とある一族の落ちこぼれ   作:勿忘草

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悟空殺害の犯人とは?
そして恐ろしい予告。
果たして地球をみんなで守れるのか!?


『誇りって何ですか?』

いきなりカカロットが殺された。

子供は泣きじゃくっている。

なぜ故、いきなり奇襲されなくてはいけなかったのか?

接点もないはずのこの人に。

 

「いったい何のつもりだ、カエンサ?」

 

兄さんとは呼ばない。

あの日の戦いから尊敬の念も情もないこの人に何も言う気はなかった。

 

「弱いサイヤはサイヤにあらず、むろん貴様もな!!」

 

そう言って気弾を放つが……

 

「ぜりゃあああああ!!」

 

手刀で弾き飛ばす。

この程度の気弾ならば何発来ても同じことだ。

 

「少しはやるようだな、いいだろう」

 

そう言って降り立つ。

こいつ、スカウターでラディッツさん達の通話を盗み聞きしたか何かしたな?

 

「いったいどうやって地球にラディッツさんが来ることを知った?」

 

確証を得るための質問をする。

しかし返ってきたのはもっと非道な行為であった。

 

「あいつの部下を拷問したら吐いたんだよ、3人ぐらいは口を割らなくて殺したがな、まぁ当然吐いた奴も裏切り者と言って消しておいてやった」

 

なんて残酷な真似を。

もはや王を守る仕事を誇りにした人間ではない。

殺戮を好むサイヤ人でもない。

ただただ邪悪なもの。

己の欲を貫き通し、そのためには誇りも捨て同族を殺す。

こいつと同じ血が流れているというだけで反吐が出る。

 

「喰らえ、『エビルワルツ』!!」

 

指先から速射性に優れたビームを何発も出してくる。

しかしその程度ならば……

 

「『アルバトロス・ブラスター』!!」

 

全てを一気に飲み込む大きな気弾で消し飛ばす。

いっておくが容赦はしないぞ。

 

「ふん、そんな技で消したところで……」

 

そんな事をいっているが、目で追いすぎだ。

さて、背中に瞬間移動でもしてやるか。

額に指を置いてすぐに行動に移す。

 

「『エクスプロード・ウッドペッカー』!!」

 

瞬時に後ろに回って背中に一撃。

前回と同じように手ごたえはあるが、これで終わらせはしない。

俺は追撃のために構えている。

すると次の瞬間……

 

「はぁっ!!」

 

何と俺を狙わず、ラディッツさんの宇宙船を気弾で破壊した。

さらに……

 

「かぁ!!」

 

まばゆい気を発して一瞬の間に消えた。

気を追う事ができるから問題はない。

しかし厄介なのは…

 

「あいつ、スカウターまで壊していきやがった……」

 

ラディッツさんの宇宙船だけではなくまばゆい気を発した一瞬の間にスカウターを破壊したのだ。

大きな気弾でラディッツさんごとやろうとしたが避けられたんだろう。

残っている全員にカカロットの事を任せて、気を追い続けていく。

結構、縦横無尽に動いているようだが筒抜けだ。

 

「で……ここを選んだか」

 

人里から離れた山。

このまま逃げ切る気のようだがそうはいかないぞ。

 

「ひゃあっ!!」

 

木々が揺れるのを感じて構えた。

声を上げて勢いよく木から出てくるがそんな程度の事で……

 

「俺を欺けるかぁ!!」

 

平然と捕まえる。

しかしその捕まえた相手は……

 

「なっ、一般人だと!?」

 

そして後ろから攻撃をされる。

まさか無関係な奴らまで巻き込むとはな。

 

「どこまで下種なんだ、てめぇは!!」

 

そう言うも延々と木から飛び降りさせられる人々。

捕まえなければ死んでしまう。

気の大きさから判別できるが、見捨てられない心が枷になっている。

 

「ぐあっ!!」

 

背中を気弾で撃たれる。

最大限に張り巡らせているからダメージはいうほど負っていない。

しかし積み重なるとそれだけで厳しいものになる。

 

「うわぁあああ!!」

 

またもや木から飛び降りてこっちに向かわされる一般人。

掴もうとした次の瞬間、思いがけない援軍がいた。

 

「大きな気を探ってきたらお前だったか、ガタバル」

 

