とある一族の落ちこぼれ   作:勿忘草

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ザマス編ももう少しで終わりの予定です。
第12宇宙のタイムマシンなど漫画版の超の設定も入り乱れています。



『残酷な問い』

俺はあれから話をしている。

顔も分からない相手とだ。

声だって魔術で変えている、まったく見当がつかない。

 

こうしている間にも戦いは続いている。

気が気ではない。

そわそわしながらお茶を口に運ぶ。

 

「気にしなくてもすぐには動けない」

 

目の前の相手がそう言ってくる。

いわく、あいつらも気が枯渇しているという事。

回復しようにも神の存在やそれに近ければ回復の時間は掛かるからすぐに危機に陥るような事は無い。

 

「それで時間としては……」

 

俺はその時間が気になる。

カカロットとベジータが来るぐらいだろうか?

 

「貴方の仲間の二人が来るぐらいまでは十分よ」

 

それならば十分こちらも体を休めよう。

ここは不思議な空間。

月の光が差し込むわけではないがサイヤパワーが戻ってきている。

 

「あいつらには怒りを覚えている……」

 

どうやら第10宇宙の界王神見習いであったこちらのザマス。

それを俺たちの世界から来たゴクウブラック、もといザマスがそそのかす。

その時にゴワス様という界王神をゴクウブラックが殺害。

その殺害により第10宇宙の破壊神であるラムーシ様の死。

その間際に第10宇宙の破壊神見習いであった自分にその座が移動した。

そういった因縁からゴクウブラックをどうするかを考えていた。

 

しかし、気づいたころには第7宇宙に行ってしまっていた。

キューブを使われた以上、移動手段がなかったらしい。

ではどうやって……

 

「そこは秘密」

 

そう言って立ち上がった。

ザマスたちの動向を調べていた。

そして天使に何かしら耳打ちをする。

 

「ちょっと面倒なことが起こったわ」

 

そう言うと俺の肩に手を置く。

そして力を込める。

魔術で花の都から出る。

 

それには時間がかかっていたのだろう。

どうやらカカロットとベジータも到着している。

ゴクウブラックをベジータが圧倒している。

ザマスがトランクス達に向かっている。

 

そこからは怒涛の展開だった。

カカロット達への怒りからブラックがさらに力を増幅。

次元を切り裂いて分身を呼び寄せた。

そんな中、トランクスが『魔封波』をザマスに当てる。

そのままカカロットが持参してきたツボ。

とは言っても悟飯が修復したボロボロのものに封印。

しかし、問題が発生した。

カカロットが札を忘れたことでザマスが自力で脱出。

ついにポタラ合体を解禁。

一人の存在へと変わった。

 

「これは俺が一人でやる……」

 

瞬間移動でカカロットとベジータの後ろに現れて頭を掴み、悟飯達の方へ投げる。

未来の俺も疲労困憊で倒れていた。

 

「愚かな男よ、消えろ!!」

 

雷を放ってくるが問題がない。

こっちも気弾で対抗する。

 

「そんなもん怖くはないぜ」

 

光輪から放たれるものがそんなちっぽけなものなのか?

触れられないような障壁。

神の威光とは言うが……

 

「シャア!!」

 

関係ないんだよ。

穿つように一撃を放ち、超速度で二撃目を放つ。

それで穴ができた障壁を砕く。

 

「がっ……」

 

ザマスの脇腹に俺の拳がめり込んでいる。

悶絶をしている。

そこに違和感を感じた。

 

「小賢しいサイヤ人が!!」

 

奴が拳を振るう。

それを受け止めるが地力の差で地面に叩きつけられる。

 

「ちっ……」

 

すぐに起き上がる。

相手がさらに攻撃を仕掛けてくる。

 

「『裁きの刃』!!」

 

赤い棘のような気弾を放つ。

それを避けてはいるがこれで終わりではない。

案の定、着弾地点から大きく爆破をする。

こんな煙幕を上げる技なんて不用意な奴だ。

強さゆえの傲慢と言ってもいい。

 

「ハァ!!」

 

瞬間移動で目の前に現れてやる。

そして尻尾で目を打つ。

 

「むぅ……」

 

反射的な動きで顔を押さえる。

その隙に腹へラッシュを仕掛けて蹴り飛ばした。

むくりと起き上がるがその顔はけろりとした顔ではなかった。

 

