とある一族の落ちこぼれ   作:勿忘草

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セル編が今回で終了です。
次回からはブウ編に飛んでいく予定です。
一気に時間が飛びます。


『大団円』

カカロットの奴がセルと戦うようだ。

観戦扱いなのはあいつが自分たちでやるというからだ。

その前に戦っていたミスターサタンとかいう奴も一般人とは違う。

流石は世界チャンピオンといった感じだ。

殴る時に一瞬だけ気を集中していた。

しかも狙いは頭部。

運がいいという事。

そして急所を狙える大胆さ。

 

「ぬっ!?」

 

セルも油断していたが、顔を引き締めて回避。

やはりあの箇所に損傷なりダメージがあると危ないようだ。

ただ、仮に核だとしても頭部内からの移動。

もしくはすべてを塵に返さないと無理といった可能性もある。

 

「落ちろ」

 

そう言ってセルが叩こうとするが本人は時間稼ぎをしようとしている。

残像でかわして腕をとり、場外へ投げる。

 

「ふん!!」

 

舞空術で浮こうとしたその瞬間を狙いすましていたのだろう。

サタンは助走をつけていた。

 

「でりゃあー!!」

 

飛び蹴りがセルに当たる。

体勢が悪かったな。

場外へ一直線。

まさかの伏兵にやられるか。

 

「負けてたまるか!」

 

セルが足を掴んで先に場外へと投げる。

舞空術ができない低い弾道。

さらに技後硬直。

サタンは場外となってしまう。

セルは何とか場内に着地ができたようだ。

ネズミか何かと思って油断するから危なっかしい。

ライオンは弱い奴を相手に余裕綽々で狩りはしない。

そのように敵に合わせるより全力で戦わないとな。

 

「次はオラだな」

 

そう言って武舞台に上がる。

何かしらカカロットにミスターサタンが耳打ちしてたが……

それを聞いたカカロットは微笑んでいた。

 

その戦いは激戦といえば激戦だった。

俺やラズリの目、あと一人を除けばの話だが。

これだったら超サイヤ人2で圧倒できる。

それになれていないのだろう。

きっかけがないと壁を超えるのは厳しい。

あの現代の孫悟飯は戦いは苦手なようだ。

話し合いでは解決できない、赴くままに開放してもいいのだ。

 

「おめえの出番だぞ!!」

 

そう言って現代の孫悟飯を呼ぶ。

ピッコロが止めるが向かっていく。

これが秘策だというのか?

現代の孫悟飯は悪とわかっていても嫌がっている。

説得をしようとする。

しかしそんな時大きな声をかける人物がいた。

 

「そいつを倒せるんだ、自分を開放するんだ、感情のままに!!」

 

それは未来の孫悟飯だった。

でもそんなことできないと首を振る。

 

「そうしないとみんなやられるんだぞ!!」

 

その言葉に目が変わる。

自分の痛みより他人の痛みで目覚めるタイプか。

自分のために拳を握ったことがないのだろう。

それが今、枷になっている。

 

「うぅぅぅ……」

 

徐々に気が高まっている。

優しすぎるがゆえに難しいのだろう。

 

「ぐぐぐ……」

 

身体に電撃を纏い始めた。

セルの奴はニヤニヤして見過ごしているが、後悔するぞ?

 

「待ち続けていても仕方ないな、最後の一押しをしてやろう」

 

セルの尻尾から子供のような存在がわらわらと出てくる。

仲間を痛めつけさせようというわけか。

セルが指をさすとセルの子供……『セルジュニア』と呼ぶか。

奴らが他の戦士に向かっていく。

 

「やめろー!!」

 

悟飯にとってはそれが一押しとなったのだろう。

そう言った瞬間、気が膨れ上がった。

仲間の危機に壁を打ち破る力が湧いたのだろう。

セルの子供のような存在に向かっていく。

ちなみに俺とラズリは気弾で一瞬の間に始末をした。

 

「この程度でベジータ様がやられるかぁ!!」

 

ベジータもそこそこの苦戦は強いられていたが倒しきる。

トランクスと未来の孫悟飯は協力して二体を撃破。

それ以外は全部現代の孫悟飯が倒す。

このまま一方的にはなるかもしれない。

しかし不安がある。

未来の孫悟飯の近くへ寄る。

 

「気を付けろよ」

 

俺も全力で何とかするがいけるだろうか。

秘策があまりにもガバガバなのだ。

慣れてもいない超サイヤ人2になってしまった。

軽い興奮状態になるというのに……

 

「あのガキに増長が生まれるかもな、興奮と圧倒的な差に酔ってしまいかねん」

 

流石はベジータ。

俺の懸念を完璧に代弁してくれた。

それがどういった事につながるのか。

そんな事を考えていると現代の俺達も到着した。

未来が見えているのだろう。

臨戦態勢である。

 

「やつにはフリーザの細胞もあるからな、なりふり構わないことしてくるぞ」

 

一挙手一投足に目を見張らせている。

何が起こるだろうか。

 