天津飯がそこにいた。

さらにもう一人女性を助けているのはランチさん。

餃子は動きをゆっくりにしてから丁寧に受け止める。

 

「はぁっ!!」

 

俺が再び捕まえたと勘違いしたのだろう。

十分な確認も行わないまま、天津飯に向かってカエンサが攻撃をしようとするが……

 

「『アングリー・フラミンゴ』!!」

 

踵落としで地面でバウンドするほど強烈な一撃を加える。

しかし、宇宙船を事前に呼んでいたのか這いずって辿り着いていた。

しぶとい野郎だ。

 

「1年後、この星を狙う……ドラゴンボールとやらの事が聞けたんでな」

 

こちらを見ながら笑みを浮かべて言う。

俺たちはドラゴンボールについて話していない。

つまりピッコロたちが言っていたのを受信したんだろう。

どこかにスカウターを置きっぱなしにしておいてあの場を去ったのか。

よりにもよって最悪の情報を与えてしまった。

だが、それならばラディッツさんにベジータ王子へ伝えられるのでは?

そう考えると邪悪な笑みを浮かべてカエンサが言い始める。

 

「それには俺にしか通信できんようになっているのさ、貴様に都合のいい事なんて一つもやるものかよ」

 

そう言って飛び立っていく。

こんなにも気分が悪いのは初めてだ。

天津飯達も何があったのかと気になっているようだ。

 

「実はあいつは俺の兄だ、今は縁も切れているがな」

 

そう言うと天津飯達は驚く。

まさか兄がいたのかと、そしてあんな変なものに乗っている時点で何者かという質問も来た。

 

「実は宇宙人だ、戦闘民族なんだ、俺も孫悟空も」

 

カカロットという名前で言ってもわかってもらえないからな。

孫悟空で伝えると目を丸くして信じられないという様な声を出していた。

 

「なっ、孫も宇宙人だったのか!?」

「頭を打ってしまうと忘れてしまうんだろうな、自分は地球人だと本気で思っていたからな」

 

尻尾がある人間がいるかという話だ。

まぁ、人里に降りていないからそう言ったこともわかっていなかったんだろう。

 

「そして今回あいつがやったことは暇つぶしのような感覚で孫悟空を殺した」

 

宇宙船で飛び立っていった方向を指さして今回しでかしたことを言う。

目的は相変わらず俺の抹殺だったのだろうが気まぐれか琴線に触れたという理由でカカロットにターゲットを切り替えた。

本当に面倒な奴だ。

 

「なっ、孫の奴を!?」

 

不意打ち同然の方法だったし。

理由が相変わらずの価値観っていうだけで気分が悪い。

 

「さらに俺が極悪人だという事を流布して自分は安全なポジションに収まっておくのだろう」

 

あいつの事だ。

ラディッツさんは自分が来た時には死んでいて、俺が無残な姿で殺したなんて言うのだろう。

そうすれば少なくてもラディッツさんを慕う奴らの敵意は俺に向く。

 

「でも、孫はドラゴンボールで生き返れる」

 

まだ、それが救いだが……

できれば使いたくもないんだがな。

 

「下らんこと以外なら仕方なしとみるか」

 

ギャルのパンティとか若返りとか、世界征服とかそう言うのはダメだが蘇生という意味では

極悪人でなければいいものとしよう。

 

「1年後に備えて全員で修業だな、神様にお前たちは鍛えてもらってもいいだろう」

 

重りを持った状態や空気が薄い環境での鍛錬でスタミナを上げておかないとな。

そう言う部分でどうにかしないと話にならない。

俺一人でどうかできる範囲を超えてしまった。

 

「白白さんに助力を仰がないと……」

 

大丈夫だ。

あいつならすでにその場所に居合わせている。

事の重大さはよくわかっているだろうし、今回年長者という部分もあり、かなりの戦力として数えられる。

 

「何人いるんだろう、天さん?」

 

ベジータ王子、ナッパ、カエンサ、ラブカ、ルビコラ。

サイヤ人だけなら5人。

俺が相手の出来る範囲はカエンサとラブカの二人。

無理をしたらベジータ王子を相手に時間稼ぎはできる。

布陣としてはその時の戦闘力の部分から割り当てないといけないだろう。

今の推測からでも厳しいのは確実だろうが。

 

