とある一族の落ちこぼれ   作:勿忘草

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今回は日常回です。
最後に少し未来編があります。


『この世で最も強い花嫁』

あの未来から来た青年が話していた内容をピオーネから聞いた。

どうやら3年後、人造人間といった存在がこの地球で大暴れをするらしい。

その時に死んでしまった面子を聞いたが……

 

「そいつらに護衛でターレス達が着けばよくない?」

 

まだ超サイヤ人になれない分、基礎戦闘力を高めて一時的に界王拳で何とかするという方法になった。

ナッパさんもターブルもそれでいいらしい。

 

「あの3人も十分なれるだけの強さはあるのになぁ……」

 

あいつらが激怒するタイプではないからかな?

穏やかな生活に慣れつつあるが、時々は真剣に勝負がしたいとターレスとナッパはいっていた。

何か『王子』とか『さん』づけはやめろと言われたのでやめた。

 

「まあ、そんな事はこの事に比べればどうでもいいや」

 

俺はパンフレットを見ながら場所の検討をしていた。

お互いを思いあってもう1年。

いい加減、薬指につけるものが欲しいと言われた。

つまりは結婚である。

どこがいいかと聞くがそれほど場所は考慮していないらしい。

思い出に残るような形であれば問題ない。

 

「やはり大勢収容可能な施設か……」

 

まず最低条件はそれだ。

知っているだけでも関係者で100名近くはいる。

あっ……減らさないといけないじゃん。

ピッコロとかみんな来たくなくなるもんな。

施設は見直せるな、次の悩みは……

 

「スピーチできる奴皆無なんですけど……」

 

セッコ・オロの知り合いなんか10年以上あってないし、それ以外の奴ら最近だし。

ピッコロと桃白白当たりしかないわ。

最悪、悟飯に頼むかもしれん……

 

「もう、それなら誓いの言葉をしてそれが終わった後にどんちゃん騒ぎでもいいんじゃないかしら」

 

それもいいな。

むしろ人となりなんてみんな知っているのに今更スピーチとかで長所述べてお幸せにってのもおかしい。

これで悩みは解決した。

あとは日取りだな。

 

「厳しそうな面子は社会人組だな」

 

有給とれても仕事の量で左右されるブロリーとか除外したら、基本は山籠もりとか修行の放浪組ばっかり。

 

母さんは家に居るからこの場合の優先順位は誰だ?

 

「まずは妹さんでしょ」

 

そうだったな。

休みの都合はつけてもらわないと。

その基準でいけば……

 

「スパーニとブロリーはこっちでやるから悟飯やカカロットは任せていいか?」

 

一人で全員探すのは骨が折れる。

基本的に気を消したりしている奴らもいるしな。

集まっているナッパとベジータは楽だけどね。

 

「任せて」

 

そう言って二手に分かれる。

スパーニやブロリーのお昼休みを狙ってみる。

その後はナッパとベジータだな。

 

ウェイトレスでお昼休みになって裏口から出てきたスパーニを見つけたので声をかける。

舞空術を都市部で使えないから、足で辿り着くまで時間がかかる。

信号無視はしない、全速力で走らない。

この2つを守るだけで面倒だ。

 

「1か月後の日曜日に予定を開けておいてくれないか?」

 

用件を告げると首を傾げられる。

まあ、それは無理もない。

 

「分かったけど、どうしてなの?」

 

理解はしているがなぜなのか。

その説明はしていないからな。

 

「実はこの度、ピオーネとの結婚式でな、今こうやって招待状を送る前に告知というわけさ」

 

招待状を送れたらいいんだがよくよく考えると住所を知らない。

だから自らの足で知らせて招待状を手で渡す。

その際に返信先の記述があれば問題ないだろう。

 

「おめでとう、何が何でも行くね」

 

そういうと満面の笑みで祝福してくれた。

次はブロリーだな。

 

「おーい、ブロリー」

 

警備の休憩時間だったのか、水分補給をしているブロリーを見て降りる。

こっちの声に反応してこちらに声をかけてくる。

 

「珍しいですね、何かありましたか?」

 

確かに他人の仕事中にお邪魔することはめったに無い。

今回は急いで準備を早くできる状態にまで持っていきたいからな、申し訳ない。

 

