とある一族の落ちこぼれ   作:勿忘草

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かなり巻いています。
次回でこの大会編は終わらせる予定です。


『最後の抽選』

「ヒットの野郎が負けたか」

 

あいつは強い。

フリーザにも勝ちやがって、今乗りに乗った状態だっただろう。

それを倒した奴が凄いってだけだ。

 

「あいつと戦ってみたいな」

 

そう言って首を鳴らして、肩を回す。

カカロットの戦いで十分にほぐれた。

あとは全力で敵を叩きつぶせばいい。

 

「どんな因縁かは知らねえがカナッサ星人かよ」

 

まさか別宇宙にもいやがったとは。

しかも古代種という怪物みたいな奴らだろ。

 

「ワクワクしてくるじゃねえか」

 

強い奴と戦える。

それだけで胸が熱くなる。

鼓動が高鳴る。

サイヤ人の本能って奴だ。

 

「ぶっ倒してやる」

 

そう言って武舞台へと向かう。

相手を睨み付けて超フルパワー超サイヤ人4になる。

常在戦場の心。

張り詰めた空気で相手を包む。

 

「始め!!」

 

その言葉と同時にローキック。

機動力を奪いに行く。

じりじりと相手を痛めつける。

 

「派手な技なんて本当は最低限しかいらねえのさ」

 

そう言ってジャブを放つ。

顔にガードをあげるとその空いた脇腹へ鉤突き。

相手の顔に悶絶の色が浮かぶ。

ポーカーフェイスができないのか。

次は旋回して逆の脇腹へ一撃。

 

「うぐっ……」

 

たまらずくの字になる相手。

それを狙って頭部に膝を叩き込む。

相手はくの字になるどころかダウンした。

 

「甘いな」

 

ダウンカウント前に頭を掴んで引き上げさせる。

そして腹部に拳を叩き込む。

僅かに浮いた肉体に向かって一撃を放つ。

 

「『リベリオン・トリガー』!!」

 

吹っ飛んでいく相手。

それをさらに追撃。

跳び膝蹴りを放つ。

 

「ぐああっ!!」

 

壁に叩きつけられる相手。

体勢を整えようとしたところに強烈な一撃。

効くだろう。

 

「終わらせるぞ、『レイジ・デュランダル』」

 

手刀の一撃で切り裂く。

さらにもう一方の手刀でも浅いながら切り裂く。

そして腰を抱えてバックドロップ。

 

「あいつらの戦い見て昂ってんだが、全然相手にならねえな」

 

相手への失望を口にする。

人間レベル2位の最強。

どう考えても拮抗すると思っていたのにこの程度か。

全然面白くない。

 

「くっ……」

 

傷に触れて血を見る。

そして何を思ったのか足の裏に塗りたくる。

すると相手の気が上がったのを感じた。

 

「なるほどな」

 

水があればその分強くなる。

考えればわかる事だった。

血でも代用できるというのは面倒だな。

 

「ふっ!!」

 

格段に上がった速度。

しかし俺にはその程度の揺さぶりは通用しない。

翻弄しようとする前に掴んで振り回す。

 

「まだ遅いんだよ」

 

武舞台に背中から叩きつける。

さらに腹部へ肘を落とす。

 

「ゲボッ!!」

 

相手が苦しんでいるが関係ない。

まだこっちの攻撃は終わってなんていない。

 

「オラァ!!」

 

背中から掬い上げるように蹴りあげる。

上空へ舞った相手に照準を合わせる。

 

「『ライオット・トライデント』!!」

 

三つ矛の気弾が相手に直撃する。

落ちてきた相手から距離を取る。

起き上がった瞬間、こちらに向かってくる。

 

「速いが目で追えてしまうからぬるいんだよ」

 

背中に回って技を放つ。

この戦いに終止符を打つ。

 

「『リベリオン・ファング』」

 

気弾が腹部を貫く。

血が流れていようと関係ない。

戦いの上で起こる不慮の事故。

手を抜くなどサイヤ人の選択肢にはない。

 

「とことんやるから、この程度普通の事でしかねえんだよ」

 

相手がグロッキーになっていようと降参もしねえなら叩き潰す。

この一撃で終わりだ。

顎にアッパーを決めるとそのままラッシュを仕掛ける。

 

「ぐえっ……」

 

相手はラッシュで宙に浮いた状態。

無抵抗な状態を晒す。

もう何もできはしない。

内心拍子抜けだ。

きっと戦闘力の高さで順位付けをしているわけでもない。

 

「俺としては少々がっかりだぜ」

 

拳を握り締めて最後の一撃を放つ。

唸りを上げて相手の肋骨を圧し折る。

血反吐を吐いているが関係ない。

 

「『スピリット・オブ・サイヤン』!!」

 

一撃を振り抜く。

相手はその時点で白目をむいていた。

壁に叩きつけられてずるずると落ちる。

勝者は決まった。

ここからの逆転はない。

大神官様がこちらに手を伸ばし……

 

「勝者、バーダック選手」

 

勝者のコールをする。

次の試合はおおよそ女王様が勝つ。

その予想は当たるだろう。

 

「紅一点になんざ興味はねえ」

 

あいつかヒットを倒した奴。

それ以外は眼中にない。

早く決着をつけやがれと思いながら去っていた。

 

.