「やっぱりさっきもそうだが……痛いのか?」

 

どうやらいくら強くなっていてもブラックとザマス。

人と神のポタラだけではない。

不死身とそうでない肉体。

不自然な節理が体を崩れさせていく。

だから不死身では感じていなかったものが今現れているのだ。

 

「『絶対のいかずち』!!」

 

鳥のような気の塊のオブジェが雷撃を放つ。

それを避ける。

 

「ハアッ!!」

 

気弾を撃つがすり抜けるわけでもなく当たっただけ。

だがこれで分かる。

気で形づくっているが界王神の技か何かで核を仕込んだ。

それを壊せばいい。

 

「撃ち落とされろ、羽虫が!!」

 

ザマスが手を振り、雷を放つ。

俺の瞬間移動をなめてかかっているのか?

 

「うぉおおおお!!」

 

オブジェの後ろに陣取って気を開放。

体を回転させて弾丸のように突っ込んでいく。

そしてオブジェの中身へめり込んでいく。

 

「ガアアアアア!!」

 

叫んで気を爆発させることで核を壊す事に成功。

雷撃を放つ鳥のような奴を霧散させる。

ザマスは驚愕の顔を浮かべるがすぐに攻撃を放つ。

 

「愚かなサイヤ人め、『聖なる逆鱗』!!」

 

太陽を思わせる気弾。

だがそれで歩みが止まるわけではない。

気弾相手にあの技を試みるとは思わなかったが……

 

「『ソウル・オブ・サイヤン』!!」

 

気でコーティングした拳と足。

それに筋肉を肥大させて殴りつける。

 

「ハアアアッ!!」

 

気弾が徐々に縮小する。

巨大な気弾を相手に受け止めることができない力の差。

苛立ちこそあるがそれはそれ。

 

「こいつで終わりだ!!」

 

拳から全力で気弾を放つ。

縮小していた気弾を貫き、ザマスへと向かっていく。

 

「ぐっ……」

 

手を出してザマスが防ぐ。

そのまま光が包んでいくのを見届ける。

 

「ハアッ……」

 

想像以上に気を使う。

神の一撃とは凄まじいものだ。

体の動きが大量の気の消費で鈍る。

 

「この痴れ者が……!!」

 

それが原因で思うように体が動かない。

そんな中、手から煙をあげてザマスが現れる。

余裕綽々の顔ではなく、憤怒の形相で一撃を加えられる。

防いだり受け止められず、地面へまたもや叩きつけられる。

 

「死ね……!!」

 

そう言って俺にとどめを刺そうと向かってくるザマス。

しかし、そのザマスを蹴り飛ばす1つの影。

その正体は魔人ブウとの戦い以来となるカカロットとベジータの合体戦士であるベジットであった。

ベジットブルーとなってザマスに対抗する。

 

その一部始終をどこで見ていたのか破壊神が再び俺の肩に触れる。

 

「あれでは時間が足りなくなってじり貧だわ……」

 

そう言って再び花の都に俺を逃がす。

このまま俺一人だけおめおめと逃げる訳にはいかない。

そう思って立ち上がると次は腕を掴まれた。

 

「私をあなたが殺すしかない」

 

確かにそれしかないだろう。

神の戦闘力が掛け算方式で強くなってしまってはもうどうする術もない。

トランクス達も殺されてしまう。

あんたがそれで良いというのならば……

構えて殺すための一撃を放つ準備をする。

 

「今こそその正体を明かしましょう」

 

そう言うと魔術が解ける。

霧のようになっていたベールが取れていく。

そして隠れていた顔や髪の色が露わになっていく中、その姿に息を呑む。

俺は今からこの手で……

 

「私の名前は第10宇宙破壊神……」

 

殺さねばならないのか。

平和のためとはいえど。

この広い宇宙において、この俺にとって誰よりも……

 

「ピオーネ」

 

愛しいお前を。

歯が砕けるほど強く噛みしめる。

 

「速くしなさい」

 

俺の腕が動かない。

分かっている、分かってはいる。

これしかないほどの窮地だと。

だが……

 

「この世界だけの話ではないのよ」

 

