とある一族の落ちこぼれ   作:勿忘草

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今回でナメック星編のクライマックスが近づきます。
最後はどう着地点を作るかも考えています。


『深い哀しみとともに』

「はあああっ!!」

 

ピオーネとのフュージョンから分離はしたが力は上がっている。

これと超サイヤ人で何とか肉薄はできる。

 

「はあっ!!」

 

ピオーネも同様に突っ込んでいく。

左右からの攻めに腕を交差して待つラエンカ。

だがそれで対応はできない。

 

「甘い!!」

 

足元からフリーザの尻尾が絡めとる。

そして体勢が崩れたところに……

 

「『ギガンティック・ミーティア』!!」

 

ブロリーの大技が入る。

だが戦闘力の差が開いていたことが災いしたか。

煙が晴れた時に首根っこを掴まれる。

 

「ハッ!!」

 

俺がその隙に蹴りを叩き込もうとするが、ブロリーを放り投げてくる。

受け止めていく間に飛び上がって相手に大技を放たれる。

 

「『ナイトメア・オーケストラ』!!」

 

ありとあらゆる形状の気弾が乱れ撃たれる。

俺はブロリーを庇う形で受け止める。

一撃は軽いがこれらをやり過ごせばそのままこっちの攻勢に転じられる。

 

「ぬぉおおおお!!」

 

隙の無い状態ではあるが延々と受け続ける。

腕を交差して気を集中させる。

集中が途切れればそのまま雨霰のようなこの攻撃にさらされる。

 

「追撃だ、『エストロ・ビッグバン』!!」

 

攻撃を受け続ける最中、さらなる一撃が放たれる。

深紅色の巨大な気弾が迫ってくる。

構えて受け止めようとするが……。

 

「『デス・イクスパンション』!!」

 

それよりも速くフリーザが相殺の一撃を放つ。

気弾を包み込んで大爆発を起こす。

その隙にピオーネが羽交い絞めにして肉弾戦の大技を繰り出す。

 

「『リインカーネーション・ブレイク』!!」

 

地面に叩きつける瞬間に関節を外して逃れる。

いかなる手でも脱出能力が存在するとは。

 

「次はこっちの番!!」

 

そう言うとピオーネの両足を持ち上げて地面に向かって叩きつける。

その瞬間、俺が割って入りこめかみに蹴りを入れる。

 

「ぬっ!!」

 

その拍子に離すが次は俺の足を持ちそのままぐるぐるとぶん回す。

そしてそのままフリーザの方へ。

 

「受け止めるわけがないでしょう?」

 

そう言って避ける。

だがそれこそが罠だった。

 

「『ディスティント・ブレード』!!」

 

フリーザの尻尾を切り裂く。

ラディッツさんの技によく似ている。

 

「ぬあっ!!」

 

フリーザが痛みに呻いた隙に腹に一撃。

膝を顎に叩き込んでさらに追撃。

蹴りあげて空中に同時に飛び上がる。

 

「仕上げだ!!」

 

そして腕を肘打ちでへし折り、そのまま腹に手を当てて気を高める。

フリーザに身動きを取らせないように脇に折れた腕を挟む。

 

「『フィニート・デスティニー』!!」

 

両腕と両足。

腹部へと突き刺さり爆散する。

煙を上げて白目をむいてフリーザは墜落していった。

 

「まずは一人……次は」

 

ラエンカの視線がこっちには向かない。

次はブロリーか!?

 

「お前だ!!」

 

予想通りブロリーへ向かっていく。

俺も加勢へ向かう

 

「ぐぐぐっ……」

 

力比べでも戦闘力の差が出ているのか。

片膝をつきそうになる。

しかし戦闘センスの高さは折り紙付きだ。

力を抜いてそのまま相手が覆いかぶさるようになり体勢を崩したところで……

 

「ハア!!」

 

蹴りあげて、それと同時に上昇。

あっという間に追い越してそのまま再び地面へ叩きつける。

 

「『ブラスターメテオ』!!」

 

四方八方に気弾が放たれる。

転がって避ける相手に容赦なく第二波を放つ。

 

「『ギガンティックバスター』!!」

 

掘り起こすようにアッパーを浴びせる。

その後に回し蹴り。

そして吹っ飛んだところに走って蹴り上げようとした瞬間。

 

