とある一族の落ちこぼれ   作:勿忘草

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一回戦終了です。
ダイジェスト気味にしておきました。


『正義の頂点』

俺は今観客席にいる。

激戦を終えて、天使による武舞台の復旧。

そしてついに優勝候補筆頭が出てくる。

対戦相手は第5宇宙のダイヤ。

これでアラク様の宇宙は敗退確定だ。

気の毒である。

 

「強靭な皮膚などあいつにとってみれば……」

 

紙くず同然でしかない。

それほどの世界の住人。

見せてもらうぞ、お前の戦いを。

 

体中から灼熱を噴き出すように武舞台へと昇っていくジレン。

その姿は太陽が人になったよう。

俺たちの戦いに触発されたのだろう。

宮殿が地鳴りを起こすほどの気だ。

 

「ふぅううう……」

 

呼吸を整えるだけでもびりびりと威圧感が伝わる。

相手はこれを受け止め続けなくてはいけない。

さて……始まるぞ。

 

「始め!!」

 

大神官様の言葉とともにジレンがダイヤへと向かっていく。

体中から噴き出す灼熱の闘気が敵を苦しめる。

空気が燃えるように熱気を帯びていく。

サウナの中で呼吸をすることが苦しいように、徐々にその気温に耐えられなくなる。

気で己を防御して新鮮な空気を吸える状態に常にしておくべきだ。

 

「中からやってしまうなど、機転も抜群だな」

 

体の表面ではなく内面からダメージを与えられる。

奴は呼吸を止めながらの戦いになる。

さて、どうやるのか楽しみだな。

 

.

.

 

「かあっ!!」

 

腕を振るう。

音を裂くように。

相手の動向を意に介さず己の高みへ目を向ける。

足をすくわれるなどという事もない。

 

相手は腕を交差して受け止める。

金剛石のごとく硬さ。

確かに最強の防御力と言っても差し支えの無いものだ。

 

「しかし……」

 

一度傷つけばもろいもの。

その弱点を知っているがゆえに打ち付け方を変える。

鉄槌のように当てる。

 

「がっ……」

 

相手が呻いているがお構いなし。

回避することも許さない。

脛を蹴り、機動力も奪う。

どこまでも攻撃の手は緩めない。

 

「速くなろうと関係ない」

 

手に灼熱の気弾を作る。

その一撃で決着になるかもしれない。

 

「終わるか……」

 

相手の突撃に合わせてカウンター。

そして相手が吹き飛んでいく。

気弾に対しては宝石の肌が健在の為、あまりダメージにはならない。

少しだけ感嘆する。

 

「ならば打撃で燃やし尽くすまで」

 

そしてラッシュを仕掛ける。

こちらの拳が砕けるのか。

奴の皮膚がはじけるのか。

それは分からない。

しかし一つだけ確信はある。

 

「ここで負けては意味がないと言う事」

 

奴が勝った以上、俺も勝つ。

俺の全力に相対できる戦士。

今は傷ついているから淡い願いにしかならない。

お前との再戦の切符を手に入れるために。

 

「だあっ!!」

 

脇腹に一撃。

くの字に曲がったところを頭突き。

その追撃で足を掴み、布のようにばさりと降る。

背中をしたたかに打ち付けさせる。

 

「グオッ!!」

 

相手の呻く隙に毒針エルボー。

腹部にめり込んだのを確認すると馬乗りになる。

一方的な体勢だ。

 

「宝石の肌でも延々と振り下ろされればひとたまりもあるまい?」

 

ごんと鈍い音を立てる。

それを繰り返す。

相手の顔が跳ねるがお構いなく。

噛みつきに来るも頭を掴み、阻止。

 

「その程度で緩めるわけないだろ」

 

そうは言ったが相手の皮膚が輝きを放って、目をくらませる。

それを隙とみて、抜けていった。

力を込めればそんな事もできるのか。

 

「だがもう一度通じる事はない」

 

抜けていった先に速度で回り込む。

奴の速度との差がなす状況。

苦し紛れに逃れても無駄だ。

 

腕を取りそのまま背負い投げ。

それを着地して逃れるが腹部がお留守。

 

「だぁ!!」

 

前蹴りをめり込ませる。

威力も速度も申し分なし。

相手は後ろに下がる事も出来ていなかった。

 

