「てことは・・・・かぐちゃんが出るんだね」
「まあ必然的にそうなるな」
それでは本編にいきましょう。
「本編どうぞ」
あらゆるものに愛され、何一つ愛することのなかった美しき少女、紫黑神楽
そんな神楽が初めて抱いた愛
それは彼女の・・・・・・・破滅の始まり
(さて、今日もミコトに会いに行ってやるとするか)
早朝、学校に登校した神楽は荷物を机に置いて直ぐにミコトの居る屋上へと赴こうとする。
心の中では偉そうな物言いをしているものの、その表情はどこか楽しそうに見える。
そんな神楽に声を掛ける者が一人。
「ねえ紫黑さん。ちょっといいかな?」
声をかけたのはおそらく神楽のクラスメイトであると思われる少年であった。背は同年代の中では高く、容姿も優れている方だ。
「・・・・・なんだ?」
神楽はあからさまに嫌そうな表情をして応対する。無理もないであろう。神楽からしてみればその少年がどのような人物であろうとも、鬱陶しいとしか思っていないのだから。
「いや、最近授業に出てないようだからどこに行ってるのかなと思ってね」
少年はニコリと笑顔を浮かべながら尋ねる。人あたりのいい笑顔であるが、そんなものは神楽の不機嫌さをただ助長させるだけだ。
「どこでもいいだろう。貴様には関係ないことだ」
そっけなく返事を返し、その場から去ろうとする神楽。
しかし、少年はなおも神楽に語りかける。
「もしかしてなんだけどさ・・・・あの男女と会ってるの?」
「男女?」
少年の問いかけに神楽はピクリと反応して足を止める。少年の言う『男女』は神楽にとって一人しか思い当たらないからだ。
「それはまさかミコトのことか?」
「そう、そいつのことだよ。その反応からしてやっぱりそうなんだね」
「だったら何だ?それこそ貴様にはなんの関係もないことだろう?」
「確かに僕には関係ないけど・・・・・紫黑さん。あんな男女に会いに行くのはやめたほうがいいよ」
「・・・・・は?」
少年のその発言に、神楽は自分の中の何かが切れるのを感じた。
「どう言う意味だ?」
「だってあいつ気持ち悪いじゃないか。見ているだけで不快だし同じ空気を吸いたくないし。そんな奴に紫黑さんが会いにいく価値なんてないさ」
少年は笑顔を浮かべながらまるで空気をするかの如く当たり前にミコトを罵倒し、非難する。
そんな少年の態度は、言動は神楽にとって堪らなく腹立たしいものであった。
「あんなのに会いにいくぐらいなら僕と一緒にいようよ。自分で言うのもなんだけど僕はそれなりに頭はいいし容姿もいいほうだと思ってる。僕なら紫黑さんの隣に立つのにふさわしいと思うよ」
神楽に手を差し出しながら言う少年。
その瞬間、神楽の中の何かがブチッと音を立てて切れた。
「・・・・・黙れ」
「え?」
「黙れと言っているんだこの三流モブが」
「ッ!?」
神楽は静かに、だが凄まじいほどの怒気を込めて少年に言い放つ。その神楽の纏う空気は酷く冷たく、酷く悍ましい。気圧されてしまった少年はガタガタと体を震わせていた。
「僕なら私の隣に立つのにふさわしいだと?モブの分際で一体貴様は何様だ。分をわきまえろ。私の隣に貴様の立ち位置など存在しないし未来永劫存在し得ない」
「う・・・・あ・・・・」
「挙句にミコトを・・・・・貴様にミコトの何がわかる。何も知りもしないであいつを侮辱することはこの私が許さん。少なくともあいつは貴様等よりよほど価値のある男だ。でなければこの私がわざわざ会いに出向くなどありえない」
神楽は知っている。ミコトという男の優秀さと価値を。ミコトは神楽が認めた数少ない人物の一人であるのだ。
「もう二度と、金輪際私に近づくな。貴様の顔など見たくもない」
神楽は吐き捨てるようにして言うと、少年に背を向けてその場から立ち去ろうとした。
「ま、待って神楽さん・・・・」
そんな神楽を勇気を振り絞って引きとめようとする少年。だがしかし、それは火に油を注ぐ行為にほかならない。
神楽は振り返り少年に向かって止めの一言を浴びせる。
「気安く私の名を呼ぶな・・・・・ケスゾ?」
「ヒッ!?」
神楽が尋常でないほどの殺気を込めて言うと、少年は耐え切れなくなりその場にへたりこんでしまった。
そんな少年を全く意に返すことなく、神楽はその場から去っていった。
(ああ腹立たしい。イライラする。なんだこの気持ちは?)
ミコトのいる屋上へと向かう道中、神楽は自分の中のドス黒い感情が大きくなるのを感じていた。
(どいつもこいつもミコトのことを蔑んでいるんだと思うと・・・・憎らしい。全て消してしまいたくなる)
廊下にいる生徒達を見ながらそんな感情を抱く神楽。
元々極度の人間嫌いであった神楽だが、流石に消してしまいたくなるほどではなかった。神楽をそこまで駆り立てるのには、他の誰でもないミコトが原因であった。
神楽にとってこれまでの人生で竜希という例外を除いてただ一人認めた存在であるミコト。そのミコトがあらゆる存在から蔑まれているという現実は、神楽にこれまでにないほどの怒りを覚えさせている。
(なぜだ?私はなぜこんなにも苛立っている?こんな気持ちは初めてだ・・・・・一体どうして?)
