とある一族の落ちこぼれ   作:勿忘草

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決勝戦、決着回です。
もっと長引かせようと思ったのですが、グダグダになりそうだったのと、キリよくまとまったのも手伝って今回で終わらせました。



『戦士の血潮』

面白い相手だと思った。

神を凌駕する強さが目の前にいる。

俺の全てを使っても勝てる可能性は低い。

万に一つすら生ぬるいだろう。

 

「でも諦めなんざねえ」

 

構えた相手に向かっていく。

それを見ている相手は手を横薙ぎに振るう。

その動きだけで腹に極太の鞭が当たったような衝撃を覚える。

 

「ぺっ……」

 

どうやら全ての攻撃が規格外になったようだ。

あの仕草だけで腹に衝撃波を当ててきた。

それ以外にも蹴りを放ってくる。

 

「けっ!!」

 

腕を交差して受け止めようとする。

しかし、そんな俺を嘲笑うように蹴りの一撃は両腕を弾き飛ばした。

挙句の果てに痺れている。

 

「『ブレッシング・スピア』」

 

手を槍の様に突き出してくる。

風を裂きながら迫るその鋭さに目を見張るが回避に専念。

側転をして距離を取る。

しかし……

 

「遅いぞ」

 

頭を掴んで持ち上げてくる。

先回りできる速度とはな。

威圧感を爆発的に上げた瞬間から本性を徐々に表してきた。

 

「『エンジェル・ア・プランク』」

 

上空へ放り投げて背中に乗ってくる。

まるで『サーフィン』の板の様に扱う。。

だが腕を伸ばして首を掴んできたり、外せないように工夫をする。

そのまま顔面を地面に叩きつけられると轟音が鳴り響く。

 

「ぐあっ…」

 

頑丈な俺とはいえど意識が持っていかれそうだ。

背中からどいて手応えがあったのか距離を取る。

 

「舐めるなよ」

 

その瞬間を逃しはしない。

足を掴んで引き倒して馬乗りになっていく。

防御しているが細かく大きくを織り交ぜて叩いていく。

 

「どちらがだ?」

 

噛みつきをしてくる。

甘い奴だ。

それはとうの昔に対策を立てている。

 

「ふんっ!!」

 

口の中に拳を突っ込む。

危険ではあるが成功すれば相手の気道を塞いで、意識を落とさせる事が出来る。

 

「さて……続けるぜ」

 

意識状態が一時的に朦朧としている今が好機。

大きく振った拳が幾度となく顔を叩く。

鼻も折れるし、顔は腫れあがる。

視界も悪く、鼻血で脳への酸素供給が普段より悪くなり考えがまとまらなくなる。

 

「うおおっ!!」

 

地面に手を付けて相手は気弾を放つ。

その勢いで馬乗りの状態から逃れる。

互いのダメージは五分になった。

先はきっと長くはない。

 

「一撃で削られる体力が半端じゃねえ」

 

防御不可能の一撃の連続。

限界以上に振り絞った超サイヤ人4を超えている重さ。

厄介極まりない。

 

「来いよ」

 

誘いこんでいく。

相手の足をよく見る。

先手を取るにはありとあらゆる感覚を総動員させないといけねえ。

 

「無論だ」

 

ぴくりと動いた瞬間、一気に踏み込む。

体を低くして頭から突っ込む形。

それを見て相手も反応をする。

しかし……

 

「俺の方が一手速い!!」

 

後ろに気弾を放って推進力にする。

下がる事の出来ない相手は踏ん張り、歯を食いしばる。

耐え抜こうと思っているようだな。

 

「こっちも負けるつもりは微塵もない!!」

 

受け止められることなく、相手に俺の人間砲弾が炸裂する。

ガリガリと武舞台が地面を立てて削れていく。

そして場外にまでそれは及ぶ。

 

「耐えたぞ、バーダック!!」

 

血反吐を吐きながら笑みの形で相手は俺を見る。

そして、逆襲と言わんばかりに腰と腕ごと抱え込んで俺を持ち上げていく。

抵抗しようとするが力が込められすぎている。

無理に外せない。

外すと腕のつっかえが無くなって背骨がやられてしまう。

 

「喰らえ、『スリープ・スティング』!!」

 

頭から落とされる。

脳震盪でドロドロとした風景が広がっている。

だが闘志は萎えない。

笑みを浮かべて眼を光らせる。

 

「むっ、確実に決まったはずだが……」

 

そう言いながら蹴りを放ってくる。

上段の一撃を腕で受け止める。

すると矢継ぎ早に二発目の中段の蹴りが襲い掛かる。

 

「くそが!!」

 

自分から当たりにいって勢いを殺す。

それでも痺れてくる。

手を休めず絶え間ない連打。

空気を裂いて迫りくる。

 

