とある一族の落ちこぼれ   作:勿忘草

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今回でフリーザたちから奪還を考えます。
そしてアボとガドは悲惨な目に。



『迅速に摘むもの』

上陸して、すぐに私たちは別行動をとった。

大きな気の方にあの子が行って私たちは集落の方に行く。

どうやら因縁がある相手のようだし、そこは横槍を入れない。

 

「おい、ピオーネさんよ、どうやら集落に近づいてきたようだぜ」

 

ナッパという人が声をかけてくる。

この人と同時に動くのは万が一の場面でバラバラなのを避けるためのようだ。

あと4日ほどで援軍が到着するし、息をひそめながら機会をうかがう。

 

「でも向こうから邪悪な気が近づいているわ、二つが一つになった感じの気が……」

 

どうやら別に動いている相手がいるようね。

あの地球で戦った男ではないようだし……

 

「このままだと集落で鉢合わせになるわ、私がやってくる」

 

そう言って飛び立っていく。

ナッパさん一人でもどうとでもなるんじゃないかしら。

 

「フュージョンではないみたいだし……合体型の宇宙人かしら?」

 

そんな事を考えていると速い速度で向かっている。

こっちの接近に気が付いたようね。

 

「近づいていたのはお前か…女」

 

目の前に現れた相手が言ってくる。

そう言っている相手をよく見ると……

紫色の皮膚。

とげとげが生えた見た目。

なんだかアンバランスっていうか……

 

「ずんぐりむっくりって奴かしら、変な果実に顔をつけたらこんな感じになりそう」

 

はっきり言ってあまりかっこいいとは言えない。

まだ闘技場にいた亜人の方がいい顔をしていたわ。

 

「うるせぇ!!」

 

顔に赤みがさして声を荒げる

よく見ると腕は太いわね。

力で押すタイプと予測したわ。

 

「いいから始めましょう、こっちも強いわよ」

 

そう言って私は構える。

掌を上下に開いた形で片手を顔の前。

もう片方を腹部に。

準備は整った。

 

「言っていろぉ!!」

 

拳を振るってくるけれどカウンターで顔面に一撃。

力押しの予測通り大振りだから平然と後手でも叩き込める。

ただし、手応えから見てあまり効いていないようだわ。

にやりと笑っている。

 

「今の俺の戦闘力は……400万だ、ギニューも勝てない、機甲戦隊の奴らもな!!」

 

そう言うと蹴りを放ってくる。

残念だけどでかい力なだけで百戦錬磨ではないわ。

あの子の方が私にどう攻撃を当てられるか、計算する。

服に着られているのと一緒。

戦闘力に振り回されているだけ。

 

「ふんっ!!」

 

蹴りを掴んで投げる。

そのまま後ろに回り込んでいく。

こういう地道な技を駆使してこそ戦闘は組み立てられるものよ。

 

「『エレクトリック・パレード』!!」

 

大技が直撃する。

そのまま地面に落下していくがそれを追いかけて体を拘束する。

徒手空拳の大技で一気に骨をへし折らせてもらうわ。

 

「『リインカーネーション・ブレイク』!!」

 

地面に叩きつけてボキリと嫌な音を立てていた。

死んでいるんじゃないかしら?

そう思っていると起き上がってきた。

 

「くそぉ!!」

 

どうやら片腕が折れたのね。

じゃあ戦う事は可能だわ。

 

「勝てはしないんでしょうけど」

「喰らえ、『ワハハノ……』ぐえぇ!?」

 

顎を蹴りあげる。

隙を作らないで大技なんてむだむだ。

 

「あなたの強さの水準まで上がっているけれども、同じ強さのはずがこれだけの差を生んでいる理由は分かる?」

 

自分の体から妙に力がみなぎるのがわかる。

そして今、顎を蹴りあげたらダメージがあった。

つまりこの紫のと同じくらいの強さってわけね。

 

「知らねぇよ!!」

 

そう言って頭突きをしようとするけれど頭を掴んで締め上げる。

万力のような力で相手の頭蓋をすりつぶすように。

 

「戦闘経験量と切磋琢磨できる相手がいないことよ」

 

そう言ってさらに強くぎりぎりと締め付ける。

体勢を崩した瞬間、上空へ放り投げる。

これで終わりね。

 

