とある一族の落ちこぼれ   作:勿忘草

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今回で日常回が終わりの予定です。
ガタバルの強化が早足なのは今後の話の組み立ての部分で必要だからです。
基礎戦闘力がないのになってしまって、倒れたりするのは半分様式美みたいなものです。


『瞬く間に過ぎるのは幸せだから』

「よしよし、ご飯だぞ」

 

そう言ってわが子の前に食事を持っていく。

スプーンで食べる姿は愛くるしい。

目を離さないようにして俺とピオーネも食事をとる。

あれから子供が生まれて早1年半。

未来の孫悟飯たちから言われた日まで残り半年。

戦闘力はほとんど現状維持で保ってきた。

ブロリーも同様だ。

 

「こんなに幸せだったら半年後の事が嘘のようね」

 

俺はその言葉に頷く。

愛しい人が目の前に居て、守るべきわが子がいる。

そして周りには頼れる仲間と笑いあう。

これ以上ない幸せがある。

それを崩されてしまう事が想像できない。

 

「ターサも守っていかないといけないな」

 

そう言ってわが子を撫でる。

子供は多ければ多い方がいいとピオーネは言うがこの激戦の予知がある以上はやめておくべきだ。

そう言ってなだめた。

ただでさえ育児に追われているというのに。

 

「そうね、今まで守る人が一人から二人、必死になるわ」

 

そう言ってお互いが決意を固める。

次の相手は厄介なことになると考察をしている。

人間には気があるが、人造人間となるとどうなるのか?

もし、感知できなければその分先制パンチを食らう事になる。

千里眼で見渡さないとな。

 

「だが、あくまで奴らのサポートに徹するのが今回の役目だ」

 

カカロットやベジータ、ナッパにターレス。

それ以外にもクリリンや天津飯。

あいつらが今回ばかりは自分たちにやらせろと言ってきた。

フリーザの問いの自分たちの体たらくを嘆き、いつまでも頼る気はないと。

その代わり、本当に危険な時は助けには入るという約束である。

 

「ブロリーさんもスパーニちゃんのサポート以外は参加できないしね」

 

あいつも俺たちと同様に参加不可能。

最大戦力を軒並み欠いた状態であいつらは頑張らないといけない。

 

「神様とやらも『精神と時の部屋』を教えてくれたが……」

 

そこで鍛えても使い道がない力。

これほど今までで虚しい事もない。

守るのはいいが、やはりそこは戦闘民族。

最前線に立ちたいと心のどこかで思ってしまう。

 

「あそこで鍛えたらきっとあなたは今の壁も超えていくよね」

 

つまり超サイヤ人3への変身か?

嫌なわけではないがあれは弱点があるからなぁ。

その後はターレスにある技を教えてもらわないと。

 

「そうは言うけど俺と組手していればその域まで達するじゃないか」

 

そう言うとピオーネが笑う。

しかしいまだに正体がわからない。

ズノーに聞きたくはない。

だが、もしすべての事をご存知の神様がもう一人いれば……

 

「とにかく今の自分たちは誰も死なせないこと、それが最優先」

 

そう言ってお互いが頷く。

いまだに超サイヤ人に目覚めていないやつらもいる。

そいつらを守るのも重要。

 

「それに未来からの襲来も視野に入れないとね」

 

そうなのだ。

トランクスたちよりも未来の世界からとか、タイムマシンがある以上、別の時間の人物の襲来も考えられる。

仮にとんでもない未来から化け物のような存在が来たらどう対応すればいいのか。

 

「そんな顔したって問題ないよ、そういうイレギュラーが私たちの標的なんだから」

 

それもそうだな。

フュージョンでも何でもやりようはある。

相手がどういった存在かわからない。

そういった未知の状況だから少し警戒しているだけだ。

わが子を抱きかかえながら、次の相手が今の自分たちとどれほどの差があるのかを考えていく。

 

「きっとあの部屋に入っておいた方がいいな」

 

