原作屈指の激戦にして死者大勢のサイヤ人襲来編。
まだまだ別れは続きます。
「ウォーミングアップはおしまいだぜ」
そう、ヤムチャが言って相手を見る。
かめはめ波で粉々になった栽培マンという奴との戦いを終えたのだ。
天津飯と桃白白、俺、悟飯、クリリンが一人ずつ倒した。
6人いた栽培マンは今のヤムチャで最後だった。
「いいだろう、ナッパ!!」
そう言うと巨漢の男が前に出る。
見た限り力で押すようなタイプだが……
「お前の戦闘力は6500……ラディッツが肉薄していやがるから気を付けろ」
ラディッツの強さをあの機械で確認したのか。
俺たちの数値も確認しているなら一人ずつ相手にしているようでは、後でコンビネーションでやられたら無理だというのは理解しているはずだ。
「スパーニ、貴様の戦闘力は13000だ、ここにいる奴らが束になっても勝てん、がんばれ!!」
13000……ラディッツ2人分か。
とんでもない隠し玉を用意していたみたいだな。
「わっ、わかりまひたぁ!!」
あいつ、緊張していやがるな。
噛んでしまうあたり、悟飯と同じで初めての戦闘といった所か?
「なんだか戦うのが好きそうじゃありませんね」
確かにな。
お前によく似た気性なんだろう。
実力が折り紙付きなのもな。
「だが、気を付けないと死ぬぞ、気合入れろ」
俺は忠告をしておく。
油断は今回に限って死を身近にさせてしまう。
あの栽培マンという奴でも自爆をされて死ぬ可能性はあっただろうからな。
「ハイっ、ピッコロさん!!」
いい返事だ。
戦うのは好きではないがやるべきことは分かっている。
ビビり症や怖がるのがないのが救いだ。
「はぁあああ!!」
天津飯達がスパーニという女と戦い始めた。
ラディッツは一人でナッパという男と戦う様だが……
「天津飯達の方に行くぞ!!」
死人が出る可能性が高いのは天津飯達だ。
そしてクリリンたちがラディッツの加勢に向かう。
孫悟空の奴が来るまで時間が持てばいいけどな。
.
.
「はあっ!!」
俺と白白さんが攻撃を仕掛けて、餃子の超能力で拳などに痛みを走らせる。
その一瞬の隙で攻撃を避けていく。
しかし相手の速度はガタバルの本気と遜色ないのか。
目で追うのが難しい。
12の目があればとらえられるが死にに行くようなものだ。
「はいっはいっはいっ!!」
手足をせわしなく動かして連打を放ったり、足払いをしたり多岐にわたって攻撃をつなげてくる。
しかし雑な部分が見え隠れしている。
まるで今日が初めて実戦を行うような、そんなイメージだ。
鍛錬だけでこの高みに立っているとはすさまじい女だ、驚嘆に値する。
「『どどん波』!!」
餃子が援護の一撃を放つが、それを片手で受け止める。
反応が速い。
「『渦巻十枝』!!」
指を組み合わせる形に腕を回しながら10本の『どどん波』を放つ。
オリジナルの技のようだが強さの差があるからか、技の速度と威力が段違いだ。
「『激烈光弾』!!」
「『魔閃光』!!」
ピッコロと悟飯の技がスパーニに向かっていく。
しかしさすがの反応の速さでその技に対して真正面の体勢になる。
「はあぁ!!」
片手ずつで弾き飛ばす。
もう少し、こっちが隙を作っていたら当たっていただろう。
実戦経験が浅いながらもなかなかのものだ。
強さでカバーしているあたり末恐ろしい。
「だああああっ!!」
悟飯が果敢に挑みに行く。
相手は何とか弾いているが戦いづらそうだ。
まるで子供を殴っていいのか迷う姉のような……
「えぇい!!」
腕を掴んで軽く放り投げる。
ピッコロは何かに気づいたのか、背中に回りこんだ。
「随分と隙だらけだな、尻尾掴ませてもらったぞ」
そう、この女性なにかと隙がある。
強さゆえの油断ではなくだ。
「えっと……ごめんなさい!!」
そう言って力を籠め始める。
そう言えば孫から聞いたことがあるぞ。
尻尾をその気になれば自分から引きちぎれると。
「おい、スパーニ、お前さんは尻尾を鍛えているだろうが!!」
巨漢の男がそう言うと力を抜いていく。
まさか緊張でそんな事も忘れていたのか?
