とある一族の落ちこぼれ   作:勿忘草

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今回は原作の第22回天下一武闘会に参戦です。
戦闘力の調整で、「なんで?」なシーンがあると思います。




『お祭り騒ぎと未来一つ変わって』

あれから時は過ぎた。

地球に戻ってきたのは『天下一武闘会』というもので、優勝すればお金が手に入る。

その大会に参加するためだ。

最近は他の星々で賞金稼ぎのような真似をしてお尋ね者をとらえていた。

強敵がいないお陰で頭痛があったりしても勝てる状態だ。

日に日に弱まって入るが未来視はいまだに残っている。

特に鮮明になっているのは髪の毛と鼻がない少年が化け物に殺される未来だ。

武闘会の後の疲弊した状態というのも相まって一方的になぶられている。

 

「しかし、本当に力を抑えて試合をしないとな……」

 

戦闘力は測ってはいないが鍛錬そのものは続けていた。

たぶん今ならば11000か12000ほどだろう。

服と自分の気のコントロールのおかげで、戦闘力にすると100程度にまで抑えている。

抑えなければ200ほどにはなるだろうが……。

その中でもまだ大きいのは三つ目族の男とツンツン頭のチビと爺さん。

フルパワーでやってしまうと指先一つで勝負を決めてしまいそうなものだが……

 

「はじめ!!」

 

相手が駆けてきて俺は防御の姿勢をとる。

延々と相手の攻撃を受けて、打ちつかれたところに気絶をさせる手刀を入れる。

極限にまで抑えた一撃ではあるが相手を気絶させるには十分なものだ。

重りをつけなくても気を抑えれるならいらないのではないかと思うが、カナッサ星人の時の様に怒りや気の昂ぶりで思わず力が入ってしまう場合がある。

そうなったときに待っているのは惨い死体が転がってしまう状況だ。

 

しばらくこのスタイルで、負担をかけずに勝利を積み重ねる。

相手を投げて場外に落としたり、気絶させていく事で相手に実力を探られることもなく代表決定戦に進む。

 

「相手はパンプットとかいう奴か」

 

結論だけ言うと、強いのはあくまで一般的な目線だ。

この程度の速度、目をつぶったって避けられる。

俺は顎を揺らすように一本拳で相手へ一撃を見舞う。

どうやら力の制御は成功して、相手はよたよたとして倒れ込み立ち上がれなくなっていた。

 

「本選の相手は……」

 

どうやら未来視の化け物はこの場にはいない。

つまり武闘会終了後に襲撃をする形なのだろう。

棄権をしたくはないし、とりあえずできるところまでやるか。

 

「7番か」

 

くじ引きの結果、一回戦の相手は孫悟空という男だ。

だが、俺には一目でわかった。

地球における名前だろうが、この目はあの時の赤ん坊。

あやしていた赤ん坊、カカロットだ。

 

一回戦の試合、天津飯とヤムチャという男の試合だ。

ヤムチャ選手の方が天津飯選手より実力が劣っている。

 

速さにモノを言わせた連打攻撃を仕掛けるも、手の動きにばかり集中しているのか足元がお留守だ。

さらに言えば腹部など上半身もそれほど攻防一体にしている感じでもない。

隙間を縫うように腹に一撃を入れて動きをとめた後にハイキックで勢いを止めに行く。

 

「ずあっ!!」

 

案の定腹部へ一撃を食らってしまい、天津飯選手の優勢は覆らない。

掌を上下に組み合わせた構え。

どうやらとっておきの技をやるようだが……

 

「か……め…は……め…」

 

手の先に気が集まっていくのを感じる。

どうやら俺の『アルバトロス・ブラスター』の様に発射する技のようだ。

 

「波ー!!」

 

天津飯選手は不思議な手の動きをして避ける気配がない。

一体何を行うのか?

