とある一族の落ちこぼれ   作:勿忘草

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今回も短めです。
ちょっとR指定喰らいそうな表現があります。
とにかくピオーネの正体は次回に説明させます。


『新たな生命』

4年間を埋めるように色々な場所へ行った。

遊園地。

ピクニック。

海。

山。

旅行。

 

色々な場所でターサとピオーネが楽しむ。

それだけで心が満たされた。

だが帰ってきた後にターサからこんなこと言われてしまうとは…

 

「妹か弟が欲しい」

 

どうやら旅行先で弟をおんぶしたり、妹を心配する兄妹を見て羨ましかったらしい。

それを言われてどうしたものかと汗をかいて助力をピオーネに求めるが……

 

「欲しいのね……」

 

そう言ってこっちを見る。

その瞬間、身が竦んで動けなかった。

 

「今日からしばらくの間、一人で寝ていい子にしてればきっとお姉ちゃんになれるわ」

 

子供には女神のような微笑み。

しかしそれはこっちからすれば肉体の限界に挑み続けるようなものであった。

お願いです、今度はわがまま言わずに普通の形態で励まさせてください。

超サイヤ人4でとか言われたら子供がどんな潜在能力を持っているかわからないから。

そして今後のブロリーの方にも当てはまる。

ターサが現にブウの時の修行で3になっていたらしいし、ロマネの方もオンオフ切り替えできる『伝説』という有様だった。

 

「本当?」

 

キラキラした目でターサが言う。

それに頷いて、嬉々として買い物に誘う。

覚悟を決める。

 

「お手柔らかに……」

 

そう呟いて俺も一緒に出掛けた。

体がもつだろうか?

久々だしあれから年は取っている。

多分サラガドゥラの仮面をつけてなければもっと早い段階で兄弟ができていただろう。

確信している。

 

「とは言っても……」

 

超サイヤ人4でやれと言った所で壊れる。

身体強度がまるで追いついていないのだ。

だから絶対にない。

 

「流石に壊れるほどとかは無しにしてほしい」

 

結論から言うと無理だった。

3の状態では力を押さえつけられてしまう。

男性としての尊厳が4を使用させた。

その結果、ピオーネが例え女傑であろうとも気絶と覚醒を繰り返していく。

流石にまずいと思って3にしたら逆襲されて背中に爪を立てられる。

時には首筋に噛みついてでも4の解除を許さなかった。

肉体の強度が徐々にその次元で上がっていく事を感じ取っていた。

いつ、いかなる時も強くなる。

せめてこういう時ぐらいはそうならなくてもいいのだが…

 

「結果……こうなるか」

 

それから数か月後。

ピオーネが膨らんだ腹を微笑んでさすっている。

検査結果は男の子。

 

「ふふふ……」

 

ターサは喜んでいるし、ピオーネも喜んでいる。

だったらいいんじゃないかな。

男の尊厳は今回は守れたし。

 

「じゃあ、仕事に行ってくる」

 

あれから結局は仕事をブルマさんに斡旋してもらった。

といっても機械系統のテスター。

シェルター室でどれだけ激しく動いたらいけないかの実験。

パートナーはベジータ。

 

お互いが向き合って構えをとる。

あくまでスパーリングで。

 

「超サイヤ人4でこないのか?」

 

そう言って蹴りを繰り出すベジータ。

元の戦闘力同士ならば差がある。

その為に受け止めて投げる。

 

「耐久テストで壊す事確定のテストをしてどうする」

 

ベジータが着地をする。

そこに突っ込んでいく。

 

「はっ!!」

 

超サイヤ人で突っ込みを食い止める。

だが腕がフリーだ。

 

「『ファイナルフラッシュ』!!」

 

ベジータのお株を奪う一撃。

それを超サイヤ人2でかき消す。

俺もならって超サイヤ人2になる。

 

「いくぞ!!」

 

そう言って気弾を撃ってくるベジータ。

弾幕になって迫ってくる。

それを尻尾で打ち払う。

 

「ふっ!!」

 

同時に接近していたベジータのタックルを受ける。

壁の衝撃吸収材が仕事をする。

しかし……

 

「『エラー発生、自動ロックを解除します』」

 

罅はないが衝撃がキャパシティを凌駕した。

どれくらいの衝撃を想定していたのかな?

