とある一族の落ちこぼれ   作:勿忘草

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会うのが目標みたいな書き方ですが、原作の話に主人公が割り込んでいくのが主な話です。
できれば、超のあの未来編までかければいいんですが……


『惑星探訪:ヤードラット 初めての修行』

俺が惑星ズンを出てあれから丁度一ヵ月が過ぎたころ。

どうやらヤードラット星の大気圏内が近づき始めていた。

そろそろ着陸の準備をしなければいけない。

 

「荒野があれば一番楽なんだけどな……」

 

森や集落の近くは極力選びたくはない。

理由としては自然の破壊や人への被害が甚大なものになってしまうからだ。

 

「おっ、丁度無人の高台があるな、ここを着陸地点に設定して……」

 

運よく無人の場所を見つける事が出来たのでそこに着陸する。

しかし、残念な事にクッションとか音を遮断するものがないので……

 

「何事だ!?」

 

想定したよりも大きな音を立ててしまい、それに気づいた住民達が慌てて駆け寄る。

宇宙船を攻撃されてしまうといけないのですぐさま出ていく。

 

「異星人ではないか!」

 

思わぬ客人が来たというような、この風貌がサイヤ人そのものだったからか

ヤードラットの人々は警戒心を抱いて近寄る。

 

「あんたらの中で一番偉いのは誰だ?」

 

ヤードラット星にも長老なり星の長がいるはずだ。

この中にいてくれれば話は速いのだが、そうはいかなかった。

 

「悪いが長に会わせるわけにはいかない!!」

 

そう言って拳を繰り出すヤードラット星人。

怪しいからこそ捕まえるために戦闘態勢を取ったか。

 

「ふっ!!」

 

その一撃をかわしてこちらも構えをとる。

全員が一斉に攻撃してくると負けるだろう。

多勢に無勢も良い所だ。

 

「しかも宇宙船、放り出すとか危険極まりないよなぁ」

 

破壊されたら俺はここから出られない。

出来れば話の分かる人がいたらいいのに、血の気の多い戦士型がここには多いのか。

ほとんどが構えて俺を捕まえようとしている。

 

「はぁー!!」

 

3人がかりで攻撃をしてきた。

両手で防げても確実に一撃は喰らうだろう。

一人一人の強さが戦士タイプな分、普通の奴らよりも高い。

 

「ぐっ!!」

 

腕を交差させてがっちりと守る。

相手の攻撃を耐えて時間を稼いでおく。

こうしておけばいずれこの騒ぎを聞きつけて誰かが来るだろう。

戦闘民族ではあるが、どこでもかしこでも喧嘩を売るわけじゃあない。

ましてや、今回は何か力を教えて貰おうというもの。

自分から不利になる状態は避けなければいけない前提なのだ。

 

「喰らえっ!!」

 

気弾の乱れ打ちが襲い掛かる。

高くとびあがって回避をする。

流石にやり過ぎではないかというような顔を浮かべる奴もいる。

 

「上に逃げるとはな、格好の的だ!!」

 

気を集中させて大きな球にする。

それをぶん投げようと振りかぶっていく。

 

「大丈夫だ、空を飛んで回避はできる……」

 

回避自体はできるがあとで2発は確実に来る。

仮に戦士タイプじゃない奴に動きを止められたらひとたまりもない。

 

「やめんか!!」

 

その声が響いた瞬間、全員がその声の方向に振り向く。

 

「長!!」

 

どうやらこの星で一番偉い人のようだな。

全員が戦闘態勢を解いてかしこまった状態になる。

そして俺はそれを見て着陸をして体勢を整える。

 

「どうやら幼いサイヤ人のようだが……何用か?」

 

長が重々しく口を開く。

どうやら侵略行為を続けているサイヤ人のイメージが強いようで、幼いものといえど警戒するのだろう。

 

「こちら、ヤードラットの民は特殊な力を使えると聞いて、教えていただこうと…」

 

目的を言った瞬間、ほかの民が口々に長へと言葉を投げかける。

 

「なりませんぞ、長!!」

「教えてしまうと悪用いたします!!」

「幼子であってもサイヤ人は危険です!!」

 

邪悪な気配でもあったのだろうか?