 

「かー!!」

 

気合の一声を発した瞬間、かめはめ波という技が放ったヤムチャ選手の方へ向かっていく。

気功波を跳ね返す術を持っていたとはな。

こうなれば避けざるを得ない。

しかしその避ける行為に跳躍を選んだのがヤムチャ選手の失策だった。

受け止めてすぐに上に逸らしたらよかった。

腹部にズドンという音が聞こえるような強烈な一撃を食らい地面に叩きつけられる。

 

「やっ、やめろー!!」

 

カカロットが静止を呼び掛けている。

ヤムチャ選手の目は白目をむいた状態だった。

 

「気絶しているのに……」

 

急降下をする天津飯に対して俺は気を開放してかけていき、ヤムチャ選手を抱えて攻撃から逃れさせた。

膝を曲げた状態から天津飯選手はきれいな着地をして俺を睨み付けてきた。

 

「お前、何のつもりだ?」

 

まぁ、試合中に別の選手の乱入って言うのは水を差すような行為だからな。

しかしきちんとした理由があった。

 

「あの時点でヤムチャ選手は気絶をしていた、そんな状態であの追い打ちは必要ない」

 

かめはめ波という技を跳ね返した後、地面に叩きつける強烈な一撃。

あの時点で意識がなくなっていた。

そんな中であの一撃だ、回避することもできない。

そうなれば足が折れてあらぬ方向に向いていただろう。

 

「ふん、あのまま心臓にぶちこもうとしていなかっただけありがたいと思うんだな、俺は優しいんだぜ?」

 

殺すのはルール違反なはずだ。

それを度外視する相手とはな……

 

「ヤムチャの敵はオラが討つ!!」

 

カカロットが天津飯選手に言い放つ。

お前の相手は俺なんだ。

まぁ、譲ってやってもいいか。

 

つつがなく第2試合と第3試合が終わる。

ジャッキー・チュンという老人とクリリンという少年が勝ち上がってきた。

さて……カカロットの奴がどれほど強くなったのかね

 

「オラ、負けねぇぞ!!」

 

随分と気合が入っているな。

それでこそ戦闘民族サイヤ人だ。

 

「かかってこい!!」

 

そう言うと一気に懐へ飛び込んできた。

速いことは速いがまだまだだ。

足で防いでそのまま後ろに回り込む。

 

「遅いぞ!!」

 

尻尾を掴んで放り投げる。

力が抜けるか確かめてから投げればよかったか。

着地をするその瞬間に面白いものを見せてやるか!!

 

「か……め…は……め…」

 

カカロットに照準を合わせて……着地をした。

今だ!!

驚いた顔を見せてくれよ!!

 

「波!!」

 

当たったと思った次の瞬間、カカロットをすり抜ける。

観客に死人が出ないように上に曲げて逸らした。

 

「おめぇ、とんでもねぇな、ヤムチャとクリリンの奴見てまねたんか」

 

嬉しそうに笑っているカカロット。

自分のオリジナルの技を見せても驚きが少ないと思ったからな。

そこら辺を計算したんだよ。

 

「2回も見させてもらった、あいにくああいった技は得意でな、真似る事はできるんだよ」

 

そう言って再び構える。

するとカカロットがさらに速度を上げていた。

こっちもじゃあそろそろ気を抑えるのはやめるか。

 

「甘い!!」

 

腕を掴んで蹴りを叩き込む。

そのまま蹴り上げてから後ろに回りこでカカロットの腕と足を掴んで落下する。

受け身をとれない状態でそのまま武舞台へ叩きつけてやった。

手ごたえはあるがどうだ?

 

「いってー、お前、めちゃくちゃはええなー」

 

どうやらまだまだいけるみたいだな。

しかしそんな感想を言っている暇はないぞ。

威力は弱体化しているが技を使ってやる。

 

「『コンドル・レイン』!!」

 

気弾の雨がカカロットに襲い掛かる。

かいくぐっていくがその雨の先はこの技が待っているんだ。

 

「『新・狼牙風風拳』!!」

 

一気呵成に畳みかけて拳の連打でグロッキー状態に追いやろうとする。

カカロットが足払いを仕掛けてくるが、それは織り込み済みだ。

その瞬間に飛び上がって強烈な飛び蹴りをくれてやる。

 

「ぬっ!!」

 

食らう前に体勢を立て直したカカロットが足を掴んで投げる。

しかしこの距離ならば!!

