とある一族の落ちこぼれ   作:勿忘草

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ガタバルがサイヤ人らしからぬ考えを展開しますが、ベジータが聞いたら『情けない』と一蹴するのか、もしくは悟空なら『変わってる』といわれるのか。
次回はあるキャラを強化します。
奴だってまともに修行すればサイヤ人襲来時には多少の戦力に……


『痛み癒えて眼前には好敵手』

あの化け物退治から2年の時間が過ぎた。

20になるころには頭痛はなくなっていた。

しかし、それでも未来が見えることには変わりはない。

あれから大魔王とのカカロットの未来が見えた。

結果はカカロットの勝利だが、その後に卵を吐き出して己の分身を作り出して爆散していた。

どうやら善と悪が分かれているようなので、最長老様からの伝言を伝えておかないとな。

 

「まぁ、これが終わってからの話だ」

 

セッコ・オロに戻ってきて再び拳闘士としての道を歩んでいた。

今日は再びあの日の焼き直しだ。

 

相手は目の前にいる。

ピオーネもまたこの数年で強くなっていた。

しかしあの日よりは近づいた背中だろう。

 

「おいで」

 

そういって手招きをする。

カウンター狙いのつもりか?

俺はじりじりと間合いを詰めて様子を探っていく。

あの日の様に突撃すればいいわけじゃない。

あの時はピオーネに油断があった。

しかし今は油断のない状態。

迂闊に飛び込めば叩き落されてしまうだろう。

 

「ふっ!!」

 

間合いに近づいて牽制の蹴りを放つ。

上下に分かれた蹴りをどうさばくのか?

 

「しっ!!」

 

間をすり抜けていくように体を縮めて飛び込んできた。

その時に瞬間移動で後ろを取り、一撃を放つ。

 

「『アルバトロス・ブラスター』!!」

 

これは避けられないだろう、まずは先制だ。

しかし次の瞬間、俺はとんでもないものを見た。

 

「なっ!?」

 

瞬間移動で避けられた。

どこにいる!?

 

「私もね、ヤードラットで学んできたの、君のを何度も見たからそれを真似したら筋がいいって褒められたわ」

 

後ろか。

俺は後ろに気弾を撃ってその推進力で距離を取る。

まさか、瞬間移動を手に入れていたとは……

これで奇襲はほとんど意味をなさなくなってしまった。

お互いが気を抜けば後ろを取られる状況なのだから。

 

「行くわよ」

 

そう言って怒涛の連撃が始まる。

蹴りも拳もそんな軟じゃない速度だ。

ヤムチャ選手の技よりも強烈で隙がない。

足元がお留守なんてことはない、凌ぐのが精いっぱいだ。

 

「そこっ!!」

 

防御の間をすり抜けてアッパーが顎に入る。

一瞬、体勢が崩れたらそこからは連撃につかまってしまう。

だが、ここは踏ん張ってあえて密着状態を作り上げた。

地球の『ボクシング』という競技での『クリンチ』という技術だ

抱きついているようなものだが、ここから投げたりもできるためこのルールでは有効な一手ではある。

 

「離しなさい!!」

 

そんな俺の意図が分かっていないのか。

ただ、抱き着いてきたと思っているピオーネは恥ずかしそうに俺の頭を打ちつける。

そんなに集中力を切らしていていいのか?

 

「『エクスプロード・ウッドペッカー』!!」

 

密着状態から強烈な一撃を見舞う。

ピオーネは気絶しそうになっていたが、そこはさすがといった所だ。

踏ん張って反撃をしようとする。

しかし拳に勢いがないのでカウンターを取る。

 

「くっ!!」

 

後ずさったその瞬間を狙って俺は大技を放つ。

あの日のような隙が無い状態での一撃ではない。

 

「『レイブンリヴェンジャー』!!」

 

速射性に優れた一撃で、隙を与えない。

瞬間移動をしても千里眼でとらえていけば特に問題はない。

 

「まだまだ、『新・狼牙風風拳』!!」

 

ピオーネが相殺したが攻撃の手を緩めはしない。

速度でピオーネを押していく。

足元をわざとお留守にして攻撃を誘う。

それをやってきたら一気に片を付けるように。

大きな罠を仕掛けていた、しかしピオーネは俺の想像を超える行動に出た。

 

「『アルバトロス・ブラスター』!!」

 

俺の技を使って今の状態を脱した。

俺に向かって撃てば自分も巻き込まれる。

だから地面に打ってその勢いで空に飛び上がった。

最大の技以外では俺の方が威力が高いものを搭載している。

つまり、推進力を活かすには俺の技の方が優れている。

そうなればこういった相手の技を盗むのも必要だろう。

 

「しかも瞬間移動で隙はなし……」

 

滞空時を狙うところだがそれもできない。

俺に向かって照準を合わせているようだがそっちがその考えならこっちにもある。

 

