とある一族の落ちこぼれ   作:勿忘草

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前回、最後に犠牲になったのはミスリードを誘えたのでニヤリとしました。
改心フラグが徐々に立っていきます。
ベジータはナメック星で確定なので放り投げていますが。


『思わぬ援軍』

俺はカエンサの奴の巨大な気弾の一撃を食らった。

……そう思っていた。

だが現実としては俺は無傷だった。

なぜ無傷だったのか?

それははっきりとわかっている。

当たる寸前に俺を突き飛ばした奴が居た。

そいつが俺を庇ったんだ。

 

「なんで……」

 

わざわざ庇う必要があったか?

見捨てればいいのによ。

 

「なんで俺を庇ったんだよ、ラディッツ!!」

 

俺の前に立って一撃をもろに受けていたんだろう。

ぶすぶすと煙を上げている。

クレーターの真ん中で力なく横たわっていた。

 

「わからない……でも仲間だった奴がたかだか仕留められないだけで

殺されないといけないのかって思うと体が勝手に動きやがった」

 

こいつ……優しい心を持ちやがって

昔のお前なら体がすくんだとか理由にしていただろうに。

 

「俺を見捨てたら地球は守れたかもしれねぇのに……ラディッツ、お前は馬鹿野郎だぜ」

 

そうは言うが俺は心の中で称賛していた。

俺が同じ立場だったならこんな真似はできなかっただろうからな。

 

「馬鹿野郎でも、仲間を大切しないとな」

 

そう言って目がかすんでいるのか俺の方向を向かなくなってきた。

俺はこいつの敵を討ちたいとも思えてきた。

俺のせいでこうなったんだからな。

 

「……ベジータ!!」

 

ベジータに声をかける。

地球人との戦いだったが本当に面倒な相手を忘れていた。

こいつらならば弱ったベジータでさえも攻撃するだろう。

 

「ナッパ……構わん、やれ!!」

 

ベジータもこいつらの行動は目に余るのか了承の言葉を言う。

俺はラディッツの敵を討つために、地球人の見方を一時的にする。

 

「あと……ナッパ、『弱虫』が抜けていたぜ」

 

ラディッツが最後に言ってくる。

お前の今の行動を見て、今まで強さこそすべてだと思いお前をなじってきた自分が情けないぜ。

強いからすごいんじゃねぇ。

心も強くないと本当に強いサイヤ人にはなれないってこと。

お前を通して見せてもらったぜ。

 

「お前はもう弱虫なんかじゃあねぇよ」

 

そう言ってラディッツが息絶えたのを見て目を閉じさせる。

チビに頼んでボロボロにラディッツの死体が鳴らねぇように遠ざけてもらう。

 

「仲間殺しとは許せねぇ!!」

 

俺はカエンサの方へ向かっていく。

元々殺そうとしていたんだ。

反撃されることだって予想内の行動だろ?

 

「ふん、勝てるとでも思っていたか?」

 

カウンターを仕掛けてくるがこっちをあまり舐めるなよ。

その一撃を片手で受け止めて顔面を殴る。

相手も足腰が強い分あんまりダメージは与えてはいない。

しかしそれ以外に重要なことの確認をすることができた。

 

「お前の手から血の匂いがするぜ、やっぱりガタバルがルビコラをやったってのは嘘だな!!」

 

その受け止めた時の手から漂った匂い。

それは血の匂いだ。

人を殴った返り血にしてはあまりにも濃い。

手の全体が血に濡れた匂いだった。

だからこそ確信をもって俺は言う。

その言葉にスパーニは驚愕の表情を浮かべている。

まさか兄が殺すなんて想像できないもんな。

 

「どりゃあ!!」

 

口を開けてゼロ距離に近い状態で『ジャイアントレーザー』を放つ。

しかしカエンサだけでなく二つの気弾で相殺をして目の前に現れたのは……

 

「ラブカ!?」

 

俺の邪魔をしてあの一瞬でカエンサと役目を入れ替えやがったか。

だがそれがどうした。

腰から持ち上げて叩きつける。

背中を打ち付ける前にくるりと回って着地をした。

 

「『ジャイアントハンマー』!!」

 

ラリアットを放つ。

腕で受け止めるがまだ終わらねぇぜ!!

 

「『ジャイアントスタンプ』!!」

 

蹴りで突き放す。

その威力は体に響いたか、片膝をつく。

 

「ラブカ、とどめだぜ!!」

 

そう言って俺は全力でラディッツの技である『ウィークエンド』を放つ。

あいつのようにはならねぇ荒っぽい感じだがせめてものあいつにできる弔いの形ってもんだ!!

 

入れ替わったカエンサはカカロットのガキたちと戦っている。

元々の戦闘力の高さからかなり優勢に進めていやがる。

三つ目族の奴の腕がへし折られていたりしている。

 

「うぉおおお!!」

 

危機的な状態になったからか、カカロットのガキの目つきが変わる。

そういや、眠っていた力の事をなんていうんだったか?