 

「でりゃ!!」

 

カカロットの顔面に拳を放つ。

しかし陽炎のように姿を消した。

くそっ、どこにカカロットは消えた!?

 

「こっちだ!!」

 

後ろに回り込んでいたのか振り向いて拳を放つ。

しかしこれも残像だった。

何度も何度もこの技をしたことで空振りを誘い、俺の懐に潜り込んできやがった!!

気を探ればよかったのだが焦ってしまったのか、それすらもうまくできずこのような手に引っかかった。

 

「しまっ……」

 

そして、そのままカカロットの拳の一撃を食らう。

体が倒れそうになるので、体を支えるために腕を伸ばす。

しかし、その瞬間、俺の体に異変が起こった。

試合が長引いていたのか、それとも偶然なのか。

こんな時に限って激しい頭痛が起こる。

それが原因か、俺は伸ばす場所の目測を誤ってしまう。

その結果……

 

「場外!、ガタバル選手場外です!!、勝者、孫悟空選手!!!」

 

武舞台に手をつくはずが、場外の芝生に手を付けていた。

重りをしても勝てるという慢心だったか、カカロットを見くびってしまったゆえの敗北。

例えばなどという言葉で敗北の事実は濁らせてはいけない。

そう思って俺はお辞儀をして控室に戻った後、会場から離れて観客席で見るようにした。

千里眼のおかげで苦労せず見る事ができる。

 

準決勝ではジャッキー・チュン選手が、天津飯選手に勝利を譲るような形でわざと場外負けをした。

若い者たちの時代の到来を喜んでいるようだった。

これで決勝戦の一人目は決まった。

しかし言葉の揺さぶりに弱いのか天津飯選手は技の切れが時折鈍っていた。

 

準決勝第2試合ではカカロットとクリリン選手の戦いだったが、やはりあの時に尻尾を掴むのを長引かせるメリットはなかったな。

きちんと弱点を克服している。

お互いの技が白熱した戦いを生んでいるがまだまだカカロットは本気ではない。

それを言い出してはいけないほど俺は抑えているのだが……

足音だけを置き去りにしたステップのようだが俺の目はごまかせない。

普段の俺ならば一撃で吹き飛ばしてやるほどの実力差だが、もしやるなら空を飛んで、あっちが飛び上がってきたところを狙い打つ。

もしくは武舞台をカカロットごと吹き飛ばす一撃で一気に片を付けてやる。

死なない程度に威力を抑えた奴だけどな。

 

ステップを繰り返してクリリン選手の目の前に現れてから、カカロットがその一瞬に手刀を8発当てて、場外に落として勝利した。

 

決勝戦は天津飯選手とカカロットだ。

この勝負が終わった後にクリリン選手が化け物に襲われるのか。

俺は控室に一度戻って、それを防ぐために息をひそめる。

肩や腕 足の付け根とふくらはぎ、太ももにつけていた、服以外の体中の重りを外して抑えていた気を開放しておく。

1つ衣装を外すだけで一気に気が高くなる。

必死に抑えてばれないようにしていた。

 

「お前さん、やはり実力を隠しておったな」

 

誰かわからないスーツ姿の老人に声をかけられる。

しかしこの気はよくわかる。

隠しているのはお互い様だろうに。

 

「ジャッキー・チュン選手だな?」

 

それを言うとにやりと笑う。

こちらと違って変装していただけだからな。

実力を隠すという敬意を払わない行為に比べればかわいいものだ。

 

「悪いが、本気でやってしまうとぶっちぎりだったからな」

 

そう言ってジャッキー選手の後ろを取り、首筋に手を当てる。

殺すことが許されていたら切っているだろうし、そうでなくても首に手刀で気絶させることができる。

この実力の差に冷や汗をかいて頷いていた。

 