「ぐっ…」

 

宝石の肌と言えど衝撃が貫通したか、相手は体勢を崩す。

この場面が好機だ。

ここで仕留めさせてもらう。

 

「終りだ!!」

 

零距離で太陽のように熱量を持った巨大な気弾をぶつける。

気弾により宝石の肌に罅が入る。

 

「がはぁっ!!」

 

武舞台から吹き飛んで壁に激突。

相手は空気を全て吐き出して倒れ込んだ。

相手はピクリとも動かない。

 

「勝者、ジレン選手!!」

 

その言葉を聞き届けて武舞台から降りる。

わずか数分の戦い。

最高の硬さを持つ相手。

それ故に、自分の拳を心配したが杞憂だった。

頑丈さは確かにあの男よりもあったかもしれない。

だが、それでも総合的に見れば物足りないものだ。

 

「待ち遠しいな……」

 

胸の高鳴りが自分に笑みを浮かべさせる。

強さの正しさの証明ができる。

そんな思いでもあったが、自分にも幼子のような単純な楽しみたいという心もあったらしい。

 

.

.

 

「やっぱり次元が違う」

 

神を超えた存在。

そう言って差し支えの無い男。

イワン様たちへの障害に今後なるともいえる。

 

「俺が止めねばならぬ」

 

神の威厳を保つため。

あまりにも奴は危険だ。

人として不信仰の極みであり、名誉ともとれるもの。

しかし神の失墜を表す結果。

 

「神殺しの完遂はさせない」

 

実際に殺すわけではないのだが。

誰もが神を軽視するようになればそれは死と大差ない。

ここで俺が奴を倒して、上がいることを知らせよう。

 

そう言って去っていく中、殺意の匂いを感じさせるものが通り過ぎる。

なるほど、奴が次の試合に出るのか。

相手は第12宇宙のケージン。

しかし、この男の方が強い。

 

「気の毒な事だ」

 

これで残った強者は……

まずは俺。

第6宇宙のバーダック。

第7宇宙のガタバル。

第8宇宙のイエラ。

第11宇宙のジレン。

そしてこの男。

残りはおおよそ決まっているだろう。

 

「見させてもらおうか」

 

そう言って観客席に戻る。

相手の強さを観察をするも楽しめそうにない。

闘争とは同じ次元の者同士でないと実現されない。

 

「相手との差が乖離しすぎている」

 

どうやら特殊な技能もあるようだが、それすら見受けられない。

ただ高速で相手を打ち続ける。

逃がさないように、網の目のような攻撃。

全弾急所攻撃という内容を付け加えると恐ろしさがさらに際立つ。

 

「つまらないものだな」

 

そう言うともう一人の相手が糸の切れた人形のように倒れる。

これで勝者が決まった。

時間にしても一分にも満たない。

上位宇宙と言えどもこんなものか。

軒並み奴らと変えてもらった方がいい薬になるのではないか?

 

その後の試合は見応えはあった。

我が同胞であるケブルーが負けた、純粋に彼への失望と相手への驚きがある。

戦闘経験。

体格。

気の量。

いずれをとってもケブルーがかなう相手ではなかった。

あれがリキール様の宇宙のナンバー2。

ぶっちぎりだからと言ってかまけていてはいつ抜かれるか……

自分がいれば問題ないという傲慢もよくはない。

気を入れなおさないといけない。

次の相手に期待をしながら次の試合を見つめていた。

 

「最後の試合は第12宇宙と第9宇宙」

 

獣の女王と12宇宙最強の戦士。

勝敗は決まっている。

人間レベル最下位相手に2位の最強が負けたら真剣に危ない。

 

「だが無傷というのも有り得はしない」

 

戦闘レベルは上位宇宙と遜色なし。

見せてもらう事にしよう。

 

.

.

