とある一族の落ちこぼれ   作:勿忘草

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今回からセル編です。
敵陣営がややこしくなっているので後書きで詳細をお書きします。
未来ガタバルの別スタイル超サイヤ人についての倍率は1は50x10で、2は100x50にしてます。
インフレしてますが、こいつは今回メンタル変化が目的なので基本的に参戦しません。


『未来からの襲撃』

あれから半年。

ブロリーの基礎値は上がったのだが結局壁を完全に超えることはできなかった。

それでも基礎の戦闘力が2500万から6500万にまで跳ね上がったのはやはり天才的な才能といえる。

俺も同じ7000万ほどだがもし超サイヤ人3に目覚めていなければ惨敗だった。

そして結局ピオーネは俺との組手であっさりと俺と同格になる。

もはや様式美である。

 

「今日が人造人間襲撃の日か」

 

そう言って俺は先に島ではなく、そこに近い都市部にいた。

ブロリーと2人でだ。

スパーニとピオーネには子供の面倒を見てもらっている。

 

「もし、相手が悪人なら島よりこっちの方が可能性が高い」

 

見渡すためだけに島を利用している可能性がある。

それならば見つけた場合すぐにもう向かっているだろう。

 

「見つけたぞ……」

 

ブロリーがつぶやく。

その方向を千里眼で見渡すと、確かに怪しい奴が居る。

だがそれ以外にも、気はないものの気配自体が存在する。

その数は……

 

「6もの気配……」

 

2人と聞いていたにもかかわらずこの多さ。

前回、来た時のせいで時間のねじれが生じたのかもしれない。

 

「俺はベジータ達の方へ行く、あんたは他の気配の所へ行ってくれ」

 

ブロリーがそう言って飛んでいく。

ヤムチャの奴の気に乱れが生じたが、どうにか救出されたようだ。

こっちも変な気配を感じた方向へ向かっていく。

憎悪なのだろうか、それとも何かしらの因縁があるのか絡みつくような視線が捉えている。

 

「悟飯でもないだろうから、いったい何者だ?」

 

初めての感覚。

こういった視線を向けられた事は無い。

女性から熱っぽいものを向けられていた覚えはあっても、こんな不気味な絡みつくものではなかった。

 

「まさか、未来でまだ俺を恨んでいる奴が居るのか?」

 

未来の俺よ。

敵を作るのは構わない。

だが、現代の俺にその付けが回っているんだよ。

もう少し、行動を改めてくれ。

 

「んっ……」

 

岩山の上の方にその視線を送っている気配を感じ取る。

こっちが向かっていくと、相手はさらに険しい岩山へ移っていく。

こっちに来いというのか?

良いだろう、ついていってやる。

 

「ようこそ、現代へ

未来からの襲撃者……」

 

そう言って2人の人造人間の前に俺は立つ。

鬼ごっこのように動き回った結果、岩山の風が吹き荒れる頂点で相まみえることとなった。

その姿は忌々しい存在。

まさか未来でもそう言った強さの求め方をするなんてな。

どんな時間の過ぎ方をしても変わらないのか。

 

「お前に虐げられることもない強さを手に入れた」

 

そうか。

こいつら、未来の俺だと思い込んでいるのか。

だが、間違っているぞ。

 

「すべてあのお方のおかげ!!」

 

力を開放したようだ。

気は感じられないが威圧感というものが跳ね上がった。

だがこの戦闘力のレベルなら……

 

「あのお方の邪魔をするものは死ぬがいい!!」

 

そう言って二人同時に飛びかかってくる。

俺は超サイヤ人になってその攻撃をいなした。

やはり、感じたとおりだ。

こいつらは……

 

「今の俺の超サイヤ人にも劣っていやがる」

 

戦闘力を削ぎ取られでもしたか?

そしてこの有様……

 

「利用されるあんたらが愚かなのさ」

 

世界は違えど、かつて言った言葉の意趣返しだ。

大方強くなることだけを考えていたのだろう。

 

「くくく……」

 

そう言って笑い始める。

前回のナメック星のように地球を壊すつもりか?