「本当にあいつはしっかりしろよ……」
そう言った瞬間ラディッツの拳が顔面にめり込んで殴り飛ばすことに成功していた。
しかしタフなようでにやりと笑っている。
「こっちとラッシュで張り合えたかと思えば殴り飛ばしてくるとはな、ずいぶん成長したじゃねえか」
そう言う相手にヤムチャが仕掛けに行く。
狼牙風風拳を放つが相手の目線を足元の向けさせないためにラディッツとクリリンが気弾を放ってサポートをする。
「『サタデークラッシュ』!!」
「『かめはめ波』!!」
ヤムチャのラッシュにかまいっきりになっていた相手は両腕を交差するもダメージを負う。
と言っても期待したほどに比べてしまうと少ないが。
「まぁ、こっちもいい加減に何とか打開しないとな」
他人の事も気になるが、この女への攻撃をどのようにしていくか。
ダメージはお互いにないのだが、このままだと自力で押し切られかねない。
「『鶴翼の舞』!!」
白白さんが先に大技を仕掛ける。
まだ序盤の様子見の段階だというのに、まるで終盤の決めに行くほどの速さだ。
「ぬぬぅ!!」
弾いてはいるが徐々に体に入っていく。
回避をすればいいのだが、回避をしたり防御方法などのイロハがあまりにも未熟なのだろう。
「はぁああっ!!」
白白さんが避けた先を読んで拳を突き出す。
素晴らしい読みだ、相手の軌道にドンピシャといった所。
これは確実に顔に当たる。
完璧なタイミングと思ったのだが次の瞬間、恐るべき身のこなしを見せていた。
「やあっ!!」
頭突きで放たれていた拳を砕き、その勢いのまま回し蹴りをアバラに叩き込む。
戦い嫌いでも戦闘民族の本能が攻撃をさせる。
しかもすさまじい威力を伴う。
「まさかカウンターをあの瞬間でするとはな……」
拳が砕けてしまいさらにアバラもへし折られた白白さんがほほ笑んでいた。
あの一瞬であり得ないほどの攻撃を繰り出している。
今、拳が砕けて脂汗をかいている白白さんを見ておろおろしているあたり、心根は優しい女性だ。
多分、殺そうとかも思っていない。
ただ、虎や象が軽くやっても死ぬようにそう言った力の差による不慮の事故はあり得てしまう。
「天津飯、餃子、ピッコロ、悟飯……死ぬんじゃあないぞ!!」
そう言って駆けていく。
迷いの生じた相手の攻撃を避ける。
そして背中に回り片手とはいえ羽交い絞めにしていた。
まさか……
「やめてください、白白さん!!」
次に何をするのかわかってしまう。
そこまでしなくても打開策はあるはず。
早まってはいけない。
そう思い、俺は声を張り上げていた。
「少しぐらい、兄弟子にいい格好させろ……さらばだ!!」
そう言って全身が光り大爆発を起こす。
すさまじい勢いだ。
倒すために自爆をするだなんて……
まだ、勝てる可能性もあったでしょうに……
腕とアバラを折られて足手まといになるまいと……
「白白さん……白白さーん!!」
煙が晴れると、スパーニが体を震わせていた。
かなりのダメージは負っているようだが致命傷じゃあない。
無駄死にだったのか……
「あああ……」
申し訳なさそうな悲しい目をするスパーニ。
白白さんの自爆を『自分が殺した』と思っているのだろう。
まさかの戦意喪失の状態である。
「どうする、続けるのか?」
ピッコロが聞くと力なく首を振る。
あの岩陰にいた男も、巨漢の男もため息をついていた。
「実戦経験積ませておけよ…」
「優しすぎるのがここまでダメな方向に転がるとは予想外だ……」
そう言っているのが聞こえたが、徐々に嫌な雰囲気の気が近づいてくるのを感じる。
まさか……
「ガタバルの奴、しくじったというのか!?」
ピッコロとラディッツが大きな声で言う。
強さを間近で見続けた奴らだからこそ異様なことになっているのがよくわかるんだろう。
「やつの戦闘力から考えてあの二人が勝つ可能性は低い……何かしたな?」
岩陰にいる奴も不思議な顔で言っている。
あいつの心根も優しいものだ。
前回のように人質か何かを取られたのかもしれん。
厄介な状態ではあるが嘆いている暇はない。
「厄介な相手が戦意喪失の状態なのが救いではあるがこの速さ……直に来るぞ!!」
そう言って構えて上空を見ているピッコロ。
大きさだけならばさっきまで圧倒的だったスパーニよりは小さい。
ラディッツの奴とナッパの戦いもかなり拮抗している。
タフすぎて計測された戦闘力以上の数値になっているんだろう。
8000か8500はあるんじゃないのか?