.

 

「やはりこうなるか」

 

結果を見て頷く。

あの人がこんなところで足踏みをするはずがない。

ルタとぶつかるまではきっと。

 

「今の俺じゃ戦えない」

 

体の中にある力を探るがあまりにも少ない。

時間経過で多少は動けるが試合でやれるほどのものではない。

考えられる策は一つだけ。

 

「それも通用するかどうか……」

 

無駄になる可能性もある。

そうなると負けだろう。

 

「成功しても結局戦えないけどな」

 

だから願わくば相手はあの男。

そうなればバーダックさんが決勝に行く。

強い者同士の戦いが成り立つだろう。

 

「さて……女同士の戦いでも観戦させてもらおうか」

 

そう言って武舞台へ視線を向ける。

予想ではイエラの勝利だろう。

 

「まあ、どっちが勝ってもリキール様にとっては意味のある事だ」

 

戦いを見ていく。

まるで二人は舞のように軽やかに戦う。

相手を昏倒させるのも剃刀のような切れた一撃。

顎に当たればすぐさま昏倒する。

 

「速く終わる事は無い」

 

きっと千日手となる。

そう目を見張っていた。

瞬く間に動き回る2名。

首を左右に振って全王様も見ていた。

 

「……やっぱりこうなるか」

 

右の拳を打ち付けあう。

左の蹴りをぶつけあう。

頭突きすらも衝突する。

全ての攻撃が鏡合わせのようになる。

 

「クロスカウンターならいいんだけど……」

 

これではダメージが互いにない。

我慢比べにしかならない。

見ていても楽しくはない。

自分の控室に戻って呼吸を整える。

 

「一刻でも早く、少しでも回復をする」

 

血が体中に廻る様に。

腕や脚を伸ばして筋肉が断裂してないかを確認。

骨が折れているかどうかを確認。

 

「無理な動きは控えないといけない」

 

短期決戦用でしかない。

長期になればなるほど重大なことにつながる。

 

「運が悪いのかいいのかわからない」

 

一回戦は全宇宙最強の女。

二回戦は正義の頂点。

これで憧れとか…もう正直に言おう。

 

「一日がかりで戦うメンツじゃないよ……」

 

一人と戦って勝って奇跡的な勝利ってだけ。

サイヤ人でも萎えるほどのきつさである。

ワクワクなんかできない。

 

「せめてインターバル置いて、互いがベストコンディションとかの方が見ごたえある気がする」

 

そう言っているとベジータが入ってくる。

こっちの顔を見て察したのか肩を叩く。

そして一言。

 

「棄権はするな」

 

戦って負けろ。

それだけはしなければならない。

サイヤ人が敵前逃亡などしてはいけない。

 

「敗北したからと言って誰もお前を責めはしない」

 

戦った相手を見ればそうなって当然なのだから。

むしろ勝てれば奇跡でしかない。

二回戦を勝てた時点で奇跡なのだから。

そう言って去っていく。

それと同時に決着がついた。

 

そして大神官様に呼ばれて準決勝の抽選を行う。

残っているメンバーはルタ、自分、バーダックさん、イエラ。

殆ど予想通りの形となった。

殆どと言ったのは自分ではなくジレンの可能性があったからだ。

 

「それでは綱を引っ張ってください」

 

そう言って引っ張り合う。

手応えがある。

強者の手応えである。

普段ならばいい事だと思いながら引く。

しかしこの場面ではまたかという気持ちが強い。

 

「知っていた……お前だってことぐらい」

 

綱がほどけて互いに見合う。

その視線に居たのはルタ。

流石に枯れ果てている俺では楽しみがないのか溜息をつく。

仕方がないだろう。

ここで引いてしまうお前の運を呪え。

 

「それでは試合を始めます」

 

そう言われて無慈悲にも俺とルタの戦いがセッティングされる。

天使による復旧が終わり、互いに向き合う。

極寒の北風のような気を出している。

 

「すぐに終わらせてやる」

 

偉くせっかちな奴だ。

しかし奇遇だな……。

 

「同じ事を考えていたよ」

 

そう言って全部の気を引き出す。

回復したばかりの分だ。

全く持って余力がジレンとの戦いでなくなっていた。

 

「始め!!」

 

その言葉と同時に額に手を当てる。

そして気を高めて……

 

「『太陽拳』!!」

 

ルタの眼を潰す。

一気に接近して『ベアハッグ』の形で抱き着くようにする。

これで準備は整った。

 

「何のつもりだ!?」

 

引き剥がそうとしてくるがそうはさせない。

この距離ならば確実にダメージは出る。

俺は気をさらに高めていく。

そう、『限界』を超えて。

これこそが最後の手段。

命そのものさえ火薬にする最大奥義。

 

「くっ……お前!!」

 

うろたえるような表情になる。

もう遅い。

このまま俺とともに弾けようぜ。

 

「『ファイナル・エクスプロージョン』!!」

 

全力で放った一撃。

この言葉を最後に俺は意識を失ったのであった。




ベジータの自爆技を使うしか、手立て無し。
というか回復抜きでジレンに勝てたのが運みたいなものなのでここが限界です。
次回で力の大会編は終わりです。

指摘などありましたらお願いいたします、

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