悪いが、それはさせない。

最大限の警戒で構えていく。

 

「我々の強さの真骨頂は回路によって一致する……」

 

二人が前後に重なっていき、徐々に輪郭が崩れて発光する。

その光が止んだ時、長身痩躯の白髪のサイヤ人型の人造人間がいた。

エネルギーというか威圧感が跳ね上がっている。

 

「一族突然変異種の潜在能力、とくと見よ!!」

 

ベースは未来カエンサのようだ。

確かに調べたところ、こいつは『アブラナ科』の野菜ではなく『カブ型の野菜』だった。

基本的に一族の名前の法則から外れるというのはとてつもないものを秘めている証拠だ。

潜在能力は歴代最高峰の突然変異の存在だったのだろう。

 

「はあ!!」

 

拳を振ってくる。

超サイヤ人を越えてはいる。

だが2に匹敵するほどではない。

それじゃあ、速く勝負を決めるか。

 

「ふんっ!!」

 

拳を受け止めて放り投げる。

空中でブレーキをかけているがこちらは後ろに陣取った。

 

「はっ!!」

 

手刀を首筋に繰り出す。

目は後ろにない。

そう思っていると、なんと首と腕の関節が回転して受け止めた。

機械の体だからできる芸当だな。

 

「受け止めてもこれをやられたらおしまいだな」

 

そう言って受け止められた手に気を集中させる。

指先から4本もの『デスビーム』を直撃させた。

 

「ぐああっ!!」

 

装甲が固いのかダメージは少なかったようだ。

貫通はせずにブスブスと煙を立てるぐらいになっている。

その隙に超サイヤ人3になる。

速く勝負を決めて応援に行かないとな。

 

「呻いて目を隠してたらダメだろう?」

 

そう言って腹部に蹴りを叩き込む。

くの字に曲がった背中に肘打ち。

そのまま腰を持ち上げて地面へ頭から叩きつける。

 

「ただの連打でこうもボロボロになっちまうのかい?」

 

確かに2の時の4倍にはなっているが開きすぎたのか?

相手はガタガタで装甲がむき出しになっている。

腹部には穴が開いており、背中には大きな陥没。

頭からはひびが入っている。

 

「そこまでだ、データ観測ご苦労だった、暇をやろう」

 

そんな低い老人の声が響いたかと思うと人造人間の胸から手が飛び出してきた。

心臓から何かを抜き出すように持ち上げる。

機械の腕のため、ぐしゃぐしゃと探る時に無機質な音が響く。

ぐちゃっと握りつぶしたような音を立てて返り血を浴びていた。

心臓は生身だったようだな。

その手に何か握られているようだが……

 

「ゲ、ゲロ様…」

 

そういって崩れ落ちたカエンサの頭を踏み潰す。

哀れな末路だ。

現代も未来もこんな結末とは悲しい奴らよ。

 

「暇はやったぞ、永遠にな……」

 

白髪の老人の人造人間がそう言って逃げ去る。

煙幕をやられてしまったので見分けることはできなかった。

 

しかし、そんな中あまりにも膨大な気を近くに感じる。

それはどちらかといえば『ここへ来い』と誘っている。

その気の方向へ俺は向かっていった。

 

.

.

.

 

「回収、感謝するぞ……」

 

『現代の』合体13号が連れてきた現代のワシを見る。

死人だったトランクス世界のワシには人造人間化を施してすぐに回路一致による合体を行った。

その後、『自分たちの未来』で緊急停止をしていた奴らを目覚めさせた。

『未来ではナンバリングが変わってしまった13号達』を即座に合体させて、ナノマシンを抜き取って自分の力に変えた。

そして今、あの役立たずの合体23号のナノマシンを埋め込む。

 

「溢れる力だ……」

 