 

「ベジータと孫君が超サイヤ人で戦ったぐらいね」

 

車の衝突なんて比較にならない衝撃だと思うんだが。

まあ、地球全体で被害を被るようなことがあれば無理もないか。

 

「しかしあんたも仕事がなくなったっていったけど、頭下げてまで働きたいなんてね」

 

笑って言ってくる。

だって養うべき立場なんだよ?

そう言うとさらに笑われた。

 

「ベジータなんて時々しか手伝わないし、孫君も働かないからね」

 

ターレスやブロリーに関しては強く言ったからな。

スパーニやラエンカもサイヤ人ではあるが女性という事で戦闘意欲が薄いのか、すぐに勤労活動を始めようとしていた。

 

「戦闘民族だからな」

 

そうは言うがお前さんは地球基準ではかなり危ない状況だぞ。

確か『ヒモ』っていうらしい。

トランクスたちも理解してくれているのかな?

 

「そう言えば子供ができたんだって?」

 

ブルマさんが言ってくる。

一体誰から聞いたんだろうか?

 

「ちょっと前にトランクスが孫君の家に行った時に見かけたらしいわ」

 

なるほど。

そりゃあ気づかないわけだ。

なんて伝えたのかな?

 

「おなかが凄い膨らんで豚さんみたいだって……」

 

その瞬間、超サイヤ人4になっていた。

そして一瞬でトランクスの前に瞬間移動していた。

 

「トランクス……組手の時間だぁ」

 

髪の毛を掴んで立たせる。

少し怯えているが関係ない。

超サイヤ人で逃げるが無駄だ。

 

「どこに行くんだ、組手だぞ」

 

くるりと背中を向けて逃げ出そうとするが気弾を放つ。

避けたから握りつぶす。

指をさして言ってやった。

ブロリーの方が圧倒的に似合いそうな言葉を。

 

「血祭りにあげてやる……」

 

そう言って超サイヤ人のトランクスにじりじりと近寄る。

流石に覚悟を決めたのか。

目つきが変わってこっちを睨むようになる。

 

「やれるもんならやってみな!!」

 

蹴りを指一本で止める。

にやりと笑って距離をとる。

 

「ハエが止まるような蹴りだな、トランクス」

 

そう言って蹴りを返す。

両腕で受け止めるが吹っ飛ばされる。

廊下だから蹴る方向を間違えなければいい。

 

「くっ……そー!!」

 

突撃をしようとするトランクスをベジータが止める。

そしてこっちを見てくる。

 

「ここで暴れるのはよくない、場所を移すぞ」

 

くいっと指で合図をする。

それに応じて向かっていく。

岩場に着くと同時にベジータが超サイヤ人3になる。

トランクスはすでに見物人だ。

 

「子供の悪口に目くじらを立てるのは大人げないぞ」

 

ベジータがそう言ってくるのを聞き流す。

許すわけがないだろう。

自分の悪口なら許したが嫁と子供の悪口は絶対に許せない。

 

「じゃあお前はターサがブルマさんの悪口を言ったら許すか?」

 

そう返してやると顔をゆがめる。

そして間髪入れずに答えてきた。

 

「許さんな」

「そう言う事だ」

 

ベジータの答えが合図になる。

お互いが3で勝負をする運びになっていた。

理由は4は隔絶されすぎて戦いにならない。

それを二人の共通認識として持っている。

一回やりあったが、一方的過ぎて話にならなかった。

 

「ふんっ!!」

 

ベジータの拳を受けとめる。

それを軸にして回し蹴りを放つ。

 

「はっ!!」

 

ベジータが上体反らしで避ける。

そこから回転して肘打ちを放つ。

 

「ちっ!!」

 

肘打ちが頭に掠るがすかさずアッパーを顎に掠らせる。

ベジータは僅かに後退して追撃を止める。

それで再び距離が開いた。

 

「はあああああ!!」

 

気弾の弾幕を放つ。

それに腕を交差して受け止める。

しかしそれは失策だった。

低空タックルを同時に仕掛けていた。

目線の高さとのミスマッチが隙を生む。

足を抱えこむとそのまま持ち上げる。

 