そう言うとなぜ第七宇宙に来れたのかの種明かしを始めた。

俺達の時代のピオーネが未来のピオーネに伝えたのだ。

 

俺達の時代のピオーネは何か助けになる事は無いかと考えた。

その結果、占いババ様から教えてもらい自分の先祖が送られた時のキューブを探し当てる。

それを使用していたピオーネはさらに俺達の時代の第12宇宙でタイムマシンを発見。

ホイポイカプセルにしまい込んで第7宇宙へ戻る。

 

バーダックさん達が帰ってきたタイムマシンから時代を特定して飛んできた。

到着後、この時代でキューブを使用した。

そして未来の破壊神であるピオーネにその旨をすべて伝える。

その結果、その方法を使うべきだとなったらしい。

 

「ザマスたちもこの時代でタイムマシンを見つけた、貴方達の時代が壊される」

 

さっきの耳打ちの正体はそれだったのか。

しかし……

 

「躊躇ってはいけない、自分の時代の私を殺す決断になってしまうわ」

 

俺が攻撃をしないのがいら立ちを募らせるのだろう。

こうなってしまったのならば幾ら葛藤をしても結果は変わらない。

 

「……」

 

叫ぶこともなく己の心を殺して何も思わずに心臓を貫く。

躊躇ってしまったり、何かを思案すると手心が入る。

それはこれほどの決意をしたピオーネへの侮辱。

死よりも悍ましい地獄に誘い込む結果になってしまうことだってある。

手に残る感触があまりにも鮮明だ。

なぜこんな事になってしまうのだろう。

ただ未来のトランクス達は平和の為だったのに。

 

「そう、それでいいの」

 

頬に触れられる。

その手は暖かい。

苦しみながら答えを出した。

さようなら、この世界でも決して思いは変わらない愛しい人。

 

「ごめんね……」

 

そう言うと手が下がる。

冷たい骸へと変わっていった。

俺はその骸を背負う。

花の都は消え去っていく。

 

だが俺にとってはどうでもいい。

雨が降っている。

涙雨なのだろう。

世界を救うために命をなげうったピオーネの。

 

そう思うと不意にこみあげてくる。

割り切って歩を進めようとしていても。

泣かないと決めていたはずなのに。

 

「ハアッハアッ……」

 

荒い息をついたゴクウブラックが蹲っていた。

ザマスが死んでしまった事でポタラの効果もなくなったのだろう。

トランクスと悟飯がとどめの為に動こうとする中割り込む。

 

「お前ら、邪神、魔神、界王神は自己満足のためにただ人の世を消すという決断をしたのか?」

 

俺はしわがれ声で問う。

大きな声ももはや出ない。

血が目から溢れている。

 

「自己満足だと……もとは時間を超えて摂理を乱したりして貴様らが地球を穢すからだ、それがどうかしたか!」

 

その言葉をきっかけに殴り飛ばす。

吹っ飛んでいく相手を追い越して蹴りを加える。

言葉も何もない。

只管に拳を打ちつけていた。

顔面にめり込む。

拳の皮膚が裂ける。

だが関係ない。

拳が砕ける。

しかし関係ない。

 

「うぁあああ……」

 

ゴクウブラックが恐怖している。

だからどうした?

懐に蹴りを叩き込む。

 

壁に叩きつけられる。

そこから落ちていく間。

拳を打ち付けた時のように蹴りを放つ。

アバラがへし折れていくだろう。

もちろんそれだけでは済まさない。

内臓の破裂だって伴う。

それに折れた骨が刺さっていくだろう。

ザマスだけでなく俺の足の骨も蹴りの威力に耐えられず圧し折れている。

それでも何度も力一杯顔面を踏みつける。

 

「……」

 

もはやゴクウブラックの反応は無くなっていた。

死んでしまったのだろうか。

しかしそんな事なんてどうでもよかった。

 

ピオーネの骸を埋めてやろう。

今思うのはそれだけだ。

そして現代に帰ろう。

トランクスや悟飯の事はおろか、今はもう何も考えたくはなかった。




次回はフィナーレに近づけて現在アニメでも行っている『力の大会』の開催に近づけます。
単純に漫画版の設定で考えても人、間レベル2位の宇宙の奴と同じものを作成できるブルマってすごい。

指摘などありましたらお願いします。

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