まぁ、それを引き出したカカロットのガキに蹴り飛ばされる。

俺でもかなり痛いダメージになっていただろうな。

 

「貴様如きがよくも俺の顔に蹴りを…」

 

蹴り飛ばされた岩に突っ込んだのが相当頭に来たのだろう。

青筋を浮かべて憤怒の形相で睨んでいる。

 

「死ねぇー!!」

 

腕に集めた気弾を放つ。

ガキ相手に容赦がないのはサイヤ人ではあるが、こいつがやると嘘に思えてくる。

ただ弱い者や自分に合わないものを消して、強きに媚を売る。

ただの姑息な悪党だ。

サイヤ人の誇りなんて惑星ベジータとともに消し飛んだのだろう。

 

「うわぁああ!!」

 

カカロットのガキにカエンサが一撃を放つ。

避けきれない状態まで痛めつけてからとはとことん腐った奴だぜ。

しかし次の瞬間……

 

「悟飯!!」

 

ナメック星人の野郎が一撃の間に割り込んでいやがった。

それはまるで親が子供を守るように。

体全体で受け止めていた。

体からラディッツのように煙を出してゆっくりと崩れ落ちていく。

逃げろと言っているあたり、自分たちとの戦力差を冷静に考えていやがるな。

 

「死ぬなよ……悟飯」

 

そう言って目を閉じていく。

あいつらの不意打ちや弱い奴を狙う方法、人の情に訴えるやり方。

どれもこれも成果としてみればすごいがサイヤ人として人間としてみた時あまりにも醜悪に感じる。

 

「うぁああああ!!」

 

カカロットのガキが泣き叫ぶ。

徐々に戦闘力が上がっていく。

急いでスカウターの計測をすると凄まじい数値を叩き出している。

 

「10600だと……」

 

まさか感情でここまで跳ね上がるとは想像をはるかに超えている。

これならカエンサもただでは済まない。

あいつの戦闘力は11600。

ラブカが12000。

 

「ぬぉおおおおおお!!」

 

両手で必死に受け止めて後ろに下がっていくカエンサ。

そして岩をいくつかぶち抜いた先からゆっくりと煙を薙いでカエンサが出てきた。

かなりのダメージはあったようだが……

 

「今度こそ死ぬがいい……」

 

手を前に翳して気弾を放つ。

しかしまたもや誰かが割り込んできた。

そして腕を振り上げて……

 

「『ワイルド・ハンマー』!!」

 

そう言って気弾をカエンサに対してはじき返す。

それを避けているが驚愕の顔を浮かべていた。

 

「戦闘力13000だと!?」

 

割り込んだのは女だった。

それも飛び切りの美女だ。

 

「カエンサの方ばかりを見ていていいのかね?」

 

そう言ってラブカが気弾を放つ。

隙があると思っていたようだが甘いぜ

 

「ふんっ!!」

 

俺がもう一度叩き落す。

そしてカウンターを叩き込んでいく。

 

しかし空中へ飛んでいく。

大きな気弾を俺に向かって二発撃ってくる。

叩き落しても無駄だと言いたいのだろう。

だがそんなので怯む俺じゃあねぇ、両方叩き落してやるぜ!!

そう思って構えた瞬間……

 

「あなた達なんて親でも兄弟でもない!!」

 

スパーニが割り込み、叫んで放たれた一つの大きい気弾を弾き飛ばしていく。

やっぱりこいつに冷徹な戦士は無理だったか。

 

「子供は狙うし、あの人を殺したのに他人になすりつける、貴方の娘であることが私は恥ずかしいわ!!」

 

そう言って降り立つ。

だがラブカは次の一撃を俺に寸分たがわずに打ってきた。

娘から言われても動じていないところを考えるとこいつらは本当に同族意識がまるでない。

 

「シュポー!!」

 

俺の前に割り込んでくる影が一つ。

煙が上がるような音を発して俺の前に立つ。

金属でできたような見た目だが凄いことにもう一つの気弾を霧のようにしやがった。

腕を上げるという事は味方か。

どうやらガタバルの知り合いみてぇだが……

 

「心強いぜ…」

 

これなら俺達も十分に戦える。

形勢逆転だな。

そう思っていると凄まじい戦闘力を計測した。

 

「戦闘力22000……ベジータと同じ数値だと!?」

 

俺は振り向く。

すると岩陰でベジータの上から見下ろす紅色の肌で銀髪の女がいた。

 

「退屈そうなあなたの相手は私がするわ、戦いましょう」

 

さらにラブカたちが向かってきた方向からはさらなる気が感じ取れた。

戦闘力22000を同じく計測していやがる。

ガタバルが何かしらの方法で復活しやがったか。

 

「くくく……お前らのめでたい頭には笑いがこみ上げるぜ」

 

そう言ってカエンサとラブカがごそごそと奇妙な木の実を取り出した。

ターレスの奴はサイヤ人にはベジータにしか渡していないって言ってた……

あいつがわざわざ嘘をつくとは思えない。

つまりあいつらくすねやがったな!!

