。

その気持ちを『身勝手』ととらえるかはグレーゾーンだな。

 

「自分たちが心底戦いの中で自分のために何かを思わない限りは目覚めない」

 

僕はそう言って武舞台を見つめていた。

 

.

.

 

「だあっ!!」

 

抱え上げて放り投げていく。

逆襲の時間だ。

くるりと半回転して着地をするが甘い。

 

「ハアッ!!」

 

ローリングソバットで腹部を蹴りぬく。

ガードが間に合わないでピオーネが飛んでいく。

無尽蔵に近いスタミナは結構消耗されている。

大技を立て続けに出しまくっているからだ。

 

「よく耐えられたと感心するぜ」

 

そう言った俺の腕を掴むと一本背負いを放つ。

だがその力の強さは振り切れるほど。

背中を踏み台にして逃れようとする。

 

「フフッ!!」

 

不敵な笑みで足を取りドラゴンスクリュー。

それも振りほどくが、今度はクリンチのように密着。

こっちの距離に行かせないとする執念。

 

「体力回復ならそのまま離れ続けていればいいのに……」

 

無理に距離つぶしをやる必要もない。

こちらが瞬間移動を使うほど、焦らして迎撃すれば済む話。

それをしないのはひとえに……

 

「逃げているということを認めざるを得ない」

 

プライドが奮い立たせる。

相手に寄ってはちっぽけに見えてもおかしくないだろう。

しかし俺はそう思わない。

それがあるから戦えるものも少なからずいるからだ。

 

「てりゃあ!!」

 

裏投げでこっちに攻撃を仕掛ける。

それをするりと抜け出して肘打ち。

その攻撃を読んでいたというように頭をわずかに動かして回避。

すかさず逆襲の前蹴りが迫る。

それを捌くも高速タックルを仕掛けられる。

 

「ぬおっ!!」

 

電光石火の一撃。

それに合わせるように膝蹴りを打つ。

その瞬間、タックルの構えを変えて膝に手をつき、跳躍する。

 

「ハアッ!!」

 

ムーンサルト・プレスに切り替えてきたのだ。

体重に勢いを加えた重い衝撃が体中に広がる。

ピオーネにとって乾坤一擲の一撃だったのだろう。

ニヤリと笑って余裕を取り戻していた。

 

「流石と言いたいが……」

 

こっちも仕返しさせてもらうぜ。

余裕を浮かべた顔に向かってジャブを出す。

それをひょいひょいと避ける。

その瞬間に合わせて下段蹴りで足に一撃。

 

「むっ」

 

脛で受けるが僅かによろめいた。

その隙を逃すつもりはつゆほどもない。

顎へ頭突きを繰り出す。

 

「くあっ!!」

 

手を出して止めようとするが弾かれていた。

衝撃が顎に伝わっているだろう。

それを好機とみて足を掴み、ジャイアントスイング。

 

「ぐうっ!!!」

 

手をつき、旋回を止めてくる。

そしてばね仕掛けのように体を動かして逃れる。

そして逆襲が始まる。

 

「『ゴールデン・デス・ボール』!!」

 

フリーザの技を放つ。

両手を差し出して受け止める。

その一撃を受け止める間に気配を感じる。

 

「『四身の拳』!!」

 

とは言っても二人に分身した状態。

押し返そうとする俺に横槍の一撃を放つ。

 

「『魔穿撃滅波』!!」

 

その一撃が押し返す力が僅かに弱まる。

そのまま一気に飲み込まれていく。

自分を中心に武舞台がさらに崩壊する。

 

「グギギ……」

 

体から煙が上がった状態だ。

痛みが判断を鈍くさせてくる。

それは懐に入っても気づかない愚かな場面を作り出していた。

 

「『アルバトロス・ブラスター』!!」

 

懐に入り込んでいたピオーネが大技を放ってくる。

俺のお株を奪う場外行き一直線の一撃を喰らってしまう。

その勢いはすさまじく第6宇宙の観客席にまで吹っ飛ばされた。

 

「ぐっ…」

 

崩れた席からガラガラと音を立てて起き上がる。

カリフラやケールたちは驚いた顔をしている。

バーダックさんとヒットは当然だという顔だ。

 

「おまえ……大丈夫なのか?」

 

シャンパ様ですらちょっと気を使うほどのようだ。

大丈夫ですと手を振り、飛び降りる。

 

確かに大技喰らったりピオーネ優勢な場面が続いていた。

こちらの上を行くように戦う。

しかしあっちにもダメージはある、見た目ではなく中身を見ると先に仕掛けてこちらにペースを掴ませまいとしている状態。

そこを耐えきると少しずつ差は縮まる。

まあ、今のような土壇場で出される底力は恐ろしいけれど。

 

武舞台へ向かう足が止まらない。

それもそのはずだ。

目の前にいるのならば俺は戦う。

何故なら……

 

「勝ちたい……」

 

幾度となく思う心。

きっと叶うと信じてやまない願い。

それに向かうための努力もやってきた。

 

「誰かの為でもなく……世界の為でもない」

 

ただ一人だけにしかこんな思いを抱くこともないだろう。

全てはそう……

 

「貴方との戦いだけはどんな時も自分の為に……!!」

 

体からまたもや力があふれ出す。

暴れるように、出口を探し求めている。

それは全体を包み込んでいく。

その光に呑まれる中、俺はピオーネを見据えていた。

 

.

.

 

「唯一、確かにそうだったな」

 

ベジータが頷く。

一体何がわかっているんだ?

するとベジータだけではなく悟飯も言ってくる。

 

「もし、自分のために戦う人がいるのならピオーネさんだけ」

 

まだ若い頃から、一度も勝てていない相手。

憧れた人には認めてほしいというものがあった。

しかし、そうではなくただ純粋な勝利への欲望。

それをむき出しにして戦いたがるとなれば、この世にたった一人。

 

「つまり身勝手の極意の完全体を見ること、戦う事が出来るのは」

 

珍しく、冷や汗をかいているピオーネ。

お前の為に目覚めた力。

どれほどのものか、味わってみればいい。

 

「そして僕に身勝手の極意のすべてを見せてくれ」

 

僕は自分の予想をいい意味で裏切られたことに笑みをこぼしていた。




完成させないと思っていましたが、限定解放という形で完成させました。
ピオーネの対戦以外は完成バージョンになれないです。
次回で終わりになった後はジレンの対戦やほかの面子の部分は、1話か1.5ほどの内容で完結の試合にする予定です。


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