とある一族の落ちこぼれ   作:勿忘草

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ドラゴンボールがあるからあの決断も半減なのですが、復活を現代ガタバルはやめました。
ピオーネから釘を刺されているからです。
これでなんにもピオーネが言ってなければ復活させていたでしょう。
まあ、今後管理する奴らが復活させないとも限りませんが。


『事態には特例ありき』

「仙豆だ」

 

長い戦いは終わった。

ベジータに仙豆を渡されて食べる。

ザマスたちにつけられた怪我は治っていく。

しかし俺の心の傷までは治らない。

 

ザマスは消えた。

ゴクウブラックも死んだ。

アザラの像も消滅。

ドミグラも塵に帰っていった。

 

いつもなら喜べる。

だがそんな要素は今回は無い。

たとえ時代が違っていてもピオーネをこの手にかけた。

それは偽りのない事実。

それが暗い影を落としている。

 

「ドラゴンボールで甦らせれたら……」

 

ベジータが気の毒に思ったのか言ってくる。

確かにその手はある。

しかし問題なのは神の次元に至っているという事。

復活させた場合、ザマスの復活もあり得る。

それに本人にその気がないのにやっては俺の自己満足でしかない。

 

「ゴワス様から復活させれば問題ないでしょう」

 

界王神様が言ってくる。

俺達の時代のゴワス様が頷く。

俺の自己満足にすぎない。

でもこのままもやもやとした気持ちのままでは終われない。

 

するとテレパシーが飛んでくる。

死んでいてもそのような真似ができるとは……。

 

「『あれが最善だったからそこまで気に病む事は無いのよ』」

 

俺の心の重さを取り払うために言ってくれている。

それに復活なんて考えなくてもいいということだろう。

神の類が簡単に蘇生してしまっては威厳が無い。

人の力での復興は神に頼らずともやっていける。

 

「『今、ザマスは地獄の中でさらに悪夢を見ているわ、ゴクウブラックもこっちに来て青ざめている』」

 

計22名の界王神と破壊神に追いかけられている。

自業自得だろう。

だが……

 

「たとえ、二度と会えなかったとしても元気でいてくれよ」

 

きっとビルス様もタイムマシンの使用を許可しない。

まあ、地獄に居て元気も何もあるとは思えないのだが。

そして宇宙船を未来の俺が呼び戻す。

 

「これからの復興に誰もいないのも問題だからな」

 

平和になっているのに呼び戻さないのもな。

とりあえずドラゴンボールはお前に預けておくよ。

 

「『本当に蘇生なんてやらなくてもいいのよ、その地球のために使ってね』」

 

そんな中、ザマスの悲鳴が混じっていた。

『やめろ、ピオーネ』と叫んでいるところを聞くとどうやらピオーネもザマスを痛めつけるつもりらしい。

過去の自分の伴侶へ嫌な思いをさせた不届きものには罰を与えるとのことだ。

その為、まだまだ地獄から戻るのは速いと言っていた。

頬をかいて仕方なく未来の俺に譲る。

 

「元気でな……」

 

そう言ってトランクス達にも頭を下げる。

もう二度と会えなくなるだろうが元気で居ろよ。

そう思っていたが……

 

「『今回の事は許してあげるのね』」

 

未来の全王様が姿を現す。

そして大神官に耳打ちをする。

 

「『こちらの有事の際、こちらからの時間航行は特例として認めるのね』」

 

今回の神々の戦い。

界王神の集中狙いによる破壊神の機能崩壊。

時を越える事は重罪ではある。

だが、今回のような緊急事態であればそれを考えない。

それによって増えた時の指輪は、後日全王様の手で消滅させる。

 

「『それに協力してくれた人たちにもお礼言わないとダメでしょ』」

 

同行するという事で全王様はカカロットや悟飯と一緒に。

ブルマさんはベジータとゲロ。

驚くことにゲロがタイムマシンを秘密裏に作っていたのでそれにトランクスが乗り込む。

マイやビーデルも入り込む。

俺は迎えを待っていた。

光を発して空から現れる。

それは近未来式のタイムマシンだった。

 

「来たよ」

 

降りてきたのは俺の時代のピオーネ。

未来の俺が『ミクロバンド』で縮小。

そこにラズリさんと俺とピオーネが乗り込んで現代へと戻る。

時間にして数分後。

ビルス様や現代の悟飯が待っていた。

ようやく久々に自分の時代に戻ってきたという感覚だ。

 

「ぜっ、全王様!!」

 