「『アンダンテ・フラッシュ』!!」

 

目晦ましでブロリーの攻撃態勢が一時的に解かれる。

視覚にどうしても意識が集中するからな。

これは嫌な感じがする。

そう思うが俺もまた、光を浴びてしまい助けに行けない。

 

「『インフェルボラート・ニードル』!!」

 

 

輪郭を取り戻した時。

俺の目が捉えていたのは、無防備に技を食らい腹部を貫かれたブロリーの姿だった。

 

「がはっ……」

 

俺は捉えた姿に驚愕を覚える。

まさか貫通する技とはいえブロリーの腹部が……

腹部を貫かれた状態で蹴り飛ばされる。

ブロリーはピクリとも動かなかった。

 

「二人目!!」

 

そう言ってさらに気炎を吐いてこっちを睨んでくる。

俺の方に視線を向けている。

 

「さ……次は」

 

構えて、獣のように舌なめずりをする。

次の瞬間目の前から消える。

こいつの考えそうなことは……

 

「そこだ!」

 

後ろからの攻撃を防ぐ。

その攻撃を取って放り投げる。

その放り投げた方向へ疾走していく。

そしてスライディングで体と地面の間に足を潜り込ませて……

 

「『クライベイビー・フラミンゴ』!!」

 

突き上げるように爪先を捻じ込んで蹴る。

叩きつけるのと対をなす系統の蹴り技。

 

「ぐあっ!!」

 

相手の背中をとらえた状態で放つ技。

受け身や対応を遅らせるために速度に重きを置いた技を放つ。

 

「『ファルコン・ツイン・クラッシュ』!!」

 

背中に隼の嘴が刺さる。

ラエンカは受け身を取れずに地面へ落ちていく。

 

「今度はこいつだ、『レイブンリヴェンジャー』!!」

 

地面に落ちた相手には容赦しない。

そのまま一気呵成に畳みかける。

 

「くっ」

 

転がって避けるが無駄だ。

広範囲の攻撃であればいい。

 

「『コンドル・レイン』!!」

 

広範囲に相手に降り注ぐ。

この状態から追撃の用意をする。

 

「上ならば……」

 

そう言って飛び上がる。

だがそれは的にしかならない。

気を高めて照準を合わせる。

相手も上空で体勢を整えて、両手を掲げる。

 

「『レドゥマンアンサンブル・メテオ』!!」

 

滅茶苦茶に大きな隕石を思わせるような気弾を二つ。

俺に向かって放つ。

いくらなんでも大味すぎやしないか?

 

「『アルバトロス・ブラスター』!!」

 

こちらも大技で対抗する。

直撃した時さりげない違和感を感じる。

これだけの大質量なのに、一つ一つの威力が若干弱いのだ。

一つを打ち消してもう一つの隕石へ向かっていく。

 

「もう一度……『レドゥマンアンサンブル・メテオ』!!」

 

連続の大技で俺は何が起こったのか悟る。

なるほど、そう言う事か。

最初の方は威力を抑えておく。

こちらの大技を誘発してその後に本来の威力を放つ。

相手にしてやられた。

 

「あっけなかったな、三人目!!」

 

作戦にはまってしまい、技で押し負けてしまったのだ。

実力の差を埋めきれずにこうなってしまうとはな。

隕石に飲まれていく。

そう思った最中、俺の前に影が割り込んでいた。

 

「大丈夫……?」

 

ピオーネが俺の目の前に立ちはだかり俺を庇っていた。

俺は目の前の光景が信じられなかった。

俺を庇わなければ、お前なら勝てたのに……

 

「体が勝手に動いたわ……泣いているの?」

 

頬に伝うのはなぜだろう。

俺は今の状況に茫然自失している。

 

「一番厄介な奴がバカな真似をして勝手に倒れてくれたか、これで残り一人!!」

 

ピオーネはそのまま膝をついて緩やかに倒れ込んだ。

ブロリーも腹を貫かれてしまった。

フリーザでさえ尻尾を斬られてしまい腕が折られている。

残ったのは俺一人。

誰もが気の反応がなくなっている。

 

「おそらく死んだな、やはりこうなったか」

 

死んでしまったのか?