「お前をここで終わらせてやる」

 

左の上段突き。

右の上段蹴り。

左の下段蹴り。

右の中段突き。

右の肘打ち。

左の前蹴り。

右の下段突き。

 

瞬く間に七回の攻撃。

それら全てが相手に大きなダメージを残せる代物。

なんとか威力を最小限にして受け流していく。

集中力を完全に高めていき、薄皮一枚剥がれるようなギリギリでかわす。

相手はそれを追いかけていく。

 

「ふっ!!」

 

膝蹴りを放ってくる。

俺はそれを待っていた。

跳躍をして相手の膝蹴りを回避する。

そしてここからが真骨頂。

相手の足が体の近くに戻る刹那、相手の膝に乗ってそれを土台にする。

 

「その顎よこせ!!」

 

膝が顎にめり込んでいく。

良い手応えがあった。

相手は仰向けに倒れていく。

 

「何故だ……」

 

そんな事を言ってくる。

きっと俺の強さではお前に勝てないと思ったんだろう。

その見立ては間違えてない。

だが戦闘民族の血だ。

相手の強さが俺に限界以上の出力と脳への指令を促している。

既に一杯一杯。

体が軋んで骨が砕けそうになっている。

あくまで細い糸を手繰っているにすぎねえ。

 

「だがこの迷いは後で分析しよう」

 

今はお前を倒すのが先だ。

そう言って体を起こす。

追撃ができないほどの疲弊。

こいつが醸し出す威圧感が体力を奪っていく。

 

突っ込んでくる動きを見てから跳躍。

相手はそれに倣い、追いかけてくる。

それに対して気弾を撃って先に落下する。

 

「これで先回りだ」

 

終わりにしてやる。

相手に照準を合わせていく。

動きを止めるための技はこれだ。

 

「『太陽拳』!!」

 

目を眩ませる。

そして体勢が崩れたのを見逃さない。

力を込めてこの戦いにおける最後の一撃を繰り出す。

 

「『スピリット・オブ・サイヤン』!!」

 

腹部にめり込む全身全霊の一撃。

腕が砕け、踏み込んだ足も折れた。

全てを振りしぼった一撃。

相手が場外まで飛んでいく。

 

これで終わらなければ敗北は必至。

なぜならば戦えはしない。

闘志が萎えずとも足と腕が片方ずつ。

この男の戦いでは五体満足。

それが必ず付きまとう条件。

 

「これが戦闘民族の一撃か」

 

胸に拳の跡が痛々しく残っている。

足を引きずりながら武舞台へ戻ってくる。

こっちの微笑みを察して技のセットアップに入る。

 

「自爆技をする気力も残っちゃいねぇ……一思いにやれ」

 

強い相手と戦った。

完膚なきまで打ちのめされた。

だが勝って見せる。

俺も強くなってやる、お前の高みまで。

老体に鞭うつ目標が出来ちまったぜ。

 

「その心、受け取った」

 

そう言って腕を取り『ダブルアームスピン』で俺を振り回して上空に放り投げる。

そして俺を追いかけて、足首で俺の頭を挟む。

いわゆる『ヘッドシザース』の形だ。

 

「『リーパー・カルネヴァーレ』!!」

 

さらにそこから摩訶不思議な形で空中を舞う。

その速度と風圧で皮膚が裂けたり体の骨が歪に折れ曲がっていく。

そして首を狩り落とすように最後は叩きつけられる。

俺が覚えているのはここまで。

痛みが信号となって脳が意識を落とす事を選択したのだった。

 

.

.

 

『力の大会』、全試合の決着はついた。

優勝は人間レベル1位の第1宇宙最強の男、ルタ。

順当と言えば順当だがその正体に恐ろしさを感じる。

まさか破壊神を越えた中でも天使級はジレン以上だ。

あの人が生粋のサイヤ人と言えども無理はない。

 

願いは全宇宙の復活。

それは18宇宙の始まりに戻るという事。

そしてその願いの大きさは竜神ザラマの力でも数分かかる。

 

そんな時に、頭痛が奔る。

その未来は驚愕の連続ともいえる。

星喰いと言われる奴。

天使見習いやバーダックさんの因縁。

極め付けは破壊神や天使との大決戦。

このお祭りを凌駕する事件が始まる事は冷や汗をかかせて、余韻を吹き飛ばすには十分だった。




次回を最終回としてこの作品を畳みます。
GTの相手とかウーブがまだ出ていないのですが、本遍終了後の未来の話として番外編で書ければと思います。

指摘などありましたらご指摘をお願いいたします。

※今回のルタの『リーパー・カルネヴァーレ』の技の元ネタはキン肉マンの技『アステカセメタリ―』です。

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