ビルス様が頭を下げる。

今回の事の流れをすべて伝えてくる。

そして……

 

「『こっちで同じようなことにならないようにした破壊、感謝するのね』」

 

ビルス様に感謝の意を述べる。

時の指輪を消滅させると言ってとことこと歩く。

いつの間にか戻っていた界王神に向かってとんとんとつつく。

 

「第10宇宙の宮殿まで行きたいのね」

 

そう言われて断ることもなく第10宇宙に赴く。

数分後、ゴワス様を連れて時の指輪の消滅に立ち会った。

 

「悟空、スイッチで連れて行ってほしいのね」

 

それに今回の騒動のメンバー全員がついて行く。

そこにウイスさんとビルス様もついて行く。

ビルス様はいきたくなさそうだったが、全王様に来てと言われた手前断れなかった。

 

ついて早々、現代の全王様と意気投合。

今回の騒動で時間航行の特例を締結。

とは言ってもこれ以上とんでもない事態は起こりそうにもないだろう。

やはり二度と会う事はできないと考えてもいい。

 

「僕は自分の場所に帰るのね」

 

そう言って界王神に連れていかれる。

気になっていたが……

 

「ウイスさん……」

 

俺が呼びかけると振り返る。

全王様の宮殿だけあって普段とは違う雰囲気だ。

 

「なんでしょうか?」

 

小声で聞き返してくる。

こちらも小声で質問しないとな。

 

「仮に未来の全王様がこちらに来られた時『時の指輪』ってどうなりますか?」

 

ビルス様の破壊で『破壊されていない未来』も生まれた。

つまり全王様が行き来をしてもそのたびに『時の指輪』が増えてしまうのでは?

 

「全王様ならば界王神たちのようなことにならず、パラレルワールドの心配もないまま時間軸に来れるかもしれませんよ」

 

やはり規格外か。

つまりあのお方だけは好き勝手に時間の行き来をしても問題ない。

そして……

 

「あのお方が『有事』と言えば特例の適用が可能なのですからね」

 

つまりどんな些事でも理由をつけてこちらに来れる。

恐ろしすぎる。

胃が痛くなるようなことがどれだけ増えるのか。

 

「悟空、友達連れてきてありがとうなのね」

 

全王様が感謝をする。

それで今回は不問となった。

今回の締結により『特例』ならばやむを得ないという事を大神官様からもいただいた。

まあ、界王神ばかりを狙ったとはいえ、第10宇宙を除くすべての宇宙が機能不全に陥ったのだからそう言った事態は仕方ないということだろう。

そして、一度皆で帰る。

 

「心臓に悪いですね……」

 

トランクスも事の重大さを噛みしめているのか。

冷や汗を拭っている。

 

「本来なら消されても仕方なかったぞ」

 

珍しくビルス様も大きなため息をつく。

普段の態度と全然違うのだ。

俺もきっと同じだっただろう。

 

「結局、最後になりそうだな」

 

『特例』の適用外でのタイムマシンは使用不可。

今後、第1宇宙から第12宇宙も作成するように言われるだろう。

 

「えぇ……皆さんにお礼を言って帰ります」

 

悟飯がそう言うとカカロットが背中を叩く。

お前に会いたい奴らもいるだろう。

 

「パーティーをするがどうするんだ?」

 

ベジータが気を利かせて聞いてくる。

正直、今の俺はな……

そんな顔をしているとデコピンをされる。

 

「ぐわっ!?」

 

頭を押さえて後退する。

ピオーネだった。

 

「今の私を見てよ」

 

そう言って、手を引かれる。

そしてお仕置きだというようにバックドロップを決められる。

 

「元気出た?」

 

元気どころか呻き声が先に出そうです。

もしくは流血だろう。

あとは未来の俺達が後始末するからいいって言いたいのだろう。

でも…同じことがあったら俺以上に引きずるくせに。

 

「なんか、磨きがかかっていますね」

 

ラズリさんが言ってくる。

未来の俺も笑っていた。

 

「ドンマイだ」

 

肩を叩いてゲロがにこやかに笑う。

お前は10年前に負けているから、強さは知っているもんな。

 

「さっさと用意をしろ」

 

ベジータが機材をもって運ぶ。

それを見てトランクスと悟飯が手伝おうとすると……

 

「お前らはピッコロとこの時代の悟飯を呼んで来い」

 