集中して探ろうにも頭の中がぐしゃぐしゃでろくにまとまらない。

 

「貴様はしょせんだれ一人守れないのだ!!」

 

その言葉が胸に突き刺さる。

そうだ、俺は……

 

「情けねぇ……誰一人として守ることができねぇ……」

 

歯を食いしばり、今までの多胎を反芻する、

自分ができたことなど何があったのか。

 

「あの時も…」

 

1年前。

カカロットがやられた時も何もしてやれなかった。

 

「あの時も……」

 

地球では母さん、慕っていた兄貴分、よき理解者だった二人の友。

そいつらの窮地にも何もできず、目の前で失うだけだった。

 

「そして今この時も!!」

 

悲しみが胸を打つ。

こんなことにならずに済んでいたはずなのだ、そう……

 

「俺にもっと力があれば!!」

 

拳を地面に打ちつける。

握り拳から血が滴る。

雷が落ちていく。

 

「いきなり天変地異か?」

 

そのような事をラエンカがつぶやくが耳には入っていない。

そうしている間にも雷は落ち続ける。

そして……

 

「うぉおおおおおー!!」

 

雷が俺に落ちる。

しかしそれは天罰ではなく恵みともいうべきもの。

感情の爆発、そしてこの雷撃が引き金となり、俺の壁が取り払われたような感覚。

まさかこうも早くに……

 

「いったいなんなんだ、何が起こったー!!」

 

そう言ってラエンカが俺に一撃を加える。

その一撃の感触を確かめながらお返しに一撃を放つ。

 

「お前……本気で打ったのか?」

 

驚きの顔を浮かべるラエンカに言い放つ。

俺自身、ここまで差が開いて逆転をするなんて想像していなかった。

 

「お前の攻撃がくすぐったいぜ」

 

俺はこいつに勝てるという確信を抱き、敵を討つと心に決め構える。

待っていてくれ。

必ずお前らを蘇らせてみせる。

 

「これは宿敵の分!!」

 

腹に一撃を食らわせる。

相手がくの字に曲がるがまだ手を緩めない。

 

「これは弟分の恨み!!」

 

踵落としで地面へ叩きつける。

バウンドしたが照準は完璧だ。

 

「そしてこれが……」

 

気を高めて雷を纏わせる。

全てを込めた俺の一撃。

 

「愛した女の分だ!!」

 

新技を放つ。

雷を纏った『エミュー』が疾走する。

その一撃はまさに弾丸。

飲み込むことなくその勢いのまま相手を吹き飛ばす。

 

「がはっ……」

 

地面を何度も跳ね回っていく。

その起き上がろうとする頭を踏みつける。

 

「あの日も言ったがもう謝っても許さない……いや、命乞いをしても殺す」

 

足をどけて起き上がった瞬間に『アルバトロス・ブラスター』を叩き込む。

相手が再度吹き飛ばされるがその後ろに瞬間移動で回り込む。

 

「『ソウル・オブ・サイヤン』!!」

 

金色に変わった気弾を放つ。

その一撃は強く相手を戒めるように飲み込んでいく。

そのまま成層圏とまではいかない。

斜め上空へ飛んでいく。

その方向へ追尾して俺も向かう。

 

「うぉお!!」

 

吹っ飛んでいく相手を追いかけて地面に叩きつける。

弔いの連撃はまだ終わらない。

 

「『デスボール』!!」

 

まずはフリーザの一撃。

受け止めてはいるが出力が段違いだ。

 

「その程度で何とかなるものかぁ!!」

 

一気に力を振り絞り地面に着弾させる。

相手を飲み込んでいく。

 

「綺麗な花火とはいかなかったが……」

 

まだとどめを刺してはいない。

相手の首根っこを掴んで地面へ叩きつける。

逆の手で気弾を凝縮する。

 

「お前は間違いなく屑だった、合体をしようとも変わらなかった……しょせん、屑は屑なのだ!!」

 

徐々に気弾が膨張していく。

そしてそのまま地面を抉り取り……

 

「『ギガンティックミーティア』!!」

 

大爆発を引き起こす。

相手は煙を上げて何とか立ち上がろうとするがまだあと一撃残っている。

髪の毛を掴んで上空へ放り投げた。

 

「冥土の土産へ網膜に焼き付けろ、『エレクトリック・パレード』!!」

 

雷撃の光線が皮膚を焼き尽くすように、ラエンカを飲み込む。

確かな手ごたえがあった。

 

「ちっ、肉体強度は高いみたいだな」

 

手応えはあったがまだ眼光は爛々と輝いている。

ボロボロでも勝算があるのか?