「『エレクトリック・パレード』!!」

 

前回の『フィナーレ・オブ・パレード』の倍ほどの太さを持つ電撃の塊が押し寄せる。

これをまともに受けてしまうと致命傷は免れない。

こっちはこれしか決め技はないんだけどな。

でも俺そのものの象徴といっても過言ではない。

 

「『ソウル・オブ・サイヤン』!!」

 

二人の最大の技がぶつかり合う。

相殺しあってその煙から出てきたピオーネとクロスカウンター。

お互いが瞬間移動も何もできない状態での殴り合い。

腹に一撃を入れれば顔面に強烈な一撃が入る。

踵落としが決まれば地獄突きを決められる。

お互いが血を流しながらも主導権を握らせるものかと躍起になる。

 

「ハアッ!!」

 

ピオーネが『バニッシュ・ウイップ』で距離を離しにかかる。

地面に打ち込んで砂煙を出してその一瞬の間に気を消した。

分かられないようにするためだろうがあの日よりは追いつめている事がわかる。

 

「逃がさん、『ファルコン・ツイン・クラッシュ』!!」

 

二発の気弾が猛烈な速度で飛んでいく。

砂煙を切り裂いていき、ピオーネの姿が一瞬見えた。

その方向に向かって一気に駆けていく。

しかしこの姿を見せていたことが罠だった。

 

「残念でし……た!!」

 

瞬間移動で駆けていた俺の真上に現れて肘打ちで俺を地面へと叩きつけた。

威力は凄まじく砂煙を巻き上げていく。

 

「ぐあぁっ!!」

 

地面に寝転んでいる俺の頭を掴み、持ち上げて地面へ叩きつける。

グイングインと音を立てて、勢いを上げながら左右に叩きつけられていく。

 

「はああっ!!」

 

ひとしきり叩きつけた後、振り回して空へと俺を舞いあげる。

そしてそのまま『エレクトリック・パレード』の構えを取った。

動きは取れるがここは、一つピオーネを騙すか。

 

「『エレクトリック・パレード』!!」

 

直撃しそうになった瞬間に俺は瞬間移動で回避する。

しかしこの時俺はあえて大きな声で叫んでいかにも食らったという雰囲気を出した。

そして攻撃が食らったと思い、力の抜けていたピオーネの後ろに陣取った。

 

「なっ……」

 

驚いた顔をしているがその一瞬の隙が命取りになる。

このまま大技を決めて勝たせてもらう。

 

「『アルバトロス・ブラスター』!!」

 

瞬間移動をする暇もない状態で直撃させた。

吹っ飛んでいき、地面を何度もバウンドをしていく。

手ごたえありというところか?

 

「まさか、食らったと思わせる迫真の演技なんてね……」

 

立ち上がって構えを取る。

ピオーネの方もダメージが積み重なって、全力から遠ざかっている状態だ。

お互いが大技をくらったり、攻撃を幾度となく受けて息を切らし始めている。

大技をもう一度当てればそれだけでこの勝負は決まるだろう。

お互いがじりじりと距離を詰めて、攻撃へ移行する瞬間を探りあう。

さて……クライマックスまではもう少しかな?

 

『カンカンカーン!!』

 

そう思った矢先、ゴングが鳴る。

前にこんな事は無かっただろ。

そう感じていたが……

 

「「えっ?」」

 

それ以上に二人そろって間抜けな声を上げていた。

あの日の様に闘技場の崩壊をさせないために勝負を止めたのだろう。

こればかりは仕方ない。

また壊したとあれば今度は除名されても文句は言えなくなってしまう。

 

ただ不完全燃焼であることは否めない。

白黒はっきりつけてこそ戦いの意味がある。

 

「随分強くなったね」

 

戻っていく間にピオーネが口を開く。

そっちだってヤードラットに行って特殊な術を身に着けていたじゃないか。

今の状態をお互いに戦闘力にしたら俺が12000前後、そっちが16000ほどだろう。

 

「行く先々の惑星で戦ったりもしたからね、致命傷は一回だけだったけど……」

 

むしろ死ななかったことに奇跡を感じる。

あいつとの戦いを思い浮かべるだけで鳥肌が立つ。

体が震えて止まらない。

 

「戦うにしても格上過ぎたら死ぬかもしれないからね」

 

うんうんと頷いている。

どうやら勝ったものだと勘違いしているようだ

あんな奴、もう二度と相手にしたくはない。

今度こそ殺されるかもしれないからな。

 

「で、これからどうするの?」

 

俺の顔を見てピオーネがつぶやく。

本気の戦いをお互いができないのならばこの場所にいてもしょうがない。

侵略するつもりはないが星々で修業を積んだり戦い続けてもいい。

金銭ならば今までのファイトマネーだってある。

宇宙為替なる場所もあるからその行く星のお金にしておけばいい。

 