そこからは一方的だった。

僅か二発の拳でセルが血を吐く。

地球崩壊のかめはめ波もさらに大きなかめはめ波で飲み込む。

セルの体がボロボロになった時、懸念していたことが起こる。

カカロットがとどめを刺せといったときに、まだ早いといったのだ。

さらに痛めつけてやらないといけないと。

 

「追い詰められた時に何をするか分からんぞ!!」

 

ベジータが大きな声でやるように促す。

未来の孫悟飯達も速くするべきだというがセルが襲い掛かる。

力に頼った変身では勝てない。

案の定カウンターで側頭部に罅が入るような強烈な蹴りを食らう。

 

「げぼぉ!!」

 

大きなダメージを受けた衝撃か。

はたまた本能か。

18号を吐き出した。

それをクリリンが受け止める。

こういう所で点数稼ぎか、狡い奴だぜ。

お前がある時に緊急停止をしておけば今の状況はなかったんだ。

 

「許さん、許さなぁーい!!」

 

そう言って徐々に膨らんでいく。

やっぱりこういった手を打ってきやがったか。

仕方ない。

 

「どいてろ」

 

現代の孫悟飯を下がらせてセルに触れる。

爆発前にだ。

手のひらに気を全て集中させる。

爆破の時にそれより遥かに大きい気で包み込む。

それで爆発の被害を打ち消すのだ。

 

「終わりだぁ!!」

 

そう言ってセルが発光する。

大猿超サイヤ人3の全力を使う。

 

「はあああああ!!」

 

大爆発を起こすがそれ以上の莫大な気がセルを包み込む。

地球への衝撃はなかった。

しかし爆発の中心には大きなクレーターが残る。

 

「俺の役目は完了だな」

 

肩で息をしながら一息つく。

しかし次の瞬間、気を感じ取る。

それに気づいたのは……

 

「避けろ、トランクス!!」

 

そう言ってベジータがトランクスを蹴り飛ばす。

だが間に合わなかったのか、脇腹を削り取られたような状態だ。

血を吐いている。

 

「未来の悟飯、すぐにデンデの所へ連れていけ!!」

 

そう言ってトランクスを抱えさせる。

ギロリという様に睨み付ける向こうにはセルがいた。

吐き出したというのに完全体になっている。

どうやら奇跡的に核が残っていたか……

 

「トランクスだったか、まあどうでもいい……」

 

そう言った瞬間、気が噴き出るのを感じる。

わなわなとベジータが震えていた。

 

「どうでもいいだと……、よくも…よくも…」

 

雷光を纏っていく。

まさか、こいつも……

 

「俺のトランクスをー!!」

 

2に目覚めてた。

その速度は現代の孫悟飯を凌駕している。

目覚めてはいないが鍛錬による戦闘力の基礎値の差が生まれたか。

 

「クソッタレがー!!」

 

腹に一撃。

顔に膝をぶち込んでのけぞらせる。

反応できない速度で延々とセルを殴りつける。

 

「がはぁ……」

 

セルは血反吐を吐いている。

とどめはどうするつもりだ?

 

「悟飯、かめはめ波だ、俺に合わせろ!!」

 

何とベジータから連携技を言ってくる。

とどめは本来現代の孫悟飯にやらせたいのだろうが、自分の気が済まない。

だからこそ、この提案なのだろう。

 

「はい、ベジータさん!!」

 

お互いが気を高めていく。

セルもその状況に応じて技を放ちに行く。

 

「かめはめ波ー!!」

 

全力のかめはめ波だ。

太陽系は吹き飛ぶだろう。

だが緊迫感はさっきの自爆よりはない。

 

「ファイナル……」

「かめはめ波ー!!」

 

ベジータの技名にかぶさる形で同時に技が放たれる。

合わさっていきセルのかめはめ波とぶつかる。

 

「ぬああああああっ!!」

 

抵抗することも許されない。

瞬く間に押し返されていく。

一人ならほぼ互角だったのに二人が相手。

その違いは絶大。

 

「こんな…ことが……」

 

セルは絶望の顔のまま消滅していった。

あまりにもあっけない戦いだった気がする。

まあ、自爆の時に俺がいないとカカロットが瞬間移動で何とかしないといけなかっただろうな。

 

「終わったな……」

 

そう言って俺は去ろうとする。

だが現代の俺が腕を掴む。

 

「まだ大団円がある、ここを去るには速いだろ」

 

喜んでばかりもいられない。

あの日に置いてきた仲間たちも待っているだろう。

速くあいつらと話さないと。

 

「少しぐらいは良いんじゃないのか?」

 

ゲロが声をかけてくる。

お前さりげなく味方側になっているのかよ。

今後は俺たちの世界の復興に力を貸すらしい。

まあ、お前の科学力は力になるだろう。

 

「こう言っている事だ、タイムマシンについても明日の方が都合がいいだろう」

 

いや、それはトランクスたちの判断なんだが。

そう考えたところで溜息をつく。

俺がいくら焦ってもあいつらの決断次第だ。

今日休むと言ったら待つしかあるまい。

 

「分かった」

 

そう言うと一度全員が散開をする。

報告をするために。

また、今夜のパーティーの為に。

 

「それにしても有意義な時間だったな」

 

自分の心が温かいもので満たされている。

それがどういった表現なのかはわからない。

しかし、ここに来る前の自分の心のとげはなくなった。

悩み事もきれいさっぱりと。

背中で守らねばならないと思った。

セルの自爆の時は間違えれば地球の崩壊。

全員が死んでいたんだから。

 

「私も幸せだな……」

 

ラズリが呟く。

お前もそういう気持ちでいるんだな。

少し笑みがこぼれる。

心の理解者がいるだけでも救われる。

 

「でも……」

 

なんだかわからない胸のざわめき。

現代では今後恐ろしい事が起きそうな……

 

「顔色が悪いよ?」

 

ラズリに心配される。

あいつらだって強いはずなのになぜ不安を感じるのか?