「悪の芽は摘むわ、冥界に行っておいで、アホウドリに啄まれてね」

 

照準を合わせて気を高める。

フィニッシュの技があの子の技なんてね。

さて、この距離なら外さないわよ。

 

「くそっ…俺がこんな女なんぞにぃ!!」

 

悪態をついているけれど、もはや逃れるすべはない。

最期に無念さをかみしめて終わりよ。

 

「女って失礼ね、私の名前はピオーネ、冥土の土産に覚えていきなさい、『アルバトロス・ブラスター』!!」

 

体に直撃して大きく煙を上げる。

塵にはなっていないようだけど……

ンっ、気が一つじゃなくなっているわね。

どういう事かしら?

 

「ぐぅう……逃げるぞアボ!!」

 

煙が晴れたら二人になっていた。

どうやら二人に分かれる事でダメージを折半したようね。

死なないにしてもよく保てたわね。

息も絶え絶えに逃げていく相手を見ているとナッパさんがこっちに来る。

どうやら平穏に手に入れる事が出来たようだ。

話を聞くとあの子の名前を出したらすぐにくれたとのこと。

いやぁ、見知っているってのは大きいわね。

 

「さぁ、合流しましょうか」

 

そう言って私がボールを受け取って運んでいく。

あの子の気だけじゃなくてもうあと2つ接近しているけれど……

一体何があったのかしら?

 

.

.

 

「ピオーネの奴、誰か倒したな……」

 

大きかった気が二つに別れて逃げていった。

この場合は合体型かフュージョンかの二択だ。

 

「この気はアボとカドですね……あいつら合体できたとは」

 

ターブルが言ってくる。

そう言えばそいつらを倒すためにここに来たんだったな。

 

「時間的には10分足らずだったな……」

 

ターレスが驚いている。

気の大きさだけでいえばさっきのカエンサとラブカを凌駕していた。

そのレベルを瞬く間に倒している。

 

「また強くなってしまったな……」

 

段々置いてきぼりにされているような気がする。

まぁ、気にしないのがいい事だが。

 

「もし、同じ強さなら戦闘経験の差がものを言いますからね」

 

ターブルが言う事に俺は頷く。

あいつの戦闘経験を覆すサイヤ人の特性で張り合えるが、それがなければもっと大きな差になっているところだ。

そして今回の相手もあのピオーネの戦闘経験の差にやられた。

あいつに勝てるのは正直なところフリーザぐらいだろう。

それも全力ですぐに畳まないといけない限定条件でだ。

 

「あいつを死なせはしない、この命に代えてもな……」

 

何故だろう。

あの襲来の時から今まで以上に気をかけている。

失いたくない。

あいつのことを守りたい。

あいつの笑顔が見たい。

おかしいな。

前はあいつに勝ちたい事で寝ても覚めてもイメトレをしていたのに。

今は寝ても覚めてもあいつが心配な気持ちでいっぱいだ。

 

「恋ですか?」

 

そう言われたらとたんに顔が熱くなる。

こいつは何を言っているんだ?

胸が苦しくなるといった症状はあるが……。

 

「分からないな、それがどういう事を意味するのか」

 

恋だとすればなんだというのか。

一体どうすればいいのか。

それすらわかってない。

 

「どうやらこの坊や、恋を知らないみてぇだな、初心な野郎だ」

 

ターレスがにやにやとしている。

だって、そんな経験はないからな。

任務で女性から感謝されるが、それ目当てじゃないし。

命を救う、守ることが最重要なのだ。

 

「二人ともそんなこと言ってたら合流だ」

 

手を振ってこっちに合図を送る。

あっちはドラゴンボールの取得に成功。

こっちもリベンジで奪い返さないとな。

 

「そっちは横槍が入ったみたいだね」

 

ピオーネがターレス達を見て言ってくる。

俺がこいつらを仲間にしたのと引き換えにドラゴンボールを手放したのを察した。

 

「代わりに二人強力な仲間を引き入れた、奪還するよ」

 

こうなれば単純明快な方法で手に入れるしかない。

あいつらを殴り飛ばす。

もしくは入隊をして寝首を掻く形で奪い取る。

 

「これからは村に居候か?」

 