「だりゃああああ!!」

 

抱え込んだ手を組み替えて頭と腰を締め付ける。

そして抱え込んだまま回転をする。

その猛烈な勢いのまま上空へと俺を投げる。

照準をきちんと合わせている。

 

「『ファイナルフラッシュ』!!」

 

これは避けられない。

体を捻る隙も与えない。

こういった戦い方はカカロットはできない。

流石はベジータ。

敵に回したくない男の筆頭なだけはある。

ブロリーのような暴走したらとかではなく通常でこんな戦い方をされるのは厄介極まりない。

 

「うああああ…」

 

避けられず一撃を食らう。

だがそれでやられる俺じゃない。

油断をしていないベジータに向かってこっちも最大の技を放つ。

 

「『アルバトロス・ブラスター』!!」

 

それを読んでいたという様に気を高めていた。

連射できるほど修行していやがったか。

それよりも仕事しろよ、仕事を。

 

「『ファイナルフラッシュ』!!」

 

技がぶつかり合う。

俺のアホウドリが光を食いちぎってベジータへと向かう。

それを受け止めるが……

 

「俺の間合いだ!!」

 

瞬間移動で懐に忍び込む。

一気呵成に畳みかける。

 

「はっ!!」

 

脇腹に一撃。

一本拳のわずかに飛び出ている指が捻じ込まれる。

肘打ちで顔をかちあげ、頭突きで鼻を潰す。

ローキックで体勢を崩して、腹にアッパー。

延々とベジータに反撃のタイミングを見出させない。

心を圧し折る猛烈な攻撃、連打に次ぐ連打。

ベジータが血だらけの顔になり超サイヤ人が切れるまでその惨劇のごとく嵐はやまなかった。

その嵐の後に残ったのは血まみれの自分の拳とぐったりとしたベジータだけだった。

 

「パパ!!」

 

トランクスが駆け寄る。

それを止める。

ベジータを抱えてカプセルコーポレーションに戻る。

メディカルポッドに放り込んでおいた。

 

「まあ、一時間もしないうちに治るだろ」

 

そう言って待っていた。

トランクスが睨んでいる。

元はといえばお前が逃げずに謝れば良かっただけだぞ。

俺が怒らないとでも思ったのか?

4年間いなくても愛の重さも大きさも変わらないんだ。

それならば、罵倒することの恐ろしさを知っておかないとな。

 

「負けたのか……」

 

ベジータが目を覚まして服を着る最中に言ってくる。

そりゃあ、お前……俺は改造で強くなっているからね。

それがなくても負ける気はしないけれど。

 

「トランクスに言っておけよ」

 

次はない。

ベジータが止めても、間に入っても。

必ずお前を塵にする。

ピオーネやターサへの罵倒はそれほど重いもの。

妊娠したのは愛ゆえに。

それを動物のようだと言われて怒らぬ奴はいないだろう。

 

「分かっている」

 

ベジータも頷く。

そして、次は負けないと呟いていた。

 

そしてそれからさらに時間は経った。

ブウの戦いからちょうど一年ほどたった頃。

 

「有難う」

 

ただその一言だけ言ってピオーネの手を強く握っていた。

第二子の誕生だった。

男の子だった。

名前は『ゲンサイ』

ターサと同じく尻尾が生えている。

 

「私もお姉ちゃんになるんだね」

 

10歳になったターサが喜んでいた。

その笑顔をみたピオーネも笑顔だった。

新しい命の誕生に皆が祝福をしてくれた。

 

「んっ……」

 

体を起こして着替えを手伝う時にピオーネの背中に大きな痣が浮き出ていた。

それは痛々しいものではなく紋章のように。

今まで無かったものが急に見つかっていた。

それはまるで三又の矛を思わせる。

とりあえず誰かに相談してみよう。

そしてこれがピオーネの正体を判明させる大きな手掛かりとなるのだった。




今回で神と神まで残り3年。
次回は悟飯の結婚式だったり、まだ使えそうな悪役がないかを確認して少し戦いを描いてみようと思います。

指摘などありましたらお願いします。

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