言いようのない苛立ちを胸に抱く神楽。
無意識のうちに、屋上へと向かう足取りは速くなっていた。
「と、来たか神楽。おはよう」
「・・・・・」
屋上のフェンスに寄りかかりながら本を読んでいたミコトは、神楽の来訪に気がつくと挨拶をする。だが神楽はそれに応じずにじっとミコトを見つめている。
「どうした?」
「・・・・・・」
なおもミコトの問いかけに答えない神楽。
そして沈黙を保ったままミコトの下まで歩み寄り、ミコトに背を預けるようにして座り込んだ。
「お前本当にどうしたんだ?」
「・・・・・別に。気にするな」
(いや、流石に気にするんだが・・・・・・まあいいか)
どうせ聞いたところで答えてはくれないだろうと判断したミコトは、それ以上追求せずに神楽を受け入れた。
「・・・・撫でてくれ」
「え?」
「頭を撫でてくれ。お前のその手で」
「・・・・わかった」
ミコトは髪をとかすように優しく神楽の頭を撫でる。すると神楽は気持ちよさそうに目を細めた。
「ミコト、お前は暖かいな。お前は身も心も暖かい。私とは大違いだ」
「神楽?」
「こんな温もりを感じたのは初めてだ。きっと私にこの温もりをくれるのはこの世界でお前だけなんだろうと思う」
「・・・・・何かあったのか?」
明らかに様子のおかしい神楽。答えてくれないかもしれないと思いつつも、ミコトは尋ねた。
「・・・・おかしいんだ私。元々人間が嫌いだったのに最近はもっと嫌いに・・・・憎らしく思えてしまう。消えてしまえと思ってしまう。自分が自分でわからなくなるんだ」
「・・・・・」
「私の中のドス黑い何かが大きくなっていく。いずれそれが抑えられなくなるんじゃないかと思うと恐いんだ。堪らなく恐ろしいんだ」
抱きしめるように自分の体を掴む神楽。その表情からは確かな恐怖が見て取れ、普段の態度から考えられないほど弱々しかった。
神楽にとって初めて抱く激しい憎悪、それは神楽に対して悍ましいほどの恐怖となっていた。
なぜこんなにも憎いのか?
なぜこんなにも忌々しのか?
それを理解できないことが、神楽にとってただひたすらに恐いのだ。
「ミコト、私は・・・・私は・・・・」
「神楽・・・・大丈夫だ」
ミコトは神楽の体を抱き寄せる。
「俺が傍に居るから」
「え?」
「さっき俺は暖かいって言ったよな?だったら俺が神楽を暖めるから。少しでも神楽の恐怖がなくなるように、こうして暖めてやるから」
微笑みを浮かべながら優しく語り掛けるミコト。
そのミコトの言葉が、神楽の中の黑く、悍ましい憎悪を溶かしていく。
「だから・・・・大丈夫だ神楽」
「ミコト・・・・本当に暖かいなお前は」
ギュッと、服を握り締めながら神楽はミコトの胸に顔を埋める。
「なあミコト、今日はこのままお前の腕の中で眠りたい」
「このままか・・・・・お前はともかく俺は寝づらそうだな」
「・・・・・嫌ならいい」
「嫌じゃないさ。ちょっと言ってみただけだ」
ククッといたずらっぽくミコトは笑みを浮かべる。
「・・・・・私にそんなこと言えるのもお前だけだな。日が暮れるまでたっぷり眠ってやるから覚悟しておけ」
「ははっ。了解」
「・・・・・おやすみミコト」
「ああ。おやすみ」
程なくしてミコトに抱きしめられながら神楽は静かに眠りにつく。その表情は穏やかで、幸せそうだ。
「お前だって暖かいさ。俺にとってはこの上なくな」
神楽の寝顔を見ながら、ミコトは再び神楽の頭を撫で始めた。
ミコトの温もりに触れ、溶けた神楽の黑き憎悪
しかし決して消えたわけではない
黑き憎悪は神楽の心に募り、やがて・・・・・・
神楽を破滅へと導く
あとがき座談会のコーナー!IN東方!!
今回は神楽さんと二人で進めて行きます。
「こうしてここに来るのも久しぶりだな」
第0話自体が1年以上やっていませんでしたからね。
「なんでまたこのタイミングでやった?」
まあやって欲しいという意見もなくはなかったので。私自身やっておいたほうがいいなと思いましたしね。
「そうか。まあどうでもいいが」
・・・・・相変わらずですね。
それはそうとして本編の話をしましょう。
神楽さん人間に対して双頭激しい憎悪を抱いていましたね。
「当然だ。愛しいミコトを蔑む人間に価値などない。当時の私はミコトが蔑んでいたからということしかわかっていなかったが」
肝心のなんでミコトさんを蔑んでいる人間に憎悪を抱くかは気がついて居なかったようですね。
「まだミコトへの愛を自覚していなかったからな。だから気がつけなかった」
ただまあ・・・・・その憎悪が原因でいずれああなってしまうわけですが。
「・・・・・ミコトがいたからといって私の中の憎しみは日に日に増していったからな。抑えきれなくなるのには時間の問題だった」
ミコトさんが拒絶されなければこんなことにはならなかったんですかね?
「そんな過程に意味などない。そもそもミコトが拒絶されていなかったら私と出会わなかったかもしれないからな」
それは・・・・そうですね。
どう転んでもミコトさんと神楽さんにハッピーエンドはなかったのかもしれませんね。
「・・・・そうだな。だが私との出会いがきっかけで今のミコトがあるのだ。この出会いを否定など誰にもさせるつもりはない」
それに関しては同感ですね。
さて、今回はここで締めにしましょう。
「次章予告はしないのか?」
今回はしません。
「次回はどうする?」
次回からはちょっとした小話?をいくつかします。最近結構重苦しいのが多かったですし、その後の章も結構重いかもなので。
「そうか」
じゃあ今回はここまでです。
それでは・・・・・
「「次回もまたきてくれ(きてください)!!」」