とある一族の落ちこぼれ   作:勿忘草

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段々強化されていってますがこれでも元が弱いし、修行不足なのであんまり伸びてません。


『惑星探訪:ナメック星 暖かい眼差しと潜在能力』

俺はラディッツさんが飛び立ってから数日後、ピタルから次の目的地に渡る事にした。

数日かかってメディカルポッドが搭載されたのだ。

これでケガについて悩む事は少ないだろう。

そしてこれでここにいる目的は達成された。

 

次は前から考えていた噂の絶えない惑星に向かう。

次の目的地はナメック星。

なんと集めれば願いの叶う不思議な球があるらしい。

そんなものは伝説でしかないだろう。

しかしあるのならば一度見てみたいという好奇心だ。

 

「さて…お世話になりました」

 

そう言って俺は宇宙船に乗り込んでいく。

話で聞いていたナメック星への座標を設定していく。

どうやらピタルからも近いようでここから2週間もしない間に到着するみたいだ。

 

「そっちも元気でな」

 

研究者にそう返されて俺はピタルを出発する。

さて……到着する前にこのメディカルポッドを活かして強くならないとな。

 

「まずはできる限り自分を痛めつけるところからだな」

 

ラディッツさんが言うには、サイヤ人は瀕死の状態から回復すると強くなっていくようだ。

しかし自分の体を使う場合は問題が生じる。

それは俺は力が弱いくせに体は頑丈だ。

そのせいでその基礎の段階に時間がかかってしまう。

前回の豹のように元が強い相手ならば容易にその条件も達成できるのだが……。

 

「まぁ、こればかりは悩んでも仕方ないし始めるか……」

 

といってもやり方は単純。

自分の腹に向かって力の強い気弾を撃ち込む。

気弾をコントロールできればこんな事にはならない。

しかし、今はそんな事ができないのだからこの方法がベストだろう。

 

「はあっ!!」

 

俺は勢いよく何度も何度も自分に向かって打ち込んでいく。

頑丈な体のせいかあまり思った以上にダメージが来ない。

結局意識がもうろうとするまでに到着3日前までかかってしまった。

 

「結局一回だけしか効果が期待できなかったな」

 

ピタル製メディカルポットの力で回復をしたのち、ゆっくりと休んでナメック星へと着陸する。

体を十分に休めておかないと、平穏を揺るがす者としての扱いで攻撃されたときに対処できない。

 

「おぉ……清々しい空気だ」

 

地上に降り立った瞬間、綺麗な空気が体中を満たしていくのが感じられる。

ピタルの雄大な自然から感じる空気とはまた別物だ。

しかし見れば見るほど珍しい環境で食物の実る木も畑もない。

狩りにしても獣もいそうにない穏やかな星だ。

 

「とりあえずはどんな場所か知るために探索してみるか」

 

歩けば歩くほど、牧歌的というかのどかな雰囲気が充満している。

気を探ってどの方向に人が居るのかを確認する。

そしたら南の方向へいくらかの気を感じるので向かって歩いていく。

飛んでいっても良いが、緑に染まった景色が美しいので見ておきたいと思った。

 

「ここは集落だったのか」

 

そう言いながらナメック星の人に向かって歩いていく。

流石に近づけば向こうも初めは分かっていなかったが、こちらに気づいて振り向いてきた。

すると異星人だからか警戒心をむき出しにした眼差しをする。

手を挙げて、何もしないという事を示しておく。

 

「一体、このナメックに何の用なのだ?」

 

この貫禄から察するにどうやらこの集落の一番偉い人のようだ。

とにかく用件だけでも伝えよう。

無理だった場合は何かしら手伝える事はないか聞くなり、友好的な態度で接しよう。

 

「この星に集めれば願いが叶う球があると噂で聞いたのですが、それは本当ですか?」

 

そう言うと相手は怪訝な顔をする。

しかしこの反応は相手に対して、大きな情報を与えているようなもの。

これが無いものであればそんな反応をする必要もない。

つまり、そこから考えると噂の存在は本当だという事だ。

 

「ドラゴンボールの事か、確かにこの星に存在するものだが……」

 

集落の偉い人は俺の質問に答えてくれた。

あるのならばどういった物か知りたいし、見てみたい。

俺はお願いをしてみる事にした。

 

「どういった物か見せていただきたい」

 

お願いをしたら、少しの間とはいえ俺の顔を見てくる。

中身を読み取られているような妙な感覚。

そして数瞬した後に相手は目を閉じた。

 

「うむ、邪悪な気をお前からは感じられない、いや限りなく邪悪な感じが薄いのかもしれん」

 

集落の偉い人は俺に対してそう言ってきた。

邪悪じゃないという評価はいいのだが、侵略したり戦闘する民族なのになぜそういった気がないのだろうか?