 

「始め!!」

 

ラムーシ様がそう言って戦いが始まっていく。

最大の脚力と爪で先制攻撃を放つ。

相手がどの方向に避けても捕捉ができる最高の環境。

 

「ぐっ!!」

 

エルクが右に避ける。

それを追って次は尻尾の一撃を振るう。

目を狙う。

 

それを掴んでこっちに引き寄せる。

膂力はかなり高い。

しかし……

 

「気弾で抜ければいい」

 

掴んでいる腕に気弾を放って着地。

その脇を蹴りが通り過ぎる。

それを掴んでジャイアントスイング。

ミスミスと音を立てて、相手の体がこの私に宿る桁外れの膂力で上に向いていく。

 

「ハアッ!!」

 

上空に放り投げてそのままフィニッシュへ持っていく。

即座に決着を急ぐのはこれが一戦だけではないから。

くじ運次第ではあまり休養も取れずに戦う事になるからだ。

 

「この技を受けて見なさい」

 

空中で掴んで体を固める。

頭を地面に向かわせた状態で、腕を交差させて自分の足を、相手の足の外側から内側に向かって差し込む。

振りほどけないほどの膂力を振り絞る。

 

「『クイーン・クレイドル』!!」

 

頭部から叩きつけて武舞台を揺らす。

相手が肺の中の空気を押し出すような声を上げると、技を解いて臨戦態勢のまま相手を見る。

 

「ぐうう……」

 

呻き声をあげながら相手は立ち上がる。

頑丈ではあるが頭にあれだけの襲撃。

きっと平衡感覚が狂っている。

ここで追撃をかけねばなるまい。

 

「『レオ・バレット』!!」

 

爪先蹴りを顔面に叩き込む。

そしてそのまま体の柔らかさを活かして両足で首を挟み込む。

 

「『サバンナ・ダイバー』!!」

 

回転して再度武舞台へ体を叩きつける。

連続で三連撃。

相手の意識はどうなっている?

 

「舐めるなよ!!」

 

こっちが振り向こうとした瞬間、首を掴んでくる。

そのまま持ち上げられて首から音が鳴る。

そして仕返しとばかりに武舞台へ叩きつけられる。

 

「ぐっ……」

 

そして跳躍で膝を腹部に、

回避をするも武舞台に穴が開く。

なんという一撃だ。

こればかりは感嘆する。

自分の頑丈さを打ち破る武器はまだ残っていたんだと。

 

「やってくれるわね!!」

 

そういって手四つの形へ持ち込む。

力比べで勝ってそのまま押しつぶす。

みしりと音を立てて、相手が片膝をつこうとする。

 

「ハアッ!!」

 

一気に力を込めて仕上げに押しつぶそうとする。

だが相手も抗う。

今まで以上の力を振り絞って体勢を五分に持ち込む。

 

「この女め……」

 

こちらに蹴りを放つ。

重々しい蹴りが掠る。

体がよろめいた隙に足を掴まれる。

 

「ふんっ!!」

 

片手で吊り上げるとそのまま上空へ放り投げる。

気弾の追撃が迫る。

 

「はっ!!」

 

それを片手で弾いて着地。

相手の気弾の威力に僅かに手を痺れさせる。

 

「徐々に上げていっている」

 

ギアの音が聞こえるような錯覚。

はまっているのが見て取れる。

あそこで仕留めなければ敗北は必至。

あれほどの大技も意味をなさない。

万策尽きたも同然だ。

 

「これが上位宇宙の強者」

 

総合力が高いのだと知る。

しかしここで痛手を負うようでは……

 

「私も捨てたものではないわね」

 

とはいうものの相手の起き上がるのに応じて、私も己の限界を感じる。

全ての大技を使い、それでもなお揺るがぬ山。

この戦いが終わればキューブを借りて別の宇宙で修業でもしようかしら。

 

「参りました」

 

そう言って降参をする。

全部の技を使っている事も承知の大神官様が了承をしてすぐに2回戦が始まろうとする。

頑張ってね、勝った下位宇宙のみんな。

自分の力不足に歯噛みと内心の悔しさをたたえたまま武舞台から退場した。

 




結構合間があいたので短めの話で第一回戦を終わらせて態勢を整える方向へ。

残っている選手
第1宇宙:ルタ
第6宇宙:ヒット,バーダック
第7宇宙:ガタバル
第8宇宙:エキ・ロズクォ,イエラ
第11宇宙:ジレン
第12宇宙:エルク

オリキャラもかなり残りましたが八人も入れると当然ですね。
次回の対戦相手のカードがかなり悩ましいです。
指摘などありましたらお願いいたします。

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