 

「気にしすぎかもな」

 

ラズリに笑顔を返す。

パーティーまでまだ時間はある。

カプセルコーポレーションで手伝うか。

 

そして大団円を迎える。

サイヤ人の胃袋を満たす、沢山のご馳走。

そして腹が満たされた後は……

 

「勝負だ、カカロット!!」

 

ベジータがカカロットと戦おうとする。

全くこんな晴れ舞台で……

そう思って動こうとすると横から衝撃が来る。

 

「戦ってもらおうか……」

 

現代の俺が俺の精神的な成長を見たいらしい。

数日前の俺とは違う。

後悔するなよ?

 

そう言ったように食後の運動を始める。

気弾なしの殴り合い。

超サイヤ人抜きでのやりあい。

その結果は前回とは違い、俺が勝利を収めた。

とはいえど辛勝であることは変わらない。

やはり、すぐ目覚めて変わったばかりの俺とはわけが違う。

拳が固くて重い。

今までの歩んできたものを太い幹になっているようだ。

 

「少しはいい手土産ができたよ」

 

そう言って腕をとって引き起こす。

そして夜が明けて、出発の朝。

タイムマシンに乗り込むトランクスと悟飯。

俺たちはミクロバンドでトランクスのポケットに入っている。

小さな姿でも感謝を込めて手を振る。

目の前の景色が霞む。

そして着陸した自分たちの世界は……

 

「待っていたぞ、トランクス」

 

出迎えるのはベジータ。

それ以外にはブロリーもいる。

どうやら協力をしていたようだ。

 

「ただいま、父さん」

 

そう言って挨拶を返すトランクス。

しかしよく見ると三人とも重症に近いけがを負っている。

スパーニたちは無事なようだが……。

 

「一人だけだったんだが、見た目が変わってしまってな……」

 

17号の眠っていた回路が呼び覚まされたらしい。

しかししょせんは荒廃している状態でできたもの。

ゲロが強さについて例えを言ってくれた。

 

「あの状態の17号では目覚めても第二形態のセルと完全体の中間ほどだろう」

 

そう言うが今のブロリーたちでは厳しいのだろう。

現代みたいに血の滲む鍛錬をしていないからな。

これからはきちんと鍛えなおすか。

 

「分かりました、行ってきます」

 

そう言ってトランクスと悟飯が飛び立つ。

俺たちは二人を抱えて治療することにした。

 

「ちなみにトランクスたちはどれほど強くなった?」

 

ベジータが俺に聞いてくる。

多分想定すると……

 

「今のお前よりは強いかな」

 

セルの第二形態と互角ほどの強さのベジータ。

それよりは強いが完全体には劣るブロリー。

 

「そうか、なら勝てるな」

 

そう言ってベッドに横になるベジータ。

17号が強くなったせいで町の荒廃は進んでしまった。

だが、天才科学者が複数いれば多少は楽になる。

 

「だから安心して寝ておけ」

 

俺はトランクスたちがいる方向を見て気を探る。

17号の気は感じられない。

それでも数分後、二つの気が動き始めたのを感じ取る。

 

「あいつらの勝ちだ」

 

清々しい顔で戻ってきた。

だが、まだ大事なことが残っている。

それは三年後に襲い掛かってくる恐怖。

今やってしまうと何かしらの因果が生まれる。

それは避けないといけないことだ。

 

お互いが鍛錬をして三年後。

ブロリーも伝説形態の2になることができた。

ベジータやトランクスたちも2になっている。

俺はナメック星に赴いてドラゴンボールをすぐに使い人造人間に殺された人たちの蘇生。

ゲロやラズリは復興の手伝い。

初めはラズリも警戒されたが、人当たりの違いと献身的な動きですぐに打ち解けた。

 

「ワシのけじめだ、ワシの不始末はワシが解決をする」

 

そう言ってセルの方向へと向かう。

動き始めたセルを瞬く間に消滅させていた。

躊躇いのない動きだった。

自分が創作したものではないかららしい。

 

とりあえずこれで一息はついた。

未来は安泰かもしれない。

報告をしに現代に行きたいがタイムマシンの充電よりも街の復興に力を注いでいた。

 

「まあ、お前らなら元気にやっているだろう?」

 

空を見上げてそう呟く。

一時の平和を噛みしめながら。




早足な気がするセル編。
彼らはまだ未来トランクス編で出番は残っています。
もしくは少し考えています。
指摘などありましたらお願いします。

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