非常に不思議なものである。

しばらくすると集落の偉い人が目の前にドラゴンボールを持ってきてくれた。

 

「こんなに大きいのか!?」

 

その大きさは袋に収まるようなものではなかった。

鳥や獣も寄り付かないような肥大しすぎた果実を思わせる。

こちらが想像していた大きさをはるかに超えている。

抱え込んで持っていかないと到底運べはしないだろう。

 

「大きさに驚いているようだな、基本的に飾っていてとんでもない事態にもならん限り使わない代物だ」

 

そりゃあ、願い事を簡単に何度も叶えていてはな。

今頃ナメック星も栄華を極めていてもおかしくはない。

しかし、そういった事がないという事はこのありかたで満足をして、生活を営んでいるという事だ。

 

「集めるって言っても一体何個集めるんですか?」

 

見せてもらった中にあった模様が星1つだったのこれ以外にもまだあるだろう。

そしてそれを管理しているのが感じ取った多くの気があるほかの集落だ。

 

「7個ある、そして譲るとしても幾らかの条件が課せられており、それをクリアした勇者にのみ渡されるのだ」

 

奪う相手がいたら、これだけ大きいものは隠しようがない。

しかも実力行使をされたら、相手の強さ次第ではかなり厳しい気が……

 

「ここにいるものでは年老いた者もおるし、確かに戦闘タイプではない」

 

考えている事が顔に出ていたか。

しかし、ナメック星の人間たちには戦い向けとそうでない人がいるのか。

 

「だが異星人の並のものでは太刀打ちもできんよ、若ければさらに強いしの」

 

そう言って集落の偉い人が上に気弾を放つ。

するとそれがジグザグな軌道を描いていた。

どうやらある程度操作ができたりもするようだ。

 

「穏やかでも侵略するなら受けて立つという事ですね」

 

これならば侵略者がよっぽどの手練れの集団でもないと無理だろうな

そう思っているとにやりと笑っていた長老さんが顔を引き締めこう言い放つ。

 

「話をしていたが、最長老様に異星人の来訪として報告をしなくてはならない」

 

最長老様?

つまりはこの星で一番偉い人という事だろうか?

 

「最長老様は我らの親であり、長である、かつて自然災害で滅んだあと尽力なさって復興させたのだ」

 

なっ!?

つまり、ナメック星人は子孫を残す方法が全く異なるというわけか

しかし、そのような真似をして体の負担とかはどうなのだろう。

全てを生み出したのならば、並々ならぬ辛さがあったはずだ

 

「では行くぞ、ついてくるがいい」

 

空に浮いてそのまま集落の偉い人についていく。

思ったより速度が出るようで追い越したりはなかった。

こっちも見失わないように飛んでいたが、ピタルの時に比べて速くなっていて爽快だった。

 

「ここが最長老様の住居であられる」

 

飛行して数時間後、俺は高台にあった家に集落の偉い人とたどり着いていた。

長老さんがそう言ったら一人の若いナメック星人が家から出てきた。

長老さんと違って顔つきも体つきも違う、これが戦闘を得意とするナメック星人か。

 

「ネイルか、客人としてこの幼子を連れてきた」

 

ネイルという名のナメック星人は俺を見る。

訝しげな顔や不信感を持った目をする事はなく、しっかりとした眼差しでこっちを見据える。

邪悪な気が肌でわかるから悪人かどうかを感じ取ろうとしているのだろう。

 

「ムーリ殿、全てを最長老様はご存じです、どうぞお入りください」

 