「要件としてはこれだけなんだが、1か月後の日曜日に予定を開けておいてくれないか?」

 

用件を告げるときょとん顔になる。

まあ、それは無理もない。

いきなり言われてすべて理解したら大したもんだよ。

 

「どうしてですか?」

 

当然のように質問が飛んでくる。

俺は笑いながらブロリーに説明をする。

 

「実はピオーネとの結婚式をすることになったんだ、だから今こうやって招待状を送る前に告知するために廻っている」

 

「いい事ですね、絶対に開けておきます」

 

深々と礼をして言ってきた。

よしっ、これで二人。

とりあえずは全員に伝えて用意をしないとな。

 

ベジータとナッパはカプセルコーポレーション。

クリリンは武天老師様の家。

天津飯と餃子は旅に出ていたので瞬間移動。

桃白白はバーに居るので話を早くにつけて営業の邪魔をしないようにした。

 

「とにかくできる限りのメンツには声をかけた」

 

そう言うとピオーネもかぶらせずに声をかけることができたらしい。

そのお陰で思ったよりはいいペースではないかと思えた。

 

.

.

 

計画してから一ヶ月。

東奔西走しながら出席者を集めた。

四苦八苦して用意を整えた。

その甲斐もあって、知人も多いにぎやかな結婚式となった。

 

計画が始まってから危惧していたスピーチ。

しかしそこは年長者という事でラディッツさんが名乗り出てくれた。

小さい時から知っていたことなど長所を述べてくれた。

形は整い式は順調に進む。

お色直しが終わり、食事を行う。

そして最後の場面。

愛の誓いを立てる時。

お互いが中央に立って神父を見据える。

神父は書を開き、俺に視線を向け厳粛な態度、声で誓いの言葉を言い始める。

 

「病める時も、健やかなる時も

富める時も、貧しき時も

喜びの時も、悲しみの時も

汝はこの人を愛し、慈しみ、敬い、慰め、助け

その命が尽きはてて、死が二人を別つその時まで、真心を尽くすことを誓いますか?」

 

神父の言葉を一つ一つ噛みしめる。

そして俺は神父の言葉に頷き答える。

 

「誓います」

 

これで誓いの言葉は終えた。

次はピオーネだ。

 

「病める時も、健やかなる時も

富める時も、貧しき時も

喜びの時も、悲しみの時も

汝はこの人を愛し、慈しみ、敬い、慰め、助け

その命が尽きはてて、死が二人を別つその時まで、真心を尽くすことを誓いますか?」

 

ピオーネにも同じ内容の問いをする。

当然ピオーネの答えも……

 

「誓います」

 

満面の笑みで神父の問いに答える。

神父は両省の意味を込めて会釈で返す。

 

「よろしい、それでは指輪交換ののち、誓いの口づけを」

 

その言葉に従い、互いの薬指に指輪をはめる。

誓いの指輪は祝福するように輝いている。

ヴェールをとり、頬に手を当てる。

 

「動くなよ……」

 

頬に当てた手が震えるのを感じる。

歯が当たってしまいそうだ。

 

「ふふ……」

 

不敵な笑みを浮かべて逆の俺の頬にピオーネが手を添える。

そして次の瞬間グイッと引っ張られるような感覚があった。

 

「むぐっ!?」

 

唇が重なっていた。

こっちがするよりも速く口づけを交わす。

 

「……あの日の仕返しよ」

 

唇が離れた時、はにかんだような笑みで言われる。

祝福の声が聞こえてくる。

これで本当に夫婦になったんだな。

そう思うと胸が温かくなる。

……ただ、男性陣はじっとピオーネと俺を見ていた。

意味ありげな目線だがなんだ?

 

「子作りでも考えているんじゃないかしら」

 

小声でピオーネが言ってくる。

そう言えばそう言った慣例のようなものがあったな。

俺もピオーネとの子供は……

 

「何人欲しい?」

 

またもや小声で言ってくる。

まるでその目は豹や猛禽類のように鋭い。

こちらの欲望を受け止めてあげるから、正直に白状なさいという事なのだろう。

 

「天の授かりものだから、そこは……」

 

そう言ってはぐらかす。

性的な話も平然と言ってくる。

このままいくと常に主導権を握られてしまう。

危機感を覚えながら、自分が旦那として威厳のある振る舞いを心がけようと心に決めた。

 

.