万全を期して相手を倒す。

サイヤ人でも相手に対する油断を持つ奴はいる。

そういったものは俺にはない。

常に相手に全力。

確実に息の根を止める。

ワクワクとかドキドキする感覚は全くないわけではない。

しかし楽しむ事は修行以外ではそうめったに無い。

命のせめぎあいでそんなものを考えてはならないからだ。

だが例外的にピオーネの時だけは心が高鳴ってしまう。

それはきっとあの日、セッコ・オロで見た時からの憧れだから。

そんな人に認めてほしい、ほめてほしい。

だから全力を出している。

この人の前ではいつまでも子供のままの戦う理由で相対できる。

 

「今からでも行きましょうか」

 

そう言って俺たちはスパーニたちを誘い、神様の神殿に赴く。

説明を受けたのはいいが、俺たちは子供の面倒を見る役割としてスパーニとピオーネが先に入る。

その後に俺とブロリーが入る。

ちなみに2日間以上の滞在は不可能。

それ以降は空間が閉じて二度と出られない。

 

「子供の面倒を見るために一人ずつ入れば良かったのでは?」

 

ブロリーにそう指摘されたときは、それでもいいなとは思った。

しかし、折角2人入れるのなら最大人数入ってやった方がいいだろう。

 

「お前の今の状態の先を開放させておかないとな」

 

俺たちは胡坐をかいている状態だ。

奴らに任せて弱くなってもよくない。

だから常に先に行っておく。

 

「この状態の先……ありますかね?」

 

この先は俺も聞いてはいない。

『伝説の超サイヤ人』の先となると『伝説の超サイヤ人2』か。

きっとこんな形態にまで至った存在など後にも先にもいないだろう

およそ強さは従来の比較と同じ俺の超サイヤ人2の4倍。

味方陣営にとってもかなりの強化につながる。

 

「ダメもとだな、基礎を上げることもできるから無駄な事は無い」

 

そう言って二人して子供をあやす。

俺たちの子供がうまれて2歳と数か月。

1つ違いで生まれたのがスパーニの子供。

名前は『ロマネ』という女の子だ。

おどおどしたような人見知りはブロリーの部分を引き継いだんだろう。

だが時折見せる動きの活発さはスパーニを彷彿とさせる。

二人の特徴をしっかりと持っている子供だ。

 

「そうですね、守りたいものが増えた、かつての自分からは考えられない……」

 

この地球が、そしてスパーニがお前を変えた。

あの日、ナメック星で俺を守ろうとしたときに見せたお前の姿。

そして地球に来てから、コントロールしようとした努力。

それを俺は知っている。

 

「本来の性格からあの状態になってかけ離れただけだ、それが正しいんだろうよ」

 

普段の性格からあれは180度変わっている。

怒りとか不断にため込まれた感情の爆発でそのまま影響しているんだろう。

つまり普段から貯め込まなかったり、それ以上の幸せな感情があればそこまでコントロールが難しいわけではない。

 

「ただ、昔ほど力が溢れてくる感覚はないです」

 

つまり、理性的になった代わりに成長が緩やかになってしまったのだろう。

あるがままに暴れれば大切な人を守れない。

しかし抑えると成長が遅くなる。

それこそ、俺たち普通の超サイヤ人並みに。

 

「今回の修行では存分に開放して良いだろう」

 

そういった話をしながら子供の面倒を見て1日経つのを待つ。

出てきた時に感じたのはピオーネの基礎も上がったことは上がった。

しかし、一番はやはり……

 

「お前もなったか、スパーニ」

 

スパーニも超サイヤ人になっていた。

伝説とは言えど、後天的な素養でなれる。

ゆえにこれほどまでに多くなったのだろう。

 

「かなりしんどかったけどね……」

 

怒りによって目覚める以外にも哀しみもあるからなぁ

いずれにせよ、優しいお前が想像して何とか目覚めるのに、多大な努力をしたのは分かる。

 

「次は俺達だ、いくぞ!!」

 

そう言って子供たちを渡して入っていく。

重力は10倍だが、空気は薄い。

さらにはあまりにも広い空間。

精神面が狂ってしまう場所だな。

 

「いきなり実戦形式で今の互いの実力を見合うぞ」

 

そう言って超サイヤ人2になる。

それを見てブロリーも変身するが……

 

「修行の大事さをよくわかっていやがる」

 

抑えていない全開の狂戦士状態だ。

成長度合いをとったようだ。

しかし、この発展の感情の発露はどうなるのか?