「また、星々の旅だが……いい加減定住する星を見つけようと思う」

 

第一、いつまでもこんな暮らしを続けるわけにもいかない。

ナメック星なんて食物がないし、ヤードラットも強くなるための環境が整っているわけじゃない。

ズンだってもう今の俺からすれば『10倍ってなんなの?』みたいなレベルだ。

ピタルだって自然の中の獣がいるが突然変異の次元でもないとヤードラットといい勝負だ。

ティビグラとティメだって食物が全くない、最近になってようやく草木が生え始めたとかいうような環境だ。

狩りの一つでもできればいいんだがちょっといい加減そういった生活を考え直す時期だ。

20といえば本来のサイヤ人ならお嫁さんをもらったりなどを考えてもいい。

そして思うのは強ければそれでいいわけではないという事。

男だから戦っておけば全てまかり通る、体を動かしておけばいいなんておこがましい。

困っていれば支えてやる、蓄えがなければ稼ぐ。

戦闘民族らしからぬ考え方なのも今までの異星人との出会いや環境の違いを見てきたからだ。

 

話は逸れたが結論としては定住できる星は……

 

「地球は定住するのにいい環境だろうけどね」

 

ピオーネに俺は言う。

しかし強くなれる環境といえば否。

今の環境では俺たちが劇的に強くなれる事は無い。

 

「緑の惑星ね」

 

スイッツとかトゾリもいいだろうけどあまり肌に合わない。

スイッツは主にあの匂いが無理だ。

甘ったるい匂いは日常生活で常に付きまとわれると面倒である。

トゾリは住んでもいい環境なのだが、あいにく戦いや体を動かすこと、修行を切り離した生活は想像がつかない。

 

「私はしばらくの間、賞金稼ぎでもしてみようかな」

 

それもいいな。

しかしいい加減、闘技場で強いからって使いの誰かに世話してもらうとか

星の探索で狩りをして焼くだけとかいう生活から脱却しないとシャレにならんぞ。

実力に差がつくのは少し残念だが生活面の自立も目指さないとな。

なに、家事の中で体を動かしたりするだけでも肉体の強度は上がる。

絶対あんたに追いついてみせるぞ。

 

「俺は地球に行ってみるよ、穏やかな星で過ごしてみるのも悪くない」

 

とはいっても畑の開墾だとか自給自足を志してみる。

それに向こうにはカカロットもいる。

サイヤ人同士鍛えていけば十分強くなれるだろう。

 

「いつか会えるだろうが、今度こそ今日の決着をつけよう」

 

そうピオーネが言ってお互いの拳を合わせる。

そして互いが発着場で別れて別々の時間を歩んでいくだろう。

緑の惑星に行くのも2年ぶりだ。

カカロットの奴は強くなっているのか?

そうじゃなければ俺と一緒に修行をしないかと誘ってみよう。

修行相手は欲しいからな。

あとは……あのナメック星人の気の出所を掴んで話しておかないと。

最長老様の伝言をきちんとな。

だが……

 

「行った事のある惑星が拠点になるんだから俺たち発着所に行く必要あったっけ?」

 

まぁ、宇宙船預けているから念のために持って行っておけばいいか。

ただ、手ぶらで行こうと思えばいけるのが嬉しいよな。

俺は気を集中させて天下一武闘会の会場の武舞台まで瞬間移動をした。

久しぶりの地球の空気に心安らぐ。

 

「あの……ガタバル選手、今日はまだ武闘会ではありませんよ?」

 

実況のおっちゃんに声をかけられた。

目の前に現れたのに驚いていないあたり、さすがだな。

そうなのか、じゃあいつなんだろうか?

 

「来年の今日が開催日です、参加されるおつもりで?」

 

出ても出なくてもいいんだが、カカロットや天津飯選手たちの成長も見てみたいしな。

ここは出ておこう。

 

「出ますよ、孫悟空選手に借りを返すためにもね」

 

握り拳を作って参加を宣言する。

実況のおっちゃんは嬉しそうな顔でこっちを見ていた。

 

「そうですか……では今度は『本気』での勝負を楽しみにしていますよ」

 

……しまった。

実況のおっちゃんとクリリン選手とジャッキー選手には本気の強さがばれているんだった。

殺してしまわないように細心の注意を払って戦わないと……。

地球について早々、家事や定住地の事でなく戦闘面で憂鬱になるとは。

つくづく、戦闘民族であるサイヤ人らしい宿命だと思い、俺は額に手を当てるのだった。




ガタバル、地球定住計画開始。
といっても星々の旅行は見知った場所は瞬間移動で燃料費もほとんど0。
食費もたぶん拳闘士の組織がある程度負担。
こいつ、マジで金使ってなさそう……
指摘有りましたらお願いします。

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