問題ないのか、目を逸らして集落の偉い人もといムーリさんに対して道を開ける。

このナメック星人が強いナメック星人である事が肌でわかる。

今までいろいろな異星人を見てきたが段違いの強さを誇っている事が分かった。

これが戦闘タイプのナメック星人というわけか。

 

「よく来ましたね、ムーリ、そしてサイヤ人の幼子よ」

 

今まで見たいろいろな異星人や生き物の中でも大柄な部類に入る。

ムーリさんの何倍かの大きさを持ったナメック星人がいた。

流石は最長老と言われるだけあって、貫禄はすさまじい。

 

「なぜ、私がサイヤ人だと……」

 

一目見ただけで看破された。

相手の洞察力や観察眼がすさまじいのもあるが、仮にそうだとしても似た容姿が……

あるわけ無いか、だって尻尾がある。

ヤードラットで聞いた話では満月とかいう綺麗なものがあるらしいが見た事がない。

そんなモノ見てる暇があったら鍛錬を一秒でも多くする。

 

「こう見えても博識なので、異星人の事はよくわかるのですよ」

 

たぶん、俺が尻尾でばれるという事に気づいていなかったのを察して優しくいってくれる。

最長老様が俺を見ながら手招きをしている。

一体どういう事なのだろうか。

 

「すみませんね、貴方の事を知るためにもここまで近寄ってください」

 

近寄ると俺の頭の上に手をのせる。

大きく暖かみのある掌だ。

一体今から何を始めるのか?

 

「あなた、ある時期まで随分と嫌な思いをしてきましたね、まだ幼いというのに」

 

数分経った頃、最長老様が口を開く。

頭に手を置かれていただけだが、そのような事を言われるとは……

まさか手を置いて念じただけで記憶を覗いたというのか!?

ヤードラット星人たちとは違うが流石は最長老様。

こういった事ができるとは……

暖かい掌は頭からどかされる事はなく、次の瞬間。

 

「その悲しみの対価としてあなたの中に眠る潜在能力を開放いたしましょう」

 

そういわれた次の瞬間、何か壁がなくなったような感覚を覚える。

体から力が湧いてくるのが感じ取れる。

 

「こ…これが俺の眠っていたもの」

 

驚きを感じずにはいられない。

自分の中にこれだけのものが眠っていただなんて。

才能なんてないと思っていた。

それに眠っているとしても微々たるものだとばかり思っていたのに。

 

「といっても修行などでまた強くなるでしょう、あくまできっかけを与えて目覚めさせただけです」

 

その驚きに重ねるように伸びる余地があるというのが告げられる。

修行次第で俺はさらに戦えるようになるのだな。

 

「しかしなぜこのような真似を?」

 

わざわざ、初めての対面でこのような事をしてくれるのか?

俺が猫被っていたのならば暴れないとも限らないだろうに。

 

「それは貴方から邪悪な気を感じず善性があると思えた理由がはっきりしたからです」

 

そう言って、掌を頭から離す。

初めて会った人にここまで言われるのはこそばゆい。

このナメック星に来てからそう言った事ばかり言われている。

 

「その悲しかった日常はいずれ他者に優しくあれるきっかけになるでしょう」

 

それはとてもいい事だ。

誰かに優しくしてほしければ自分が優しくしていかないといけない。

自分のような存在を目の届く範囲とはいえ救えればいい。

 

最長老様の言葉を聞いて自分の考え方について整理を行う。

 

自分の思想が侵略が嫌いだという前提で成り立っているのがわかる

今まで奪って繁栄してきた戦闘民族として少しずれている精神だとは思っている。

しかし、その行為が恨みを買っていくだろうというのを感じ取っているが故の判断だ。

 

自分として大事なものは戦う事だ。。

一方的な蹂躙ではなく純粋な勝負、それこそが大事なもの。

その結果が何であれ受け止めなくてはならない、たとえ『死』であろうと。

戦闘で生き死にを決める、これも一つの戦闘民族の在り方だとは思う。

それが己の根幹であり全てだと、真剣に心の中でつぶやいていたのだった。




主人公居るからナメック星編は宇宙船いらなくね?と思ってはいけません。
瞬間移動して、もしこいつがやられたら宇宙置いてきぼり確定になります。
原作ではドラゴンボールが仕事してくれましたが……

指摘などありましたらお願いします。

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