悪用するつもりもないし、別に侵略行為がやりたいわけでもないのに。

 

「おぬしらが思うようなサイヤ人ではない、現にあの子の方が強いのにお前さん達に攻撃を加えておらんじゃろ?」

 

流石は束ねているだけあって実力を見抜く目などを持ち合わせているようだ。

わざわざ、戦闘を好む種族でもないものに対して戦闘を仕掛けるような真似はしない。

今回のように、抵抗しないと危ない場面の時は仕方ないだろうが。

 

「まぁ、それを言われると……」

「我々の攻撃を避けたりしていただけですし……」

 

その言葉を聞いて、先ほどの戦闘を思い返すヤードラットの人達。

反撃をしたとして勝てるかどうかは分からないけどな。

抵抗をして心証を悪くしてしまうのは避けたかっただけの話なんだが

 

「幼子であれば2つほど教えてあげよう、しかし時間は費やすがね」

 

2つも教えて貰えるのか!?

一体どのような能力なのだろうか、とても気になる。

 

「こちらへ来なさい」

 

そう言って案内をしてくれる。

どうやらひらけた盆地あたりで行うようだが……

 

「まず、教えるものは『千里眼』じゃ」

 

千里眼?

遠くを見渡す能力だという訳か

 

「私は心も読めるんだが、遠くと言っても、訓練次第では前だけでなくそこを向いたまま後ろや左右を見る事もできる」

 

全方位が見えるようになると、仮に襲われるような事になっても、回避ができるな。

そう考えれば悪用ではなくても自己防衛に使えるものだ。

 

「そして、千里眼の習得が終われば『瞬間移動』を教えよう」

 

瞬間移動と言えば、その思った場所にすぐに行けるというものだ。

確かにこの能力は悪用すると思われても仕方ない。

 

「まぁ、これもどこにでも行けるわけではない」

 

溜息をついて説明をしてくれる。

できればもう少し手軽だったらいいのにと思っている顔だった。

 

「いった事のある場所に限定されるし、その場所に見知った人間のエネルギーを目印にしていくんじゃよ」

 

異星間の関りがないから全然重宝されておらんのじゃ。

少し残念そうに呟く。

つまり無人島や無人の星には一度訪れているからといっていけるわけではない。

そしてイメージが鮮明にできていない場合においてもその場所に行けるというわけではない。

 

「まぁ、全てが全てそんなに良い様に能力が出来ているわけではないんですね」

 

俺が言うと頷きを返してくる。

万能なものと言うわけではなく補助的なもの。

そういう見方に変えた方が良いというわけ。

 

「その通り、だからこそヤードラットの侵略は起こらないんじゃ」

 

相手だって時間を無駄にはしたくないじゃろうからな。

儂が同じ立場でも同じ意見を出していたかもしれん。

そう言って笑っていた。

 

「万能でもない能力など習得するだけ時間を費やすという見方をしておるからの」

 

それでも楽にはなるんだろうけどな。

面倒な時間だと思っているんだろう、その間に侵略をする方が速いと考えて動いているというわけだ。

 

「ちなみにこの習得には時間がかかるのでな、しばらくの間はこの星に住んで鍛錬をしなさい」

 

それは織り込み済みだ。

これがすぐに身に着けられるほどの上達速度があれば『落ちこぼれ』とは言われないだろう。

 

「何から何までありがとうございます」

「気にする必要はない、目を見れば複雑な事情がある事も心得ておるのでな」

 

そう言われて、翌日からヤードラットでの鍛錬が始まる。

幸い、重力自体が軽い惑星だったので動く事に苦労する事はなかった。

 

まず基礎として集中力を高めて遠くを見る、その後視野を広げるイメージで感じ取り、

後ろや左右に目があるように視覚が真後ろや左右に繋がっていくように考える。

これは思ったより難しく、集中力を切らすと1から始める事になる。

その為、常時高い状態を維持し続けないといけない。

 

「これはこれで鍛錬になっているな……」

 

まだ普段の状態では視覚に反映こそされないが後ろの気配などに敏感になっていく。

感覚が鋭敏になって感知できるようになっている。

 

「随分と努力をするのだな」

 