「いい加減倒れろよ、『シャイニングフライデー』!!」
「こっちのセリフだ、『ジャイアントボム』!!」
二人の技が衝突しあい、爆発を起こす。
その爆風からクリリンやヤムチャが攻撃を仕掛ける。
「うざってぇな!!」
そう言って人差し指と中指をくいっと持ち上げる。
すると周囲が爆発を起こす。
こんな範囲攻撃もあったのか……
「くっ、『ジャイアントストーム』をかわしきるとはな……」
相手もかなり焦りが生じている。
三人のコンビネーションが即興とはいえ翻弄できている。
こんな状況とはいえしっかりと勝たないと、戦闘民族の名が泣くというプライドなのだろうか?
各個撃破ができない分、余計に苦労するだろう。
「こうなったら……」
そう言ってヤムチャの方へ向き直る。
もはや防御を捨ててでも一人ずつ倒す気か。
「オラァ!!」
ヤムチャの攻撃を受け続けながらも反撃をする。
クリリンが近づいた瞬間に、ジャイアントスイングで投げる。
それを受け止めている間にラリアット。
さらに二人まとめてバックドロップ。
流れるような怒涛の攻撃。
ヤムチャのダメージは深刻なものになっていた。
「次はそこのチビだ!!」
クリリンに向かっていく。
しかし……
「『マンデーリング』!!」
ラディッツが捕獲をする。
それをぶち破って睨みを利かせていた。
だが……この均衡がたやすく破られる。
「ナッパよ……ラディッツ程度に押されるとはな、もはや貴様も必要ない」
「カカロットのガキ、お前も我らにとっては不要なもの……死ね」
岩に二人の邪悪な気を放つサイヤ人が立っていた。
一人は味方であるナッパに。
そしてもう一人は悟飯に向けて掌を出していた。
「こいつらがガタバルを……」
近づいてきた気の大きさや方向から考えてこいつらがガタバルを倒した奴ら。
しかし岩陰にいたサイヤ人が不思議そうな顔をして質問をした。
「おい、ルビコラはどうした?」
もう一人いたのか。
どうやらそれだけはガタバルが倒したのか。
「ガタバルに殺された、本当に残念だった、救ってやれなかった」
「母親殺しとは……悍ましい奴に育っていたよ」
母親を殺しただと!?
あいつの性格からして考えられない。
それにこの邪悪な気、もしかして……
「ベジータ、おおよそこいつらの事だ、
ラディッツは生きていたんだ、嘘をついているかもしれねぇ」
やはりそう思うよな。
あいつの性格上からして考えられない。
「知らないのか、ナッパ?」
そう言って気弾が圧縮されていく。
まさか本当に味方に対してあんな一撃を……
「弱いサイヤに生きる価値はなく、口を開く価値もないのだという事を」
そう言って一撃が放たれる。
しかしさすがはタフな男だ。
「うぉおお!!」
拳で叩き落す。
喧嘩をするのならば上等だという様に。
「なかなかいい攻撃だったぜ、腕が痺れたじゃねえか」
不敵な笑みを浮かべるナッパ。
しかし相手の攻撃は終わりではなかった。
「まだ、もう一撃があることを忘れていたな……
『フォルティッシモ・レクイエム』!!」
あまりにも巨大な一撃をナッパに向けて放つ。
あまりの大きさに身がすくんで誰も動けない。
「貴様も、不要な存在としてサイヤの歴史から抹消されるがいい!!」
気弾が収まった時、地面は陥没していた。
そしてその中心には横たわる形で倒れていたのだった。
あの愛溢れる死があってもドラゴンボールで生き返れるというのがシリアスぶち壊しの要因。
今回で桃白白さんが死にました。
原作の餃子ポジを埋める仕事です。
ガタバルの異母妹に当たるスパーニの年齢は18です。
フリーザ軍で鍛えられたので戦闘力は非常に高く潜在能力もあるが、
ルビコラに育てられたことで戦いが不得意な優しい女の子。
原作の初期悟飯と同じような感じです。
少しでも非情に育っていたら桃白白の自爆で戦意喪失になんてならない。
ガタバルと言いスパーニと言い、カエンサ以外はラブカの血が薄すぎたようです。