.

 

未来のビッグゲテスターにて……

 

「これが『ミクロベルト』か?」

 

ビッグゲテスターの技術班に依頼していたものが届いた。

機能としては身体に装着してボタンを押したら小さくなる。

潜入にうってつけだ。

 

「はい」

 

こいつも渡すときに手が震えていて少し怯えている。

困ったな、あの人造人間たちに好き放題言われた日から部下の目を見てしまう。

気づいたことがあった、どうやら自分は下衆にはなれない性分だったらしい。

こういう目の奴らを処刑する気にもなれなかった。

自分に非があるのだと認めざるを得ない。

現代の自分はこれに輪をかけたお人よしなのだろうな。

自然とそう考えてしまう。

 

「ありがとう、休んでいてくれ」

 

労をねぎらう様にそう言うと、頷いて部屋から出ていく。

俺は出ていったのを確認すると早速使ってみる。

徐々に身体が縮んでいくのがわかる。

これは凄いもんだ。

 

「そしてこいつを押せば……」

 

一瞬で元のサイズに体が戻る。

急激なサイズの変わり方による不快感などもない。

これでトランクスたちのタイムマシンに乗れる。

とは言ってもビッグゲテスターの技術で作るのは不可能なのか?

 

「『非常に時間を要するでしょう、そういう意味では開発者は天才の域に達しております』」

 

そうなのか。

しかし、人類を守り続けていくしかないのももどかしい。

俺が壊すよりもあいつらの方が壊したいだろうし。

俺自身が、今の自分から変わるためのきっかけが見つからない。

何が足りないのかが全然見えてこない。

振る舞いを変えた程度ではみんなの視線が変わるわけではない。

 

「まあ、動物で言えばガゼルやシマウマにいきなりライオンが優しく近づいても不気味なだけだ」

 

しかも牙も爪もギラギラしてそうな状態のライオンだ。

そりゃどんなに怖いもの知らずな奴も怯える。

前に逃げられた時も、きっと一般人の奴らはあの人造人間があんなにやられていることから、今度は自分たちがやられるかもしれないと思った。

しかも明らかに自分たちを襲う化け物を遥かに凌駕した化け物に。

 

「……考えれば、本当にダメじゃないか?」

 

強いだけではだれもついてこない。

それはなぜなのか?

怖いのだろう。

いつ、自分たちにその強大な牙を向けないかというのを考えているのだ。

俺は別に暴君になるつもりはまるでないのだがな。

 

「少し街に出てみるか……」

 

皆に声をかけて出てみる。

街頭には娯楽のようなものがありきらびやかな装飾が施されている。

どうやら人造人間たちの襲撃はこっちではないようだ。

 

「しかし、これはなんだ?」

 

箱の中で人が動いている。

自分たちの宇宙船でもこういった通信はあるが……

誰かがカメラというものを持って撮っているのか?

 

「ふむふむ……」

 

どうやら動物を集めた映像のようだ。

ライオンを見ると、まるで今の自分だと思えた。

弱い動物では満足できなくなってしまった存在。

バッファローどころかおそらく象でも物足りないはずだ。

それこそ鯨という象よりも大きな海洋生物でもない限り。

そしてそのライオンにはどんな動物も寄り付かない。

本来強いオスに惹かれるはずのメスのライオンですらも……

 

「やはり、今の状態ってやばいんじゃ……」

 

まさか同族にも避けられているとか……

そんな事を考えると、母さんの目を思い出す。

そういう事か……

 

「どうしようかねぇ……」

 

気分転換のつもりが憂鬱な気持ちを抱えたまま、溜息をついてビッグゲテスターに戻る。

どうやら、俺が出掛けている間にトランクスと孫悟飯の会話を拾ったのか、現代に行く時間を知ったらしい。

3年後らしく、こちらの星の再建と償いが終わったころのようだ。

それまでは鍛錬をしておこう、今抱えているこのモヤモヤを吹き飛ばし、答えに近づくために。




ようやくガタバルの独身生活に終止符が打たれました。
恋愛ターンばかり続かせてすみません。
未来編、結局自分に下衆行為は無理と気づく。
そして徐々に自分のダメ人間具合に気づかされるという……

指摘有りましたらお願いします。

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