その解明さえできれば、俺もブロリーに教えられるのだが。

 

「ハア!!」

 

ショルダータックルで突撃をしてくるのをいなして背中に肘打ちを叩きつける。

筋肉の分厚さでわずかに弾かれてしまう。

これでは針が刺さった程度だろうな。

 

「ヌン!!」

 

腕を後ろに回して俺の頭部を掴みそのまま勢いをつけて前に振りかぶり叩きつけようとする。

その瞬間に体を捻って逃れる。

だが、それを読んでいたのか腹部に爆弾が爆発したような衝撃が走り飛ばされる。

 

「逃れるのはうまいって知っているからなあ、ネズミ……」

 

にやりと笑っている。

学習部分とかも考えると、相手を痛めつける部分が強いだけで吸収力も跳ね上がるからな。

あまりにも恐ろしい戦士だ。

 

「じゃあ、こっちも行くぞ」

 

トントンと跳ねてすぐに懐に入り込む。

そのまま上段蹴りを放つ。

ガードをするブロリーの腕の内側に足を潜り込ませて延髄切り。

そのまま前のめりになったところに反転をして、膝を後頭部に押し当てて叩きつける。

 

「ぐっ!!」

 

痛みに呻くこともなく即座に起き上がってソバット。

こちらが受け止めようとするとフェイントだったか、その足を止める。

 

「はあっ!!」

 

腕を伸ばし、頭を掴まれる。

そのまま地面に叩きつけられて陥没する。

 

「終わりだぁ、『ギガンティック・ミーティア』!!」

 

大技を掴まれた状態から外せずもろに喰らってしまう。

超サイヤ人2で互角の実力のため、耐えきることができる。

後ろに下がって距離をとろうとするが……

 

「フンッ!!」

 

フライングボディプレスを見舞ってくる。

避けきれずに受け止めるが衝撃で片膝をつく。

一度主導権を握られるとこいつから取り戻すのは骨が折れるな。

攻撃の嵐が一向に止まない。

 

「シッ!」

 

しかしそうはさせまいとこちらも手は打つ。

尻尾で目を打ってその隙にブロリーを持ち上げる。

今から繰り出すのは脳天から叩きつける危険な技だ。

 

「シャッ!!」

 

叩きつけてみるが手ごたえはない。

その強靭な首の筋肉がクッションになっていた。

そのまま勢いをつけて起き上がる。

 

「シッ!!」

 

起き上がってきた時に喉へ一本拳。

急所を抉るように戦ってみる。

 

「があっ!!」

 

しかし痛覚すらも遮断されているのか、反撃をされる。

だがその攻撃をかいくぐればいい。

 

「これならどうだ!!」

 

後ろに回り、膝裏を蹴って体勢を崩す。

がくりと崩れた後に足を掴んでジャイアントスイングで放り投げる。

そして照準を合わせて……

 

「『アルバトロス・ブラスター』!!」

 

両手を前に出していつものように決めにかかる。

だが、流石はブロリー。

こっちの技に対して、反撃の一撃を放ってきた。

 

「『ブラスター・シェル』!!」

 

技がぶつかり合う。

こいつの技の威力は普通のものでもかなりえげつないものだ。

俺の大技が勝っても大半の威力を削ぎ落せるんだから。

 

「だが……もう一発だ!!」

 

ナメック星で教わったことはある。

一撃を打ってもそこで決められるという気持ちを持たないこと。

相手が完全に抵抗できずに飲み込まれるまでは追撃すべきだと。

もう一発ブロリーに向かって『アルバトロス・ブラスター』を放つ。

 

「ぬぐぅううう……」

 

技を出せないブロリーはほぼ無抵抗で飲まれる。

だが……

 

「まだ、終わっていないぞぉ!!」

 

笑いながらこっちへ猛スピードで突っ込んでくる。

こっちの一撃がぬるかったわけではない。

身体から煙は上がっているし手応えもあった。

だが一つ確かなこと。

徐々にこいつは成長している。

戦いの中でだ。

だが、ピオーネの方がこいつより成長速度が速いって思うと改めて何者なのか疑問が残る。

 

「らあっ!!」

 