最初に攻撃を仕掛けてきたヤードラットの人が覗きに来ていた。

どうやら俺に対するイメージは取り払われたようだ。

鍛錬を始めて最初の一ヵ月は誰も近寄ってこなかった。

少しずつ、アドバイスなりやり方をしてくれるようになったのは2か月目からだ。

それまでは集中力を高めて遠くを見ている状態からあまり進展がなかった。

 

「せっかく教えていただいているんですから、必ず習得しないといけません……」

 

そう言って再び集中に入る。

もう声が耳に入る事はない、そのまま遠くを見る。

この第一段階自体は思いのほか速かった、しかし次の視野を広げるという部分に時間がかかった。

視野を広げる際に、見る方向を増やそうとすれば集中力に乱れが生まれて解除されるからだ。

 

「ふむっ、では一つアドバイスだ、繋がるイメージはまずは左右から始めた方がいい」

 

左右から?

前後の方がいいと思っていたんだが違うのか?

 

「本来の眼の位置から近い左右、さらにその左右から繋げていけば比較的楽だぞ」

 

なるほど、その理屈は理に適っている。

ただ、慣れればそのやり方じゃなくても繋げられるけどなと笑いながら言っていた。

 

それからさらに時間は立って2か月がたった頃……

 

「はっ!!」

 

視覚を繋げる事に成功した後はさらにその繋がった視覚でも遠くを見通せる状態を作り出す。

完全な習得までは秒読み段階ではある。

想像より速い習得にみんなが口々に「俺のおかげだな」など言っていて笑いあっている。

最初の疑念は完全に失われていたようだ。

 

「うむ、この吸収力はなかなかのものじゃな」

 

長がいきなり目の前に現れて声をかけてきた。

つまりこれが瞬間移動か。

俺の気力というものを読み取って現れたようだ。

 

「それでは次の段階に行こうかの」

 

そう言って瞬間移動のやり方を聞くと、なんとほとんど千里眼の基礎から変わらないのだ。

つまり、集中力を高める事。

そして遠くにいる人間を鮮明にイメージ出来る想像力が必要なのだ。

 

「千里眼は基礎的なものじゃからな、あれをしなければ瞬間移動を学ぶのには時間がかかるんじゃよ」

 

集中力以上に繋がっているイメージなどそういった想像力が養われるかららしい。

仮にやらない場合、どれだけ時間がかかるのか聞いてみる。

 

「もし順番を無視したらどれほどの費やす羽目になりますかね?」

「基礎を積んでいないわけじゃからな、多分2か3倍ぐらいかかると思う」

 

えっ、そんなにも時間を費やすのか!?

千里眼やってからの方が圧倒的に速いんじゃないのか?

 

「まぁ、そんな事にはならんようにやったから安心して瞬間移動の修行に励みなさい」

 

そう言われて、俺は瞬間移動の修行に取り組む事にする。

それからまた数か月もの時間をヤードラットで過ごす。

 

初めてヤードラットに来て1年と半年が過ぎようとした頃。

俺はようやく瞬間移動と千里眼を完全な状態で習得していた。

完全な状態と言っても千里眼が普段からできるようになった事。

そして、瞬間移動での気の感知能力が上がったぐらいのものだ。

とは言ってもヤードラットの人達は日常生活で常に千里眼をするような真似はしないのだとか。

まぁ、やったら簡単にみんなのプライバシーが分かるからね。

これを使う場面自体が遠くのものを見たり、見失った人間を探す事に使うのが主なものだからな。

 

瞬間移動を習得した事で最終的に楽に惑星ズンに戻れるかと思ったが、そうはいかなかった。

今、戻ろうとすると宇宙船に触ったまま、瞬間移動をする事になる。

惑星で人がいるど真ん中で宇宙船ごと現れると騒動しかおこらない。

そうなるのは流石に良くない。

というわけで、俺は宇宙船経由で帰らないといけなかった。

 

「この長い間、本当にお世話になりました」

 

そう言ってヤードラットの人達に別れを告げて、俺は宇宙船で飛び立とうとする。

皆が手を振って笑顔で見送ってくれていた。

初めはあれだけサイヤ人というだけで見られていたというのに。

 

宇宙船が飛び立つ時、俺は目頭に熱いものを感じずにはいられなかった。




主人公は結構速い段階で強くなっていきます。
というよりも育成ミスが原因で伸び悩んでいたというのが
主な理由です。
指摘などありましたらお願いします。

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