『未来における合体13号(通称:合体15号)』のナノマシン。

そして今、回収したばかりの現代のワシのナノマシンを加えて今の自分の合算された号数を計算する。

 

「現在の号数は79か……」

 

現代のワシの20号

未来の合体23号

未来の合体15号

今の自分の21号

 

そして……

 

「貴様ももはや用済みだ!!」

 

そう言って抜き手を繰り出す。

徐々に若返っていったワシの背丈は今や170ほど。

リーチもそれに見合う。

油断している合体13号の腕を貫く。

 

「ぐぅ!?」

 

呻く合間に首まで飛びあがる。

そのまま、足を四の字にして首を締め上げる。

そして体をぐるりと回転させれば……

 

「があっ……」

 

首がビキビキと鈍い音を立てて折れ曲がっていく。

何とか力任せに引き剥がしたようだが……

 

「お前の負けは確定しているぞ」

 

そう言って目を抉り取る。

そして耳を引きちぎり、歯をへし折る。

 

「んがああ!!」

 

突進してくる相手の膝を踏み台にする。

その時に膝の皿を踏み砕き、その勢いで顎に膝を叩き込む。

顎もぐしゃりという音を立てて壊れた。

 

「ぬぅ!!」

 

まだやる気なのだろう。

蹴りを壊れていない足で行う。

しかしその反抗も虚しく、ワシはその足を掴み、捻って壊した。

人造人間を作る際に、人間の体の構造は頭に叩き込んでいる。

その体の構造を応用したのだから、壊し方も熟知しているのだ。

 

「お終いじゃ」

 

そう言って赤子の手をひねるが如く13号を壊しきった。

そして抜き出したナノマシンを埋め込んだ。

肉体の強度と戦闘力が今まで以上に上がっていく。

後、試みとして戦力を増やすクローン化の作成も進んでいた。

未来の20号の毛髪からの培養だ。

 

「この冴えわたる頭脳さえあれば、今までよりも強い回路を持った女の人造人間が作れる」

 

基本ベースが男性の方が強くなってしまうのが人造人間の性である。

それを改良できてしまえば、今の自分の想像を超えてしまうほどのものが生まれる。

これも孫悟空への復讐のため。

今頃、未来から来た奴らもいるし、セルも動いている。

3年間、誰にも知られず積み重ねた計画。

 

「レッドリボン軍の再興はもうすぐ目の前だ!!」

 

ワシは手を広げ、満願成就に思いをはせて高笑いを響かせるのであった。

 

.

.

.

 

「俺を呼んだのはお前か?」

 

そう言って相手を見る。

頭髪の形状や目つきは少し違う。

百戦錬磨の風格を漂わせている。

だがその姿には見覚えがある。

いや、ありすぎる。

何故ならば……

 

「その通りだ」

 

その声の主はくるりと振り向く。

この世に生まれて二十八年間。

苦しかろうとも、楽しかろうとも。

喜びの時も、哀しい時も。

怒れる時も共にあった。

そう、自分の肉体そのものなのだから。

 

「お前の目は自分とは違うな」

 

強さだけを求めていた。

その根底が揺らいだことによる決断を委ねているのだろう。

 

「それはこっちも同じだ、幸せまみれの面しやがって……」

 

過去に悲しいこともたくさんあった。

それでも、前を向いてきた。

その結果が今の幸せな日々ならば、それなりの対価を支払った。

それは自分にしかわからないことだが。

 

「お前の力の源を……教えろ!!」

 

そう言うと、一気に接近をしてくる。

速い、率直にそう思えた。

基礎がしっかりしていないとこの動きはできない。

 

「グッ!!」

 

紙一重で避けて裏拳を放つ。

それを蹴りで防ぐ。

構えも戦い方もまるで違う。

受けるのも攻めるような受け方、防ぎ方だ。

 

「があっ!」

 

ショルダータックルを放ってくる。

それに合わせてこっちも跳び後ろ回し蹴りで対応する。

タックル同士を狙っているのは分かるが距離や対応のタイミングが悪かった。

今の感触から、正直に言うとあっちの方が今の自分よりも強い。

 