ナッパの話に頷く。

一つ持っておけばそれだけで問題はない。

そして拠点防衛。

この二つをしておけばいい。

わざわざ頭領が出張ってきた場合は素直に渡させる。

 

「ナメック星人の犠牲は極力なしで行く」

 

虐殺されない方法はへりくだって渡すこと。

相手をむやみに刺激しないで済むからだ。

 

「相手陣営はフリーザを除けばカエンサとラブカが要注意人物に繰り上がった」

「私が戦ったやつも強さとしては要注意よ」

 

相手の戦力について分析を行う。

それ以外は気にせずに行ける。

あいつら相手はターレスと俺で何とかする。

ピオーネが戦っていた奴はピオーネとターブル。

ナッパさんは俺たちについてくる。

 

「あいつらに特殊な技能があると思うか?」

 

ターレスが聞いてくる。

フュージョンは知らないし、ヤードラットも行っていないだろう。

ただ、ひたすらな戦闘力での蹂躙が奴らの方法だ。

 

「多分、そんなものはない」

 

だが、奴らは情に訴える事はする。

人質なり虐殺なりなんでもござれな奴らだ。

 

「だったらサイヤ人の特性以外は特に気をつけなくていいわけだ」

 

そう言う事になる。

今回、あいつを追い詰める方法は致命傷を与えるだけではない。

ここから逃げられる可能性は少ない。

フリーザの宇宙船が壊れれば奴らはどうしようもないのだから。

 

「袋小路に追い詰めてやるさ」

 

手を動かしてあいつらへの憎しみを募らせる。

ターレスも気を噴き出させる。

 

「もう行く気ですか?」

 

ターブルが聞く。

いや、あいつらが動き始めているからな。

 

「あの方向に向かって動き始めた……行くぜ!!」

 

そう言って飛んでいく。

あいつらのフットワークが軽すぎる。

どこかで中継したな。

 

「あいつらはお前らの獲物でいいのか?」

 

ナッパさんが聞いてくる。

当然だ。

あいつらには俺がけじめをつけさせる。

 

「ナメック星人が渡さなかったらあいつらためらいなくやるだろうからな」

 

そう、ターレスが言うとターブルも頷く。

厄介なことにフリーザたちは渡せば次の場所を教えろというだけで済む。

そしてそこで教えれば利用価値次第で生き残らせるだろう。

そうではなく聞いた後でも殲滅するような輩だ。

 

「今回、重要になるのはナメック星人たちの信頼ですね」

 

ターブルの言葉に俺は頷く。

彼らの協力なくしてナメック星のドラゴンボールは使えない。

それに奴らが躍起になって最長老様に手を出せばその時点でおしまいだ。

 

「やつらはそれを知らない」

 

そこを利用する。

ナメック星人に演技で悪者になってドラゴンボールを奪い取る。

その後にターレスとナッパさんと一緒に手土産として宇宙船に忍び込む。

 

「私たちが遊撃としてドラゴンボールから守っている形にすればいい」

 

瞬間移動で行き来してしまえばその間はドラゴンボールの行き来はなくなる。

フリーザたちの軍でも無理な戦闘力となれば俺たちが用意できる。

使い捨てとして裏切り者の汚名をかぶされたターレスとナッパを使い続けるだろう。

そこで重傷を負ってさらに回復で戦闘力を上げる。

抗戦の時にあの状態の俺とピオーネが戦うのが仕上げ。

その過程ではきっと今頃向かってきているベジータ王子との戦闘なども含まれる。

 

「居候をしてその人たちに演技を頼む、ナメック星人たちと俺達の壮大な嘘の始まりだ」

 

飛びながらの作戦会議は順調なものとなる。

拠点はムーリ長老の場所。

それを目標に飛ぶこと、数時間。

気の消失を感じる事もなく集落へとたどり着いた。

 

「おぉ……こんな時に限って来てしまったか」

 

俺の顔を見るや否や、申し訳の無い顔をする。

やはり今起こっているこの状況を全員が認知していたか。

 

「お前が持っているのはツーノの所の奴か、奴は死んでいないから譲り受けたのだな」

 

気の感知能力を持っているからな。

殺していたら筒抜けだ。

 

「ピオーネ、後の話し合いは頼んだぜ」

 

そう言って額に指をあてる。

肩にターレスが手を置く。

任せろという様に親指を立てる。

さぁ、ナメック星での第2ラウンドだ。

 