ベジータが主導でパーティの準備が進められる。

夕方ごろには全員が揃って用意されていた。

全員が満腹になる様に食事をする。

俺も後の事を未来の自分に任せていこうという気になった。

宴もたけなわとなり一度全員が家に戻る。

 

「ふわぁあああ…」

 

酒が入っていたからぐっすりと寝てしまう。

眠い中、せめてもの土産を用意する。

食べ物だ。

腐りにくいものを作ってやる。

街中はドラゴンボールで復興はできる。

でもこの食器がまぎれもなく俺達をつなげる証になる。

 

「さて、行こうか」

 

瞬間移動でカプセルコーポレーションに着く。

悟飯がタイムマシンの設備をしていた。

1つはこっちに置いていくようだ。

思い出の品のようなものだ。

何年もたたないと重要なものも発見されないようだからな。

 

「これ、向こうに着いたら食えよ」

 

そう言って渡してやる。

感謝をするが、こっちを見てニヤリと笑っている。

こっちの戦いの思いを感じ取ったか。

 

「最後に渡せる土産なんてこんなものだろう?」

 

そう言って構える。

トランクスとベジータが同時にこっちへ来た。

 

「2対2でちょうどいいな」

 

そう言って悟飯と向き合う。

普段なら絶対こんな事は無い。

カカロットが適任だろうが遅いようだしな。

 

「いくぞ!!」

 

そう言って超フルパワー超サイヤ人4で戦う。

全員本気のとんでもない戦いだ。

 

「はあ!!」

 

悟飯が猛ラッシュを仕掛ける。

ラッシュも足払いを組み込んでいたり、目打ちなど実戦的なもの。

勝利することを念頭に置いた攻撃。

平和を勝ち取ろうと血の滲む努力をやってきた男の戦闘。

 

「くっ!!」

 

その腕をとってそのまま放り投げる。

それを……

 

「『激烈光弾』!!」

 

片手で放ちそれを推進力に変えて俺に肘打ちを放つ。

腕を交差して受け止めるが痺れるように重い。

 

「二人ともこいつでやられやがれ、『ガンマバーストフラッシュ』!!」

 

『ファイナルフラッシュ』と逆の手の構えで光線を放つ。

一本はトランクス、もう一本は悟飯。

どう対処する?

 

「『かめはめ波』!!」

「『ギャリック砲』!!」

 

悟飯は『かめはめ波』。

トランクスは『ギャリック砲』で相殺する。

だが共通してその対処に間違いがある。

 

「隙だらけだぜ、悟飯!!」

 

直線状の技だから跳躍の回避でよかった。

こんな回避では一人が相手ならいいが、二人相手なら片方に大きな隙を晒す事になる。

腹部から突き上げる一撃。

そしてそのままラッシュを仕掛ける。

 

「うぐぐ……」

 

腕を交差する以外にも足を上げてカットしてくる。

目は死んでいない。

こっちに隙があればそのまま大技で逆転。

もしくは投げなどを組み合わせてじわじわと主導権を取りに来る。

 

「フンッ!!」

 

しかしそんな隙は与えない、

足からの気功波で悟飯の足場を崩す。

そしてその隙が生じた中で大技を放つ。

短期決戦に行ってしまえばいい。

お前たちも歴戦の戦士だが俺もまたその一人だぜ。

 

 

「『プライド・オブ・ラクタパクシャ』!!」

 

灼熱の鳥が迫っていく。

だがそれに対して眼差しは諦めていない。

そして手に気を一点集中させる。

 

「『スピリット・オブ・サイヤン』!!」

 

ラッシュをやめた一撃。

その巨大な一撃は俺の技の真ん中を破り、悟飯はその穴に飛び込む形で回避した。

 

「流石です、最後にいい思い出が出来ました」

 

俺が構えを解いたのを見て同じく構えを解く。

丁度トランクスも終わった。

全員が集まっている。

荷物持ちは未来の俺の役目のようだ。

 

「達者でな」

 

最後にその一言を残して、手を振る。

仮に、いつか危ない事があればまた来いよ。

いつだって助けになってやるからな。

最後まで手を振って未来の平和を願うのだった。




ご都合主義で今回のザマス編のように『重要な問題』がある時は
時間の航行は未来側からのみ可能という設定を加えました。
いくら罪になるとは言っても全宇宙がかかっているのでそこはそれといった感じです。
ちなみに全王様がその気になれば職権乱用で時間航行できるってはあると思います。
他人から見たらちっぽけでも全王様が重大だと言ったら重大な事ですから。

指摘などありましたらお願いします。

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