とある一族の落ちこぼれ   作:勿忘草

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前半は悟空の話。
後半はラディッツの話です。
次回はガタバル達の仕事風景の予定です。


『カカロットの生活風景:ラディッツの灯台下暗し』

「悟空さ、買い物に行ってきてほしいべ」

 

悟飯が3歳になってからというもの、オラはこうやってチチの家事手伝いをやっている。

一回色々な家事を試した見たけど洗濯物を干したりするのはダメ。

干すのは無理でも畳むのはいけたけどな。

料理もできねぇ、獣焼いたりばっかだったしな。

食う事ならうまくできる自信はあっけどな。

だったらオラには何ができる?

考えたら修行で鍛えた体使った力仕事と買い物だ。

時々働けっていうけどオラはそういったスーツなんて持ってねぇ。

同じ道着しか何着も持ってねぇもんな。

働くのは考えさせてくれっちゅう事で、今は自分で食べるものを自分で育てるっていう話で農作業をやってる。

昔に亀仙人のじっちゃんところで修行でやっていたことを思い出す。

 

やっぱり体を動かすのは性に合うという事で今は落ち着いた。

もし、働けって言われたら服装自由でこんな感じの仕事の場所に行く。

でも修業はしたいってことは伝えておかねぇとな。

 

「今日はどこに行くんだ、チチ?」

「八百屋さんと魚屋さんだべ」

 

そう言うとチチは魚の絵と野菜の絵を描く。

漢字ってのは一応わかってんだけど、絵とかにしてもらわねぇと分かりにくい。

牛って奴の線がはみ出てねぇからなんて呼んでいいかわからねえし、鳥って漢字で買ってきたら違うって言われた。

それからはそんな事のねぇように絵とどれくらい買ってくるんか書いているメモを渡された。

 

「じゃあ、気ぃつけて行ってくっぞ」

 

空を飛ぶのはいいけど人の目につかねぇように気を付ける。

変な目で見られるってチチからは言われてるしな。

ちょっと駆け足で行ってみっか。

 

「ふぅっ、やっぱりパオズ山から人里までは距離あんな」

 

木から木に飛び乗ったり、獣道を突き進んだりして、速くなるように行ってたら道着に草とかいっぺぇ付いた

またチチにどやされっぞ。

人に見えねぇ山だったら空飛んでもいいな。

 

「さて……まずは魚屋さんだ」

 

魚の絵の横に『アジ その店にあるだけ 1回』って書いている。

あるだけってことは全部だな。

全部って書いたらいろんな魚屋さんの奴をオラが買ってくると思ったんだろう。

だって『全部』だし店の数も書いてねぇもんな。

 

「おっちゃん、アジっちゅう奴全部くれぇ!!」

 

おっちゃんは驚きながら氷を山ほど入れて、丁寧にアジを入れていってくれた。

なんかいっぱい買ってくれたおまけでタコももらった。

もしかしたらチチの奴こういうのも考えてんだろうな。

次の野菜屋でも同じように色々な野菜をおまけでつけてくれた。

野菜はリュックサックに詰め込んで、急いで帰らねぇとな。

魚がだめになったら晩御飯がどうなっちまうか。

 

「悟空さ、一杯おまけしてもらっただか!!」

 

帰ってきて店の人が入れてくれたって言うとチチは驚いていた。

オラはよくわかってねぇけどな。

これから悟飯の塾があるらしい。

悟飯はえらい学者さんちゅう奴になりたいんだとか。

その為には勉強がすげぇ大事みてぇだ。

オラは12の時にじっちゃんの修行でしてからそんなこと全然してねぇ。

 

「お父さん、行ってきます」

 

そう言って悟飯の奴が牛魔王のおっちゃんと一緒に行った。

オラがあれくれぇの年ならあんなことはしてなかっただろうな。

ずっと山で魚取ってたし。

 

「悟空さ、仕事する気はねぇだか?」

 

チチがまた言ってくる。

働く前にまたピッコロみてぇな奴が来ねえとも限らねぇし……

地球自体が終わったらオラ達も死んじまうし。

 

「うーん、平和だって言ってもいつまたピッコロみてぇな奴が来るかわからねぇからなぁ……

あとなんだ、サラリーマンちゅうのはオラできそうにねぇや」

 

働くにしてもやること言っとかねぇと、オラ自身にできねぇことやってもしゃあねぇもんな。

なんかあんな服着てとかってのはなんだか難しい。

そう言ったらチチは頷いていた。

 

「悟空さに会社勤めはできそうにねぇだ」

 

やっぱりそうか。

じゃあやっぱり力仕事なり、猟師って人みてぇに猪とか熊とるか?