「どこに行く気だ?」

 

目の前に現れてやる。

驚いた顔をしているな。

 

「スカウターの距離からは考えられない、故障か?」

 

スカウター頼りか。

いつまでもそんなだったら強くなれないぜ。

目に見える数値を頼るからな。

 

「お前らを倒すために俺はいるんでな」

 

ターレスは構える。

さて、こっちも気を高めて同じほどにするか。

怒りの状態を制御した俺の本当の力。

2倍ではなく1.5倍ほどまでに制御。

フルパワーでやってしまうと目をつけられるからな。

 

「さて、同じようにはいかないぜ」

 

そう言ってすぐに肘打ちを当てる。

戦闘力の差があってもやりようで相手の土俵に入り込まない方法はある。

吹っ飛ぶ瞬間に足を掴んでジャイアントスイングをしてラブカに投げつける。

 

「ぬっ!?」

 

ラブカが上空に飛んだ瞬間、そのうえで待ち構えていたターレスがにやりと笑う。

お前らは甘く見すぎだ。

俺たちのコンビネーションを。

即席でも同じ目的で動く者同士。

どうしてほしいかなんて汲みとれる。

 

「『キルドライバー』!!」

 

直撃して地面に落ちていく。

これでラブカへのダメージは大きくなった。

 

「まず一人!!」

 

ターレスが向かっていく。

あいつ、危機感なさすぎるな。

こいつらの場合はラブカならずっとラブカに注意しておかないといけない。

気を逸らしたら後ろからやられるぞ。

 

「『クラウン・デュエット』!!」

 

2つの大きな王冠型の気弾を出す。

俺はさらに気を高めてその気弾を二つとも素早く叩き返す。

 

「なっ!?」

 

完全に決まったはずの不意打ちが見事にはじき返されたことに驚いていた。

すぐさまこっちの攻撃に対して防御の構えを取って難を逃れようとするが、もう無駄だ。

 

「『アルバトロス・ブラスター』!!」

 

技の後の硬直により無防備な状態で、俺の大技がほとんどゼロ距離で直撃。

この一撃で流石に強靭なこいつも白目をむいて気絶をしている。

 

カエンサはどうやらターレス相手に優勢に進めている。

盗人して強くなった力はすさまじいもののようだな。

だが、それもここまでだ。

俺とターレスが交代をしてカエンサと向き合う。

優勢とは言えどお互いに無傷ではない。

 

「あんたの勝ちはもうないぞ」

 

今の俺は戦闘力を高めている。

これは全力ではない。

どうなってしまうか。

 

「観念するんだな!!」

 

そう言って前蹴りを叩き込む。

防御をするが、これの目的は距離感を測るもの。

その防いだ足を踏み台にして、ムーンサルトキックを当てる。

 

「ぬぐっ!?」

 

強烈な一撃を頭に喰らってしまい、頭を抱えながら痛みに悶える。

正面に居たら顔面に蹴りを叩き込んでいたんだけどな。

背中に着地した俺の位置を把握もしないのか?

 

「だりゃあ!!」

 

背中のプロテクターごと打ち砕く。

血を吐き出している。

あっけなく勝負はついた。

強さにおぼれすぎで隙だらけだ。

やはり地球の時よりも精神面は余計に弱体化しているな。

 

「終わりだ……と言いたいが」

 

とどめを刺さずに首を締めて意識を落とす。

そして抵抗できないようにこいつらの腕と足をへし折っておく。

これでこいつらを手土産にフリーザと面会ができる。

ドラゴンボールの場所は誤報なり、ピオーネたちの場所に誘導させて

一週間で一つ回収のスケジュールを二週間ぐらいにしてやる。

 

へし折っておきながら猿轡をかませて。縄で縛り厳重にした状態でこいつらを運ぶ。

ナッパさんを迎えに行って、事情を説明して行動に移しに行く。

壮大な嘘による宇宙の帝王をたばかる計画を始める。

コケにしてやるよ、これほどない屈辱を与えたうえでな、フリーザ。

俺はカエンサを抱えながらフリーザの宇宙船へ向かっていくのだった。




速い話、村長連中とグルになって
ドラゴンボールをたらいまわしにして時間稼ぎを行うというわけです。
指摘がありましたらお願いします。

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