 

「助っ人が来ようが裏切ろうがお前らは勝てないんだよ!!」

 

かぶりつくと徐々に戦闘力が上がっていく。

さっきまで12000と11600だったのにあの木の実を食べただけで16000と15700に上がっていた。

 

「さて……お前らの助っ人を超えたぞ」

 

そう言ってカカロットのガキと女をカエンサは吹き飛ばす。

ダメージ自体は女が受けたからガキの方はそれほどだが……

 

「シュシュポ……」

 

こっちの助っ人も力で負けてしまい片膝をついている。

スパーニと俺が引き剥がすが俺はスパーニにカカロットのガキを助けに行くように伝える。

大の男が女に庇われてても足も出ませんとは言えない。

ここは踏ん張るぜ!!

 

.

.

 

「ぐぅ!!」

 

女の人、ニアさんが殴り飛ばされる。

あの木の実を食べてからさらに強くなったみたいで、こっちの攻撃は避けられている。

僕にはあまり無茶をしないように言うけど、ピッコロさんに教えてもらった事の中に逃げ出すことはない。

最期の言葉には逃げろとはあったけれど、敵は取りたい。

だから僕は戦うんだ!!

 

ナッパって人もラディッツおじさんの代わりに頑張ってくれている。

ベジータって人は別の女の人と戦っているみたいだ。

すごい気のぶつかり合いをしている。

 

「きゃあ!!」

 

ニアさんが頭から叩き落されてけがをする。

僕はその後ろから攻撃を仕掛けるけど避けられる。

 

「邪魔なハエが!!」

 

頭を掴んで地面に叩きつけられる。

そう言って拳を突き出してくると僕は空に浮いていた。

 

「き、筋斗雲……」

 

父さんが下りてきた。

しかしスパーニさんがすぐに駆け寄って事情を話して、ベジータって人の場所に向かおうとする。

僕に父さんは仙豆をくれた。

どうにか粒が多かったみたいでニアさん、スパーニさんと三等分するように渡してくれる。

ヤムチャさんとクリリンさんとナッパさんにも三等分するように渡していた。

天津飯さんと餃子さんも渡していたけどガタバルさんや白白さんのことを聞いていた。

 

そして父さんが向かっていこうとすると男の人が後ろから父さんを狙い打つ。

しかしその気弾は片手で弾き飛ばされて空へ消えていった。

ガタバルさんもようやく着いたのだ。

 

「ニアにラコイタ……ピッコロにラディッツさんまで……」

 

まだ僕たちは仙豆を食べていないだけでけが自体は治るんだけども

こんなに怒っているガタバルさんを見たことがない。

 

「桃白白は……」

 

天津飯さんに聞いて自爆したことを聞く。

スパーニさんは申し訳ない顔をしていた。

 

「ピッコロさんは僕をあの人から庇って…」

 

そう言うと頭を撫でてくれていた。

よく頑張ったと言ってくれた。

 

「ラディッツおじさんはあの人を庇うためにあの人の攻撃を……」

 

ナッパさんと男の人を指さす。

徐々に顔が歪んで怒りの形相へと変わっていく。

雰囲気ががらりと変わっていくようだった。

 

「ちなみに俺の予想だとあと一人女の人がいたはずだが?」

 

そう言うから僕はベジータって人と戦いに行ってお父さんが助っ人として言った事を話す。

少しだけ気が気じゃないようだったけど、どういう関係なのかな?

 

そして僕が言っていた二人の男の方を向く……

 

「ふん、この死にぞこないが……」

「今度は腹を貫いてやる、あの女のように!!」

 

そう若い人の方が言った瞬間、ガタバルさんの堪忍袋の緒が切れたのか

ガタバルさんから最初に着いた時以上の気があふれ出す。

 

「あの女……母さんのことか、母さんの事かー!!」

 

僅かに逆立った毛と目つき。

僕がピッコロさんを殺された時を遥かに超えている。

僕はこの状態になんだかいつものガタバルさんじゃないような違和感を感じる。

でもこれだけは確信して言える。

 

「この勝負……ガタバルさんの勝ちだ」

 




今回の犠牲はラディッツとピッコロです。
重傷はヤムチャと天津飯。
無傷に近いのは餃子とクリリン。

ターレスさんからくすねたりしておかないと助っ人陣にフルボッコされてしまってました。
用心深いですね。
ベジータの奴はガタバルが食べたレベルと同じ質のものです。
今回最後のやつはカナッサ星人の時のように
超サイヤ人にはなれないけど怒りで引き出された状態です。
指摘有りましたらお願いします。

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