それ以外だと誰かに戦い方教えるぐれぇしかできねぇぞ。

 

「やっぱり、悟空さは体動かした方がいいだ」

 

そう言うとチチがそう言った雑誌を渡してきた。

文字は読めるけど小さいな……

 

「最初はすこしずつでもいいだ、ちょっとずつ増やしていってけれ」

 

そう言うとチチはまた家事に戻っていった。

うん、重いもの持ったりするみてぇだしこういう方がオラはいいな。

ぺらぺらと本をめくりながら探し始めた。

 

.

.

 

「ようやく着いたな」

 

部下のおかげでウェアキラへ到着することができた。

火山まみれの惑星で気温もかなり高い。

ここで凶悪な犯罪者が日々悪事を働いて逃げているらしい。

よくこんなところ選んだな、ここなら手が入らないとでも思ったのか?

 

「手ぇあげな!!」

 

こん棒か何か武装したやつらだが、こいつら犯罪者か?

俺を人質に取ろうとしているようだが……

 

「悪いが上げる気はない」

 

跳躍して後ろに回し蹴りを放つ。

相手は吹き飛んでいったがあれは下っ端レベルか?

 

「てめぇ!!」

 

瞬く間に囲んできたがそんなものでどうにかなる俺ではない。

俺は空に浮いて両手を下にかざす。

固まった状態でこいつをやると相手は大きな痛手を負う。

多人数で決まった時は爽快だぜ、形成も逆転するしな

 

「ダブルサンデー!!」

 

相手が吹っ飛んで何人かは気絶したりダメージが大きかったからかけいれんを起こしている。

それ以外は岩盤に打ちつけた痛みでうめいている。

一気に壊滅状態だな。

 

「お前ら、何をやっているんだ!!」

 

一際大きい体の奴が現れた。

スカウターに頼らない方法を考えているが、どうも探るような真似をできない。

結局スカウターの数値に頼っている。

 

「お前が首領か」

 

だがこればかりは判別がつく。

他の奴らと違うのが見てわかるからだ。

構えて相手の動きに合わせて動けるようにする。

 

「はぁっ!!」

 

拳を振り上げてくるのを見計らって、その間に技を仕掛ける。

こんな隙が多ければそうしてくださいと言っているようなものだぜ。

 

「『マンデーリング』!!」

 

相手を気で作ったわっかで縛る。

この強度はかなり高く、あの力自慢のナッパでもてこずる。

戦闘力の差はあるがカエンサやラブカ、ベジータにも少しの時間ならば通用するすぐれものだ。

この間に最強の技で一気に決める。

 

「『ウィークエンド』!!」

 

二本の紫色の太い気弾が直撃して相手をはるか遠くにまで吹き飛ばしていく。

たぶん戦闘力としては3000の後半ほどか?

それなら俺でも倒せる。

もしくは主要な奴は先につぶされていたのか?

 

「生きているか、弟ぉ!!」

 

岩陰からもう一人同じ顔の奴が出てくる。

急いで駆け寄っていく。

まさか兄弟だったとはな。

なんか悪いことした気分だぜ。

相手は死んでいないけどな。

 

「兄貴、後ろ……」

 

そう言われて俺も相手もその方向を向く。

するとそこには銀髪で紅色の肌を持つグラマーな女がいた。

しかしその気迫がスカウターを見なくても戦闘力が高いというのを本能的に感じ取れる。

そしてそれを根拠に俺はすぐに悟った。

こいつこそが探していた凄腕の宇宙バウンティハンターの女、ピオーネだと。

 

「あなたたち兄弟が今回の標的ね」

 

俺と相手を見て判断をする。

もしかしたら原住民を襲う悪人に俺が見える場合もあるからな。

写真があるおかげでこう言ったトラブルも少ないのだろう。

 

「ぐぉおっ!!」

 

ここで逃げても無駄だと判断したのか。

はたまたただのやけっぱちなのか。

それはこいつらにしかわからない事だ。

雄たけびを上げながら二人がピオーネ挟むようにして攻撃を仕掛ける。

だが驚いたり動揺したそぶりを全くピオーネは見せない。

 

「あなた達……」

 

構えを見せる事もなく軽やかに相手の攻撃を避けて次の瞬間、風が通り過ぎる。

一体何をしたのかわからない。

見えなかったのだ。

つまりそれだけ力の差があることの表れだろう。

 

「弱いわ」

 

しかし次の瞬間、ゆらりと崩れるように二人の賞金首が気絶していた。

これはベジータと同格と言われても納得の強さだ。

だが、こいつと二回も戦ったガタバル……お前はどれほど強くなったんだ?