「だが……」

 

負けるわけにはいかない。

未来から聞いたトランクスたちの言葉を鵜呑みで考えると悪人。

そうなると全員やられてしまうかもしれない。

俺が今一番強いんだ。

そんな俺が負けるという事は大切な家族を危険にさらすという事。

強いのならば守らねばならない。

自分を慕ってくれる人。

自分が慕う人。

友人や弟分など多くの人々が頭に浮かぶ。

それらのつながりを壊すわけにはいかない。

 

「はあああああ!!」

 

相手が右の拳を繰り出す。

ミドルレンジ。

もっとも体重が乗る場所で放たれた一撃。

 

「しゃああああ!!」

 

こっちもそれにあわせて拳を突き出す。

どちらも最大の威力で放つ拳。

この一撃で勝負が決まることは互いにわかりきっていた。

 

「「がはっ!!」」

 

互いに同じような声を出す。

顔に拳がめり込み首から上が跳ね上がる。

その衝撃で足が浮いて地面から離れてしまう。

クロスカウンターで互いが吹っ飛んでいった。

俺はしたたかに背中を打ち付けて、二回か三回ほど転がっていく。

未来の俺はそのまま数メートル飛んでから地面に足をつけるものの、衝撃に耐えきれずに両膝をついていた。

 

「ぬぬぬっ……」

 

俺は立ち上がろうとする。

未来の自分も体を支えようとする。

しかし、未来の俺は足が動かない。

 

「ぬあっ!?」

 

未来の俺の支えた手が滑ったのか、そのまま体勢を崩してうつぶせに倒れ込んだ。

足もがたがたで、どうやら立てないらしい。

 

「ぬおおおぉおお!!」

 

何とか、俺は立つことができた

深く相手の拳より入れられたんだろう

もしくは顎に当たってそのまま脳が揺らされてしまったか?

 

「なんで……俺の方がお前より強いのに」

 

互いに超サイヤ人抜きの戦いをした。

理屈ではかなわない事をやっただけだ。

それはきっと今、地に伏せているお前がよくわかるだろう。

基礎戦闘力が明らかに自分が上なのに負けた理由がな。

 

.

.

.

 

「ちくしょう、背中に守りたい人間を背負っているのが見えやがる」

 

去っていく姿にブロリーやターレスの影。

それ以外にも多くの影がそこにはあった。

そして、奴の背中が一瞬大きく映る。

守る事だけを考えて、内心はどこかで守るべき対象を冷ややかに見ていたのかもしれない。

心を通わせあい、信頼しあえるからあんな生き様や大事な人間が背中で語られているんだろう。

 

「自分に足りないものってあれなのかな?」

 

きっとまだあるかもしれない。

この場所に来て己の過ちが見えた。

やはり来て正解だったと思える。

きっと帰るころには、現代の自分の在り方やほかの人間の在り方で己を変えるきっかけは作れるはずだ。

 

「あんな目で見られたりは二度とないようにしないとな」

 

『最強』にとらわれることの無い在り方。

それを己の糧にしなくてはならない。

 

「よっこいせ」

 

起き上がって空を見上げる。

あの拳から伝わってきたもの。

それを反芻して微笑むのだった。




未来から来たゲロはセルと同じタイムマシンに乗って来て研究を行っている設定です。
ちなみに合体21号となっていますが
21号が『セル未来のゲロ』で22号が『トランクス未来で死んだゲロ』です。
合体21号の目的は『究極の人造人間』の作成で、それで『号数が100になるように合体したら完成』というモードで動いています。
※合体を別の個体がすでにした場合その号数での計算となります。
13~15号が未来でナンバリングがずれたのは作者のオリジナル設定です。
現代の17,18号が未来では19号,20号なので16号に相当する18号を欠番にした後『15,16,17号』としての設定です。

指摘などありましたらお願いします。

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