 

「こうなれば相打ちしかない……」

 

そう言うと両手を重ね合わせてさっきの『レドゥマンアンサンブル・メテオ』を合わせてとてつもなく大きな気弾にする。

まさかこいつの狙いは……

 

「私もお前もこの星ごと終わればいい、『エグアーノ・シュルス』!!」

 

やっぱりそうだったか。

ナメック星を爆破させて道連れにする。

俺は構えて押し返す。

 

「でりゃあああああ!!」

 

それを避けるラエンカ。

その隙に後ろに回る。

零距離で俺の最大の技をくらわせる。

 

「貴様の失ったものを垣間見ろ、『ソウル・オブ・サイヤン』!!」

 

地面へ陥没していく。

死んでしまったか?

そう思うが笑い声が聞こえる。

どうやら生きてはいるみたいだ。

 

「くくくっ……」

 

やられすぎておかしくなったか?

状況判断もろくにできていないのだろう。

今からとどめを刺そうと構える。

 

「何がおかしい?」

 

だが聞かずにはいられない。

何か企みがあるのだろう。

それが末期の言葉になるのだから。

 

「地面に陥没している以上楽なものだなぁ、と思ったのよ」

 

そう言った瞬間、冷や汗が滴る。

まさか、わざと今の技を食らったのか!?

俺は髪の毛を掴んで引き上げようとする。

 

「『エグアーノ・シュルス』!!」

 

ナメック星の地面、地中奥深くにまで衝撃が走る。

ダメージの重さから、即座に爆破はしない。

しかし、時間の問題だ。

 

「これで引き分けだ、貴様の性格上、どうあがいてもな!!」

 

そう言われて苦笑いを返す。

ナメック星人やカカロット達を見捨てられない。

俺一人だけが瞬間移動をしても意味はないだろう。

 

「お前の死も決定的なことだがな」

 

構えて睨み付ける。

逃げる事の出来ない死を、そのまま星の塵になる運命。

しかし、それよりもいち早く土塊に返してやる。

 

.

.

.

 

「まだか、神よ!!」

 

俺はいきなり跳ね上がったガタバルの気を感じた瞬間、すぐにテレパシーを送った。

奴が激怒しているだろうとすぐに感じ取れたのだ。

おそらくピオーネとあのサイヤ人、そしてフリーザが『致命傷』を負ったのが原因だろう。

あいつの事だから、ショックや頭に血が上って死んだと錯覚しているかもしれない。

 

「ピッコロよ、今ポポが集まったとの連絡がきた!!」

 

よしっ、これで準備は整った。

地球のドラゴンボールで願う事は1つ。

このナメック星で失った命の復活。

それで最長老様も蘇る。

そしてナメック星のドラゴンボールでの願いは……

そんな事を考えていると地響きが起こり、いやな汗が噴き出る。

 

「この星からラエンカを除くすべての存在を地球に送る」

 

それがこのナメック星のドラゴンボールで行う最後の願いだ。

星が終わる。

そのイメージが鮮明に浮かび上がってしまったのだ。

 

「ピッコロよ、願いを言ってくれんか?」

 

神の奴が言ってくる。

うっかりしていたぜ。

 

「このナメック星で失われた命の蘇生だ」

 

異星間での蘇生は初めての試みだ。

上手くいけばいいのだが……

 

「分かった、待っておれ」

 

どうやらミスターポポに伝えたのだろう。

あとはこの空が暗くなるのを待つのみだ。

しばらくすると空が暗くなる。

異星間での生命の蘇生ができたようだな。

速かったのはどうやら失われた命そのものが少なかったからか。

 

「よしっ、次の願いだ」

 

俺は界王に飛ばして今の状況を説明する。

そして最長老に伝えてもらえるようにする。

これで準備は整った。

この星での戦いに終止符を打つ、最後の行動を始めるのだった。




切り札は安直ですが超サイヤ人2への覚醒です。
この変身で実力ナンバー1になりました。
怒りで1へ、哀しみで2へ。という形にしました。
人造人間編ではインフレを考えないとブロリー、ピオーネ、ガタバルの3名は強すぎて戦力外とかいうオチになるので気を付けます。
指摘などありましたらお願いします。

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