突っ込んできたブロリーが繰り出した一撃とタイミングを合わせる。

クロスカウンターで互いに吹っ飛んでいく。

互いが血を吐いて再び構えて向き合う。

ブロリーも笑っている。

俺も口角を上げて微笑んでいた。

 

今、お前とこうして全力で争えること。

そして、家族があること。

幸せの絶頂に今、俺はいる。

ああ、それはとても……

 

「楽しい事だなぁ……」

 

あふれ出る力。

地面に髪の毛が触る感触。

額を拭おうとすると眉がなくなっているのを感じた。

またもや、壁を越えたようだな。

怒りと悲しみ、そして楽しみ。

それが俺の覚醒の条件となっている。

 

「さ……第二ラウンドといこうか?」

 

そう言ってじりじりとブロリーに接近をする。

ブロリーも本能では危うさを感じている。

しかし、今までの己を鑑みてひいてはいけないと判断をした。

言ってみれば強い猛獣が不利だと言って尻尾を巻いて逃げるのかというわけだ。

構えてこっちの攻撃を受け止める判断をした。

 

「ハッ!!」

 

飛び蹴りを放つ。

それを受け止めはするが後ずさっていく。

速度で超えて後ろをとり、肘打ち。

 

「ぐっ!?」

 

反撃を試みるも動きが今の俺にとっては遅い。

全てを紙一重で避けてカウンターをとり続ける。

ダメージが入っているのは分かる、

 

「うぉおお!!」

 

しかし、怯むことなく何度も放つ。

こちらの速度もお構いなしに当たってしまえという感じだ。

 

「それでいけるほど甘い俺じゃねえよ」

 

そう言って避けては足を蹴る。

機動力も奪っていく。

相手に得意な戦いの場を作らせないようにする。

それも重要な方法だ。

ほいほいと相手の土俵に入るなんてマネは、例えるなら食材が料理してくださいとまな板に乗るようなもの。

そんな事を思いながら何度も打ち続けたが、徐々に疲労が蓄積していく。

相手に攻撃をするのに、何の不自由もないなどありはしない。

何かしら代償は必ずついてくる。

その主なものが体力だ。

 

「本当にお前の体、どうなっているんだ……?」

 

俺は疲労からか、肩で息をしていた。

おおよそ百を優に超える連打。

しかも全てが全力の蹴りと拳。

それらを肉体で受け止めている。

こいつの強靭な肉体には毎回驚かされる。

 

「フフフッ……」

 

ドンッと爆発する音を立ててバチバチと電撃を体に纏っている。

威圧感からしても壁が壊れてはいない。

いってみれば超サイヤ人1.5のようなものか。

 

「気が高まる、力が溢れる……」

 

そう言って『オメガブラスター』を放ってくる。

それを避けるが威力も速度も上がっている。

正直、時間の尺度が狂っているのでどれほど戦っているのかわからない。

しかし、お互いになって間もない状態。

それが何を意味するのか。

 

「これで終わりだ!!」

 

そう言った瞬間、ブロリーがふらつく。

俺が初めて超サイヤ人に目覚めた時と一緒だ。

本人が気づいていないだけダメージは確実にあったんだろう。

そのせいですぐに解除された。

 

「ンっ!?」

 

ブロリーが倒れた瞬間、俺の視界も揺らぐ。

それもそのはずだ。

目覚めた後にあれだけの連打や攻撃、こちらも限界が来ていた。

俺も疲れからくる睡魔に身をゆだねて静かに倒れ込んだのだった。




強化イベントでブロリーたちが完全にイレギュラー担当へ。
ちなみに今のブロリーは『伝説の超サイヤ人』が『超ベジータ』みたいになった状態です。
この状態の倍率は超サイヤ人2の3倍が基準値です。
(伝説の超サイヤ人2がノーマル超サイヤ人2の4倍に当たるので)
しかし今回で3に目覚めたので基礎値の問題や時間限定でまだガタバルの方が上ですが。

久しぶりの後書きでの名前の由来
ガタバル達の子供:ターサ 『アブラナ科の野菜:タアサイ』
ブロリー達の子供:ロマネ 『ブロッコリーの仲間:ロマネスコ』
調べたらアブラナ科の野菜にブロッコリーがあって驚きました。

指摘など、ありましたらお願いいたします。

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