「5人だが俺以上が一人、およそ同格が二人だ」

 

カエンサとの間にある差がどれほどのものかはわかっていない。

ただ、あんな手を使ったという事は俺よりも下とみてもいい。

それなら勝機は十分にある。

 

「お前以上がいるとはな……」

 

天津飯も息をのむ。

俺だってあんな来襲があるとは思わなかったよ。

あれだったらまだベジータ王子が来てくれた方がまだましだった。

あの人はちゃんと理由を説明したらサイヤ人を鍛えたりするのは渋々ながらやってくれるだろう。

それに超サイヤ人の成り方を知っているといえば、フリーザを倒す唯一の武器なのだから引き換えに引き下がってくれただろう。

 

「対抗手段がないとは言わんが奥の手がある」

 

奥の手とはフュージョンを使う事だ。

確か戦闘力が低い方の人間から幾らか倍にしたのが戦闘力になる。

100倍ぐらいだとメタモル星人は言っていたが……

仮に俺とラディッツさんならば4500の100倍だから450000。

十分今回の襲来では追い返す力になる。

 

「まぁ、それ以前に謝りに行かないといけないから、天津飯またな」

 

身内とは思いたくないが、縁は切れたがあれでも元は兄。

兄のやらかしたことを謝るのが俺の役目。

殴られても仕方ない。

そう決心してチチさんの所へ向かっていった。

 

「ここだな……」

 

ノックをして出てくれるのを待つ。

あいにく分かりやすい山奥だったため、来るのは数時間だった。

 

「おや、ガタバルさん、久しぶりだべ」

 

出てくれたか。

さて……単刀直入に言うべきだな。

 

「立ち話もなんだから入るべ、悟空さはいねぇけどな」

 

カカロットの名前を聞くと申し訳なさが募る。

 

「で、何の用なんだべ?」

 

意を決して俺はカカロットが殺されたことを告げる。

息を吸い込んで一息に言い放った。

 

「実は孫悟空が今さっき殺された」

「なっ、嘘だべ、冗談でもいっていい訳ねぇべ!!」

 

俺の言葉を否定して前のめりになるチチさん。

信じられないのは分かる。

しかし疑いようのない事実。

これがピッコロならまだ憎しみがあるとかで済むんだが……

 

「殺したのは誰じゃ?」

 

老人が悲しい目をして問いかけてくる。

牛のヘルメットをかぶっている人がチチさんをなだめている。

 

「俺の兄です、不意打ちで心臓と腹部に穴をあけて……」

 

それを聞いた瞬間、俺にまで怒りの目を向けてくる。

俺がたきつけたわけじゃないが、確かに俺にも責任の一端はある。

 

「ガタバルさんのお兄さんと悟空さの間にどういった因縁があるんだべ!!」

 

それを聞くとまた俺は、言葉を無くす。

これが因縁があったり、命の危険を感じて思いがけずならばまだいいのだが……

 

「ないんです……弱いとか下等という理由だけで

まるで地球人がコンビニを利用するような、それが当たり前だという様に」

 

何とも思わず、感情もなく平然と殺した。

あいつにとっては強さこそが全て。

選ばれた血統こそが全て。

弱いサイヤ人、最下級のサイヤ人などサイヤ人ではない。

風で飛ばされるたんぽぽの綿毛ほどの価値もないと真剣に考えている。

 

「そんなのひどすぎるべ!!」

 

おいおいと泣き続けるチチさん。

ドラゴンボールで生き返るとは言ってもこんなのはないよな。

 

「で……悟飯は?」

 

牛のヘルメットをかぶった人が問いかけてくる。

多分、誰かが連れていっただろう。

殺されないように強さをつけてやるために。

 

「ピッコロに連れていかれたと思います」

 

あのスカウターを切っていないならば自分たちが一年後に再び来ることも筒抜けだったはずだ。

自分と自分の予備で送受信ができる。

つまりドラゴンボールの事を聞く代わり重要な部分を話すリスクもある。

 

俺達以上のスパルタで案外、教えるのはうまいピッコロが師匠になるだろう。

結構桃白白と俺では気の扱いやある程度体術が出来上がってから教えないとうまくいかない可能性がある。

ラディッツさんは技は多いが今のあの人は甘くなりそうだからちょっとな……

 

「なんで連れて行ったんじゃ?」

 