「試合は見ない、それに俺は少し終わらせたい予定があるんでな」

 

神経を研ぎ澄ませた状態で相手をしたいからな。

試合を見てその興奮で人を見殺しにするような形をとりたくない。

未来を変えるためにこの力がある、運命のあるがままを求めるのではなく、運命を変えて抗うための力だ。

 

決勝戦の結果は不運にもカカロットが車にあたり、そのバウンドで地面に先に背中が着いて場外となり、準優勝。

空を飛ぶことができればそうはならなかっただろう。

今回は流派と不運が重なってしまい負けを喫したようだ。

 

カカロットの奴が忘れていた棒と袋だが届けてやるか。

そう思って拾った瞬間、誰かの気配を感じた。

 

「くくくっ、その袋の中身を渡してもらおうか」

 

化け物がそこにはいた。

翼が生えているが今までこんな外見の異星人は見た事は無い。

 

「なっ、ガタバル!?」

 

控室から出ていったはずの俺がここにいたことに驚いたのだろう。

クリリン選手が俺を呼び捨てにする。

別に構わないが、多分俺の方が年上なんじゃないのか?

 

「なんだ、お前は?」

 

振り向いてクリリン選手に声をかける。

どういった動きをしていても見ていた未来と大筋は変わらないか。

大きな違いはここに俺がいる事だが。

 

「俺はこれに参加していた武闘家だ」

 

クリリン選手が構えて言い放つ。

カカロットとの勝負で大分消耗しているだろうに。

ここは俺が引き受けないとな。

 

「そうか、武闘家は皆殺しにしろと大魔王様からの言葉でな……死ね!!」

 

クリリン選手へ突撃しにいったきた化け物を掴んで放り投げる。

その放り投げた方向へ先回りをして拳で叩き落す。

するとフルパワーでやってしまったのがいけなかったのか、相手の首から上がきれいになくなっておりピクリとも動かなくなっていた。

 

「相手を選ばないと早死にするんだぜ、もう死んでしまっているけどよ」

 

そんな事を言っているとクリリン選手が不思議そうな目で俺を見ていた。

やはり試合の時と動きが違っていたからか?

 

「あんた、悟空との勝負本気でやっていたのか?」

 

カカロットの勝負を本気でやっていたかどうか?

あくまで現在のカカロットたちの力の世界に抑えた状態で、その枠内での本気なのは間違いない。

しかし、今回の負けは受け止めている。

頭痛がなければ、最初から重りをつけなければこうはなっていなかった。

その気持ちは革新として存在している。

でもその結果も踏まえたうえでの戦い。

 

「確かに力は抑えていた、しかしそれは見くびりではない」

 

見くびってそういった事をしたのではない。

殺してしまうという実力の差を感じて、その殺すという事柄に恐怖心を抱いたのだ

仮に見くびっていたら、初めの懐に潜り込まれる事も止められず、そのままカカロットが勝っていただろう。

 

「修行の延長線で勝負をしようとして、ベストコンディションで挑まなかった怠慢だ」

 

これがピオーネならば重りを外していただろう。

自分の実力との差が分かっていたがその時に隠している気の大きさをうまく察知できず、それが後手の調整につながった。

 

「俺はこれから自分をさらに磨く、孫悟空に伝えておいてくれ

『次は負けない』ってな」

 

そう言って俺は瞬く間にクリリン選手と実況の人の目の前から消えていくのだった。




今回のガタバルの戦闘力は上下の服、インナー、靴、手袋、それ以外に体につけている分で制御しています。
さらに追加で気を抑えるとかいう器用な方法で戦闘力を落として予選突破などをしていました。

クリリンが死なずに済みました。
未来として見えている部分は変えられます。
しかし残念なことに、ここでピッコロ大魔王の騒動からフェードアウトしているので、餃子と亀仙人のじっちゃんは死んでいます。

次は23回天下一武闘会まで飛ぶか合間に頭痛完治からの復活デビューの1シーンを書くかですね。

指摘有りましたらお願いいたします。

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