 

「さて……あなたはいったい何者?」

 

あいつらを縛ってひと段落したところで俺に向き直り声をかける。

同業者には見えない格好だから気になったのだろう。

ここは正直に言って情報を引き出せるように警戒心を解くか。

 

「俺はあんたに尋ねたいことがあってここまで来たサイヤ人だ、名前はラディッツ」

 

笑みを浮かべて俺は自己紹介をする。

ザーボンさんから教えてもらったが仏頂面で受け答えするのと、笑顔で受け答えをするのとでは体感的に倍は違うらしい。

ただ場所や場面を選ばないとマイナスに働くこともあると言っていた。

 

「丁寧に自己紹介をしてくれてありがとう、私の名前はピオーネ」

 

こっちの自己紹介に対してむこうも名乗る。

やっぱり当たっていたか。

これで別人だったら本当に無駄足になってしまうところだったぜ。

早速本題に入らないとな。

 

「ガタバルという男の所在について何か知っている事は無いか?」

 

ガタバルという名前にピクリと反応をする。

どうやらこの反応を見るに、あいつが言った場所を知っているだろうな。

どこなんだ、見落とした星か?

 

「あの子なら確か4年ぐらい前に私と戦った後に『地球に行く』って言っていたわ」

 

『あの子』呼ばわりってことはあいつより年上か。

それにしても地球とは……

最後にダメもとで調べに行こうと思っていた場所にいたとは。

これが灯台下暗しという奴だな。

あとでピタルに行ったときにサイボーグの男のカルテを盗み見たら、わかったかもしれないと言われたときはそんなものがあるのかと驚いた。

フリーザ軍じゃあ、メディカルマシーンにばかり頼っているからな。

どちらにせよあいつには再会できていたというわけだ。

 

「私ももう少しひと段落したら、次の目的地にしてのんびり過ごす気だわ、もう十分賞金稼ぎとしてはやっているしね」

 

流石にこれだけ賞金稼ぎをやっていたらもう働いたりする必要もないだろう。

それだけじゃなくて、セッコ・オロでのファイトマネーでかなり稼いでるはずだろうからな。

働かないで修業三昧。

戦う事を生きがいとするサイヤ人には最高の環境だ。

絶対嫌われたり嫌な顔をされそうな気がして仕方ないけどな。

とは言ってもこいつがサイヤ人じゃない以上、どこかで働いたりしてそうなものだが。

 

「そうか、また会えるといいな、あんたには感謝するぜ」

 

そう言ってすぐに地球の座標を打ち込もうと宇宙船に向かう。

するとピオーネが俺を呼び止めたから、足を止めて振り返った。

 

「あの子に会えたら元気で私はやっていると伝えてほしい」

 

二回戦ったこともあるから少なからず親しい間柄なのだろう。

あまり表には出さないがあいつを心配している事が伝わる。

そしてあいつもこの女を心配しているに違いない。

あいつはカエンサやラブカと違って人を思いやる心に溢れている、ちょっと特殊というか不思議なサイヤ人だ。

 

「わかった、きちんと伝えておく」

 

そう言って俺は乗り込んで1年後の地球到着に向けて飛び立つ。

いつぶりに会うかもしれないカカロットとガタバル。

あいつらの成長をサイヤ人流で確かめてやるのも悪くない。

その為には速めにコールドスリープを解いて体をほぐす時間を用意しておかないとな。

少しだけコールドスリープの期間を再設定しておく。

 

「これで寝坊しないで済むな」

 

地球の着陸地点はできるだけ果ての方。

人里で他人に迷惑をかけてはいけない。

地球には地球のマナーがある。

あいつを探している間に惑星間のマナーについて随分と考えさせられる羽目になったからな。

 

「忘れないようにしないとな」

 

あくびを一つして眠りにつく。

次に目覚めるのは半年後。

半年寝て、半年体をほぐしておく。

これで十分サイヤ人流の成長の確認はできるはずだ。

 

.

.

 

……それと一日遅れで、また別のアタックボールがある惑星から地球に向けて発信した。

そのアタックボールもまた1年間の渡航による、地球着陸という奇妙な一致。

それは今のラディッツ。

地球にいるガタバルやカカロット。

ピッコロたちも知る由はなかった。




悟空の働く意欲は高いようで低いといった感じです。
たぶんデスクワークじゃなくて重いものを持ったり修行に近い内容なら
働くかもといった感じです。
指摘などありましたらお願いします。

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