爺さんが聞いてくる。

まぁ、殺すつもりはないだろうけど念のため言っておかないとな

 

「一年後にまた来るんで鍛えるのかと、次に真っ先に殺されるのは悟飯になりますからね……」

 

あの野郎の価値観では最下級戦士の子供も、弱いも当てはまれば間違いなく殺すだろう。

それから逃れるには撃退することだ。

 

「悟飯ちゃんを避難させればいい話だべ!!」

 

一理あるがあいつらはその程度で見逃すほどの奴らではない。

避難させたりしても別動隊か何かで抹殺しかねないだろう。

家だってやるだろうし、人里ごと巻き込んでしまうのも容易に考えられる。

 

「それが、どこにいても分かる機械を持っているから逃げられないんですよ……」

 

しかもスカウターがある。

およそ予備を持って動いているだろう。

壊したりしたところで焼け石に水。

だから八方塞がりなのだ。

 

「俺やピッコロが頑張ればいいと思っているだろうけど相手も強いからその最悪の結果は普通にあり得てしまうんですよ」

 

平均値を大きく押し上げてはいるがサイヤ人のレベルと比較しては低い。

1年で2000から2500にクリリンたちが上がっても相手はそれ以上だらけ。

ピッコロと悟飯が3000後半まで伸びて、桃白白も3000前半。

ラディッツさんが6000まであれば、何とか総力戦で五分まで持ち込めるか?

合計すると人数としてはクリリン、ヤムチャ、天津飯、餃子

ピッコロ、桃白白、悟飯、俺、ラディッツさんの9人。

カカロットが蘇って10人だ。

2000が4人で8000。

3500と仮定して7000、3000ジャストで合計10000。

ラディッツさんの6000と俺が15000に上がった場合としても21000。

蘇ったカカロットの数値を除いた49000が推測可能な合計値だ。

クリリン達4人でカエンサ、ピッコロ達3人でラブカ、ラディッツさんがナッパ、俺がベジータ王子。

ルビコラに関してはカカロットに任せておいて問題はないだろう。

これが最善だとしても全滅の恐れがある布陣だ。

しかも追加で誰かが来る可能性も否定できない。

 

「どうしようもないほどのピンチじゃな……」

 

爺さんもため息をつく。

今回ばかりはどうしようもないという言葉の通りだ。

 

「悟空さが生き返っても勝てる見込みは?」

 

そんな確証はない。

俺たちに助っ人がいたら話は別。

しかしその相手がどこにいるかわからない。

瞬間移動でもいいが、時間がどれだけかかるのか……

 

「もう、じたばたしても確定してるんで……やるだけですよ」

 

因縁を断ち切るために。

地球を守るために全力を尽くすのみだ。

 

「悟空さの敵取ってきてほしいだ、ガタバルさん!!」

 

チチさんの言葉に腕を上げて答える。

俺としてもそれをしておきたい。

もう二度とこんなことを引き起こさないためにも。

 

俺は全員と合流するために舞空術で向かっていく。

再び戻ってくるとそこにはクリリンと天津飯、餃子がいた。

ヤムチャはこのことを知らないからな、無理もない。

ピッコロと桃白白が1年後の来襲について伝える。

やはり筒抜けだったか。

それとカカロットの死体はそのまま神様の力で送られたらしい。

あの世で修業でもさせられるのかな?

まぁ、やっておいてもらわないと困る。

戦力として数えておきたいからな。

正直猫の手も借りたい、藁にも縋る。

そんな俺たちの状態だ。

 

「あの女も地球に来るとは言っていたがこの時期に重なってくれればな……」

 

ピオーネが来たら戦局はひっくり返る。

ベジータ王子は分からないがそれ以外の相手は確実に倒せる。

だがそんな都合のいい展開なんてあるはずはない。

 

常に思い描くのは最悪の展開。

それを脱するための策。

今、地球に未曽有の危機が迫ろうとしていた。




感想の予想通り、カエンサが悟空殺害の犯人です。
もはや誰ンサなんだというネタぐらいバレバレだったというわけですね。
予想にありましたがルビコラは愛を注いだら虐げられるのを恐れていただけで、根っからの選民主義ではありません。
むしろガタバルよりの思想の持ち主です。
父親似がカエンサ。
母親似がガタバルといった感じです。

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